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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】折戸
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/48 20060101AFI20220328BHJP
   E06B 7/36 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
E06B3/48
E06B7/36 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018008619
(22)【出願日】2018-01-23
(65)【公開番号】P2018131896
(43)【公開日】2018-08-23
【審査請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2017025064
(32)【優先日】2017-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】300051526
【氏名又は名称】有限会社静岡フスマ商会
(74)【代理人】
【識別番号】100130281
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 道幸
(72)【発明者】
【氏名】中山 広海
(72)【発明者】
【氏名】中山 道江
(72)【発明者】
【氏名】中山 恵豪
(72)【発明者】
【氏名】中山 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】井田 大
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-296364(JP,A)
【文献】実開昭59-152093(JP,U)
【文献】国際公開第2011/111696(WO,A1)
【文献】特開2014-058687(JP,A)
【文献】特開2011-038005(JP,A)
【文献】特開平10-259268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/48
3/54-3/88
7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折りたたみ自在に連結された折戸の折戸構成部材が、
折戸本体と、
前記折戸本体の側端部の上下方向に渡って取り付けられた弾性部材と、
前記折戸本体及び前記弾性部材を覆うように巻回されて被覆されたクロスと、
が設けられており、
前記弾性部材が、
硬度(ゴム硬度Cタイプ(Asker-C))20~55であり、
圧縮永久歪率13~16%である、
ことを特徴とする凹み復元性に優れた折戸。
【請求項2】
前記折戸構成部材の側端部途中から表側にかけて形成された面取部と、
前記側端部と、
の境界に上下方向に渡り形成される面取部エッジラインが、
直条であることを特徴とする、請求項1に記載の凹み復元性に優れた折戸。
【請求項3】
前記クロスが壁紙で、
前記弾性部材が、硬度(ゴム硬度Cタイプ(Asker-C))30~40であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の凹み復元性に優れた折戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折りたたみ自在に連結された折戸に関し、折りたたみ時において指挟みがあった場合でも凹みあとの復元性に優れ、指あとを目立たなくして折戸の外観の見栄えを良好にした凹み復元性に優れた折戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内の収納等では襖などの引き戸が多く用いられてきたが、近年、一般住宅では洋式の住宅が多くなり、折戸が使われるようになった。
折戸は、上ガイドレールに吊り下げられ、二枚の扉体の側端部31同士を蝶番で連結した折りたたみ式の扉であり、開放時に扉体が重ならずに開口部が広く取れ、開状態において収納物の確認や出し入れが容易であることから、クローゼット等の収納用の扉や、部屋間の可動間仕切りなどとして広く用いられている。
【0003】
しかしながら、折戸には以上のような利点があるものの、折戸本体の側端部裏側に蝶番が取り付けられているので、前側に平面形状V字状に折れて開いた折戸を、折戸構成部材の、蝶番近傍の部分を押して閉じる際に、折戸本体の側端部に指が触れた状態で折戸を閉状態にすると、左右の折戸構成部材の隙間に指が挟まれて、指を怪我するという問題があった。特に幼児は折戸本体の側端部間に挟まれるおそれが大きい。
