IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エンザイム・センサの特許一覧

特許7046408L-アスパラギンの測定方法、及びそのためのキット
<>
  • 特許-L-アスパラギンの測定方法、及びそのためのキット 図1
  • 特許-L-アスパラギンの測定方法、及びそのためのキット 図2
  • 特許-L-アスパラギンの測定方法、及びそのためのキット 図3
  • 特許-L-アスパラギンの測定方法、及びそのためのキット 図4
  • 特許-L-アスパラギンの測定方法、及びそのためのキット 図5
  • 特許-L-アスパラギンの測定方法、及びそのためのキット 図6
  • 特許-L-アスパラギンの測定方法、及びそのためのキット 図7
  • 特許-L-アスパラギンの測定方法、及びそのためのキット 図8
  • 特許-L-アスパラギンの測定方法、及びそのためのキット 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】L-アスパラギンの測定方法、及びそのためのキット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/52 20060101AFI20220328BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20220328BHJP
   C12Q 1/26 20060101ALI20220328BHJP
   C12Q 1/30 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
C12Q1/52
C12M1/34 E
C12Q1/26
C12Q1/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022007121
(22)【出願日】2022-01-20
【審査請求日】2022-01-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511312207
【氏名又は名称】株式会社エンザイム・センサ
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】日下部 均
(72)【発明者】
【氏名】新舘 啓子
(72)【発明者】
【氏名】ウォロ トリアルシ ステスティアニンディア
(72)【発明者】
【氏名】西山 辰也
(72)【発明者】
【氏名】上田 賢志
【審査官】田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-202825(JP,A)
【文献】特許第6703721(JP,B1)
【文献】特許第6703722(JP,B1)
【文献】特許第6585244(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/52
C12M 1/34
C12Q 1/26
C12Q 1/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A液及びB液を含有する、試料中のL-アスパラギンを測定するためのキット:
(A液)アスパラギン酸トランスアミナーゼ、グルタミナーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ、カタラーゼ、及びα-ケトグルタル酸を含む液;
(B液)アスパラギナーゼ、ペルオキシダーゼ、及びカタラーゼ失活剤を含む液;
ただし、A液及びB液は、いずれか一方がカプラー化合物を含み、他方が新トリンダー試薬を含む。
【請求項2】
A液がさらにアスコルビン酸オキシダーゼを含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
A液がカプラー化合物を含み、B液が新トリンダー試薬を含み、A液がさらにピリドキサールリン酸を含む、請求項1又は2に記載のキット。
【請求項4】
カプラー化合物が、4-アミノアンチピリンである、請求項1~3のいずれか1項に記載のキット。
【請求項5】
新トリンダー試薬が、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン・ナトリウム塩(TOOS)、又はN-エチル-N-スルホプロピルアニリン(ALPS)である、請求項1~4のいずれか1項に記載のキット。
【請求項6】
L-アスパラギン標準溶液をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のキット。
【請求項7】
生じた色素の量を測定するためのLED光源を用いた装置を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のキット。
【請求項8】
下記工程1及び工程2を含む、L-アスパラギン酸、L-グルタミン、L-グルタミン酸、アスコルビン酸、及びエリソルビン酸からなる群より選択されるいずれかを含んでいてもよい試料中の、L-アスパラギンを測定する方法:
