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  • 特許-ファスナ構造 図1
  • 特許-ファスナ構造 図2
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  • 特許-ファスナ構造 図4A
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  • 特許-ファスナ構造 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】ファスナ構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 17/00 20060101AFI20220328BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20220328BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20220328BHJP
   F16L 3/08 20060101ALI20220328BHJP
   H02G 3/32 20060101ALI20220328BHJP
   H05K 7/00 20060101ALN20220328BHJP
【FI】
F16B17/00 B
F16B2/08 U
F16B19/00 Q
F16L3/08 D
H02G3/32
H05K7/00 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018036105
(22)【出願日】2018-03-01
(65)【公開番号】P2019152241
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】592077121
【氏名又は名称】竹内工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】佐野 公生
(72)【発明者】
【氏名】藤井 次郎
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3133424(JP,U)
【文献】特開2005-076740(JP,A)
【文献】特開2003-329021(JP,A)
【文献】特開2017-015099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 17/00
F16B 19/00
F16B 2/08
H05K 7/00
F16L 3/08
H02G 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に取り付けられる被取付部材に設けられ、当該基板の孔に圧入状態に挿入されるファスナ部を備えるファスナ構造であって、前記ファスナ部は、前記被取付部材から突出されたポストと、両端部が前記被取付部材に連結され、前記ポストの両側部から先端部を囲むように延設された嵌合帯片を備え、前記ポストは突出方向に向けて幅寸法が増大されたテーパ面部を備え、前記嵌合帯片は前記テーパ面部に対向されかつ前記突出方向に向けて幅寸法が低減された逆テーパ面部を備え、前記嵌合帯片は、前記逆テーパ面部が前記テーパ面部に対して、前記突出方向及びこれと交差する幅方向に相対移動可能とする易変形部を備え、さらに前記テーパ面部は、その両側面が前記突出方向のほぼ先端に至るまでテーパ面として構成された三角形に形成され、前記嵌合帯片の前記逆テーパ面部は前記テーパ面にそれぞれ対向する逆テーパ面を有する一対の逆テーパ面部として構成されることを特徴とするファスナ構造。
【請求項2】
前記テーパ面部は前記逆テーパ面部よりも前記ポストの突出方向に長い寸法に形成されている請求項に記載のファスナ構造。
【請求項3】
前記逆テーパ面部の外側面に係止羽根を備える請求項1または2に記載のファスナ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品を基板に取り付けるためのファスナ構造に関し、特に基板に設けられた孔に圧入状態に挿入して取り付けを行うためのファスナ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の基板に各種電子部品を取り付ける際には、電子部品に設けたファスナ部を基板に設けた孔に挿入して取り付けることが行われている。この種のファスナ部の構造として、基板の表面側から基板に設けた孔を貫通させ、基板の裏面側において係止させることでその離脱を防止したスナップ方式のファスナ構造が一般的である。
