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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】ダイヤフラム弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/12 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
F16K7/12 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019543718
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2018034935
(87)【国際公開番号】W WO2019059324
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-05-05
(31)【優先権主張番号】P 2017184195
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】小原 俊治
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】樋口 孝行
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-204977(JP,A)
【文献】実開昭64-38366(JP,U)
【文献】特開昭55-2879(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0162547(US,A1)
【文献】国際公開第2017/081873(WO,A1)
【文献】米国特許第2988322(US,A)
【文献】米国特許第9366346(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0247581(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を有する本体と、
ステムと、
ダイヤフラムと、
前記ステム下端部に取り付けられたダイヤフラム押さえと、
前記ダイヤフラムと前記ダイヤフラム押さえを連結する連結部材とを備えている、ダイヤフラムの変形により流路を遮断開閉可能なダイヤフラム弁であって、
前記連結部材は、前記ダイヤフラム押さえと連結される棒状部と、前記連結部材の下端部において、径方向に円形状に突出し、外周縁に少なくとも1つの切欠きが形成されたつば部とを有し、前記棒状部の前記つば部上方には径方向に凹んだくびれ部が形成され、
前記つば部およびくびれ部は、前記ダイヤフラムの中央部に埋設されている、
ことを特徴とするダイヤフラム弁。
【請求項2】
前記つば部の外径は、φ7.2~φ7.7mmである、
請求項1のダイヤフラム弁。
【請求項3】
前記切欠きは、半円形状を有する、
請求項1または2記載のダイヤフラム弁。
【請求項4】
前記つば部は、下面の中央部が下方に膨らんだ形状を有する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のダイヤフラム弁。
【請求項5】
前記くびれ部の上方まで前記ダイヤフラムの中央部に埋設されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のダイヤフラム弁。
【請求項6】
流路を有する本体と、
前記本体に対し上下移動可能なステムと、
前記ステムの上下移動に伴って本体の流路を開閉するダイヤフラムと、
前記ステム下端部に取り付けられて前記ダイヤフラムを下方に押圧するダイヤフラム押さえと、
前記ダイヤフラムの中央部を前記ダイヤフラム押さえの下部に連結する連結部材とを備えているダイヤフラム弁であって、
前記連結部材は、上部が前記ダイヤフラム押さえに固定され、上下方向に配置された棒状部と、当該棒状部の下端部に設けられ、当該棒状部の外周面の径外方向に突出するつば部とを有しており、
前記棒状部の下端部における前記つば部の上方に位置する部分には、径内方向に凹んだくびれ部が形成され、
前記つば部の外周縁には、少なくとも1つの切欠きが形成され、
