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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】頭絡
(51)【国際特許分類】
   A01K 25/00 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
A01K25/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021115614
(22)【出願日】2021-07-13
【審査請求日】2021-10-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】393003642
【氏名又は名称】中西工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】相澤 和薫
(72)【発明者】
【氏名】中西 栄介
(72)【発明者】
【氏名】和佐田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 友梨
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特許第6579476(JP,B1)
【文献】特開2004-141006(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105028228(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0148207(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 25/00
A01K 15/00
A01K 29/00
B68B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛の頭部に装着する頭絡において、
前記牛の口周りに装着される第一装着部と、
前記第一装着部に連結され、前記牛の後頭部周りに装着される第二装着部と、
前記第一装着部にスライド可能に設けられた挿通リングを備え
前記第一装着部は挿通リングがスライド可能なスライド領域を備え、スライド領域は第一装着部が牛の口周りに装着されたときに牛側になる下部材と下部材の上側になる上部材を備えた二重構造であり、挿通リングが下部材と上部材との間にスライド可能に設けられた、
ことを特徴とする頭絡。
【請求項2】
請求項1記載の頭絡において、
第二装着部は第一装着部の二点に連結され、
前記第一装着部のうち、前記第二装着部が連結された二点間に挿通リングがスライド可能なスライド領域が設けられた、
ことを特徴とする頭絡。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の頭絡において、
スライド領域の上部材は上ベルトであり、下部材は下ベルトであり、挿通リングが上ベルトと下ベルトとの間にスライド可能に設けられた、
ことを特徴とする頭絡。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の頭絡において、
第二装着部は二本の帯状部材を備え、
前記二本の帯状部材は、その一端側が第一装着部に連結され、他端側に着脱具が設けられ、
前記第二装着部は、前記二本の帯状部材の着脱具をつけることで、牛の後頭部周りに装着される、
ことを特徴とする頭絡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛の頭部に取り付けて使用する頭絡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畜産用の牛の鼻に付けられる鼻環が知られている(特許文献1)。鼻環は、牛の移動や方向転換などをスムーズにする目的で使用される。鼻環には牛の角に巻かれたロープの端部側が結ばれ、管理者はこのロープを持って牛を移動させたり方向転換させたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-327371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、欧州諸国では、アニマルウェルフェア(動物福祉)の観点から、鼻環をして育てられた肉牛から得られた牛肉の輸入が禁止されている。このような状況下、我が国においても、鼻環を使わない肉牛の飼育方法の提案が求められている。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、鼻環を使用しない肉牛の飼育方法の実現に資する頭絡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の頭絡は、牛の頭部に装着して使用するものであって、牛の口周りに装着される第一装着部と、第一装着部に連結され、牛の後頭部周りに装着される第二装着部と、第一装着部にスライド可能に設けられた挿通リングを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の頭絡は、従来の鼻環に代わる挿通リングを備えているため、鼻環を使用することなく、牛を飼育することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の頭絡の使用状態の一例を示す図。
図2】(a)は図1に示す頭絡の斜視図、(b)は(a)の詳細説明図。
図3】(a)は挿通リングをスライド領域の中心に配置した状態の説明図、(b)は挿通リングをスライド領域の右端に移動させた状態の説明図、(c)は挿通リングをスライド領域の左端に移動させた状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
本発明の頭絡10の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。図1に示すように、本発明の頭絡10は、牛の頭部に装着して使用するものである。図1及び図2(a)(b)に示すように、この実施形態の頭絡10は、牛の口周りに装着される第一装着部11と、牛の後頭部周りに装着される第二装着部12と、牛の角に装着されたロープRを通す挿通リング13を備えている。
【0010】
この実施形態の第一装着部11は、牛の口周り(下顎の下側と上顎の上側を通る部分)に環状に巻かれるベルト部11aと、ベルト部11aを締結してベルト部11aの環状部分の径を調節するラダーロック(径調節具)11bを備えている。ラダーロック11bには第一装着部11の自由端側が締結され、その自由端側の締め付け量を調整することで、環状部分の径を調整できるようにしてある。
【0011】
