(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】無人飛行体の線状体繰出装置
(51)【国際特許分類】
B64F 3/00 20060101AFI20220328BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220328BHJP
B65H 59/38 20060101ALI20220328BHJP
B65H 75/38 20060101ALI20220328BHJP
B65H 75/48 20060101ALI20220328BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
B64F3/00
B64C39/02
B65H59/38 A
B65H75/38 W
B65H75/48 C
H02G1/02
(21)【出願番号】P 2021167970
(22)【出願日】2021-10-13
【審査請求日】2021-10-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515246269
【氏名又は名称】株式会社空撮技研
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】特許業務法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】合田 豊
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/121008(WO,A1)
【文献】特開2017-169395(JP,A)
【文献】特開2017-226248(JP,A)
【文献】特開2017-217942(JP,A)
【文献】特開2016-199144(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0002101(US,A1)
【文献】国際公開第2014/203593(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/052178(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/02
B64F 3/00- 3/02
B65H 59/38
B65H 75/38
B65H 75/48
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人飛行体に連結される線状体を巻き取るリールと、
前記リールを前記線状体の巻取り方向に駆動してなるモーターと、
前記リールに巻かれた前記線状体の繰り出し長さを検出する検出器と、
前記モーターの回転トルクを制御する制御回路とを備え、
前記制御回路が、
前記検出器からの信号で、前記線状体の前記リールからの繰り出し長さを検出し、
前記線状体の先端部に非巻取長さを残す位置で、前記モーターのリール巻取り方向の回転を停止する無人飛行体の線状体繰出装置
であって、
前記制御回路が、前記線状体の巻き取り方向の速度を検出して、前記線状体の巻き取り速度が設定値よりも速い状態で、前記線状体の先端部に非巻取長さを残す位置で、前記モーターのリール巻取り方向の回転を停止する無人飛行体の線状体繰出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無人飛行体の線状体繰出装置であって、
前記検出器がエンコーダーで、前記制御回路が、前記エンコーダーからの信号で前記線状体の巻き取り速度を検出する無人飛行体の線状体繰出装置。
【請求項3】
請求項1ないし2のいずれか一項に記載の無人飛行体の線状体繰出装置であって、
前記検出器がエンコーダーで、前記制御回路が、前記エンコーダーからの信号で前記線状体の繰り出し長さを検出する無人飛行体の線状体繰出装置。
【請求項4】
無人飛行体に連結される線状体を巻き取るリールと、
前記リールを前記線状体の巻取り方向に駆動してなるモーターと、
前記リールに巻かれた前記線状体の繰り出し長さを検出する検出器と、
前記モーターの回転トルクを制御する制御回路とを備え、
前記制御回路が、
前記検出器からの信号で、前記線状体の前記リールからの繰り出し長さを検出し、
前記線状体の先端部に非巻取長さを残す位置で、前記モーターのリール巻取り方向の回転を停止する無人飛行体の線状体繰出装置であって、
前記制御回路がスタートスイッチを備え、
前記スタートスイッチからのスタート信号を検出するタイミングで、前記リールから繰り出されている前記線状体の長さを非巻取長さとする無人飛行体の線状体繰出装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の無人飛行体の線状体繰出装置であって、さらに、
前記リールから繰り出される前記線状体を挿通するガイドリングを先端に有するガイドアームを備え、
前記ガイドアームが弾性変形できるアームである無人飛行体の線状体繰出装置。
【請求項6】
無人飛行体に連結される線状体を巻き取るリールと、
前記リールを前記線状体の巻取り方向に駆動してなるモーターと、
前記リールに巻かれた前記線状体の繰り出し長さを検出する検出器と、
前記モーターの回転トルクを制御する制御回路とを備え、
