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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】貴金属濃縮方法及び貴金属濃縮装置
(51)【国際特許分類】
   C22B 11/02 20060101AFI20220328BHJP
   F27B 15/10 20060101ALI20220328BHJP
   F27B 15/14 20060101ALI20220328BHJP
   C22B 5/12 20060101ALI20220328BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20220328BHJP
   C22B 5/16 20060101ALI20220328BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20220328BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
C22B11/02 ZAB
F27B15/10
F27B15/14
C22B5/12
C22B7/00 E
C22B5/16
B09B3/00 303Z
B09B5/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018031086
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2019143231
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-02-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)一般社団法人 資源・素材学会,資源・素材&EARTH2017(札幌),平成29年8月24日,ウェブサイト https://confit.atlas.jp/guide/print/mmij2017b/subject/3401-09-01/detail (2)一般社団法人 資源・素材学会,大会プログラム・要旨集/資源・素材&EARTH2017(札幌),平成29年9月26日,第162頁 (3)一般社団法人 資源・素材学会,資源・素材&EARTH2017(札幌),平成29年9月26日,ウェブサイト https://confit.atlas.jp/guide/event/mmij2017b/subject/3401-09-01/advanced
(73)【特許権者】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】明石 孝也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 裕香
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-253280(JP,A)
【文献】特開平10-099815(JP,A)
【文献】特開2007-196229(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106367598(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102162035(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 11/02
F27B 15/10
F27B 15/14
C22B 5/12
C22B 7/00
C22B 5/16
B09B 3/40
B09B 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金、銀及び銅からなる群から選択された1種又は複数種の貴金属を第1金属含有率で含有する第1固体貴金属の混合物中の前記第1固体貴金属を気化して気体貴金属とする工程と、
前記気体貴金属を固体化して第2固体貴金属として該第2固体貴金属を前記第1金属含有率よりも高い第2金属含有率で捕集する工程と、
を有し、
前記混合物は、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムからなる群から選択された金属を第3金属含有率で含有する第1固体金属化合物を含み、
前記第1固体貴金属を気化して前記気体貴金属とする工程は、前記混合物中の前記第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物とする工程と共に行われ、
前記第2固体貴金属を前記第2金属含有率で捕集する工程は、前記気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物として該第2固体金属化合物を前記第3金属含有率より高い第4金属含有率で捕集する工程と共に行われる、貴金属濃縮方法。
【請求項2】
前記混合物が、使用済み電子・電子機器を含む、請求項記載の貴金属濃縮方法。
【請求項3】
金、銀及び銅からなる群から選択された1種又は複数種の貴金属を第1金属含有率で含有する第1固体貴金属の混合物中の前記第1固体貴金属を気化して気体貴金属とすると共に、前記気体貴金属を固体化して第2固体貴金属として該第2固体貴金属を前記第1金属含有率よりも高い第2金属含有率で捕集する反応炉を備え
前記反応炉は、
前記第1固体貴金属を内部空間で反応させるための反応管と、
前記反応管を加熱する加熱部と、
前記反応管内の下部に設けられ、前記第1固体貴金属を保持する保持部と、
前記保持部の下部に設けられ、導入ガスを前記反応管の下部から前記保持部に導入するための導入口と、
前記保持部の上方に設けられ、前記導入ガスを前記保持部に導入する圧力によって前記第1固体貴金属を流動させる流動床部と、
前記流動床部の上部に位置し、前記第2固体貴金属を捕集する捕集部と、
前記捕集部の上方に設けられ、前記反応炉内で生成された副成ガスを前記反応管内から外部に排出するための排出口と、を有することを特徴とする、貴金属濃縮装置。
【請求項4】
前記捕集部が、前記反応管の内部空間を画定する側壁の一部であることを特徴とする、請求項記載の貴金属濃縮装置。
【請求項5】
前記混合物が、使用済み電気・電子機器を含む、請求項3又は4記載の貴金属濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属濃縮方法及び貴金属濃縮装置に関し、特に、使用済み電気・電子機器などに含まれる金などの貴金属を濃縮して回収する貴金属濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貴金属は、一般に、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)の8つの元素を指し、水素との相対的なイオン化傾向の大小を基準とした場合、上記貴金属として銅が含まれる。
【0003】
上記貴金属のうち、例えば金の湿式精錬については、使用済み電子部品に含まれる金を王水によって溶解して、使用済み電子部品から金を分離する方法が実用されている。しかし、この方法では、樹脂の内部に配線された金を効率良く回収することが難しいと考えられる。また、乾式精錬については、金属を含む原料を塩素気流中で加熱し、塩化揮発させる際に、固体炭素を混合することで揮発温度を低下させて、金を分離回収する方法が開示されている(特許文献1)。また、金を塩素気流中で800℃以上に加熱すると、金が高い揮発率で揮発するとされている(非特許文献1)。
【0004】
一方、金属濃縮方法として、本発明者らは、ガリウムなどの特定のレアメタルである金属の酸化物を第1含有率で含有する混合物中の第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物とし、該気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物として該第2固体金属化合物を上記第1含有率より高い第2含有率で濃縮する乾式の濃縮方法を見出した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-17279号公報
【文献】特許第6192645号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】細井明,蛭田賢一,高崎康志,柴山敦,「塩化揮発法を利用した廃電子基板からの金属回収と揮発挙動の検討」,日本金属学会,第76巻,第2号,2012年,第155頁~第163頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2のような環境負荷の小さい金属濃縮方法を、金などの貴金属の濃縮にも適用可能であると考えられる。
【0008】
本発明の目的は、環境負荷を小さくして貴金属を濃縮することができる貴金属濃縮方法及び貴金属濃縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、環境負荷の小さい金の濃縮について鋭意研究を行った結果、ガリウムなどの特定のレアメタルである金属の酸化物を第1含有率で含有する混合物中の第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物とし、該気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物として該第2固体金属化合物を上記第1含有率より高い第2含有率で濃縮する方法において、上記混合物に貴金属が含有されている場合、当該貴金属を混合物における含有率よりも高い含有率で濃縮することができることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)金、銀及び銅からなる群から選択された1種又は複数種の貴金属を第1金属含有率で含有する第1固体貴金属の混合物中の前記第1固体貴金属を気化して気体貴金属とする工程と、
