(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】ロードセル
(51)【国際特許分類】
G01L 1/22 20060101AFI20220328BHJP
G01L 5/16 20200101ALI20220328BHJP
G01L 1/16 20060101ALI20220328BHJP
G01L 1/26 20060101ALI20220328BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
G01L1/22 Z
G01L5/16
G01L1/16 B
G01L1/26 Z
H01L29/84 A
(21)【出願番号】P 2018081989
(22)【出願日】2018-04-23
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503061485
【氏名又は名称】株式会社テック技販
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 和美
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 圭
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-017253(JP,A)
【文献】特開2015-169617(JP,A)
【文献】特開2007-108079(JP,A)
【文献】特開昭61-122538(JP,A)
【文献】米国特許第05760313(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/20-1/22
G01L 1/26
G01L 5/16-5/173
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に穴部を有するケース本体と、
当該ケース本体の穴部
との間に上下左右に隙間をもって挿入される挿入体と、当該挿入体の上部にフランジ体とを設けて構成されたた作用体と、
前記穴部の内
壁に対して直交する方向にそれぞれ設けられ
た導電性材料と、
前記穴部の挿入方向を法線とする
ケース本体の上面に設けられた導電性材料と、
前記フランジ体に設けられた孔部を介してケース本体の上面に向けて挿入され、当該ケース本体の上面に設けられた導電性材料を挟み込んで押圧するボルトと、
前記ケース本体の側面に設けられた孔部を介して前記挿入体に向けて挿入され、前記ケース本体の内壁に設けられた導電性材料を挟み込んで押圧するボルトと、を備え、
前記フランジ体および挿入体で前記それぞれの導電性材料を押圧させることによって、前記各導電性材料の電気抵抗を変化させて3軸方向の荷重を検出するようにしたロードセル。
【請求項2】
前記穴部の内壁に、前記挿入体の側面に設けられた突起部が中間位置となるような上下一対の孔部を設けて前記ボルトで前記導電性材料を押圧させるようにした請求項1に記載のロードセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重を検出するロードセルに関するものであって、より詳しくは、CFRPなどの炭素繊維を用いて3軸方向の荷重を検出できるようにしたロードセルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在では、荷重を検出するセンサとして、ひずみゲージ式のロードセルが一般的に普及している。このひずみゲージ式のロードセルは、薄い金属板で構成された起歪体にひずみゲージを貼り付けるとともに、そのひずみゲージを用いてホイートストンブリッジを形成し、そこから出力される電気信号によって荷重を検出できるようにしたものである。このようなひずみゲージ式のロードセルは、精度が非常に高く、温度変化などの影響も少ないというメリットがある。
【0003】
しかしながら、このようなひずみゲージ式のロードセルは、構造が複雑であるため、コストがかかり、また、小さくすることが難しいという欠点がある。
【0004】
一方、炭素繊維などの導電性材料を用いて荷重を検出するようにしたロードセルも提案されている。例えば、下記の特許文献1には、炭素繊維に荷重を加えることによって電気抵抗が変化することに着目して荷重を検出できるようにしたものであって、
図7に示すように、可動板61の上下に炭素繊維62を貼り付け、その可動板61の動きによって押圧・張引される炭素繊維62の電気抵抗の変化によって荷重を検出できるようにしたものが提案されている。このようなロードセルによれば、ひずみゲージなどを設ける必要がないため、ロードセル自体を小さく構成することができるとともに、コストを低減させることができるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような特許文献1に記載される炭素繊維を用いたロードセルでは、次のような問題がある。