【0003】
一方、基板の孔が深いとき、あるいは基板の裏面側における係止が困難な場合には、圧入方式のファスナ構造が採用される。特許文献1には、孔に挿入される脚部に外側方向に突出するバネ部を設け、これら脚部とバネ部とにそれぞれ互いに当接される傾斜面を設けた固定具が提案されている。特許文献1の技術は、バネ部を内径方向に撓めながら孔に挿入させ、脚部を孔から引き抜くときに脚部とバネ部との当接によるテーパ作用によってバネ部に外径方向の力を作用させ、孔から離脱させ難くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第261293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、脚部に対してバネ部が固定的に設けられているので、両部の相対位置は一定である。そのため、孔に挿入する際においても脚部とバネ部の傾斜面が当接する状態となり、バネ部に外径方向の力が作用される。これにより、孔に挿入する際にバネ部と孔の内面との間に大きな接触摩擦力が発生し、孔に挿入することも困難になる。すなわち、特許文献1の技術は、孔から離脱させ難くすれば、これに伴って孔に挿入することも困難になる。反対に、孔に挿入することを容易にすれば、孔から離脱され易くなる。したがって、孔への挿入を容易にする一方で孔からの離脱を困難にすることができないという課題が生じている。
【0006】
本発明の目的は、孔への挿入を容易にする一方で孔からの離脱を困難にしたファスナ構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板に取り付けられる被取付部材に設けられ、当該基板の孔に圧入状態に挿入されるファスナ部を備えるファスナ構造であって、前記ファスナ部は、前記被取付部材から突出されたポストと、両端部が前記被取付部材に連結され、前記ポストの両側部から先端部を囲むように延設された嵌合帯片を備える。その上で、前記ポストは突出方向に向けて幅寸法が増大されたテーパ面部を備える。また、前記嵌合帯片は前記テーパ面部に対向されかつ前記突出方向に向けて幅寸法が低減された逆テーパ面部を備え、前記嵌合帯片は、前記逆テーパ面部が前記テーパ面部に対して、前記突出方向及びこれと交差する幅方向に相対移動可能とする易変形部を備えている。
【0008】
本発明においては、さらに、前記ポストの前記テーパ面部は、その両側面が突出方向のほぼ先端に至るまでテーパ面として構成された三角形に形成され、前記嵌合帯片の前記逆テーパ面部は前記テーパ面にそれぞれ対向する逆テーパ面を有する一対の逆テーパ面部として構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、嵌合帯片に設けた易変形部によって逆テーパ面部をポストの突出方向に相対移動可能としているので、その相対位置の変化によりポストのテーパ面部との当接位置が変化され、逆テーパ面部に生じる径方向の応力が変化される。これにより、ファスナ部を孔に挿入する際の摩擦力を低減して挿入を容易にする一方で、離脱する際の摩擦力を増大して離脱を困難にするファスナ構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のファスナ構造をケーブルクランプに適用した実施形態の斜視図。
図2図1のケーブルクランプの、(a)正面図、(b)右側面図、(c)底面図。
図3】ファスナ部の拡大正面図。
図4A】ケーブルクランプの装着前の状態の正面図。
図4B】ケーブルクランプの装着途中の状態の正面図。
図4C】ケーブルクランプの装着時の状態の正面図。
図4D】ケーブルクランプの装着時の状態変化を示す正面図。
図5】ケーブルクランプを取り外す際の状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明のファスナ構造を、基板BBに固定する被取付部材としてのケーブルクランプ1に適用した実施形態の斜視図、図2(a)~(c)はその正面図、右側面図、底面図である。ケーブルクランプ1は樹脂の一体成型により形成されており、矩形板状をしたベース4の下側にファスナ部2が、上側にクランプ部3がそれぞれ一体に形成されている。
【0012】
このケーブルクランプ1は、基板、例えば木製の基板BBに取り付けられるが、その際には当該基板BBに開けられた孔Hにファスナ部2が圧入状態に挿入される。そして、当該ファスナ部2と孔Hとの嵌合によってケーブルクランプ1が容易には離脱されることがない状態で基板BBに取り付けられる。