前記気体貴金属を固体化して第2固体貴金属として該第2固体貴金属を前記第1金属含有率よりも高い第2金属含有率で捕集する工程と、
を有する貴金属濃縮方法。
(2)前記混合物は、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムからなる群から選択された金属を第3金属含有率で含有する第1固体金属化合物を含み、
前記第1固体貴金属を気化して前記気体貴金属とする工程は、前記混合物中の前記第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物とする工程と共に行われ、
前記第2固体貴金属を前記第2金属含有率で捕集する工程は、前記気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物として該第2固体金属化合物を前記第3金属含有率より高い第4金属含有率で捕集する工程と共に行われる、上記(1)記載の貴金属濃縮方法。
(3)前記混合物が、使用済み電子・電子機器を含む、上記(1)又は(2)記載の貴金属濃縮方法。
(4)金、銀及び銅からなる群から選択された1種又は複数種の貴金属を第1金属含有率で含有する第1固体貴金属の混合物中の前記第1固体貴金属を気化して気体貴金属とすると共に、前記気体貴金属を固体化して第2固体貴金属として該第2固体貴金属を前記第1金属含有率よりも高い第2金属含有率で捕集する反応炉を備えることを特徴とする、貴金属濃縮装置。
(5)前記反応炉は、
前記第1固体貴金属を内部空間で反応させるための反応管と、
前記反応管を加熱する加熱部と、
前記反応管内の下部に設けられ、前記第1固体貴金属を保持する保持部と、
前記保持部の下部に設けられ、導入ガスを前記反応管の下部から前記保持部に導入するための導入口と、
前記保持部の上方に設けられ、前記導入ガスを前記保持部に導入する圧力によって前記第1固体貴金属を流動させる流動床部と、
前記流動床部の上部に位置し、前記第2固体貴金属を捕集する捕集部と、
前記捕集部の上方に設けられ、前記反応炉内で生成された副成ガスを前記反応管内から外部に排出するための排出口と、を有することを特徴する、上記(4)記載の貴金属濃縮装置。
(6)前記捕集部が、前記反応管の内部空間を画定する側壁の一部であることを特徴とする、上記(5)記載の貴金属濃縮装置。
(7)前記混合物が、使用済み電気・電子機器を含む、上記(4)~(6)のいずれかに記載の貴金属濃縮装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、貴金属を含有する混合物に、王水や塩素ガスなどの有害な物質を加えることなく、当該貴金属を濃縮することができる。よって、環境負荷を小さくして、鉱石などの一次資源や使用済み電気・電子機器などの二次資源(いわゆる都市鉱石)から金などの貴金属を濃縮することができる。特に、使用済み電気・電子機器をリサイクルする際に、使用済み電気・電子機器に含まれる貴金属を容易に濃縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る貴金属濃縮方法が適用される貴金属濃縮装置の構成を概略的に示す図である。
図2図1における反応炉の構成を示す断面図である。
図3図1における反応炉の捕集部及び回収装置の構成を示す断面図である。
図4図1の貴金属濃縮装置で濃縮されるガリウム種蒸気圧の酸素分圧依存性を説明するグラフである。
図5】反応管内における貫通孔上端部から捕集部までの高さを説明する図である。
図6】反応管内における貫通孔上端部から捕集部までの高さと、固体酸化ガリウムの収率との関係を示すグラフである。
図7】炉内温度を一定としたときの反応管内の高さ方向に沿う温度分布を示すグラフである。
図8】反応炉に供給される還元ガスの一例である窒素ガス流量と、固体酸化ガリウムの収率との関係を示す図である。
図9】反応炉における炉内温度と、固体酸化ガリウムの収率との関係を示す図である。
図10】炉内温度を一定としたときの捕集部の温度と収率の関係を示すグラフである。
図11図2の反応炉の第1変形例を示す断面図である。
図12図2の反応炉の第2変形例を示す断面図である。
図13】本発明の第2実施形態に係る金属化合物濃縮装置の構成を概略的に示す図である。
図14】本発明の第3実施形態に係る金属化合物濃縮装置の構成を概略的に示す図である。
図15】本実施形態に係る貴金属濃縮方法を用いて実現される貴金属のリサイクルモデルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
<貴金属濃縮装置の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る貴金属濃縮方法が適用される貴金属濃縮装置の構成を概略的に示す図である。図1の装置構成はその一例を示すものであり、本発明に係る貴金属濃縮方法が適用される構成は、図1のものに限られない。
【0014】
図1の貴金属濃縮装置1は、貴金属を含有する混合物を乾式法で濃縮する装置であり、金、銀及び銅からなる群から選択された1種又は複数種の貴金属を第1金属含有率で含有する第1固体貴金属の混合物中の上記第1固体貴金属を気化して気体貴金属とすると共に、上記気体貴金属を固体化して第2固体貴金属として該第2固体貴金属を上記第1金属含有率よりも高い第2金属含有率で捕集する反応炉10を備える。この貴金属濃縮装置1では、反応炉10以外の構成として、例えば、反応炉10を基準として、該反応炉の上流側に、酸素含有ガス供給手段40、ガス加熱手段50及び還元ガス生成手段30が配置され、反応炉10の下流側に、ガス排出手段60、回収手段80及び浄化手段90が配設されている。
【0015】
貴金属濃縮装置1で濃縮される貴金属とは、金(Au)、銀(Ag)及び銅(Cu)からなる群から選択された1種又は複数種の金属の元素を含んでいればよく、各金属の単体、合金或いは化合物が含まれる。例えば、上記貴金属が金である場合、純金、金の合金或いは金の化合物が含まれる。
【0016】
反応炉10は、図2に示すように、第1固体貴金属を内部空間で反応させるための反応管11と、反応管11を加熱する加熱部12と、反応管11内の下部に設けられ、第1固体貴金属を保持する保持部13と、保持部13の下部に設けられ、導入ガスを反応管11の下部から保持部13に導入するための導入口14と、保持部13の上方に設けられ、上記導入ガスを保持部13に導入する圧力によって第1固体貴金属を流動させる流動床部15と、流動床部15の上部に位置し、第2固体貴金属を捕集する捕集部16-1と、捕集部16-1の上方に設けられ、反応炉10内で生成された副成ガスを反応管11内から外部に排出するための排出口17とを有する。
【0017】
また、この貴金属濃縮装置1は、レアメタルなどの金属化合物を濃縮する機能を併せ持つ。具体的には、貴金属濃縮装置1は、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、テルル(Te)、及びセシウム(Cs)からなる群から選択された金属(以下、単に「レアメタル」ともいう)を第1金属含有率で含有する第1固体金属化合物の混合物M中の上記第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物とすると共に、上記気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物として該第2固体金属化合物を上記第1金属含有率より高い第2金属含有率で捕集する反応炉10と、上記第1固体金属化合物を還元する還元ガスG2を生成して反応炉10に供給する還元ガス生成手段30と、還元ガスG2を生成するための酸素含有ガスG1を還元ガス生成手段30に供給する酸素含有ガス供給手段40と、酸素含有ガスG1を加熱するガス加熱手段50と、反応炉10内で生成された副成ガスG3を排出するガス排出手段60と、ガス排出手段60の下流に配置され、上記第2固体金属化合物を回収する回収手段80と、回収手段80の下流に配置され、上記副成ガスG3を浄化する浄化手段90とを備える。
【0018】
反応炉10は、図2に示すように、第1固体金属化合物を内部空間で反応させるための反応管11と、反応管11を加熱する加熱部12と、反応管11内の下部に設けられ、第1固体金属化合物を保持する保持部13と、保持部13の下部に設けられ、還元ガス生成手段30から供給される還元ガスG2を、反応管11の下部から保持部13に導入するための導入口14と、保持部13の上方に設けられ、還元ガスG2を保持部13に供給する圧力によって上記第1固体貴金属及び/又は第1固体金属化合物を流動させる流動床部15と、流動床部15の上部に位置し、上記第2固体貴金属及び/又は第2固体金属化合物を捕集する捕集部16-1と、捕集部16-1の上方に設けられ、副成ガスG3を反応管11内から外部に排出するための排出口17とを有する。第1固体貴金属及び/又は第1固体金属化合物を直接あるいは局所的に高温で加熱することができる観点から、反応炉10として、好ましくは、赤外線ゴールドイメージ炉などの赤外線炉を用いることが好ましいが、赤外線炉以外に、抵抗加熱炉、ガス炉、誘導加熱炉、直接通電加熱炉などを用いてもよい。
【0019】
反応管11は、内管11aと、内管11aを支持する支持管11bと、内管11a及び支持管11bの双方を内部に収容する外管11cと、外管11cの下端開口を閉塞する閉塞部11dと、外管11cの上端開口を閉塞する閉塞部11eと、外管11cに設けられ、混合物Mを内管11a内に供給するための供給部11fとを有している。混合物Mとは、金、銀及び銅からなる群から選択された貴金属を第1金属含有率で含有する第1固体貴金属を含む材料である。
