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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】腕支持システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20220328BHJP
   A61H 1/02 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
A61H1/02 K
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018560906
(86)(22)【出願日】2017-05-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 US2017033709
(87)【国際公開番号】W WO2017201517
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-05-19
(31)【優先権主張番号】62/339,777
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518229009
【氏名又は名称】エンハンス テクノロジーズ,リミテッド ライアビリティー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Enhance Technologies,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ドイル,マーク,シー.
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-508072(JP,A)
【文献】特開2011-224772(JP,A)
【文献】特開2013-013978(JP,A)
【文献】特開昭61-014886(JP,A)
【文献】特開2002-113681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
A61H 1/00- 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの腕を支持するためのシステムであって、
ユーザの身体に装着されるように構成されたハーネスと、
前記ハーネスに連結され、ユーザの腕を支持するように構成された腕支持部と、
前記腕支持部に連結され、ユーザが動いて前記腕支持部がユーザの腕の動きに追従する際に、腕に作用する重力を少なくとも部分的に相殺するための相殺力を付加する1または複数の補償要素であって、1または複数のケーブルおよびバネを内部に有するカセットを含み、前記1または複数のケーブルのうちの少なくとも第1のケーブルが、前記カセットから露出しているとともに取付位置において前記腕支持部に連結されている1または複数の補償要素と、
前記腕支持部および前記カセットに連結されたガードであって、前記第1のケーブルが破損した場合にユーザを保護するために、前記カセットの少なくとも一部および前記第1のケーブルを覆うガードとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
ユーザの腕を支持するためのシステムであって、
ユーザの身体に装着されるように構成されたハーネスと、
前記ハーネスに連結され、ユーザの腕を支持するように構成された腕支持部であって、前記腕支持部が肩ブラケットを含み、前記肩ブラケットが、垂直軸を中心に水平に回転するように前記ハーネスに回動可能に連結された、腕支持部と、
カセットを含む1または複数の補償要素であって、前記カセットが、前記肩ブラケットに対して水平軸を中心に垂直に回動するように前記肩ブラケットに連結され、前記カセットが、ユーザが腕を昇降させて前記腕支持部がユーザの腕の動きに追従する際に、腕に作用する重力を少なくとも部分的に相殺するための相殺力を付加するように構成され、前記1または複数の補償要素が、前記カセットに設けられた1または複数のケーブルおよびバネを含み、前記1または複数のケーブルのうちの少なくとも第1のケーブルが、前記カセットから露出しているとともに取付位置において前記腕支持部に連結されている1または複数の補償要素と、
前記第1のケーブルが破損した場合にユーザを保護するために、前記カセットを少なくとも部分的に覆って前記第1のケーブルを覆うガードとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記肩ブラケットが、前記ハーネスに垂直ピボットにおいて連結された第1の端部を含んで、前記肩ブラケットが前記垂直軸を中心に水平に回動するように構成されており、前記肩ブラケットがハブを有する第2の端部を含み、前記カセットが、前記ハブに回動可能に連結された前記1または複数のケーブルおよびバネを含むシャーシを有して、前記カセットが前記肩ブラケットに対して前記水平軸を中心に垂直に回動できるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項4】
