(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】ブッシュ装着機
(51)【国際特許分類】
F16L 58/00 20060101AFI20220328BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20220328BHJP
F16L 58/18 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
F16L58/00
F16L55/00 C
F16L58/18
(21)【出願番号】P 2018088770
(22)【出願日】2018-05-02
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】戸次 浩之
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-326025(JP,A)
【文献】特開平08-174319(JP,A)
【文献】特開2018-062021(JP,A)
【文献】特開2001-132887(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2372216(EP,A1)
【文献】特公昭47-013840(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 58/00
F16L 55/00
F16L 58/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管に貫通形成された分岐口の内周面に接触する弾性被覆層を有するブッシュを装着するブッシュ装着機であって、
軸芯方向に貫通する中空部と、流体管側の端部よりも径方向外側に突出した突出部とを有する内軸部材と、
前記内軸部材が内挿された外軸部材と、
前記内軸部材と前記外軸部材とを前記軸芯方向に沿って進退移動させる移動機構と、
前記外軸部材の流体管側の端部と前記突出部との間に挟まれており、前記移動機構により前記外軸部材と前記内軸部材とを相対的に近接移動させることで拡径する弾性体と、
前記弾性体の外側に装着されたブッシュと、
流体管の底部に存在する切粉を除去する切粉除去機構と、を備え、
前記切粉除去機構は、前記突出部よりも流体管側に移動可能な磁石部と、前記中空部に挿入され前記磁石部を支持する支持軸と、前記支持軸を前記軸芯方向に沿って進退移動させる操作部と、を有しているブッシュ装着機。
【請求項2】
前記突出部の流体管側の端部には、前記磁石部の移動をガイドしつつ前記磁石部を収容可能なガイド部が形成されている請求項1に記載のブッシュ装着機。
【請求項3】
前記支持軸は可撓性を有するワイヤ線材で構成されている請求項1又は2に記載のブッシュ装着機。
【請求項4】
前記支持軸は可撓性を有しない管部材で構成されている請求項1又は2に記載のブッシュ装着機。
【請求項5】
前記磁石部は、前記支持軸の端部に固定された基部と、当該基部から径方向外側に延出した延出部と、当該延出部のうち流体管の底部側の表面に固定された磁石と、を有し、
前記延出部は、前記基部との接続部位がヒンジとなっている請求項1から4のいずれか一項に記載のブッシュ装着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管に貫通形成された分岐口の内周面に接触する弾性被覆層を有するブッシュを装着するブッシュ装着機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体管に穿孔機を用いて穿孔された穿孔口(分岐口)を防食するために、弾性被覆層を有するブッシュを装着するブッシュ装着機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のブッシュ装着機は、軸方向に相対移動可能な内外二重の送り軸のうち、内側送り軸の先端に設けた押え部と外側送り軸の先端に設けた受け部との間に拡径用弾性体を設け、穿孔口の内周面に接触する弾性被覆層を有するブッシュを拡径用弾性体に外装している。このブッシュ装着機は、ブッシュを穿孔口内に挿入した状態において押え部と受け部との相対近接移動に連れて拡径用弾性体を径方向外側に膨出変形させることにより、ブッシュを拡径変形させて分岐口の内周面に抜止め状態で装着するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、穿孔機を用いて穿孔口を形成した際に発生する金属の切粉が流体管の底部に堆積する。この切粉は流体圧によって穿孔機の内部からある程度排出させることができるものの、依然として流体管の底部に堆積した多くの切粉が残存する。このため、この残存した切粉を除去するためには、別途切粉除去装置を設ける必要があり、非効率であった。