【0020】
上記混合物Mは、上記貴金属に加えて炭素源を含有していてもよく、例えば、上記貴金属及び樹脂を含む使用済み電気・電子機器であり、具体的にはLEDデバイスである。混合物MがLEDデバイスである場合、上記貴金属としては、例えば、ボンディングワイヤ等に用いられる金や、プリント基板やリードフレーム等に用いられる銀、銅が挙げられる。上記樹脂としては、例えば、上記プリント基板の基材等に用いられるエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0021】
また、上記混合物Mは、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、テルル(Te)、及びセシウム(Cs)からなる群から選択された金属(以下、単に「レアメタル」ともいう)を第3金属含有率で含有する第1固体金属化合物を含んでいてもよい。例えば、混合物Mが上記使用済み電気・電子機器である場合、使用済み電気・電子機器は、上記レアメタルを含有するLED素子を含んでいる場合がある。混合物Mが上記貴金属に加えて、上記のようなレアメタルを更に含んでいる場合にも、上記貴金属や上記レアメタルを濃縮することが可能である。
【0022】
内管11aは、一端が閉塞された管状体からなり、管状部11a-1と、管状部11a-1の内周面11a-2と、管状部11a-1と一体で設けられた底部11a-3と、底部11a-3に設けられた貫通孔11a-4とを有する。内管11aは、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニア、石英などの酸化物を主成分とするセラミックからなる。管状部11a-1及び底部11a-3で画定される内部空間のうち、底部11a-3側の内部空間が保持部13をなし、保持部13の直上に位置する内部空間が流動床部15をなす。
【0023】
支持管11bは、内管11aと閉塞部11dとの間に介設されており、内管11aを外管11c内で高さ方向に位置決めすると共に、導入部14と内管11aとを連通する。支持管11bは、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニア、石英などの酸化物を主成分とするセラミックからなる。外管11cは、上下両端が開口した管状体からなり、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニア、石英などの酸化物を主成分とするセラミックからなる。
【0024】
閉塞部11dは、上下方向に貫通した貫通孔11d-1を有しており、貫通孔11d-1が、ガス生成手段30のガス導入管30aに接続されている。この貫通孔11d-1の上端が、上述した導入口14をなしている。
【0025】
閉塞部11eは、上下方向に貫通した貫通孔11e-1を有しており、貫通孔11e-1は、還元ガス排出手段60のガス排出管60aに接続されている。この貫通孔11e-1の下端が、上述した排出口17をなしている。
【0026】
供給部11fは、例えば外部から内管11b内に混合物Mを供給するための供給管であり、該供給管の端部には、外管11c内を密閉するための蓋部11gが取り付けられている。供給部11fは、混合物Mを搬送する搬送手段と、炉内の密閉状態を維持するためのゲート部とを有していてもよい。
【0027】
加熱部12は、炉体12aと、炉体12a内に取り付けられたヒータ12bとを有する。炉体12aは、セラミックを主成分とする断熱材を有し、炉体12aの内部空間と外部とを断熱する。ヒータ12bは、例えば、鉄-クロム系(Fe-Cr)やニッケル-クロム系(Ni-Cr)等の合金発熱体や、モリブデン(Mo)やタングステン(W)等の単体金属発熱体、あるいは炭化珪素(SiC)等の非金属発熱体からなる。加熱部12は、熱電対などの温度検出部と、該温度検出部の検出温度に基づいてヒータ12bの発熱量を制御する制御部とを有してもよく、この場合、炉体12a内の温度制御を行うことで反応管11内の温度を調整する。
【0028】
保持部13は、上記貴金属を第1金属含有率で含有する第1固体貴金属の混合物Mを保持する。ガス導入前あるいは加熱初期段階では、底部11a-3に設けられた貫通孔11a-4にパラフィルムからなる栓部材を嵌入してもよい。これにより、保持部13内の混合物Mが貫通孔11a-4から落下するのを防止することができる。
【0029】
流動床部15は、還元ガスG2を保持部13に供給する圧力によって、上記混合物Mに含有される第1固体金属化合物からなる粒子が流動する空間である。このとき、流動床部15内には図2に示すようなループ状の流動経路Lが形成される。そして、流動床部15では、流動粒子を構成する第1固体貴金属が気化して気体貴金属に変化し、更に、該気体貴金属が固体化して第2固体貴金属に変化する。
また、流動床部15では、流動粒子を構成する第1固体金属化合物が還元反応によって気体金属化合物に変化し、更に、該気体金属化合物が酸化反応によって第2固体金属化合物に変化しうる。
【0030】
捕集部16-1は、例えば、反応管11の内部空間を画定する側壁の一部である。具体的には、捕集部16-1は、反応管11における管状部11a-1の内周面11a-2のうち、流動床部15の上部に位置する領域である。捕集部16-1は、上記気体貴金属が固体化することで得られる第2固体貴金属を、第1金属含有率よりも高い第2金属含有率で捕集する。
また、捕集部16-1は、上記気体金属化合物が酸化することで得られる第2固体金属化合物を、第3金属含有率よりも高い第4金属含有率で捕集することができる。流動床部15において、上述のようにレアメタルの気体金属化合物が酸化反応によって第2固体金属化合物に変化すると、この酸化反応により、内管11aの内周面11a-2に第2固体金属化合物が付着し、第2固体金属化合物が捕集される。
【0031】
酸素含有ガス供給手段40は(図1)、例えば酸素含有ガスG1を所定流量でガス加熱手段50に供給する。酸素含有ガス供給手段40によって供給される酸素含有ガスG1は、例えば空気などの酸素含有窒素ガスである。酸素含有ガス供給手段40は、空気を供給するブロアであってもよいし、あるいは、窒素ガス発生手段とファンとを有し、窒素と空気の混合ガス、或いは1ppm~1%程度の不純物酸素を含む窒素ガスをガス加熱手段50に供給してもよい。
【0032】
ガス加熱手段50は、本実施形態では、酸素含有ガス供給手段40に接続された第1流路50-1a及びガス排出手段60に接続された第2流路50-1bを有する熱交換器50-1と、第1流路50-1aから供給される酸素含有ガスG1を所定温度まで加熱して、還元ガス生成手段30に供給する予備加熱部50-2とを有する。
【0033】
熱交換器50-1において、第1流路50-1aには酸素含有ガスG1が流れ、第2流路50-1bには酸素含有ガスG1よりも高温の副成ガスG3が流れる。このとき、第1流路50-1a内の酸素含有ガスG1と第2流路50-1b内の副成ガスG3との間で熱エネルギーの交換がなされ、第1流路50-1a内の酸素含有ガスG1が第2流路50-1b内の副成ガスG3によって加熱されると共に、副成ガスG3が酸素含有ガスG1によって冷却される。
【0034】
予備加熱部50-2は、第1流路50-1aと接続されたステンレス管50-2aと、ステンレス管50-2aを加熱する加熱部50-2bとを有しており、第1流路50-1aから供給された酸素含有ガスG1をステンレス管50-2a内で加熱して、加熱した酸素含有ガスG1をガス導入管50aを介して還元ガス生成手段30に供給する。予備加熱部50-2は、熱電対などの温度検出部と、該温度検出部の検出温度に基づいて加熱部50-2bの発熱量を制御する制御部とを有してもよい。この場合、制御部は、ステンレス管50-2a内の温度制御を行うことで、反応炉10に供給する酸素含有ガスG1の温度を調整する。
【0035】
還元ガス生成手段30は、炭素源含有材料Wを後述の生成部に供給するための材料供給部31と、炭素源含有材料Wを酸化して還元ガスG2を生成する生成部32とを有する。材料供給部31は、例えば外部から生成部32に炭素源含有材料Wを供給可能な供給路である。
【0036】
生成部32は、例えば予備加熱部50-2と接続された石英管32aと、石英管32aを加熱するヒータ32bとを有する。還元ガス生成手段30と反応炉10とを接続するガス導入管30aには、リボンヒータなどの加熱部が取り付けられている。生成部32は、予備加熱部50-2から供給された酸素含有ガスG1及び材料供給部31から供給された炭素源含有材料Wをヒータ32bで加熱し、炭素の酸化反応によって一酸化炭素を含む還元ガスG2を生成し、ガス導入管30aを介して反応炉10に供給する。
【0037】
還元ガス生成手段30に供給される炭素源含有材料Wは、例えば石油系液体燃料、廃棄材木あるいは廃棄樹脂、又はこれらの混合物である。リサイクルの観点から、炭素源含有材料Wは、使用済みの電気・電子機器を分解して得られた廃棄樹脂が好ましい。
また、還元ガス生成手段30で生成される還元ガスG2は、例えば石油系液体燃料の燃焼ガス、廃棄材木の燃焼ガス、あるいは廃棄樹脂の燃焼ガスであり、具体的には、例えば一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)及び窒素(N)を含む混合ガスである。
炭素源含有材料Wは、酸化触媒を含んでいてもよい。炭素源含有材料Wに含有される酸化触媒は、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Rd)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)などの貴金属触媒である。この貴金属触媒は、アルミナ(Al)などの多孔質酸化物からなる担体に担持された状態で用いられてもよいし、CeO-ZrO固溶体などの酸化セリウム-酸化ジルコニウム系複合酸化物からなる担体に担持された状態で用いられてもよい。これにより、炭素源含有材料W中の炭素を低温で酸化させることができる。