前記ダイヤフラムの中央部には、前記連結部材における棒状部の下端部および前記つば部が埋設され、
当該ダイヤフラムの中央部の構成材料は、前記棒状部の前記くびれ部および前記つば部の前記切欠きの内部に入り込んだ状態で当該つば部の上下両面を覆っている、
ことを特徴とするダイヤフラム弁。
【請求項7】
前記つば部の外径は、φ7.2~φ7.7mmである、
請求項6のダイヤフラム弁。
【請求項8】
前記切欠きは、半円形状を有する、
請求項6または7記載のダイヤフラム弁。
【請求項9】
前記つば部は、下面の中央部が下方に膨らんだ形状を有する、
請求項6乃至8のいずれか1項に記載のダイヤフラム弁。
【請求項10】
前記ダイヤフラムの中央部の構成材料は、前記棒状部における前記くびれ部の上方の部分を覆う、
請求項6乃至9のいずれか1項に記載のダイヤフラム弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムをダイヤフラム押さえに連結する連結部材を備えたダイヤフラム弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイヤフラムをダイヤフラム押さえによって上方から押圧することで、ダイヤフラムを変形させて流路を閉じるダイヤフラム弁が特許文献1などによって知られている。
【0003】
このようなダイヤフラム弁は、主要な構成として、流路を有する本体と、本体に対し上下移動可能なステムと、流路を開閉するダイヤフラムと、ステム下端部に取り付けられてダイヤフラムを下方に押圧するダイヤフラム押さえを備えている。
例えば、図8に示されるように、ダイヤフラム(31)は、連結ボルト(32)によって、ダイヤフラム押さえ(33)に連結されている。具体的には、連結ボルト(32)の上部がダイヤフラム押さえ(33)に固定され、連結ボルト(32)の下端部に形成されたつば部(34)がダイヤフラム(31)の中央部(35)に埋め込まれている。そのため、ダイヤフラム(31)の中央部(35)は、連結ボルト(32)を介してダイヤフラム押さえ(33)に連結され、ダイヤフラム押さえ(33)の上下動に追随可能である。
【0004】
しかし、上記のような従来のダイヤフラム弁は、ダイヤフラム(31)や連結ボルト(32)に対して大きな荷重がかかる場合には、連結ボルト(32)のつば部(34)の上部を覆うダイヤフラム(31)の部分がめくれたり、または破損したりすることによって、ダイヤフラム(31)が連結ボルト(32)から脱落するおそれがある。
【0005】
ここで、ダイヤフラム(31)の脱落を防止するために、つば部(34)に貫通孔を設け、ダイヤフラム(31)を構成する樹脂を貫通孔に入り込ませることによって、ダイヤフラム(31)と連結ボルト(32)との結合力を向上させることが従来では提案されている。しかし、小型のダイヤフラム弁の場合には、脱落の防止に有効な貫通孔をつば部(34)に形成することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3027450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべく、ダイヤフラムが連結部材から脱落することを防止する効果を向上させたダイヤフラム弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のダイヤフラム弁は、
流路を有する本体と、
ステムと、
ダイヤフラムと、
前記ステム下端部に取り付けられたダイヤフラム押さえと、
前記ダイヤフラムと前記ダイヤフラム押さえを連結する連結部材とを備えている、ダイヤフラムの変形により流路を遮断開閉可能なダイヤフラム弁であって、
前記連結部材は、前記ダイヤフラム押さえと連結される棒状部と、前記連結部材の下端部において、径方向に円形状に突出し、外周縁に少なくとも1つの切欠きが形成されたつば部とを有し、前記棒状部の前記つば部上方には径方向に凹んだくびれ部が形成され、
前記つば部およびくびれ部は、前記ダイヤフラムの中央部に埋設されている、
ことを特徴とする。
前記つば部は前記棒状部の径よりも大きい大径部とも言えるものである。
前記くびれ部は前記棒状部の径よりも小さい小径部とも言えるものである。
前記棒状部の径をDとし、前記つば部の径をDとすると、前記つば部の径Dは、1.1D~1.4Dの範囲にすることもできる。
