(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】電極接続構造、リードフレーム及び電極接続構造の形成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20220328BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
H01L23/50 D
H01L21/60 321E
(21)【出願番号】P 2018504503
(86)(22)【出願日】2017-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2017008970
(87)【国際公開番号】W WO2017154893
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2020-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2016047040
(32)【優先日】2016-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「SIP(戦略イノベーション創造プログラム)/次世代パワーエレクトロニクス/SiCに関する拠点型共通基盤技術開発/ハイブリッド自動車向けSiC耐熱モジュール実装技術の研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】巽 宏平
(72)【発明者】
【氏名】上田 和敏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信明
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝司
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-224262(JP,A)
【文献】特開2010-118577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/50
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイス電極及び/又は基板電極とリードフレームのリードとをめっき接続する電極接続構造において、
前記リードフレームにおける複数の長尺状のリードが並列して配設されており、各リードの長手方向側面と前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極とがめっき接続され、
前記リードに接続される前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極の第1接続面と、当該第1接続面に接続される前記リードの長手方向
に沿って形成される直線状のエッジ部分を含む第2接続面と、の接続部分において、前記第1接続面と接触する前記第2接続面のエッジ部分
がめっきで接合され、当該エッジ部分から当該第2接続面の外側部に向かって前記第1接続面と前記第2接続面との距離が連続的に増加していることを特徴とする電極接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電極接続構造において、
前記第2接続面のエッジ部分から当該第2接続面の外側部に向かって、前記リードが減肉加工されていることを特徴とする電極接続構造。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の電極接続構造において、
前記第2接続面における長手方向中心部に前記エッジ部分が形成されていることを特徴とする電極接続構造。
【請求項4】
電子デバイス電極及び/又は基板電極とリードフレームのリードとをめっき接続する電極接続構造において、
前記リードフレームにおける複数の長尺状のリードが並列して配設されており、各リードの長手方向側面と前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極とがめっき接続され、
前記リードに接続される前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極の第1接続面と、当該第1接続面に接続される前記リードの長手方向側面における第2接続面と、の接続部分において、前記第1接続面と接触する前記第2接続面のエッジ部分から当該第2接続面の外側部に向かって前記第1接続面と前記第2接続面との距離が連続的に増加しており、
前記第2接続面における短手方向に複数の前記エッジ部
分が所定の間隔を空けて形成されており、当該エッジ部
分の間に前記第2接続面の短手方向に貫通する凹溝状の空隙が形成されていることを特徴とする電極接続構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の電極接続構造において、
前記第2接続面
に、長手方向に
沿って凹溝状に切り込まれた連続又は不連続
の空隙が形成されていることを特徴とする電極接続構造。
【請求項6】
電子デバイス電極及び/又は基板電極とリードフレームのリードとをめっき接続する電極接続構造において、
前記リードフレームにおける複数の長尺状のリードが並列して配設されており、各リードの長手方向側面と前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極とがめっき接続され、
前記リードに接続される前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極の第1接続面と、当該第1接続面に接続される前記リードの長手方向に沿って形成される直線状のエッジ部分を含む第2接続面と、の接続部分において、前記第1接続面と接触する前記第2接続面のエッジ部分がめっきで接合され、当該エッジ部分から当該第2接続面の外側部に向かって前記第1接続面と前記第2接続面との距離が連続的に増加しており、
