(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】集材機及び集材機用ロープ巻き取り装置
(51)【国際特許分類】
B66C 21/00 20060101AFI20220328BHJP
B66D 1/12 20060101ALI20220328BHJP
B66D 1/22 20060101ALI20220328BHJP
B66D 1/26 20060101ALI20220328BHJP
B66D 1/38 20060101ALI20220328BHJP
B66D 1/54 20060101ALI20220328BHJP
A01G 23/00 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
B66C21/00 F
B66D1/12
B66D1/22 A
B66D1/22 B
B66D1/26 C
B66D1/38 C
B66D1/54 A
A01G23/00 551F
(21)【出願番号】P 2021198653
(22)【出願日】2021-12-07
【審査請求日】2021-12-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516268334
【氏名又は名称】合同会社森林システム研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】杉山 伸人
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-096500(JP,A)
【文献】特開昭58-119593(JP,A)
【文献】実開平05-064184(JP,U)
【文献】中国実用新案第207738341(CN,U)
【文献】実開昭54-083764(JP,U)
【文献】特開2003-292291(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198413(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 21/00-21/08
B66D 1/00- 5/34
A01G 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
滑車を介して往復配置させた1本の主索と、所定の位置に近接して固定され、前記主索の一端が固定されて巻回される第1の巻取ドラムと、前記主索の他端が固定されて巻回される第2の巻取ドラムと、前記往復配置させた主索に取り付けられて前記主索の移動とともに集材を移送する搬送車とを備えた集材機であって、
前記主索の両端部が巻回される前記第1及び第2の巻取ドラムの回転軸が、同軸に一体に設けられた主回転軸から成り、
前記第1の巻取ドラムは前記主回転軸と一体に回転可能に設けられて第1の駆動モータに接続され、
前記第2の巻取ドラムは前記主回転軸と遊星歯車機構を介して回転可能に設けられるとともに、前記第2の巻取ドラムの中心部に前記遊星歯車機構の太陽歯車軸が同軸に位置し、前記太陽歯車軸に第2の駆動モータが接続され、
前記第1及び第2の巻取ドラムは、前記遊星歯車機構を介して前記第1及び第2の駆動モータにより差動回転可能に設けられたことを特徴とする集材機。
【請求項2】
前記主回転軸は、前記第2の巻取ドラムに設けられた前記遊星歯車機構の遊星歯車キャリアに固定され、前記第2の巻取ドラムには前記遊星歯車機構の内歯車が形成され、前記内歯車が前記遊星歯車キャリアに軸支された遊星歯車に噛み合い、前記第1及び第2の巻取ドラムが前記第1及び第2の駆動モータにより前記遊星歯車機構を介して差動回転する請求項1記載の集材機。
【請求項3】
前記主索と、前記第1及び第2の巻取ドラムと前記第1及び第2の駆動モータとを備えた機構を一対に備え、前記一対の主索間に連結索を架設し、前記連結索の両端を各々前記搬送車に接続し、前記連結索に沿って移動し前記集材を搬送する自走式の自走搬送機を設けてH型架線集材機を形成する請求項1又は2記載の集材機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか記載の集材機の前記巻取ドラムに前記主索を巻き付ける集材機用ロープ巻き取り装置であって、
前記第1及び第2の巻取ドラムに前記主索を巻き付ける際に、前記巻取ドラムの側面に前記主索の直径以上の所定ピッチで前記主索を均等に巻き付けるトラバース機構を備え、
前記トラバース機構は、カム機構を備え、
前記カム機構は、前記巻取ドラムの回転軸と平行に移動する移動体と、前記移動体に設けられたカムフォロアを有し、
前記移動体を前記巻取ドラムの回転軸と平行に往復移動させる駆動機構と、前記駆動機構に設けられ前記カムフォロアに係合して前記移動体を往復移動させるローラーカムを備え、
前記カムフォロアは、前記巻取ドラムの側面の両端部に前記移動体が移動した状態で、前記ローラーカムをガイドして、前記移動体を前記所定ピッチの1/2ピッチだけ移動させて、前記巻取ドラムに巻回された前記主索間の外側にさらに前記主索を巻き付け可能にし、
前記移動体は、前記主索の位置を前記巻取ドラム側面に沿って往復移動させて、前記主索を前記巻取ドラムに前記所定ピッチで等間隔に複数層に巻き付けることを特徴とする集材機用ロープ巻き取り装置。
【請求項5】
