(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】運転制御装置および自動走行装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20220328BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20220328BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20220328BHJP
B60W 30/00 20060101ALI20220328BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20220328BHJP
B60W 40/076 20120101ALI20220328BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/00 X
G08G1/0969
B60W30/00
B60W40/06
B60W40/076
(21)【出願番号】P 2018083464
(22)【出願日】2018-04-24
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】518145374
【氏名又は名称】シャロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180976
【氏名又は名称】野村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】下河部 龍治
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-083892(JP,A)
【文献】特開2012-173843(JP,A)
【文献】特開2017-083619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
G08G 1/00
G08G 1/0969
B60W 30/00
B60W 40/06
B60W 40/076
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の出発地から目的地までの経路を求める経路探索装置で得られた経路に基づく仮想軌道に沿って移動体を走行させる制御を行う運転制御装置であって、
前記移動体の動力特性を記憶する特性記憶部と、
前記移動体の現在地の情報を取得する位置取得部と、
前記位置取得部で取得した前記移動体の現在地の情報に基づき、前記移動体が前記仮想軌道に沿って走行するように前記移動体の少なくとも駆動源を制御する駆動制御部と、
を備え、
前記経路探索装置は、
点群データを有する3次元マップ情報を記憶するマップ記憶部と、
前記移動体が通行する道路に関する通行条件を記憶する通行条件記憶部と、
前記3次元マップ情報および前記通行条件に基づき前記経路を作成する経路作成部と、
前記経路作成部で作成された複数の前記から最適な経路を検索する経路検索部と、
を備え、
前記点群データは、モービルマッピングシステムおよびリアルタイムキネマティックで取得された緯度、経度および
楕円体高を含み、
前記通行条件は、前記移動体が前記道路の右側および左側のいずれかを通行するのかを示す通行方向情報を含み、
前記経路作成部は、前記点群データから前記通行方向情報に対応した複数の経路の候補を作成し、
前記経路検索部は、前記経路作成部で作成された前記複数の経路の候補の中から少なくとも最短の経路を検索し、
前記駆動制御部は、前記仮想軌道上の第1地点の緯度および経度と、前記仮想軌道上の第2地点の緯度および経度とからベクトルを求め、前記第1地点から前記第2地点に向けて前記移動体を走行させる際に前記ベクトルから必要となる駆動力を前記動力特性に基づいて算出し、算出した前記駆動力を得るよう前記駆動源を制御する、運転制御装置。
【請求項2】
前記通行条件は、前記移動体が前記道路の車道および歩道のいずれかを通行するのかを示す通行区分情報を含み、
前記経路作成部は、前記点群データから前記通行方向情報および前記通行区分情報の両方の条件に対応した前記複数の経路の候補を作成する、請求項1記載の運転制御装置。
【請求項3】
前記経路作成部は、作成した基本経路に沿って前記移動体が通行すると仮定した場合に、前記点群データで表される物体と前記移動体とが干渉する可能性があると判断した場合、干渉しないように前記基本経路を補正する、請求項1または2に記載の運転制御装置。
【請求項4】
前記経路作成部は、作成した基本経路に沿って前記移動体が通行すると仮定した場合に、前記点群データで表される道路環境から前記移動体の通行が困難であると判断した場合、前記基本経路を前記複数の経路の候補に含めないようにする、請求項1または2に記載の運転制御装置。
【請求項5】
前記経路作成部は、前記点群データから前記移動体の走行特性に合わせた曲率の曲線を含む仮想軌道を作成する、請求項1または2に記載の運転制御装置。
【請求項6】
前記経路作成部は、前記点群データから前記通行方向情報に対応して、前記出発地から前記目的地を経由して前記出発地に戻る連続した経路を作成する、請求項1または2に記載の運転制御装置。
【請求項7】
前記駆動制御部は、前記第1地点の
楕円体高に基づく高度と、前記第2地点の
楕円体高に基づく高度とから勾配を求め、前記第1地点から前記第2地点に向けて前記移動体を走行させる際に前記勾配から必要となる駆動力を前記動力特性に基づいて算出し、算出した前記駆動力を得るよう前記駆動源を制御する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の運転制御装置。