前記第2接続面の裏面側
であって前記リードの長手方向に沿って形成される直線状のエッジ部分を含む第3接続面と、当該第3接続面と接続する前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極の第4接続面と、の接続部分において、前記第4接続面と接触する前記第3接続面
のエッジ部分から当該第3接続面の外側部に向かって前記第4接続面と前記第3接続面との距離が連続的に増加していることを特徴とする電極接続構造。
【請求項7】
請求項6に記載の電極接続構造において、
前記第2接続面のエッジ部分は、前記第2接続面における長手方向中心部に形成され、前記第3接続面のエッジ部分は、前記第3接続面における長手方向中心部に形成されていることを特徴とする電極接続構造。
【請求項8】
電子デバイス電極及び/又は基板電極とリードフレームのリードとをめっき接続する電極接続構造において、
前記リードフレームにおける複数の長尺状のリードが並列して配設されており、各リードの長手方向側面と前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極とがめっき接続され、
前記リードに接続される前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極の第1接続面と、当該第1接続面に接続される前記リードの長手方向側面における第2接続面と、の接続部分において、前記第1接続面と接触する前記第2接続面のエッジ部分から当該第2接続面の外側部に向かって前記第1接続面と前記第2接続面との距離が連続的に増加しており、
前記第2接続面の裏面側の第3接続面と、当該第3接続面と接続する前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極の第4接続面と、の接続部分において、前記第4接続面と接触する前記第3接続面の前記エッジ部分から当該第3接続面の外側部に向かって前記第4接続面と前記第3接続面との距離が連続的に増加しており、
前記第2接続面及び前記第3接続面における短手方向に複数の前記エッジ部分が所定の間隔を空けて形成されており、当該エッジ部分の間に前記第2接続面及び前記第3接続面の短手方向に貫通する凹溝状の空隙が形成されていることを特徴とする電極接続構造。
【請求項9】
請求項
1ないし8
のいずれかに記載の電極接続構造において、
前記めっき接続が、融点が700℃以上の金属又は合金によるめっきであることを特徴とする電極接続構造。
【請求項10】
請求
項9に記載の電極接続構造において、
前記金属又は前記合金が、Ni又はNi合金であることを特徴とする電極接続構造。
【請求項11】
請求項
1ないし10のいずれかに記載の電極接続構造において、
前記リードのエッジ部分における、前記電子デバイス電極及び/又は基板電極と前記リードの長手方向側面とのなす角度が3度~15度であることを特徴とする
電極接続構造。
【請求項12】
請求項3又は7に記載の電極接続構造の形成方法であって、
前記エッジ部分がプレス加工又はエッチング加工により形成されることを特徴とする電極接続構造の形成方法。
【請求項13】
電子デバイス電極及び/又は基板電極とめっき接続するリードフレームにおいて、
複数の長尺状のリードが並列して配設されており、
前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極に接合される前記リードの長手方向側面に、前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極に接触し、前記リードの長手方向に沿って直線状に形成されるエッジ部分を有する接続面を備えることを特徴とするリードフレーム。
【請求項14】
請求項13に記載のリードフレームにおいて、
前記エッジ部分から当該エッジ部分を有する接続面の外側部に向かって、前記リードが減肉加工されていることを特徴とするリードフレーム。
【請求項15】
請求
項14に記載のリードフレームにおいて、
前記接続面における
長手方向中心部に前記エッジ部分が形成されていることを特徴とするリードフレーム。
【請求項16】
電子デバイス電極及び/又は基板電極とめっき接続するリードフレームにおいて、
複数の長尺状のリードが並列して配設されており、
前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極に接合される前記リードの長手方向側面に前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極と接触するエッジ部分を有し、
前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極に接続する接続面における短手方向に複数の前記エッジ部分が所定の間隔を空けて形成されており、当該エッジ部分の間に前記接続面の短手方向に貫通する凹溝状の空隙が形成されていることを特徴とするリードフレーム。
【請求項17】
請求項1
3ないし16のいずれかに記載のリードフレームにおいて、
前記接続面に、長手方向に沿って凹溝状に切り込まれた連続又は不連続の空隙が形成されていることを特徴とするリードフレーム。
【請求項18】
請求項1
3ないし17のいずれかに記載のリードフレームにおいて、
前記エッジ部分が形成されている接続面の裏面側の前記リードの長手方向側面に他のエッジ部分が形成されていることを特徴とするリードフレーム。
【請求項19】
請求項13ないし18のいずれかに記載のリードフレームにおいて、
前記リードのエッジ部分が、接合される前記電子デバイス電極及び/ 又は前記基板電極の面に対して3度~15度の角度で形成されていることを特徴とするリードフレーム。