ユーザの腕を支持するためのシステムであって、
ユーザの身体に装着されるように構成されたハーネスと、
前記ハーネスに連結され、ユーザの腕を支持するように構成された腕支持部であって、前記腕支持部が肩ブラケットを含み、前記肩ブラケットが、垂直軸を中心に水平に回転するように前記ハーネスに回動可能に連結された、腕支持部と、
前記肩ブラケットに連結されたカセットであって、当該カセットが前記肩ブラケットに対して水平軸を中心に回動するように構成されており、前記カセットが内部に1または複数のケーブルおよびバネを含み、当該1または複数のケーブルおよびバネが、ユーザが腕を昇降させて前記カセットがユーザの腕の動きに追従する際に、腕に作用する重力を少なくとも部分的に相殺するための相殺力を付加するように構成されている、カセットと、
前記カセットの1以上の要素が破損した場合にユーザを保護するように前記カセットを少なくとも部分的に覆うガードであって、前記ガードがスライド安全カバーを有し、当該スライド安全カバーが、前記肩ブラケットに回動可能に連結された第1の端部と、前記カセット上のトラックにスライド可能に連結された第2の端部とを有しており、前記カセットが回動する際に前記スライド安全カバーがスライドできるように構成されている、ガードと、を備えることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記肩ブラケットが、前記ハーネスに垂直ピボットにおいて連結された第1の端部を含んで、前記肩ブラケットが前記垂直軸を中心に水平に回動するように構成されており、前記肩ブラケットがハブを有する第2の端部を含み、前記カセットが、前記ハブに回動可能に連結された前記1または複数のケーブルおよびバネを含むシャーシを有して、前記カセットが前記肩ブラケットに対して前記水平軸を中心に垂直に回動できるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項3または5に記載にシステムにおいて、前記ガードが、前記ハブと前記カセットとの間の隙間を覆うような形状であることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項3または5に記載のシステムにおいて、前記ハブが前記肩ブラケットの第2の端部に取り外し可能に連結されて、前記カセットを前記肩ブラケットに取り外し可能に連結していることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記1または複数のケーブルのうちの少なくとも第1のケーブルが、前記カセットから露出しているとともに取付位置において前記ハブに連結されており、腕の昇降位置の間で前記水平軸を中心に前記カセットが回動する際に、前記スライド安全カバーが隙間を覆うような形状であることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記スライド安全カバーが、前記トラック内に補足された1または複数のピンまたはローラを有しており、前記カセットが腕の昇降位置の間で前記水平軸を中心に回動する際に、前記スライド安全カバーがスライドすることを容易にすることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記ガードが、前記肩ブラケットに連結された第1の端部と、前記カセットに連結された第2の端部とを有する伸長可能なカバーを含み、前記カセットが腕の昇降位置の間で前記水平軸を中心に回動する際に、前記カバーが前記第1のケーブルを覆うように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1または2に記載のシステムにおいて、
前記腕支持部が1または複数の位置の間で移動するときに、前記ガードが前記カセットに対して移動可能であることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1または2に記載のシステムにおいて、
前記腕支持部が1または複数の位置の間で移動するときに、前記ガードが伸縮可能であることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1または2に記載のシステムにおいて、
前記ガードが、前記ハーネスに連結された第1の端部と、前記カセットに連結された第2の端部とを有する伸長可能なカバーを含むことを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項1または2に記載のシステムにおいて、