(工程1)容器内で、L-アスパラギン酸にアスパラギン酸トランスアミナーゼ及びα-ケトグルタル酸を作用させてL-グルタミン酸を生成させ、L-グルタミンにグルタミナーゼを作用させてL-グルタミン酸を生成させ、L-グルタミン酸にグルタミン酸オキシダーゼを作用させてα-ケトグルタル酸を生成させるとともに生成された過酸化水素にカタラーゼを作用させて分解し、アスコルビン酸又はエリソルビン酸にアスコルビン酸オキシダーゼを作用させてアスコルビン酸又はエリソルビン酸を分解する工程;
(工程2)(工程1)に続いて同じ容器内で行われる工程であって、該カタラーゼに、カタラーゼ失活剤を作用させてカタラーゼを失活させ、かつL-アスパラギンにアスパラギナーゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、α-ケトグルタル酸、L-グルタミン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、カプラー化合物及び新トリンダー試薬を作用させて色素を形成させる工程。
【請求項9】
工程1及び工程2が、25~40℃で行われる、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、L-アスパラギンの測定方法、及びそのためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
L-アスパラギンは、非必須アミノ酸の一つであり、生体内では、L-アスパラギン酸からアスパラギンシンテターゼにより生合成され、またアスパラギナーゼによりアスパラギン酸とアンモニアに分解される。アスパラギナーゼは、急性白血病及び悪性リンパ腫の治療薬として用いられており、アスパラギナーゼの基質特異性や安定性を高める検討が行われている(特許文献1及び2)。
【0003】
L-アスパラギンの測定は、一般的にはHPLCを利用したアミノ酸分析機によって行われている。アミノ酸分析機にチャージするアミノ酸測定用試料では、試料が加水分解されている場合が多く、L-アスパラギンとL-グルタミンは、それぞれL-アスパラギン酸とL-グルタミン酸に合算されて定量されていることが多い。
【0004】
また、酵素法によるL-アスパラギン測定のためのキットが市販されている(非特許文献1)。このキットの詳細なスキームは明らかにされていない。
【0005】
さらに、酵素を用いたL-アスパラギン測定方法としては、L-アスパラギンをアスパラギナーゼでL-アスパラギン酸とし、生成したL-アスパラギン酸をL-アスパラギン酸オキシダーゼで酸化し、生成する過酸化水素を測定する酵素センサー法が開発されている(特許文献3)。
【0006】
一方、本発明者らは、γ-アミノ酪酸(GABA)、L-アスパラギン酸及びL-アラニンの測定方法として、アミノ酸トランスアミナーゼとL-グルタミン酸オキシダーゼを用いた酵素サイクリング反応とペルオキシダーゼの反応を組み合わせた方法を開発し、測定キットとして実用化している(特許文献4~6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-207168号公報
【文献】特開2020-129969号公報
【文献】特開2020-202825号公報
【文献】特許第6585244号公報
【文献】特許第6703721号公報
【文献】特許第6703722号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Asparagine Assay Kit (Fluorometric), Catalog # K736-100 (BioVision, Inc., 155 S Milpitas Blvd. Milpitas, CA 95035), https://www.biovision.com/documentation/datasheets/K736.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した市販のキットの方法は、L-アスパラギンをアスパラギナーゼでL-アスパラギン酸にし、生成したL-アスパラギン酸を何らかの酵素でピルビン酸に転換し、このピルビン酸をピルビン酸オキシダーゼで酸化して、生成する過酸化水素をパーオキシダーゼ反応による比色法又は蛍光法で測定する原理と推定される。生体成分を対象試料としているこの方法では、試料に共存するL-アスパラギン酸やピルビン酸を除去できていないので、試料に共存するL-アスパラギン酸やピルビン酸のバックグランドが大きく、別途にこれらを測定して差し引く必要があると思われる。また、アスパラギナーゼとL-アスパラギン酸オキシダーゼとを用いる酵素センサーの場合も、試料に共存するL-アスパラギン酸の量を予め測定して差し引く必要がある。
【0010】