前記カムフォロアは、一対の可動カムから成り、前記一対の可動カムにより前記巻取ドラムの側面の両端部で各々前記ローラーカムをガイドし、前記カムフォロアの一方の可動カムにより前記ローラーカムを介して前記移動体を前記所定ピッチの1/2ピッチだけ前記巻取ドラムの反対側の端部側に移動させるとともに、他方の前記可動カムは前記ローラーカムの移動時に退避可能に形成されている請求項4記載の集材機用ロープ巻き取り装置。
【請求項6】
前記駆動機構は、前記巻取ドラムの側面に設けられたチェーン機構により構成され、前記チェーン機構により前記移動体が移動可能に設けられ、前記ローラーカムの中心が、前記チェーン機構のチェーンの一対のピンの中心に配置されている請求項4又は5記載の集材機用ロープ巻き取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木材等の重量物を、空中に張った索(ロープ)を操作して集材地へ搬出する集材機及び集材機用ロープ巻き取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、林業分野において山間部の傾斜地で伐採し造材された丸太を林道等へ搬出する作業には、いろいろな搬出用機械が使用されている。例えば、4本の支柱で囲まれた範囲で、面的な集材が可能なH型架線集材機は、深い谷で長大な斜面の林地で用いられている。この搬出用機械は架線数が多く且つ、架線の配置が複雑であり、搬送質量を確保するため荷上げ索を大きく弛ませて張力を抑制するため、深い谷が適用地となる。この装置は、俯瞰するとH文字に見えるので、H型架線集材機と称されている。
【0003】
一方、
図25に示すように、2本の支柱間を線的な往復動作で集材する従来型のランニングスカイライン方式がある。これは、一対の支点Sで折り返した主索2に搬器を乗せた構造に形成し、主索2は往復して架設され、主索2の引寄索と引戻索を操作して集材3を移送するものである。この方式は架線数が少なく架設・撤収が容易な索張り方式であるが、一般的に、集材3を空中に吊り上げず、地曳きでの集材となるという欠点があった。
【0004】
さらに、
図25に示すように、従来型のランニングスカイライン方式を2式平行に並べ、連結索4を設けて、間に自走式搬器6を繋ぎ、H型架線集材機8を構成したものもある。この従来型のランニングスカイライン方式には、
図25に示すようなエンドレス巻取ドラムタイプと、引寄索と引戻索を索別に操作するタイプがある。
【0005】
エンドレス巻取ドラムタイプの特徴は、1つの巻取ドラムで搬器の引寄と引戻し動作が可能なことと、互いの索の張力を差引きできることにある。しかし、周長は定まっているため、操作される搬器は二つの支点を中心に、
図25に示す破線の軌跡hのように、楕円弧の軌跡を
描く。さらに、この動作で2式平行に並べた場合、索2同士の間の距離が変わり、この間を繋ぐ自走式搬器用の連結索4の張力が安全荷重を超えることがある。
【0006】
また、
図4(b)に示す比較例のように、主索14の引寄索と引戻索を索別に操作して
搬送車16を直線運動させ、これらを2式平行に並べ
て搬送車16同士の間隔を一定に保つ動作が可能なタイプは、エンドレス索と異なり索に作用する張力の差引は無く各巻取ドラムが全ての張力を負う。このため動力源や減速機構に負荷がかかり、動力損失が大きく、張力不足の為地曳き集材となる。
【0007】
この他、クレーン等の荷役装置の減速機として、特許文献1、特許文献2に開示されている様に、遊星歯車を用いたものもある。
【0008】
上記問題点に加えて、H型架線集材機のような広大な面(例:長さ1,000m幅300m)の動作は、目視手動操作機の限界を超え、動作の安全性を高めるため数値制御化が必要となる。そして、搬出効率を高めるため適格なロープ(索)の張力制御が求められる。このため、ロープの乱巻防止装置が必要になる。
【0009】
従来型のロープの乱巻防止装置に、特許文献3に開示されたようなトラバースカム方式と、ボールねじとサーボモータを組み合せた数値制御方式がある。トラバースカム方式のトラバースカム(往復運動用の螺旋溝加工がされたシャフト)とシュー(船形の溝内摺動体:溝内に納まるため小片)は、シューが螺旋溝同士の交差部で案内面が減少する箇所を通過するため、H型架線集材機のような重荷重に向かない。ボールねじとサーボモータを組み合せたロープ乱巻防止装置の4軸とロープ制御の4軸を合わせると、8軸制御になり高価なものになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2002-220189号公報
【文献】特開2010-233375号公報
【文献】特開2018-104108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記背景技術を組み合わせて、H型架線集材機を構成したとしても、上記のように搬器が二つの支点を中心に楕円弧の軌跡を描くと言う問題、2式平行に並べた索の間隔が変わり、間を繋ぐ自走式搬器用主索の張力が安全荷重を超えることがあると言う問題、及び引寄索と引戻索を索別に操作すると動力損失が大きいと言う問題は解決できないものであった。さらに、ロープの乱巻防止装置も必要である。