【0007】
すなわち、特許文献1に記載されるロードセルは、作用体63に沿った一軸方向の荷重しか検出することができない。このため、3軸方向の荷重を検出する場合は、そのロードセルを3方向に向けなければならないが、このように3軸方向にロードセルを向けると、荷重を作用させるための作用体63が3箇所に存在してしまい、一点で作用する3軸方向の荷重を同時に検出することができないといった問題がある。
【0008】
また、上記特許文献1に示されるロードセルでは、炭素繊維62を平面状に可動板61に接触させて電気抵抗の増減を検出するようにしているが、作用体63に荷重をかけると、機械的誤差から可動板61が傾いてしまい、局所的に荷重がかかってしまう可能性がある。しかるに、このように局所的に炭素繊維62に荷重がかかると、その部分での圧力が強くなるため、電気抵抗が小さく検出されてしまう。一方、同じ荷重であっても、平面状に接触した場合は、圧力が小さくなって、電気抵抗が大きくなってしまう。このため、同じ荷重であっても異なる荷重が検出されてしまうことになる。
【0009】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、炭素繊維などの導電性材料を用いて3軸方向の荷重を検出できるようにするとともに、精度よく荷重を検出できるようにしたロードセルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、内側に穴部を有するケース本体と、当該ケース本体の穴部との間に上下左右に隙間をもって挿入される挿入体と、当該挿入体の上部にフランジ体とを設けて構成されたた作用体と、前記穴部の内壁に対して直交する方向にそれぞれ設けられた導電性材料と、前記穴部の挿入方向を法線とするケース本体の上面に設けられた導電性材料と、前記フランジ体に設けられた孔部を介してケース本体の上面に向けて挿入され、当該ケース本体の上面に設けられた導電性材料を挟み込んで押圧するボルトと、前記ケース本体の側面に設けられた孔部を介して前記挿入体に向けて挿入され、前記ケース本体の内壁に設けられた導電性材料を挟み込んで押圧するボルトと、を備え、前記フランジ体および挿入体で前記それぞれの導電性材料を押圧させることによって、前記各導電性材料の電気抵抗を変化させて3軸方向の荷重を検出するようにしたものである。
【0011】
また、このような発明において、前記穴部の内壁に、前記挿入体の側面に設けられた突起部が中間位置となるように上下一対の孔部を設けて前記ボルトで前記導電性材料を押圧させるようにする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一つの作用体に作用する荷重から3軸方向の荷重を同時に検出することができ、構造を簡素化して低コストにロードセルを構成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態におけるロードセルの分解斜視図
【
図4】同形態における炭素繊維の押圧と抵抗値の関係を示す図
【
図7】従来例における炭素繊維を用いたロードセルを示す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態におけるロードセル1について説明する。
【0015】
この実施の形態におけるロードセル1は、CFRPなどの炭素繊維を押圧すると電気抵抗が変化することに着目して荷重を検出できるようにしたものであって、
図1に示すように、内側に穴部22を有するケース本体2と、当該ケース本体2の穴部22に挿入可能に設けられる作用体3と、前記穴部22の内壁21aの直交する方向にそれぞれ設けられ、一対の電極52(
図2参照)で挟まれた導電性材料5と、前記作用体3とケース本体2の上面21bとの間に設けられ、一対の電極52で挟まれた導電性材料5とを有するようにしたものであって、一つの作用体3に3軸方向に荷重が作用した場合に、その3軸方向の荷重を導電性材料5の電気抵抗の変化に基づいて同時に検出できるようにしたものである。以下、本実施の形態におけるロードセル1について詳細に説明する。
【0016】
まず、このロードセル1を構成するケース本体2は、
図1や
図2に示すように、穴部22を有するものであって、その穴部22に作用体3を挿入できるようになっている。このケース本体2の穴部22は、断面円形状となっており、また、そのケース本体2の上面21bについては、平面状になっている。
【0017】
このケース本体2に挿入される作用体3は、そのケース本体2の穴部22に僅かな隙間をもって挿入される円柱状の挿入体31と、その挿入体31の上部に設けられるフランジ体32とを有するように構成されている。そして、この挿入体31の外周面に半球状の突起部33を直交方向に設けるとともに、フランジ体32の下面にも一定角度毎に半球状の突起部33を設けるようにしている(
図2参照)。そして、これらを突起部33によって導電性材料5を押圧させるようにしている。
