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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】積層体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/088 20060101AFI20220328BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20220328BHJP
   H01M 50/10 20210101ALI20220328BHJP
【FI】
B32B15/088
B32B15/20
H01M50/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017157399
(22)【出願日】2017-08-17
(65)【公開番号】P2019034476
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴田 健太
(72)【発明者】
【氏名】山田 宗紀
(72)【発明者】
【氏名】繁田 朗
(72)【発明者】
【氏名】越後 良彰
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-213397(JP,A)
【文献】特開2007-246680(JP,A)
【文献】特開2005-297448(JP,A)
【文献】特開2000-067823(JP,A)
【文献】特開2005-171125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01M 50/00-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム箔の表面にポリアミドイミド(PAI)被膜が形成された積層体であって、PAIは、カルボン酸成分としてダイマー酸を用いた共重合PAIであり、ダイマー酸の共重合比率は、全カルボン酸成分に対し、0.5モル%以上、7モル%以下であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
請求項1記載の積層体のリチウムイオン二次電池(LiB)外装用部材への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池(LiB)の外装用部材等に好適に使用される積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
LiBは、例えば、携帯電話、ノート型パソコン、ビデオカメラ、衛星、電気自動車等の分野で広く用いられている。LiBは、電極(正極および負極)、電解液、セパレータからなるLiBセル本体と、これらを包装するタブ端子、セル収納部材等の外装用部材とから構成されている。
【0003】
これらLiB用外装部にはアルミニウム(Al)箔が多用されている。 このAl箔には、耐電解液性、耐HF性等の厳しい信頼性が要求される。ここで、HFは、吸湿等により電解液中に微量残留している水により、LiPF等の電解質が加水分解して生じるものである。そのため、Al箔表面にこれを腐食等から保護するための樹脂被膜を設ける方法が提案されている。例えば、特許文献1にはキトサンからなる被膜をAl箔表面に設けた積層体が提案されている。また、特許文献2には、変性PVAからなる被膜をAl箔表面に設けたAl積層体が提案されている。
【0004】
これらキトサンや変性PVAからなる被膜は、耐熱性に乏しいという問題があった。そこで、特許文献3,4には、耐熱性に優れたポリアミドイミド(PAI)からなる被膜をAl箔表面に設けたPAl積層体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-202577号公報
【文献】国際公開2012/128026号
【文献】特開2005-297448号公報
【文献】特開2016-126942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記文献に開示されたPAI被膜が形成されたAl積層体は、Al箔に対する接着性に乏しく、例えば、LiBの外装用部材等として使用された際の接着信頼性に欠けるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明は、前記課題を解決するものであって、Al箔に対する接着強度が高く、接着信頼性に優れた積層体の提供を目的とする。
【0008】
本発明者らは、PAIの化学構造を特定のものとすることで、前記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
本発明は下記を趣旨とするものである。
(1) Al箔の表面にPAI被膜が形成された積層体であって、PAIは、カルボン酸成分としてダイマー酸を用いた共重合PAIであることを特徴とする積層体。
(2) 前記積層体のLiB外装用部材への使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明のAl箔上にPAI被膜が積層された本発明の積層体は、接着信頼性に優れ、良好な耐電解液性を有するので、LiB外装用部材等として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
PAIは、主鎖にイミド結合とアミド結合の両方を有する高分子であり、固有粘度が0.5dl/g以上であり、かつガラス転移温度(Tg)が150℃以上であるものが、耐熱性や強度の点で好ましい。
【0013】
