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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】浴室洗い場床構造
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/20 20060101AFI20220328BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
E03C1/20 A
E04H1/12 301
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018092306
(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公開番号】P2019196675
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】栗原 幸二
(72)【発明者】
【氏名】小田切 裕典
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-68017(JP,A)
【文献】特開2016-65391(JP,A)
【文献】特開2010-255230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/20
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性発泡樹脂により形成された床面材と、前記床面材の上に設けられ洗い場床の表面を形成する表面材と、を有し、排水口に向けて下方へ傾斜した排水勾配が表面に形成された床本体と、
金属製の外枠と、前記外枠の内側を格子状に仕切る金属製の格子部と、高さ調整可能な支持脚と、を有し、前記床本体を下方から支持するフレーム体と、
前記床本体の前記表面よりも下方に設けられるとともに、前記フレーム体に対して直接的に固定されることなく前記フレーム体の上に設けられ、前記床面材よりも高い剛性を有し、前記床面材の沈み込みを抑制する沈み込み抑制体と、
を備え、
前記沈み込み抑制体は、水平方向に延び、高さ方向に厚みを有する複数の横支持材を有し、
前記複数の横支持材の上端は、前記床面材の下端よりも上方に位置し、
前記複数の横支持材の上面高さは、前記床本体の前記表面の排水勾配に沿って低くなることを特徴とする浴室洗い場床構造。
【請求項2】
前記複数の横支持材の上面から前記床本体の前記表面までの距離は、前記複数の横支持材のそれぞれにおいて略同一であることを特徴とする請求項1記載の浴室洗い場床構造。
【請求項3】
前記沈み込み抑制体と前記フレーム体との間に設けられ、前記沈み込み抑制体及び前記フレーム体よりも低い剛性を有するクッション部をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の浴室洗い場床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室洗い場床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室洗い場床構造において、熱可塑性発泡樹脂製の床面材(基材)を、鋼材製のデッキプレートの上、または、樹脂板を2枚の鋼板で挟んで補強したサンドイッチパネルの上に載置する構造が知られている。デッキプレートやサンドイッチパネルは、鋼材製のフレーム体の上に固定されている。フレーム体は、外枠や支持脚などを有し、支持脚を介して建築躯体の上に設置される。
【0003】
こうした浴室洗い場床構造では、デッキプレートやサンドイッチパネルに作業口(点検口)を設け、この作業口から支持脚の調整(床面の水平調整)などを行っている。この際、作業口以外の部分においては、下方のフレーム体が、デッキプレートやサンドイッチパネルによって覆い隠されている。このため、フレーム体の下方(裏側)の広い範囲を視認することが難しい。
【0004】
一方で、デッキプレートやサンドイッチパネルを設置せずに、熱可塑性発泡樹脂製の床面材を直接格子状のフレーム体の上に載置してしまうと、人が浴室洗い場床に載った際の荷重によって、格子間の隙間で大きく床面材が沈み込んでしまい、歩き心地が悪くなる上、浴室洗い場床に必要な排水勾配が適切に維持できなくなってしまう可能性が生じる。