前記制御回路が、
前記検出器からの信号で、前記線状体の前記リールからの繰り出し長さを検出し、
前記線状体の先端部に非巻取長さを残す位置で、前記モーターのリール巻取り方向の回転を停止する無人飛行体の線状体繰出装置であって、
前記モーターと前記制御回路を内蔵するケースを備え、
前記ケースが、互いに交差する面内に位置する第1の底面と第2の底面を有し、
前記第1の底面又は前記第2の底面を水平面に配置して、前記線状体の引き出し方向を変更できる無人飛行体の線状体繰出装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の無人飛行体の線状体繰出装置であって、さらに、
前記モーターを駆動する二次電池のバッテリーを備え、
前記モーターが前記リールで強制的に逆転されて発電する逆転発電モーターで、
前記制御回路が、前記逆転発電モーターの発電電力で前記バッテリーを充電する無人飛行体の線状体繰出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人飛行体に線状体を連結して飛行させる線状体繰出装置に関し、とくに、ヘリコプターやドローンなどの無人飛行体を特定の飛行領域として安全に飛行させる線状体繰出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線操縦されるヘリコプターやドローンなどの無人飛行体は、妨害電波や電波の伝搬環境の乱れが原因で、正常にコントロールできない状態、すなわちノーコン状態となることがある。ノーコン状態となる確率は、無人飛行体がコントロール用の送信器から遠方に飛行するにしたがって高くなり、また飛行する地形や建物が電波を反射し、あるいは遮蔽する状態でも高くなる。無人飛行体の受信器が受信する電波の強度は送信器からの距離の二乗に比例して弱くなり、また、無人飛行体の受信器から送信器までの間にある電波の伝搬を阻害する建物等の障害物が多くなるからである。ノーコン状態は無人飛行体を正常にコントロールできなくなって安全性が低下するので、本発明者は無人飛行体に線状体を連結し、この線状体の繰り出し張力をコントロールして安全性を確保する装置を開発した。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が先に開発した無人飛行体の線状体繰出装置は、線状体を巻き取るリールと、リールを回転するモーターと、モーターの駆動を制御する制御手段とを備え、無人飛行体に連結している線状体の張力を、リールから繰り出される線状体の繰り出し長さが長くなるに従って増加させることで、無人飛行体が遠方に飛行するのを制限する。この線状体繰出装置は、無人飛行体に連結している線状体の張力を線状体の繰り出し長さに対応して次第に強くして、無人飛行体が遠方に飛行する状態で線状体が自重で垂れ下がるのを防止できる。
【0005】
以上の装置は、無人飛行体に連結している線状体の張力を線状体の繰り出し長さに対応して次第に強くして線状体が自重で垂れ下がるのを防止している。この装置は、無人飛行体が接近すると線状体の張力を弱くするが、線状体の張力は、自重で常に垂れ下がることがないように、所定の張力とする必要がある。したがって、線状体が無人飛行体から外れると、線状体が高速でリールに巻き取られて、線状体の先端に設けているフックなどが勢いよく装置に衝突して損傷する欠点がある。この弊害は、無人飛行体が接近するに従って張力を小さく制御して解消できるが、張力が小さすぎる線状体は、常に垂れ下がらない状態では無人飛行体に連結できず、高速回転しているロータなどに巻き付く等、種々の弊害の原因となる。
【0006】
本発明は、さらに以上の欠点を解消することを目的として開発されたもので、本発明の目的は、簡単な構造として、極めて高い安全性を確保しながら、無人飛行体から外れた線状体を確実に安定してリールに巻き取りできる無人飛行体の線状体繰出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明のある態様にかかる無人飛行体の線状体繰出装置は、無人飛行体に連結される線状体を巻き取るリールと、リールを線状体の巻取り方向に駆動しているモーターと、リールに巻かれた線状体の繰り出し長さを検出する検出器と、モーターの回転トルクを制御する制御回路とを備えている。制御回路は、検出器からの信号で、線状体のリールからの繰り出し長さを検出し、線状体の先端部に非巻取長さを残す位置で、モーターのリール巻取り方向の回転を停止する。また制御回路が、線状体の巻き取り方向の速度を検出して、線状体の巻き取り速度が設定値よりも速い状態で、線状体の先端部に非巻取長さを残す位置で、モーターのリール巻取り方向の回転を停止する。
【0008】
以上の無人飛行体の線状体繰出装置は、常に理想的な張力に制御する線状体を無人飛行体に連結して、自由に、しかも安全に飛行させながら、無人飛行体から外れた線状体を、正転するモーターで高速でリールに速やかに巻き取りしながら、完全に巻き取ることなく、非巻取長さを残してリールの回転を停止して安全に停止できる特長がある。それは、以上の装置が、飛行する無人飛行体に連結している線状体を所定の張力に制御して垂れ下がりを防止しながら、線状体が無人飛行体から外れると、先端部に非巻取長さを残す位置までリールで巻き取ってモーターの回転を停止して、線状体の先端が激しく衝突する弊害を防止できるからである。