L-アスパラギン測定のための酵素法としては、L-アスパラギンをアスパラギナーゼで処理し、生成するL-アスパラギン酸をアスパラギン酸トランスアミナーゼによりL-グルタミン酸とし、このL-グルタミン酸を、L-グルタミン酸脱水素酵素又はL-グルタミン酸オキシダーゼで処理して生じた反応生成物を測定する方法が考えられる。しかし、実際にこのような酵素法による実用的なL-アスパラギン測定キットは開発されていない。また、食品試料や生体試料にはL-グルタミンが比較的多く含まれているために、この方法では、最初のアスパラギナーゼの基質特異性が問題となる。アスパラギナーゼは、一般的にL-グルタミンにも比較的高い反応性を示してL-グルタミン酸を生成するため、試料中のL-アスパラギンの測定に適用するには、L-アスパラギンとL-グルタミンを分別してL-アスパラギンだけを測定できるように工夫する必要がある。すなわち、アスパラギナーゼを使用して、L-アスパラギンからL-グルタミン酸に導いて測定する方法においては、予めL-グルタミンを除去することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、複数の酵素による逐次かつ同時に進行する反応、特にL-アスパラギン酸トランスアミナーゼとL-グルタミン酸オキシダーゼとの酵素サイクリング法を活用することにより、一般的に食品試料や生体試料に含有されているL-グルタミン酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン及びアスコルビン酸などのL-アスパラギン測定に影響を与える共存物質を除去してから、L-アスパラギンを特異的に測定する新しい方法を発明した。
【0012】
具体的には、本発明は以下を提供する。
[1] 下記A液及びB液を含有する、試料中のL-アスパラギンを測定するためのキット:
(A液)アスパラギン酸トランスアミナーゼ、グルタミナーゼ、L-グルタミン酸オキシダーゼ、カタラーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、及びα-ケトグルタル酸を含む液;
(B液)アスパラギナーゼ、ペルオキシダーゼ、及びカタラーゼ失活剤を含む液;
ただし、A液及びB液は、いずれか一方がカプラー化合物を含み、他方が新トリンダー試薬を含む。
[2] A液がさらにアスコルビン酸オキシダーゼを含む、1に記載のキット。
[3] A液がカプラー化合物を含み、B液が新トリンダー試薬を含み、A液がさらにピリドキサールリン酸を含む、1又は2に記載のキット。
[4] カプラー化合物が、4-アミノアンチピリンである、1~3のいずれか1項に記載のキット。
[5] 新トリンダー試薬が、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン・ナトリウム塩(TOOS)、又はN-エチル-N-スルホプロピルアニリン(ALPS)である、1~4のいずれか1項に記載のキット。
[6] L-アスパラギン標準溶液をさらに含む、1~5のいずれか1項に記載のキット。
[7] 生じた色素の量を測定するためのLED光源を用いた装置を含む、1~6のいずれか1項に記載のキット。
[8] 下記工程1及び工程2を含む、L-アスパラギン酸、L-グルタミン、L-グルタミン酸、アスコルビン酸、及びエリソルビン酸からなる群より選択されるいずれかを含んでいてもよい試料中の、L-アスパラギンを測定する方法:
(工程1)容器内で、L-アスパラギン酸にアスパラギン酸トランスアミナーゼ及びα-ケトグルタル酸を作用させてL-グルタミン酸を生成させ、L-グルタミンにグルタミナーゼを作用させてL-グルタミン酸を生成させ、L-グルタミン酸にグルタミン酸オキシダーゼを作用させてα-ケトグルタル酸を生成させるとともに生成された過酸化水素にカタラーゼを作用させて分解し、アスコルビン酸又はエリソルビン酸にアスコルビン酸オキシダーゼを作用させてアスコルビン酸又はエリソルビン酸を分解する工程;
(工程2)(工程1)に続いて同じ容器内で行われる工程であって、該カタラーゼに、カタラーゼ失活剤を作用させてカタラーゼを失活させ、かつL-アスパラギンにアスパラギナーゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、α-ケトグルタル酸、L-グルタミン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、カプラー化合物及び新トリンダー試薬を作用させて色素を形成させる工程。
[9] 工程1及び工程2が、25~40℃で行われる、8に記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアスパラギンの測定方法及びキットは、試料中のアスパラギンにアスパラギナーゼを作用させる前にL-グルタミンをL-グルタミン酸に変換して除去するため、アスパラギナーゼの低い特異性にもかかわらず、試料に共存するL-グルタミンの影響を排除してL-アスパラギンを特異的に測定できる。
【0014】
本発明のアスパラギンの測定方法及びキットは、同一容器内で連続して反応を行うものであり、またエンドポイント法であるため、L-アスパラギンを簡便に精度よく測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のL―アスパラギン(L-Asn)測定原理図(A液による工程1及びB液 による工程2の両方における酵素サイクリング法の応用)
図2】吸光度のタイムコース
図3】L-アスパラギンの濃度と555nmの吸光度との関係
図4】グルタミナーゼ無添加のA液を使用した場合の、L-アスパラギンの発色度 (100%)に対する各アミノ酸の発色度%
図5】L-グルタミン分解のためのグルタミナーゼを添加したA液を使用した場合 の、L-アスパラギンの発色度(100%)に対する各アミノ酸の発色度%
図6】L-アスパラギン酸の影響
図7】L-グルタミン酸の影響
図8】L-グルタミンの影響
図9】アスコルビン酸の影響
【発明を実施するための形態】