【0018】
この導電性材料5は、押圧によって電気抵抗が変化する導電性シート51(
図2参照)と、この導電性シート51を挟み込む一対の電極52で構成されるものであって、例えば、CFRPなどの炭素繊維を薄い金属板で挟み込んだものなどが用いられる。このような炭素繊維のうち、特にPAN系の炭素繊維は、押圧力や引張力を作用させると、電気抵抗が大きく変化することが知られている。そこで、この炭素繊維を薄い電極52で挟んで電気抵抗の差分を検出することにより、荷重を検出できるようにしている。なお、ここでは、炭素繊維を薄い電極52で挟むようにしているが、ケース本体2や作用体3を非導電性材料(例えば、セラミクス)などで構成しておき、半球状の突起部33を金属で構成して導電性シート51を挟むようにしてもよい。
【0019】
このような、導電性材料5は、ケース本体2の穴部22の内壁21aの直交する方向(XY軸方向)や、ケース本体2の上面21bに設けられ、作用体3の突起部33で3軸方向に押圧されるようになっている。この導電性材料5の電極52には、図示しないケーブルが延出されており、この電極52に電圧をかけることによって電気抵抗を検出して、荷重を検出できるようになっている。
【0020】
ところで、このように導電性材料5の電気抵抗の変化を検出する場合、
図4に示すように、抵抗値が初期の押圧状態では非線形状態に変化し、一定の押圧力が加えられた状態から線形的に抵抗値が変化する。このため、この実施の形態では、電気抵抗が線形的に変化する領域で抵抗値を検出できるように、オフセット部を設けるようにしている。
【0021】
このオフセット部は、あらかじめ作用体3をケース本体2に押圧しておくことで、導電性材料5の抵抗曲線のうち線形領域で抵抗値を検出できるようにしたもので、Z軸方向については、作用体3の上面に設けられた少し大きめの孔部32bにボルト4を通し、ボルト4の頭部41でフランジ体32をケース本体2側に押圧し、また、そのボルト4の胴部42の範囲内でフランジ体32をZ軸方向に変位させるようにしている。これにより、このボルト4であらかじめ導電性材料5を押圧することで、抵抗値を線形状態の領域で検出することができるようになる。また、このようにボルト4でフランジ体32をZ軸方向に押圧する場合、フランジ体32を平面状態のままZ軸方向に変位させる必要がある。このため、このボルト4を一定角度(90度)毎に間欠的に設けておき、これによって平面を保ったままフランジ体32をZ軸方向に変位させるようにして、突起部33による押圧状態を安定させるようにする。
【0022】
また、X軸方向やY軸方向のオフセット部30についても同様に、ケース本体2の側面から挿入体31にボルト4を通してX軸方向やY軸方向に導電性材料5を押圧し、また、胴部42の範囲内で変位できるようにしている。このとき、X軸方向やY軸方向についても、他の軸方向への僅かな変位を許容しておく必要があるため、ボルト4の胴部42とケース本体2の孔部23との隙間を僅かに空けておき、他の軸方向への変位を許容しつつ、そのボルト4の軸方向へ導電性材料5を押圧するようにしておく。また、このように隙間を空けておく場合、挿入体31がぶれてしまう可能性があるため、X軸方向やY軸方向のそれぞれに上下一対の孔部23を設けてボルト4を通すとともに、そのボルト4の中間位置に突起部33を位置させるようにしている。このようにすれば、上下のボルト4によってX軸方向やY軸方向のぶれを防止することができ、突起部33による押圧状態を安定させることができるようになる。
【0023】
次に、このように構成されたロードセル1の作用について説明する。
【0024】
まず、作用体3の上面21bに荷重Pが作用した場合、その荷重PのうちZ軸成分がフランジ体32のZ軸方向に作用することになる。すると、フランジ体32が下方に押圧され、そのフランジ体32に設けられた突起部33によって導電性材料5が押圧されることになる。このとき、その導電性材料5は、Z軸方向のオフセット部30ですでに押圧されている状態であるため、
図3における線形領域の範囲内での電気抵抗の変化を検出してZ軸荷重を検出することができるようになる。このZ軸方向に作用体3が変位する、挿入体31のX軸方向やY軸方向に設けられたボルト4は、ケース本体2の孔部23の僅かな隙間内でZ軸方向に変位するようになる。
【0025】
一方、荷重PのY軸方向の押圧によって、作用体3は同軸方向に変位する。すると、挿入体31に設けられた突起部33によって導電性材料5が押圧されることになる。このとき、導電性材料5は、Y軸方向のオフセット部30ですでに押圧された状態であるため、線形領域で抵抗変化を検出することができるようになる。なお、このようにY軸方向に挿入体31が変位する場合、Z軸方向に沿って取り付けたボルト4や、X軸方向に沿って取り付けたボルト4は、フランジ体32に設けた孔部32bやケース本体2に設けた孔部23の範囲内でY軸方向に変位することになる。
【0026】