【0009】
【0010】
以上の無人飛行体の線状体繰出装置は、制御回路で検出する線状体の巻き取り速度が設定値よりも速い状態で、線状体が先端部に非巻取長さを残す位置まで巻き取られるとモーターの回転を停止するので、線状体を設定値よりも遅い速度で巻き取る状態では、線状体を最後までリールに巻き取ることができる。
【0011】
本発明の他の態様にかかる無人飛行体の線状体繰出装置は、検出器をエンコーダーとして、制御回路がエンコーダーからの信号で線状体の巻き取り速度を検出することができる。以上の無人飛行体の線状体繰出装置は、検出器をエンコーダーとすることで、このエンコーダーからの信号で、簡単かつ正確に線状体の巻き取り速度を検出しながらモーターの回転を停止することができる。
【0012】
本発明の他の態様にかかる無人飛行体の線状体繰出装置は、検出器をエンコーダーとして、制御回路がエンコーダーからの信号で線状体の繰り出し長さを検出することができる。以上の無人飛行体の線状体繰出装置は、検出器をエンコーダーとすることで、このエンコーダーからの信号で、簡単かつ正確に線状体の繰り出し長さを検出できる。
【0013】
本発明の他の態様にかかる無人飛行体の線状体繰出装置は、無人飛行体に連結される線状体を巻き取るリールと、リールを線状体の巻取り方向に駆動しているモーターと、リールに巻かれた線状体の繰り出し長さを検出する検出器と、モーターの回転トルクを制御する制御回路とを備え、制御回路にスタートスイッチを設け、このスタートスイッチからのスタート信号を検出するタイミングで、リールから繰り出されている線状体の長さを非巻取長さとすることができる。
【0014】
以上の無人飛行体の線状体繰出装置は、線状体の先端部を、好ましい長さでリールに巻き取ることなく残して、この長さを非巻取長さとするので、簡単かつ容易に、非巻取長さを理想的な長さに調整できる。
【0015】
本発明の他の態様にかかる無人飛行体の線状体繰出装置は、さらに、リールから繰り出される線状体を挿通するガイドリングを先端に有するガイドアームを備えており、ガイドアームを弾性変形できるアームとすることができる。
【0016】
以上の無人飛行体の線状体繰出装置は、リールから繰り出される線状体をガイドリングに挿通してガイドアームで理想的な方向としながら、線状体に作用する衝撃やガイドアームに作用する衝撃を、ガイドアームの弾性変形で吸収できる特長がある。
【0017】
本発明の他の態様にかかる無人飛行体の線状体繰出装置は、無人飛行体に連結される線状体を巻き取るリールと、リールを線状体の巻取り方向に駆動しているモーターと、リールに巻かれた線状体の繰り出し長さを検出する検出器と、モーターの回転トルクを制御する制御回路とを備え、さらに、モーターと制御回路を内蔵するケースを備えており、このケースが、互いに交差する面内に位置する第1の底面と第2の底面を有し、第1の底面又は第2の底面を水平面に配置して、線状体の引き出し方向を変更する構造とすることができる。
【0018】
以上の無人飛行体の線状体繰出装置は、ケースの姿勢を変更して、線状体の引き出し方向を理想的な方向に調整できる特長がある。たとえば、無人飛行体が水平方向に近い方向に飛行する状態と、垂直方向に近い方向に飛行する状態とで、ケースの第1の底面又は第2の底面を水平面に配置する状態で使用して、線状体を好ましい方向に引き出しできる。
【0019】
本発明の他の態様にかかる無人飛行体の線状体繰出装置は、さらに、モーターを駆動する二次電池のバッテリーを備え、モーターをリールで強制的に逆転されて発電する逆転発電モーターとして、逆転発電モーターの発電電力でバッテリーを充電することができる。
【0020】
以上の無人飛行体の線状体繰出装置は、モーターが正転方向に作用する回転トルクでリールを巻取り方向に駆動して、線状体を所定の張力に保持するが、無人飛行体が装置から離れる方向に飛行して、線状体がリールが繰り出されると、リールでモーターが逆転される。逆転して発電する逆転発電モーターは、線状体が繰り出される状態で発電する。この発電電力で、バッテリーを充電することで、バッテリーの使用時間を長くできる。さらに、この逆転発電モーターはバッテリーの充電電流を制御してモーターの回転トルクを制御できる。したがって、逆転されるモーターの回転トルクも制御して、繰り出される線状体の張力を設定値にコントロールできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る無人飛行体の線状体繰出装置の概略ブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る無人飛行体の線状体繰出装置の概略斜視図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る無人飛行体の線状体繰出装置の概略構成図である。
【
図4】
図2に示す無人飛行体の線状体繰出装置の一使用例を示す側面図である。
【
図5】
図2に示す無人飛行体の線状体繰出装置の他の使用例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための無人飛行体の線状体繰出装置を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0023】