【0013】
クランプ部3は、円弧状に近く曲げ形成された細幅の上帯部31と下帯部32からなる輪帯部30を備えており、図1に仮想線で示すように、上帯部31は下帯部32に対してヒンジ部33を支点にして上下方向に弾性変形可能とされている。前記上帯部31の先端には係止爪34が設けられ、前記下帯部32の先端には係止溝35が設けられており、これらで係合部36が構成されている。
【0014】
前記係合部36は既に広く知られている構造であるため詳細な説明は省略するが、前記係止爪34は、前記上帯部31の先端にU字型に形成されている。前記係止溝35は前記下帯部32の先端に設けられて前記係止爪34の係合突起34aが係合される溝として構成されている。
【0015】
このクランプ部3は、図1の仮想線で示すように、上帯部31が開いた状態から、当該上帯部31を弾性変形させながら、図1実線で示すように係止爪34を係合溝35に挿入させることにより、係止爪34が係止溝35に係止される。この状態では、上帯部31と下帯部32とで輪帯部30が環状に構成され、この輪帯部30内に図外のケーブルを挿通させて支承するようになっている。なお、この実施形態では、前記上帯部31の先端側の一部には内方に向けて舌片状の拘束片37が突出されており、この拘束片37によって輪帯部30内に支承されるケーブルをベース4との間に挟持し、ケーブルに節度を与えるようになっている。
【0016】
一方、前記ファスナ部2は、図3に拡大正面図を示すように、前記ベース4の下面のほぼ中央位置に設けられている。すなわち、前記ベース4の底面の中央から下方に向けて垂直にポスト20が所要の長さで突出されている。このポスト20の先端部21は正面方向から見たときに、下方の先端側に向けて徐々に幅寸法、すなわち板厚が増大された二等辺三角形の形状に形成されており、これにより当該先端部21は、その両側面に突出方向のほぼ先端に至るまでテーパ面21aを有するテーパ面部21として構成されている。したがって、以降は、当該先端部をテーパ面部21と称する。また、このテーパ面部21の先端面21bは略平面状に形成されている。なお、テーパ面部21の先端両側は角に丸みを付けているが、設計上はこの丸みは形成しなくてもよい。
【0017】
また、前記ベース4の下面側には、正面方向から見たときに、前記ポスト20の両側方領域から下方領域わたってポスト20を囲むほぼ逆台形枠状に形成された帯状の嵌合帯片22が配設されている。この嵌合帯片22の両端部は前記ベース4の下面に連結されており、この両端部からそれぞれ斜め内側下方に向けて延長される領域は側片部24として構成され、下側の先端領域は底片部25として構成されている。
【0018】
これら両側の側片部24は、前記ポスト20のテーパ面部21に対向配置されるとともに、その内側面が上方に向けて徐々に幅寸法、すなわち板厚が増大する逆三角形の形状に形成されており、逆テーパ面部24として構成されている。したがって、以降はこの側片部を逆テーパ面部24と称する。この逆テーパ面部24の各内側面は逆テーパ面24aとして構成され、前記先端片部25の内底面25aは前記ポスト20の先端面21bに対向する平面板状に形成されている。また、電気逆テーパ面部24の逆テーパ面24aは、前記テーパ面部21のテーパ面21aよりもポスト20の突出方向に沿った長さが短い寸法に形成されている。
【0019】
前記嵌合帯片22においては、その両端部、すなわち前記ベース4と前記逆テーパ面部24とを連結している部位にはそれぞれ幅寸法が低減され、かつ外側に向けて略U字型に屈曲された易変形部23が形成されている。この易変形部23により、前記嵌合帯片22はポスト20の突出方向、すなわち図3の上下方向に弾性変形されることが可能であり、さらにこの弾性変形によって両側の逆テーパ面部24はポスト20に対して、換言すればテーパ面部21に対して上下方向に相対移動することが可能とされている。この易変形部23によって前記嵌合帯片22がポスト20の突出方向に変形する長さは、前記テーパ面部21のポスト20の突出方向の長さよりも短く設計されている。また、この易変形部23を設けることにより、両側の逆テーパ面部24は幅方向、すなわちポスト20の突出方向と交差する図3の左右方向に弾性変形することが可能とされている。
【0020】
前記嵌合帯片22の各逆テーパ面部24の外側面にはそれぞれ外方に向けて突出された複数枚の係止羽根26が形成されている。この実施形態では各逆テーパ面部24にそれぞれ長さ方向に沿って所要の間隔をおいて3枚ずつの係止羽根26が形成されている。前記各係止羽根26は、図2(c)から判るように、底面方向から見たときに外縁部がほぼ円弧の一部となるような形状とされている。