X軸方向についても同様に、この作用体3は、その荷重PのX軸方向の成分に基づいて変位する。すると、その挿入体31に設けられた突起部33によって導電性材料5が押圧される。このときも、X軸方向のオフセット部30ですでに押圧された状態であるため、線形領域で抵抗変化を検出することができるようになる。このときも、Z軸方向に沿って取り付けたボルト4や、Y軸方向に沿って取り付けたボルト4は、フランジ体32に設けた孔部32bや、ケース本体2に設けた孔部23の範囲内でX軸方向に変位することになる。
【0027】
そして、このように検出されたXYZ軸方向の電気抵抗の差分変化に基づいて同軸方向の荷重を算出して出力する。
【0028】
このように構成することにより、一つの作用体3に作用する荷重Pから導電性材料5を用いて3軸方向の荷重を同時に検出することができるようになる。
【0029】
<第二の実施の形態>
【0030】
次に、第二の実施の形態について説明する。上記実施の形態では、作用体3の上部にフランジ体32を設けるようにしたが、第二の実施の形態では、
図5に示すような構成を用いるようにする。
【0031】
図5に示すロードセル1は、ケース本体2を上記実施の形態と同様に構成するとともに、Z軸方向の荷重を検出する導電性材料5を、穴部22の底面21cに取り付けるようにしたものである。このように構成した場合であっても、作用体3に作用する3軸方向の荷重を同時に検出することができるようになる。なお、同図において、同じ符号を付したものは、上記実施の形態と同じ構成を有するものとして説明を省略する。
【0032】
このように挿入体31の底面で導電性材料5を押圧する場合、挿入体31の底面21cに突起部33を設けるようにするとともに、同様のオフセット部30であらかじめ圧力をかけるようにしてもよい。あるいは、挿入体31の底部21cを尖状にしておき、この圧力で初期の圧力を掛けるようにしてもよい。
【0033】
<第三の実施の形態>
【0034】
また、
図6に示すようなケース本体2を用いることもできる。
図6に示すケース本体2は、穴部22を正方形状としたものであって、その内部に円柱状の挿入体31を挿入させるようにしたものである。そして、その穴部22の内壁21aに導電性材料5を設けるとともに、挿入方向を法線方向とする面にも導電性材料5を設ける。そして、正方形状の穴部22に円形状の挿入体31を有する作用体3を挿入すると、円柱状の挿入体31が穴部22の内壁21aに一点線状に接触することになり、突起部33などを設けなくても荷重を集中させて抵抗値の変化を検出することができる。なお、このように挿入体31を円柱形状とした場合は、Z軸方向に沿って穴部22に線状に接することになるため、中央部分を膨らました樽型形状として点接触させるようにしてもよい。
【0035】
このように上記実施の形態によれば、内側に穴部22を有するケース本体2と、当該ケース本体2の穴部22との間に上下左右に隙間をもって挿入される挿入体31と、当該挿入体31の上部にフランジ体32を設けて構成されたた作用体3と、前記穴部22の内壁に対して直交するする方向にそれぞれ設けられた導電性材料5と、前記穴部22の挿入方向を法線とするケース本体2の上面に設けられた導電性材料5と、前記フランジ体32に設けられた孔部32bを介してケース本体2の上面に向けて挿入され、当該ケース本体2の上面に設けられた導電性材料5を挟み込んで押圧するボルト4と、前記ケース本体2の側面に設けられた孔部23を介して前記挿入体31に向けて挿入され、前記ケース本体2の内壁に設けられた導電性材料5を挟み込んで押圧するボルト4と、を備え、前記フランジ体32および挿入体31で前記それぞれの導電性材料5を押圧させることによって、前記各導電性材料5の電気抵抗を変化させて3軸方向の荷重を検出するようにしたので、一つの作用体3に作用する3軸方向の荷重を同時に検出することができ、構造を簡素化して低コストにロードセル1を構成することができるようになる。
【0036】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0037】
例えば、上記実施の形態では、導電性材料5として、CFRPなどの炭素繊維を用いるようにしたが、これに限らず、押圧や引っ張りによって電気的特性(抵抗値、起電力値など)が変化するピエゾフィルムなどの他の素材を用いるようにしてもよい。
【0038】
また、上記実施の形態では、突起部33を作用体3に設けるようにしたが、ケース本体2側に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1・・・ロードセル
2・・・ケース本体
21a、b、c・・・上面、内壁、底面
22・・・穴部
23・・・孔部
3・・・作用体
31・・・挿入体
32・・・フランジ体
32b・・・孔部
33・・・突起部
4・・・ボルト
41・・・頭部
42・・・胴部
5・・・導電性材料
51・・・導電性シート
52・・・電極