ヘリコプターやドローンなどの無人飛行体は、制御用の送信器から送信する電波を介して、飛行する速度や方向をコントロールしている。電波を介して飛行状態をコントロールしている無人飛行体は、妨害電波や外部ノイズが原因で、あるいは電波の伝搬状態の悪影響などが原因で、送信器で正常にコントロールできない状態、通称「ノーコン」となることがある。ノーコン状態になると、送信器で無人飛行体の飛行をコントロールできなくなって、安全な飛行ができなくなる。この弊害を防止するために、ノーコン状態においては特定の飛行をするように、あるいはノーコンを少なくする伝送方式などが開発されているが、電波を使用するかぎり、ノーコンを完全に阻止することはできない。
【0024】
図1の概略ブロック図と
図2の概略斜視図に示す線状体繰出装置10は、ヘリコプターやドローンなどの無線操縦される無人飛行体1とベース基地2とを、所定の長さ(例えば30m)の線状体3で連結して、無人飛行体1の飛行範囲を特定の範囲に制限して安全性を確保する。ベース基地2に線状体繰出装置10を設置し、線状体3の先端を無人飛行体1に連結し、線状体3を弛まないように繰り出して、無人飛行体1の飛行範囲をベース基地2の特定範囲に制限して安全性を確保する。
【0025】
図1と
図2に示す実施形態の線状体繰出装置10は、無人飛行体1に先端を連結している線状体3と、線状体3を巻き取るリール4と、リール4を所定の回転トルクで巻取り方向に駆動して、線状体3を所定の張力に保持して弛みを防止するモーター5と、リール4に巻かれた線状体3の繰り出し長さを検出する検出器8と、モーター5の回転を制御して、線状体3の張力を設定値にコントロールする制御回路6と、モーター5と制御回路6を内蔵するケース7と、モーター5と制御回路6に電力を供給するバッテリー9とを備える。
【0026】
図1と
図2の線状体繰出装置10は、ケース7にバッテリー9を脱着自在に連結して、ケース7から外してバッテリー9を充電できる構造としているが、バッテリー9をケース7に内蔵して、外部の充電器(図示せず)を接続して充電することもできる。バッテリー9は、リチウムイオン二次電池などの二次電池が適している。それは、二次電池は、モーター5の発電電力で充電してバッテリー9の使用時間を延長できるからである。
【0027】
バッテリー9を装備する線状体繰出装置10は、商用電源に接続することなく独立して使用できるので、商用電源のない屋外で便利に使用できる。ただし、バッテリー9に代わって、商用電源をモーターや制御回路の最適電圧に変換する電源回路(図示せず)を内蔵することもできる。商用電源を使用する電源は、長時間連続して線状体繰出装置10を使用するのに適している。また、発電機を電源として使用することもできる。
【0028】
線状体3は、無人飛行体1に連結されて、飛行する無人飛行体1の飛行をコントロールできる張力で切れない全ての線材を使用できるが、無人飛行体1に引き上げられるので、無人飛行体1のペイロードを軽くするために、テグスや細いワイヤなどの軽い線材が適している。ただ、線状体3には、これ等の線材のみでなく、ケーブル、ロープ、テープ等も使用できる。
【0029】
リール4は、所定の長さの線状体3、たとえば30mの線状体3を巻き取りできる円筒状の巻き取り軸4Aの両端に鍔4Bを設けている。リール4は、鍔4Bの間で巻き取り軸4Aに線状体3を巻回する。リール4は、モーター5で巻取り方向に駆動されて、線状体3をあらかじめ設定している張力で巻取り方向に引っ張っている。線状体3は、巻取り方向に駆動しているリール4で、常に所定の張力で引っ張られている。リール4が線状体3を巻取り方向に引っ張る張力は、無人飛行体1の飛行を制限することなく、弛みが発生しない引張り力に設定される。線状体3は、無人飛行体1が線状体繰出装置10から離れる方向に飛行するときには、線状体3がリール4が繰り出され、無人飛行体1が線状体繰出装置10に接近する時には、リール4に巻き取られる。線状体3が繰り出され、あるいは線状体3を巻き取るいずれの状態においても、線状体3の張力は設定された張力にコントロールされる。
【0030】
リール4は、線状体3の長さを考慮して巻き取り軸4Aを最適な外径とする。例えば、30mの釣り糸の線状体3を巻き取るリール4は、巻き取り軸4Aの外径を、たとえば2~10cmφとする。巻き取り軸4Aの外径が、全ての線状体3を巻き取った状態と、全ての線状体3を繰り出した状態での巻き径の変化が少ない太いリール4は、モーター5の回転トルクに対する巻回する線状体3の張力の変動を少なくできるので、モーター5の制御を簡単にできる特徴がある。リール4を回転するモーター5は、線状体3の巻取り方向に駆動する回転トルクで、線状体3の張力を調整する。線状体3は、常に弛まない張力に保持される。線状体3は、リール4からの繰り出し量が長くなると弛みが大きくなる。線状体3の繰り出し量が多くなって線状体3の弛みが大きくなる弊害は、繰り出し量でリール4の回転トルクを調整して解消できる。リール4は、線状体3の繰り出し量が長くなると巻き径が細くなるので、モーター5を回転トルクを一定に保持して、線状体3の張力を繰り出し量が長くなると強くすることもできる。さらに、軽くて短い線状体3は、垂れ下がりも少ないので、線状体3の張力を一定に保持してリール4に巻き取ることもできる。