【請求項8】
前記移動体の複数の走行モードのいずれかを設定するモード設定部をさらに備え、
前記特性記憶部は、前記複数の走行モードのそれぞれに対応した複数の前記動力特性を記憶し、
前記駆動制御部は、前記モード設定部で設定された前記走行モードに対応した前記動力特性に基づき前記駆動力を算出する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の運転制御装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の運転制御装置と、
前記運転制御装置で制御される駆動源によって移動体を走行させる駆動機構と、
を備えた自動走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転制御装置および自動走行装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置など、出発地から目的地までの経路を検索する装置においては、移動体の種類や道路状況などに応じて最短時間や最短距離といった所望の条件に対応した最適なルートを検索することが求められる。
【0003】
特許文献1には、ユーザの運転にかかる負担を軽減できる自動運転支援用の経路探索方法が開示される。この方法では、出発地から目的地までの距離または所要時間が閾値以下であり、かつ、手動運転区間の距離または所要時間が最短または最短を下限とする所定範囲内の1本または複数本の経路を抽出している。
【0004】
特許文献2には、ナビゲーションや自動運転のための三次元地図を提供する装置が開示される。この装置では、目的となる三次元空間の一部または大部分が複数の幾何学的単純図形で置換され、単純化されて再構成された単純化三次元空間データを持ち、それら単純化三次元空間データがコンピュータによって読み取られることで、幾何学的単純図形が三次元空間に対応した座標、姿勢、及び/又は属性等の関連データを共に出力している。
【0005】
特許文献3には、自動運転可能車両に伴う事故を防止する自動運転支援システムが開示される。このシステムは、管理道路にて計測された点群データに基づき、3次元道路線形データを生成する配信装置と、管理道路において渋滞と事故との少なくともいずれかの事象が発生している場合に、配信装置が生成した3次元道路線形データのうち自動運転を禁止する区間を示す3次元道路線形データを送信する自動運転情報収集装置とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-044834号公報
【文献】特開2009-199572号公報
【文献】特開2018-032433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、高精度な3次元マップ情報を取得する技術が発達してきている。しかし、このような高精度の3次元マップ情報を取得できても、これを利用した経路探索において、ユーザの目的に合った経路の探索に十分に活用されているとはいえない。例えば、移動体の特性や通行条件、高さ、段差といった立体的な情報に基づく最適ルートの検索は十分ではない。また、このような高精度の3次元マップ情報を利用して移動体の自動運転を行う場合についても、3次元マップ情報から移動体の軌道や駆動力を求める構成にはなっていない。
【0008】
本発明は、高精度な3次元マップ情報に基づいてユーザの必要とする条件に合致した経路を探索することができる経路探索装置、およびこの探索結果を用いた運転制御装置、自動走行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、移動体の出発地から目的地までの経路を求める経路探索装置である。この経路探索装置は、点群データを有する3次元マップ情報を記憶するマップ記憶部と、移動体が通行する道路に関する通行条件を記憶する通行条件記憶部と、3次元マップ情報および通行条件に基づき経路を作成する経路作成部と、経路作成部で作成された複数の経路から最適な経路を検索する経路検索部と、を備える。
【0010】
この経路探索装置において、点群データは、MMS(Mobile Mapping System:モービルマッピングシステム)およびRTK(Real Time Kinematic:リアルタイムキネマティック)で取得された緯度、経度および楕円体高を含む。通行条件は、移動体が道路の右側および左側のいずれかを通行するのかを示す通行方向情報を含む。経路作成部は、点群データから通行方向情報に対応した複数の経路の候補を作成する。経路検索部は、経路作成部で作成された複数の経路の候補の中から少なくとも最短の経路を検索する。
【0011】
このような構成によれば、3次元マップ情報に含まれる点群データには、MMSおよびRTKで取得された緯度、経度および楕円体高が含まれているため、この点群データから、移動体が左側通行なのか、右側通行なのかの通行方向情報に対応した複数の経路の候補を作成することができる。
【0012】
上記の経路探索装置において、通行条件は、移動体が道路の車道および歩道のいずれかを通行するのかを示す通行区分情報を含み、経路作成部は、点群データから通行方向情報および通行区分情報の両方の条件に対応した複数の経路の候補を作成するようにしてもよい。これにより、点群データから、移動体の左右の通行方向と通行区分との両方の条件に対応した複数の経路の候補を作成することができる。
【0013】