本発明のPAI被膜で用いられるPAIは、カルボン酸成分としてダイマー酸を用いた共重合PAIである。このようなPAIは、公知のPAIであり、例えば、特開平11-21454号公報に記載されている方法により得ることができる。すなわち、カルボン酸成分であるトリメリット酸無水物(TMA)およびダイマー酸と、ジイソシアネートとを重合溶媒に溶解して加熱撹拌して重合反応を進めることにより得ることができる。カルボン酸成分とジイソシアネートとは、通常、等モルを用いることにより重合反応するが、必要に応じ、一方の成分を多少増減させてもよい。重合温度は、通常50℃~220℃であり、80℃~200℃が好ましい。
【0014】
PAIの重合に際しては、例えば、トリエチルアミン、ルチジン、ピコリン、トリエチレンジアミン等のアミン類、リチウムメトキサイド、ナトリウムメトキサイド、カリウムブトキサイド、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属化合物等、触媒の存在下に行ってもよい。
【0015】
PAIの重合に用いられるカルボン酸成分としては、TMAおよびダイマー酸が用いられるが、TMAは、その一部を他の多価カルボン酸無水物に置換えることができる。多価カルボン酸無水物の具体例としては、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3′,4,4′-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、3,3′,4,4′-ジフェニルテトラカルボン酸無水物、4,4′-オキシジフタル酸無水物等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
ダイマー酸は、炭素数が36の飽和または不飽和のジカルボン酸を主として含むジカルボン酸の混合物であり、市販品を用いることができる。市販品の具体例としては、クローダジャパン社製の「PRIPOL」、ハリマ化成株式会社製の「ハリダイマー」、BASFジャパン社製の「EMPOL」、築野食品化学工業社製の「ツノダイム」等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
ダイマー酸の共重合比率は、全カルボン酸成分に対し、0.1モル%以上、30モル%以下とすることが好ましく、0.5モル%以上、20モル%以下とすることがより好ましい。このようにダイマー酸を共重合することにより、Al箔との強固な接着性を確保することができる。
【0018】
ジイソシアネートの具体例としては、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4′-ジアミノジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を挙げることができ、MDIが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
PAIの重合は、アミド系溶媒、尿素系溶媒中で行うことが好ましい。アミド系溶媒の具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)等を挙げることができる。また、尿素系溶媒の具体例としては、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素、ジメチルエチレン尿素、ジメチルプロピレン尿素等を挙げることができる。これらの中で、NMPおよびDMAcが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
前記のようにして得られたPAI溶液には、フィラを配合することができる。フィラの種類に制限は無く、有機フィラ、無機フィラおよびその混合物等を用いることができる。有機フィラの具体例としては、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単独重合体または2種類以上の共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン-エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等の重合体からなる粒子を挙げることができる。有機フィラは、単独または2種以上を混合して用いることができる。無機フィラの具体例としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩等の無機物からなる粒子を挙げることができる。具体例としては、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、硫酸バリウムまたは炭酸カルシウム等からなる粉体を挙げることができる。無機フィラは、単独または2種以上を混合して用いることができる。フィラの平均粒子径に制限はないが、0.01μm以上、2μm以下であることが好ましい。平均粒子径はレーザ回折散乱法に基づく測定装置により測定することができる。
【0021】
PAI溶液には、各種カップリング剤(シラン系、アルミネート系、チタネート系、ジルコネート系等)を配合して接着性を向上させることができる。
【0022】
シラン系カップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、n-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピル-メチル-ジエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピル-トリス(2-メトキシ-エトキシ-エトキシ)シラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノプロピル-トリメトキシシラン、3-4,5-ジヒドロイミダゾールプロピルトリメトキシシラン、3ーメタクリロキシプロピル-トリメトキシシラン、3-メルカプトプロピル-メチルジメトキシシラン、3-クロロプロピル-メチル-ジメトキシシラン、3-シアノプロピル-トリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、アミルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニロトリエトキシシラン、メチルトリ(メタクリロイルオキエトキシ)シラン、メチルトリ(グリシジルオキシ)シラン、N-β(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、γ-クロロプロピルメチルジクロロシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジエトキシシラン、トリメチルシリルイソシアネート、ジメチルシリルイソシアネート、メチルシリルトリイソシアネート、ビニルシリルトリイソシアネート、フェニルシリルトリイソシアネート、テトライソシアネートシラン、エトキシシランイソシアネート等を挙げることができる。