前記ガードがプリーツカバーを含み、当該カバーが、前記腕支持部が動くときに当該カバーの伸縮に適応するために複数の伸長可能なプリーツを有することを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項1または2に記載のシステムにおいて、
前記ガードが伸長可能なカバーを含み、当該カバーが、前記腕支持部が動くときに当該カバーの伸縮に適応するために互いに入れ子になった複数のセグメントを有することを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項1または2に記載のシステムにおいて、
前記ガードが、前記カセットに取り付けられたスライド可能なカバーを含むことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの腕を支持するシステム、デバイスおよび方法に関し、例えば、実質的に自由な動きを可能にしながらも、ユーザの片腕または両腕を支持し、それにより、例えばユーザが片腕または両腕を伸ばした状態で長時間にわたり1または複数のタスクを実行することを可能にする適応腕支持システムに関する。
【0002】
関連出願データ:
本出願は、2016年5月20日に出願された同時係属中の米国仮出願第62/339,777号の利益を主張するものであり、その全体の開示は、引用により明示的に本明細書に援用されるものとする。
【背景技術】
【0003】
腕支持システムは、当該システムが提供する支持機能に直接影響を及ぼさないが、当該システムの有用性および安全性を改善するいくつかの補助的な特徴から利益を得ることができる。そのような特徴の例がここに開示される。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、ユーザの腕を支持するシステム、デバイスおよび方法に関し、例えば、実質的に自由な動きを可能にしながらも、ユーザの片腕または両腕を支持し、それにより、例えばユーザが片腕または両腕を伸ばした状態で長時間にわたり1または複数のタスクを実行することを可能にする適応腕支持システムまたはデバイスに関する。
【0005】
カセットまたは他の補償要素、アームレスト機構、カバーなど、本明細書の実施形態に含むことができる例示的な腕支持コンポーネントは、米国出願公開第2012/0184880号、第2014/0033391号、第2014/0158839号および2015/0316204に記載されており、それら文献の全体の開示は、引用により本明細書に援用されるものとする。それら出願における実施形態は何れも、本明細書に記載される1または複数の追加の特徴を含むことができる。
【0006】
第1の特徴は、支持機構を収容するモジュール式カセットの迅速な取り外しおよび取り付けを可能にする特徴である。迅速な取り外し/取り付けは、ユーザがカセットの力レベルまたは力プロファイルを変更したり、正常に機能しないカセットを交換したり、1つのカセットのみを使用したり、あるいはシステムを保管したりすることを望む場合に有益であり得る。
【0007】
第2の特徴は、破滅的に損傷し、カバーが無ければカセットから危険な形で出る可能性のある、バネやケーブルなど、エネルギーが付与されたカセット内の機構からユーザを保護する保護カバーである。
【0008】
第3の特徴は、カセットをハーネスから切り離すことなく、ユーザがカセットの相殺効果を有効または無効にすることを可能にする。これは、ユーザがサポートを必要としない活動に関与している場合(作業を止めて休憩を取っているときなど)や、保管のためにデバイスを折り畳む必要があるときなどに役立つことがある。
【0009】
一実施形態によれば、ユーザの腕を支持するためのシステムが提供され、当該システムが、ユーザの身体に装着されるように構成されたハーネスと、ハーネスに連結され、ユーザの腕を支持するように構成された腕支持部と、腕支持部に連結され、ユーザが動いて腕支持部がユーザの腕の動きに追従する際に、腕に作用する重力を少なくとも部分的に相殺するための相殺力を付加する1または複数の補償要素であって、1または複数のケーブルおよびバネを含むカセットを有する1または複数の補償要素と、カセットの1または複数の構成要素が破損した場合にユーザを保護するために、カセットを少なくとも部分的に覆うガードとを備える。
【0010】
別の実施形態によれば、ユーザの腕を支持するためのシステムが提供され、当該システムが、ユーザの身体に装着されるように構成されたハーネスと、ハーネスに連結され、ユーザの腕を支持するように構成された腕支持部と、腕支持部に連結され、ユーザが動いて腕支持部がユーザの腕の動きに追従する際に、腕に作用する重力を少なくとも部分的に相殺するための相殺力を付加する1または複数の補償要素であって、腕支持部に着脱可能に取り付けることができるカセットを含む1または複数の補償要素とを含む。