【0006】
そこで、分岐口にブッシュを装着すると同時に流体管の底部に堆積した切粉を除去できるブッシュ装着機が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るブッシュ装着機の特徴構成は、流体管に貫通形成された分岐口の内周面に接触する弾性被覆層を有するブッシュを装着するブッシュ装着機であって、軸芯方向に貫通する中空部と、流体管側の端部よりも径方向外側に突出した突出部とを有する内軸部材と、前記内軸部材が内挿された外軸部材と、前記内軸部材と前記外軸部材とを前記軸芯方向に沿って進退移動させる移動機構と、前記外軸部材の流体管側の端部と前記突出部との間に挟まれており、前記移動機構の操作により前記外軸部材と前記内軸部材とを相対的に近接移動させることで拡径する弾性体と、前記弾性体の外側に装着されたブッシュと、流体管の底部に存在する切粉を除去する切粉除去機構と、を備え、前記切粉除去機構は、前記突出部よりも流体管側に移動可能な磁石部と、前記中空部に挿入され前記磁石部を支持する支持軸と、前記支持軸を前記軸芯方向に沿って進退移動させる操作部と、を有している点にある。
【0008】
本構成では、外軸部材の流体管側の端部と内軸部材の突出部との間に挟まれた弾性体を拡径操作することにより弾性体の外側に装着されたブッシュを押し広げて、ブッシュの弾性被覆層を分岐口の内周面に密着させる。これにより、分岐口を防食処理することができる。
【0009】
さらに、本構成のブッシュ装着機は、突出部よりも流体管側で移動可能な磁石部と、内軸部材の中空部に挿入され磁石部を支持する支持軸と、支持軸を軸芯方向に沿って進退移動させる操作部と、を有する切粉除去機構を備えている。つまり、内軸部材の中空部を利用して磁石部を支持する支持軸を挿入し、この支持軸で磁石部を支持している。このため、操作部により支持軸を軸芯方向に沿って流体管の底部側に移動させることで、流体管の底部に接触した磁石部に切粉を吸着させることができる。
【0010】
切粉を磁石部に吸着させた後は、ブッシュを分岐口に残置した状態で切粉除去機構を含むブッシュ装着機を撤去することにより、切粉を流体管の底部から回収することができるので、別途切粉除去装置を設ける必要がない。このように、分岐口にブッシュを装着すると同時に流体管の底部に堆積した切粉を除去できるブッシュ装着機を提供できた。
【0011】
他の特徴構成は、前記突出部の流体管側の端部には、前記磁石部の移動をガイドしつつ前記磁石部を収容可能なガイド部が形成されている点にある。
【0012】
本構成のように、磁石部の移動をガイドするガイド部を設けていれば、支持軸を流体管の底部側に移動させるとき、該ガイド部により磁石部を円滑に移動させることができる。また、このガイド部は磁石部を収容可能に構成されているので、切粉を吸着した磁石部をガイド部内に収容した状態でブッシュ装着機を撤去することが可能となる。その結果、例えば磁石部が分岐口に残置されたブッシュに接触して切粉が落下するといった不都合がない。よって、切粉を確実に回収することができる。
【0013】
他の特徴構成は、前記支持軸は可撓性を有するワイヤ線材で構成されている点にある。
【0014】
本構成のように、支持軸を、可撓性を有するワイヤ線材で構成すれば、磁石部を揺動させることが可能となり、流体管の底部に幅広く堆積した切粉を効率的に除去することができる。
【0015】
他の特徴構成は、前記支持軸は可撓性を有しない管部材で構成されている点にある。
【0016】
本構成のように、支持軸を、可撓性を有しない管部材で構成すれば、磁石部の磁石面を一定の姿勢に維持した状態で鉛直方向に移動させることができる。よって、流体管の底部のうち、切粉が堆積し易い分岐口の鉛直方向投影部分に磁石部を確実に接触させることが可能となり、流体管の底部に堆積した切粉を効率的に除去することができる。
【0017】