前記棒状部の径をDとし、前記くびれ部の径をDとすると、前記つば部の径Dは、0.9D~0.7Dの範囲にすることもできる。
後述するように、前記ダイヤフラムの中央部に埋設される部分を、前記つば部と前記くびれ部の両方とすることもできる。
なお、本発明のダイヤフラム弁において、前記つば部は少なくとも一つ設けられ、前記くびれ部も少なくとも一つ設けられる。
後述するように、前記切欠きは複数個設けられることが好ましく、その複数個の前記切欠きは周方向の角度において略等間隔に設けられていることが好ましい。
本発明のダイヤフラム弁の他の形態では、流路を有する本体と、前記本体に対し上下移動可能なステムと、前記ステムの上下移動に伴って本体の流路を開閉するダイヤフラムと、前記ステム下端部に取り付けられて前記ダイヤフラムを下方に押圧するダイヤフラム押さえと、 前記ダイヤフラムの中央部を前記ダイヤフラム押さえの下部に連結する連結部材とを備えているダイヤフラム弁であって、前記連結部材は、上部が前記ダイヤフラム押さえに固定され、上下方向に配置された棒状部と、当該棒状部の下端部に設けられ、当該棒状部の外周面の径外方向に突出するつば部とを有しており、前記棒状部の下端部における前記つば部の上方に位置する部分には、径内方向に凹んだくびれ部が形成され、前記つば部の外周縁には、少なくとも1つの切欠きが形成され、前記ダイヤフラムの中央部には、前記連結部材における棒状部の下端部および前記つば部が埋設され、当該ダイヤフラムの中央部の構成材料は、前記棒状部の前記くびれ部および前記つば部の前記切欠きの内部に入り込んだ状態で当該つば部の上下両面を覆っている、ことを特徴とする。
【0009】
本発明のダイヤフラム弁は、ダイヤフラムをダイヤフラム押さえの下部に連結する連結部材を有する構成において、ダイヤフラムの中央部に埋め込まれた連結部材のつば部が当該ダイヤフラムの中央部から抜け出ることを効果的に防止し得る構造を有する。
【0010】
具体的には、連結部材のつば部の外周面に切欠きを設けるとともに、当該連結部材の棒状部にくびれ部が設けられている。この構造では、連結部材における棒状部の下端部およびつば部がダイヤフラムの中央部に埋設された状態では、ダイヤフラムの中央部の構成材料は、棒状部のくびれ部およびつば部の切欠きの内部に入り込んだ状態でつば部の上下両面を覆っている。その結果、ダイヤフラムの中央部の構成材料は、くびれ部に入り込んだ分だけつば部の上面を覆う部分が拡大し、しかも、切欠きの内部に入り込んだ部分がつば部の上下両面を覆う部分を連結する。そのため、くびれ部に入り込んだ部分は、切欠きの内部に入り込んだ部分とつば部の外周よりも内側で連結されることにより、くびれ部から抜けにくくなる。さらに、切欠きの内部に入り込んだ部分によって、つば部とダイヤフラムとの相対的な回転が規制される。その結果、つば部がダイヤフラムの中央部から抜け出て、ダイヤフラムが連結部材から脱落することを効果的に防止することが可能である。
【0011】
しかも、棒状部の下端部にくびれ部を設けることにより、つば部の切欠きをつば部の径内方向へ深く形成することが可能である。そのため、棒状部およびつば部の軸中心により近い位置において、ダイヤフラムの中央部の構成材料におけるくびれ部に入り込んだ部分と切欠きに入り込んだ部分とを連結することが可能になる。その結果、ダイヤフラムおよびそれに埋め込まれるつば部の外径が小さいダイヤフラム弁であっても、つば部の保持力を確実に向上させることが可能である。
【0012】
前記つば部の外径は、φ7.2~φ7.7mmであってもよい。
前記つば部の外径が上記の外径であっても、上記のように棒状部の下端部にくびれ部を設けることにより、つば部の切欠きを当該つば部の径内方向へ深く形成することが可能である。そのため、棒状部およびつば部の軸中心により近い位置において、ダイヤフラムの中央部の構成材料におけるくびれ部に入り込んだ部分と切欠きに入り込んだ部分とを連結することが可能になる。その結果、小さいダイヤフラム有し、ダイヤフラムに埋め込まれるつば部の外径がφ7.2~φ7.7mm程度の小型のダイヤフラム弁であっても、つば部の保持力を容易に向上させることが可能である。
【0013】
前記切欠きは、半円形状を有するのが好ましい。