【0012】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、多様な用地で使用可能であり、簡単な構成で搬器や集材を直線的に搬送可能な集材機及び集材機用ロープ巻き取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、滑車を介して往復配置させた1本の主索と、所定の位置に近接して固定され、前記主索の一端が固定されて巻回される第1の巻取ドラムと、前記主索の他端が固定されて巻回される第2の巻取ドラムと、前記往復配置させた主索に取り付けられて前記主索の移動とともに集材を移送する搬送車とを備えた集材機であって、前記主索の両端部が巻回される前記第1及び第2の巻取ドラムの回転軸が、同軸に一体に設けられた主回転軸から成り、前記第1の巻取ドラムは前記主回転軸と一体に回転可能に設けられて第1の駆動モータに接続され、前記第2の巻取ドラムは前記主回転軸と遊星歯車機構を介して回転可能に設けられるとともに、前記第2の巻取ドラムの中心部に前記遊星歯車機構の太陽歯車軸が同軸に位置し、前記太陽歯車軸に第2の駆動モータが接続され、前記第1及び第2の巻取ドラムは、前記遊星歯車機構を介して前記第1及び第2の駆動モータにより差動回転可能に設けられた集材機である。
【0014】
前記主回転軸は、前記第2の巻取ドラムに設けられた前記遊星歯車機構の遊星歯車キャリアに固定され、前記第2の巻取ドラムには前記遊星歯車機構の内歯車が形成され、前記内歯車が前記遊星歯車キャリアに軸支された遊星歯車に噛み合い、前記第1及び第2の巻取ドラムが前記第1及び第2の駆動モータにより前記遊星歯車機構を介して差動回転するものである。
【0015】
前記主索と、前記第1及び第2の巻取ドラムと前記第1及び第2の駆動モータとを備えた機構を一対に備え、前記一対の主索間に連結索を架設し、前記連結索の両端を各々前記搬送車に接続し、前記連結索に沿って移動し前記集材を搬送する自走式の自走搬送機を設けてH型架線集材機を形成するものである。
【0016】
またこの発明は、前記集材機の前記巻取ドラムに前記主索を巻き付ける集材機用ロープ巻き取り装置であって、前記第1及び第2の巻取ドラムに前記主索を巻き付ける際に、前記巻取ドラムの側面に前記主索の直径以上の所定ピッチで前記主索を均等に巻き付けるトラバース機構を備え、前記トラバース機構は、カム機構を備え、前記カム機構は、前記巻取ドラムの回転軸と平行に移動する移動体と、前記移動体に設けられたカムフォロアを有し、前記移動体を前記巻取ドラムの回転軸と平行に往復移動させる駆動機構と、前記駆動機構に設けられ前記カムフォロアに係合して前記移動体を往復移動させるローラーカムを備え、前記カムフォロアは、前記巻取ドラムの側面の両端部に前記移動体が移動した状態で、前記ローラーカムをガイドして、前記移動体を前記所定ピッチの1/2ピッチだけ移動させて、前記巻取ドラムに巻回された前記主索間の外側にさらに前記主索を巻き付け可能にし、前記移動体は、前記主索の位置を前記巻取ドラム側面に沿って往復移動させて、前記主索を前記巻取ドラムに前記所定ピッチで等間隔に複数層に巻き付ける集材機用ロープ巻き取り装置である。
【0017】
前記カムフォロアは、一対の可動カムから成り、前記一対の可動カムにより前記巻取ドラムの側面の両端部で各々前記ローラーカムをガイドし、前記カムフォロアの一方の可動カムにより前記ローラーカムを介して前記移動体を前記所定ピッチの1/2ピッチだけ前記巻取ドラムの反対側の端部側に移動させるとともに、他方の前記可動カムは前記ローラーカムの移動時に退避可能に形成されているものである。
【0018】
前記駆動機構は、前記巻取ドラムの側面に設けられたチェーン機構により構成され、前記チェーン機構により前記移動体が移動可能に設けられ、前記ローラーカムの中心が、前記チェーン機構のチェーンの一対のピンの中心に配置されているものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明の集材機及び集材機用ロープ巻き取り装置は、簡単な構造で正確な搬送を可能にし、搬送する木材等の直線的な移動を確実に行うことができ、平行に配置した主索の間隔が変わることがなく、主索間を繋ぐ連結索の張力が安全荷重を超えることもない。
【0020】
また、この発明の集材機用ロープ巻き取り装置は、巻取ドラムに巻き取る主索を平行に等間隔で確実に巻き取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の一実施形態の集材機の構成の概要を示す模式図である。
【
図2】この実施形態の集材機の基本的構成を示す模式図(a)、比較例の集材機の構成を示す模式図(b)である。
【
図3】この実施形態の集材機の遊星歯車機構の構造と動作を説明する概略断面図(a)、(b)、(c)である。
【
図4】この実施形態の集材機による集材の搬送を説明する比較例の模式図(a)、(b)である。
【
図5】この実施形態の集材機による集材の搬送を説明する模式図である。
【
図6】この実施形態の集材機の巻取ドラムによる主索の巻き取りを説明する模式図である。
【
図7】この実施形態の集材機の巻取ドラムによる主索の巻き取りを説明する概略断面図である。
【
図8】この実施形態の集材機のワイヤーロープにかかる張力を説明する模式図である。
【
図9】この実施形態の集材機のワイヤーロープにかかる張力の実施例を説明する模式図である。
【
図10】この発明の集材機用ロープ巻き取り装置の一実施形態の概略を説明する平面図である。
【
図11】この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置のトラバース機構のカム機構の部分概略図(a)、部分拡大図(b)である
【
図12】この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置のトラバース機構のカム機構とチェーン機構を示す部分正面図(a)、ローラーカム部の拡大図(b)である。
【