他の特徴構成は、前記磁石部は、前記支持軸の端部に固定された基部と、当該基部から径方向外側に延出した延出部と、当該延出部のうち流体管の底部側の表面に固定された磁石と、を有し、前記延出部は、前記基部との接続部位がヒンジとなっている点にある。
【0018】
本構成における磁石部は、基部に対してヒンジで接続された延出部を有し、この延出部における流体管の底部側の表面に磁石を固定している。これにより、支持軸により磁石部を流体管の底部に移動させたとき、支持軸の押込み操作によって延出部が拡径して切粉に直接的に接触する磁石の表面積を大きくすることができる。その結果、流体管の底部に幅広く堆積した切粉を磁石によって効率的に吸着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】穿孔機により流体管を穿孔した状態を示す縦断面図である。
【
図3】分岐口にブッシュを挿入した状態を示す一部拡大断面図である。
【
図4】弾性体を拡径操作した状態を示す一部拡大断面図である。
【
図5】支持軸を前進移動させた状態を示す一部拡大断面図である。
【
図6】切粉を吸着した磁石部を後退させた状態を示す一部拡大断面図である。
【
図7】外軸部材を後退移動させた状態を示す一部拡大断面図である。
【
図8】第一実施形態に係る切粉除去機構を示す斜視図である。
【
図9】第二実施形態に係る切粉除去機構を示す斜視図である。
【
図10】第三実施形態に係る切粉除去機構を示す斜視図である。
【
図11】第四実施形態に係る切粉除去機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係るブッシュ装着機の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、内周面にライニング層15を有する鋳鉄製の水道管1(流体管の一例)に穿孔機Cにより穿孔口5(分岐口の一例)を形成し、この穿孔口5にブッシュ6を装着するブッシュ装着機Zを一例として説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、
図1における水道管1の側(重力方向)を下又は前、水道管1とは反対側(重力方向とは反対方向)を上又は後として説明することがある。
【0021】
図1には穿孔機Cが示されている。この穿孔機Cを装着するにあたり、水道管1には、水道管1の外周面に沿って装着される鋳鉄製の分割ケース体7と、分割ケース体7に締結される鋳鉄製の弁ケース10と、が固定されている。
【0022】
分割ケース体7は、水道管1に対して管径方向外方から装着され、管周方向で複数に分割(本実施形態では3分割)された第一分割ケース7A,第二分割ケース7Bおよび第三分割ケース7Cを有している。これら分割ケース7A,7B,7Cの管周方向両端部に一体形成された連結フランジ7a,7b,7cが複数のボルト8,ナット9により締結されることにより、第一分割ケース7A,第二分割ケース7Bおよび第三分割ケース7Cが水道管1に固定されている。夫々の分割ケース7A,7B,7Cの内周面に形成されたシール保持溝7dには、水道管1の外周面との間を密封する合成ゴム製(例えば、スチレンブタジエンゴム等)のシール材3が装着されている。なお、分割ケース体7を2分割又は4分割以上で構成しても良い。
【0023】
第一分割ケース7Aには、水道管1の管軸芯Xに直交する分岐軸芯Y方向(軸芯方向の一例)に沿う分岐管部2が一体形成されており、この分岐管部2の端部には、弁ケース10の第一連結フランジ10aが複数のボルト8,ナット9により締結される連結フランジ2aが形成されている。
【0024】
弁ケース10には、作業用開閉弁となる弁体16が分岐軸芯Yと垂直な方向に沿って進退可能に収容されている。弁ケース10の一方の端部には、分岐管部2の連結フランジ2aが複数のボルト8,ナット9により締結される第一連結フランジ10aが形成されている。また、弁ケース10の他方の端部には、穿孔機Cのケーシング20の連結フランジ20aが複数のボルト8,ナット9により締結される第二連結フランジ10bが形成されている。
【0025】
穿孔機Cは、ケーシング20と、ケーシング20に支持され、電動モータ等の駆動力により回転すると共に分岐軸芯Y方向に移動可能な駆動回転軸21と、駆動回転軸21の先端部に着脱自在に連結されたホールソー等で構成されるカッター4と、を備えている。
【0026】