かかる構成によれば、つば部の外周縁に形成された切欠きは半円形状であり、滑らかな円弧状の内周面で構成されているので、ダイヤフラムの中央部の構成材料は、円滑にかつ隙間なく切欠き内部に入り込むことが可能である。そのため、つば部の保持力を確実に向上させることが可能であり、ダイヤフラム弁の性能のばらつきを抑制することが可能である。
【0014】
前記つば部は、下面の中央部が下方に膨らんだ形状を有するのが好ましい。
かかる構成によれば、つば部の下面の中央部が下方に膨らんでいるので、ダイヤフラムの閉鎖時に連結部材が下降したときにつば部がダイヤフラムの中央部に与える押圧力をつば部外周縁に集中させることなく当該中央部内部に広範囲に分散させて与えることが可能である。そのため、ダイヤフラムの劣化や破損のおそれを低減することが可能である。
【0015】
前記ダイヤフラムの中央部の構成材料は、前記棒状部における前記くびれ部の上方の部分を覆うのが好ましい。
前記ダイヤフラムの中央部の構成材料は、前記棒状部における前記くびれ部の上方の部分を覆っているので、つば部の上部を覆うダイヤフラムの中央部の構成材料の厚さを厚くすることが可能になり、つば部の保持力をより向上させることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のダイヤフラム弁によれば、ダイヤフラムが連結部材から脱落することを防止する効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るダイヤフラム弁の全体構成を示す断面図であって、流路の延びる方向に沿って切断した断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るダイヤフラム弁の全体構成を示す断面図であって、流路を横断する方向に沿って切断した断面図である。
図3図1のフック(連結部材)の斜視図である。
図4図1のダイヤフラム、ダイヤフラム押さえ、およびフックの連結状態を示す断面説明図である。
図5】本発明の他の実施形態に係るフックの斜視図である。
図6】本発明の他の実施形態に係るダイヤフラム、ダイヤフラム押さえ、およびフックの連結状態を示す断面説明図である。
図7】本発明のさらに他の実施形態に係るダイヤフラム、ダイヤフラム押さえ、およびフックの連結状態を示す断面説明図である。
図8】従来のダイヤフラム弁におけるダイヤフラム、ダイヤフラム押さえ、およびフックの連結状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに図面を参照しながら本発明のダイヤフラム弁の実施形態についてさらに詳細に説明する。
図1~2に示されるように、ダイヤフラム弁(1)は、流路(21)、(22)を有する弁本体(2)と、ステム(4)と、上部ケース(5)と、ダイヤフラム(8)と、ダイヤフラム押さえ(3)と、ダイヤフラム(8)をダイヤフラム押さえ(3)に吊り下げるフック(9)(連結部材)とを備えている。
【0019】
弁本体(2)は、水平に延びる筒状の部材であり、上記の流路(21)、(22)と、これら流路(21)、(22)の中間に位置してダイヤフラム(8)が下方位置にあるときに当接可能な形状のシート座(23)とを有する。
【0020】
ステム(4)は、弁本体(2)に対して上下移動できるように、弁本体(2)の上部に取り付けられた上部ケース(5)に取り付けられている。
【0021】
上部ケース(5)は、弁本体(2)の上部に固定された固定部(5a)と、可動部(5b)とを有する。可動部(5b)は、アクチュエータキャップ(6)の内部に上下方向に移動自在に収納され、スプリング(7)によって常時下方へ付勢されている。固定部(5a)と可動部(5b)との間には、エアー通路(11)が形成されている。エアー通路(11)は、インレットポート(10)からエアー通路(11)に導入された空気の圧力によって可動部(5b)が上昇する。これにより、可動部(5b)に連結されたステム(4)をスプリング(7)の付勢力に抗して上昇させることが可能である。
【0022】
ダイヤフラム押さえ(3)は、ダイヤフラム(8)を下方に押圧する部材であり、ステム(4)の下端部に取り付けられ、ステム(4)とともに上下動する。
【0023】
ダイヤフラム(8)は、変形可能なシート状の部材であり、フック(9)の後述のつば部(9b)(図3~4参照)が中央部(8a)に埋め込まれるように、フック(9)と共に一体成形(例えば、インサート成形)される。
