(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20220328BHJP
G01C 21/32 20060101ALI20220328BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20220328BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G01C21/32
G09B29/10 A
G09B29/00 F
(21)【出願番号】P 2018243707
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】500578216
【氏名又は名称】株式会社ゼンリンデータコム
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小河原 正行
(72)【発明者】
【氏名】井上 彩子
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-126219(JP,A)
【文献】特開2017-117148(JP,A)
【文献】特開2012-226624(JP,A)
【文献】特開2010-282283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G09B 29/00
29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事故に関連する交差点の位置を示す情報と、前記事故に関連する交差点を含む道路区間を示す座標列からなる第1道路区間データとを取得する取得部と、
地図上に含まれる複数の道路区間の各々に割り当てられる複数のリンク識別子のうち、前記第1道路区間データに対応する1以上のリンク識別子を抽出する抽出部と、
前記抽出された1以上のリンク識別子から1つのリンク識別子を特定し、特定された1つのリンク識別子により示される道路区間の両端のノードのうち、前記事故に関連する交差点側のノードを特定する特定部と、
前記特定部で特定された1つのリンク識別子と、前記特定部で特定された事故に関連する交差点側のノードのノード識別子とが対応づけられて格納される事故データを出力する出力部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記抽出部で抽出されたリンク識別子が複数存在する場合、前記第1道路区間データの両端の座標のうち前記事故に関連する交差点の位置に最も近い座標を特定し、前記抽出部で抽出された複数のリンク識別子の各々に対応する道路区間の両端のノードうち、特定された前記座標に最も近いノードを有する道路区間のリンク識別子を、前記1つのリンク識別子として特定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記事故に関連する交差点の位置に最も近いノードを有する道路区間のリンク識別子が複数存在する場合、前記事故に関連する交差点の位置から道路区間に対して垂線を引くことができる道路区間のリンク識別子を、前記1つのリンク識別子として特定する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記特定部は、前記事故に関連する交差点の位置から道路区間に対して垂線を引くことができる道路区間のリンク識別子が複数存在する場合、該複数の道路区間のうち前記第1道路区間データから得られる方向との角度差が小さい道路区間のリンク識別子を、前記1つのリンク識別子として特定する、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
情報処理装置が、事故に関連する交差点の位置を示す情報と、前記事故に関連する交差点を含む道路区間を示す座標列からなる第1道路区間データとを取得するステップと、
情報処理装置が、地図上に含まれる複数の道路区間の各々に割り当てられる複数のリンク識別子のうち、前記第1道路区間データに対応する1以上のリンク識別子を抽出するステップと、
情報処理装置が、前記抽出された1以上のリンク識別子から1つのリンク識別子を特定し、特定された1つのリンク識別子により示される道路区間の両端のノードのうち、前記事故に関連する交差点側のノードを特定するステップと、
情報処理装置が、特定された1つのリンク識別子と、特定された事故に関連する交差点側のノードのノード識別子とが対応づけられて格納される事故データを出力するステップと、
を有する情報処理方法。
【請求項6】
情報処理装置に、
事故に関連する交差点の位置を示す情報と、前記事故に関連する交差点を含む道路区間を示す座標列からなる第1道路区間データとを取得するステップと、