上記の経路探索装置において、経路作成部は、作成した基本経路に沿って移動体が通行すると仮定した場合に、点群データで表される物体と移動体とが干渉する可能性があると判断した場合、干渉しないように基本経路を補正するようにしてもよい。これにより、経路の作成にあたり、3次元マップ情報で示される物体と移動体との干渉を防止できる経路(仮想軌道)を作成することができる。
【0014】
上記の経路探索装置において、経路作成部は、作成した基本経路に沿って移動体が通行すると仮定した場合に、点群データで表される道路環境から移動体の通行が困難であると判断した場合、基本経路を複数の経路の候補に含めないようにしてもよい。これにより、経路の作成にあたり、3次元マップ情報に基づいて移動体の通行が困難と考えられる経路を候補から除外することができる。
【0015】
上記の経路探索装置において、経路作成部は、点群データから移動体の走行特性に合わせた曲率の曲線を含む仮想軌道を作成してもよい。これにより、移動体の特性や通行条件に合致した移動体の仮想軌道を求めることができる。
【0016】
また、経路作成部は、点群データから通行方向情報に対応して出発地から目的地を経由して出発地まで戻る連続した経路を作成してもよい。これにより、出発地および目的地を含む環状の経路が作成され、経路を回る方向(時計回り、反時計回り)によって、一つの経路から左側通行および右側通行の両方の経路作成に対応することができる。
【0017】
本発明の他の一態様は、上記の経路探索装置で得られた経路に基づく仮想軌道に沿って移動体を走行させる制御を行う運転制御装置である。
この運転制御装置は、移動体の動力特性を記憶する特性記憶部と、移動体の現在地の情報を取得する位置取得部と、位置取得部で取得した移動体の現在地の情報に基づき、移動体が仮想軌道に沿って走行するように移動体の少なくとも駆動源を制御する駆動制御部と、を備える。
【0018】
この運転制御装置において、駆動制御部は、仮想軌道上の第1地点の緯度および経度と、仮想軌道上の第2地点の緯度および経度とからベクトルを求め、第1地点から第2地点に向けて移動体を走行させる際にベクトルから必要となる駆動力を動力特性に基づいて算出し、算出した駆動力を得るよう駆動源を制御する。
【0019】
このような構成によれば、3次元マップ情報に含まれる点群データには、MMSおよびRTKで取得された緯度、経度および楕円体高が含まれているため、この点群データから、移動体が仮想軌道上の第1地点から第2地点に向かうベクトルを高精度に求めることができ、左側通行なのか、右側通行なのかの通行方向情報に対応した正確な仮想軌道に沿って移動体を走行させることができる。
【0020】
上記の運転制御装置において、駆動制御部は、第1地点の楕円体高に基づく高度と、第2地点の楕円体高に基づく高度とから勾配を求め、第1地点から第2地点に向けて移動体を走行させる際に勾配から必要となる駆動力を動力特性に基づいて算出し、算出した駆動力を得るよう駆動源を制御してもよい。これにより、点群データから、移動体が仮想軌道上の第1地点から第2地点に向かう際の勾配を正確に求めることができ、この勾配に基づいて駆動力を制御することができる。
【0021】
上記の運転制御装置において、移動体の複数の走行モードのいずれかを設定するモード設定部をさらに備え、特性記憶部は、複数の走行モードのそれぞれに対応した複数の動力特性を記憶し、駆動制御部は、モード設定部で設定された走行モードに対応した動力特性に基づき駆動力を算出してもよい。これにより、各走行モードに対応した駆動力の制御を行うことができる。
【0022】
本発明の他の一態様は、上記の経路探索装置と、上記の運転制御装置と、運転制御装置で制御される駆動源によって移動体を走行させる駆動機構と、を備えた自動走行装置である。これにより、高精度の3次元マップ情報に基づいた自動走行を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高精度の3次元マップ情報に基づいてユーザの必要とする条件に合致した経路を探索することができる経路探索装置、およびこの探索結果を用いた運転制御装置、自動走行装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】自動走行装置の構成を例示する模式図である。
【
図2】経路探索装置の構成を例示するブロック図である。
【
図3】(a)および(b)は、点群データの一例を示す模式図である。
【
図5】運転制御装置の構成を例示するブロック図である。
【
図7】経路探索方法を例示するフローチャートである。
【
図8】運転制御方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0026】
(自動走行装置)
図1は、自動走行装置の構成を例示する模式図である。
図1に示すように、自動走行装置100は、モータやエンジン等の駆動源121によって移動体110を走行させる駆動機構120を備える。移動体110は、駆動機構120から例えばタイヤに動力が伝えられ、所定方向に走行する。
【0027】
自動走行装置100は、経路探索装置1と、運転制御装置2と、を備えている。自動走行装置100は、GPS(Global Positioning System)や外部との通信を行うためのアンテナ150を備えており、電子基準点200や人工衛星300からの信号を受信して、移動体110の現在地を取得する。自動走行装置100には、カメラを含む画像取得部160や、レーザ検知部170が設けられていてもよい。
【0028】
自動走行装置100は、経路探索装置1で検索された出発地から目的地までの経路に沿って自動的に走行する。経路に沿った走行では、運転制御装置2によって駆動源121が制御される。
【0029】