【0016】
(A液、B液)
本発明は、下記A液及びB液を含有する、試料中のL-アスパラギンを測定するためのキットを提供する:
(A液)アスパラギン酸トランスアミナーゼ、グルタミナーゼ、L-グルタミン酸オキシダーゼ、カタラーゼ、及びα-ケトグルタル酸を含む液
(B液)アスパラギナーゼ、ペルオキシダーゼ、及びカタラーゼ失活剤を含む液
ただし、A液及びB液は、いずれか一方がカプラー化合物を含み、他方が新トリンダー試薬を含む。好ましい態様の一つは、A液がカプラー化合物を含み、B液が新トリンダー試薬を含む。これにより溶液の安定性がより良くなる。
【0017】
本発明のキットは、L-アスパラギン酸、L-グルタミン、及びL-グルタミン酸からなる群より選択されるいずれかを含んでいてもよい試料中の、L-アスパラギンを測定するために用いることができる。A液は、さらにアスコルビン酸オキシダーゼを含んでいてもよく、このようなキットは、アスコルビン酸又はエリソルビン酸を含む試料中のL-アスパラギンを測定するために用いることができる。
【0018】
(酵素)
本発明には、酵素として、公知の、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、グルタミナーゼ、L-グルタミン酸オキシダーゼ、カタラーゼ、アスパラギナーセ、ペルオキシダーゼ、及びアスコルビン酸オキシダーゼを使用することができる。
【0019】
具体的には、本発明に使用するアスパラギン酸トランスアミナーゼの例として、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Corynebacterium glutamicum、Mycobacterium tuberculosis、Pseudomonas auruginosa、Pseudomonas putida、Thermus thermophilus、Saccharomyces cerevisiae、Saccharolobus solfataricus、Aspergillus oryzae、Streptomyces griseusなどの微生物由来のアスパラギン酸トランスアミナーゼを挙げることができる。好ましい例の一つは、Escherichia coli K12 MG1655株由来の遺伝子(遺伝子番号:b0928)を挿入して構築したプラスミッドを用いた組換え大腸菌によって発現し、イオン交換樹脂カラム及びゲル濾過樹脂カラム等によって精製したものである。
【0020】
以下に、大腸菌K-12 MG1655株由来アスパラギン酸トランスアミナーゼのアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)及び遺伝子の塩基配列(SEQ ID NO:2)を順に記載する。
【0021】
【化1】
【0022】
【化2】
【0023】
本発明に使用するアスパラギナーゼの例として、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Proteus vulgaris、Pseudomonas auruginosa、Thermus thermophilus、Saccharomyces cerevisiae、Aspergillus oryzae、Aspergillus niger、 Streptomyces fradiaeなどの微生物由来のアスパラギナーゼを挙げることができる。好ましい例の一つは、細菌由来のアスパラギナーゼ(EC 3.5.1.1)である。特に好ましい例として、市販のアスパラギナーゼである、Novozymes社製Aspergillus oryzae由来の酵素液(商品名Acrylaway)を挙げることができる。
【0024】
本発明に使用するグルタミン酸オキシダーゼの例として、Streptomyces sp. X-119-6、Streptomyces violascens、及び Streptomyces endusなどの微生物由来のL-グルタミン酸オキシダーゼを挙げることができる。
【0025】
本発明に使用するグルタミナーゼの例として、Bacillus amyloriquefaciens由来のグルタミナーゼなどを挙げることができる。
【0026】
本発明に使用するカタラーゼとして、ウシ肝臓由来カタラーゼの他、Aspergillus nigerやCorynebacterium glutamicumなどの微生物由来のカタラーゼを挙げることができる。
【0027】
本発明に使用するペルオキシダーゼの例として、西洋わさび由来のペルオキシダーゼを挙げることができる。
【0028】
本発明に使用するアスコルビン酸オキシダーゼの例としては、キュウリ又はカボチャ由来のアスコルビン酸オキシダーゼを挙げることができる。
【0029】
(新トリンダー試薬)