第一装着部11のうち、牛の上顎側に宛がわれる部分は上ベルト(上部材)11cと下ベルト(下部材)11dを備えた二重構造としてある。上ベルト11cと下ベルト11dの間には、牛の角に装着されたロープRを通すための挿通リング13が設けられている。挿通リング13は二重構造の領域(以下「スライド領域」という)でスライドさせられるようにしてある。挿通リング13には金属製のものや樹脂製のものなどを用いることができる。
【0012】
スライド領域を二重構造とし、上ベルト11cが挿通リング13を挿通するように挿通リング13を設けた場合、挿通リング13が牛に直接接触しにくくなり、挿通リング13のスライド時に牛が怪我したり傷ついたりするのを防止することができる。
【0013】
この実施形態の第二装着部12は、牛の後頭部周り(牛の頭部の両角や両耳よりも後側と牛の左右の頬あたりを通る部分)に装着される二本の帯状部材12a、12bを備えている。各帯状部材12a、12bの長手方向一端側には筒状部12c、12dが設けられ、両筒状部12c、12dに挿通された第一装着部11の一部が各筒状部12c、12dに固定されることによって、第一装着部11と第二装着部12とが連結されている。
【0014】
第二装着部12の各筒状部12c、12dには、スライドさせた挿通リング13をそのスライド位置で固定するための固定具としてカラビナ14(説明の便宜上、以下では、牛の右角及び右目側のカラビナを「右カラビナ14a」と、牛の左角及び左目側のカラビナを「左カラビナ14b」という)が設けられている。
【0015】
両カラビナ14は、その一部が帯状部材12a、12bの筒状部12c、12d内に係止され、牛に直接触れにくいようにしてある。カラビナ14を牛に触れにくい位置に設けることで、カラビナ14との接触による牛の怪我や傷つきを防止することができる。なお、固定具にはカラビナ14以外のものを用いることもできる。
【0016】
この実施形態では、カラビナ14がスライド領域の長手方向両端部に設けられている。カラビナ14を設ける位置、換言すれば、挿通リング13の固定位置は、右側であれば牛の右角及び右目の延長線上の位置、左側であれば牛の左角及び左目の延長線上の位置が好ましい。
【0017】
牛には目線を変えないと方向転換しないという特性があるが、両カラビナ14をこのような位置に設けて挿通リング13を固定できるようにすることで、牛の目線を左右に動かしやすくなり、牛を所望方向に方向転換させやすくなる。
【0018】
両帯状部材12a、12bの他端側には、着脱具として面状ファスナ12e、12fが設けられている。両帯状部材12a、12bの面状ファスナ12e、12fを貼り合わせることで、二本の帯状部材12a、12bを連結することができる。このとき、面状ファスナ12e、12fの貼り合せる位置を調整することで、第二装着部12の全長(円周)を調整することができる。着脱具には面状ファスナ12e、12f以外のものを用いることもできる。
【0019】
(その他の実施形態)
前記実施形態では説明を省略しているが、スライド領域の中央部にも、挿通リング13をスライド領域の中央位置で固定するための固定具を設けることができる。この場合、固定具にはカラビナ14やその他のものを用いることができる。
【0020】
前記実施形態の構成は一例であり、本発明の頭絡10は前記実施形態の構成に限定されるものではない。本発明の頭絡10は、所期の目的を達成できる範囲で、構成の入れ替え、省略、追加等の変更を加えることができる。
【0021】
(使用例)
次に、本発明の頭絡10の使用例を、前記実施形態の頭絡10を一例として説明する。以下では、図3(a)を参照して頭絡10の装着手順を、図3(b)を参照して牛を右側に方向転換させる場合の手順を、図3(c)を参照して牛を左側に方向転換させる場合の手順を説明する。
【0022】
[頭絡の装着手順]
(1)牛の口周りに第一装着部11を掛けまわし、第一装着部11の自由端側をラダーロック11bに締結する。
(2)第二装着部12の両帯状部材12a、12bを牛の首回りに掛けまわし、両帯状部材12a、12bの面状ファスナ12e、12fを貼り合わせる。
(3)牛の両角にロープRを巻き付けたのち、当該ロープRの端部側を第一装着部11に取り付けられた挿通リング13に通す。
【0023】
[牛を右側に方向転換させる場合の手順]
(1)第一装着部11に取り付けられた挿通リング13をスライド領域の右端まで移動し、右カラビナ14aに固定する。
(2)牛の両角にロープRを巻き付けたのち、当該ロープRの端部側を右カラビナ14aに固定した挿通リング13に通す。
(3)ロープRの挿通リング13を通過した部分を手で持ち、そのロープRを牛の進行方向右側に引くことで、牛を右側に方向転換させることができる。
【0024】
[牛を左側に方向転換させる場合の手順]
(1)第一装着部11に取り付けられた挿通リング13をスライド領域の左端まで移動し、左カラビナ14bに固定する。
(2)牛の両角にロープRを巻き付けたのち、当該ロープRの端部側を左カラビナ14bに固定した挿通リング13に通す。
(3)ロープRの挿通リング13を通過した部分を手で持ち、そのロープRを牛の進行方向左側に引くことで、牛を左側に方向転換させることができる。
【0025】
ここで説明した各手順は一例であり、本発明の頭絡10は、所期の目的を達成できる限り、他の手順で使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の頭絡10は、肉牛の頭部に装着して使用するものであり、畜産の分野で好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 頭絡
11 第一装着部
11a ベルト部
11b ラダーロック
11c 上ベルト
11d 下ベルト
12 第二装着部
12a 帯状部材
12b 帯状部材
12c 筒状部
12d 筒状部
12e 面状ファスナ
12f 面状ファスナ
13 挿通リング
14 カラビナ
14a 右カラビナ
14b 左カラビナ
R ロープ
【要約】
【課題】 鼻環を使用しない肉牛の飼育方法の実現に資する頭絡を提供する。
【解決手段】 本発明の頭絡10は、牛の口周りに装着される第一装着部11と、第一装着部11に連結され、牛の後頭部周りに装着される第二装着部12と、第一装着部11にスライド可能に設けられた挿通リング13を備えたものである。第一装着部11又は第二装着部12には、挿通リング13を固定する固定具を設けることができる。第一装着部11のうち、第二装着部12が連結された二点間に挿通リング13がスライド可能なスライド領域を設けることができる。この場合、スライド領域を上ベルト11cと下ベルト11dを備えた二重構造とし、挿通リング13を上ベルト11cが挿通リング13を挿通するように設けることができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3