【0031】
モーター5は回転軸5aをリール4の回転軸4aに連結して、リール4を回転する。好ましくは、
図1に示すように、モーター5の回転軸5aをリール4の回転軸4aに直接に連結する。モーター5がリール4を駆動する回転トルクは、リール4で巻回される線状体3の張力を特定する。正確には、リール4に巻回される線状体3の張力は、モーター5の回転トルクに比例して、リール4の巻き径に反比例する。リール4の巻き取り軸を太くして、線状体3の巻回量で巻き径がほとんど変化しないリール4は、巻回量を考慮することなく、回転トルクのみで線状体3の張力を設定値にできる。巻回量で巻き径が変化するリール4は、リール4の巻き径で回転トルクを調整して線状体3の張力を設定値に保持する。
【0032】
モーター5は、制御回路6に制御されて、リール4に巻回される線状体3の張力を設定値に保持する。モーター5は、無人飛行体1が線状体繰出装置10に接近する方向に飛行して、線状体3を巻き取る方向にリール4を回転し、あるいは無人飛行体1が線状体繰出装置10から遠ざかる方向に飛行して、線状体3を繰り出す方向にリール4を回転し、さらに無人飛行体1が所定の位置にホバリングして停止する状態でリール4が回転しない全ての飛行状態において、リール4を回転するトルクを制御して線状体3の張力を設定値に制御する。
【0033】
モーター5の回転トルクは、制御回路6でコントロールされる。制御回路6は、モーター5の型式に最適な方法で回転トルクを制御する。モーター5には、三相交流モーター、直流モーター等が使用できるが、三相交流モーターは供給電圧と周波数で回転トルクを制御できる。直流モーターは供給電圧で回転トルクをコントロールできる。さらに、モーター5には、逆転時に発電する逆転発電モーターも使用できる。逆転発電モーターは、無人飛行体1が線状体繰出装置10から離れる方向に飛行して、線状体3がリール4から繰り出されて回転するリール4で逆転されて発電する。この逆転発電モーターは、線状体3がリール4から繰り出されて、モーター5が逆転して発電する電力でバッテリー9を充電できる。逆転発電モーターは、バッテリー9の充電電流をコントロールして回転トルクを制御できるので、制御回路6は充電電流を制御して回転トルクを制御する。逆転発電モーターは、制御回路6でバッテリー9の充電電流を大きくして、巻取り方向の回転トルクを強くして線状体3の張力を強くでき、また充電電流を小さくして巻取り方向の回転トルクを小さくして、線状体3の張力を弱くできる。
【0034】
制御回路6は、モーター5の回転トルクを設定値に制御して、リール4が巻回する線状体3の張力を設定値にコントロールする。制御回路6は、線状体3の繰り出し長さに関係なく、線状体3の張力を設定値とし、あるいは線状体3の繰り出し長さが長くなると設定値を強くすることもできる。短い線状体3は、常に一定の張力として線状体3の弛みを防止できる。長い線状体3は、繰り出し長さが長くなると張力を強くして弛みを防止できる。線状体3の繰り出し長さで張力を変更する制御回路6は、線状体3がリール4から繰り出される長さを検出して、張力の設定値を変更する。制御回路6は、無人飛行体1が自由に飛行でき、かつ飛行する無人飛行体1に連結している線状体3が弛まないように、線状体3の張力を記憶部15に記憶する。制御回路6が記憶する設定値は、無人飛行体1の重量や速度などを考慮して変更することもできる。張力の設定値が変更できる制御回路6は、張力を設定するキーボード、ダイヤル、ボタンスイッチなどの入力手段(図示せず)を有し、入力手段から入力される張力となるように、モーター5の回転トルクを制御する。
【0035】
制御回路6は、電圧と周波数とで三相交流モーターの回転トルクを制御し、あるいは電圧を制御して直流モーターの回転トルクを制御して、線状体3の張力を設定値にコントロールする。三相交流モーターの制御回路6は、回転トルクを制御して線状体3の張力を設定値とする電圧や周波数を回転数の関数として記憶し、あるいはルックアップテーブルとして記憶部15に記憶している。直流モーターの制御回路6は、回転トルクを設定値とする電圧を回転数の関数として、あるいはルックアップテーブルとして記憶部15に記憶している。逆転発電モーターの制御回路6は、充電電流を回転数の関数として記憶し、あるいはルックアップテーブルとして記憶している。制御回路6は、モーター5の回転数を検出し、検出する回転数から回転トルクを設定値とする電圧、周波数、充電電流等を演算して、モーター5の回転トルクを設定値に制御する。制御回路6は、一定の周期でパルス電圧を供給する電源を使用し、この電源でパルス幅を調整して、すなわちパルスのデューティーを調整して実質的な電圧を調整して回転トルクを制御できる。
【0036】
制御回路6は、線状体3の張力を検出し、検出する張力が設定値となるようにモーター5の電流、あるいは電流と周波数を調整して回転トルクを制御することもできる。この制御回路6は、たとえば、
図3に示すように、線状体3の張力を検出する張力検出部31を備えて、この張力検出部31で検出される線状体3の張力に基づいてモーター5の回転トルクを制御することができる。