【請求項20】
電子デバイス電極及び/又は基板電極とリードフレームのリードとを接続する電極接続構造の形成方法であって、
前記リードフレームは複数の長尺状のリードが並列して配設されると共に、当該リードの長手方向側面には当該リードの長手方向に沿って形成される直線状のエッジ部分を有しており、
前記電子デバイス電極及び/又は基板電極と前記リードのエッジ部分とを接触させた状態で超音波振動を付加して前記エッジ部分の先端を座屈させ、前記電子デバイス電極及び/又は基板電極と前記リードのエッジ部分とを超音波接合し、
前記電子デバイス電極及び/又は基板電極とリードフレームのリードとが前記超音波接合で仮止めされた状態でめっき接合処理が行われることを特徴とする電極接続構造の形成方法。
【請求項21】
請求
項20に記載の電極接続構造の形成方法において、
前記リードのエッジ部分と前記電子デバイス電極及び/又は基板電極とのなす角度が3度~15度であることを特徴とする電極接続構造の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス電極及び/又は基板電極とリードフレームのリードとをめっき接続する電極接続構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
電極をめっき接続する技術として、特許文献1ないし3に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、リード先端に、メッキ若しくは折曲げにより5~200μm高さの同一材質あるいは電気導体の突起を設けた半導体電極とのメッキ接続用リード、および、前記リード先端の突起と半導体素子上の電極とを同位置に配置すると共に電気的に導通が得られるように接触、固定せしめて、メッキ浴中に浸漬するか、メッキ液噴霧中に置き、リードと半導体素子上の電極をメッキ金属により接続するものである
【0003】
特許文献2に示す技術は、半導体素子1と金属板2との間において、突起3を中心に放射状にメッキ4が成長する構成としたものである。
【0004】
特許文献3に示す技術は、電気的に接続される電気回路の複数の電極間の少なくとも一部を直接又は間接的に接触させ、当該接触部分の周辺にメッキ液が流通した状態で電極間をメッキして接続するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2868943号公報
【文献】特開2007-335473号公報
【文献】国際公開第2015/053356号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示す技術は、リードの先端部分に突起を設けてめっきにより電極と接続するものであり、複数の長尺状のリードが並列して配設されたリードの長手方向側面と電極とをめっき接続するような場合に適用できるものではない。
【0007】
また、特許文献2に示す技術は、半導体素子と金属板との間において、突起を中心にめっきを行う技術であるが、半導体素子と金属板とが対向しているめっき領域において、半導体素子と金属板とが平行になっている領域が広く、このような領域においてはめっき処理の速度にばらつきが生じ、ボイドが発生してしまう可能性がある。また、半導体素子と金属板とが平行ではない領域のみ(突起部分のみ)をめっき処理したとしても、めっきが不十分であると共に、熱伝導率などが悪く実用的な接続を行うことができない。
【0008】
さらに、特許文献3に示す技術は、銅ワイヤの側面部分と銅板とをめっき処理する技術が開示されているが、銅ワイヤ側面の円弧部分と銅板との接触部分の周辺のみがめっき処理されるものであり、ボイド等の発生は防止できるものの、熱伝導率などが低下してしまうという課題を有する。
【0009】
本発明は、複数の長尺状のリードが並列して配設された当該リードの長手方向側面と電極とをめっき処理により高品質に接続する電極接続構造等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電極接続構造は、電子デバイス電極及び/又は基板電極とリードフレームのリードとをめっき接続する電極接続構造において、前記リードフレームにおける複数の長尺状のリードが並列して配設されており、各リードの長手方向側面と前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極とがめっき接続され、前記リードに接続される前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極の第1接続面と、当該第1接続面に接続される前記リードの長手方向側面における第2接続面と、の接続部分において、前記第1接続面と接触する前記第2接続面のエッジ部分から当該第2接続面の外側部に向かって前記第1接続面と前記第2接続面との距離が連続的に増加しているものである。
【0011】
このように本発明に係る電極接続構造においては、電子デバイス電極及び/又は基板電極と、複数の長尺状のリードが並列して配設されているリードフレームとを当該リードの長手方向側面でめっき接続する場合に、電子デバイス電極及び/又は基板電極の第1接続面と、当該第1接続面に接続されるリードの長手方向側面における第2接続面と、の接続部分において、第1接続面と接触する第2接続面のエッジ部分から当該第2接続面の外側部に向かって第1接続面と第2接続面との距離が連続的に増加しているため、電子デバイス電極及び/又は基板電極とリードの長手方向側面との間にめっき液を十分に流通させることができ、ボイド等を発生させることなく高品質なめっき接続を実現することができるという効果を奏する。
【0012】
また、第1接続面と接触する第2接続面のエッジ部分から当該第2接続面の外側部までの対向領域を広い範囲でめっき処理することができるため、熱伝導性に優れた接続を行うことができるという効果を奏する。