図13】この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置のトラバース機構のチェーン機構の部分拡大図である。
【
図14】この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置により巻回した巻取ドラムの部分破断断面図である。
【
図15】この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置のトラバース機構のワイヤ移動チェーンとローラーカムを示す部分正面図である。
【
図16】この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置のトラバース機構のカム機構と巻取ドラムを示す概念図である。
【
図17】この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置のトラバース機構のカム機構による主索位置の移動を示す説明図である。
【
図18】この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置のトラバース機構のカム機構を示す概念図である。
【
図19】この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置のトラバース機構のカム機構のローラーカムとカムフォロアの動作を示す概念図(a)、(b)である。
【
図20】この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置のトラバース機構のカム機構のカムフォロアの動作を示す概念図である。
【
図21】この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置の巻き取り状態を示す概念図である。
【
図22】この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置を示す部分破断平面図である。
【
図23】この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置を示す正面図である。
【
図24】この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置の巻取ドラムを示す拡大側面図である。
【
図25】従来のH型架線集材機の主索等の配置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1~
図9はこの発明の一実施形態の集材機10を示すもので、この実施形態の集材機10は、木材の伐採地等に設置され、所定の位置に設置された滑車12を介して往復配置した1本の主索14と、所定の位置に近接して固定され、主索14が巻回される第1の巻取ドラムD1と第2の巻取ドラムD2とを備える。往復させた主索14には、主索14の移動とともに伐採した木材である集材24を移送する搬送車16を備えている。
【0023】
主索14は、滑車12で折り返して往復して配置したもので、両端部14a,14bが各々第1の巻取ドラムD1と第2の巻取ドラムD2に固定されている。主索14の両端14a,14b部は、第1の巻取ドラムD1近傍の滑車17と、第2の巻取ドラムD2近傍の滑車18を介して、所定長さ分が第1の巻取ドラムD1と第2の巻取ドラムD2の少なくともいずれかに巻回されている。
【0024】
往復した主索14の一方の側の中間部に搬送車16が固定され、搬送車16には搬送ローラー15が設けられ、往復した主索14の他方の側に搬送ローラー15が載置され、主索14上を駆動可能に設けられている。従って、搬送車16は、第1,第2の巻取ドラムD1,D2と滑車12間の所定距離を、往復した主索14の一方の側の所定位置に固定されて一体的に移動するとともに、搬送ローラー15が載せられた他方の主索14上に沿って移動可能に設けられている。
【0025】
主索14の一端14aは、第1の巻取ドラムD1に固定されて巻回され、主索14の他端14bは、第2の巻取ドラムD2に固定されて巻回される。第1の巻取ドラムD1と第2の巻取ドラムD2の回転軸21,22は、同軸に一体に設けられた主回転軸26から成り、第1の巻取ドラムD1は主回転軸26と一体に回転可能に設けられて、第1の駆動モータM1に接続されている。第2の巻取ドラムD2は、主回転軸26と遊星歯車機構30を介して回転可能に設けられるとともに、第2の巻取ドラムD2の中心部に、遊星歯車機構30の太陽歯車33の太陽歯車軸32が回転軸22と同軸に位置し、太陽歯車軸32に第2の駆動モータM2が接続されている。
【0026】
第1の巻取ドラムD1と第2の巻取ドラムD2は、
図6に示すように、互いに反対方向に回転するように主索14が巻き付けられ、第1及び第2の駆動モータM1,M2により駆動される。これにより、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2は、遊星歯車機構30を介して第1及び第2の駆動モータM1,M2により、後述するように、差動回転可能に設けられている。
【0027】
主回転軸26は、第2の巻取ドラムD2に設けられた遊星歯車機構30の遊星歯車キャリア34に固定され、第2の巻取ドラムD2には遊星歯車機構30のための内歯車38が形成されている。これにより、内歯車38が遊星歯車キャリア34に軸支された遊星歯車36に噛み合い、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2が第1及び第2の駆動モータM1,M2により、遊星歯車機構30を介して差動回転するものである。