移動体110の現在地は、GPS衛星や準天頂衛星等の人工衛星300からの信号を利用したGPS等のGNSS(Global Navigation Satellite System)や、電子基準点200を利用したRTKによって高精度に把握される。例えば、RTKでは、移動体110の現在地を数cm程度の誤差範囲で検出することができる。
【0030】
移動体110の走行中においては、RTK等によって取得された現在地と、予め設定された経路(仮想軌道)とのずれを修正するように、運転制御装置2が駆動機構120を制御する。また、走行中の周辺の画像を画像取得部160で取り込んだり、障害物と移動体110との距離をレーザ検知部170で取り込んだりすることで、人や物体との衝突や異常接近を回避しながら移動体110が進んでいく。
【0031】
本実施形態に係る自動走行装置100では、後述する経路探索装置1によって、高精度の3次元マップ情報から移動体110の通行条件に合致した最適な経路が検索される。また、後述する運転制御装置2によって、経路探索装置1で検索された経路(仮想軌道)に沿って移動体110が走行するように駆動源121等の駆動機構120が制御され、移動体110の速度や進行方向が決定される。
【0032】
具体的には、経路探索装置1は、移動体110が通行する道路に関する通行条件として、移動体110が左側通行なのか、右側通行なのかの通行方向情報に対応した複数の経路の候補を作成する。経路の候補を作成する際、詳細な3次元マップ情報が用いられる。例えば、通行方向情報が左側通行であった場合、3次元マップ情報から道路の左側を通行する経路が作成される。また、同じ道路であっても、通行方向情報が右側通行であった場合には、3次元マップ情報から道路の右側を通行する経路が作成される。
【0033】
また、通行条件として、移動体110が道路の車道を走行するものか、歩道を走行するものかを示す通行区分情報が含まれている場合、経路探索装置1は、通行方向情報および通行区分情報の両方の条件に対応した経路を作成する。例えば、通行方向情報が右側通行であり、通行区分情報が歩道であった場合、3次元マップ情報から道路の右側に設けられた歩道の上を走行する経路が作成される。
【0034】
このように、本実施形態に係る自動走行装置100では、移動体110の通行条件に基づいて、ユーザの必要とする条件に合致した経路(仮想軌道)に沿って移動体110を自動走行させることができる。
【0035】
なお、自動走行装置100において、経路探索装置1、運転制御装置2の少なくともいずれかは、移動体110の内部に設けられていてもよいし、外部に設けられていてもよい。外部に設けられている場合には、移動体110に通信手段を設けておき、外部から送信さえる情報を通信手段で受けて、移動体110を走行させればよい。
【0036】
(経路探索装置)
図2は、経路探索装置の構成を例示するブロック図である。
経路探索装置1は、マップ記憶部11、通行条件記憶部12、経路作成部13および経路検索部14を備える。経路探索装置1は、入力部15、出力部16、位置取得部17、通信部18およびアンテナ171を備えていてもよい。入力部15は、タッチパネルやマイク(音声入力手段)などである。出力部16は、ディスプレイやスピーカ(音声出力手段)などである。位置取得部17は、現在地を取得するGPSなどである。通信部18は、外部機器との通信を行う部分である。アンテナ171は、
図1に示す自動走行装置100のアンテナ150と兼用であってもよい。
【0037】
マップ記憶部11は、点群データを有する3次元マップ情報を記憶する。ここで、点群データは、MMSおよびRTKで取得された緯度、経度および楕円体高を含む。
【0038】
図3(a)および(b)は、点群データの一例を示す模式図である。
図3(a)には点群データに基づく画像Gの例が示され、
図3(b)には点群データの要素の例が示される。
点群データは、
図3(a)に示す画像の各点のそれぞれについて、
図3(b)に示す緯度、経度、高度、楕円体高が対応付けされたデータである。点群データは、道路(車道、歩道)、縁石、建物、樹木、街灯、センターライン、白線など、取り込んだ画像の複数点における位置情報が対応付けされている。点群データには、世界座標が対応付けされていてもよい。マップ記憶部11は、MMSおよびRTKによって得られた高精度な点群データを記憶している。
【0039】
通行条件記憶部12は、移動体110が通行する道路に関する通行条件を記憶する。本実施形態において、通行条件は、移動体が道路の右側および左側のいずれかを通行するのかを示す通行方向情報、および移動体110が道路の車道および歩道のいずれかを通行するのかを示す通行区分情報を含む。通行条件としては、上記の通行方向情報および通行区分情報のほか、移動体110の大きさ、重量、速度制限、最大積載重量など、他の通行条件を含んでいてもよい。
【0040】
経路作成部13は、マップ記憶部11に記憶された3次元マップ情報および通行条件記憶部12に記憶された通行条件に基づき、出発地から目的地までの経路を作成する。経路作成部13は、3次元マップ情報に含まれる点群データから、通行方向情報に対応した複数の経路の候補を作成する。
【0041】
経路検索部14は、経路作成部13で作成された複数の経路から最適な経路を検索する。経路検索部14は、経路作成部13で作成された複数の経路の候補の中から少なくとも最短の経路を検索する。なお、経路検索部14は、最短の経路以外、予め設定された条件に合致した経路を検索してもよい。例えば、到着時間が最も早い経路や、道路料金が最も安い経路や、移動体110の走行費用が最も安い経路などを検索するようにしてもよい。
【0042】
先に説明したように、3次元マップ情報に含まれる点群データ(