【0011】
さらに別の実施形態によれば、ユーザの腕を支持するためのシステムが提供され、当該システムが、ユーザの身体に装着されるように構成されたハーネスと、ハーネスに連結され、ユーザの腕を支持するように構成された腕支持部と、腕支持部に連結され、ユーザが動いて腕支持部がユーザの腕の動きに追従する際に、腕に作用する重力を少なくとも部分的に相殺するための相殺力を付加する1または複数の補償要素と、使用されていないときに腕支持部を固定するためのロック機構とを含む。
【0012】
本発明の他の態様および特徴は、添付の図面と併せて以下の説明を検討することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面に示されている例示的な装置は、図示された実施形態の様々な態様および特徴を例示することに重点を置いて、必ずしも原寸に比例して描かれていないことを理解されたい。
図1図1は、腕支持システムの例示的な実施形態の後方斜視図である。
図2図2Aは、図1の腕支持システムの前方斜視図であり、モジュール式腕支持カセットがシステムのハーネスから取り外された状態を示している。図2Bは、図2Aに示すモジュール式カセットの詳細図である。図2Cおよび図2Dは、それぞれハーネスに着脱された図2Aのモジュール式カセットの側面図である。
図3図3A図3Cは、内部コンポーネントを明らかにするためにカバーを取り外した図2Aのモジュール式カセットの側面図であり、モジュール式カセットが上昇位置、水平位置および下降位置にある状態をそれぞれ示している。
図4図4Aおよび図4Bは、内部コンポーネントを明らかにするためにカバーを取り外したモジュール式カセットの別の実施形態の側面図であり、モジュール式カセットが上昇位置および下降位置にある状態をそれぞれ示している。
図5図5Aおよび図5Bは、それぞれ上昇位置および下降位置にあるモジュール式カセットのさらに別の実施形態の側面図である。図5Cは、スライド回動カバーを取り外した図5Aおよび図5Bのモジュール式カセットの斜視図である。
図6図6A図6Cは、モジュール式カセットのさらに別の実施形態の側面図であり、モジュール式カセットが上昇位置、水平位置および下降位置にある状態をそれぞれ示している。
図7図7Aおよび図7Bは、それぞれ上昇位置および下降位置にあるモジュールの別の実施形態の側面図である。
図8図8Aおよび図8Bは、それぞれ上昇位置および下降位置にあるモジュールのさらに別の実施形態の側面図である。
図9図9Aおよび図9Bは、内部コンポーネントを明らかにするためにカバーを取り外したモジュール式カセットのさらに別の実施形態の側面図であり、モジュール式カセットが上昇位置および下降位置にある状態をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、システムのより完全な説明を提供するために、多くの詳細が述べられる。しかしながら、当業者には明らかなように、開示されたシステムは、それらの特定の詳細なしで実施することができる。他の例では、システムを不必要に不明瞭としないように、既知の特徴は詳細には説明されていない。
【0015】
図1を参照すると、例示的な腕支持システム10の後方斜視図が示されている。ユーザUの右腕RAは、カセット100に取り付けられたアームレスト40によって支持された状態で示されている。米国出願公開第2014/0158839号に既に開示されているように、カセット100は、腕の位置に応じて変化する相殺引上げ力を腕に提供するように配置された、1または複数のバネ、ケーブルおよびプーリを含むことができる。カセット100は水平ピボット110を組み込むことができ、この水平ピボットによって、ほぼ水平軸HARの周りで腕の相殺支持が可能となっている。また、カセット100は、垂直ピボット28でハーネス20に取り付けられ、この垂直ピボットによって、カセットがほぼ垂直軸VARを中心に回転することが可能となっている。
【0016】
図2Aは、腕支持システム10の前方斜視図であり、モジュール式カセット100がハーネス20から取り外された状態を示している。カセット100は、必要に応じてハーネス20に迅速に取り付けることができ(ハーネスから取り外すことができ)、それにより、例えば、ユーザまたはタスクの要求に応じて引上げ力レベルまたは引上げ力プロファイルを変更したり、損傷したカセットを交換したり、あるいは保管のために、カセット100を迅速に交換することができる。例えば、一システムでは、異なる力プロファイルを有する複数のカセット(図示省略)が提供されるものであってもよく、ユーザは、例えば所望の力プロファイルに基づいて、そのセットのなかから所望のカセットを選択して取り付けることができる。例えば、いくつかの用途では、腕RAを伸ばしたときおよび/または上げたときに、異なるカセットが異なる支持力を加えることができ、その結果、ユーザが、例えば、重い物体、例えば重いツール(図示省略)を持ち上げたり、運ぶこと、あるいは腕を伸ばして長い時間を費やすことを見込んだときには、より高い支持力プロファイルのカセットを選択することができ、一方、他の用途において、ユーザが使用中の支持を小さくしたい場合には、より低い力のカセットを選択することができる。