【0013】
本発明に係る電極接続構造は、前記第2接続面のエッジ部分から当該第2接続面の外側部に向かって、前記リードが減肉加工されているものである。
【0014】
このように本発明に係る電極接続構造においては、第2接続面のエッジ部分から当該第2接続面の外側部に向かって、リードの長手方向側面が減肉加工されているため、電子デバイス電極及び/又は基板電極とリードの長手方向側面との間にめっき液を十分に流通させることができ、ボイド等を発生させることなく高品質なめっき接続を実現することができるという効果を奏する。
【0015】
本発明に係る電極接続構造は、前記第2接続面における長手方向中心部に前記エッジ部分が形成されているものである。
【0016】
このように本発明に係る電極接続構造においては、第2接続面における長手方向中心部にエッジ部分が形成されているため、エッジ部分から第2接続面の外側部に向かって広い領域に対してめっき液を十分に且つ均等に流通させることができ、高品質なめっき接続を実現することができるという効果を奏する。
【0017】
本発明に係る電極接続構造は、前記第2接続面における短手方向に複数の前記エッジ部が所定の間隔を空けて形成されており、当該エッジ部の間に前記第2接続面の短手方向に貫通する凹溝状の空隙が形成されているものである。
【0018】
このように本発明に係る電極接続構造においては、第2接続面における短手方向に複数の前記エッジ部が所定の間隔を空けて形成されており、当該エッジ部の間に前記第2接続面の短手方向に貫通する凹溝状の空隙が形成されているため、エッジ部分を中心として周囲にめっき液が十分に流通した状態でめっき処理を行うことができ、高品質なめっき接続を実現することができるという効果を奏する。また、凹溝状の空隙を形成することで長手方向に掛かる応力を分散することができ、リードの破損等を防止することができるという効果を奏する。
【0019】
本発明に係る電極接続構造は、前記第2接続面における長手方向に連続又は不連続の凹溝状の空隙が形成されているものである。
【0020】
このように本発明に係る電極接続構造においては、第2接続面における長手方向に連続又は不連続の凹溝状の空隙が形成されているため、短手方向に掛かる応力を分散することができ、リードの破損等をより確実に防止することができるという効果を奏する。
【0021】
本発明に係る電極接続構造は、前記第2接続面の裏面側の第3接続面と、当該第3接続面と接続する前記電子デバイス電極及び/又は前記基板電極の第4接続面と、の接続部分において、前記第4接続面と接触する前記第3接続面のエッジ部分から当該第3接続面の外側部に向かって前記第4接続面と前記第3の接続面との距離が連続的に増加しているものである。
【0022】
このように本発明に係る電極接続構造においては、第2接続面の裏面側の第3接続面と、当該第3接続面と接続する電子デバイス電極及び/又は前記基板電極の第4接続面と、の接続部分において、第4の接続面と接触する第3接続面のエッジ部分から当該第3接続面の外側部に向かって第4接続面と第3接続面との距離が連続的に増加しているため、電子デバイス電極及び/又は基板電極とリードフレームとを高品質なめっき接続で多層に形成することができるという効果を奏する。
【0023】
本発明に係る電極接続構造は、前記めっき接続が、融点が700℃以上の金属又は合金によるめっきであり、好ましくはNi又はNi合金とするものである。
【0024】
このように本発明に係る電極接続構造においては、めっき接続が、融点が700℃以上の金属又は合金によるめっきであり、好ましくはNi又はNi合金とするため、100℃以下のめっき液中でめっき処理がなされ、接続時における応力や熱によるダメージを低減することができるという効果を奏する。また、高融点の金属又は合金でめっき処理が行われることで、高温の状態でも正確な動作を保証することができるという効果を奏する。
【0025】
本発明に係る電極接続構造は、前記リードのエッジ部分における、前記電子デバイス電極及び/又は基板電極と前記リードの長手方向側面とのなす角度が3度~15度とするものである。
【0026】
このように本発明に係る電極接続構造においては、前記リードのエッジ部分における、前記電子デバイス電極及び/又は基板電極と前記リードの長手方向側面とのなす角度が3度~15度とするため、少ないめっき時間で電極の幅を太く形成することが可能となり、製造効率を向上させることができるという効果を奏する。
【0027】
本発明に係る電極接続構造の形成方法は、前記エッジ部がプレス加工又はエッチング加工により形成されるものである。
【0028】
このように本発明に係る電極接続構造の形成方法においては、エッジ部がプレス加工又はエッチング加工により形成されるため、簡素化された製造工程で効率よく高品質な電極接続構造を形成することができるという効果を奏する。
【0029】
本発明に係る電極接続構造の形成方法は、電子デバイス電極及び/又は基板電極とリードフレームのリードとを接続する電極接続構造の形成方法であって、前記リードフレームは複数の長尺状のリードが並列して配設されると共に、当該リードの長手方向側面にはエッジ部分を有しており、前記電子デバイス電極及び/又は基板電極と前記リードのエッジ部分とを接触させた状態で超音波振動を付加して前記エッジ部分の先端を座屈させ、前記電子デバイス電極及び/又は基板電極と前記リードとを超音波接合するものである。
【0030】
このように本発明に係る電極接続構造の形成方法においては、電子デバイス電極及び/又は基板電極とリードフレームのリードとを接続する電極接続構造の形成方法であって、前記リードフレームは複数の長尺状のリードが並列して配設されると共に、当該リードの長手方向側面にはエッジ部分を有しており、前記電子デバイス電極及び/又は基板電極と前記リードのエッジ部分とを接触させた状態で超音波振動を付加して前記エッジ部分の先端を座屈させ、前記電子デバイス電極及び/又は基板電極と前記リードとを超音波接合するため、エッジ部分を利用して高い接合性でリードと電極とを接合することが可能になるという効果を奏する。