図3参照)には、MMSおよびRTKで取得された緯度、経度および楕円体高が含まれている。したがって、経路作成部13は、この点群データから、移動体110の通行条件に対応した経路の候補を抽出することができる。例えば、移動体110が左側通行なのか、右側通行なのかといった通行方向情報に対応した複数の経路の候補や、移動体110が車道走行などか歩道走行なのかといった通行区分情報に対応した複数の経路の候補を作成することができる。
【0043】
経路探索装置1において、経路作成部13は、作成した基本経路を補正する機能を有している。すなわち、経路作成部13は、3次元マップ情報および通行条件に基づいて基本となる経路(基本経路)を作成した後、この基本経路に沿って移動体110が通行すると仮定した場合に、移動体110の走行中に物体と干渉する可能性を回避するため、基本経路の補正を行う。
【0044】
3次元マップ情報には、点群データによって道路や歩道のほか、建物、電柱、樹木などの物体も表されている。経路作成部13は、基本経路に沿って移動体110が走行すると仮定して、この点群データで表される物体と移動体110とが干渉する可能性があると判断した場合、干渉しないように(物体を避けるように)基本経路を補正する。これにより、経路の作成にあたり、3次元マップ情報で示される物体と移動体110との干渉を防止できる経路(仮想軌道)を作成することができる。
【0045】
また、経路探索装置1において、経路作成部13は、作成した基本経路を候補から除外する機能を有している。すなわち、経路作成部13は、3次元マップ情報および通行条件に基づいて基本経路を作成した後、この基本経路に沿って移動体110が通行すると仮定した場合に、移動体110の通行が困難な場所があると経路を候補から除外する。
【0046】
3次元マップ情報には、点群データによって道路環境が表されている。道路環境としては、例えば、道路の形状(路面状況、道幅、段差、傾斜、轍、溝、側溝、グレーティング、マンホールなど)や、物体(建物の壁、ガードレール、電柱、標識や信号の支柱、踏切など)である。経路作成部13は、この道路環境から移動体110の通行が困難であると判断した場合、基本経路を複数の経路の候補に含めないようにする。これにより、経路の作成にあたり、3次元マップ情報に基づいて移動体110の通行が困難と考えられる経路を候補から除外することができる。
【0047】
経路作成部13は、道路環境から移動体110の通行が困難であるか否かの判断として、移動体110の種別や走行性能によって判断基準を切り替えるようにする。例えば、道路環境として段差があった場合、移動体110として歩道を走行する電動カートの場合と、車道を走行する自動車の場合とでは、走行困難であると判断する段差の大きさを切り替える。また、移動体110に応じた段差の走行限界高さや登坂能力を予め登録(設定)しておき、通行困難か否かの判断基準に用いてもよい。また、電動カートでは踏切を渡る経路は走行困難であると判断してもよい。
【0048】
また、経路作成部13は、点群データから移動体110の走行特性に合わせた曲率の曲線を含む経路(仮想軌道)を作成する。移動体110の走行特性とは、移動体110の種類に応じた走行の性能であり、例えば、最高速度、加速特性、回転半径、サイズ(車幅、全長、ホイールベース等)、重量などである。同じ経路であっても、移動体110の走行特性に応じて走行の軌道が異なる。
【0049】
経路作成部13は、点群データから通行方向情報に対応して出発地から目的地まで連続した経路を作成する。これにより、移動体110の特性や通行条件に合致した移動体110の経路を求めることができる。
【0050】
また、経路作成部13は、出発地から目的地を経由して出発地まで戻る連続した経路(往復の経路)を作成してもよい。往復の経路は、環状の経路(いわゆる一筆書きの経路)になっている。このような、環状の経路を作成することで、経路を回る方向(時計回り、反時計回り)によって、一つの経路を作成するだけで、回る方向の区別によって、左側通行および右側通行の両方の経路作成に対応することができる。
【0051】
図4は、経路検索について説明する模式図である。
図4には、出発地から目的値までの経路の候補が線で示される。線に付された矢印は進行方向を示す。本実施形態では、通行方向情報に対応して左側通行および右側通行の両方の経路を候補として挙げることができる。
図4に示す太線の経路の例では、電動カートのような右側通行を基本とする場合の経路が示される。経路作成部13は、このような移動体110の通行条件に合わせた経路の候補を作成し、移動体110の走行特性に応じた経路を作成する。
【0052】
経路作成部13は、3次元マップ情報に含まれる点群データに基づき、移動体110の走行特性に応じて、経路上のノード、カーブ間距離、進行方向を示す仮想軌道を求める。仮想軌道とは、経路のうち移動体110の移動制御に用いられる軌道情報のことを言う。この仮想軌道に沿って移動体110が走行していくことになる。
【0053】
なお、
図4では2次元での経路検索の例を示しているが、実際には楕円体高に基づく高さ方向の情報を含めて経路の検索を行う。これにより、3次元マップ情報に基づき、移動体110の走行する空間(3次元空間)を考慮して、移動体110が走行する際の物体との干渉の回避や、移動体110の通行が困難な場所を除外することができ、移動体110の特性に合わせた最適な経路が検索される。
【0054】
上記説明した経路探索装置1によれば、3次元マップ情報に含まれる点群データには、MMSおよびRTKで取得された緯度、経度および楕円体高が含まれているため、この点群データから、移動体110の通行条件に合致した複数の経路の候補を作成し、その中から最適な経路を検索することが可能となる。
【0055】