【0017】
図2Bは、図2Aの腕支持システム10の詳細斜視図である。カセット100は、カセット100のハブ140をハーネス20のソケット32内に挿入することによって、ハーネス20に迅速に取り付ける(またはハーネスから取り外す)ことができる。ハブ140およびソケット32は、カセット100をハーネス20に取り付けた状態に保つために協働するロック機構(後述)を含むことができる。例えば、図示のように、ハーネス20は、ハーネスブラケット26と、肩ブラケット34とを含むことができ、肩ブラケット34は、当該肩ブラケットの第2の端部にあるソケット32が、ハーネス20に対してほぼ水平に回動するように、ハーネスブラケット26に垂直ピボット28で回動可能に連結された第1の端部36を有する。ソケット32が水平ピボットを中心に回動して、それにより、例えばユーザが右腕RAを上げ下げするときに、カセット100が実質的に垂直に回転できるように、ソケット32が肩ブラケット26に回動可能に連結されている。
【0018】
図2Cは、図2Bに示すカセット/ハーネスインターフェースの詳細側面図である。カセットロックバネ54が(ユーザによって)ソケット32からほぼ円弧A3に沿って引っ張られると、ロックポスト56がカセット100から引き抜かれる。カセット100は、ほぼ経路P3に沿ってソケット32内に押し上げられる。カセット100のハブ140は、ソケット32に嵌合する。カセット100のハブ140がソケット32に入ると、ソケット32のノッチ52がハブ140のピン142を受け入れるため、ハブ140のノッチ144がソケット32のピン50を受け入れる。
【0019】
図2Dは、図2Cに示すカセット/ハーネスインターフェースの詳細側面図であり、カセット100がソケット32内にロックされている状態を示している。ハブ140のノッチ144は、ピン50をソケット32に保持し、ソケット32のノッチ52は、ピン142をハブ140に保持する。カセットロックバネ54は曲げられておらず、また、ロックポスト56は、ハブ140のノッチ146内に受け入れられているため、カセット100をソケット32内にロックする。
【0020】
図3Aは、腕支持システム10のカセット100の側面図であり、カセット100の例示的なコンポーネントを示すために、一方のサイドカバーを取り外した状態を示している。アンカーブロック150は、通常動作の間、例えば以下に開示する機構によってハブ140にラッチされる。シャーシ126は、ピボット110でハブ140に回動可能に取り付けられ、水平軸HARを中心に回転する。シャーシ126は、ユーザが腕を上げて作業しているのに対応する、水平より約50度(50°)上の上昇位置で示されている。第1のケーブル154は、取付点152でアンカーブロック150に回動可能に取り付けられ、第1のケーブル取付点161で第1のプーリ160に取り付けられている。第2のケーブル170は、第2のケーブル取付点(図示省略)で第2のプーリ162に取り付けられている。第1プーリ160および第2のプーリ162は互いに結合されて、一体的に回転する。任意選択的には、第2のケーブル170は、任意の反転プーリ178の周りに巻くことができ、調節可能なアンカー172でシャーシ126に取り付けられている。1または複数のバネ180(その数および割合は変えることができる)は、フレーム182により反転プーリ178に取り付けられ、後部フレーム186によりピボット184でシャーシ126に取り付けられている。図示のように、カセットシャーシ126は、寸法D1で示すように、ハブ140に近接している。
【0021】
図3Bは、ほぼ円弧A5に沿って、(例えば、ユーザが腕を水平位置に降ろしたのに対応する)ほぼ水平位置に降下した図3Aのカセットを示している。シャーシ126の回転に応答して第1のケーブル154が第1のプーリ160から伸長して引き出されるとき、第1および第2のプーリが一緒に時計回りに回転する。第2のケーブル170は、第2のプーリ162に同時に巻き取られ、それによりバネ180を伸張させる。バネ180が伸びると、バネの力が増加し、両ケーブル154,170の張力が増加する。図示のように、カセットシャーシ126の上端は、寸法D2で示すように、ハブ140から離れるように移動し、シャーシ126とハブ140との間にギャップを開ける。
【0022】