地図上に含まれる複数の道路区間の各々に割り当てられる複数のリンク識別子のうち、前記第1道路区間データに対応する1以上のリンク識別子を抽出するステップと、
前記抽出された1以上のリンク識別子から1つのリンク識別子を特定し、特定された1つのリンク識別子により示される道路区間の両端のノードのうち、前記事故に関連する交差点側のノードを特定するステップと、
特定された1つのリンク識別子と、特定された事故に関連する交差点側のノードのノード識別子とが対応づけられて格納される事故データを出力するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーションシステムで用いられている地図データは、交差点や道路上の結節点といった点を示す「ノード」と、ノードとノードの間を結ぶ道路区間を示す「リンク」との組み合わせで構成されている。例えば特許文献1には、ノード及びリンクで表現される地図データが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、事故が多発する交差点について、当該交差点の場所と当該交差点において多発している事故の内容(例えば、左折時の巻き込み事故など)を示すデータが官庁や民間企業などから提供されている。また、このデータをナビゲーションシステムで利用することで、運転中のドライバーに注意喚起を行うことが検討されている。
【0005】
ここで、ナビゲーションシステムで用いられる地図データには、ノードやリンクなどに車両の移動に応じてドライバーに通知すべき情報が対応づけられて格納されており、ナビゲーション時は、案内ルート上にドライバーに通知すべき情報が存在する場合に、当該情報がドライバーへの注意喚起として画面やスピーカーから出力される。
【0006】
そのため、事故に関連する交差点にてドライバーへの注意喚起を行う場合、地図データのノードやリンクに、予め、事故に関連する交差点であることを示す情報と、ドライバーに通知すべき情報とを対応づけておく必要がある。
【0007】
しかしながら、上述した事故に関連する交差点の場所を示すデータは、必ずしも地図データにおけるリンクやノードと対応づけた状態で提供されるものではないことから、そのままナビゲーションシステムにて利用することができないという課題がある。
【0008】
本発明は、地図データに、事故に関連する交差点であることを示す情報を対応づけることを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、事故に関連する交差点の位置を示す情報と、事故に関連する交差点を含む道路区間を示す座標列からなる第1道路区間データとを取得する取得部と、地図上に含まれる複数の道路区間の各々に割り当てられる複数のリンク識別子のうち、第1道路区間データに対応する1以上のリンク識別子を抽出する抽出部と、抽出された1以上のリンク識別子から1つのリンク識別子を特定し、特定された1つのリンク識別子により示される道路区間の両端のノードのうち、事故に関連する交差点側のノードを特定する特定部と、特定部で特定された1つのリンク識別子と、特定部で特定された事故に関連する交差点側のノードのノード識別子とが対応づけられて格納される事故データを出力する出力部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地図データに、事故に関連する交差点であることを示す情報を対応づけることを可能にする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るナビゲーションシステムの一例を示す図である。
【
図2】マッチング前事故データとノード及びリンクとの関係を示す図である。
【
図3】マッチング装置及び端末のハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】マッチング装置の機能ブロック構成例を示す図である。
【
図6】マッチング装置が行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】マッチング前事故データの具体例を示す図である。
【
図8】マッチング後事故データの具体例を示す図である。
【
図13】端末が行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図15】端末がルート案内を行う処理を説明するための図である。
【
図16】注意喚起メッセージの出力例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0013】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係るナビゲーションシステム1の一例を示す図である。本ナビゲーションシステムは、マッチング装置10と、ナビゲーション機能を有する端末20とを含む。マッチング装置10と端末20とは、通信ネットワークNを介して相互に通信することができる。