【0031】
本発明に係る電極接続構造の形成方法は、前記電子デバイス電極及び/又は基板電極とリードフレームのリードとが前記超音波接合で仮止めされた状態でめっき接合処理が行われるものである。
【0032】
このように本発明に係る電極接続構造の形成方法においては、前記電子デバイス電極及び/又は基板電極とリードフレームのリードとが前記超音波接合で仮止めされた状態でめっき接合処理が行われるため、めっき接合の位置決めを容易に行うことができ、且つ、エッジ先端部の非接触領域におけるめっき後のボイド残りを低減することができるという効果を奏する。また、めっき接合の位置決めの際に補助用の治具を用いる必要がなくなるため、治具の装着及び取り外しの工程を省略して、簡単で低コストの製法を実現することができるという効果を奏する。
【0033】
本発明に係る電極接続構造の形成方法は、前記リードのエッジ部分と前記電子デバイス電極及び/又は基板電極とのなす角度が3度~15度とするものである。
【0034】
このように本発明に係る電極接続構造の形成方法においては、リードのエッジ部分と電子デバイス電極及び/又は基板電極とのなす角度が3度~15度とするため、少ないめっき時間で電極の幅を太く形成することが可能となり、製造効率を向上させることができるという効果を奏する。
【0035】
本発明に係る電極接続構造の形成方法は、前記エッジ部分の先端の座屈幅が1μm~50μmとするものである。
【0036】
このように本発明に係る電極接続構造の形成方法においては、前記エッジ部分の先端の座屈幅が1μm~50μmとするため、接合時にエッジの先端部分が座屈して、微小面での接合を実現しつつ、エッジ部分の先端で接合先の電極に損傷を加えてしまうことを防止することができるという効果を奏する。
【0037】
本発明に係る電極接続構造の形成方法は、前記超音波振動の周波数が15kHz~150kHzとするものである。
【0038】
このように本発明に係る電極接続構造の形成方法においては、前記超音波振動の周波数が15kHz~150kHzとするため、接合表面の不要な酸化膜等を確実に破壊しつつ、接合部分に効率よくエネルギーを伝搬することが可能になり、エネルギー効率を上げることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】第1の実施形態に係る電極接続構造で用いるリードフレーム及び半導体チップの接続構造を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る電極接続構造における第1接続面と第2接続面とがめっき処理される場合の第1の拡大図である。
【
図3】第1の実施形態に係る電極接続構造における第1接続面と第2接続面とがめっき処理される場合の第2の拡大図である。
【
図4】第2の実施形態に係る電極接続構造におけるリードの形状を示す斜視図である。
【
図5】第2の実施形態に係る電極接続構造におけるリードフレーム及び半導体チップの接続構造を示す図である。
【
図6】
図4に示すリード11の形状を改良した場合の構成を示す図である。
【
図8】第3の実施形態に係る電極接続構造を示す正面図である。
【
図9】
図8に示す電極接続構造の応用例を示す図である。
【
図10】第4の実施形態に係る電極接続構造の形成方法を示す図である。
【
図11】実施例において使用したリードフレームの断面形状及び外観を示す図である。
【
図12】リードフレームと半導体チップの電極とをNiめっきで接続した結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を説明する。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。なお、以下の各実施形態においては、電子デバイスの一例として半導体チップを用いた場合の電極接続構造及び電極接続構造の形成方法について説明するが、電子デバイスとしては、半導体チップ以外にも、例えばセンサ、MEMS、LED、電池類等の電極接続構造にも適用することが可能である。
【0041】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る電極接続構造について、
図1ないし
図3を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る電極接続構造で用いるリードフレーム及び半導体チップの接続構造を示す図である。
図1(A)は、半導体チップとリードフレームとを接続した場合の下面図、
図1(B)は、半導体チップとリードフレームとを接続した場合の側断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る電極接続構造は、複数の長尺状のリード11が梯子状に並列して配設されたリードフレーム10における各リード11の長手方向側面と半導体チップ12の電極とをめっき接続する。リードフレーム10と直接接触して接続される半導体チップ12の電極面を第1接続面13とし、この第1接続面13に接触するリード11の長手方向側面を第2接続面14とする。第1接続面13と第2接続面14との間をめっき処理して接合することで、半導体チップ12とリードフレーム10とを電気的に接続する。
【0042】