図3Cは、ほぼ円弧A6に沿って、(例えば、ユーザが腰の高さ付近で作業するために腕を降ろしたのに対応する)水平より約70度(70°)下がった図3Bのカセットを示している。シャーシ126の回転に応答して第1のケーブル154が第1のプーリ160から伸長して引き出されるとき、第1のプーリ160および第2のプーリ162が一緒に時計回りにさらに回転する。第2のケーブル170は、第2のプーリ162に同時にさらに巻き取られ、それによりバネ180をさらに伸張させるとともに、両ケーブル154,170の張力をさらに増加させる。図示のように、カセットシャーシ126の上端は、寸法D3で示すように、ハブ140からさらに離れるように移動し、シャーシ126とハブ140との間に大きなギャップを開ける。
【0023】
ケーブルの張力が増加するに連れて、ユーザに対する壊滅的なケーブルの破損の危険性が増大する。例えば、図3Cに示す位置でカセット100にケーブルの破損が発生すると、ケーブル154の危険な張力により、カセットとハブとの間のギャップからケーブルが高速で飛び出して、ユーザまたは他の人を危険に曝す可能性がある。
【0024】
図4Aは、腕支持システム10の代替的な単一ケーブルのカセット200の側面図であり、内部コンポーネントを示すために一方のサイドカバーが取り外されている。図3A図3Cと同様に、アンカーブロック150は、以下に開示する機構によって、通常動作中にハブ140にラッチされる。シャーシ126は、ピボット110でハブ140に回動可能に取り付けられ、水平軸HARを中心に回転する。シャーシ126は、ユーザが腕を上げて作業しているのに対応する、水平より約50度(50°)上の上昇位置で示されている。単一ケーブル220は、取付点152でアンカーブロック150に回動可能に取り付けられている。単一ケーブル220は、主プーリ210の一部の周りに巻き付けられ、任意の反転プーリ178の周りに巻き付けられ、かつ調節可能アンカー172でシャーシ126に取り付けられている。1または複数のバネ180(その数および割合は変えることができる)は、フレーム182により反転プーリ178に取り付けられ、後部フレーム186によりピボット184でシャーシ126に取り付けられている。
【0025】
図4Bは、カセット200がほぼ円弧A7に沿って、(例えば、ユーザが腰の高さ付近で作業するために腕を降ろしたのに対応する)水平より約70度(70°)下がった、図4Aの腕支持システム10のケーブルカセット200の側面図である。カセット200が下がるときに、それに応じて単一ケーブル220は伸長する必要がある。伸長不能であるため、ケーブル220は、反転プーリ178に張力を付与し、それによってバネ180を引き伸ばし、ケーブル220の張力を増加させる。ケーブル220の張力が増加するに連れて、ユーザに対する壊滅的なケーブルの破損の危険性が増大する。例えば、図4Aに示す位置でカセット200にケーブルの破損が発生すると、ケーブル220の危険な張力により、ケーブル220または他の部品がカセット200から高速で飛び出して、ユーザまたは他の人を危険に曝す可能性がある。
【0026】
このため、可能性のあるケーブルまたは他の機械的破損からユーザおよび他の人を保護するために、腕支持システムのカセット用のカバーシステムが必要とされている。
【0027】
図5Aは、スライド安全カバー310がカセット100に取り付けられた、(図1に示すような)腕支持システム10用の被保護カセット300の例示的な実施形態の側面図である。被保護カセット300は、ユーザが腕を上げて作業しているのに対応する、水平より約50度(50°)上の上昇位置で示されている。スライドカバー310は、カバーピボット315でハブ140に回動可能に取り付けられている。カバー前端部320は、トラック325に捕捉され、このトラックに沿って必要に応じてスライドすることができる。スライドカバー310は、剛性または半剛性であってもよく、あるいは剛性および半剛性の部品で作製されるものであってもよい。
【0028】
図5Bは、カセット300がほぼ円弧A8に沿って、(例えば、ユーザが腰の高さ付近で作業するために腕を降ろしたのに対応する)水平より約70度(70°)下がった、図5Aの被保護カセット300の側面図である。カセット300の動きに応答して、スライドカバー310は、ほぼ円弧A9に沿ってカバーピボット315を中心に回動し、カバー前端部320は、ほぼ経路P6に沿って、トラック325に沿って移動した。
【0029】
図5Cは、スライド動作を明確にするために提供する、図5Aおよび図5Bの被保護カセット300の斜視図である。スライドカバーピボット315は、スライドカバーシャフト334でハブ140に回動可能に取り付けられている。カバー前端部320の内側には、トラックポスト318(1つのみ示す)が設けられ、このトラックポストが、トラック325内に捕捉される(かつトラックに沿って移動する)。スライド動作を容易にするために、任意選択的なポストローラ330を設けるようにしてもよい。