【0004】
このような折戸の指挟みの危険性に鑑み、(社)日本建材・住宅設備産業協会からは「内装用折戸の製品安全指針」が示されており、許容値として扉体の側端部同士の隙間を常に指が入らない5ミリ未満とするか、指のサイズよりも大きい13ミリ以上とすることが求められており、この指針に従った、いくつかの折戸が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1~3には、折戸本体の側端部表側に面取部を設けて、指を挟んでしまう折戸本体の側端部を最小とすることが記載されている。
【0006】
また、特許文献4~6には、折戸が閉状態となった際に生じる隙間を覆う板状、蛇腹状その他の覆い部材を、折戸本体の側端部が完全に覆われるように取付けて、隙間に指先が入り込まないようにする方法が記載されている。
特許文献7には、蝶番によって2つ折り自在に連結された左右一対の折戸構成部材の少なくとも一方が、折戸本体と、この折戸本体の、蝶番側の側部に上下に渡って設けられた弾性部材とを有している折戸が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開平06-065594号公報
【文献】実開昭52-005452号公報
【文献】実公昭48-024679号公報
【文献】特開2010-007427号公報
【文献】特開平08-013933号公報
【文献】特開平08-270313号公報
【文献】特開平08-296364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、先行技術文献に記載された折戸には以下のような問題点があった。
例えば、特許文献1~3に記載されたような大きな面取部を有する扉は、折戸本体の側端部のうち面取されずに残された部分は、相変わらず指を挟む危険性を有したままであり、完全な指挟み防止効果までは期待できない。
【0009】
特許文献4~6に記載されたような扉は、設置された以外の部分は危険なままの状態である。
また、特許文献7に記載された折戸は、折戸本体101の蝶番102側の側端部に弾性部材103を有しているが、このような弾性部材103間で、指105を挟むと、図4(a)~(c)に説明するように、弾性部材103の側端部107に指のあと106が形成され、時間が経過しても復元せず、いつまでも凹んだままの状態が持続するため、折戸の見栄えが悪くなる。
【0010】
そこで、本発明は、折りたたみ時において、指挟みがあった場合でも指に与える衝撃を軽減するとともに、指挟みで凹んだ指あとを早期に復元して目立たなくして、折戸の外観の見栄えを良好にした折戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の凹み復元性に優れた折戸は、以下のように構成される。
(1)折りたたみ自在に連結された折戸の折戸構成部材が、
折戸本体と、
前記折戸本体の側端部の上下方向に渡って取り付けられた弾性部材と、
前記折戸本体及び前記弾性部材を覆うように巻回されて被覆されたクロスと、
が設けられており、
前記弾性部材が、
硬度(ゴム硬度Cタイプ(Asker-C))20~55であり、
圧縮永久歪率13~16%である、
ことを特徴とする。
(2)上記(1)の凹み復元性に優れた折戸において、
前記折戸構成部材の側端部途中から表側にかけて形成された面取部と、
前記側端部と、
の境界に上下方向に渡り形成される面取部エッジラインが、
直条であることを特徴とする。
(3)上記(2)の凹み復元性に優れた折戸において、
前記クロスが壁紙で、
前記弾性部材が、硬度(ゴム硬度Cタイプ(Asker-C))30~40であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以下の効果を奏するものである。
すなわち、折戸の側端部で指が挟まれた場合において、指に与える衝撃を軽減するとともに、指挟みで凹んだ指あとを早期に復元して、側端部に形成された指あとを目立たなくして、折戸の外観の見栄えを良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る折戸の正面図である。
図2図1の折戸構成部材のA-A断面図である。
図3】実施形態に係る折戸の端部構造を示す概略断面図である。
図4】従来の折戸の問題点を示す概略断面図である。