【0038】
ガス排出手段60は、上流側が反応炉10に接続され且つ下流側が浄化手段90に接続されたガス排出管60aを有しており、反応炉10から排出される副成ガスG3を排出し、熱交換器50-1を通って浄化手段90に供給する。
【0039】
回収手段80は、反応炉10と熱交換器50-1とを接続するガス排出管60aの経路内に取り付けられている。回収手段80は、例えば集塵機である。回収手段80は、遠心力によって副成ガスG3内の第2固体金属化合物を分離する遠心分離式の分離部81と、分離部81の下方に接続され、分離部81で分離された第2固体金属化合物を回収する回収部82とを有する。
【0040】
浄化手段90は、ガス排出手段60の下流であって且つ熱交換器50-1の下流に配置されており、回収手段80から供給された副成ガスG3を浄化して、浄化ガスG4を装置外に排出する。浄化手段90は、例えば活性炭であり、副成ガスG3中の一酸化炭素を活性炭に吸着させることにより、副成ガスG3中の一酸化炭素を除去する。浄化手段90は、副成ガスG3中の一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)等を無害な物質に変換する1種又は複数種の触媒を有していてもよい。例えば、副成ガスG3中の一酸化炭素は二酸化炭素に、炭化水素は水と二酸化炭素に、窒素酸化物は窒素にそれぞれ変換される。副成ガスG3が一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)等を含まない場合には、浄化手段90を設けなくてもよい。
【0041】
<貴金属の濃縮方法>
上記構成の貴金属濃縮装置1では、極めて簡便な方法で貴金属を濃縮する。すなわち、金、銀及び銅からなる群から選択された1種又は複数種の貴金属を第1金属含有率で含有する第1固体貴金属の混合物M中の上記第1固体貴金属を気化して気体貴金属とし、次いで、上記気体貴金属を固体化して第2固体貴金属として該第2固体貴金属を上記第1金属含有率よりも高い第2金属含有率で捕集する。このような貴金属の濃縮が生じるのは、例えば、混合物Mに含有される炭素源が流動床部15で焼成されることにより、固体貴金属が気化或いは蒸発する条件が満たされたためと推察される。
【0042】
上記第1固体貴金属を気化して気体貴金属とする工程では、例えば第1固体金属化合物(固体窒化ガリウムなど)の還元反応条件を含むか或いは同じ条件とすることができる。混合物Mを加熱する場合の温度条件、特に上記第1固体貴金属を気化する際の温度条件は、900℃以上1500℃以下とすることができる。
金の収率を高める観点からは、混合物Mを加熱する場合の温度条件、特に上記第1固体貴金属を気化する際の温度条件は、1300℃を超え1500℃以下とすることができる。銀の収率を高める観点からは、混合物Mを加熱する場合の温度条件、特に上記第1固体貴金属を気化する際の温度条件は、900℃以上1100℃以下とすることができる。銅の収率を高める観点からは、混合物Mを加熱する場合の温度条件、特に上記第1固体貴金属を気化する際の温度条件は、1100℃以上1300℃以下とすることができる。また、上記第2固体貴金属を第1金属含有率よりも高い第2金属含有率で捕集する工程でも、例えば第1固体金属化合物の酸化反応条件と同じ条件とすることができる。
【0043】
本濃縮方法では、第1固体貴金属を含有する混合物Mの質量に対する、当該第1固体貴金属中の1又は複数種の上記貴金属元素(例えば、金)の質量の比を第1金属含有率α1、上記第2固体貴金属の質量に対する、当該第2固体貴金属中の上記貴金属元素の質量の比を第2金属含有率α2としたとき、第2金属含有率α2が第1金属含有率α1より高い。また、混合物Mに含まれる第1固体貴金属中の上記貴金属元素の質量をm1、捕集部16-1で捕集された第2固体貴金属中の上記貴金属元素の質量をm2としたとき、収率β(=m2/m1*100)は0.5%以上であり、好ましくは0.8%以上である。上記貴金属元素が銀の場合、収率βは3.0%以上であり、好ましくは8.0%以上である。上記貴金属元素が銅の場合、収率βは5.0%以上であり、好ましくは8.0%以上である。
【0044】
また、混合物Mが、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムからなる群から選択された金属を第3金属含有率で含有する第1固体金属化合物を含む場合、上記第1固体貴金属を気化して上記気体貴金属とする工程は、例えば、混合物M中の上記第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物とする工程と共に行われてもよい。また、この場合、上記第1固体貴金属を上記第2金属含有率で捕集する工程は、例えば、上記気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物として該第2固体金属化合物を上記第3金属含有率より高い第4金属含有率で捕集する工程と共に行われてもよい。上記の貴金属濃縮方法により、上記貴金属の1種又は複数種を容易に濃縮することができる。
【0045】
次に、上記第1固体金属化合物が、第1固体ガリウム化合物(固体窒化ガリウム或いは固体酸化ガリウム)、第1固体インジウム化合物、第1固体ゲルマニウム化合物、第1固体テルル化合物、又は第1固体セシウム化合物である場合の金属化合物濃縮方法を、下記(1-1)~(1-6)で説明する。
【0046】
(1-1)第1固体金属化合物が第1固体ガリウム化合物(固体窒化ガリウム)、第2固体金属化合物が第2固体ガリウム化合物(固体酸化ガリウム)である場合
図2において、先ず、反応炉10の供給部11fから、第1固体金属化合物である窒化ガリウムを第3金属含有率で含有する混合物Mを投入し、この混合物Mを保持部13に収容する。混合物Mがレアメタル含有廃材である場合、例えば窒化ガリウム(GaN)及び酸化アルミニウム(Al)の混合物であり、必要に応じて、更に活性炭(C)を添加した混合物である。例えば、混合物Mが鉱石である場合、第1固体ガリウム化合物に加え、二酸化珪素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化鉄(Fe)等を含む混合物である。その後、還元ガス生成手段30の材料供給部31に炭素源含有材料W、例えばエポキシ樹脂を投入し、石英管32a内に炭素源含有材料Wを収容する。
【0047】
次に、酸素含有ガス供給手段40から所定流量で酸素含有ガスG1を導入し、熱交換器50-1の第1流路50-1aを介して予備加熱部50-2に供給する。副成ガスG3が第2流路50-1bに供給されている場合、第1流路50-1aを流れる酸素含有ガスG1は、第2流路50-1bを流れる副成ガスG3によって加熱される。その後、予備加熱部50-2において、ステンレス管50-2aを加熱し、該ステンレス管に供給された酸素含有ガスG1を所定温度、例えば600℃に加熱する。そして、所定温度に加熱された酸素含有ガスG1をガス導入管50aを介して還元ガス生成手段30に供給する。
【0048】
次いで、還元ガス生成手段30における石英管32aの管内温度を500~700℃に加熱し、石英管32a内に収容された炭素源含有材料Wと石英管32aに供給された空気とを酸化反応させて、還元ガスG2(一酸化炭素及び二酸化炭素からなる混合気体を含む)を生成する。そして、還元ガス生成手段30で生成された還元ガスG2をガス導入管30aを介して反応炉10に供給する。反応炉10に供給される還元ガスG2は、必要に応じて所定量の酸素を含有するように調整される。反応炉10に供給された還元ガスG2は、導入口14から反応管11に導入され、貫通孔11a-4を通って反応管11内の保持部13に供給される。反応管11内に供給される還元ガスG2の流量は、例えば、貫通孔11a-4の孔径1.5mmの場合、0.1L/min~1.0L/minである。貫通孔11a-4孔径が1.5mmよりも大きい場合には、還元ガスG2の流量を1.0L/minよりも大きい値にすることができる。
【0049】
次に、図3に示すように、反応炉10において、例えば400℃/hで反応炉10内を加熱し、1100~1300℃で2時間保持した後、還元ガス生成手段30から供給された還元ガスG2を貫通孔11a-4から内管11aに導入し、還元ガスG2を内管11a内で上方に噴き出させる。これにより、内管11a内において、貫通11a-4近傍の混合物Mが還元ガスG2によって上方に吹き上げられると共に、貫通孔11a-4から離れた位置の混合物Mが落下し、混合物Mの上昇と落下が繰り返されることで、保持部13の直上に流動床部15が形成される。このとき、内管11aの長さは、還元ガスG2の高流量に対応可能とするため、30cm以上であるのが好ましい。また、貫通孔11a-4の内径は、還元ガスG2の吹き出し量を考慮して、例えば1mm~9mmであるのが好ましい。
【0050】
そして、反応管11内を所定温度に加熱し、内管11a内で、混合物M中の第1固体ガリウム化合物と還元ガスG2とを反応させる。
第1固体ガリウム化合物が固体窒化ガリウムであり、還元ガスG2が、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる混合気体(以下、「CO/CO混合気体」という)を含む場合、流動床部15では以下の化学式(1),(2)によってガリウムの還元反応及び酸化反応が起こり、捕集部16-1において、第1固体ガリウム化合物におけるガリウムの第3金属含有率よりも高い第4金属含有率で、第2固体金属化合物S1である第2固体ガリウム化合物(酸化ガリウム)が捕集される。
2GaN(solid)+CO(gas)→GaO(gas)+N(gas)+CO(gas)・・
・(1)