【0021】
ここで、前記ポスト20と前記嵌合帯片22は、常態のとき、すなわち外力が加えられていないときには、ポスト20のテーパ面部21の先端面21bと、嵌合帯片22の先端片部25の内底面25aとの間には所要の隙間が存在する状態となっている。同時に、ポスト20のテーパ面21aと、嵌合帯片22の両側の逆テーパ面24aの対向間にも所要の隙間が存在する状態となっている。
【0022】
以上の構成のケーブルクランプ1を基板BBに対して取り付ける際の動作を説明する。図4A図4Cはケーブルクランプ1の嵌入直前、嵌入中、嵌入完了の各状態を示す図である。基板BBの孔Hに対して図4Aのように、ケーブルクランプ1のファスナ部2を対向配置した上で、図4Bのようにファスナ部2を下方向(矢印A方向)に向けて孔H内に挿入する。
【0023】
ファスナ部2を孔Hに挿入を開始することにより、嵌合帯片22は係止羽根26が孔Hの内面に当接され、この当接により発生する摩擦力によって孔H内への挿入に抵抗を受け、一時的に挿入が停止される。一方、ポスト20は孔H内に進入されて行くるため、嵌合帯片22の易変形部23における弾性変形によって、ポスト20は嵌合片部23に対して相対的に下方に移動される。そして、ポスト20の先端部21の先端面21bが嵌合帯片22の先端片部25の内底面25aに当接された状態になる。
【0024】
さらにポスト20の挿入が継続されると、嵌合帯片22はポスト20に押されて一体となって孔H内への挿入が継続される。このとき、嵌合帯片22の逆テーパ面部24はそれぞれ係止羽根26と孔Hの内面との当接により内方に向けての応力が発生し、内方に向けて弾性変形する。
【0025】
このとき、易変形部23での変形により、ポスト20のテーパ面部21は、嵌合帯片22の逆テーパ面部24に対して相対的に下方に移動された状態にある。したがって、テーパ面21aと逆テーパ面24aの間には相対的に大きな隙間が生じることになり、両側の逆テーパ面部24はこの大きくされた隙間の寸法分だけ内側に弾性変形される。したがって、両側の逆テーパ面部24における嵌合帯片22の外幅寸法も小さくなり、この状態のまま孔H内に進入される。したがって、係止羽根26と孔Hの内面との摩擦力が小さくなり、ファスナ部2をより小さい力で孔H内に挿入することが可能になる。
【0026】
最終的には、図4Cのように、ファスナ部2はベース4の底面が基板BBの表面に当接するまで挿入される。この状態では係止羽根26は孔Hの内面に弾性的に当接されており、この弾性力により生じる摩擦力によって孔Hに対してファスナ部2の挿入状態が保持される。したがって、ケーブルクランプ1は基板BBに固定された状態となる。特に、この状態では両側の逆テーパ面24aはそれぞれテーパ面21aに当接した状態にあるので、この当接により生じる外径方向の応力により係止羽根26と孔Hの内面との当接による摩擦力が生じる。一方、この当接により両側の逆テーパ面部24が内方に向けて移動することが防止され、係止羽根26と孔Hの内面との当接による摩擦力が保持され、強固な固定状態が保持される。
【0027】
なお、この状態のときに、孔Hの径寸法のバラツキ、例えば製造誤差等によっては、テーパ面部21と逆テーパ面部24との間に隙間が生じ、テーパ面部21と逆テーパ面部24の間に生じる応力が相対的に小さくなり、係止羽根26による保持力が小さくなることが考えられる。このような場合にはファスナ部2における固定状態が低下するおそれが生じる。
【0028】
しかし、このような場合においても、実施形態のファスナ部2では、図4Dに示すように、経時的には非常に緩やかであるが、嵌合帯片22は易変形部23での弾性復帰力によって逆テーパ面部24及び先端片部25は徐々に孔H内において下方に弾性変形されて行き、ポスト20に対して相対的に下方に移動された状態になる。このような状態になると、逆テーパ面部24はテーパ面部21の下方の幅寸法の大きな領域に当接する状態になり、この当接により生じる応力による係止羽根26と孔Hの内面との当接による摩擦力が保持され、強固な固定状態が保持される。
【0029】
一方、ファスナ部2が孔Hに挿入されてケーブルクランプ1が基板BBに固定されている状態のとき、すなわち図4Cあるいは図4Dに示した状態のときに、ケーブルクランプ1を基板BBに対して引き上げる方向の力が作用したときには、ポスト20は孔H内において上方(矢印B方向)に移動されようとする。
【0030】