本発明では、新トリンダー試薬として公知のものを使用することができる。本発明に使用する新トリンダー試薬の例としては、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン・ナトリウム塩(TOOS)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル-3-メトキシアニリン(ADOS)、N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5ジメトキシアニリン(HDAOS)、N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン(ADPS)、N-エチル-N-スルホプロピルアニリン(ALPS)、N-エチル-N-スルホプロピル-3-メチルアニリン(TOPS)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメチルアニリン(MAOS)、N-エチル-N-スルホプロピル-3,5-ジメトキシアニリン(DAPS)、N-(2-カルボキシエチル)-N-エチル-3,5-ジメトキシアニリン(CEDB)、N-(2-カルボキシエチル)-N-エチル-3-メトキシアニリン(CEMO)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5ジメトキシ-4-フルオロアニリン(FDAOS)、N-エチル-N-スルホプロピル-3,5ジメトキシ-4-フルオロアニリン(FDAPS)を挙げることができる。N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン・ナトリウム塩(TOOS)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル-3-メトキシアニリン(ADOS)、N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン(HDAOS)、N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン(ADPS)、N-エチル-N-スルホプロピルアニリン(ALPS)、N-エチル-N-スルホプロピル-3-メチルアニリン(TOPS)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメチルアニリン(MAOS)のいずれかを用いるのが好ましく、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン・ナトリウム塩(TOOS)を用いるのがより好ましい。
【0030】
(カプラー化合物)
本発明では、カプラー化合物として公知のものを使用することができる。本発明では、新トリンダー試薬との組み合わせで発色を生じる化合物として任意のものを用いればよく、例として、4-アミノアンチピリン(4-AA)、バニリンジアミンスルホン酸、メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)、スルホン化メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(SMBTH)、アミノジフェニルアミン-1-(4-スルホフェニル)-2,3-ジメチル-4-アミノ-5-ピラゾロン(CP2-4)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-m-トルイジン又はその誘導体を挙げることができる。4-アミノアンチピリン(4-AA)を用いるのが好ましい。
【0031】
(他の成分)
本発明のキットに含まれるA液は、酵素の安定化のために、トランスアミナーゼの補酵素であるピリドキサールリン酸をさらに含んでもよい。B液は防腐剤をさらに含んでもよい。防腐剤としては公知のものを使用することができる。例として、アジ化ナトリウム、プロクリン300、プロクリン950、クロラムフェニコールを挙げることができる。
【0032】
A液及びB液は、pH緩衝能を有する成分を含んでいてもよい。このような成分の例としては、酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酒石酸塩、Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン)、Hepes([2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸])を挙げることができる。
【0033】
(成分の含有量)
A液の各酵素及びカプラー化合物等の含有量は、アスパラギン酸トランスアミナーゼ0.1~10U/mL、グルタミナーゼ0.05~3U/mL、グルタミン酸オキシダーゼ0.1~2U/mL、カタラーゼ500~2,000U/mL、カプラー化合物0.1~2.0μmol/mLの範囲にあることが好ましく、特にアスパラギン酸トランスアミナーゼ0.5~2U/mL、グルタミナーゼ0.2~1U/mL、グルタミン酸オキシダーゼ0.4~1U/mL、カタラーゼ1000~1,500U/mL、カプラー化合物0.2~1.0μmol/mLの範囲にあることがより好ましい。α-ケトグルタル酸は1~6μmol/mLとすることができ、2~3μmol/mLが好ましい。ピリドキサールリン酸は0.005~0.05μmol/mLとすることができ、0.01~0.02μmol/mLが好ましい。アスコルビン酸オキシダーゼは5~30U/mLとすることができ、10~20U/mLであることが好ましい。
【0034】