経路探索装置1は、ナビゲーションシステムに適用することができる。すなわち、ナビゲーションシステムは、経路探索装置1で検索された経路に沿って移動体110が走行するようにガイドする。この場合、入力部15によって出発地と目的地とを指定する。現在地を出発地とする場合には、入力部15で出発地を指定する必要はなく、位置取得部17で取得した現在地を出発地として設定する。また、入力部15から通行条件を入力するようにしてもよい。
【0056】
そして、上記で説明したように、経路作成部13で経路の候補を作成し、経路検索部14で最適な経路を検索する。ナビゲーション開始によって、移動体110の現在地を位置取得部17で取得しながら、経路に沿って移動体110が走行するように、出力部16からガイドをする。
【0057】
(運転制御装置)
図5は、運転制御装置の構成を例示するブロック図である。
図5に示すように、運転制御装置2は、特性記憶部21、位置取得部22および駆動制御部23を備える。運転制御装置2は、モード設定部24、センサ部25、通信部26、画像取得部27、レーザ検知部28およびアンテナ221を備えていてもよい。アンテナ221は、
図1に示す自動走行装置100のアンテナ150や
図2に示すアンテナ171と兼用であってもよい。また、位置取得部22および通信部26は、
図2に示す位置取得部17および通信部18と兼用であってもよい。また、画像取得部27およびレーザ検知部28は、
図1に示す画像取得部160およびレーザ検知部170と兼用であってもよい。
【0058】
特性記憶部21は、移動体110の動力特性を記憶する。
図6は、動力特性を例示する図である。
動力特性は、駆動源121をモータとした場合の出力線P、移動体110の平地での走行曲線DMaおよび上り勾配θがある場合の走行曲線DMbである。グラフの横軸はモータまたはタイヤの回転数を表し、グラフの縦軸は出力を表す。動力特性は、例えば2次関数の回帰曲線として特定される。特性記憶部21は、移動体110の種類に応じて複数の動力特性を記憶していてもよい。
【0059】
位置取得部22は、移動体110の現在地の情報を取得する。位置取得部22は、GPS等のGNSSやRTKによって移動体110の現在地の情報を取得する。現在地の情報には、緯度、経度、高度、移動速度が含まれる。高度は、楕円体高を含む。
【0060】
駆動制御部23は、位置取得部22で取得した移動体110の現在地の情報に基づき、移動体110が経路探索装置1で得られた経路に基づく仮想軌道に沿って走行するように移動体110の少なくとも駆動源121を制御する。駆動源121がモータの場合、駆動制御部23はモータコントローラを含む。駆動源121がエンジンの場合、駆動制御部23は燃料噴射コントローラを含む。
【0061】
本実施形態に係る運転制御装置2において、駆動制御部23は、仮想経路上の第1地点の緯度および経度と、仮想軌道上の第2地点の緯度および経度とからベクトルを求める。そして、第1地点から第2地点に向けて移動体110を走行させる際に、求めたベクトルから必要となる駆動力を動力特性に基づいて算出し、算出した駆動力を得るよう駆動源121を制御する。
【0062】
このような運転制御装置2によれば、先に説明した経路探索装置1で検索された経路に基づく仮想軌道に沿って移動体110を走行させる際、高精度の3次元マップ情報から走行に必要なベクトルを算出することができる。
【0063】
この3次元マップ情報に含まれる点群データには、MMSおよびRTKで取得された緯度、経度および楕円体高が含まれている。したがって、この点群データから、移動体110が仮想軌道上の第1地点から第2地点に向かうベクトルを正確に求めることができる。そして、移動体110が左側通行なのか、右側通行なのかの通行方向情報に対応した正確な仮想軌道に沿って移動体110を走行させることができる。
【0064】
また、運転制御装置2において、駆動制御部23は、第1地点の楕円体高に基づく高度と、第2地点の楕円体高に基づく高度とから勾配を求める。そして、第1地点から第2地点に向けて移動体110を走行させる際に、先に求めた勾配から必要となる駆動力を動力特性に基づいて算出し、算出した駆動力を得るよう駆動源121を制御する。
【0065】
すなわち、点群データには、仮想軌道上のポイントにおける緯度、経度および楕円体高が含まれているため、第1地点から第2地点までの楕円体高に基づく正確な勾配を把握することができる。この勾配を予め求めておくことで、駆動制御部23は、この勾配を走行する際の移動体110の動力特性の変化を予め求めることができる。例えば、第1地点から第2地点まで上り勾配であった場合、この勾配を上るために必要なトルクを予め求めておく。そして、移動体110が第1地点を通過した段階で、予め求めておいた必要なトルクを発生させるように駆動源121を制御する。
【0066】
一例として、平地から上り勾配(第1地点から第2地点までの勾配θ)を走行する場合について説明する。
図6に示す動力特性に基づき、平地を走行する際に必要な出力は出力aとなる。次に、第1地点から第2地点まで上り勾配θがあることは、予め3次元マップ情報から得られている。そこで、この勾配θを上るために必要な出力が出力bであることを事前に求めておく。駆動制御部23は、平地を走行する際には出力aを発生させるために、駆動源121に指示を与える。そして、現在地が第1地点になった段階で、予め求めてある出力bを発生させるために、駆動源121に指示を与える。
【0067】
例えば、駆動源121であるモータをPWM(Pulse Width Modulation)制御している場合、平地を走行する際には出力aを得る回転数になるようモータにPWM制御信号を与える。次に、第1地点に到達した段階で、出力bを得る回転数になるようモータにPWM制御信号を与える。平地に対する勾配θのPWM制御のデューティ比は、b/aとなる。