ケーシング20の端部には、弁ケース10の第二連結フランジ10bが複数のボルト8,ナット9により締結される連結フランジ20aが一体形成されている。カッター4は、切削チップを先端部に備えた円筒状ボディー4Aと、円筒状ボディー4Aの底壁部の中心位置に固定され、円筒状ボディー4Aの切削チップよりも下方に突出したセンタードリル4Bとを有している。
【0027】
穿孔機Cは、弁ケース10内の流路と分岐管部2内の流路とを介して駆動回転軸21を分岐軸芯Y方向に沿って送り込んだ後、電動モータ等の駆動力によりカッター4を回転させて水道管1の管壁に分岐軸芯Y方向に貫通する穿孔口5を切削形成する。この穿孔口5の切削加工に伴って発生した切片1Aをカッター4内に保持したまま初期位置に復帰移動(後退移動)させ、弁体16を閉じ操作したのち、穿孔機Cを弁ケース10から取外す。このとき、
図1に示すように、水道管1の底壁には、穿孔機Cを用いて穿孔口5を形成した際に発生する金属の切粉Dが水道管1の底部に堆積している。
【0028】
[ブッシュ装着機の基本構成]
続いて、
図2~
図8を用いて、本実施形態に係るブッシュ装着機Zについて説明する。
【0029】
ブッシュ装着機Zは、金属製の基台部Aと、金属製の管状部材で構成される外軸部材32と、金属製の管状部材で構成される内軸部材31と、外軸部材32および内軸部材31を分岐軸芯Y方向に沿って進退移動させる移動機構Kと、移動機構Kの操作により外軸部材32と内軸部材31とを相対的に近接移動させることで拡径する弾性体45と、弾性体45の外側に装着された円筒状のブッシュ6と、水道管1の底部に存在する切粉Dを除去する切粉除去機構Rとを備えている。
【0030】
基台部Aは、上述した弁ケース10に締結固定された筒状の取付け筒部30と、取付け筒部30と外軸部材32との間に配置された第一軸受部材33と、を有している。
【0031】
取付け筒部30の一方の端部には、穿孔機Cが取り外された弁ケース10の第二連結フランジ10bが複数のボルト8,ナット9により締結される第一連結フランジ30aが形成されている。取付け筒部30の他方の端部には、第一軸受部材33の環状突起33bと係合する環状凹部30cが内周面に形成された第二連結フランジ30bが形成されている。この第二連結フランジ30bには蓋部材30dがボルト23で締結されることにより、環状突起33bと環状凹部30cとが係合して取付け筒部30と第一軸受部材33とが連結されている。
【0032】
第一軸受部材33は、外軸部材32を分岐軸芯Y方向に支持するボス部33aと、ボス部33aから径方向外側に延出した支持受け部33cとを有している。このボス部33aには径方向外側に環状に突出した環状突起33bが形成されており、この環状突起33bと上述した環状凹部30cとが係合することにより、第一軸受部材33が取付け筒部30を介して弁ケース10および分割ケース体7に支持されている。支持受け部33cには、後述する連結軸34および送り螺子軸36の一端が固定されている。
【0033】
外軸部材32には、内軸部材31が内挿されている。外軸部材32は、上部フランジ32aにボルト39で固定連結された連動部材40と、下端部に固定された筒状で金属製の受け部43(外軸部材32の水道管1側の端部の一例)とを有している。連動部材40には、送り螺子軸36の雄ネジ部36aに螺合されたネジコマ41が相対回転不能な状態で取付けられている。また、連動部材40のうち、内軸部材31の貫通孔が形成されたボス部40aには、後述する拡径操作ナット35がボールベアリングBGを介して相対回転自在に取付けられている。
【0034】
受け部43の外周面には、円筒状のブッシュ6の基端側部位に分岐軸芯Y方向から当接する当接部43aが形成されている。また、受け部43には、後述する押さえ部44の上端面44cが当接可能な底面43bが形成されている。
【0035】
内軸部材31は、外軸部材32の内側に配置されており、拡径操作ナット35の回転操作により外軸部材32に対して分岐軸芯Y方向に沿って相対移動可能に構成されている。内軸部材31は、分岐軸芯Y方向(軸方向)に貫通する中空部31Aと、下端部に螺子固定された金属製の押さえ部44とを有している。押さえ部44は、筒軸部44aと筒軸部44aの下端部(水道管1側の端部)よりも径方向外側に突出した突出部44bとを有している。筒軸部44aの上端面44cが受け部43の底面43bに当接することで、内軸部材31の上方への移動が規制される。
【0036】