単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
アルミネート系カップリング剤の具体例としては、例えば、アルミニウムキレート化合物(エチルアセトアセテートアルミニウム-ジイソプロピレート等のアルキルアセトアセテートアルミニウム-ジイソプロピレート、アルミニウム-トリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム-モノアセチルアセトネート-ビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム-トリス(アセチルアセトネート)、アルミニウム-モノイソプロポキシ-モノオレオキシエチルアセトアセテート、アルミニウム-ジ-n-ブトキシド-モノエチルアセトアセテート、アルミニウム-ジ-イソプロポキシド-モノエチルアセトアセテート等)、アルミニウムアルコレート(アルミニウムイソプロピレート、モノ-sec-ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウム-sec-ブチレート、アルミニウムエチレート等)等を挙げることができる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
チタネート系カップリング剤の具体例としては、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(n-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタンチリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、テトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テトラプロピルオルソチタネート、テトライソブチルオルソチタネート、ステアリルチタネート、クレシルチタネートモノマー、クレシルチタネートポリマー、ジ-イソプロポキシ-ビス-(2,4-ペンタジオネート)-チタニウム(IV)、ジ-イソプロピル-ビス-トリエタノールアミノ-チタネート、オクチレングリコールチタネートHV、テトラ-n-ブトキシチタンポリマー、トリ-n-ブトキシチタンモノステアレートポリマー、トリ-n-ブトキシチタンモノステアレート等を挙げることができる。単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
ジルコネート系カップリング剤の具体例としては、テトラプロピルジルコアルミネート、テトラブチルジルコネート、テトラ(トリエタノールアミン)ジルコネート、テタライソプロピルジルコネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ジルコニウムラクテート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート等を挙げることができる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
前記カップリング剤の配合量は、PAI質量に対し、0.01~5重量%とすることが好ましい。
【0027】
PAI溶液には、必要に応じて、界面活性剤、レベリング剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
【0028】
PAI溶液には、必要に応じて、PAI以外のポリマーを、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
【0029】
PAI溶液を、Al箔の表面に塗布後、乾燥してPAI被膜を形成することにより本発明の積層体とすることができる。PAI溶液のAl箔への塗布方法としては、ディップコータ、バーコータ、スピンコータ、ダイコータ、スプレーコータ等を用い、連続式またはバッチ式で塗布することができる。乾燥工程における乾燥温度の上限値に制限は無いが、200℃以下とすることが好ましく、180℃以下とすることがより好ましい。また、PAI被膜は、耐熱性に優れるので、乾燥後、200℃以上の温度、例えば、250℃程度で熱処理を行ってもよい。
【0030】
Al箔は、一般の軟質Al箔を用いることができる。Al箔の厚みに制限はないが、通常9~200μm程度であり、15~50μmが好ましい。
【0031】
Al箔は、公知の化成処理、脱脂処理が行われたものも用いることもできる。化成処理としては、例えば、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理、塗布型クロメート処理等のクロム系化成処理、ジルコニウム、チタン、リン酸亜鉛等の非クロム系(塗布型)化成処理等を挙げることができる。脱脂処理としては、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法等を挙げることができる。
【0032】
PAI被膜の厚みに制限はないが、通常、0.5~50μm程度であり、1~20μmが好ましい。
【実施例