図3の一部拡大図に示す張力検出部31は、リール4から繰り出される線状体3が掛けられた3個のプーリ32を備えており、前後のプーリ32は固定プーリ32Aとして回転軸の位置を固定すると共に、中間のプーリ32は可動プーリ32Bとして回転軸の位置を線状体3の張力に応じて移動できるようにしている。さらに、張力検出部31は、可動プーリ32Bの回転軸の変位を検出するための張力アーム33を備えている。張力アーム33は、後端を傾動自在に固定すると共に、先端には可動プーリ32Bが連結されており、さらに中間部に弾性体34が連結されて、この弾性体34により線状体3に張力をかける方向に付勢されている。この張力検出部31は、張力アーム33の位置を検出して線状体3の張力を検出する。
【0037】
図3の制御回路6は、張力検出部31の張力アーム33で検出する線状体3の張力が設定値となるようにモーター5の回転トルクを調整する。張力アーム33は弾性体34で線状体3を引っ張る方向に付勢されて、線状体3の張力が強くなると張力アーム33が傾動する。線状体3の張力を検出して、検出する張力でモーター5の回転をコントロールする制御回路6は、簡単な構造で線状体3の張力を設定値にできる。また、線状体3の張力を確実に設定値にできる特徴がある。さらに、この制御回路6は、張力アーム23の慣性を少なくして、線状体3の張力を速やかに検出して、線状体3の張力を正確に制御できる。
【0038】
制御回路6は、検出器8からの信号で、リール4からの繰り出される線状体3の長さを検出する。
図1に示す検出器8はエンコーダー23としている。ただ、検出器8は、エンコーダーには特定せず、リール4やモーター5の回転数等からリール4から繰り出される線状体3の長さを検出できる他のすべてこの機構が使用できる。検出器8であるエンコーダー23には、リール4の回転角を検出できる全ての機構のものが使用できるが、好ましくは非接触式のロータリーエンコーダーを使用する。ロータリーエンコーダーは、リール4の回転軸4aに連結しているエンコーダーディスク11に光りビームを照射し、光ビームの透過光や反射光を受光素子で検出して、エンコーダーディスク11の回転角を検出する。エンコーダーディスク11は外周縁部に沿って光ビームを透過する多数の貫通穴、あるいは光ビームを反射する多数の反射スポットを一定の間隔で設けている。エンコーダーディスク11が回転すると、光ビームが貫通穴を透過し、あるいは反射スポットで反射されて受光素子に検出される。エンコーダー23は、受光素子が検出する光ビームの数をカウントして、エンコーダーディスク11の回転角を検出する。エンコーダーディスク11の回転角から、線状体3の繰り出し長さは演算できる。リール4が1回転する毎に、巻き取り軸4Aの外周に相当する線状体3が繰り出されるからである。
【0039】
線状体3として釣り糸を使用する場合、釣り糸は細いので、全長を30mとする釣り糸を巻き取るリール4は、線状体3の巻き取り長さに対して巻き取り軸4Aの太さがほとんど変化しない。このリール4は、線状体3の繰り出し長さがエンコーダーディスク11の回転角に比例する。制御回路6は、検出器8であるエンコーダー23からの信号で、線状体3のリール4からの繰り出し長さを検出する。線状体3の繰り出し長さで張力をコントロールする装置は、繰り出し長さでモーター5の回転トルクを制御して、線状体3の張力を所定の値にコントロールする。
【0040】
線状体3は先端に無人飛行体1を連結して使用するが、リール4から繰り出された状態で、無人飛行体1から外され、また外れることもある。無人飛行体1から外れた線状体3は、張力が設定値となるように引っ張られて、リール4に巻き取られる。先端を無人飛行体1に連結されている線状体3は、モーター5でリール4を巻取り方向に駆動して、張力を設定値に維持しているので、先端が無人飛行体1から外れた線状体3は、張力が設定値よりも小さくなるため、張力を強くするようにモーター5が回転して、リール4に巻き取られる。この状態はモータ-5が最大回転数で回転しても張力が設定値とならないので、モーターはリール4を最大回転数で回転して、線状体3を高速で巻き取る。したがって、線状体3が無人飛行体1から外れると、線状体3は高速でリール4に巻き取られる。さらに、この状態でリール4に巻き取られていた線状体3は、次第に加速されて高速でリール4に巻き取られる。
【0041】
モーター5とリール4の最大回転数は、無人飛行体1が線状体繰出装置10に接近する最大速度を考慮して設定される。無人飛行体1が最大速度で線状体繰出装置10に接近しても、線状体3が弛まない状態を理想とするからである。無人飛行体1の最高速は、時速数十kmと相当に速いことから、線状体の最大巻き取り速度もこの程度の速度に設定される。したがって、無人飛行体1から外れた線状体3は、一般的には時速30km程度、秒速では約10m/sec程度の速さで巻き取られる。以上のように、相当な高速でリール4に巻き取られる線状体3は、先端に連結しているフック等が激しく衝突して、一部を損傷し、また安全性を阻害する原因となる。
【0042】
制御回路6は、モーター5の巻取り方向の回転トルクを、線状体3の張力が設定値となるように制御してリール4を回転する。先端が切り離された線状体3は、張力が設定値以下となるので、モーター5は最大回転数で回転してリール4を高速回転させて線状体3を高速で巻き取るが、制御回路6は線状体3が完全にリール4に巻き取られる前に、線状体3の先端部にあらかじめ設定している「非巻取長さ」を残して、モーター5の回転を強制的に停止する。