【0005】
そこで、例えば特許文献1では、フレーム体の格子間隔を7cm以下という狭いものにし、デッキプレートやサンドイッチパネルを設けることなく、熱可塑性発泡樹脂製の床面材をフレーム体によって支える構造が検討されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の構造では、フレーム体の下方の視認性は確保できるものの、格子間隔が狭いものであるため、施工者の体はおろか、腕も入り難い。従って、せっかく視認ができたとしても、格子を介して作業を行うことが難しく、依然として施工性に検討の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-068018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、洗い場床にかかる荷重で熱可塑性発泡樹脂製の床面材の下方への沈み込みを抑制しつつ、施工性をより向上させた浴室洗い場床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、熱可塑性発泡樹脂により形成された床面材と、前記床面材の上に設けられ洗い場床の表面を形成する表面材と、を有し、排水口に向けて下方へ傾斜した排水勾配が表面に形成された床本体と、金属製の外枠と、前記外枠の内側を格子状に仕切る金属製の格子部と、高さ調整可能な支持脚と、を有し、前記床本体を下方から支持するフレーム体と、前記床本体の前記表面よりも下方に設けられるとともに、前記フレーム体に対して直接的に固定されることなく前記フレーム体の上に設けられ、前記床面材よりも高い剛性を有し、前記床面材の沈み込みを抑制する沈み込み抑制体と、を備え、前記沈み込み抑制体は、水平方向に延び、高さ方向に厚みを有する複数の横支持材を有し、前記複数の横支持材の上端は、前記床面材の下端よりも上方に位置し、前記複数の横支持材の上面高さは、前記床本体の前記表面の排水勾配に沿って低くなることを特徴とする浴室洗い場床構造である。
【0010】
この浴室洗い場床構造によれば、床本体の表面よりも下方に設けられるとともに、フレーム体に対して直接的に固定されることなくフレーム体の上に設けられ、床面材よりも高い剛性を有し、床面材の沈み込みを抑制する沈み込み抑制体を備えたことにより、フレーム体の上に熱可塑性樹脂製の床面材を配置した際にも、人が洗い場床に載った際の荷重によって、床面材が大きく沈み込んでしまうことを抑制することができる。また、間隔の狭い格子などをフレーム体に設ける必要が無く、フレーム体の下方の視認性を確保し、かつ支持脚の調整などをし易くすることができる。従って、床面材が大きく沈み込んで歩き心地が悪くなる問題や、浴室洗い場床に必要な排水勾配が適切に維持できないといった問題を解決しつつ、施工性を向上させることができる。
【0011】
また、複数の横支持材の上端が、床面材の下端よりも上方に位置することにより、横支持材が配置されている箇所と配置されていない箇所とで、床面材の底部に大きな段差が生じてしまうことを抑制でき、意図した浴室洗い場床の排水勾配を、より適切に維持することができる。
【0012】
さらに、複数の横支持材の上面高さを、床本体の表面の排水勾配に沿って低くすることにより、複数の横支持材の上端が、床面材の下端よりも上方に位置する場合にも、使用者が床本体において横支持材の直上の箇所を踏んだ際と、横支持材の無い箇所を踏んだ際とで、踏み心地に差が発生してしまうことを抑制することができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記複数の横支持材の上面から前記床本体の前記表面までの距離は、前記複数の横支持材のそれぞれにおいて略同一であることを特徴とする浴室洗い場床構造である。
【0014】
この浴室洗い場床構造によれば、使用者が床本体において横支持材の直上の箇所を踏んだ際と、横支持材の無い箇所を踏んだ際とで、踏み心地に差が発生してしまうことを、より抑制することができる。