【0028】
この実施形態では、
図1に示すように、主索14と、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2と、第1及び第2の駆動モータM1,M2とを備えた集材機10の機構を一対に備え、一対の主索14間に連結索40を架設し、連結索40の両端を各々搬送車16に接続し、連結索40に沿って移動して集材24を搬送する自走式の自走搬送機42を備えている。
【0029】
次に、集材機10の巻取ドラムD1,D2による主索14の駆動及び巻取ドラムD1,D2の動作について説明する。先ず、
図4(a)の比較例に示すように、エンドレスのワイヤーロープによる主索14を、1つの巻取ドラム
Dにより2つの滑車12,17間に掛け渡して、主索14を駆動モータ
Mで駆動した場合の搬送車16の動作を想定すると、
図4(a)の破線で示す軌跡hのように、楕円軌道を描いて搬送される。このような楕円軌道を描くと、
図1に示すように一対の集材機10によるH型架線集材機を構成した場合、移動方向の両端部に行くに従い、連結索40にかかる張力が大きくなり、自走搬送機42や集材24の高さや位置を正確に調整しづらく、連結索40に過大な張力が掛かり損傷する恐れもある。
【0030】
そこで、
図2(b)、
図4(b)の比較例に示すように、主索14の両端部14a,14bを、各々第1の巻取ドラムD1と第2の巻取ドラムD2に固定し、第1の巻取ドラムD1と第2の巻取ドラムD2に主索14を巻き付ける。そして、第1の巻取ドラムD1と第2の巻取ドラムD2が互いに反対方向に回転するように、第1及び第2の駆動モータM1,M2により差動回転させる。これにより、滑車12,17間に掛け渡された主索14の長さを調節可能なり、主索14に吊り下げられた自走搬送機42や集材24の移動軌跡を、
図4(b)の破線で示す軌跡h1のように、直線状にすることができる。
【0031】
しかし、この構成の場合、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2を介して第1及び第2の駆動モータM1,M2の回転軸にかかるトルクが各々独立して掛かるため大きく、第1及び第2の駆動モータM1,M2の負荷が大きくなり、大トルクのモータが必要となる。
【0032】
これに対して、この実施形態の集材機10は、
図2(a),
図5等に示すように、第1の巻取ドラムD1と第2の巻取ドラムD2に主索14を巻き付けるとともに、第1の巻取ドラムD1と第2の巻取ドラムD2の回転軸21,22を同軸に設けて主回転軸26により構成し、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2は、遊星歯車機構30を介して第1及び第2の駆動モータM1,M2により連結することにより、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2は差動回転可能になる。その結果、自走搬送機42や集材24の移動軌跡を、
図5の破線で示す軌跡h1のように、直線状にすることができる。しかも、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2の回転軸21,22は主回転軸26と遊星歯車機構30により連結されているので、第1及び第2の駆動モータM1,M2の回転軸にかかるトルクを互いに相殺することができ、第1及び第2の駆動モータM1,M2の負荷を抑えて比較的小出力のモータでの駆動が可能となる。
【0033】
次に、この実施形態の集材機10の遊星歯車機構30の動作について説明する。先ず、
図3(a)に示すように、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2が遊星歯車機構30を介して第1及び第2の駆動モータM1,M2に接続し、太陽歯車33を固定し第1の巻取ドラムD1に駆動モータM1を接続した場合、この遊星歯車機構30の入出力回転数の速比Uは、
U=(Z
1+Z
3)/Z
3・・・(1)となる。
ここで、内歯車38の歯数Z
3、太陽歯車33の歯数Z
1とする。また、
図3(b)に示すように、遊星歯車キャリア34を固定し、遊星歯車機構30の太陽歯車33に駆動モータM2の出力を接続すると、入出力回転数の速比Rは、
R=-Z
1/Z
3・・・(2)となる。
【0034】
さらに、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2の回転数制御について、
図6,
図7を基にして説明する。第1の巻取ドラムD1の半径をr1、第2の巻取ドラムの半径をr2、第1の駆動モータM1の回転数をn1、第2の駆動モータM2の回転数をn2とすると、第1の巻取ドラムD1の回転数は駆動モータM1の回転数と等しい回転数n1であり、第2の巻取ドラムD2の回転数nd2は、
nd2=U・n1+R・n2・・・(3)と表される。
第1及び第2の巻取ドラムD1,D2による主索14の索速度について、第1の巻取ドラムD1による索速度V1は、
V1=2・π・r1・n1・・・(4)となり、
第2の巻取ドラムD2による索速度V2は
V2=2・π・r2・nd2=2・π・r2・(U・n1+R・n2)・・・(5)
となる。
【0035】
従って、上記の太陽歯車33を固定した場合、n2=0であるので、
V2=2・π・r2・U・n1・・・(5)となり、
U=(Z1+Z3)/Z3=r1/r2・・・(6)の場合、