内軸部材31の上端部には、上側螺子部31aが形成されており、この上側螺子部31aに拡径操作ナット35の内周が螺合されている。また、内軸部材31の上端部には、中空部31Aと連通する排出管31Bが接続されている。この排出管31Bによって、水道管1の底部に堆積した切粉Dが、流体圧によって外部に排出可能に構成されている。なお、排出管31Bに吸引装置を接続して、水と共に切粉Dを吸引しても良い。
【0037】
移動機構Kは、外軸部材32および内軸部材31を分岐軸芯Yに沿って進退移動させる第一移動機構K1と、内軸部材31を外軸部材32に対して分岐軸芯Y方向に沿って相対移動させる第二移動機構K2とを備えている。
【0038】
第一移動機構K1は、外軸部材32の連動部材40に設けられたネジコマ41と、このネジコマ41と螺合する雄ネジ部36aを含む送り螺子軸36と、送り螺子軸36を回転操作する回転ハンドル42とを有している。送り螺子軸36は、一端が第一軸受部材33に支持されており、中間部分が後述する第二軸受部材37に支持されている。回転ハンドル42を回転させると、ネジコマ41に螺合している送り螺子軸36が回転し、ネジコマ41と一体化されている連動部材40が分岐軸芯Y方向に沿って直進移動する。このとき、連動部材40が固定されている外軸部材32と、連動部材40のボス部40aに取り付けられた拡径操作ナット35に螺合固定されている内軸部材31と、が分岐軸芯Y方向に沿って一体的に直進移動する。
【0039】
第二移動機構K2は、拡径操作ナット35と、拡径操作ナット35が挿入される貫通孔37aが形成された円盤状の第二軸受部材37と、第一軸受部材33の支持受け部33cの複数箇所に螺合固定された連結軸34と、を有している。
【0040】
拡径操作ナット35は、外軸部材32に固定されている連動部材40のボス部40aに対してボールベアリングBGを介して相対回転自在に取付けられている。拡径操作ナット35を不図示の操作具を用いて回転操作すると、外軸部材32が回転せずに、拡径操作ナット35のみが回転する。その結果、拡径操作ナット35に螺合された内軸部材31のみが分岐軸芯Y方向に沿って直進移動する。つまり、拡径操作ナット35の操作により内軸部材31を外軸部材32に対して分岐軸芯Y方向に沿って相対移動させることができる。
【0041】
第二軸受部材37の中央部分には、送り螺子軸36を回転自在に支持する貫通孔37bが形成されている。また、第二軸受部材37の貫通孔37a,37bを取り囲む外周側には連結軸34がナット38により締付固定されており、この第二軸受部材37は、第一軸受部材33の支持受け部33cに螺合固定された連結軸34により支持されている。
【0042】
弾性体45は、内軸部材31と外軸部材32との近接移動により径方向外方に膨出変形される円筒状の合成ゴムで構成されている。この弾性体45は、内軸部材31の押さえ部44の突出部44bと外軸部材32の受け部43(外軸部材32の水道管1側の端部)との間に挟まれており、受け部43に対する押さえ部44の引き上げ移動に連れて径方向外方に膨出変形される。
【0043】
ブッシュ6は、耐食性・耐錆性に優れた円筒状のステンレス鋼等で構成される金属製の挿入筒部6Aと、挿入筒部6Aの外周面にライニングされる合成ゴム(例えば、EPDMなど)製の弾性被覆層12と、を有している(
図3参照)。挿入筒部6Aの内周面が弾性体45の外周面と当接するように、ブッシュ6が弾性体45の外側に装着される。
【0044】
ブッシュ6の外周面を被覆する弾性被覆層12のうち、分岐口内周面側部分12Aが、分岐口外周面側部分12Bの肉厚よりも薄くし、かつ、小径に構成されている。これにより、穿孔口5の分岐軸芯Yとブッシュ装着機Zのブッシュ挿入軸芯とが少しずれている条件下においても、ブッシュ6を引っ掛かりのない又は少ない状態で確実、スムーズに挿入することができる。
【0045】
挿入筒部6Aには、分岐軸芯Yの中央位置よりも少し基端部側に偏位した部位には、穿孔口5の開口周縁の一部に分岐軸芯Y方向から当接する挿入長さ規制用の環状係止部6Aaが径方向外方に膨出形成されている。つまり、穿孔口5の開口周縁に当接する挿入規制部13は、ブッシュ6の環状係止部6Aaと環状係止部6Aaの外周面を覆う弾性被覆層12の後側被覆部分12Cとから構成されている。また、穿孔口5の開口周縁に当接する後側被覆部分12Cの当接面12dが、分岐軸芯Yに対して直交する垂直面に形成されている。
【0046】
図2および