図5】実施例1において製造した折戸の弾性部材の側端部間に指を挟んで凹部を発生させ、その凹部の復元状態を観察し、凹部を発生させてから復元までの時間経過をみた説明図である。
図6】比較例において製造した折戸の弾性部材の側端部間に指を挟んで凹部を発生させ、その凹部の復元状態を観察し、凹部を発生させてから復元までの時間経過をみた説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態に係る折戸を説明する。
<全体構成>
図1は、本発明の実施形態1に係る折戸の正面図であり、図2は、図1のA-A断面図である。
図示するように、実施形態1の折戸10は、その側端部31同士が蝶番15で連結されている2枚の折戸構成部材(第一折戸構成部材11と第二折戸構成部材12)と、
その側端部31同士が蝶番15で連結されている2枚の折戸構成部材(第三折戸構成部材13と第四折戸構成部材14)と、を備え、
クローゼットなどの開口部の上下端に渡された上下一対のガイドレール51,52に折りたたみ自在に取付けられている。
【0015】
また、第一及び第四折戸構成部材11,14には、その上下端部に、それぞれ、上ボルト11a及び下ボルト11b、上ボルト14a及び下ボルト14bが埋め込まれており、上下ガイドレール51、52内に旋回自在に吊元固定されている。
また、第二及び第三折戸構成部材12,13には、その上下端部に、それぞれ、上ランナー12a及び下ランナー12b、上ランナー13a及び下ランナー13bが埋め込まれており、上下ガイドレール51、52内にスライド自在に吊持されている。
【0016】
本実施形態に係る折戸10は、第一及び第二折戸構成部材11,12を蝶番15を回動軸として折りたたんだ状態(第一及び第二折戸構成部材11,12の裏側が対向した状態(開口部を開いた開状態))と、蝶番15を回動軸として折戸10を伸ばした状態(開口部を閉めた閉状態)とを、繰り返し動作できるようになっている。
第三及び第四折戸構成部材13,14についても同様に、動作できるようになっている。
【0017】
<蝶番>
以下、本実施形態の折戸を詳細に説明するが、折戸構成部材のうち、第一折戸構成部材11及び第二折戸構成部材12の二枚の折戸構成部材を例にとって説明する。
まず、蝶番15について説明する。
蝶番15は、第一折戸構成部材11と第二折戸構成部材12とを連結するため、それぞれの裏側に上下三段(3個)取り付けられている。
蝶番15の第一折戸構成部材側本体部15aが第一折戸構成部材11の裏側に、第二折戸構成部材側本体部15bが第二折戸構成部材12の裏側に、それぞれビス等によって取付けられている。
第三折戸構成部材13と第四折戸構成部材14との連結についても同様に蝶番が取り付けられている。
【0018】
<折戸構成部材>
前記第一折戸構成部材11乃至第四折戸構成部材14は、折戸構成部材の芯部を構成する折戸本体20と、この折戸本体20の側端部31に上下に渡って設けられた弾性部材30と、これらを被覆するクロス40と、を備えている。
【0019】
<折戸本体>
折戸を構成する折戸本体20としては、パーティクルボード、MDF、合板等の木質系素材などが挙げられる。
なお、クロス材との接合性を強化するため、折戸本体20の表側及び裏側にベニヤやMDF、板紙、等の板材を積層してもよい。
折戸本体20の厚みとしては25~30mm程度のものが好ましいが、その厚みは、仕様によって適宜決定される。
【0020】
<弾性部材>
弾性部材30は、図3(a)、(b)に示すように、折戸本体20の側端部31に上下に渡って設けられており、前方にV字状に折れて開いた折戸を、折戸構成部材11,12,13,14の表側18を押して閉じる(伸ばす)際に、左右の折戸構成部材の間に誤って指を詰めても、弾性部材30が変形して指を強く圧迫しない効果を有する。
このため、弾性部材30は、指を挟んだ場合には容易に変形するが、指を除いた後は自らの弾性作用によって元の形状に復元する程度の復元力を備えていることが望ましい。
【0021】
<発泡体>
このため、弾性部材30としては、クッション性のある発泡体(例えば発泡プラスチック)が好ましく適用される。
発泡プラスチックは、合成樹脂中にガスを細かく分散させ、発泡状(フォーム)または多孔質形状に成形されたものを指す。
発泡プラスチックは、基本的には原料である合成樹脂の特性を引き継いでいるが、泡を含まない合成樹脂成形品(ソリッド)と比較すると柔らかくなり、緩衝性や復元性に優れる。
【0022】
<発泡倍率>
また、発泡体として、以下の特性を備えるものが好ましく適用される。