【0043】
モーター5の回転を強制的に停止する線状体3の「非巻き取り長さ」は、例えば30cm~5mであって、無人飛行体1から外れた状態で巻き取られる線状体3の先端が高速で線状体繰出装置10に衝突する事態を回避できる長さとする。ただ、線状体3の非巻き取り長さは、用途に応じて種々に変更することもできる。
【0044】
非巻取長さを残してモーター5の回転を停止する制御回路6は、線状体3の非巻取長さを記憶する記憶部15を備えている。記憶部15は、あらかじめ非巻取長さを入力して記憶しており、またユーザーが非巻取長さを設定して記憶することができる。記憶部15は、テンキーなどの入力部を設けて非巻取長さを設定することができる。この記憶部15は、線状体3の非巻取長さをユーザーが変更して設定できる。
【0045】
さらに、制御回路6は、スタートスイッチ16から入力される信号で非巻取長さを設定することもできる。この制御回路6は、スタートスイッチ16からのスタート信号を検出するタイミングで、リール4から繰り出されている線状体3の長さを非巻取長さとして記憶する。この制御回路6は、ユーザーが線状体3を所定の長さ、例えば数十cm~数m程度をリール4から繰り出す状態でスタートスイッチ16を押して、リール4に巻き取られていない線状体3の長さを非巻取長さに設定できる。この制御回路6は、ユーザーが線状体3の先端部を、好ましい長さでリール4に巻き取ることなく残してスタートスイッチ16を押して、線状体3の非巻取長さを自由に変更できるので、使用する最初にスタートスイッチ16を押して、簡単かつ容易に、非巻取長さを理想的な長さに調整できる特長がある。
【0046】
さらに、
図1の線状体繰出装置10は、機械式のブレーキ機構12を備える。この線状体繰出装置10は、ブレーキ機構12をユーザーが手動で操作して、緊急時にリール4を強制的に停止できる。図のブレーキ機構12は、リール4の回転軸4aにブレーキディスク13を固定し、このブレーキディスク13をブレーキバッド14を押し付けて、摩擦抵抗で停止する。ブレーキ機構12は、手動のレバー(図示せず)などでブレーキバッド14を制御して回転軸4aの回転を停止する。
【0047】
以上の線状体繰出装置10は、制御回路6が、検出器8からの信号で線状体3のリールから4の繰り出し長さを検出し、リール4に巻き取られる線状体3の先端部に非巻取長さを残す位置でモーター5の回転を強制的に停止する。これにより、無人飛行体1から外れた状態でリール4に巻き取られる線状体3が最後まで巻き取られるのを阻止して、線状体3が先端まで高速で巻き取られることによる弊害を防止できる。ただ、線状体繰出装置10は、制御回路6で線状体3の巻き取り方向の速度を検出し、線状体3の巻き取り速度が設定値よりも速い状態において、線状体3の先端部に非巻取長さを残す位置でモーター5の回転を停止することもできる。
【0048】
この線状体繰出装置10は、制御回路6が検出器8からの信号で線状体3の巻き取り速度を検出し、検出された巻き取り速度が設定値以上の状態で、線状体3が先端部に非巻取長さを残す位置まで巻き取られるとモーター5の回転を強制的に停止する。検出器8をエンコーダー23とする装置においては、制御回路6は、エンコーダー23からの信号でリール4又はモーター5の回転数を検出し、検出された回転数とリール4の巻き径から線状体3の巻き取り速度を演算して検出する。制御回路6は、例えば、線状体3がリール4に巻き取られる速度が、秒速で約1m/sec以上となると、線状体3の巻き取り速度が設定値以上であると判定することができる。
【0049】
ただ、制御回路6は、必ずしも線状体3の巻き取り速度を正確に演算する必要はなく、リール4に巻き取られる線状体3の巻き径の変化を考慮することなく、多少の誤差を含めた状態で、線状体3の巻き取り速度を検出することもできる。さらに、制御回路6は、リール4の巻き径を一定として、リール4の回転数のみから線状体3の巻き取り速度を検出することもできる。この場合は、エンコーダー23で検出されるリール4の回転数が設定値以上の時に線状体3の巻き取り速度が設定値以上であると判定する。
【0050】
以上の線状体繰出装置10は、線状体3の巻き取り速度が設定値よりも速い状態では、線状体3の先端部に非巻取長さを残す位置まで線状体3が巻き取られると、モーター5の回転を強制的に停止するので、設定速度よりも速い巻き取り速度で巻き取られる線状体3が先端まで高速で巻き取られるのを防止して、安全性を向上できる。また、この線状体繰出装置10は、線状体3の巻き取り速度が設定値よりも遅い状態では、線状体3が非巻取長さまで巻き取られてもモーター5を停止することなく、線状体3を最後まで巻き取ることができる。
【0051】
線状体3は、ガイドアーム17を介してリール4から引き出されて無人飛行体1に連結される。ケース7は、リール4の繰り出し側にガイドアーム17を連結している。リール4に巻かれた線状体3は、ガイドアーム17の先端部に設けてるガイドリング18に通されて、先端を無人飛行体1に連結する。ガイドアーム17は、リール4に均等に線状体3を巻き取るように、ガイドリング18をリール4の軸方向に往復運動させる往復運動機構19を備えている。往復運動機構19は、モーターと、モーターの回転を往復運動に変換する機構を備え、モーターの回転が制御回路6にコントロールされて、ガイドリング18をリール4の両端に往復運動して、リール4に均等に線状体3を巻き取る。