【0015】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記沈み込み抑制体と前記フレーム体との間に設けられ、前記沈み込み抑制体及び前記フレーム体よりも低い剛性を有するクッション部をさらに備えたことを特徴とする浴室洗い場床構造である。
【0016】
この浴室洗い場床構造によれば、沈み込み抑制体に荷重が掛かった際に、金属製のフレーム体に当接することで異音が発生したり、破損してしまったりすることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、洗い場床にかかる荷重で熱可塑性発泡樹脂製の床面材の下方への沈み込みを抑制しつつ、施工性をより向上させた浴室洗い場床構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る浴室ユニットを模式的に表す斜視図である。
図2】実施形態に係る浴室ユニットの洗い場床構造を模式的に表す斜視図である。
図3】実施形態に係る浴室ユニットの洗い場床構造を模式的に表す底面図である。
図4】実施形態に係る浴室ユニットの洗い場床構造を模式的に表す断面図である。
図5】実施形態に係る浴室ユニットの洗い場床構造を模式的に表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る浴室ユニットを模式的に表す斜視図である。
図1に表したように、浴室ユニット2は、洗い場床10と、浴槽60と、壁パネル71a~71fと、を備える。
【0020】
浴槽60の底部の裏面における四隅近傍には、支持脚61が設けられ、その支持脚61を介して、浴槽60は浴室設置面(例えば、建物の床)100の上に設置される。支持脚61の先端側(下端側)にはボルト部が設けられ、そのボルト部を回転させることで支持脚61の高さが調整可能となっている。
【0021】
浴槽60の横の空間における底部に、洗い場床10が設置されている。洗い場床10の表面15aは、浴室外部に水を漏出させない防水性を有する。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加温されたお湯も含むものとする。
【0022】
洗い場床10の裏側(下方側)において、浴槽60との境界部近傍には排水配管62が設けられている。洗い場床10において、例えば浴槽60との境界部近傍には、排水配管62に連通する排水口(図1では、着脱自在の蓋63で塞がれている)が形成されている。排水口が設けられた部分はくぼんでおり、洗い場床10の表面15aには、排水口に向けて下向き傾斜した排水勾配が付けられている。また、浴槽60の底部に設けられた図示しない排水口も、排水配管62に接続されている。
【0023】
図1において2点鎖線で表すように、浴槽60のリムの上には壁パネル71a~71cが設置されている。また、洗い場床10の周縁部の上には、壁パネル71d~71fが設置されている。また、壁パネル71fには図示しないドア取付枠を介してドアが取り付けられる。
【0024】
浴槽60と洗い場床10との境界には、浴槽60における洗い場床10側の側面を覆い隠すバスエプロン67が設けられている。なお、浴槽60の構造によっては、バスエプロン67を設けなくてよいものもある。
【0025】
また、バスエプロン67の長手方向の一端側と、壁パネル71dとの間には小パネル65bが設けられている。また、バスエプロン67の長手方向の他端側と、壁パネル71fとの間には小パネル65aが設けられている。小パネル65a、65bは、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0026】
図2は、実施形態に係る浴室ユニットの洗い場床構造を模式的に表す斜視図である。
図2に表したように、洗い場床10は、床本体15と、フレーム体30と、を備える。床本体15は、床面材11と、クッション層12と、表面材13とを有する。床面材11、クッション層12、及び表面材13は、いずれも樹脂により形成されている。
【0027】
床本体15の床面材11は、フレーム体30の上に載置され、フレーム体30に支持される。床面材11は、周縁部が上側に折り曲げられた浅底の器状(パン状)に形成されている。
【0028】