【0030】
図6Aは、伸長可能な安全カバー360がカセット100に設置された、腕支持システム10用の被保護カセット350の別の実施形態の側面図である。被保護カセット350は、ユーザが腕を上げて作業しているのに対応する、水平より約50度(50°)上の上昇位置で示されている。伸長可能な安全カバー360は、任意選択的には、カバーピボット370でハブ140に回動可能に取り付けられている。カバー前端部320は、取付点375でカセット100に固定されるようにしてもよい。このカセット位置では、(上昇した)プリーツ365が、相対的に圧縮されるようにしてもよい。伸長可能なカバー360は、ゴムまたは布などのベローズ製造に使用される材料で作られた可撓性、半剛性であってもよく、適切な形状を維持するのを補助する剛性または半剛性の要素を含むようにしてもよい。
【0031】
図6Bは、カセット100がほぼ円弧A10に沿って、(例えば、ユーザが肩の高さ付近で作業するために腕を降ろしたのに対応する)ほぼ水平に下がった、図6Aの被保護カセット350の側面図である。ハブ140とカセットシャーシ126との間の距離が増加すると、プリーツ365は、長さの変化に対応するように伸びる。
【0032】
図6Cは、カセット100がほぼ円弧A11に沿って、(例えば、ユーザが腰の高さ付近で作業するために腕を降ろしたのに対応する)水平より約70度(70°)下がった、図6Bの被保護カセット350の側面図である。ハブ140とカセットシャーシ126との間の距離がさらに増加すると、プリーツ365は、長さの変化に対応するようにさらに伸びる。
【0033】
図7Aは、カセット100にネストセグメントの安全カバー410-425が取り付けられた、腕支持システム10用の被保護カセット400のさらに別の実施形態の側面図である。被保護カセット400は、ユーザが腕を上げて作業しているのに対応する、水平より約50度(50°)上の上昇位置で示されている。ネストセグメントカバー410-425は、任意選択的には、ピボット110でハブ140に回動可能に固定されるようにしてもよい。ネストセグメント410がハブ140に固定され、ネストセグメント425がシャーシ126に固定されるものであってよい。ネストセグメント410-425は、互いの中に収まるようにサイズ設定されるようにしてもよい。例えば、セグメント415はセグメント410の内側に収まり、セグメント420はセグメント415の内側に収まる。このカセット位置(上昇位置)では、ネストセグメント410,415,420,425が互いに入れ子状になるようにしてもよい。セグメント410-425は、剛性、半剛性であってもよく、あるいは剛性および半剛性の部品で作製されるものであってもよい。
【0034】
図7Bは、カセットがほぼ円弧A13に沿って、(例えば、ユーザが腰の高さ付近で作業するために腕を降ろしたのに対応する)水平より約70度(70°)下がった、図7Aの被保護カセット400の側面図である。ネストセグメント410,415,420,425は、シャーシ126の動きに応答して、ほぼ円弧A14に沿って別々に広がっているように見える。ネストセグメント410-425を所望の関係に保つ機構が考えられる。例えば、スロットおよびポストを追加し、それにより所与のセグメントが隣接するセグメントをそれに沿って引っ張ることを可能にするとともに、セグメントが完全に分離するのを防止しつつ、依然としてそれらが適切に入れ子状になるようにすることができる。例えば、セグメント415のスロット417は、セグメント420のポスト(図示省略)と協働して、セグメント420がセグメント410からセグメント415を引き出すことを可能にする。セグメント420のスロット422は、セグメント425のポスト(図示省略)と協働して、セグメント425がセグメント415からセグメント420を引き出すことを可能にする。セグメント425のスロット427は、セグメント425のポスト(図示省略)と協働して、セグメント425がセグメント415からセグメント420を引き出すことを可能にする。
【0035】
図8Aは、(明確にするために半透明で示す)可撓性保護カバー510を有する腕支持システム10のための別の被保護カセット500の側面図である。可撓性カバー510は、ハブ140およびカセットシャーシ126に取り付けられている。被保護カセット500は、ユーザが腕を上げて作業しているのに対応する、水平より約50度(50°)上の上昇位置で示されている。図示のように、可撓性カバーの上面520は、カセット100の動きに適応するように、余分な材料の1または複数のひだ525に圧縮または束ねられるようにしてもよく、一方、可撓性カバーの下面530は相対的にピンと張っていてもよい。可撓性カバー510は、弾性または非弾性の布またはフィルムから作られるものであってもよく、ソリッド、織物またはメッシュであってもよく、さらに、耐久性を増大させ、安全性を高め、形状を制御するために、プレート、ワイヤ、ロッドまたは他の部品を含むようにしてもよい。弾性材料で作られる場合、可撓性カバーの上面は、カセット100の動きに適応するために、余分な材料の1または複数のひだ525に圧縮または束ねる必要はない。