GaO(gas)+O(gas)→Ga(solid)・・・(2)
【0051】
第1固体ガリウム化合物が還元されて気体ガリウム化合物が生成される反応では、化学式(1)に示すように、第1固体ガリウム化合物であるGaN、還元剤であるCO/CO混合気体に含まれる二酸化炭素が反応して、気体ガリウム化合物であるGaO、窒素、及び一酸化炭素が生成される。
また、気体ガリウム化合物が酸化されて第2固体ガリウム化合物が生成される反応では、化学式(2)に示すように、気体ガリウム化合物であるGaOと酸化剤である酸素とが反応して、第2固体ガリウム化合物であるGaが生成される。
【0052】
混合物Mに活性炭(C)を添加した場合、GaN(solid)と、活性炭(C)と、二酸化炭素(CO)及び酸素(O)のいずれかとの反応が上記反応と並行して進行し、気体ガリウム化合物であるGaOが生成される。しかし、固体である活性炭がGaNと接触する確率は低いことから、内管11a内で生じるガリウムの還元反応は、主としてCO/CO混合気体によるものと推察される。
【0053】
第1固体ガリウム化合物が固体窒化ガリウムである場合、第1固体ガリウム化合物から気体ガリウム化合物を経て第2固体ガリウム化合物(固体酸化ガリウム)を得る工程では、第1固体ガリウム化合物の混合物Mを1000~1300℃の範囲で加熱するのが好ましい。また、ガリウム混合物における気体ガリウム化合物(GaO)の蒸気圧が最大値となるように、反応管11内温度及び酸素分圧、特に捕集部16-1の温度及び酸素分圧を調整するのが好ましい。すなわち、反応炉10は、加熱部12に加えて、反応管11内の酸素分圧を制御する酸素分圧制御部を更に有していてもよい。
【0054】
図4は、1150℃において、図1の貴金属濃縮装置で濃縮されるガリウム種蒸気圧の酸素分圧依存性を説明するグラフである。同グラフにおいて、ガリウム種蒸気圧のうちGaO(g)の蒸気圧が約1×10Paで最大値となり、このときの酸素分圧は1×10-11Pa(図中のa位置)であることが分かる。そこで本実施形態では、GaO(g)の蒸気圧を用い、気体ガリウム化合物であるGaOの蒸気圧が大きくなるように、反応管11内の酸素分圧を1Pa(1×10Pa)以下に制御するのが好ましく、1×10-19Pa以上1×10-7Pa以下がより好ましい。また、1150℃においては、気体ガリウム化合物であるGaOの蒸気圧が最大値となるように、反応管11内の酸素分圧を1×10-11Paに調整するのが特に好ましい。なお、この酸素分圧の範囲は、温度によって異なり、熱化学データを用いた熱力学計算によって算出される。また、この場合、反応炉10は、反応管11内の酸素分圧を計測するための酸素検出部と、酸素検出部の検出結果に基づいて酸素含有ガス供給手段40における酸素含有ガスG1の流量を制御する制御部とを有していてもよい。このように、GaO(g)の蒸気圧の最大値に対応した酸素分圧を設定し、反応管11内の酸素分圧が上記酸素分圧となるように、反応炉11内の酸素分圧を制御するか或いは反応炉10内に当該酸素分圧を有する還元ガスG2を導入することにより、捕集部16-1で第2固体ガリウム化合物であるGaO(s)をより多く捕集することが可能となる。
【0055】
第1固体ガリウム化合物を含有する混合物Mの質量に対する、当該第1固体ガリウム化合物中のガリウム元素の質量の比を第3金属含有率α3、第2固体ガリウム化合物の質量に対する、当該第2固体ガリウム化合物中のガリウム元素の質量の比を第4金属含有率α4としたとき、第4金属含有率α4が第3金属含有率α3より高い。また、混合物Mに含まれる第1固体ガリウム化合物中のガリウムの質量をm3、捕集部16-1で捕集された第2固体ガリウム化合物中のガリウムの質量をm4としたとき、収率γ1(=m4/m3*100)は0.5%以上、好ましくは10%以上である。例えば、0.10gのGaN(s)を含む混合物から、0.0012gのGa(s)が捕集され、収率γ1は1.1%を達成している。
【0056】
次いで、反応管11内での還元・酸化反応によって生じた副成ガスG3を、排出口17から貫通孔11e-1を通ってガス排出管60aに排出する。副成ガスG3は、上記反応式(1)で生成された窒素及び一酸化炭素に加え、上記反応式(2)で生成された第2固体ガリウム化合物であるGa(s)、並びに二酸化炭素を含んでいる。このGa(s)含有副成ガスG3が、ガス排出管60aを介して回収手段80に供給される。
【0057】
そして、回収手段80において(図3)、副成ガスG3は分離部81の内壁81aに沿って螺旋状に降下し、分離部81の下端81bに到達した後、分離部81の中心部を通って該分離部の上端81cに設けられた排出口81dから排出される。このとき、副成ガスG3に含まれるGa(s)を分離部81で遠心分離して、第2固体金属化合物S2として回収部82で回収する。また、回収手段80の排出口81dから排出された副成ガスG3を、ガス排出管80aを介して熱交換器50-1に供給する。
【0058】
熱交換器50-1では(図1)、副成ガスG3を第2流路50-1bに導入し、第2流路50-1bを流れる副成ガスG3と、第1流路50-1aを流れる酸素含有ガスG1との熱エネルギー交換によって、当該副成ガスG3を冷却する。その後、熱交換器50-1で冷却された副成ガスG3を浄化手段90に供給し、副成ガスG3を浄化して浄化ガスG4とし、該浄化ガスG4を外部に排出する。
【0059】
上述のように、上記(1-1)における金属化合物濃縮方法では、第1固体ガリウム化合物(固体窒化ガリウム)を含有する混合物Mを、一酸化炭素を含む還元ガスG2を用いて所定温度且つ所定酸素分圧下で還元させることで、気体金属化合物であるGaOを分離し、これを酸化させて第2固体ガリウム化合物(固体酸化ガリウム)を捕集する。
【0060】
(1-2)第1固体金属化合物が第1固体ガリウム化合物(固体酸化ガリウム)、第2固体金属化合物が第2固体ガリウム化合物(固体酸化ガリウム)である場合
この場合にも、上記(1-1)と同様の方法で固体酸化ガリウムを濃縮することができる。流動床部15では、以下の化学式(3),(4)によってガリウムの還元反応及び酸化反応が起こり、捕集部16-1で、第1固体ガリウム化合物におけるガリウムの第3含金属有率よりも高い第4金属含有率で第2固体ガリウム化合物が捕集される。
Ga(solid)+2CO(gas)→GaO(gas)+2CO(gas)・・・(3)
GaO(gas)+O(gas)→Ga(solid)・・・(4)
【0061】
第1固体ガリウム化合物が還元されて気体ガリウム化合物が生成される反応では、化学式(3)に示すように、第1固体ガリウム化合物であるGa、及び還元剤である一酸化炭素が反応して、気体ガリウム化合物であるGaO、及び二酸化炭素が生成される。
また、気体ガリウム化合物が還元されて、第2固体ガリウム酸化物である固体酸化ガリウムが生成される反応では、化学式(4)に示すように、気体ガリウム化合物であるGaOと酸素が反応して、第2固体ガリウム化合物であるGaが生成される。
【0062】
第1固体ガリウム化合物が上記の固体酸化ガリウムである場合、第1固体ガリウム化合物から気体ガリウム化合物を経て第2固体ガリウム化合物(固体酸化ガリウム)を得る工程では、第1固体ガリウム化合物の混合物を900℃以上に加熱するのが好ましい。また、ガリウム混合物における気体ガリウム化合物の蒸気圧が最大値となるように、捕集部16-1の温度及び酸素分圧を調整するのが好ましい。
【0063】
このように、上記(1-2)における金属化合物濃縮方法では、第1固体ガリウム化合物(固体酸化ガリウム)を含有する混合物を、一酸化炭素を含む還元ガスG2を用いて所定温度且つ所定酸素分圧下で還元させることで、気体金属化合物であるGaOを分離し、これを酸化させて第2固体ガリウム化合物(固体酸化ガリウム)を捕集する。
【0064】
(1-3)第1固体金属化合物が第1固体インジウム化合物(固体酸化インジウム)、第2固体金属化合物が第2固体インジウム化合物(固体酸化インジウム)である場合
この場合にも、上記(1-1)と同様の方法で固体酸化インジウムを濃縮することができる。流動床部15では、以下の化学式(5),(6)によってインジウムの還元反応及び酸化反応が起こり、捕集部16-1で、第1固体インジウム化合物におけるインジウムの第3含金属有率よりも高い第4金属含有率で第2固体インジウム化合物が捕集される。
In(solid)+2CO(gas)→InO(gas)+2CO(gas)・・・(5)
InO(gas)+O(gas)→In(solid)・・・(6)
【0065】
第1固体インジウム化合物が還元されて気体ガリウム化合物が生成される反応では、化学式(5)に示すように、第1固体インジウム化合物であるIn、及び還元剤である一酸化炭素が反応して、気体インジウム化合物であるInO、及び二酸化炭素が生成される。
また、気体インジウム化合物が還元されて、第2固体インジウム酸化物である固体酸化インジウムが生成される反応では、化学式(6)に示すように、気体インジウム化合物であるInOと酸素が反応して、第2固体インジウム化合物であるInが生成される。
【0066】
第1固体インジウム化合物が固体酸化インジウムである場合、第1固体インジウム化合物から気体インジウム化合物を経て第2固体インジウム化合物(固体酸化ガリウム)を得る工程では、第1固体インジウム化合物の混合物を700℃以上に加熱するのが好ましい。また、インジウム混合物における気体インジウム化合物の蒸気圧が最大値となるように、捕集部16-1の温度及び酸素分圧を調整するのが好ましい。
【0067】
このように、上記(1-3)における金属化合物濃縮方法では、第1固体インジウム化合物(固体酸化インジウム)を含有する混合物を、一酸化炭素を含む還元ガスG2を用いて所定温度且つ所定酸素分圧下で還元させることで、気体金属化合物であるInOを分離し、これを酸化させて第2固体インジウム化合物(固体酸化インジウム)を捕集する。