床面材11は、熱可塑性発泡樹脂により形成されている。熱可塑性発泡樹脂としては、例えば発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタンなどが挙げられる。本実施形態では、一例として発泡ポリプロピレンが用いられている。
【0029】
床面材11には、排水口用の開口部21が形成されている。開口部21が設けられた部分は、凹形状に形成されている。また、床面材11の表面には、開口部21に向けて下方に傾斜した排水勾配が形成されている。
【0030】
表面材13は、クッション層12を介して床面材11の上に設けられている。クッション層12は、床面材11と表面材13との間に設けられている。クッション層12の弾力性は、床面材11及び表面材13の弾力性よりも高い。クッション層12には、排水口用の開口部22が形成されている。
【0031】
クッション層12は、使用者に床面の柔らかい使用感を与える。クッション層12の材料としては、例えば発泡ポリウレタン等の軟質素材が用いられている。クッション層12の硬さ(柔らかさ)を変えることで、床面の硬さ(柔らかさ)の仕様を変更することができる。なお、クッション層12は必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0032】
表面材13は、床面材11及びクッション層12の上面を覆い、床本体15(洗い場床10)の表面15aを形成する。表面材13は、床本体15の表面15aに外観意匠性および防水性を与える。
【0033】
表面材13の材料としては、防水性及び可撓性を有する軟質樹脂シート材が用いられている。表面材13の表面には、床本体15の表面15aの意匠性や水はけ性を向上させるために、凹凸加工や柄模様を施したりすることも可能である。
【0034】
表面材13には、排水口用の開口部23が形成されている。また、表面材13の表面には、開口部23に向けて下方に傾斜した排水勾配が形成されている。床面材11の排水勾配及び表面材13の排水勾配により、排水口に向けて下方へ傾斜した排水勾配が、床本体15の表面15aに形成される。
【0035】
フレーム体30は、床本体15を下方から支持する。フレーム体30は、金属製の外枠31と、金属製の格子部32と、金属製の支持脚33とを有する。外枠31及び格子部32は、例えば鋼材を組み合わせて形成され、樹脂から形成されている床本体15よりも十分に高い強度を有する。
【0036】
外枠31は、4本のフレーム31a~31dを有する。4本のフレーム31a~31dは、四角形状に組み合わされ、外枠31の外形(アウトライン)を形成する。フレーム31aとフレーム31bとが平行に延び、フレーム31cとフレーム31dとが平行に延びている。4本のフレーム31a~31dが形成する四角形状領域の面積は、床本体15が形成する四角形状領域の面積とほぼ同じである。
【0037】
フレーム31a、31bの長さは、フレーム31c、31dの長さよりも長い。外枠31は、例えば、上面視において長方形状である。フレーム31a、31bは、第1水平方向HD1に延びる。フレーム31c、31dは、第1水平方向HD1と直交する第2水平方向HD2に延びる。第1水平方向HD1は、例えば、長方形状の外枠31の長手方向であり、第2水平方向HD2は、例えば、長方形状の外枠31の短手方向である。第1水平方向HD1は、換言すれば、洗い場床10と浴槽60とが並ぶ方向と直交する方向であり、第2水平方向HD2は、換言すれば、洗い場床10と浴槽60とが並ぶ方向と平行な方向である。
【0038】
格子部32は、外枠31の内側を格子状に仕切る。格子部32は、例えば、床本体15の外枠31よりも内側の部分を支持することにより、床本体15の撓みを抑制する。このように、格子部32を設けることにより、フレーム体30によって、より適切に床本体15を支持することができる。
【0039】
格子部32は、例えば、複数の第1延在部41と、複数の第2延在部42と、を有する。各第1延在部41は、第1水平方向HD1に延び、第2水平方向HD2に並ぶ。各第2延在部42は、第2水平方向HD2に延び、第1水平方向HD1に並ぶ。これにより、格子部32は、複数の矩形状の隙間が第1水平方向HD1及び第2水平方向HD2に並ぶように、外枠31の内側を仕切る。
【0040】