発泡倍率は、ソリッドと比較して同じ質量の発泡プラスチックが何倍の体積となったか、すなわち発泡プラスチックの見掛け密度を発泡前の合成樹脂の密度で割った値をいう。
発泡倍率が高いほど発泡プラスチックはソリッドと異なる性質を有するが、本発明の弾性部材30では、発泡倍率を特に規定するものではない。
【0023】
<発泡プラスチックの原料>
発泡プラスチックの原料としては、ゴム、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリオレフィン(主にポリエチレンやポリプロピレン)が挙げられ、その他、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、ユリア樹脂、シリコーン、ポリイミド、メラミン樹脂なども用いることができる。
市販されている発泡プラスチック素材としては、例えば、(株)イノアックコーポレーション製の発泡材(登録商標:ゴムスポC-4305、C-4505,C-4500,C-4555,4600等)が好ましく挙げられる。
【0024】
<硬度>
また、発泡体は、折戸本体20と一体化した後に、斜め方向に面取した面(面取部17)と、弾性部材と、の境界を形成する面取部エッジラインをきれいに見せるために所定の硬度が必要である。
また、クロスを巻回した後の面取部エッジラインがきれいに露出されるようにするためにも所定の硬度が必要である。
弾性部材の硬度としては、ゴムスポンジ硬度計(ゴム硬度CタイプAsker-C)を用いて、その値が20~55の範囲とすることが好ましい。
ゴム硬度Cタイプで20未満であると軟らか過ぎて、斜めの面取り加工において、面取部17の切断面が荒れる。
一方、ゴム硬度Cタイプで55を超えると硬くなり過ぎて、指を挟んだ場合の痛みが大きくなるから好ましくない。
【0025】
<圧縮永久歪率>
また、弾性部材に形成された指のあとが消えるためには、弾性部材の性質として、復元力(回復力)が必要である。
復元力とは、もとの形状に復元する(回復)ための性質である。
弾性部材が指で圧縮された後において、指のあとがどの程度の時間で消えるかを評価するため、圧縮永久歪率を規定する。
すなわち、一般に、永久歪みは,材料の荷重を負荷した後,荷重を除去したときに材料に残った歪みのことを指す。
弾性体ならば,荷重を負荷しても塑性変形しないので、荷重を除去すれば残留歪みは「ゼロ」になるが、実際には、荷重を取り除いても元の寸法にはもどらない。これが永久歪みである。
例えば、圧縮荷重を弾性部材に与えると、ある範囲までであれば、荷重を取り除いたときに元の長さに戻るが、ある程度以上の荷重を与えると,弾性部材が塑性変形を起こしてしまって、荷重を取り除いても元の長さには戻らない。
この「縮んだ分」が圧縮永久歪みに相当する。
圧縮永久歪率の測定はASTM-D-1056によって行う。
試験片は厚さ12.5mm(相対する面が平行であること)、直径35.7mmの円柱状のものを3個用意する。
初期厚さ(t0)を測定し、圧縮率が初期厚さの25%になるようなスペーサー(t2)を選択して、
圧縮装置とともに、あらかじめ試験室内に放置し試験温度にする。
初めの厚さから25%ひずんだ状態に圧縮し、温度23℃±2℃において22時間放置する。
圧縮装置より取り外し、室温にて24時間後の厚さ(t1)を測定して圧縮永久歪率(CS)とする。
CS={(t0-t1)/(t0-t2)}×100(%)
ここで、
CS:圧縮永久歪率(%)
t0:試験片の初期厚さ(mm)
t1:試験片を圧縮装置より取り出し、24時間後の厚さ(mm)
t2:使用したスペーサーの厚さ(mm)
本発明の弾性部材の圧縮永久歪率は、16%以下とすることが望ましい。
圧縮永久歪率が16%を超える場合は、圧縮による残留歪みが大きく、凹み箇所の原形への復元性に欠けるからである。
なお、圧縮永久歪率の範囲の下限値は、復元性の観点からは0%が望ましいが、材料の入手の困難性や経済上メリットの観点も考慮した。また、圧縮永久歪率の小さい数値のものは硬度が上昇するという点も鑑みて、入手が容易な13%を下限値とした。
よって、圧縮永久歪率は13%~16%の範囲にあることとする。
なお、弾性部材30を折戸本体20に接合するために、エチレン酢酸ビニル樹脂系ホットメルトなどの接着剤(製造メーカー:(株)大響(製品名アイメルト))を用いることが好ましい。
【0026】
<クロス>(壁紙)
クロス40は、折戸本体20及び弾性部材30の表側を覆うようにして巻回されている。
クロス40としては、可擁性を有する壁紙や、塩化ビニル等の樹脂フィルムが挙げられる。
厚み0.1~1mm程度の薄い肉厚のクロスが好ましく適用できる。