図2は、本実施形態に係る電極接続構造における第1接続面と第2接続面とがめっき処理される場合の第1の拡大図である。第1接続面13と第2接続面14とが面と面で密着した状態でめっき処理を行った場合、第1接続面13と第2接続面14との間にめっき液が十分に流通せずにボイド等の欠損が形成されてしまう場合があり品質の低下につながってしまう。そのため、本実施形態においては、第1接続面13と第2接続面14との間にめっき液を十分に流通させるために、第2接続面14上にエッジ部15を有し、このエッジ部15が第1接続面13と接触した状態で当該エッジ部15から第2接続面14の外側部16(第2接続面の端部)に向かってそれぞれの面(第1接続面13と第2接続面14)の距離が連続的に増加するように空隙17を形成する。この空隙17が形成されることで、第1接続面13と第2接続面14との間にめっき液を十分に流通させることができると共に、空隙17におけるエッジ部15の周囲から徐々にめっきで埋められ、空隙17の広い範囲をめっきで充填することが可能となる。
【0043】
なお、
図2(A)の場合はリード11の断面が長方形であり、
図2(B)の場合はリード11の断面が平行四辺形となっているが、これ以外にもリード11の断面形状が正方向、菱形、台形、その他多角形等であってもよい。製造上は作業の手間を低減するために、
図2(A)に示すような長方形又は正方形であることが好ましい。また、
図2に示すようにエッジ部15が第2接続面14の端部の一部に形成されている場合は、当該エッジ部15が形成されている箇所を除いた外側部16に向かってそれぞれの面の距離が連続的に増加するように空隙17が形成されるものである。
【0044】
図3は、本実施形態に係る電極接続構造における第1接続面と第2接続面とがめっき処理される場合の第2の拡大図である。
図3(A)は、第2接続面14の一端側の外側部16aにエッジ部15を有し、他端側の外側部16bに向かってリード11を減肉加工することで、第1接続面13と第2接続面14との距離がエッジ部15から外側部16bに向かって連続的に増加するように空隙17が形成されている。この減肉加工は、例えばプレス加工のほか、エッチング加工や切削加工により行うことができる。
【0045】
また、
図3(B)は、第2接続面14上の長手方向中心にエッジ部15を有し、両端の外側部16a,16bに向かってリード11を減肉加工することで、第1接続面13と第2接続面14との距離がエッジ部15から外側部16a,16bに向かって連続的に増加するように空隙17が形成されている。この減肉加工は、例えばプレス加工のほか、エッチング加工や切削加工により行うことができる。
【0046】
図3(A)、(B)に示すように、エッジ部15からリード11の外側部16に向かってリード11の第2接続面14を減肉加工することで、空隙17を形成することができ、この空隙17にめっき液が十分に流通することで第1接続面13と第2接続面14とをボイド等の欠損を発生することなくめっき接続することができると共に、第1接続面13と第2接続面14とが対向している領域を広くめっきで充填することが可能となる。
【0047】
なお、上記においてはリードフレーム10と半導体チップ11の電極との接続構造について説明したが、リードフレーム10と基板電極との接続においても同様の電極接続構造の技術を適用することが可能である。また、エッジ部15からリード11の外側部16に向かって連続的に増加させる第1接続面13と第2接続面14との距離は、めっき処理の進行速度に応じて任意に設定することができ、空隙17がエッジ部15から次第にめっきで充填されるような距離(=エッジ角度)に設定されるものである。
【0048】
このように、
図2および
図3に示すような本実施形態に係る電極接続構造においては、リード11の長手方向側面にエッジ部15を有し、このエッジ部15からリード11の外側部16に向かって、第1接続面13と第2接続面14との距離が連続的に増加するように空隙17を形成することで、第1接続面13と第2接続面14との間にめっき液を十分に流通することができ、ボイド等の欠損を生じることなく高品質なめっき接続を行うことができると共に、第1接続面13と第2接続面14とが対向している領域を広くめっきで充填することが可能となる。
【0049】
また、第1接続面13と第2接続面14とが対向している領域が広くめっきで充填されることで、熱伝導率を高めることができる。
【0050】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る電極接続構造について、
図4ないし
図7を用いて説明する。本実施形態に係る電極接続構造は、リード11の長手方向側面の第2接続面14の短手方向に複数のエッジ部15が所定の間隔を空けて形成されているものである。なお、本実施形態において前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0051】
図4は、本実施形態に係る電極接続構造におけるリードの形状を示す斜視図、
図5は、本実施形態に係る電極接続構造におけるリードフレーム及び半導体チップの接続構造を示す図である。
図4に示すように、リード11の第2接続面14には短手方向に幅狭のエッジ部15が複数形成されており、各エッジ部15の間には第2接続面の短手方向に貫通する凹溝状の空隙17が形成されている。
【0052】
そして、
図5に示すように、リード11のエッジ部15が半導体チップ12(又は基板電極でもよい)に接触した状態でめっき処理がなされる。
図5(A)はリードフレームと半導体チップの接続構造を示す側面図、
図5(B)はリードフレームと半導体チップの接続構造を示す正面図、
図5(C)はリードフレームと半導体チップの接続構造を示す下面図である。リード11には
図4に示すようにエッジ部15間に凹溝状の空隙17が形成されているため、エッジ部15の周囲はめっき液が十分に流通しており、上記第1の実施形態の場合と同様にエッジ部15を中心として高品質なめっき処理を行うことが可能となる。また、エッジ部15間に複数の空隙17が形成されることで長手方向に掛かる応力を分散してリード11の破損等を防止することができる。
【0053】
図4に示すリード11の形状をさらに改良したものを
図6に示す。
図6(A)は、