B液における酵素、新トリンダー試薬、及びカタラーゼ失活剤の含有量は、アスパラギナーゼは2~20倍希釈、ペルオキシダーゼ5~20U/mL、新トリンダー試薬0.1~2.0μmol/mL、カタラーゼ失活剤0.01~0.09%の範囲にあることが好ましく、特にアスパラギナーゼは5~10倍希釈、ペルオキシダーゼ10~15U/mL、新トリンダー試薬0.2~1.0μmol/mL、カタラーゼ失活剤0.05~0.09%の範囲にあることが好ましい。
【0035】
(L-アスパラギン標準溶液)
本発明のキットは、上記A液及びB液のほかに、L-アスパラギン標準溶液を含んでいてもよい。L-アスパラギン標準溶液の濃度は、適宜とすることができるが、測定の際に検量線を作製するために系列希釈するとの観点からは、キットの測定上限前後の濃度であることが好ましい。具体的には、例えば100~200mg/mLとすることができ、100mg/mLにすることが好ましい。
【0036】
(キットの他の構成物)
本発明のキットはさらに、A液の採取用スポイト、B液の採取用スポイト、LEDを光源とする生じた色素の量を測定するための比色計、測定のためのプラスティック製セルを含んでいてもよい。
【0037】
(用途)
本発明の測定対象となる試料としては、L-アスパラギンを含有することが予想されるものであれば、特に限定されない。具体例として、農産物、酒やビールなどの酒類、食品原料、加工食品、細胞又は微生物等の培養液、血液、体液及び組織抽出物等の生体試料を挙げることができる。
【0038】
(工程)
本発明のキットによる試料中のL-アスパラギンを測定する反応は、下記工程1及び工程2を含む:
(工程1)容器内で、L-アスパラギン酸にアスパラギン酸トランスアミナーゼ及びα-ケトグルタル酸を作用させてL-グルタミン酸を生成させ、L-グルタミンにグルタミナーゼを作用させてL-グルタミン酸を生成させ、L-グルタミン酸にグルタミン酸オキシダーゼを作用させてα-ケトグルタル酸を生成させるとともに生成された過酸化水素にカタラーゼを作用させて分解し、アスコルビン酸又はエリソルビン酸にアスコルビン酸オキシダーゼを作用させてアスコルビン酸又はエリソルビン酸を分解する工程;
(工程2)(工程1)に続いて同じ容器内で行われる工程であって、該カタラーゼに、カタラーゼ失活剤を作用させてカタラーゼを失活させ、かつL-アスパラギンにアスパラギナーゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、α-ケトグルタル酸、L-グルタミン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、カプラー化合物及び新トリンダー試薬を作用させて色素を形成させる工程。
【0039】
本発明では、対象アミノ酸を測定するため、まず容器内の試料にA液を添加して工程1を実施する。これにより、試料中に共存するL-アスパラギン酸を、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、L-グルタミン酸オキシダーゼ及びカタラーゼによる酵素サイクリング法で除去し、同時に試料中に共存するL-グルタミンを、グルタミナーゼによりL-グルタミン酸とする。さらに同時に進行するL-グルタミン酸オキシダーゼ及びカタラーゼの反応により、元々試料中に共存するL-グルタミン酸、及びアスパラギン酸トランスアミナーゼ又はグルタミナーゼにより生成したL-グルタミン酸を分解し、かつ試料中のアスコルビン酸又はエリソルビン酸を、アスコルビン酸オキシダーゼにより分解する。
【0040】
なお、工程1では、試料中にL-アスパラギン酸が含まれない場合は、L-アスパラギン酸にアスパラギン酸トランスアミナーゼを作用させてL-グルタミン酸を生成させることは行われず、試料中にL-グルタミンが含まれない場合は、L-グルタミンにグルタミナーゼを作用させてL-グルタミン酸を生成させることは行われず、試料中にアスコルビン酸又はエリソルビン酸が含まれない場合は、アスコルビン酸又はエリソルビン酸にアスコルビン酸オキシダーゼを作用させてアスコルビン酸又はエリソルビン酸を分解することは行われない。
【0041】
本発明では、A液による反応が十分に進行した後、B液を添加することにより、工程2を実施する。工程2では、試料中の測定対象であるL-アスパラギンのみを、B液中のアスパラギナーゼによりL-アスパラギン酸とし、生じたL-アスパラギン酸を、A液から移行したアスパラギン酸トランスアミナーゼによりL-グルタミン酸とする。さらに生じたL-グルタミン酸を、A液から移行したL-グルタミン酸オキシダーゼにより分解し、過酸化水素を生じせしめ、該過酸化水素に発色剤及びペルオキシダーゼを反応させることにより、発色させる。この工程2では、A液から移行したカタラーゼは、B液に含まれているカタラーゼ失活剤により失活するので、カタラーゼによる発色反応の阻害は起きない。
【0042】
工程1及び2の反応条件は、それぞれ使用する酵素の至適pH及び酵素反応が効率的に進む温度に基づき、適宜設定すればよい。双方の工程はそれぞれ、温度25℃~40℃で、pH6.5~pH9.0、10分~30分で行うことができる。好ましい態様において、工程1及び2の少なくともいずれか一方の工程、好ましくは双方の工程は、25~40℃で行われる。
【0043】