図8に示すように、切粉除去機構Rは、内軸部材31の押さえ部44の突出部44bよりも水道管1側に移動可能な磁石部50と、内軸部材31の中空部31Aに分岐軸芯Yに沿って進退移動可能に挿入され磁石部50を支持する支持軸51と、支持軸51を分岐軸芯Yに沿って往復移動させる直動ハンドル46(操作部の一例)と、を備えている。また、本実施形態における切粉除去機構Rは、突出部44bの水道管1側の端部に、磁石部50の移動をガイドしつつ磁石部50を収容可能なガイド部52を有している。
【0047】
磁石部50は、非磁性の金属等で構成される円錐台状の非磁性体50aと、非磁性体50aの先端面に接着等で固定された磁石50bとで構成されている。磁石部50は、支持軸51の端部に接続されており、上述した移動機構Kの直動ハンドル46を回転させることにより支持軸51が回転することで、磁石部50が揺動するように構成されている。
【0048】
直動ハンドル46を分岐軸芯Yに沿って水道管1の方向に前進移動させることで、支持軸51の端部に接続された磁石部50を水道管1の底部に向かって移動させる。本実施形態における支持軸51は、可撓性を有するワイヤ線材で構成されている。このため、直動ハンドル46を回転させれば、磁石部50が水道管1の底面に沿って円弧を描くように揺動させることができる。その結果、磁石部50の磁石50bが、水道管1の底部に堆積した切粉Dを効率よく吸着する。なお、支持軸51を、可撓性を有しない管部材で構成しても良く、特に限定されない。
【0049】
ガイド部52は、突出部44bの水道管1側の端部に固定されており、円錐台状の非磁性体50aの側面に沿って水道管1の底部に向かって拡径する円錐台状の非磁性体で構成されている。ガイド部52の内面は、磁石部50の円錐台状の非磁性体50aの外面に沿って形成されている。このガイド部52の形状により、直動ハンドル46を分岐軸芯Yに沿って水道管1と反対方向に後退移動させることで、切粉Dを吸着した磁石部50がガイド部52の内側に円滑に収容される。
【0050】
[ブッシュ装着機の作動手順]
図1~
図7を用いて、ブッシュ装着機Zの作動手順を説明する。
【0051】
(イ)先ず、
図1に示すように、水道管1の分岐相当箇所の外周面に、分割ケース体7,弁ケース10および穿孔機Cを装着する。次いで、弁体16を開き操作して、穿孔機Cのカッター4を第一分割ケース7Aの分岐管部2を通して送込み、水道管1内の流体の流れを維持したまま穿孔口5を貫通形成する。次いで、この穿孔口5の切削加工に伴って発生した切片1Aをカッター4内に保持したまま初期位置に復帰移動させ、弁体16を閉じ操作したのち、穿孔機Cを弁ケース10から取外す。
【0052】
(ロ)次に、
図2に示すように、水道管1の穿孔口5にブッシュ6を挿入する前において、拡径操作ナット35を所定方向に回転操作して、内軸部材31の押さえ部44と外軸部材32の受け部43とを少し相対近接移動させて弾性体45を拡径変形させる。これにより、ブッシュ6をブッシュ装着機Zの弾性体45に仮保持させる。そして、弾性体45にブッシュ6が仮保持されたブッシュ装着機Zを弁ケース10に装着する。
【0053】
つまり、水道管1の穿孔口5にブッシュ6を挿入する前において、弾性体45の一部の最大外径がブッシュ6の先端6bにおける外径よりも大となるまで、弾性体45の一部の周方向全域を径方向外側に膨出変形させる。これにより、弾性体45の外周面とブッシュ6の先端6bとの間に形成される段差を周方向全域で少なくすることができると共に、ブッシュ6の先端6bと押さえ部44の突出部44bとの間に位置する弾性体45の一部が、ブッシュ6を拡径変形させるための膨出力として大きく寄与する。その結果、例えば、穿孔口5の分岐軸芯Yとブッシュ装着機Zのブッシュ挿入軸線とが少しずれている条件下においても、ブッシュ6を引っ掛かりのない状態でスムーズに挿入することができる。
【0054】
(ハ)次に、弁体16を開き操作したのち、回転ハンドル42を所定方向に回転操作して、内軸部材31および外軸部材32を分岐軸芯Y方向に沿って前進移動させる。そして、
図3に示すように、挿入規制部13の当接面12dが穿孔口5の開口周縁の一部に分岐軸芯Y方向から当接する状態まで、弾性体45に仮保持されているブッシュ6を穿孔口5内に挿入する。このとき、ブッシュ6の外周面を被覆する弾性被覆層12のうち、分岐口内周面側部分12Aが、分岐口外周面側部分12Bの肉厚よりも薄くし、かつ、小径に構成されているので、仮に穿孔口5の分岐軸芯Yとブッシュ装着機Zのブッシュ挿入軸芯とが少しずれている条件下においても、ブッシュ6を引っ掛かりのない状態でスムーズ挿入することができる。