【0068】
(1-4)第1固体金属化合物が第1固体ゲルマニウム化合物(固体酸化ゲルマニウム)、第2固体金属化合物が第2固体ゲルマニウム化合物(固体酸化ゲルマニウム)である場合
この場合にも、上記(1-1)と同様の方法で固体酸化ゲルマニウムを濃縮することができる。流動床部15では、以下の化学式(7),(8)によってゲルマニウムの還元反応及び酸化反応が起こり、捕集部16-1で、第1固体ゲルマニウム化合物におけるゲルマニウムの第3含金属有率よりも高い第4金属含有率で第2固体ゲルマニウム化合物が捕集される。
GeO(solid)+CO(gas)→GeO(gas)+CO(gas)・・・(7)
GeO(gas)+1/2*O(gas)→GeO(solid)・・・(8)
【0069】
第1固体ゲルマニウム化合物が還元されて気体ゲルマニウム化合物が生成される反応では、化学式(7)に示すように、第1固体ゲルマニウム化合物であるGe、及び還元剤である一酸化炭素が反応して、気体ゲルマニウム化合物であるGeO、及び二酸化炭素が生成される。
また、気体ゲルマニウム化合物が還元されて、第2固体ゲルマニウム酸化物である固体酸化ゲルマニウムが生成される反応では、化学式(8)に示すように、気体ゲルマニウム化合物であるGeOと酸素が反応して、第2固体ゲルマニウム化合物であるGeが生成される。
【0070】
第1固体ゲルマニウム化合物が固体酸化ゲルマニウムである場合、第1固体ゲルマニウム化合物から気体ゲルマニウム化合物を経て第2固体ゲルマニウム化合物(固体酸化ゲルマニウム)を得る工程では、第1固体ゲルマニウム化合物の混合物を700℃以上に加熱するのが好ましい。また、ゲルマニウム混合物における気体ゲルマニウム化合物の蒸気圧が最大値となるように、捕集部16-1の温度及び酸素分圧を調整するのが好ましい。
【0071】
このように、上記(1-4)における金属化合物濃縮方法では、第1固体ゲルマニウム化合物(固体酸化ゲルマニウム)を含有する混合物を、一酸化炭素を含む還元ガスG2を用いて所定温度且つ所定酸素分圧下で還元させることで、気体金属化合物であるGeOを分離し、これを酸化させて第2固体ゲルマニウム化合物(固体酸化ゲルマニウム)を捕集する。
【0072】
(1-5)第1固体金属化合物が第1固体テルル化合物(固体酸化テルル)、第2固体金属化合物が第2固体テルル化合物(固体酸化テルル)である場合
この場合にも、上記(1-1)と同様の方法で固体酸化テルルを濃縮することができる。流動床部15では、以下の化学式(9),(10)によってテルルの還元反応及び酸化反応が起こり、捕集部16-1で、第1固体テルル化合物におけるテルルの第3金属含有率よりも高い第4金属含有率で第2固体テルル化合物が捕集される。
2TeO(solid)+2CO(gas)→Te(gas)+2CO(gas)・・・(9)
Te(gas)+O(gas)→Te(solid)・・・(10)
【0073】
第1固体テルル化合物が還元されて気体テルル化合物が生成される反応では、化学式(9)に示すように、第1固体テルル化合物であるTeO、及び還元剤である一酸化炭素が反応して、気体テルル化合物であるTe、及び二酸化炭素が生成される。
また、気体テルル化合物が還元されて、第2固体テルル酸化物である固体酸化テルルが生成される反応では、化学式(10)に示すように、気体テルル化合物であるTeと酸素が反応して、第2固体テルル化合物であるTeが生成される。
【0074】
第1固体テルル化合物が固体酸化テルルである場合、第1固体テルル化合物から気体テルル化合物を経て第2固体テルル化合物(固体酸化テルル)を得る工程では、第1固体テルル化合物の混合物を200℃以上に加熱するのが好ましい。また、混合物における気体テルル化合物の蒸気圧が最大値となるように、捕集部16-1の温度及び酸素分圧を調整するのが好ましい。
【0075】
このように、上記(1-5)における金属化合物濃縮方法では、第1固体テルル化合物(固体酸化テルル)を含有する混合物を、一酸化炭素を含む還元ガスG2を用いて所定温度且つ所定酸素分圧下で還元させることで、気体金属化合物であるTeを分離し、これを酸化させて第2固体テルル化合物(固体酸化ガリウム)を捕集する。
【0076】
(1-6)第1固体金属化合物が第1固体セシウム化合物(固体酸化セシウム)、第2固体金属化合物が第2固体セシウム化合物(固体酸化セシウム)である場合
この場合にも、上記(1-1)と同様の方法で固体酸化セシウムを濃縮することができる。流動床部15では、以下の化学式(11),(12)によってセシウムの還元反応及び酸化反応が起こり、捕集部16-1で、第1固体セシウム化合物におけるセシウムの第3金属含有率よりも高い第4金属含有率で第2固体セシウム化合物が捕集される。
Cs(solid)+2CO(gas)→CsO(gas)+2CO(gas)・・・(11)
CsO(gas)+O(gas)→Cs(solid)・・・(12)
【0077】
第1固体セシウム化合物が還元されて気体セシウム化合物が生成される反応では、化学式(11)に示すように、第1固体セシウム化合物であるCs、及び還元剤である一酸化炭素が反応して、気体セシウム化合物であるCsO、及び二酸化炭素が生成される。
また、気体セシウム化合物が還元されて、第2固体セシウム酸化物である固体酸化セシウムが生成される反応では、化学式(12)に示すように、気体セシウム化合物であるCsOと酸素が反応して、第2固体セシウム化合物であるCsが生成される。
【0078】
第1固体セシウム化合物が固体酸化セシウムである場合、第1固体セシウム化合物から気体セシウム化合物を経て第2固体セシウム化合物(固体酸化セシウム)を得る工程では、第1固体セシウム化合物の混合物を室温以上に加熱するのが好ましい。また、セシウム混合物における気体セシウム化合物の蒸気圧が最大値となるように、捕集部16-1の温度及び酸素分圧を調整するのが好ましい。
【0079】
このように、上記(1-6)における金属化合物濃縮方法では、第1固体セシウム化合物(固体酸化セシウム)を含有する混合物を、一酸化炭素を含む還元ガスG2を用いて所定温度且つ所定酸素分圧下で還元させることで、気体金属化合物であるCsOを分離し、これを酸化させて第2固体セシウム化合物(固体酸化セシウム)を捕集する。
【0080】
<反応炉における各種パラメータと収率γ1との関係>
次に、反応炉における各種パラメータと第2固体化合物の収率γ1との関係を、図5図10を用いて説明する。図5図8では、第1固体化合物が固体窒化ガリウム、第2固体化合物が固体酸化ガリウム(上記(1-1))である場合を例に挙げて説明する。
【0081】
上記反応炉の保持部に窒化ガリウム(GaN)25mg及び酸化アルミニウム(Al)25mgを投入し、図5に示すように、巻回されたPt線からなる捕集部を反応炉の上方から挿入し、反応炉の上方から当該反応炉の高さ方向中心位置付近に亘ってφ0.3mmのPt線を設置した。そして、予備加熱炉の温度600℃、還元ガス生成手段の温度700℃、反応炉の還元・酸化反応時における炉内温度(本実施形態では、噴出部温度)1125℃~1200℃、予備加熱炉及び還元ガス生成手段に通じる窒素ガス(50ppm以下の不純物酸素を含む)の流量を0.2L/min~0.25L/minとし、Pt線に捕集された固体酸化ガリウム(Ga)を採取し、その収率γ1を上記式で算出した。このとき、反応炉の貫通孔上端部を基準として、高さ12.0cm~15.0cmの範囲内で上記捕集部の位置を変え、各高さhの位置で捕集された固体酸化ガリウムの収率γ1を算出した。なお、本発明における窒素ガスは、本濃縮装置への供給前では還元ガスではなくむしろ酸化ガスであり、濃縮装置への導入後に還元ガス生成手段において還元ガスに変わる。
【0082】
この結果、図6に示すように、GaN-Al系での固体酸化ガリウムの収率γ1は、捕集部の高さによって異なり、特に、高さhが12.5cm~13.4cmであるときに収率γ1が19%以上となり、高さhが13.0cmであるときに、固体酸化ガリウムの収率γ1がピーク値である27%となることが分かる。よって、GaN-Al系では、捕集部の高さを最適化することで、固体酸化ガリウムの収率γ1を向上することができると推察される。
【0083】
また、炉内温度(噴出部温度)を一定としたときの反応管内の高さ方向に沿う温度分布を図7に示す。図7に示すように、噴出部、すなわち貫通孔上端部の温度が1250℃である場合、高さ2~3cmの領域での管内温度は、噴出部の温度よりも若干高いものの、高さ3cmを超え10cm以下の領域での管内温度は高さに伴って徐々に下がり、高さ10cm以上の領域での管内温度はほぼリニアに下がっている。そして、図6において収率γ1のピーク値である27%である高さ(h=13.0cm)での管内温度は、およそ850℃であることが分かる。よって、反応管内の温度分布と高さhには相関関係があり、捕集部の温度の最適化によって固体酸化ガリウムの収率γ1を向上することができると推察される。
【0084】
次に、反応炉の炉内温度1150℃で一定とし、窒素ガス流量を0.18L/min~0.23L/minの範囲内で変化させたこと以外は図6の場合と同様とし、各窒素ガス流量における固体酸化ガリウムの収率γ1を算出した。
この結果、図8に示すように、窒素ガス流量の増加に伴って収率γ1が向上し、特に窒素ガス流量が0.2L/min以上であるときに収率γ1が20%以上となることが分かる。尚、窒素ガス流量が0.23L/min以上であると窒化ガリウムが飛散してしまうことから、0.23L/minが本貴金属濃縮装置における限界流量である。よって、炉内温度(反応温度)を一定とした場合、窒素ガス流量を限界流量以下の範囲で増加させることで、固体酸化ガリウムの収率γ1を向上することができる。
【0085】