ダイヤフラム(8)は、合成樹脂や合成ゴムなどの柔軟な部材で作成され、例えば、PTFE、ブチルゴム、フッ素ゴムなどで製造される。とくに、PTFEは、強度などの面でフッ素ゴムなどと比較して優れているので好ましい。
【0024】
ダイヤフラム(8)は、流路(21)、(22)の途中に出没できるように、弁本体(2)の上壁に形成された開口を塞ぐように取り付けられている。ダイヤフラム(8)の外周部は、上部ケース(5)と弁本体(2)との間に挟まれることにより気密的に閉塞されている。
ダイヤフラム(8)は、ステム(4)の上下移動に伴って変形しながら流路(21)、(22)内部に出没することにより、弁本体(2)の流路(21)、(22)を開閉する。
【0025】
図3~4に示されるように、フック(9)は、ダイヤフラム(8)の中央部(8a)をダイヤフラム押さえ(3)の下部に連結する連結部材である。フック(9)は、ダイヤフラム(8)をダイヤフラム押さえ(3)に吊り下げた状態で連結するものであり、いわゆる吊り金具と呼ばれる。
【0026】
フック(9)は、上下方向に延びる棒状部(9a)と、棒状部(9a)の下端部に設けられたつば部(9b)とを有している。フック(9)は、例えば、棒状部(9a)およびつば部(9b)がステンレスなどの金属材料によって一体に成形されることによって製造される。
【0027】
棒状部(9a)の上部は、ダイヤフラム押さえ(3)に引掛ける様に固定されている場合と、スリーブという部品を組み込んで、ねじ込んで固定される場合とがある。例えば、図3~4に示される棒状部(9a)は、水平方向に延びる一対の突起が設けられ、これらの突起がダイヤフラム押さえ(3)に係合することにより、棒状部(9a)のダイヤフラム押さえ(3)に対する引掛りを達成しているが、他の固定構造であってもよい。
【0028】
棒状部(9a)は、上下方向に沿って配置されている。棒状部(9a)は、例えば、円柱状の棒状体であるが、他の断面(例えば矩形断面)の棒状体でもよい。
【0029】
棒状部(9a)の下端部におけるつば部(9b)の上方に位置する部分には、径内方向に凹んだくびれ部(9c)が形成されている。くびれ部(9c)は、本実施形態では、円柱状の棒状部(9a)の下端部の全周にわたって円環の溝状に形成されているが、本発明はこれに限定されない。棒状部(9a)の下端部の一部、例えば、後述するつば部(9b)の切欠き(9d)の近傍の部分にくびれ部(9c)を形成してもよい。
【0030】
つば部(9b)は、棒状部(9a)の下端部に設けられ、当該棒状部(9a)の外周面の径外方向に突出する部材である。つば部(9b)は、本実施形態では、円板形状を有しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、矩形形状や多角形形状(六角形など)であってもよい。
【0031】
さらに、本実施形態のつば部(9b)は、図3~4に示されるように、下面の中央部(8a)が下方に膨らんだ形状を有する。
なお、本発明の他の実施形態として、図5~6に示されるように、つば部(9b)の上下両面とも平坦な円板形状であってもよい。その場合も、つば部(9b)の外周縁に少なくとも1つ(図5~6では4つ)の切欠き(9d)が形成されていればよい。
【0032】
つば部(9b)の外径は、ダイヤフラム弁(1)の仕様などによって任意に設定可能であるが、例えば、小型のダイヤフラム弁(1)(例えば、ダイヤフラム(8)の外径が40~50mm程度のダイヤフラム弁(1))の場合には、φ7.2~φ7.7mmである。
【0033】
つば部(9b)の外周縁には、少なくとも1つの切欠き(9d)が形成されている。本実施形態では、4つの切欠き(9d)がつば部(9b)の外周縁に沿って等間隔に形成されている。本実施形態の切欠き(9d)は、半円形状を有しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の形状(三角形形状など)であってもよい。
【0034】
ダイヤフラム(8)の中央部(8a)には、フック(9)における棒状部(9a)の下端部およびつば部(9b)が埋設されている。
【0035】