また、複数の第1延在部41の一部41aは、フレーム31cとフレーム31dとの間に設けられる。複数の第1延在部41の別の一部41bは、第2延在部42の間に設けられる。このように、延在部は、外枠31のフレーム間の全体に延びてもよいし、外枠31のフレーム間の一部分のみに延びてもよい。
【0041】
但し、格子部32の構成は、上記に限定されるものではない。格子部32は、例えば、複数の第1延在部41のみを有する構成でもよいし、複数の第2延在部42のみを有する構成でもよい。また、複数の延在部の延びる方向は、第1水平方向HD1及び第2水平方向HD2と異なる方向でもよい。格子部32の構成は、外枠31の内側を格子状に仕切り、床本体15を適切に支持することができる任意の構成でよい。
【0042】
フレーム体30は、例えば、長方形状の外枠31の四隅に対応して設けられた4本の支持脚33を有する。各支持脚33は、格子部32の下面に設けられている。各支持脚33は、格子部32の下面から下方(設置面側)に向かって延びている。各支持脚33は、外枠31の下面に設けてもよい。
【0043】
フレーム体30は、各支持脚33を介して設置面100の上に設置される。各支持脚33の先端側(下端側)にはボルト部が設けられ、そのボルト部を回転させることで各支持脚33の高さが調整可能となっている。各支持脚33の高さ調整により、フレーム体30の上に支持される床本体15の設置高さや水平度が調整される。
【0044】
また、格子部32には、排水口用の開口部34が形成されたプレートが設けられている。フレーム体30、床面材11、クッション層12および表面材13は、それぞれの開口部21、22、23、34の位置を合わせて重ねられる。各開口部21、22、23、34の内側には、排水ピットが設けられる。排水ピットは、樹脂により形成され、非透水性を有する。排水ピットの内側には、排水口が設けられる。この排水口は、排水配管62と接続される。これにより、床本体15(洗い場床10)の表面15aに流れた水が、排水ピットなどを介して排水配管62に排水される。
【0045】
図3は、実施形態に係る浴室ユニットの洗い場床構造を模式的に表す底面図である。
図4は、実施形態に係る浴室ユニットの洗い場床構造を模式的に表す断面図である。
図4は、図3のA1-A2線断面を模式的に表す。
図3及び図4に表したように、洗い場床10は、沈み込み抑制体50をさらに備える。沈み込み抑制体50は、床本体15の表面15aよりも下方に設けられるとともに、フレーム体30に対して直接的に固定されることなく、フレーム体30の上に設けられる。なお、本発明において、沈み込み抑制体50がフレーム体30に対して「直接的に固定されている」とは、沈み込み抑制体50がフレーム体30に螺子止め固定されていたり、接着剤等で接着固定されていること等である。一方で、本発明において、沈み込み抑制体50がフレーム体30に対して「直接的に固定されていない」とは、沈み込み抑制体50がフレーム体30に対して「間接的にのみ固定されている」ものも定義に含まれる。例えば、沈み込み抑制体50が固定されている床本体15が、フレーム体30に嵌合固定されているものも、定義に含まれる。
【0046】
沈み込み抑制体50は、床面材11よりも高い剛性を有する。沈み込み抑制体50には、例えば、アルミニウム、ステンレス、鉄などの金属材料、あるいは硬質な樹脂材料などが用いられる。これにより、沈み込み抑制体50は、床面材11の沈み込みを抑制する。
【0047】
沈み込み抑制体50は、床本体15に設けられる。より詳しくは、沈み込み抑制体50は、床面材11の下部に設けられる。沈み込み抑制体50は、例えば、床面材11の下部に埋め込まれている。これにより、沈み込み抑制体50は、床面材11とともにフレーム体30の上に載置される。
【0048】
このように、沈み込み抑制体50は、ネジ止めや接着などによって直接的にフレーム体30に固定されるものではない。直接的に固定されていない状態とは、例えば、工具などを用いることなく、フレーム体30に対して容易に着脱できる状態である。例えば、フレーム体30の上に単純に載っているだけの状態である。沈み込み抑制体50は、フレーム体30に対して着脱可能である。
【0049】