【0014】
ここで、ナビゲーション機能で用いられる地図データは、交差点や道路上の結節点といった点を示す「ノード」と、ノードとノードの間を結ぶ道路区間を示す「リンク」との組み合わせで構成されている。地図データ内でノードを一意に識別するための識別子は、ノードIDと呼ばれる。また、地図データ内でリンクを一意に識別するための識別子は、リンクIDと呼ばれる。リンクの両端はノードであることから、リンクIDが特定されると、そのリンクの両端のノードIDも自動的に特定されることになる。
【0015】
マッチング装置10は、外部の装置等から提供される、事故が多発する交差点の場所と当該交差点において多発している事故の内容とを示すデータ(以下、「マッチング前事故データ」と言う。)を取得し、事故が多発する交差点の場所を、地図データにおけるノード及びリンクにマッチングさせたデータ(以下、「マッチング後事故データ」と言う。)を出力する情報処理装置である。
【0016】
端末20は、ナビゲーション機能を備えた車載ナビゲーション装置や、ナビゲーション機能を実現するアプリケーションがインストールされたスマートフォンなどの装置である。端末20は、ナビゲーション機能をそなえていればどのような情報処理装置であってもおい。
【0017】
以下の説明において、「地図データ」は、特に断りが無い限り、端末20がナビゲーション機能を動作させる際に利用する地図データを意味する。また、「ノード」及び「リンク」は、特に断りが無い限り、マッチング前事故データに含まれる交差点及び道路区間ではなく、地図データ内の交差点を示すノード及び道路区間であるリンクを意味するものとする。
【0018】
図2は、マッチング前事故データとノード及びリンクとの関係を示す図である。
図2に示す地図データは、リンクL10~リンクL33と、ノードN10~ノードN10から構成されている。リンクの両端はノードであり、例えば、リンクL12の両端は、ノードN10及びノードN11である。
【0019】
ここで、端末20が実行するナビゲーション機能では、ルート案内中にドライバーに通知するメッセージをリンクと対応づけて保持しておく。例えば、ノードN16からノードN17を通ってN18方向に向かうルート案内時において、ノードN17を通過する際に注意喚起を出力する場合、通知するメッセージをリンクL26に対応づけて保持しておく。同様に、ノードN18からノードN17を通ってN16方向に向かうルート案内時において、ノードN17を通過する際に注意喚起を出力する場合、通知するメッセージをリンクL28にメッセージを対応づけて保持しておく。
【0020】
また、本実施形態では、マッチング前事故データには、事故が多発している交差点の位置を示す情報(以下、「事故交差点データ(マッチング前)」と言う。)と、事故が多発している交差点を含む道路区間を示す情報(以下、「事故道路区間データ(マッチング前)」と言う。)とが含まれているものとする。また、事故交差点データ(マッチング前)は、緯度及び経度で示される座標データとして提供され、事故道路区間データ(マッチング前)は、緯度及び経度で示される座標を並べた座標列のデータとして提供される前提とする。また、事故交差点データ(マッチング前)の座標データが示す位置と、事故道路区間データ(マッチング前)の座標列データが示す位置とは完全に重なっているとは限られず、若干のずれがあり得る前提とする。
【0021】
図2において、マッチング前事故データに含まれる、事故が多発している交差点の座標データを地図データ上にプロットした地点を地点APとし、事故が多発している交差点を含む道路区間をプロットした区間を道路区間ALと仮定する。
図2に示すように、マッチング前事故データは、地図データのノード及びリンクに対応づけられたデータとして提供されるものではないことから、地図データ上のノード及びリンクの位置と完全に重なるとは限られず、若干のずれが生じる。また、
図2に示すように、地点APは、道路区間ALの真上に存在するとは限られず、若干のずれが生じる。
【0022】
また、新たな道路が建設された場合など、マッチング前事故データに含まれる道路区間と、地図データ上のリンクが一致しないケースもあり得る。例えば、
図2の例では、道路区間ALは、リンクL12とリンクL13の両方を含むような位置に存在している。このような例は、リンクL14に該当する道路が新たに建設される前にマッチング前事故データが提供されたような場合に生じ得る。
【0023】