【0068】
このように、本実施形態では、点群データから、移動体110が仮想軌道上の第1地点から第2地点に向かう際の勾配を正確に求めることができ、この勾配に基づいて駆動力を制御することができる。従来では、勾配を上りはじめて速度が低下した段階で、速度低下分を補うように駆動力を制御している。しかし、これでは、一旦速度が変化してから、速度をキープするための動作によって速度変化が生じやすい。本実施形態では、予め正確に勾配を把握でき、精度の高い位置検出によって、勾配を上りはじめると同時に必要なトルクが発生し、速度変化少なく走行できるようになる。
【0069】
モード設定部24は、移動体110の複数の走行モードのいずれかを設定する。ここで、走行モードには、通常走行モード、登坂走行モード、高速走行モード、低速走行モードなどが含まれる。モード設定部24に複数の走行モードが設定されている場合、特性記憶部21は、複数の走行モードのそれぞれに対応した複数の動力特性を記憶しておく。そして、駆動制御部23は、モード設定部24で設定された走行モードに対応した動力特性に基づき駆動力を算出する。これにより、各走行モードに対応した駆動力の制御を行うことができる。
【0070】
運転制御装置2で移動体110の走行を制御する場合、センサ部25、画像取得部27およびレーザ検知部28の少なくともいずれかによって取得した情報に基づき補正を行ってもよい。これにより、3次元マップ情報には現れていない物体や人、他の走行体との異常接近および衝突を回避する制御を行うことができる。
【0071】
(経路探索方法)
図7は、経路探索方法を例示するフローチャートである。
この経路探索方法は、上記説明した経路探索装置1によって行われる。
先ず、目的地の取得を行う(ステップS101)。例えば、入力部15を用いてユーザが入力した目的地の情報(住所、施設名など)を取得する。
【0072】
次に、通行条件の取得を行う(ステップS102)。通行条件である通行方向情報や通行区分情報は、予め通行条件記憶部12に記憶されているものから取得してもよいし、入力部15からユーザが入力したものを取得してもよい。
【0073】
次に、経路の候補を作成する(ステップS103)。経路の候補は、経路作成部13によって行われる。経路作成部13は、マップ記憶部11に記憶された3次元マップ情報および先のステップS102で取得した通行条件に基づき、出発地から目的地までの経路の候補を作成する。
【0074】
この際、経路作成部13は、3次元マップ情報および通行条件に基づいて、抽出した経路に沿って移動体110が通行すると仮定した場合に、移動体110の通行が困難な場所があると判断した場合には、その経路を候補から除外する処理を行う。
【0075】
次に、最適な経路の検索を行う(ステップS104)。経路の検索は、経路検索部14によって行われる。経路検索部14は、経路作成部13で作成された複数の経路の候補の中から、所定の条件に合致した経路を検索する。例えば、複数の経路の候補から最短の経路を検索する。最短の経路を検索するには、例えばダイクストラ法が用いられる。
【0076】
次に、仮想軌道の作成を行う(ステップS105)。仮想軌道の作成は、経路作成部13によって行われる。経路作成部13は、複数の経路の候補から検索された最適な経路に沿って移動体110を走行させるための仮想軌道を作成する。仮想軌道は、3次元マップ情報に含まれる点群データに基づき、経路上のノード、カーブ間距離、進行方向(左回り、右回り)を示す情報が作成される。経路上のノードを繋ぐ直線やカーブによって構成される仮想軌道は、経路上の複数のノードの座標(3次元マップ情報に含まれる3次元位置情報)に基づき回帰式(例えば、直線は最小二乗法)によって求められる。
【0077】
次に、仮想軌道の補正を行う(ステップS106)。仮想軌道の補正は、経路作成部13によって行われる。経路作成部13は、3次元マップ情報および通行条件に基づいて、先に作成された仮想軌道の補正を行う。すなわち、作成された仮想軌道に沿って移動体110が通行すると仮定した場合に、3次元マップ情報から得られる物体と、仮想軌道に沿って走行する移動体110とが干渉する可能性を判断し、干渉する可能性がある場合にはこれを回避するように仮想軌道の補正を行う。
【0078】
(運転制御方法)
図8は、運転制御方法を例示するフローチャートである。
この運転制御方法は、上記説明した運転制御装置2によって行われる。
先ず、動力特性の取得を行う(ステップS201)。動力特性は、移動体110における速度(回転数)と出力との関係を示す特性である。動力特性は、例えば2次関数の回帰曲線によって特定される。動力特性は、特性記憶部21に予め記憶されたものから取得してもよいし、通信部18を介して外部(ネットワーク経由等)から取得してもよい。また、走行モードが設定されている場合には、走行モードに対応した動力特性を取得する。
【0079】
次に、仮想軌道の取得を行う(ステップS202)。ここで取得する仮想軌道は、先に説明した経路探索装置1および経路探索方法によって検索した経路に基づく仮想軌道である。検索された経路(仮想軌道)の情報は経路探索装置1から出力され、通信部18を介して運転制御装置2へ取り込まれる。
【0080】
次に、移動体110の走行(自動運転)を開始するか否かの判断を行う(ステップS203)。自動運転の開始は、ユーザによって指示される。なお、移動体110の運行を指令センターで制御するシステムでは、自動運転の開始は指令センターから指示される。
【0081】