但し、沈み込み抑制体50は、浴室ユニット2を組み上げた状態においては、例えば、床面材11及び床本体15の排水口に設けられた締付フランジ(排水ピットと排水配管62との接続部材)などを介して間接的にフレーム体30に固定されている可能性はある。沈み込み抑制体50は、少なくともフレーム体30及び床面材11の施工の段階においては、フレーム体30に対して固定されることなく着脱可能である。
【0050】
沈み込み抑制体50は、複数の第1横支持材51a~51gと、複数の第2横支持材52a、52bと、を有する。第1横支持材51a~51gは、第1水平方向HD1に延び、高さ方向に厚みを有する。第1横支持材51a~51gの高さ方向の厚みは、例えば、10mm以上150mm以下である。第1横支持材51a、51c、51e、51f、51gは、例えば、第1水平方向HD1に延び、第2水平方向HD2に並ぶ。同様に、第1横支持材51b、51d、51e、51f、51gは、例えば、第1水平方向HD1に延び、第2水平方向HD2に並ぶ。また、第1横支持材51a、51bは、第1水平方向HD1に並ぶ。第1横支持材51c、51dは、第1水平方向HD1に並ぶ。
【0051】
第2横支持材52a、52bは、第2水平方向HD2に延び、第1水平方向HD1に並ぶ。第2横支持材52a、52bは、高さ方向に厚みを有する。第2横支持材52a、52bの高さ方向の厚みは、例えば、10mm以上150mm以下である。第1横支持材51a~51gは、第2横支持材52a、52bの間に設けられている。
【0052】
但し、第1横支持材及び第2横支持材の数や配置などは、上記に限ることなく、任意でよい。複数の横支持材の延びる方向は、第1水平方向HD1や第2水平方向HD2に限ることなく、任意の水平方向でよい。
【0053】
複数の第1横支持材51a~51gの上端は、床面材11の下端11aよりも上方に位置する。また、複数の第1横支持材51a~51gの下端は、床面材11の下端11aよりも上方に位置する。すなわち、複数の第1横支持材51a~51gは、床面材11内に埋設されている。
【0054】
但し、複数の第1横支持材51a~51gの下端は、床面材11の下端11aと略面一でもよいし、床面材11の下端11aよりも下方に位置してもよい。ここで、「略面一」とは、例えば、第1横支持材51a~51gの下端と床面材11の下端11aとの高さの差が、±3mm以下の状態である。
【0055】
また、複数の第2横支持材52a、52bの上端は、床面材11の下端11aよりも上方に位置し、複数の第2横支持材52a、52bの下端は、床面材11の下端11aよりも上方に位置する。以下、第1横支持材51a~51fと同様であるから、詳細な説明は、省略する。
【0056】
第1横支持材51a~51fは、例えば、断面略矩形の角パイプ状(四角筒状)である。一方、第1横支持材51gは、例えば、断面略円形の丸パイプ状(円筒状)である。また、第2横支持材52a、52bは、例えば、断面略円形の丸パイプ状である。角パイプは、丸パイプと比べて高い剛性を有する反面、丸パイプよりも高価である。従って、床本体15の表面15aが排水勾配を有する場合には、排水口(排水勾配の最下点)に近く、床本体15の厚さの薄い部分には、角パイプ状の横支持材を用い、外周付近の床本体15の厚さの厚い部分には、丸パイプ状の横支持材を用いる。例えば、複数の横支持材の中で最も排水口に近い横支持材には、角パイプを用い、複数の横支持材の中で最も排水口から遠い横支持材には、丸パイプを用いる。これにより、床面材11の沈み込みを適切に抑制しつつ、洗い場床10の製造コストを抑制することができる。
【0057】
図4に表したように、複数の第1横支持材51a~51fの上面高さ(上端の位置)は、床本体15の表面15aの排水勾配に沿って低くなる。複数の第1横支持材51a~51fの上面から床本体15の表面15aまでの高さ方向の距離DTは、複数の第1横支持材51a~51fのそれぞれにおいて、略同一である。
【0058】
ここで、各第1横支持材51a~51fの距離DTが略同一な状態とは、例えば、各第1横支持材51a~51fの距離DTの偏差が、距離DTの平均値の±20%以内にある状態である。あるいは、各第1横支持材51a~51fの距離DTの最大値と最小値との差が、3mm以下の状態である。距離DTは、例えば、床本体15の表面15aの排水勾配や、表面15aに設けられた凹凸加工の範囲などにおいて変化してもよい。