本実施形態では、マッチング装置10は、事故道路区間データ(マッチング前)と地図データに含まれるリンクとをマッチングさせることで、当該道路区間に対応するリンクを特定する。また、事故交差点データ(マッチング前)と地図データに含まれるノードとをマッチングさせることで、当該交差点の位置に対応するノードを特定する。また、マッチング装置10は、特定したノード及びリンクと事故の内容を示す情報とを対応づけることで、マッチング後事故データを生成し、端末20に渡す。
【0024】
また、端末20は、マッチング装置10からマッチング後事故データを受け取り、受け取ったマッチング後事故データに含まれるノードを端点に持つ全てのリンクを特定し、特定した全てのリンクに事故の内容を示す情報を対応づけたデータ(以下、「事故案内データ」と言う)を生成する。端末20は、ナビゲーション機能にてルート案内を行う際、生成した事故案内データに従って、ドライバーに注意喚起を行う。
【0025】
<ハードウェア構成>
図3は、マッチング装置10及び端末20のハードウェア構成例を示す図である。マッチング装置10及び端末20は、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置12、有線又は無線通信を行う通信IF(Interface)13、入力操作を受け付ける入力デバイス14、及び情報の出力を行う出力デバイス15を有する。入力デバイス14は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス及び/又はマイク等である。出力デバイス15は、例えば、ディスプレイ及び/又はスピーカー等である。
【0026】
<機能ブロック構成>
図4は、マッチング装置10の機能ブロック構成例を示す図である。マッチング装置10は、記憶部101と、取得部102と、抽出部103と、特定部104と、出力部105とを含む。取得部102と、抽出部103と、特定部104と、出力部105とは、マッチング装置10のCPU11が、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。また、記憶部101は、マッチング装置10が備える記憶装置12を用いて実現することができる。
【0027】
記憶部101は、地図上におけるリンクの位置を示す座標列のデータとリンクIDとが対応づけられたデータベースと、ノードIDとノードの座標とリンクの両端のノードとが対応づけられたデータベースとを含む、リンク/ノードDBを記憶する。また、記憶部101は、取得部102が取得したマッチング前事故データと、出力部105が出力するマッチング後事故データとを記憶する。
【0028】
取得部102は、例えば外部の装置から、事故交差点データ(マッチング前)と、事故道路区間データ(マッチング前)とを含む、マッチング前事故データを取得する機能を有する。事故道路区間データ(マッチング前)は、第1道路区間データと称されてもよい。取得部102は、取得したマッチング前事故データを記憶部101に格納する。
【0029】
抽出部103は、地図データに含まれる複数のリンクの各々に割り当てられる複数のリンクID(リンク識別子)のうち、事故道路区間データ(マッチング前)に対応する(マッチする)1以上のリンクIDを抽出する機能を有する。
【0030】
特定部104は、抽出部103により抽出された1以上のリンクIDから1つのリンクIDを特定し、特定した1つのリンク識別子により示されるリンクの両端のノードのうち、事故が多発する交差点側のノードのノードIDを特定する機能を有する。
【0031】
出力部105は、特定部104で特定された1つのリンクIDと、特定部104で特定された事故が多発する交差点側のノードのノードIDと、事故の内容とを対応づけたマッチング後事故データを出力する機能を有する。
【0032】
図5は、端末20の機能ブロック構成例を示す図である。端末20は、記憶部201と、取得部202と、特定部203と、出力部204とを含む。取得部202と、特定部203と、出力部204とは、端末20のCPU11が、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。また、記憶部201は、端末20が備える記憶装置12を用いて実現することができる。
【0033】
記憶部201は、地図データと、事故案内データとを記憶する。地図データには、地図データに含まれる複数のリンクのリンクIDと、各リンクの両端に割り当てられるノードIDとが対応づけて格納されるデータ(リンク情報)が含まれる。
【0034】
取得部202は、マッチング装置10から、事故が多発する交差点を含む地図上の道路区間を示すリンクID(第1リンク識別子)と、当該リンクID(第1リンク識別子)により示されるリンクの両端のノードのうち、事故が多発する交差点側のノードを示すノードIDと事故の内容とが対応づけられて格納される、マッチング後事故データを取得する機能を有する。