しかし、ポスト20が上方に移動されようとしても、その移動力は易変形部27での変形によって嵌合帯片22には伝達されず、嵌合帯片22は挿入されている位置に保たれる。したがって、図5に示すように、ポスト20は嵌合帯片22に対して相対的に上方に移動され、逆テーパ面部24はテーパ面部21の下方の幅寸法の大きな領域に当接する。そして、ポスト20の移動力は、テーパ面部21と逆テーパ面部24との当接面に作用し、この当接面において外径方向(矢印C方向)の相対的に大きな分力が生じ、この分力により両側の側片部24に外径方向の力が加えられる。
【0031】
これにより、両側の係止羽根26が孔Hの内面により強い力で当接されることになり、両者間での摩擦力がさらに増大し、ファスナ部2が孔Hから離脱され難くなる。したがって、ファスナ部2における固定強度が高められることになり、ケーブルクランプ1を基板から取り外すことは極めて困難になる。なお、図4Dの状態にあったときには、図5に示したようにポスト20の上方への移動力が直ちに逆テーパ面部24を通して嵌合帯片22に作用し、ファスナ部2が孔Hから離脱され難くなる。
【0032】
このとき、テーパ面部21は逆テーパ面部24よりもポスト20の突出方向に長く形成されているので、逆テーパ面部24は全長、すなわちポスト20の突出方向の全領域においてテーパ面部21に当接した状態が保持され、この全領域にわたって外径方向の力が加えられる。これにより、複数の係止羽根26の全てにおいて孔Hとの摩擦力が増大されることになる。また、テーパ面部21はほぼ先端に至るまで幅寸法が増大する三角形をしており、その先端面21bは平面であるので、係止羽根26の数およびその配列の数を多くしても、ポスト20の突出方向の長さ、および嵌合帯片22の長さを必要以上に長くすることはなく、ファスナ部2の小型化が可能になる。したがって、深さ寸法の小さい孔に対しても適用できる。
【0033】
以上のように、実施形態のファスナ部2は、ポスト20に設けたテーパ面部21と、嵌合帯片22に設けた逆テーパ面部24が孔Hの径方向に当接するように構成するとともに、易変形部23を備えてポスト20と嵌合帯片22とが上下方向、すなわちポスト20の長さ方向に相対移動可能に構成しているので、この相対移動によってテーパ面部21と逆テーパ面部24との当接により生じる応力を変化させることができる。これにより、ファスナ部2を孔Hに挿入する際の力を小さくし、孔Hから離脱する際の力を大きくすることができる。
【0034】
また、仮に、孔Hの径寸法が所定よりも大径の場合、あるいは何らかの理由により拡径された場合に、ポスト20が上方に大きく移動されてテーパ面部21の先端寄りの部位と逆テーパ面部24の上端寄りの部位が当接される状況になったとしても、易変形部23での変形はそれ以上に嵌合帯片22が延びる状態にはならないので、テーパ面部21と逆テーパ面部24との当接状態が崩れることは防止される。すなわち、ポスト20のみが上方に引き抜かれて係止羽根26が孔Hから離脱されるようなことが防止される。
【0035】
ここで、嵌合片部23の易変形部23は、逆テーパ面部24をポスト20に対して相対移動可能とする構成であれば実施形態の形状に限定されるものではない。また、嵌合片部23両端部は、ベース4に連結するのに代えてベース4に近いポスト20の一部に連結してもよい。すなわち、ベース4から突出されているポスト20の基端の近傍であれば、実質的にベース4に連結されていても、前記実施形態のファスナ構造と等価な作用効果を奏することができるためである。
【0036】
本発明において、ポストのテーパ面部に設けたテーパ面と、逆テーパ面部の逆テーパ面はそれぞれ1つずつの構成であっても良い。すなわち、テーパ面部の一方の側面にのみテーパ面が形成され、嵌合帯片の一方にのみ逆テーパ面部及び逆テーパ面が設けられた構成であってもよい。また、逆テーパ面部の外面に設けた係止羽根の枚数や形状、寸法等は適宜に変更可能であってもよく、例えば係止羽根は単なる突起あるいは突条であってもよい。
【0037】
本発明のファスナ構造は、実施形態のケーブルクランプに限定されるものではなく、ベルト構造のケーブルクランプや、その他の基板の孔に挿入して固定を行う構成の電子部品への適用が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 ケーブルクランプ
2 ファスナ部
3 クランプ部
4 ベース
20 ポスト
21 テーパ面部(先端部)
21a テーパ面
22 嵌合帯片
23 易変形部
24 逆テーパ面部(側片部)
24a 逆テーパ面
25 先端片部
26 係止羽根
BB 基板
H 孔

図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5