工程2で生じた発色は、一般的な手法、例えばハロゲンランプ、キセノンランプ等の光源を用いた吸光度計により、特定波長の吸光度として測定できる。また、特定範囲の波長のLEDを光源とし、受光部にフォトトランジスター等を用いた比色計により、発色の程度を電気信号(例えば、電圧値)として測定できる。LEDを光源とする場合、発色を測定する光源の波長は、用いる発色剤の種類に応じて選択すればよい。例えば新トリンダー試薬としてTOOSを用いた場合、生じる色素の吸収極大は555nmであることから、光源として555nmの純緑色LEDが適している。測定値に基づき、予め測定した既知濃度のL-アスパラギンの測定値と比較して、試料中のL-アスパラギンの濃度を算出することができる。
【0044】
(特徴)
本発明においては、A液による工程1では、アスパラギン酸トランスアミナーゼとL-グルタミン酸オキシダーゼとの酵素サイクリング反応とカタラーゼ反応を共役させる。続く同一容器内でのB液による工程2では、カタラーゼ阻害剤の存在下、工程1で実施されたアスパラギン酸トランスアミナーゼとL-グルタミン酸オキシダーゼとの酵素サイクリング反応が再度実施され、これとパーオキシダーゼ及び発色剤による色素形成反応を共役させる。工程1と工程2で、複数の酵素の組み合わせによって、実質的には同時に起きる各酵素による逐次反応を応用したアミノ酸測定方法は、他に類を見ない。
【0045】
本発明の特徴の一つは、対象試料中のL-アスパラギン酸を除去するために、アスパラギン酸トランスアミナーゼとL-グルタミン酸オキシダーゼとの酵素サイクリング法を、最初の段階で行う点である。従来の、GABA、L-アスパラギン酸及びL-アラニンの各測定(特許文献4~6)においては、2段階目で酵素サイクリング法を行っている。しかし、本発明ではA液による工程1で酵素サイクリング法を行うことによって、試料中のL-アスパラギン酸から生じたL-グルタミン酸のみならず、元々試料中に共存していたL-グルタミン酸、及びL-グルタミンから生じたL-グルタミン酸を含む、容器中のすべてのL-グルタミン酸を、分解除去できる。
【0046】
本発明の他の特徴は、工程1(カタラーゼ存在下)及び工程2(カタラーゼ阻害剤存在下)の両方で、アスパラギン酸トランスアミナーゼとL-グルタミン酸オキシダーゼとの酵素サイクリング法を行う点である。工程1ではL-アスパラギン酸の除去のため、工程2では測定対象であるL-アスパラギンと等モルの過酸化水素を生成させるため、同一の酵素サイクリング法で行う。
【0047】
本発明の他の特徴は、A液にグルタミナーゼを含ませ、アスパラギナーゼの低い基質特異性の問題を解消している点である(図4図5参照)。グルタミナーゼを用いない場合は、アスパラギナーゼを含むB液の添加後の室温での反応中に、アスパラギナーゼが試料に共存するL-グルタミンにも作用してしまう。本発明では、試料中のL-アスパラギンの測定の前に、試料にA液を添加して試料中のL-グルタミンをL-グルタミン酸にして除去している。
【0048】
本発明の他の特徴の一つは、L-アスパラギン酸、L-グルタミン及びL-グルタミン酸が試料中に含まれていたとしても、L-アスパラギンだけを特異的に測定することができる点である。L-アスパラギン酸、L-グルタミン及びL-グルタミン酸と測定対象のL-アスパラギンは、タンパク質を構成するアミノ酸であり、食品や生体由来の試料には、程度の差こそあれ共存するものである。特に、L-グルタミンは、野菜や血液等に、普遍的に最も多量に存在するアミノ酸であり、NH3のキャリアとしてL-アスパラギンに類似するアミノ酸である。
【0049】
本発明の他の特徴は、酵素サイクリング法とカタラーゼ反応又はオキシダーゼ反応の共役により、いわゆるエンドポイント法によりL-アスパラギンの測定を行っている点である(図2参照)。すなわち、L-アスパラギンから生じるL-アスパラギン酸に対するKm値がそれほど低くないトランスアミナーゼを用いる場合であっても、L-アスパラギン酸とα-ケトグルタル酸を消費してL-グルタミン酸を生成する反応において、この生成したL-グルタミン酸がKm値が小さくかつ活性の高いL-グルタミン酸オキシダーゼによって速やかに酸化分解されることにより、トランスアミナーゼの反応がより効率的にL-グルタミン酸を生成する方向へ進行すると考えられる。
【0050】
また、L-グルタミン酸オキシダーゼの反応ではα-ケトグルタル酸が生成され、再びトランスアミナーゼの反応に利用される(図1参照)。そのため、最終的には、試料中の対象アミノ酸の全量が反応に用いられ、精度のよい測定結果が得られる。なお、酵素を用いたエンドポイントアッセイにおいて、エンドポイントに到達するまでの時間は、使用する酵素のKm値が小さく、Vmaxが大きいほど短くなるとことが知られている。一般に、トランスアミナーゼのKm値はエンドポイント法に好適であるKm値とはいえない。また、一般に、トランスアミナーゼの反応は可逆的である(酵素ハンドブック第3版、朝倉書店(2008)、第414頁、EC2.6.1.19参照)。そのため、トランスアミナーゼを用いて対象アミノ酸のエンドポイント測定を実施することは通常困難である。
【実施例
【0051】
(実施例1)キットの構成
L-アスパラギン測定キットのA液及びB液の組成例を表1に示す。なお、アスパラギナーゼとして、Novozymes社製Aspergillus oryzae由来の酵素液(商品名Acrylaway)を使用した。
【0052】
【表1】
【0053】
(実施例2)発色のタイムコース