切戸本体20にクロス40を被覆することによって、デザイン付与、清掃の容易性、抗菌処理などの機能付与などの効果を奏することができる。
クロス40は、2枚のシートを重ねて構成したものであってもよい。
クロス40は、複数の種類の異なるシートを積層したものでもよい。
抗菌性や汚れ除去容易性を持ったシートも用いることができる。
市販されているクロス40としては、例えば、(株)サンゲツ製の塩化ビニル樹脂系壁紙(SP系、FE系、繊維系、ガラス繊維、水酸化アルミニウム含有)などを用いることができる。
【0027】
<接着剤>
クロスを折戸本体20や弾性部材30の表側に強く被覆するために、クロスにもともと塗布されている接着剤に重ねて、さらに以下の接着剤をクロスの裏全体に塗布することが好ましい。
重ね塗布する接着剤としては、エチレン酢酸ビニルエマルジョンなどを素材とするものなどが好ましく用いられる。
例えば、ヤヨイ化学工業(株)のプラゾールSS(エチレン酢酸ビニルエマルジョン)が挙げられる。
また、ウォールボンド工業(株)の壁紙施工用でん粉系接着剤2種1号も好ましく用いられる。
【0028】
<面取部エッジライン>
実施形態1の折戸本体20の側端部31には、上下方向に面取部エッジライン16が形成されている。
側端部31とは、折戸が開かれたとき、隣接する折戸構成部材11に取り付けられる弾性部材30どうしが接触状態になる面をいう。
図3(a)に示すように、面取部エッジライン16とは、折戸構成部材11に取り付けられる弾性部材30の側端部31の途中から表側18にかけて形成された面取部17と、折戸本体の側端部31と、の境界(平面どうしの交叉で形成される境界線)において、上下方向に渡り形成される直条(まっすぐな一本線)をいう。
この面取部エッジライン16が、直条(直線)として折戸の表側18に明確に露出されることにより、折戸の見栄えが格段に良くなる。
すなわち、折戸構成部材11に弾性部材30を取り付けて、その周囲をクロス40を巻回すと、クロス40を被覆する際に弾性部材30を押さえつけるようになるので、弾性部材30の面取部エッジライン16の箇所が湾曲化して丸みを帯びるようになるのである。
このような丸みを帯びた面取部エッジライン16を、クロス40を被覆した後の弾性部材30を折戸本体20の正面から見ると、第一折戸構成部材11と弾性部材30との境界線が直条として明確には現れないので、折戸全体としての見栄えが悪くなる。
これに対し、本発明の折戸は、上下方向に渡って形成される面取部エッジライン16を、折戸本体20の弾性部材を特定の構成としたので、直条が明確に現れて、正面から見た折戸の外観の見栄えを良くするという効果がある。
【0029】
<実施形態2>
<空洞>
図3(c)、(d)に示すように、弾性部材30は、内部に空洞30aを有するものでもよい。
この場合は、弾性部材の変形や形状回復がより容易となる。
【実施例1】
【0030】
第一折戸構成部材11乃至第四折戸構成部材14を、以下の仕様で作成した。
折戸構成部材の芯部を構成する折戸本体として、MDFを表側に積層して厚み25mmとした。
この折戸本体の両側端部31に、上下に渡って厚み10mmの弾性部材を接合した。
弾性部材としては、クロロプレンゴム((株)イノアックコーポレーション製の発泡材ゴムスポ(登録商標)C-4555)を用いた。
ゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で50であった。
圧縮永久歪率は、14.2%であった。
ドア加工専用機の刃物(鋸)等を用いて弾性部材及び折戸本体を斜めカットして面取部17を作成して、図3(a)に示すような形状にした。
その後、クロスとして(株)サンゲツ製の塩化ビニル樹脂系壁紙(SG6002)を、弾性部材及び折戸本体の周囲に巻き回して、折戸構成部材を製造した。
第一折戸構成部材11と第二折戸構成部材12のそれぞれの裏側に蝶番を取り付け連結した。
同じく、第三折戸構成部材13と第四折戸構成部材14のそれぞれの裏側に蝶番を取り付け連結した。
次に、これら4枚の折戸構成部材を、上ガイドレール51及び下ガイドレール52の取り付けて折戸とした。
【0031】
<実施例1の評価>
実施例1では、弾性部材のゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で50であったが、指挟みの痛さは感じなかった。
指挟みで形成された凹みの復元状況について以下に記する。
図5は、実施例1において製造した折戸の弾性部材の側端部31間に指を挟んで凹部を発生させ、その凹部の復元状態を観察した説明図であり、凹部を発生させてから復元までの時間経過をみたものである。