【0059】
複数の第2横支持材52a、52bの上面高さは、例えば、床本体15の表面15aの排水勾配に沿って変化する。複数の第2横支持材52a、52bの上面から床本体15の表面15aまでの高さ方向の距離は、例えば、複数の第1横支持材51a~51f及び複数の第2横支持材52a、52bのそれぞれにおいて、略同一である。
【0060】
例えば、複数の第2横支持材52a、52bの上端が、複数の第1横支持材51a~51fの上端よりも下方に位置する場合などには、複数の第2横支持材52a、52bによって洗い場床10の踏み心地に影響を与えてしまう可能性が低いと考えられる。従って、このような場合には、複数の第2横支持材52a、52bの上面高さを、床本体15の表面15aの排水勾配に沿って変化させなくてもよい。
【0061】
図5は、実施形態に係る浴室ユニットの洗い場床構造を模式的に表す平面図である。
図5に表したように、複数の第1横支持材51a~51g及び第2横支持材52a、52bは、上面視において、少なくとも一部がフレーム体30の外枠31及び格子部32と重ならない位置に配置されている。
【0062】
格子部32の複数の第1延在部41は、複数の第1横支持材51a~51gと同方向に延びる。上面視において、複数の第1延在部41と複数の第1横支持材51a~51gとの間隔PT1は、10cm以下である。換言すれば、上面視において、複数の第1延在部41と複数の第1横支持材51a~51gとの間に空く隙間の大きさは、10cm以下である。ここで、隙間の大きさとは、複数の第1延在部41と複数の第1横支持材51a~51gとの間に空く隙間内に収まることが可能な円の最大直径を表す。
【0063】
格子部32の複数の第2延在部42は、複数の第2横支持材52a、52bと同方向に延びる。上面視において、複数の第2延在部42と複数の第2横支持材52a、52bとの間隔PT2は、10cm以下である。間隔PT1、PT2は、より詳しくは、延在部と、これに隣接する横支持材との間隔である。
【0064】
複数の第1延在部41の一部の間には、複数の第1横支持材51d~51fが配置されている。これにより、複数の第1延在部41の一部の間隔PT3を14cm以上にすることができる。また、複数の第2延在部42の一部の間隔PT4は、14cm以上である。
【0065】
床面材11の一部は、沈み込み抑制体50の下方に延在している。床面材11の一部は、沈み込み抑制体50とフレーム体30との間に位置する。この床面材11の一部は、クッション部11bとして機能する。
【0066】
クッション部11bは、沈み込み抑制体50とフレーム体30との間に設けられる。クッション部11bは、沈み込み抑制体50及びフレーム体30よりも低い剛性を有する。クッション部11bは、例えば、弾性を有する。
【0067】
以上、説明したように、本実施形態に係る洗い場床10(浴室洗い場床構造)によれば、床本体15の表面15aよりも下方に設けられるとともに、フレーム体30に対して直接的に固定されることなくフレーム体30の上に設けられ、床面材11よりも高い剛性を有し、床面材11の沈み込みを抑制する沈み込み抑制体50を備えたことにより、フレーム体30の上に熱可塑性樹脂製の床面材11を配置した際にも、人が洗い場床10に載った際の荷重によって、床面材11が大きく沈み込んでしまうことを抑制することができる。また、間隔の狭い格子などをフレーム体30に設ける必要が無く、フレーム体30の下方の視認性を確保し、かつ支持脚33の調整などをし易くすることができる。従って、床面材11が大きく沈み込んで歩き心地が悪くなる問題や、洗い場床10に必要な排水勾配が適切に維持できないといった問題を解決しつつ、施工性を向上させることができる。
【0068】
また、複数の第1横支持材51a~51gの上端が、床面材11の下端11aよりも上方に位置することにより、第1横支持材51a~51gが配置されている箇所と配置されていない箇所とで、床面材11の底部に大きな段差が生じてしまうことを抑制でき、意図した洗い場床10の排水勾配を、より適切に維持することができる。
【0069】