次いで、反応炉の炉内温度を1125℃~1200℃の範囲内で変化させ、窒素ガス流量を0.23L/minとしたこと以外は図6の場合と同様とし、各炉内温度における固体酸化ガリウムの収率γ1を算出した。
この結果、図9に示すように、GaN-Al系での固体酸化ガリウムの収率γ1は、反応炉の炉内温度によって異なり、特に、炉内温度が1125℃~1200℃であるときに収率γ1が20%以上、炉内温度が1140℃~1184℃であるときに収率γ1が35%以上となり、炉内温度が1150℃であるときに、収率γ1がピーク値である38%となることが分かる。炉内温度が1150℃を超えると収率γ1が下がったのは、捕集部近傍の温度が、固体酸化ガリウムの析出温度よりも高く、固体酸化ガリウム析出に適した温度範囲外であったためと推察される。よって、窒素ガス流量を一定とした場合、還元・酸化反応時における炉内温度を最適化することで固体酸化ガリウムの収率γ1を向上することができると推察される。
【0086】
そこで、炉内温度(噴出部温度)を一定としたときの捕集部の温度と固体酸化ガリウムの収率γ1との関係を求めた。この結果、図10に示すように、炉内温度を1150℃で一定としたとき、捕集部の温度が850℃付近で固体酸化ガリウムの収率γ1がピーク値である27%を示した。捕集部の温度が850℃未満の範囲で収率γ1が温度上昇に伴って増大しているのは、温度上昇と共に捕集部近傍でより良好な気流が形成されるためと推察される。また、捕集部の温度が850℃を超える範囲で収率γ1が温度上昇に伴って低下しているのは、(1)捕集部近傍で生じる上昇気流が温度上昇と共に増大することから、捕集部近傍の温度が固体酸化ガリウムの析出適正温度まで下がっておらず、また、(2)捕集部近傍で生じる上昇気流が当該捕集部の螺旋構造の下面に衝突することによって乱れ、捕集部に析出した固体酸化ガリウムの剥離、飛散等が生じて、析出量が減少するためと推察される。
【0087】
したがって、捕集部の温度、炉内温度分布及び収率γ1には相関関係があり、捕集部の温度を最適化することで固体酸化ガリウムの収率γ1を向上することが確認された。
【0088】
上述したように、本実施形態によれば、金、銀及び銅からなる群から選択された1種又は複数種の貴金属を第1金属含有率で含有する第1固体貴金属の混合物中の上記第1固体貴金属を気化して気体貴金属とし、次いで、上記気体貴金属を固体化して第2固体貴金属として該第2固体貴金属を上記第1金属含有率よりも高い第2金属含有率で捕集するので、上記群から選択された貴金属を濃縮して捕集することができ、また、濃縮の際に廃液が生じず、環境負荷が小さく、更には煩雑な廃液処理を要しない。また、廃液処理用の構成を有さない簡単な装置構成で上記金属を濃縮することができ、実用化に適した貴金属濃縮装置1を提供することができる。
【0089】
図11は、図2の反応炉の第1変形例を示す断面図である。図11の反応炉は図2の反応炉と基本的に同じであるので、重複する説明を省略し、以下に異なる部分を説明する。図11の反応炉は、捕集部16-1に加えて、他の捕集部を有している点で図2の反応炉10と異なる。
同図において、反応炉10Aは、流動床部15の上部に配置され且つ内管11aの上部に載置された蓋部21を備えている。蓋部21は、すり鉢形状を有するセラミック製の部材であり、底部21aと、側壁部21bと、底部21aに設けられた貫通孔21cとを有している。蓋部21は、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニアなどの酸化物を主成分とするセラミックからなる。
【0090】
反応炉10Aは、流動床部15に位置し且つ第2固体金属化合物を捕集する捕集部16-2を有する。本変形例では、捕集部16-2は、蓋部21で構成される天井壁である。具体的には、捕集部16-2は、蓋部21における底部21aの下面21d又は上面21eである。捕集部16-2は、上記気体貴金属が固体化することで得られる第2固体貴金属を、第1金属含有率よりも高い第2金属含有率で捕集する。また、上記気体金属化合物が酸化することで得られる第2固体金属化合物S3,S4を、第3金属含有率よりも高い第4金属含有率で捕集することができる。
【0091】
流動床部15では、気体貴金属の固体化によって第2固体貴金属に変化し、この固体化反応により、底部21aの下面21dに第2固体貴金属が付着する。また、上述のようにレアメタルの気体金属化合物が酸化反応によって第2固体金属化合物に変化し、この酸化反応により、底部21aの下面21dに第2固体金属化合物S3が付着させることができる。
【0092】
また、流動床部15から貫通孔21cを通って底部21aの上面21e近傍に供給された気体貴金属が第2固体貴金属に変化し、上面21eに第2固体貴金属が付着する。このとき、流動床部15から貫通孔21cを通って底部21aの上面21e近傍に供給された気体金属化合物が第2固体金属化合物S4に変化し、上面21eに第2固体金属化合物S4が付着させることもできる。これにより、捕集部16-2で第2固体貴金属が捕集され、加えて、第2固体金属化合物S3,S4が捕集される。
【0093】
混合物Mに含まれる第1固体ガリウム化合物中のガリウムの質量をm1、捕集部16-1で捕集された第2固体金属化合物S1中のガリウムの質量をm2、捕集部16-2で捕集された第2固体金属化合物S3,S4中のガリウムの合計質量をm3としたとき、収率γ2{=(m2+m3)/m1*100}は、1.0%を超え、好ましくは1.5%を超える。したがって、流動床部15において、隔壁となる捕集部16-2を更に設けることにより、捕集部16-1,16-2の双方で第2固体金属化合物をより多く捕集することが可能となる。
【0094】
図12は、図2の反応炉の第2変形例を示す断面図である。図12の反応炉は図2の反応炉と基本的に同じであるので、重複する説明を省略し、異なる部分を以下に説明する。図12の反応炉は、捕集部16-1に加えて、他の捕集部を有している点で図2の反応炉10と異なる。
同図において、反応炉10Bは、流動床部15に位置し、第2固体金属化合物を捕集する捕集部16-3を有する。本変形例では、捕集部16-3は、反応管11の内部空間内に保持され且つ第2固体金属化合物からなる種結晶材料22である。種結晶材料22は、閉塞部11eに取り付けられた線材23によって流動床部15内に吊り下げた状態で保持されている。
【0095】
捕集部16-3は、上記気体金属化合物が酸化することで得られる第2固体金属化合物S5を、第1金属含有率よりも高い第2金属含有率で捕集することができる。流動床部15では、上述のように、気体貴金属の固体化によって第2固体貴金属に変化し、この固体化反応により、管状部11a-1の内周面(11a-2)(図2参照)に第2固体貴金属が付着する。このとき、上述のようにレアメタルの気体金属化合物が酸化反応によって第2固体金属化合物に変化し、この酸化反応により、種結晶材料22に第2固体金属化合物S5が付着させることができる。これにより、捕集部16-3で第2固体金属化合物S5が捕集される。
【0096】
混合物Mに含まれる第1固体ガリウム化合物中のガリウムの質量をm1、捕集部16-1で捕集された第2固体金属化合物S1中のガリウムの質量をm2、捕集部16-3で捕集された第2固体金属化合物S5中のガリウムの質量をm4としたとき、収率γ3{=(m2+m4)/m1*100}は、2.1%以上である。したがって、流動床部15において、種結晶からなる捕集部16-3を更に設けることにより、捕集部16-1,16-3の双方で第2固体金属化合物をより多く捕集することが可能となる。
【0097】
<貴金属濃縮装置の他の実施形態>
図13は、本発明の第2実施形態に係る貴金属濃縮装置の構成を概略的に示す図である。
図13の貴金属濃縮装置1Aは、図1の貴金属濃縮装置1と基本的に同じであり、予備加熱炉50-2を有していない点で図1の貴金属濃縮装置と異なる。すなわち、図1の予備加熱炉50-2は、熱交換器50-1から供給された酸素含有ガスG1を所定温度まで加熱するが、酸素含有ガスG1を熱交換器50-1によって所定温度まで加熱することが可能な場合には、予備加熱炉50-2を備えなくてもよい。これにより、更に簡単な装置構成とすることができ、実用化により適した貴金属濃縮装置を提供することができる。
【0098】
また、貴金属濃縮装置1Aは、ガス排出手段60に設けられ、反応炉10内を減圧する減圧手段91を更に備えてもよい。減圧手段91は、例えばガス排出管60aに取り付けられるファンであり、反応炉10よりも下流であって回収手段80の上流に配置される。副成ガスG3が高温である場合、反応炉10の下流であって減圧手段91の上流に副成ガスG3を冷却する冷却手段を設けてもよい。これにより、反応管11の管内圧力が通常時の管内圧力よりも低くなり、流動床部15におけるレアメタルの還元反応を通常時よりも低い温度で行うことができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0099】
図14は、本発明の第3実施形態に係る貴金属濃縮装置の構成を概略的に示す図である。図14の貴金属濃縮装置は、図1の貴金属濃縮装置1と基本的に同じであり、予備加熱炉50-2を有さず、且つ還元ガス生成手段30に代えて他の還元ガス生成手段を備える点で図1の貴金属濃縮装置と異なる。
【0100】
図14の貴金属濃縮装置1Bは、レアメタルを含有する第1固体金属化合物を還元する還元ガスG2’を生成して反応炉10に供給する還元ガス生成手段92を備える。この還元ガス生成手段92は、例えばロータリーキルンであって、回転可能に設けられた炉体92aと、熱交換器50-1に接続され且つ該熱交換器からの酸素含有ガスG1を炉体92aに供給するためのガス供給部92bと、炭素源含有材料Wを炉体92aに供給するための材料供給部92cと、炉体92aに取り付けられたバーナ92dと、炉体92a内で生成された還元ガスG2’をガス導入管30aに供給するためのガス排出部92eと、還元ガス生成時に副成される炭化固体物を排出するための炭化固体物排出部92fとを備える。