式(5)より、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2による主索14の索速度V1、V2は等しくなる。
【0036】
そして、第1の駆動モータM1の回転数n1と第2の駆動モータM2の回転数n2を制御し、主索14の索速度V1、V2を、等速の状態から主索14の繰り出し量を多くする方向に、第1の駆動モータM1の回転数n1と第2の駆動モータM2の回転数n2を調節すると主索14が長く繰り出され、逆に第1の駆動モータM1の回転数n1と第2の駆動モータM2の回転数n2の差により、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2のいずれかに主索14がより多く巻き取られるように制御すれば、主索14の繰り出し長さが短くなる。そして、主索14の繰り出し量を調節することにより、
図5に示すように、自走搬送機42を主索14の架設方向に直線的に移動させることができる。
【0037】
これにより、
図1に示すように、この実施形態の集材機10によるH型架線集材機を構成した場合、自走搬送機42や集材24を、
図5に示すように、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2と滑車12とを結ぶ直線と平行に直線移動させることができる。従って、連結索40、を平行移動させる際も、過大な張力が掛かることがない。
【0038】
また、このときの張力のつり合いは、
図2,
図8に示すように、主索14の引寄側と引戻側の2本の主索14により自走搬送機42と集材24により荷重張力Wを支持しているので、図中における主索14に掛かる張力Ta,Tbは、下記式(7)、(8)で表される。
Ta・sinθa+Tb・sinθa+Tb・sinθb+Tb・sinθb
=Ta・sinθa++Tb・sinθa+2Tb・sinθb=W・・・(7)
Ta・cosθa+Tb・cosθa=Tb・cosθb+Tb・cosθb
=2Tb・cosθb
Ta・cosθa+Tb・cosθa-2Tb・cosθb=0・・・(9)
【0039】
ここで、
図9(a),(b),(c)を基にした計算例を以下に示す。
図9(a),(b),(c)において、垂下高さNは、何れも56mとし、加重Wは、何れも6,300kg、支点間距離Lbは、500mであり、図中の距離は、(a)ではa=450m、(b)ではa=250m、(c)ではa=50mであり、角度θa,θbは図中の通りとする。
以上より、
図9(a)では、
Ta= 1,300kg
Tb= 3,800kg
Ta-Tb=-2,500kg
図9(b)では、
Ta= 7,200kg
Tb= 7,200kg
Ta-Tb= 0kg
図9(c)では、
Ta= 5,050kg
Tb= 2,550kg
Ta-Tb= 2、500kg
となり、本実施形態の集材機10は、有効に機能することが分かる。なお、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2は、主索14の巻き取りにより、巻き取り状態での直径が変化するが、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2の直径に対する主索14の直径比であるため、影響は小さい。また第1,第2の駆動モータM1,M2の駆動制御プログラムにより、調節することができる。
【0040】
この実施形態の集材機10によれば、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2の回転軸21,22を、主回転軸26と遊星歯車機構30により連結した状態で、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2を差動回転して、主索14を引き寄せ又は引き戻し動作をさせるので、集材機10によるH型架線集材機を構成した場合も、自走搬送機42や集材24を直線移動させることができ、主索14や連結索40に過大な張力が掛からない。
【0041】
次に、この発明の集材機10に用いる集材機用ロープ巻き取り装置の一実施形態について
図10~
図24を基にして説明する。この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置50は、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2に主索14を巻き付ける際に、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2の周面である側面に、主索14の直径よりも僅かに幅広の所定ピッチPで主索14を均等に巻き付けるトラバース機構52を備える。
【0042】
トラバース機構52は、
図10~
図13に示すように、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2(以下、単に巻取ドラムDと言う)の側面に位置したカム機構51を備える。カム機構51は、巻取ドラムDの主回転軸26と平行に移動する移動体54と、移動体54に設けられたカムフォロア55を有している。移動体54には、カムフォロア55を軸支した往復テーブル59が一体に設けられている。さらに、カム機構51は、巻取ドラムDの回転軸と平行に往復移動させる駆動機構であるチェーン機構60を備える。チェーン機構60は、平行に配置された一対のワイヤ移動チェーン62を備え、一対のワイヤ移動チェーン62は、各々図示しない骨組み等に設けられた一対のスプロケット63間に掛け渡されている。各ワイヤ移動チェーン62の一駒には、継手リンク53が各々設けられ、一対の継手リンク53間に、カムフォロア55に係合して移動体54を往復移動させるローラーカム58が軸支されている。ローラーカム58の中心は、ワイヤ移動チェーン62の一駒の一対のピン62aの中心に配置されている。