さらに、複数の第1横支持材51a~51gの上面高さを、床本体15の表面15aの排水勾配に沿って低くすることにより、複数の第1横支持材51a~51gの上端が、床面材11の下端11aよりも上方に位置する場合にも、使用者が床本体15において第1横支持材51a~51gの直上の箇所を踏んだ際と、第1横支持材51a~51gの無い箇所を踏んだ際とで、踏み心地に差が発生してしまうことを抑制することができる。
【0070】
また、洗い場床10では、上面視において、複数の第1延在部41と複数の第1横支持材51a~51gとの間隔PT1が、10cm以下であり、複数の第2延在部42と複数の第2横支持材52a、52bとの間隔PT2が、10cm以下である。これにより、複数の第1延在部41、第2延在部42、第1横支持材51a~51g、及び第2横支持材52a、52bによって、しっかりと床面材11の沈み込みを抑制することができる。
【0071】
間隔PT1、PT2は、より好ましくは、7cm以下である。間隔PT1、PT2を7cm以下とすることにより、例えば、二足歩行可能な年齢以上の人の足のサイズよりも間隔PT1、PT2を小さくすることができる。従って、洗い場床10上に人が立って荷重がかかっても、足の裏からの荷重をフレーム体30及び沈み込み抑制体50で受けることができ、大きく撓まないようにすることができる。このため、より安定感のある洗い場床10を提供することができる。このように、間隔PT1、PT2は、子供の足のサイズを鑑みると、7cm以下がより好ましい。
【0072】
洗い場床10では、第1横支持材51a~51g及び第2横支持材52a、52b同士の間に床面材11の一部が設けられている。換言すれば、インサートされた第1横支持材51a~51g、及び第2横支持材52a、52b同士の間に床面材11の一部が充填されている。この場合、床面材11の下方への沈み込み、及び幅方向への広がりを、挟んでいる複数の横支持材によって抑制することができる。従って、例えば、間隔PT1、PT2を7cm~10cmの範囲に設定したとしても、比較的体重の軽い7cm程度の足のサイズの子供の荷重によって、床面材11が大きく沈み込んでしまうことを、より確実に抑制することができる。
【0073】
例えば、上記のように、複数の第1延在部41の一部の間隔PT3、及び複数の第2延在部42の一部の間隔PT4を、14cm以上にすることができる。これにより、施工者の腕などをフレーム体30の下方に入れ易くし、施工性をより向上させることができる。
【0074】
また、洗い場床10では、複数の第1横支持材51a~51gの上面から床本体15の表面15aまでの距離DTが、複数の第1横支持材51a~51gのそれぞれにおいて略同一である。これにより、使用者が床本体15において第1横支持材51a~51gの直上の箇所を踏んだ際と、第1横支持材51a~51gの無い箇所を踏んだ際とで、踏み心地に差が発生してしまうことを、より抑制することができる。
【0075】
また、洗い場床10では、クッション部11bをさらに備えることにより、沈み込み抑制体50に荷重が掛かった際に、金属製のフレーム体30に当接することで異音が発生したり、フレーム体30や沈み込み抑制体50が破損してしまったりすることを抑制することができる。
【0076】
なお、上記実施形態では、床面材11の一部をクッション部11bとして機能させている。クッション部は、床面材11とは別の部材として、フレーム体30と沈み込み抑制体50との間に設けてもよい。この場合、クッション部の材料は、沈み込み抑制体50及びフレーム体30よりも低い剛性(弾性)を有する任意の材料でよい。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
2 浴室ユニット、 10 洗い場床、 11 床面材、 11a 下端、 11b クッション部、 12 クッション層、 13 表面材、 15 床本体、 15a 表面、 21 開口部、 22 開口部、 23 開口部、 30 フレーム体、 31 外枠、 31a~31d フレーム、 32 格子部、 33 支持脚、 34 開口部、 41 第1延在部、 42 第2延在部、 50 沈み込み抑制体、 51a~51g 第1横支持材、 52a、52b 第2横支持材、 60 浴槽、 61 支持脚、 62 排水配管、 63 蓋、 65a 小パネル、 65b 小パネル、 67 バスエプロン、 71a~71f 壁パネル、 100 設置面
図1
図2
図3
図4
図5