【0055】
(二)次に、
図4に示すように、穿孔口5内の所定位置にブッシュ6が挿入されている状態で拡径操作ナット35を回転操作すると、外軸部材32に対して内軸部材31が引き上げられ、受け部43と押さえ部44との相対近接移動に連れて弾性体45が分岐軸芯Y方向から圧縮されて径方向外側に膨出変形する。その結果、ブッシュ6が穿孔口5の孔内周面1aおよび水道管1の内周面に沿って拡径変形され、ブッシュ6が抜止め状態で装着される。
【0056】
このとき、弾性体45でブッシュ6を拡径変形させる際、ブッシュ6の分岐口外周面側部分12Bの拡径変形量が、分岐口内周面側部分12Aの拡径変形量よりも少なくなることの知見に基づいて、弾性被覆層12の分岐口外周面側部分12Bの肉厚を、分岐口内周面側部分12Aの肉厚よりも大に構成してある。このため、ブッシュ6の弾性被覆層12と穿孔口5の孔内周面1aとの分岐軸芯Y方向での密着性を高めることができる。
【0057】
(ホ)次に、
図2および
図5に示すように、直動ハンドル46を分岐軸芯Yに沿って水道管1の方向に前進移動させ、支持軸51の端部に接続された磁石部50を水道管1の底部に向かって移動させる。その結果、磁石部50の磁石50bが、水道管1の底部に堆積した切粉Dを吸着する。このとき、可撓性を有するワイヤ線材で構成される支持軸51が連結された直動ハンドル46を回転させても良い。これにより、支持軸51の回転と連動して、支持軸51に固定された磁石部50を水道管1の底面に沿って円弧を描くように揺動させることができる。その結果、水道管1の底部に幅広く堆積した切粉Dを効率的に吸着することができる。また、内軸部材31の上端部には、中空部31Aと連通する排出管31Bが接続されているため、この排出管31Bによって、磁石部50に吸着されずに残った切粉Dが、流体圧によって外部に排出される。なお、下記(ト)に示すように、拡径操作ナット35を所定方向とは反対側に回転操作し、外軸部材32に対して内軸部材31が引き下げて弾性体45とブッシュ6との間に隙間を形成した状態で、直動ハンドル46を分岐軸芯Yに沿って水道管1の方向に前進移動させても良い。この場合、弾性体45に対する拡径負荷を低減しながら磁石部50を水道管1の底部に向かって移動させることが可能となるので、弾性体45の耐久性を高めることができる。
【0058】
(へ)次に、
図2および
図6に示すように、直動ハンドル46を分岐軸芯Yに沿って水道管1と反対方向に後退移動させることで、切粉Dを吸着した磁石部50がガイド部52の内側に収容される。このとき、ガイド部52の内面は、磁石部50の円錐台状の非磁性体50aの外面に沿って形成されているので、切粉Dを吸着した磁石部50を円滑にガイド部52の内側へと移動させることができる。
【0059】
(ト)次に、
図7に示すように、拡径操作ナット35を所定方向とは反対側に回転操作すると、外軸部材32に対して内軸部材31が引き下げられ、弾性体45とブッシュ6との間に隙間が形成される。そして、回転ハンドル42を回転操作すれば、内軸部材31および外軸部材32が分岐軸芯Y方向に沿って後退移動し、同時にガイド部52に収容された磁石部50も後退移動する。次いで、弁体16を閉じ操作したのち、ブッシュ装着機Zを撤去すれば、磁石部50に吸着した切粉Dを回収することができる。
【0060】
このように、内軸部材31の中空部31Aを利用して磁石部50を支持する支持軸51を挿入している。このため、直動ハンドル46により支持軸51を分岐軸芯Y方向に沿って前進移動させることで水道管1の底部に接触した磁石部50に切粉Dを吸着させることができる。切粉Dを磁石部50に吸着させた後は、ブッシュ6を穿孔口5に残置した状態で切粉除去機構Rを含むブッシュ装着機Zを撤去することにより、切粉Dを水道管1の底部から回収することができるので、別途切粉除去装置を設ける必要がない。しかも、ガイド部52は磁石部50を収容可能に構成されているので、切粉Dを吸着した磁石部50をガイド部52内に収容した状態でブッシュ装着機Zを撤去することが可能となる。その結果、例えば磁石部50が穿孔口5に残置されたブッシュ6に接触して切粉Dが落下するといった不都合がない。よって、切粉Dを確実に回収することができる。
【0061】