図5の1~4に示すように、折戸の隙間に3秒間指を挟んで、弾性部材間に凹みを発生させた。
1分15秒経過後には凹みが消滅し、原形に復元した。
次に、図5の5~8に示すように、折戸の隙間に6秒間、指を挟んで凹みを発生させた。
2分11秒経過後には凹みが消滅し、原形に復元した。
次に、図5の9~12に示すように、折戸の隙間に10秒間、指を挟んで、目視で確認できる(大きな)凹みを発生させた。
4分49秒経過後には、指先でさわらないと確認できない程度の僅かな凹みとなった。
その後、1日経過すると凹みは消滅し、原形に復元した。
【実施例2】
【0032】
弾性部材として、クロロプレンゴム((株)イノアックコーポレーション製の発泡材ゴムスポ(登録商標)C-4505)を用いた。
弾性部材はゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で37であり、圧縮永久歪率は、14.2%であった。
それ以外は、実施例1と同様にして折戸とした。
【0033】
<実施例2の評価>
実施例2において製造した折戸の弾性部材の側端部31間に指を挟んで凹部を発生させ、その凹部の復元状態を観察した。
実施例2では、弾性部材のゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で37であったため、指挟みでは痛さを感じなかった。
また、折戸の隙間に10秒間指を挟んで、側端部31間に凹みを発生させた。
約5分経過後には僅かな凹みが残っていたが、1日経過すると凹みは消滅して、原形に復元した。
【実施例3】
【0034】
弾性部材として、クロロプレンゴム((株)イノアックコーポレーション製の発泡材ゴムスポ(登録商標)C-4500)を用いた。
ゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で45であった。
圧縮永久歪率は、13.7%であった。
それ以外は、実施例1と同様にして折戸とした。
【0035】
<実施例3の評価>
実施例3において製造した折戸の弾性部材の側端部31間に指を挟んで凹部を発生させ、その凹部の復元状態を観察した。
実施例3では、弾性部材のゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で45であったが、指挟みでは痛さを感じなかった。
また、折戸の隙間に10秒間指を挟んで、側端部31間に凹みを発生させた。
約5分経過後には僅かな凹みが残っていたが、1日経過すると、凹みは消滅して原形に復元した。
【実施例4】
【0036】
弾性部材として、クロロプレンゴム((株)イノアックコーポレーション製の発泡材ゴムスポ(登録商標)C-4600)を用いた。
ゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で48であった。
圧縮永久歪率は、14.9%であった。
それ以外は、実施例1と同様にして折戸とした。
【0037】
<実施例4の評価>
実施例4において製造した折戸の弾性部材の側端部31間に指を挟んで凹部を発生させ、その凹部の復元状態を観察した。
実施例4では、弾性部材のゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で48であったが、指挟みでは痛さを感じなかった。
また、折戸の隙間に10秒間指を挟んで、側端部31間に凹みを発生させた。
約5分経過後には、僅かな凹みが残っていたが、1日経過すると、凹みは消滅して原形に復元した。
【実施例5】
【0038】
弾性部材として、クロロプレンゴム((株)イノアックコーポレーション製の発泡材ゴムスポ(登録商標)C-4305)を用いた。
ゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で24であった。
圧縮永久歪率は、15.3%であった。
それ以外は、実施例1と同様にして折戸とした。
【0039】
<実施例5の評価>
実施例5において製造した折戸の弾性部材の側端部31間に指を挟んで凹部を発生させ、その凹部の復元状態を観察した。
実施例5では、弾性部材のゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で24であったが、指挟みでは痛さを感じなかった。
また、折戸の隙間に10秒間指を挟んで、側端部31間に凹みを発生させた。
約5分経過後には、僅かな凹みが残っていたが、1日経過すると、凹みは解消して原形に復元した。
【比較例】
【0040】
比較例の折戸は、