走行が開始されると、現在地の取得を行う(ステップS204)。現在地の取得は、位置取得部22によって行われる。位置取得部22は、GPS等のGNSSやRTKによって移動体110の現在地の情報を取得する。現在地の情報には、緯度、経度、高度、移動速度が含まれる。高度は、楕円体高を含む。
【0082】
次に、ベクトル演算を行う(ステップS205)。ベクトル演算は、駆動制御部23によって行われる。駆動制御部23は、移動体110の仮想軌道上にある第1地点(ここでは移動体110の現在地)の緯度および経度と、仮想軌道上にある第2地点の緯度および経度とからベクトルを求める。第2地点は、移動体110の現在の速度から所定時間後(例えば、1秒後)に想定される仮想軌道上の位置である。
【0083】
次に、勾配の演算を行う(ステップS206)。勾配の演算は、駆動制御部23によって行われる。駆動制御部23は、第1地点(ここでは移動体110の現在地)の楕円体高に基づく高度と、上記の第2地点の楕円体高に基づく高度とから勾配を求める。
【0084】
次に、駆動力演算を行う(ステップS207)。駆動力演算は、駆動制御部23によって行われる。駆動制御部23は、先に取得したベクトルおよび勾配から、移動体110をこのベクトルおよび勾配に合わせて移動させるために必要な駆動力を演算する。駆動力には、駆動源121のトルクのほか、移動体110の方向を決定するための操舵力も含まれる。
【0085】
操舵の駆動力制御において、例えば、駆動源121がモータであり、左右の車輪のそれぞれを独立したモータで回転させ、左右車輪の回転差を利用して操舵を行う場合には、ベクトルから得られる方向や勾配に合わせて求められる左右のモータのそれぞれの回転数を求め、この回転数に合わせてPWM制御信号(デューティ比)を求める。また、例えば、ステアリングによって操舵を行う場合、ステアリングモータに与えるPWM制御信号(デューティ比)を求める。
【0086】
次に、仮想軌道と現在地とのずれを修正する(ステップS208)。仮想軌道と現在地とのずれの修正は、駆動制御部23によって行われる。移動体110は、仮想軌道に沿って走行するよう駆動力が制御される。しかし、走行中の実際の位置と仮想軌道との間にはずれが発生する。このずれを修正するため、駆動制御部23は駆動力の修正を行う。
【0087】
駆動制御部23は、移動体110の現在地(緯度、経度、高度)が、設定された仮想軌道上の制御ポイントと一致しているか否かの信号、移動体110の仮想軌道上における進行方向(時計回り、反時計回り)の信号、移動体110の現在地が仮想軌道上の制御ポイントよりも手前か先かを示す情報、移動体110の現在地(緯度、経度、高度)と、設定された仮想軌道上の制御ポイントとの3次元座標における距離の情報を取得する。そして、各種の情報を用いて、この距離を縮めるような修正を行う。
【0088】
なお、ずれの修正には、危険等の回避のための修正を含めてもよい。例えば、センサ部25、画像取得部27およびレーザ検知部28の少なくともいずれかによって取得した情報に基づき、3次元マップ情報に現れていない物体や人、走行体などとの異常接近や衝突を回避するため、移動体110の進行方向、速度を補正するための演算が行われる。
【0089】
次に、駆動力指示を行う(ステップS209)。駆動力指示は、駆動制御部23によって行われる。駆動制御部23は、先に演算し、ずれを修正して得た駆動力を駆動源121等の駆動機構120に与える。駆動機構120は、駆動制御部23から指示された駆動力に基づいて少なくとも駆動源121を駆動させる。
【0090】
その後、次の地点があるか否かの判断を行う(ステップS210)。仮想軌道上の次の地点(制御ポイント)がある場合、ステップS204へ戻り、以降の処理を繰り返す。これにより、移動体110は、逐次、仮想軌道と現在地とのずれを修正しながら目的地まで自動的に走行していくことになる。
【0091】
上記で説明した経路探索方法や運転制御方法は、コンピュータで実行されるプログラムによって実現してもよい。経路探索方法は経路探索プログラムとして実現され、運転制御方法は運転制御プログラムとして実現される。すなわち、経路探索プログラムは、
図7に示す各ステップをコンピュータで実行させる。また、運転制御プログラムは、
図8に示す各ステップをコンピュータで実行させる。これらのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されていてもよし、ネットワークを介して配信されてもよい。
【0092】
以上説明したように、実施形態によれば、高精度の3次元マップ情報に基づいてユーザの必要とする条件に合致した経路を探索することができる経路探索装置1、およびこの探索結果を用いた運転制御装置2、自動走行装置100を提供することが可能となる。
【0093】
なお、上記に本実施形態およびその変形例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、高度の情報として楕円体高を用いているが、ジオイド高を用いてもよい。また、前述の各実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0094】
1…経路探索装置
2…運転制御装置
11…マップ記憶部
12…通行条件記憶部
13…経路作成部
14…経路検索部
15…入力部
16…出力部
17…位置取得部
18…通信部
21…特性記憶部
22…位置取得部
23…駆動制御部
24…モード設定部
25…センサ部
26…通信部
27…画像取得部
28…レーザ検知部
100…自動走行装置
110…移動体
120…駆動機構
121…駆動源
150…アンテナ
160…画像取得部
170…レーザ検知部
171…アンテナ
200…電子基準点
221…アンテナ
300…人工衛星
G…画像