【0043】
カムフォロア55は、
図12~
図19に示すように、移動体54の往復テーブル59に、点対称に軸支された配置された一対の可動カム56,57を備え、一対の可動カム56,57がローラーカム58の移動により従動し、移動体54を移動させる。一対の可動カム56,57は、所定間隔を空けて位置し、ローラーカム58が通過可能であるとともに、通過時のローラーカム58の移動により揺動可能に設けられている。さらに、一対の可動カム56,57の揺動方向の外側には、各々可動ストッパ56a,57aが位置している。可動ストッパ56a,57aは、往復テーブル59に設けられ、ローラーカム58をガイドする際の一対の可動カム56,57の一方の揺動を止めるとともに、他方の揺動を可能にするように退避する。退避動作は、後述するように、ワイヤ移動チェーン62の両端部のスプロケット63の位置でのローラーカム58の回動に対して干渉しないようにするためである。
【0044】
可動ストッパ56a,57aの退避移動は、
図12,
図19,
図20等に示すように、可動ストッパ56a,57aと一体に設けられたストッパ突起56b,57bにより、往復テーブル59の移動とともに、基材65に形成された段差形状のガイド溝65aにガイドされて、垂直方向に上下動する。基材65は、集材機用ロープ巻き取り装置50を構成する図示しない骨組み等の本体基材と一体に設けられた部材の一部であり、板状の部材である。
【0045】
ここで、このカム機構がチェーン機構60により直線移動をしている時、ローラーカム58はカムフォロア55の上端又は下端に位置し、ドラムDの両端部である左右の折り返し端でチェーン機構60のスプロケット63に沿って円運動する。一方、1対の点対称形状のカムフォロア55の可動カム56,57は、ローラーカム58がチェーン機構60により直線移動をしている時、カムフォロア55の姿勢は両方とも閉じしてローラーカム58を挟み込む形でテーブル59を進行方向に保持する。しかし、このまま、両閉じの状態でローラーカム58がスプロケット63に沿って円運動を行うと通過幅が足りない。このため、左右の折り返し付近でカムフォロア55の可動カム56,57を開く退避動作が必要になる。カムフォロア55の可動カム56,57の開閉は、垂直方向移動する可動ストッパ56a,57aが保持と解放動作により可能にする。そして、ドラム幅方向の中心を境にローラーカム58が可動カム56,57を押す力が増減し、折り返し付近で反進行方向の押し力はほぼ無くなるため、垂直方向に移動する可動ストッパ56a,57aの移動力は軽負荷で良い。
【0046】
チェーン機構60は、ワイヤ移動チェーン62の他、ドラム連結チェーン64、インデックス装置66とロータリーエンコーダ68、及びカム駆動チェーン72とを備えている。ドラム連結チェーン64は、巻取ドラムDを駆動するモータにより駆動可能に設けられ、ドラム連結チェーン64が巻回されたスプロケットと同軸に、インデックス装置66とロータリーエンコーダ68が設けられている。インデックス装置66は、ドラム連結チェーン64からの回転駆動力を回転軸70に転換してカム駆動チェーン72を駆動可能に設けられ、ドラム連結チェーン64を介して巻取ドラムDを駆動するモータの駆動力により、所定角度ずつ回転駆動し、ワイヤ移動チェーン62を所定ピッチで間欠的に駆動可能に形成されている。
【0047】
さらに、トラバース機構52は、
図12,
図15に示すように、移動体54と一体に移動する往復テーブル59に軸支された一対のワイヤガイドローラ74を備えている。一対のワイヤガイドローラ74間に主索14が位置して、移動体54の移動とともに巻付け位置を間欠的に変位させ、巻取ドラムDの側面であるワイヤ巻き付け面に主索14を所定ピッチPで移動しながら巻き付け、さらに複数層に巻き付ける。巻取ドラムDの側面であるワイヤ巻き付け面には、
図14に示すように、ワイヤ溝76が形成されている。ワイヤ溝76は、主索14の直径よりも僅かに狭い幅で、ワイヤ溝76間に僅かにスペースをおいて形成され、主索14の半径よりも僅かに浅い円弧状の溝であり、主索14を一定ピッチPで巻取ドラムDに巻き付け可能にする。さらに、ワイヤ溝76のピッチPは、主索14の直径よりも僅かに大きい間隔で、巻取ドラムDの回転軸と直交する方向に形成されている。
【0048】
次に、主索14を巻取ドラムDに巻き付けるトラバース機構52の動作について、以下に説明する。トラバース機構52は、巻取ドラムDに主索14が巻き付けられて1周した状態で、隣の巻き付け位置に主索14を移動させるもので、移動時の駆動力は、インデックス装置66、チェーン機構60を介して、ドラムDの駆動モータの駆動力が伝達される。トラバース機構52は、移動体54を主索14の直径よりも僅かに大きい所定ピッチPで、巻取ドラムDの回転軸と直交するように主索14を移動させ、ワイヤ溝76に主索14を巻き付ける。隣の巻き付け位置への移動は、巻取ドラムDの側面の一定の狭い範囲で、巻取ドラムDの側面のワイヤ溝76を1周した主索を、一対のワイヤガイドローラ74で挟んだ状態で隣のワイヤ溝76に移動させ、これを繰り返して、主索14を巻取ドラムDに巻き付ける。巻取ドラムDのワイヤ溝76に主索14が巻き付けられ、巻付け位置が巻取ドラムDの側面の一方の端部に達すると、
図15~