ダイヤフラム(8)の中央部(8a)の構成材料(例えばPTFE)は、棒状部(9a)のくびれ部(9c)およびつば部(9b)の切欠き(9d)の内部に入り込んだ状態でつば部(9b)の上下両面を覆っている。
【0036】
上記のように構成されたダイヤフラム弁(1)では、図1~2に示される通常の状態では、ダイヤフラム(8)が下方位置にあり、シート座(23)に当接しており、流路(21)、(22)を閉鎖している。この閉鎖状態では、上部ケース(5)の可動部(5b)がスプリング(7)の付勢力によって下降し、それとともにステム(4)およびその下に固定されているダイヤフラム押さえ(3)も下降している。さらに、ダイヤフラム押さえ(3)によってダイヤフラム(8)が下方へ押されてシート座(23)に押し付けられた状態になっている。
【0037】
一方、流路(21)、(22)を開放する場合には、インレットポート(10)よりエアー通路(11)へ空気を所定圧力以上で送ればよい。このとき、エアー通路(11)に導入された空気の圧力により、可動部(5b)がスプリング(7)の付勢力に抗して上昇し、それとともに、ステム(4)およびダイヤフラム押さえ(3)が上昇する。さらに、ダイヤフラム押え(3)が上昇すると、フック(9)を介して吊り下げられたダイヤフラム(8)も屈曲しながら上昇し、シート座(23)から上方へ離れることによって、流路(21)、(22)が開放される。
【0038】
上記のように構成された本実施形態のダイヤフラム弁(1)は、ダイヤフラム(8)をダイヤフラム押さえ(3)の下部に連結するフック(9)を有する構成において、ダイヤフラム(8)の中央部(8a)に埋め込まれたフック(9)のつば部(9b)がダイヤフラム(8)の中央部(8a)から抜け出ることを効果的に防止し得る構造を有する。
【0039】
具体的には、フック(9)のつば部(9b)の外周面に切欠き(9d)を設けるとともに、当該フック(9)の棒状部(9a)にくびれ部(9c)が設けられている。この構造では、フック(9)における棒状部(9a)の下端部およびつば部(9b)がダイヤフラム(8)の中央部(8a)に埋設された状態では、ダイヤフラム(8)の中央部(8a)の構成材料(例えばPTFE)は、棒状部(9a)のくびれ部(9c)およびつば部(9b)の切欠き(9d)の内部に入り込んだ状態でつば部(9b)の上下両面を覆っている。その結果、ダイヤフラム(8)の中央部(8a)の構成材料は、くびれ部(9c)に入り込んだ分だけつば部(9b)の上面を覆う部分が拡大し、しかも、切欠き(9d)の内部に入り込んだ部分がつば部(9b)の上下両面を覆う部分を連結する。そのため、くびれ部(9c)に入り込んだ部分は、切欠き(9d)の内部に入り込んだ部分とつば部(9b)の外周よりも内側で連結されることにより、くびれ部(9c)から抜けにくくなる。さらに、切欠き(9d)の内部に入り込んだ部分によって、つば部(9b)とダイヤフラム(8)との相対的な回転が規制される。その結果、つば部(9b)がダイヤフラム(8)の中央部(8a)から抜け出て、ダイヤフラム(8)がフック(9)から脱落することを効果的に防止することが可能である。
【0040】
しかも、棒状部(9a)の下端部にくびれ部(9c)を設けることにより、つば部(9b)の切欠き(9d)をつば部(9b)の径内方向へ深く形成することが可能である。そのため、棒状部(9a)およびつば部(9b)の軸中心により近い位置において、ダイヤフラム(8)の中央部(8a)の構成材料におけるくびれ部(9c)に入り込んだ部分と切欠き(9d)に入り込んだ部分とを連結することが可能になる。その結果、ダイヤフラム(8)およびそれに埋め込まれるつば部(9b)の外径が小さいダイヤフラム弁(1)であっても、つば部(9b)の保持力を確実に向上させることが可能である。
【0041】
例えば、図5~6に示されるように、つば部(9b)が上下両面とも平坦な円板状であって4つの半円形の切欠き(9d)が形成され、かつ、棒状部(9a)にくびれ部(9c)を有する本発明の実施形態であるダイヤフラム弁(1)について、フック(9)がPTFE製のダイヤフラム(8)から引き抜くことに必要な荷重、すなわち、フック引き抜き荷重を検証した。なお、検証に用いられた本実施例のダイヤフラム弁(1)のフック(9)の寸法は、棒状部(9a)の直径:4.5mm、つば部(9b)の直径:7.5mm、くびれ部(9c)の直径:3mm、くびれ部(9c)の幅:2mm、半円形の切欠き(9d)の直径:2.4mmである。本実施例のダイヤフラム弁についてフックの引抜き荷重を3回測定した結果、以下の表1に示されるように、測定結果の平均値は、56.3kgfであった。