[第二実施形態]
図9に示すように、切粉除去機構Rを構成しても良い。つまり、磁石部50は、支持軸51の端部に固定された基部50cと、基部50cから径方向外側に延出した複数の延出部50dと、延出部50dのうち水道管1の底部側の表面に固定された磁石50eと、を有している。また、本実施形態における支持軸51は、可撓性を有しない管部材で構成されており、複数の延出部50dと基部50cとの接続部位がヒンジとなっている。
【0062】
これにより、支持軸51により磁石部50を流体管の底部に移動させたとき、支持軸51の押込み操作によって延出部50dが拡径するので、切粉Dに直接的に接触する磁石50eの表面積を大きくすることができる。その結果、水道管1の底部に幅広く堆積した切粉Dを磁石50eによって効率的に吸着することができる。
【0063】
なお、本実施形態では、複数の延出部50dと基部50cとの接続部位をヒンジで構成して複数の延出部50dを周方向に分割したが、径方向外側に弾性変形可能な延出部50dを円筒状に構成して、この延出部50dを基部50cとヒンジ接続しなくても良い。
【0064】
[第三実施形態]
図10に示すように、磁石部50は、非磁性体50aの先端面に接着等で固定された磁石50bの表面を円弧状に構成しても良い。本実施形態における支持軸51は、可撓性を有するワイヤ部材で構成されている。この場合、水道管1の底部の曲面に沿って磁石50bの表面が形成されるため、水道管1の底部に堆積した切粉Dを磁石50eによって効率的に吸着することができる。
【0065】
[第四実施形態]
図11に示すように、非磁性体50aの先端面に接着等で固定された磁石50bを凹凸形状としても良い。本実施形態における支持軸51は、可撓性を有するワイヤ部材で構成されている。この場合、磁石50bの表面積が増大するため、水道管1の底部に堆積した切粉Dを磁石50eによって効率的に吸着することができる。
【0066】
[その他の実施形態]
(1)上述した切粉除去機構Rの実施形態は適宜組み合わせても良い。例えば、第二実施形態における支持軸51をワイヤ線材で構成しても良いし、第三実施形態~第四実施形態における支持軸51を、可撓性を有しない管部材で構成しても良い。
(2)上述した切粉除去機構Rは、磁石部50に非磁性体50aを設けたが、磁石部50全体を磁性体で構成しても良い。この場合、磁石部50全体を球状に構成しても良い。
(3)上述した実施形態では、外軸部材32の流体管側の端部を、下端部に取付けられた筒状で金属製の受け部43で構成したが、外軸部材32の下端部を径方向外側に一体的に突出させて受け部43を構成しても良い。また、内軸部材31の押さえ部44に突出部44bを形成したが、外軸部材32の下端部を径方向外側に一体的に突出させて突出部44bを構成しても良い。
(4)上述した実施形態では、水道管1の分岐軸芯Y方向の上壁に穿孔口5を形成したが、水道管1の管軸芯Xおよび分岐軸芯Yに直交する方向の水道管1の側壁に穿孔口5を形成し、この穿孔口5にブッシュ装着機Zを用いてブッシュ6を装着しても良い。この場合、切粉除去機構Rの支持軸51をワイヤ線材で構成すれば、磁石部50を重力方向に落下させて水道管1の底部に堆積した切粉Dを吸着することが可能となるので、好適である。
(5)上述した実施形態では、流体管の一例である鋳鉄製の水道管1の穿孔口5にブッシュ装着機Zを用いてブッシュ6を装着する例について説明したが、穿孔口5以外に水道管1に形成された分岐孔等にブッシュ6を装着しても良い。また、流体管としては気体や液体が通流する管であれば、水道管1に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、流体管に貫通形成された分岐口の内周面に接触する弾性被覆層を有するブッシュを装着するブッシュ装着機に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 :水道管(流体管)
5 :穿孔口(分岐口)
6 :ブッシュ
12 :弾性被覆層
31 :内軸部材
31A :中空部
32 :外軸部材
43 :受け部(外軸部材の流体管側の端部)
44b :突出部
45 :弾性体
46 :直動ハンドル(操作部)
50 :磁石部
50c :基部
50d :延出部
50e :磁石
51 :支持軸
52 :ガイド部
D :切粉
K :移動機構
R :切粉除去機構
Y :分岐軸芯(軸芯)
Z :ブッシュ装着機