図4に示すリード11の形状において長手方向に不連続な凹溝状の空隙17aをさらに形成したものであり、
図6(B)は、リード11の短手方向に形成されたエッジ部15を山形状に形成したものである。
図6(A)に示すように、エッジ部15の一部に切り込みを入れて長手方向に不連続な凹溝状の空隙17aが形成されることで、短手方向に掛かる応力を分散してリード11の破損等を防止することができる。
【0054】
なお、上記第1の実施形態における
図3(B)に示したリード11の場合は、エッジ部15の部分に長手方向に連続する凹溝状の空隙を形成することで、
図6の場合と同様に短手方向に掛かる応力を分散してリード11の破損等を防止することができる。
【0055】
図6(B)は、
図6(A)のエッジ部15をリード11の長手方向から見て山形状となるように加工している。このように加工することで、上記のようにリード11に掛かる応力を分散してリード11の破損等を防止することができると共に、めっき液をより効果的に流通させて極めて高品質なめっき処理を行うことが可能となる。なお、
図6(B)において、長手方向に不連続な空隙17aを形成しないようにしてもよい。
【0056】
図7は、
図6に示したリードの変形例である。
図7の場合は、
図6の場合よりもさらに幅狭のエッジ部15が短手方向に複数形成されている。また、短手方向に貫通する凹溝状の空隙17もR形状ではなく鋭角な凹溝状となっている(
図7(A))。このようなリード11の形状においても、
図6(A)の場合と同様にエッジ部15の一部に切り込みを入れて長手方向に連続な凹溝状の空隙17aを形成することで、短手方向に掛かる応力を分散してリード11の破損等を防止することができる(
図7(B))。さらに、
図6(B)の場合と同様にエッジ部15をリード11の長手方向から見て山形状となるように加工することで、めっき液をより効果的に流通させて極めて高品質なめっき処理を行うことが可能となる。
【0057】
(本発明の第3の実施形態)
本実施形態に係る電極接続構造について、
図8及び
図9を用いて説明する。本実施形態に係る電極接続構造は、リード11の長手方向側面の第2接続面の裏面側の第3接続面と、当該第3接続面と接続する半導体チップ12の電極面(又は基板電極面でもよい)である第4接続面と、の接続部分において、第4接続面と接触する第3接続面のエッジ部分から当該第3接続面の外側部に向かって第4接続面と第3接続面との距離が連続的に増加しているものである。なお、本実施形態において前記各実施形態と重複する説明は省略する。
【0058】
図8は、本実施形態に係る電極接続構造を示す正面図である。
図8に示すように、リード11の上面側である第2接続面14にエッジ部15aを有し、下面側である第3接続面18にエッジ部15bを有している。第1接続面13と第2接続面14との間のめっき処理については、上記各実施形態において説明通り高品質なめっき接続が可能となっている。同様に、第3接続面18と、当該第3接続面18に接続される半導体チップ12の電極面(又は基板電極面)である第4接続面19との接続においても、高品質なめっき接続が可能となっている。
【0059】
すなわち、第4接続面19に第3接続面18のエッジ部15bが接触した状態で、当該エッジ部15bから当該第3接続面18の外側部16に向かって第4接続面19と第3接続面18との距離が連続的に増加して空隙17が形成されているため、この空隙17にめっき液を十分に流通させてボイド等の欠損をなくした高品質なめっき接続が可能となっている。
【0060】
このように、リード11の長手方向側面における表裏両面において半導体チップ12と上記のようなめっき接続を行うことで、半導体チップ12を多層に積層することが可能となり、高品質なめっき接続を実現すると共に、半導体チップ12の積層工程を簡素化して作業効率を格段に向上させることが可能となる。
【0061】
なお、
図9に示すように、本実施形態に係る電極接続構造においては、上記各実施形態において説明したリード11を用いることが可能である。例えば、
図9(A)は、
図3における電極接続構造を応用したものであり、
図9(B)は、
図6における電極接続構造を応用したものである。
【0062】
すなわち、リード11の長手方向側面の表裏両面を加工することで、上記各実施形態における電極接続構造を用いて半導体チップ及び/基板を多層に積層することが可能となる。
【0063】
また、上記各実施形態において、めっき接続が、融点が700℃以上の金属又は合金によるめっきであることが望ましく、特に、Ni(ニッケル)又はNi合金であることが望ましい。そうすることで、例えば300℃程度以上の高温下での使用であっても、接続部分がダメージを受けることなく、高品質を保つことができる。また、Ni又はNi合金を用いることで、100℃以下のめっき処理が可能となり、めっき処理における応力や熱による半導体チップ、基板、リードフレーム等へのダメージをなくして、高品質を保つことが可能となる。
【0064】
(本発明の第4の実施形態)
本実施形態に係る電極接続構造の形成方法について、
図10を用いて説明する。本実施形態に係る電極接続構造の形成方法は、第1接続面13と第2接続面14上のエッジ部15とを超音波振動により接合するものである。超音波接合は、例えばワイヤボンディングの接合等に利用されているものであり、超音波振動により接合面表面の不要な膜(例えば、酸化膜等)を除去しながら分子間の距離を縮めることで、分子レベルで接合するものである。超音波接合は、面同士での接合では極めて困難性を有するが、ワイヤボンディングや本発明のようなエッジ部15においては、平面電極に対して良好に接合することが可能である。
【0065】
図10は、超音波接合を利用して上記の電極接続構造を形成する様子を示す図である。
図10(A)は、超音波接合により第1接続面13と第2接続面14とを接合すると共に、第3接続面18と第4接続面19とを接合している図であり、
図10(B)は、