本発明の測定キットは、L-アスパラギンから各種酵素反応によって最終的に色素を生成させる。同一容器内での逐次かつ同時反応により、L-アスパラギンから色素形成への転換反応が完全にエンドポイントに到達していることを確認するため、室温における発色のタイムコースを調べた。
【0054】
L-アスパラギンの濃度が100mg/Lの溶液を供試サンプルとして、以下のような手順に従って測定を実施した。まず、1cm角ディスポセルにL-アスパラギン溶液を0.05mL入れ、A液を0.5mL添加して室温で10分間放置後、B液を0.5mL添加して、室温における555nmの吸光度の変化を、吸光度表示タイプのLED比色計で測定した。
【0055】
図2に、吸光度のタイムコースを示す。反応開始後約9分以上で吸光度が一定になった。したがって、本発明によるL-アスパラギンの測定は、いわゆるエンドポイント法によることが示された。
【0056】
(実施例3)検量線
L-アスパラギンの濃度が12.5~200mg/Lの各濃度の溶液を供試サンプルとして検量線を作成した。なお、測定は、以下のような手順に従って実施した。まず、1cm角ディスポセルに各濃度のL-アスパラギン溶液を0.05mL入れ、A液を0.5mL添加して室温で10分間反応後、B液を0.5mL添加して、さらに室温で10分間反応させた。反応終了後、吸光度表示タイプのLED比色計で555nmの吸光度を測定した。また、ブランクとして水を検体として吸光度を測定した。検量線はブランクを引いた値で作成した。
【0057】
L-アスパラギンの濃度と555nmの吸光度との関係は、図3に示すように相関係数0.9996の直線となった。
【0058】
(実施例4)基質特異性の確認
既存のアスパラギナーゼはL-グルタミンにも比較的高い反応を示すことが分かっている。A液中に、L-グルタミン分解のためのグルタミナーゼを添加することにより、L-グルタミンに対する反応を除去して、L-アスパラギンだけを特異的に測定できるかどうかを確認した。
【0059】
測定は以下のような手順に従って実施した。まず、1cm角ディスポセルに20種類の各アミノ酸溶液(1mM)を、それぞれ0.05mL入れ、グルタミナーゼ無添加のA液又はグルタミナーゼを0.5U/mL含むA液を0.5mL添加して室温で10分間反応後、B液を0.5mL添加して、さらに10分間室温で反応させた。反応終了後、吸光度表示タイプのLED比色計で555nmの吸光度を測定し、ブランクとして水の吸光度を引いた値で、L-アスパラギンの発色度(100%)に対する各アミノ酸の発色度%を算出した。
【0060】
グルタミナーゼ無添加のA液を使用した場合は、L-グルタミンに18%程度の発色が見られたが、A液中にL-グルタミン分解のためのグルタミナーゼを添加することにより、ほぼ完全に副反応が除去された。また、他のアミノ酸の発色度はL-アスパラギンの発色に対して2%以下となり、L-アスパラギンの特異的な測定方法が確立された(図4図5)。
【0061】
実験方法を下記に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
この結果により、グルタミナーゼの添加効果を確認した。したがって、本発明は、食品等のL-グルタミンが含まれると想定される試料中のL-アスパラギンの測定に適用できる。
【0064】
(実施例5)共存するL-グルタミン、L-グルタミン酸、L-アスパラギン酸、アスコルビン酸の存在量による影響の確認
【0065】
実験方法を下表に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
図6~9に示すように、試料中にL-グルタミン、L-グルタミン酸、L-アスパラギン酸、アスコルビン酸が種々の濃度で共存している場合においても、L-アスパラギンの吸光度測定値は影響を受けないことが判明した。
【配列表フリーテキスト】
【0068】
SEQ ID NO:1 大腸菌K-12 MG1655株由来 アスパラギン酸トランスアミナーゼのアミノ酸配列
SEQ ID NO:2 大腸菌K-12 MG1655株由来 アスパラギン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子の塩基配列(SEQ ID NO:2)
【要約】
【課題】酵素を用いた食品等の試料中のL-アスパラギン測定方法を提供する。L-アスパラギンとL-グルタミン、L-グルタミン酸及びL-アスパラギン酸を分別して除去し、L-アスパラギンだけを測定できる方法を提供する。
【解決手段】下記A液及びB液を含有する、試料中のL-アスパラギンを測定するためのキットを提供する:(A液)アスパラギン酸トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミナーゼ、L-グルタミン酸オキシダーゼ、カタラーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、及びα-ケトグルタル酸を含む液;
(B液)アスパラギナーゼ、ペルオキシダーゼ、及びカタラーゼ失活剤を含む液;ただし、A液及びB液は、いずれか一方がカプラー化合物を含み、他方が新トリンダー試薬を含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
0007046408000001.app