【0036】
図8Bは、カセットがほぼ円弧A16に沿って、(例えば、ユーザが腰の高さ付近で作業するために腕を降ろしたのに対応する)水平より約70度(70°)下がった、図8Aの被保護カセット500の側面図である。このとき、可撓性カバーの上面520は、図示のように、相対的にピンと張っていてもよく、一方、可撓性カバーの下面530は、シャーシ126の動きに応答して、1または複数のひだ535に圧縮または束ねられるようにしてもよい。弾性材料で作られる場合、可撓性カバーの上面530は、カセットの動きに適応するために、余分な材料の1または複数のひだ535に圧縮または束ねる必要はない。
【0037】
他の安全デバイスまたはカバーも考えられる。例えば、カセットの動きに応じて、巻くことができ、伸ばすことができる比較的平坦なストリップ材料(図示省略)のコイルの形態のカバーを使用して、カセットの内部の機構を覆うことができる。コイルは、ハブ140と、(窓用のローラシェードのように)バネ付勢されたドラムに取り付けられ、ストリップの他端がカセットに取り付けられるものであってもよい。カセットの動きに応答して、コイルは、ストリップがコイルから引き離されるときに回転することができ、このため、ストリップは引き出されて、カセットの機構にわたって伸ばされる。ドラムのバネは、必要に応じてストリップをドラムに引き戻すように作用する。別の例は、1または複数のワイヤまたはコードのループをカセット上に設けることであり、それは、ケーブルが破損した場合にケーブルを途中で捕らえるのに役立つことがある。
【0038】
図9Aは、カセット100をアクティブおよび非アクティブにするために使用されるカセット100の機構を示すために提供される、図2Dの詳細な側面図である。いくつかの場合には、カセット100をハーネスに取り付けたままの状態で、カセット100のリフト機能を非アクティブにすることが望ましい。例としては、ユーザが相殺引き上げ力を望まない又は必要としないとき、または不使用時にユーザがデバイスを保管しているときが挙げられる。ロックピン194には、バネによって第1の位置に維持されたカセット解放ボタン190が接続されている。使用時には、ロックピン194は、図3A図3Cに示すように、アンカーブロック150をハブ140に対して定位置に保持する。
【0039】
図9Bは、図9Aのカセット100の詳細図であり、カセットが非アクティブ状態にあることを示している。カセット100を非アクティブにするためには、ユーザは、ほぼ経路P10に沿って、カセット解放ボタン190を押し込む。この動作により、ロックピン194が押し下げられ、アンカーブロック150のフック部156との係合から外れ、それによりハブ140からアンカーブロック150が解放される。一旦解放されると、アンカーブロック150は、カセットシャーシ126およびそれに取り付けられたすべてのコンポーネントとともに、上述した相殺力無しで、(例えば、円弧A18に沿って)自由に移動することができる。ユーザがカセット100を再びアクティブにしたいときは、カセット100を持ち上げて、ロックピン194をアンカーブロック150のフック部156に戻して嵌め込むことができる。
【0040】
上述したカセット-ハーネス分離、安全カバーおよびカセット非アクティブ化機構は、ケーブル、バネおよびプーリに基づく腕支持デバイスの文脈で記載しているが、それらはすべて、ケーブルまたはバネに基づかないシステムにも適用可能である。また、それらは、動力付き腕支持デバイスにも使用可能であり、妥当な場合には、脚など、身体の他の部分を支持するように設計されたシステムにも使用可能である。
【0041】
なお、本明細書の任意の実施形態とともに示される要素または構成要素は特定の実施形態の例示であり、本明細書に開示のその他の実施形態において、またはその他の実施形態と組み合わせて使用されるものであってもよい。
【0042】
本発明は、様々な変形および代替的な形式を受け入れる余地があるが、それらの特定の例が、図面に示されており、本明細書中に詳細に記載されている。しかしながら、本発明は、開示された特定の形態または方法に限定されるものではなく、反対に、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれるすべての変形、均等物および代替物を包含するものであることを理解されたい。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B