【0035】
特定部203は、マッチング後事故データからリンクIDとノードIDとを取得し、取得したノードIDを端点とし、取得したリンクIDに対応するリンクとは異なる他のリンクを示すリンクID(第2リンク識別子)を、地図データを用いて特定する機能を有する。また、特定部203は、他のリンクを示すリンクIDを特定した後、事故案内データを生成して記憶部201に格納する。
【0036】
出力部204は、ナビゲーション機能によりルート案内を行う際、事故案内データを読出し、案内ルート上に、事故案内データに含まれるリンクID(上述の他のリンクIDを含む)に対応するリンクが存在する場合、存在するリンクの両端のノードうち事故が多発する交差点側のノードIDに対応する交差点を通過する際に、事故の内容に応じた注意喚起メッセージを出力する機能を有する。
【0037】
<処理手順(マッチング装置10)>
図6は、マッチング装置10が行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0038】
ステップS100で、取得部102は、外部の装置から、マッチング前事故データを取得して記憶部101に格納する。ここで、マッチング前事故データの具体例を
図7に示す。「事故多発交差点(緯度、経度)」は、事故が多発している交差点の位置を示す座標データが格納される。「道路区間データ」には、事故が多発している交差点を含む道路区間を示す座標列が格納される。「事故内容」には、その交差点で多発する事故の内容を示す情報が格納される。具体的には、事故発生時の車両の進行方向(右折時、左折時、直進時のいずれか)と、事故の詳細(追突事故、車どうしの出会い頭事故、巻き込み事故、右直事故、歩行者又は自転車との衝突事故など)が含まれる。
【0039】
ステップS101で、抽出部103は、マッチング前事故データに含まれる、事故道路区間データ(マッチング前)に対応する1以上のリンクのリンクIDを抽出する。抽出部103は、例えば、緯度及び経度で示される座標を並べた座標列のデータを入力することで、地図データに含まれる複数のリンクのうち、当該座標列に対応する(マッチする)と推定される1以上のリンクのリンクIDを出力する、マッチング処理API(Application Programming Interface)を用いて実現されてもよい。当該マッチング処理APIは、マッチング装置10が備えているものとしてもよいし、マッチング装置10に接続された外部のサーバ等により提供されるものとしてもよい。マッチング処理APIは、例えば、座標列に含まれる各座標とリンクと間の距離の合計が所定の閾値以下であるリンクを、座標列に対応するリンクと推定するものであってもよい。なお、マッチング処理APIは、座標列に対応するリンクが複数存在する場合、複数のリンクIDを出力する。例えば
図2の例において、道路区間ALの座標列に対応するリンクがリンクL12及びリンクL13の2つであった場合、マッチング処理APIは、リンクL12及びリンクL13の2つを出力する。
【0040】
ステップS102で、特定部104は、ステップS101の処理手順にて1つのリンクが抽出された場合、抽出されたリンクを事故道路区間データ(マッチング前)に対応するリンクとして特定する。また、ステップS101の処理手順にて複数のリンクが抽出された場合、特定部104は、所定の特定ロジック(後述)に従って事故道路区間データ(マッチング前)に対応するリンクを1つ特定する。
【0041】
ステップS103で、特定部104は、特定した1つのリンクの両端のノードのうち、事故が多発する交差点側のノードを特定する。
【0042】
ステップS104で、特定部104は、マッチング前事故データに含まれる全ての事故道路区間データ(マッチング前)について、ステップS101~ステップS103の処理手順を繰り返すことで、マッチング後事故データを生成する。
【0043】
図8にマッチング後事故データの具体例を示す。「リンクID」には、ステップS102で特定されたリンクのリンクIDが格納される。「事故交差点側ノードID」には、ステップS103で特定されたノードのノードIDが格納される。「事故内容」には、マッチング前事故データに含まれる事故内容がそのまま格納される。すなわち、ステップS101~ステップS103の処理手順が繰り返されることで、
図7に示すマッチング前事故データの「事故多発交差点」、「道路区間データ」及び「事故内容」は、それぞれ、
図8に示すマッチング後事故データの「ノードID」、「リンクID」及び「事故内容」に変換されることになる。