弾性部材として、クロロプレンゴム((株)イノアックコーポレーション製の発泡材ゴムスポ(登録商標)C-4215)を用いた。
ゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で11であった。
圧縮永久歪率は、19.1%であった。
それ以外は、実施例1と同様にした。
【0041】
<比較例の評価>
比較例において製造した折戸の弾性部材の側端部31間に指を挟んで凹部を発生させ、その凹部の復元状態を観察した。
比較例では、弾性部材のゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で11であったため、指挟みでは痛さを感じなかった。
指挟みで形成された凹みの復元状況について以下に記する。
図6は、比較例において製造した折戸を用いて、指を挟んで凹部を発生させ、その凹部の復元状態を観察した説明図である。
図6の1~4に示すように、折戸の隙間に3秒間、指を挟んで微妙に凹みを発生させた。
ゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で11であり比較的軟らかいため、1分15秒経過後には、多少復元したが、はっきりとした凹みが残っていた。
次に、図6の5~8に示すように、折戸の隙間に6秒間、指を挟んではっきりした凹みを発生させた。
上記凹みは、2カ月経過しても目視で確認でき原形には復元しなかった。
次に、図6の9~12に示すように、折戸の隙間に10秒間指を挟んで凹みを発生させた。
指あとは目視ではっきり確認できた。
上記凹みは、4分49秒経過後にも、はっきりした凹みが残っていた。
その後、2カ月経過しても、凹みが残っていることを目視で確認でき、原形に復元しなかった。
【0042】
<実施例1~5、比較例の弾性部材表>
下記に、実施例1~5、比較例の弾性部材の特性を整理した。
ゴム硬度Cタイプ 圧縮永久歪率 ゴムスポンジ
実施例1 50 14.2 C-4555
実施例2 37 14.2 C-4505
実施例3 45 13.7 C-4500
実施例4 48 14.9 C-4600
実施例5 24 15.3 C-4305
比較例 11 19.1 C-4215
【実施例6】
【0043】
弾性部材として下記の3種類を用い、クロスとして株式会社サンゲツ製のSG6002を用い、それ以外は、実施例1と同様にして折戸とした。
実施例6-1の弾性部材
PORON(株式会社ロジャースイノアック製の高機能ウレタンフォーム(登録商標)L-24)
ゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で15~25
実施例6-2の弾性部材
イノアック(株式会社イノアックコーポレーション製のEVAフォームD-104F)
ゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で32
実施例6-3の弾性部材
イノアック(株式会社イノアックコーポレーション製のEVAフォームB-150)
ゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で45
【0044】
この実施例6-1~6-3までの3種類の折戸で、折り曲がっていない状態の折戸の隙間に直径12mmで先端球面SR6の棒材を、6mmまで押し込んだ。
こうしたところ、実施例6-1及び実施例6-3では、弾性部材は復元するものの、押し込み部分のクロスが、弾性部材の復元後でも傷がわかる程の破断を生じた。
この結果から、復元力に優れる必要はあるものの、クロスの破損を考慮すると、弾性部材の硬度は、ゴム硬度Cタイプ(Asker-C)で30~40が特に好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の凹み復元性に優れた折戸は、クローゼットなどの収納設備に広く用いられる。
また、折戸の側端部に用いた弾性部材は、引戸、その他の開閉用のドアにも適用でき、産業上の利用可能性高い。
【符号の説明】
【0046】
10 折戸
11 第一折戸構成部材
12 第二折戸構成部材
13 第三折戸構成部材
14 第四折戸構成部材
15 蝶番
11a、14a 上ボルト
11b、14b 下ボルト
12a、13a 上ランナー
12b、13b 下ランナー
15a 第一折戸構成部材側本体部
15b 第二折戸構成部材側本体部
16 面取部エッジライン
17 面取部
18 折戸の表側
20 折戸本体
30 弾性部材
30a 空洞
31 側端部
40 クロス
51 上ガイドレール
52 下ガイドレール
図1
図2
図3
図4
図5
図6