【0042】
一方、くびれ部(9c)を有しないこと以外は上記フック(9)の寸法と同じである比較例のダイヤフラム弁についてフックの引抜き荷重を3回測定した結果、以下の表1に示されるように、測定結果の平均値は、40.7kgfであった。
以下の表1の結果から明らかなように、本実施例のダイヤフラム弁(図5~6)ではフックの引抜き荷重が比較例よりも約38%向上しており、つば部(9b)の保持力が確実に向上していることが分かる。
【0043】
【表1】
【0044】
また、本実施形態のダイヤフラム弁(1)では、つば部(9b)の外径がφ7.2~φ7.7mmであっても、上記のように棒状部(9a)の下端部にくびれ部(9c)を設けることにより、つば部(9b)の切欠き(9d)を当該つば部(9b)の径内方向へ深く形成することが可能である。そのため、棒状部(9a)およびつば部(9b)の軸中心により近い位置において、ダイヤフラム(8)の中央部(8a)の構成材料におけるくびれ部(9c)に入り込んだ部分と切欠き(9d)に入り込んだ部分とを連結することが可能になる。その結果、小さいダイヤフラム(8)有し、ダイヤフラム(8)に埋め込まれるつば部(9b)の外径がφ7.2~φ7.7mm程度しか確保できない小型のダイヤフラム弁(1)であっても、つば部(9b)の保持力を容易に向上させることが可能である。そのため、食品分野等で使用される小型のダイヤフラム弁(1)を定期的に蒸気で滅菌する際に大きな引き抜き荷重がフックに作用しても、ダイヤフラム(8)がフックから脱落することを確実に防止することが可能である。
【0045】
さらに、本実施形態のダイヤフラム弁(1)では、つば部(9b)の外周縁に形成された切欠き(9d)は半円形状であり、滑らかな円弧状の内周面で構成されているので、ダイヤフラム(8)の中央部(8a)の構成材料は、円滑にかつ隙間なく切欠き(9d)内部に入り込むことが可能である。そのため、つば部(9b)の保持力を確実に向上させることが可能であり、ダイヤフラム弁(1)の性能のばらつきを抑制することが可能である。
【0046】
また、本実施形態のダイヤフラム弁(1)では、つば部(9b)の下面の中央部(8a)が下方に膨らんでいるので、ダイヤフラム(8)の閉鎖時にフック(9)が下降したときにつば部(9b)がダイヤフラム(8)の中央部(8a)に与える押圧力をつば部(9b)外周縁に集中させることなく当該中央部(8a)内部に広範囲に分散させて与えることが可能である。そのため、ダイヤフラム(8)の劣化や破損のおそれを低減することが可能である。
【0047】
なお、本発明のさらに他の実施形態として、図7に示されるように、ダイヤフラム(8)の中央部(8a)の構成材料は、フック(9)の棒状部(9a)におけるくびれ部(9c)の上方の部分を覆うのが好ましい。
【0048】
この場合、つば部(9b)の上部を覆うダイヤフラム(8)の中央部(8a)の構成材料の厚さを厚くすることが可能になり、つば部(9b)の保持力をより向上させることが可能である。
なお、図7に示されるフック(9)は、図5~6に示されるフック(9)と同じ形状であるが、図3~4に示されるフック(9)の形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、ダイヤフラムをダイヤフラム押さえに連結する連結部材を備え、連結部材のつば部がダイヤフラムの中央部に埋め込まれた構造を有するダイヤフラム弁であれば広く適用することが可能であり、ダイヤフラムが連結部材から脱落することを防止する効果を向上させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ダイヤフラム弁
2 弁本体
3 ダイヤフラム押さえ
4 ステム
5 挟持部材
6 アクチュエータキャップ
7 スプリング
8 ダイヤフラム
8a 中央部
9 フック(連結部材)
9a 棒状部
9b つば部
9c くびれ部
9d 切欠き
10 インレットポート
11 エアー通路
21、22 流路
23 シール座
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8