図10(A)の状態でめっき処理を行った場合の図である。すなわち、
図10(A)で半導体チップ12とリード11とを超音波接合により仮止めし、その状態で
図10(B)に示すめっき処理を行う。超音波接合により仮止めすることで、その後のめっき処理を安定して高精度に行うことが可能となる。
【0066】
図10(A)において、超音波の振動はリード11の長手方向や幅方向に加えることができるが、長手方向、すなわち
図10(A)においてはエッジが線上に伸びる方向に振動を加えることで、被接合面の表面の酸化物など接合を阻害するものを破壊する効率が良くなると共に、エッジ部15全体が被接合面全体に接触するように変形することが容易になり、第1接続面13や第4接続面19の電極の損傷を軽減することが可能となる。超音波の周波数について、印加する超音波振動の周波数が低いと、酸化膜を破壊する以前にエッジ部15a,15bが変形してしまい、接合性が劣ってしまう場合があり、印加する超音波振動の周波数が高いと、伝搬中のエネルギーの減衰が大きく、接合に寄与するエネルギー効率が低下してしまう場合がある。そこで、本実施形態においては、15kHz~150kHzの周波数で超音波振動を印加する。そうすることで、エッジ部15a,15bが変形する前に酸化膜を破壊しつつ、エネルギーを効率よく伝搬することが可能となる。
【0067】
また、超音波接合を行う場合の温度は、常温でも可能であるが、酸化が起こりにくい180℃程度以下に加熱することが望ましい。さらに、酸化を抑制するために、窒素ガスなどにより接合部分の雰囲気を不活性に保つことが有効である。
【0068】
さらにまた、上述したように、超音波接合は、面同士での接合は困難性を有することから、エッジ部15a,15bの座屈幅dが1μm~50μm程度となるように、超音波振動の印加時間、加圧の大きさ及びエネルギーが調整されていることが望ましい。また、エッジ部15a,15bの先端部分は、超音波振動による変形接合を容易にするために、その先端部(例えば、エッジ部15a,15bの最先端部から50μm程度の位置まで)の角度θ1をθ1<90度の鋭角にしてもよい。
【0069】
上記の超音波接合によりリード11と半導体チップ12とが仮止めされ、この状態でめっき処理を行うことで、
図10(B)に示すような電極接続構造が形成される。
【0070】
このように、超音波接合によりリード11と半導体チップ12の電極(又は基板電極)との一部又は全部を仮止めすることにより、めっき接合の位置決めを容易に行うことができ、且つ、エッジ先端部の非接触領域におけるめっき後のボイド残りを低減することができる。また、めっき接合の位置決めの際に補助用の治具を用いる必要がなくなるため、治具の装着及び取り外しの工程を省略して、簡単で低コストの製法を実現することができる。
【0071】
なお、上記各実施形態において、第1接続面13と第2接続面14とがなす角度、及び第3接続面18と第4接続面19とがなす角度θ
2(例えば、
図10を参照)は、3度~15度であることが望ましい。すなわち、例えばパワーデバイスとして利用する場合には、多くの電流を通電するため、熱伝導性を向上させる必要がある。そのために電極の幅をある程度大きくする必要があるが、仮に各接続面のなす角度が15度より大きくなると、電極の幅を大きく形成するためにめっき処理を長時間に亘って行う必要があり、製造効率が悪くなてしまう場合もある。各接続面のなす角度を3度~15度程度にすることで、少ないめっき金属で電極の幅を大きくすることが可能となり、めっき時間を大幅に短縮して製造効率を上げることが可能になる。
【0072】
また、本実施形態における超音波接合を用いた電極接続構造及び電極接続構造の形成方法は、前記各実施形態に係る技術において適用することが可能である。
【実施例】
【0073】
本発明に係る電極接続構造について、以下の実験を行った。
図11は、本実施例において使用したリードフレームの断面形状及び外観を示す図である。
図11に示すように、本実施例においては、リード11の長手方向側面の接続面(=第2接続面14)を面取りして山形に形成し、裏面側(=第3接続面18)は平坦にしている。
【0074】
図11のリードフレームと半導体チップ12の電極とをNiめっきで接続した結果を
図12に示す。
図12(A)はリードフレームと半導体チップとを接合した際の外観写真、
図12(B)はリードフレームと半導体チップとを接合した際の接合断面写真、
図12(C)は
図12(B)の接合断面図の一部を拡大した写真である。
図12に示す写真から明らかなように、リード11と半導体チップ12の電極とがボイド等の欠損を生じることなくNiめっきで接続されていることを確認することができる。また、リード11のエッジ部15からリード11の外側部16までNiめっきで十分に充填されており、極めて高品質で且つ熱伝導率の高いめっき接続が実現できることを確認することができる。
【0075】
以上のように、本発明に係る電極接続構造により、極めて高品質なめっき接続が可能であることが明らかとなった。このような高品質なめっきを可能とすることで、インターポーザと半導体チップとをダイレクトに接合することができ、高耐熱、高熱伝導化、低インダクタンス化を実現することができる。また、熱処理を不要とするため、プロセス中の残留応力、酸化の影響を抑えることができ、めっき実装による機械的強度が向上することで高信頼性を実現することができる。さらに、ダイボンディングやワイヤボンディング等の工程をめっき工程で一括して行うことができるため高生産性を実現することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 リードフレーム
11 リード
12 半導体チップ
13 第1接続面
14 第2接続面
15(15a,15b) エッジ部
16(16a,16b) 外側部
17(17a) 空隙
18 第3接続面
19 第4接続面