図17に示すように、カム機構51により、ピッチPの1/2だけ移動体54を移動させて、巻取ドラムDに先に巻回された主索14同士の中間位置の上にさらに主索14を巻き付けて行く。
【0049】
巻取ドラムDの端部では、チェーン機構60のローラーカム58が、カムフォロア55をガイドして、
図17に示すように、ピッチPの1/2だけ移動体54を移動させる。これにより、
図14に示すように、主索14は、先に巻回された主索14同士の間の谷間に載せられ、その後所定のピッチPで、巻取ドラムDに巻き付けられる。そして、他方の端部に達したところで、上記と同様に、カムフォロア55により、移動体54がピッチPの1/2だけ移動し、先に巻き付けられた主索14同士の間の谷間に主索14が巻き付けられる。これを繰り返して、巻取ドラムDに複数層に渡り主索14を巻き取る。
【0050】
このときのカム機構51のカムフォロア55の動作は、巻取ドラムDの側面の両端部では、
図16に示すように、巻き取った主索14の巻き取り位置をピッチPの1/2だけ移動させるが、ワイヤ移動チェーン62の一対のピン62aの中心に配置されたローラーカム58は、ワイヤ移動チェーン62の端部でワイヤ移動チェーン62が巻き付けられたスプロケット63に沿って回転運動するとともに、カムフォロア55の一対の可動カム56,57の外側のカム面に沿ってピッチPの1/2だけ移動体54を移動させる。これにより、主索14は、ピッチPの1/2だけ移動して、先に巻き付けられた主索14間の谷間上に正確に巻き付け可能となる。
【0051】
また、ローラーカム58による移動体54の1/2ピッチの移動に際して、カムフォロア55の一対の可動カム56,57は、ローラーカム58の回動に伴い揺動可能に設けられているので、ワイヤ移動チェーン62のスプロケット63に沿ってローラーカム58が回動する際も、可動ストッパ56a,57aの一方が揺動して退避し、カムフォロア55とローラーカム58が干渉して、ローラーカム58の回動を妨げることがない。
【0052】
この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置50は、
図21に示すように、この発明の集材機10に用いられるもので、
図21に示すように主索14の曲がり端Aの位置でドラムDの幅の中央に設置するため、A点を観察するための照準器67を備えている。
【0053】
ドラムDの側面の幅方向中心を境に、ローラーカム58がカムフォロア56,57を押す力は主索14の方向である角度θにより変わる。即ち、一対のワイヤガイドローラ74が主索14をガイドする力Fの大きさは、ドラムDの軸に直角断面とロープ角から求められ、その最大値は何れかの端に偏ると均等角より大きくなる。このことからロープ角θは、ドラムDの中心を境に左右で等しいことが望ましい。例えば、
図21において、主索14の張力をT、ドラムDの回転軸方向の分力をFとすると、
F=T・sinθ (10)となる。
式10に実際の荷重を入れてみると、例えばドラムDの
1/2の幅が0.6m、ドラムDと滑車17の距離が12m、張力T=7200kg重とすると、
F=7200・sin(tan
-1(0.6/12))
=360(kg重)
となる。
【0054】
この実施形態の集材機用ロープ巻き取り装置50は、
図22~
図24に示すように、前記実施形態の集材機10からなるもので、集材機10に集材機用ロープ巻き取り装置50が設けられ、主索14のスムーズな巻き取り繰り出しを可能にしている。
【0055】
この実施形態の集材機10及び集材機用ロープ巻き取り装置50によれば、木材を伐採する山の斜面等の多様な林地に適合し、架線数が少なく省エネルギー及び装置の小形化省動力化を可能にした集材機10を形成することができ、集材24の直線移動を可能にし、良好な駆動操作が可能なH型架線集材機を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 集材機
12,17 滑車
14 主索
16 搬送車
21,22 回転軸
24 集材
26 主回転軸
30 遊星歯車機構
32 太陽歯車軸
33 太陽歯車
34 遊星歯車キャリア
36 遊星歯車
38 内歯車
40 連結索
42 自走搬送機
50 集材機用ロープ巻き取り装置
51 カム機構
52 トラバース機構
54 移動体
56,57 可動カム
56a,57a 可動ストッパ
58 ローラーカム
59 往復テーブル
60 チェーン機構
62 ワイヤ移動チェーン
64 ドラム連結チェーン
74 ワイヤガイドローラ
76 ワイヤ溝
D,D1,D2 巻取ドラム
M1,M2 駆動モータ
【要約】 (修正有)
【課題】多様な用地で使用可能で、簡単な構成で搬器や集材を直線的に搬送可能な集材機及び集材機用ロープ巻き取り装置を提供する。
【解決手段】滑車12を介して往復配置させた1本の主索14と、主索14が巻回される第1及び第2の巻取ドラムD1,D2を有する。主索14に取り付けられ、集材24を移送する搬送車16を備える。主索14の両端が巻回された第1及び第2の巻取ドラムD1,D2の回転軸21,22は、同軸に一体に設けられた主回転軸26から成る。第1の巻取ドラムD1は主回転軸26と一体に回転可能に第1の駆動モータM1に接続される。第2の巻取ドラムD2は、主回転軸26と遊星歯車機構を介して回転可能で、第2の巻取ドラムD2の中心部に遊星歯車機構の太陽歯車軸が同軸に位置する。太陽歯車軸に、第2の駆動モータM2が接続され、第1及び第2の巻取ドラムD1,D2は、遊星歯車機構を介して差動回転する。
【選択図】
図1