【0101】
還元ガス生成手段92は、予備加熱部50-2から供給された酸素含有ガスG1及び材料供給部92cから供給された炭素源含有材料Wをバーナ92dで加熱し、炭素の酸化反応によって一酸化炭素を含む還元ガスG2’を生成し、ガス導入管30aを介して反応炉10に供給する。このように、還元ガス生成手段92の構成によれば、炭素源含有材料Wの供給、還元ガスG2’の生成、及び炭化固体物の排出を連続的に行うことができ、更に実用性の高い貴金属濃縮装置を提供することができる。
【0102】
図15は、図1の貴金属濃縮装置1を使用して実現されるレアメタルのリサイクルモデルを説明する図である。
従来、貴金属である金が使用された電気・電子機器の製造工程では、先ず鉱石などから採掘された金P1を使用して、デバイス製造工場131にてLEDデバイスP2が製造され、その後、機器メーカ132にて、LEDデバイスP2を搭載するLED電球などの電気・電子機器P3が製造される。そして、消費者の建物133などで電気・電子機器P3が照明として使用されている。
【0103】
これまで、LEDデバイスを搭載する使用済み電気・電子機器のリサイクルモデルは具体的に検討されていなかった。また、LEDデバイスを搭載する民生用の電気・電子機器の製造販売は2011年頃に開始されており、一般的なLEDデバイスの設計寿命は約10年間と長期間であることから、その製造販売の開始から10年経過した後は、設計寿命が過ぎた電気・電子機器が大量に余ることが想定され、LEDデバイスを搭載する電気・電子機器のリサイクルモデルの早期実現が求められている。
【0104】
そこで、本発明者が提案するリサイクルモデルでは、上記実施形態に係る貴金属濃縮装置1を回収工場134に導入し、回収工場134にて、消費者の建物133で使用された使用済み電気・電子機器P4を回収し、使用済み電気・電子機器P4を分解して使用済みLEDデバイスを得る。そして貴金属濃縮装置1を用いて、使用済みLEDデバイスを混合物Mとして貴金属濃縮装置1に供給すると共に、混合物Mに含有される金(或いは、金及び窒化ガリウムなど)を乾式法で濃縮し、固体貴金属である金を含む貴金属含有混合物P5を回収する。また、使用済み電気・電子機器P4を分解して得られた廃棄樹脂を炭素源含有材料Wとして還元ガス生成手段30に供給し、還元ガスG2を生成する。
【0105】
これにより、使用済み電気・電子機器P4の大量処理が可能となると共に、貴金属が濃縮された貴金属含有混合物P5を回収することができる。よって、貴金属含有混合物P5或いはこれから回収されたガリウムを回収工場134から素子製造工場131に供給することにより、素子製造工場131にて使用済み電気・電子機器P4に含まれるガリウムを効率的にリサイクルすることができ、使用済み電気・電子機器P4のリサイクルモデルを早期に実現することが可能となる。
【0106】
以上、上記実施形態に係る貴金属濃縮装置について述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0107】
例えば、前記反応炉は、熱処理システムとして周知である各種の高温炉をベースにして本発明の機能を有する反応炉とすることができる。廃棄物の熱処理システムとしては、ストーカ炉、流動床炉、ロータリーキルン、液中燃焼炉、溶融炉、ガス化燃焼炉、ガス化改質炉、油化施設、乾留炉(炭化炉)等が挙げられる(出典:中央環境審議会廃棄物・リサイクル協会、廃棄物処理基準等専門委員会(第6回)議事次第・資料より抜粋)。対象廃棄物としては、汚泥、廃プラスチック類、紙くず、木くず、繊維くず、動植物系残渣、廃油、廃溶剤、焼却残渣、無機物等が挙げられ、上記熱処理システムは、これら廃棄物の処理のために最適化されている。よって上記のような熱処理システムを本発明の上記必須の機能を有するように最適化することにより、本発明の反応炉を構成することができる。本発明を産業として実施する際には、不要な構成を省いて簡略化し、また、用途或いは仕様に応じて装置スケールや処理能力を増減することができる。
【0108】
また、本発明の貴金属濃縮装置は、比較的小規模で実施する場合に適しており、特に研究用装置或いは検証用の小型ユニットとして有用である。また、このような小型ユニットは、教育機関、研究機関等で使用される言わば「卓上リサイクル工場」として用いることができる。
【実施例
【0109】
以下、本発明の実施例を説明する。なお本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
図5に示すような貴金属濃縮装置を用い、巻回部を有するPt線に代えてPt線の先端に石英板を吊し、混合物としてのLEDデバイス1.5gを反応炉内に投入した。次いで、窒素ガス(不純物酸素50ppm以下)を流量0.2L/minで供給した。そして、反応炉の加熱部に、赤外線ゴールドイメージ炉(アドバンス理工(株)製、装置名「RHL-E410P」、温度範囲(仕様):室温~1400℃)、熱処理ゾーン(仕様):φ10mm×80mm)を用い、反応炉の炉内設定温度1150℃、加熱時間5hとし、反応管内で上記混合物と窒素ガスとを反応させ、その後、反応管の内管の内周面に付着した析出物を採取した。
内管の内周面のうち、温度が1000℃以上になる位置が析出物の採取に適しているため、当該位置を採取位置とした。
【0110】
採取位置に付着した析出物をSEM-EDX(日立ハイテクノロジー(株)製、装置名「SU8020」)で分析したところ、検出物の48.9質量%がCu元素、23.6質量%がO元素、18.1質量%がSi元素、8.6質量%がAg元素、0.4質量%がAu元素、0.3質量%がAl元素であったことから、検出物に大量のAu、Ag、Cuが存在していることが分かった。
【0111】
そこで、上記採取位置を含む内管の回収部を切断し、その回収部を4等分して、各管片に堆積した析出物の質量を分析し、4つの管片から採取されたAuの合計質量及び収率を求めた。質量分析にはICP質量分析法を用い(アジレント・テクノロジー(株)製、装置名「Agilent 7700シリーズ」)、また、上記と同様の方法にて、Ag、Cuの合計質量及び収率を求めた。Au及びAgについては王水処理を、Cuについては硝酸処理を施した。更に、上記と同様の実験を3回行い、Au、Ag、Cuの各元素について、実験3回分の各値の平均値を計算した。結果を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
表1に示すように、Auの収率の最大値は1.3%、収率の平均値は0.88%と、Auを高い収率で濃縮して回収できることが分かった。また、Agの収率の最大値は19.1%、収率の平均値は8.6%と、Agを非常に高い収率で濃縮して回収できることが分かった。更に、Cuの収率の最大値は9.5%、収率の平均値は8.1%と、Cuを非常に高い収率で濃縮して回収できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0114】
貴金属である金は、CIGS型薄膜太陽光パネルや発光ダイオード(LED)などに応用される重要な元素であるため、本技術は、鉱山から採掘される鉱石や使用済み電子部品からの金の分離に利用可能である。特に、本技術では、廃LEDからの金の乾式法によるリサイクルのニーズに対応することができ、非常に有用である。
【符号の説明】
【0115】
1 貴金属濃縮装置
1A 貴金属濃縮装置
1B 貴金属濃縮装置
10 反応炉
10A 反応炉
10B 反応炉
11 反応管
11a 内管
11a-1 管状部
11a-2 内周面
11a-3 底部
11a-4 貫通孔
11d-1 貫通孔
11e-1 貫通孔
11b 支持管
11c 外管
11d 閉塞部
11e 閉塞部
11f 供給部
11g 蓋部
12 加熱部
12a 炉体
12b ヒータ
13 保持部
14 導入口
15 流動床部
16-1 捕集部
16-2 捕集部
16-3 捕集部
17 排出口
21 蓋部
21a 底部
21b 側壁部
21c 貫通孔
21d 下面
21e 上面
22 種結晶材料
30 還元ガス生成手段
30a ガス導入管
31 材料供給部
32 生成部
32a 石英管
32b ヒータ
40 酸素含有ガス供給手段
50 ガス加熱手段
50a ガス導入管
50-1 熱交換器
50-1a 第1流路
50-1b 第2流路
50-2 予備加熱部
50-2a ステンレス管
50-2b 加熱部
60 ガス排出手段
60a ガス排出管
80 回収手段
81 分離部
81a 内壁
81b 下端
81c 上端
81d 排出口
82 回収部
90 浄化手段
91 減圧手段
92 還元ガス生成手段
92a 炉体
92b ガス供給部
92c 材料供給部
92d バーナ
92e ガス排出部
92f 炭化固体物排出部
100 反応炉
101 反応管
101a 内管
101b 支持台
101c 外管
101d 供給部
102 加熱部
103 保持部
104 導入管
105 流動床部
107 排出口
108 反応管内温度制御部
110 還元ガス供給手段
111 ステンレス管
112 加熱部
113 還元ガス温度制御部
114 酸素分圧制御部
131 素子製造工場
132 機器メーカ
133 建物
134 回収工場
G1 酸素含有ガス
G2 還元ガス
G2’ 還元ガス
G2” 還元ガス
G3 副成ガス
G4 浄化ガス
L 流動経路
M 混合物
P1 ガリウム
P2 LEDデバイス
P3 電気・電子機器
P4 使用済み電気・電子機器
P5 貴金属含有混合物
S1 第2固体金属化合物
S2 第2固体金属化合物
S3 第2固体金属化合物
S4 第2固体金属化合物
S5 第2固体金属化合物
W 炭素源含有材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15