【0044】
続いて、ステップS102及びステップS103にて、特定部104が、事故道路区間データ(マッチング前)に対応する1つのリンク及び事故交差点データ(マッチング前)に対応するノードを特定する際の処理手順の具体例を説明する。
【0045】
(具体例その1)
図9は、具体例その1を説明するための図である。具体例その1は、ステップS101の処理手順で1つのリンクが抽出された場合に、事故交差点データ(マッチング前)に対応するノードを特定する際の例を示す。
図9において、道路区間ALEは、事故道路区間データ(マッチング前)を示し、リンクLEは、抽出された1つのリンクを示す。
【0046】
特定部104は、特定された1つのリンクIDにより示されるリンクの両端のノードN1及びノードN2のうち、事故交差点データ(マッチング前)が示す交差点の位置側のノードを、事故交差点データ(マッチング前)に対応するノードとして特定する。例えば、事故交差点データ(マッチング前)が地点A1を示す場合、特定部104は、ノードN2を、事故交差点データ(マッチング前)に対応するノードとして特定する。また、例えば、事故交差点データ(マッチング前)が地点A2を示す場合、特定部104は、ノードN1を、事故交差点データ(マッチング前)に対応するノードとして特定する。
【0047】
(具体例その2)
図10は、具体例その2を説明するための図である。具体例その2は、ステップS101の処理手順で2つのリンクが抽出された場合に、事故道路区間データ(マッチング前)に対応する1つのリンクと、事故交差点データ(マッチング前)に対応するノードを特定する際の例を示す。
図10において、道路区間ALEは、事故道路区間データ(マッチング前)を示し、リンクLE1及びリンクLE2は、抽出された2つのリンクを示す。
【0048】
まず、特定部104は、事故道路区間データ(マッチング前)の両端の座標のうち、事故交差点データ(マッチング前)が示す位置に最も近い座標を特定する。次に、特定部104は、特定された1つの座標と最も近いノードを有するリンクを、事故道路区間データ(マッチング前)に対応する1つのリンクとして特定する。事故交差点データ(マッチング前)に対応するノードを特定する方法は、具体例その1と同一であるので説明は省略する。
【0049】
例えば、事故交差点データ(マッチング前)が地点A1を示す場合、特定部104は、道路区間ALEの両端の座標のうち事故交差点データ(マッチング前)が示す位置に最も近い座標PEを特定し、座標PEに最も近いノードN3を有するリンクLE2を、事故道路区間データ(マッチング前)に対応する1つのリンクとして特定する。また、特定部104は、リンクLE2の両端のノードN2及びノードN3のうち、地点A1に近いノードN3を、事故交差点データ(マッチング前)に対応するノードとして特定する。
【0050】
例えば、事故交差点データ(マッチング前)が地点A2を示す場合、特定部104は、道路区間ALEの両端の座標のうち事故交差点データ(マッチング前)が示す位置に最も近い座標PSを特定し、座標PSに最も近いノードN1を有するリンクLE1を、事故道路区間データ(マッチング前)に対応する1つのリンクとして特定する。また、特定部104は、リンクLE1の両端のノードN1及びノードN2のうち、地点A2に近いノードN1を、事故交差点データ(マッチング前)に対応するノードとして特定する。
【0051】
例えば、事故交差点データ(マッチング前)が地点A3を示す場合、特定部104は、道路区間ALEの両端の座標のうち事故交差点データ(マッチング前)が示す位置に最も近い座標PSを特定し、座標PSに最も近いノードN1を有するリンクLE1を、事故道路区間データ(マッチング前)に対応する1つのリンクとして特定する。また、特定部104は、リンクLE1の両端のノードN1及びノードN2のうち、地点A3に近いノードN2を、事故交差点データ(マッチング前)に対応するノードとして特定する。
【0052】
(具体例その3)
図11は、具体例その3を説明するための図である。具体例その3は、ステップS101の処理手順で2つのリンクが抽出された場合に、事故道路区間データ(マッチング前)に対応する1つのリンクと、事故交差点データ(マッチング前)に対応するノードを特定する際の例を示す。特に言及しない点は
図9及び
図10と同一でよい。
【0053】
まず、特定部104は、道路区間ALEの両端の座標のうち、事故交差点データ(マッチング前)が示す地点Aに最も近い座標PEを特定する。ここで、
図11の場合、座標PEに最も近いノードN2を有するリンクは、リンクLE1とリンクLE2の2つである。この場合、特定部104は、事故交差点データ(マッチング前)が示す地点から垂線を引くことができるリンクを、事故道路区間データ(マッチング前)に対応する1つのリンクとして特定する。