【0052】
ガイドアーム17は、弾性変形できる材質で成形され、あるいは一部をバネ材で構成している。弾性変形するガイドアーム17は、ガイドリング18に挿通している線状体3の張力の変動や衝撃を吸収して、線状体3の張力変動を抑制し、またケース7から突出しているガイドアーム17自体の衝撃による変形や損傷を防止できる。
【0053】
線状体3は、ガイドリング18に挿通されて繰り出されるので、ガイドリング18の内面を擦りながら繰り出され、あるいは巻き取られる。ガイドリング18は、線状体3をリール4からスムーズに繰り出し、また均等に巻き取る位置に配置される。ガイドリング18を通過した線状体3は、無人飛行体1の方向に引き出される。ガイドリング18は、線状体3を内面に摺動させて引き出し方向を変更するので、線状体3との間で摩擦抵抗が発生する。とくに、線状体3は所定の張力が作用する状態で、ガイドリング18を通過するので、張力がガイドリング18との摩擦抵抗を大きくする。この摩擦抵抗は、線状体3の引き出し方向が、ガイドリング18の中心軸からずれるに従って大きくなる。
【0054】
線状体3の摩擦抵抗を小さくするために、ケース7は線状体3の引き出し方向を変更して摩擦抵抗を小さくできる形状としている。
図2、
図4、及び
図5のケース7は、直方体で、互いに直交する第1の底面7Aと第2の底面7Bの両方に足21を設けている。足21を設けている底面の対向面7C、7Dにはグリップ22を設けている。足21はゴム状弾性体で底面の四隅部に固定している。グリップ22はコ字状で両端を対向面7C、7Dに固定して中央部に配置している。このケース7は、第1の底面7Aをベース基地2の地面20などの水平面に配置し、あるいは第2の底面7Bをベース基地2の水平面20に設置して、線状体3の摩擦抵抗を少なくする。
【0055】
図4は第1の底面7Aをベース基地の水平面に設置して使用する状態を示している。この姿勢の線状体繰出装置10は、無人飛行体1が垂直方向に飛行する状態で線状体3の摩擦抵抗を小さくできる。線状体3を上向きに引き出して、ガイドリング18との摩擦抵抗を小さくできるからである。無人飛行体1が水平方向に飛行する状態では、
図5に示すように、第2の底面7Bを水平面20に設置する。この姿勢のケース7は、水平方向に線状体3を引き出して、ガイドリング18との摩擦抵抗を小さくできるからである。
【0056】
図2、
図4、及び
図5の線状体繰出装置10は、ケース7を直方体の六面体として、互いに直交する第1の底面7Aと第2の底面7Bを設けているが、ケース7は、互いに交差する面内に位置する、第1の底面7Aと第2の底面7Bを設け、第1の底面7Aと第2の底面7Bを水平面20に配置して、線状体3の引き出し方向を変更できる多面体とすることができる。また、第1の底面7Aと第2の底面7Bを設けて、他の表面を湾曲面とすることもできる。また、第1の底面7Aと第2の底面7Bは、好ましくは互いに直交する姿勢とするが、必ずしも直交姿勢とする必要はなく、例えば、第1の底面7Aと第2の底面7Bとが、45度ないし120度で交差することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、無人飛行体に線状体を連結して飛行させる線状体繰出装置として、とくに、ヘリコプターやドローンなどの無人飛行体を特定の飛行領域として安全に飛行させる線状体繰出装置として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0058】
1…無人飛行体
2…ベース基地
3…線状体
4…リール
4A…巻き取り軸
4B…鍔
4a…回転軸
5…モーター
5a…回転軸
6…制御回路
7…ケース
7A…第1の底面
7B…第2の底面
8…検出器
9…バッテリー
10…線状体繰出装置
11…エンコーダーディスク
12…ブレーキ機構
13…ブレーキディスク
14…ブレーキパッド
15…記憶部
16…スタートスイッチ
17…ガイドアーム
18…ガイドリング
19…往復運動機構
20…水平面
21…足
22…グリップ
23…エンコーダー
31…張力検出部
32…プーリ
32A…固定プーリ
32B…可動プーリ
33…張力アーム
34…弾性体
【要約】 (修正有)
【課題】簡単な構造として、極めて高い安全性を確保しながら、無人飛行体から外れた線状体を確実に安定してリールに巻き取りできる無人飛行体の線状体繰出装置を提供する。
【解決手段】無人飛行体1の線状体繰出装置10は、無人飛行体1に連結される線状体3を巻き取るリール4と、リール4を線状体3の巻取り方向に駆動しているモーター5と、リール4に巻かれた線状体3の繰り出し長さを検出する検出器8と、モーター5の回転トルクを制御する制御回路6とを備えている。制御回路6は、検出器8からの信号で、線状体3のリール4からの繰り出し長さを検出し、線状体3の先端部に非巻取長さを残す位置で、モーター5のリール巻取り方向の回転を停止する。
【選択図】
図1