【0033】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお本発明は実施例により限定されるものではない。
【0034】
<実施例1>
特開平11-21454号公報、実施例の記載に準拠して、ダイマー酸を含む共重合PAI溶液を調製した。すなわち、ガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、TMA:0.97モル、ダイマー酸(クローダジャパン社製、商品名:PRIPOL1009):0.03モル、 MDI:1.0モル、NMPを投入して攪拌した。得られた溶液を、120℃で2時間反応させた後、180℃に昇温して6時間反応させることにより固形分濃度が15質量%のPAI溶液(A-1)を得た。L-1を、脱脂処理した軟質Al箔(東洋アルミ社製、厚み30μm)上に、ドクターブレードを用いて塗布し、150℃で30分乾燥することにより、Al箔上に積層された厚み5μmのPAI皮膜が形成された積層体(L-1)を得た。L-1の接着性をJIS K5600-5-6(第5部第6節クロスカット法)に準拠して測定した。すなわち、被膜面に、縦方向、横方向に1mmの間隔で6本、カッターナイフで切り込みを入れ、格子が25個の格子パターンを10箇所(格子の目の総数は250)作成した。 次に、これらの格子パターン各々について、セロテープ(登録商標)を用いて剥離試験を行い、格子の目の剥がれ箇所、塗膜の剥がれ箇所を目視で検査し、剥がれ箇所の数(n箇所)/格子の目の総数(250)の割合で評価した。L-1の剥がれ箇所は0/250であり、良好な接着性が確認された。また、L-1を折り曲げた所、ひび割れ等は発生しなかった。次に、PAI被膜の耐電解液性の評価を行った。すなわち、PAI被膜表面に、微量の水(100ppm)を添加した電解液(溶媒:エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/ジエチルカーボネート=1:1:1(質量比)、電解質:1MのLiPF)を滴下し、24時間放置後イソプロピルアルコールで拭き取った。その後、滴下箇所の外観を観察した結果、電解液を滴下した箇所は認識できず、L-1は良好な耐電解液性を有していることが判った。
【0035】
<実施例2>
TMA:0.95モルと、ダイマー酸:0.05モルとを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、PAI溶液(A-2)を得た。A-2を用い、実施例1と同様にして、Al箔上に積層された厚み5μmのPAI皮膜が形成された積層体(L-2)を得た。L-2の接着性を実施例1と同様して評価した所、L-2の剥がれ箇所は0/250であり、良好な接着性が確認された。また、L-2を折り曲げた所、ひび割れ等は発生しなかった。
さらに、実施例1と同様にして、耐電解液性を評価した所、電解液を滴下した箇所は認識できず、L-2は良好な耐電解液性を有していることが判った。
【0036】
<実施例3>
TMA:0.93モルと、ダイマー酸:0.07モルとを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、PAI溶液(A-3)を得た。A-3を用い、実施例1と同様にして、Al箔上に積層された厚み5μmのPAI皮膜が形成された積層体(L-3)を得た。L-3の接着性を実施例1と同様して評価した所、L-3の剥がれ箇所は0/250であり、良好な接着性が確認された。また、L-3を折り曲げた所、ひび割れ等は発生しなかった。
さらに、実施例1と同様にして、耐電解液性を評価した所、電解液を滴下した箇所は認識できず、L-3は良好な耐電解液性を有していることが判った。
【0037】
<実施例4>
Al箔上に積層されたPAI皮膜の厚みを3μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、Al箔上にPAI皮膜が形成された積層体(L-4)を得た。L-4の接着性を実施例1と同様して評価した所、L-4の剥がれ箇所は0/250であり、良好な接着性が確認された。また、L-4を折り曲げた所、ひび割れ等は発生しなかった。さらに、実施例1と同様にして、耐電解液性を評価した所、電解液を滴下した箇所は認識できず、L-4は良好な耐電解液性を有していることが判った。
【0038】
<比較例1>
カルボン酸成分としてTMAのみを1.0モル用いたこと以外は、実施例1と同様にして、PAI溶液(B-1)を得た。B-1を用い、実施例1と同様にして、Al箔上に積層された厚み5μmのPAI皮膜が形成された積層体(R-1)を得た。R-1の接着性を実施例1と同様して評価した所、R-1の剥がれ箇所は16/250であり、接着性としては不十分であった。また、R-1を折り曲げた所、ひび割れが発生した。さらに、実施例1と同様にして、耐電解液性を評価した所、電解液を滴下した箇所に輪郭が発生し、R-1の耐電解液性は不十分であった。
【0039】
<比較例2>
PAI溶液としてB-1を用い、Al箔上に積層されたPAI皮膜の厚みを3μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、Al箔上にPAI皮膜が形成された積層体(R-2)を得た。R-2の接着性を実施例1と同様して評価した所、R-2の剥がれ箇所は7/250であり、接着性としては不十分であった。また、R-2を折り曲げた所、ひび割れが発生した。さらに、実施例1と同様にして、耐電解液性を評価した所、電解液を滴下した箇所は認識できず、電解液を滴下した箇所に輪郭が発生し、R-2の耐電解液性は不十分であった。
【0040】
実施例、比較例で示したように、本発明の積層体は、接着信頼性に優れるので、良好な耐電解液性を有していることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0041】
Al箔上にPAI被膜が積層された本発明の積層体は、接着信頼性に優れ、良好な耐電解液性を有しているので、LiB外装用部材等として好適に使用することができる。