図11の例では、地点Aから垂線Mを引くことができるリンクはリンクLE1である。従って、特定部104は、リンクLE1を、事故道路区間データ(マッチング前)に対応する1つのリンクとして特定する。続いて、特定部104は、リンクLE1の両端のノードN1及びノードN2のうち、ノードN2を、事故交差点データ(マッチング前)に対応するノードとして特定する。なお、リンクに垂線を引くことができるか否かは、垂線の足の座標を算出し、当該座標がリンク(線分)上に存在するか否かで判定することができる。
【0054】
(具体例その4)
図12は、具体例その4を説明するための図である。具体例その4は、ステップS101の処理手順で2つのリンクが抽出された場合に、事故道路区間データ(マッチング前)に対応する1つのリンクと、事故交差点データ(マッチング前)に対応するノードを特定する際の例を示す。特に言及しない点は
図9~
図11と同一でよい。
【0055】
まず、特定部104は、道路区間ALEの両端の座標のうち、事故交差点データ(マッチング前)が示す地点Aに最も近い座標PEを特定する。
図12の場合、座標PEに最も近いノードN2を有するリンクは、リンクLE1とリンクLE2の2つである。この場合、特定部104は、事故交差点データ(マッチング前)が示す地点から垂線を引くことができるリンクを、事故道路区間データ(マッチング前)に対応する1つのリンクとして特定する。
【0056】
ここで、
図12の例では、地点AからリンクLE1及びリンクLE2の両方に向かって、それぞれ垂線M及び垂線Nを引くことができる。この場合、特定部104は、複数のリンクのうち事故道路区間データ(マッチング前)から得られる方向(例えば、座標列に直線を当てはめた場合の直線の方向)との角度差が小さいリンクを、事故道路区間データ(マッチング前)に対応する1つのリンクとして特定する。
図12の例では、道路区間ALEとリンクLE1との角度差はほぼ0度であるが、道路区間ALEとリンクLE2との角度差は45度程度である。従って特定部104は、リンクLE1を、事故道路区間データ(マッチング前)に対応する1つのリンクとして特定する。続いて、特定部104は、リンクLE1の両端のノードN1及びノードN2のうち、ノードN2を、事故交差点データ(マッチング前)に対応するノードとして特定する。
【0057】
<処理手順(端末20)>
図13は、端末20が行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0058】
ステップS200で、端末20の取得部202は、マッチング装置10からマッチング後事故データを取得する。
【0059】
ステップS201で、特定部203は、マッチング後事故データからノードIDと、当該ノードIDに対応づけられるリンクIDを1つ取得する。続いて、地図データを参照することで、取得したノードIDのノードを端点とし、取得したリンクIDに対応するリンク以外の他のリンクのリンクIDを特定する。
【0060】
図2、
図8を用いて具体例を説明する。地図データには
図2に示すリンク及びノードが存在する前提とする。まず、特定部203は、
図8に示すマッチング後事故データから、ノードN12と、ノードN12に対応づけられるリンクL13とを取得する。続いて、特定部203は、地図データを参照し、ノードN12を端点とするリンクのうち、リンクL13以外のリンクのリンクIDを特定する。
図2の例では、ノードN12を端点とするリンクのうちリンクL13以外のリンクは、リンクL15、リンクL19及びリンクL29である。従って、特定部203は、取得したリンクIDに対応するリンク以外の他のリンクのリンクIDとして、リンクL15、リンクL19及びリンクL29を特定する。
図13に戻り説明を続ける。
【0061】
ステップS202で、特定部203は、マッチング後事故データに含まれる全てのレコードのノードID及びリンクIDに対してステップS201の処理手順を繰り返し行い、マッチング後事故データに含まれるノードID及びリンクIDのセットと事故の内容と、ステップS201の処理手順で特定した他のリンクIDとを対応づけて記録することで、事故案内データを生成する。
【0062】
図14に、生成された事故案内データの具体例を示す。「リンクID」には、マッチング後事故データに含まれるリンクIDと、ステップS201の処理手順で特定された他のリンクIDとが格納される。「事故交差点側ノードID」及び「事故内容」には、マッチング後事故データに含まれる事故交差点側ノードID及び事故内容がそのまま格納される。例えば事故内容の進行方向には、直進時に生じた事故、右折時に生じた事故、又は、左折時に生じた事故なのかを示す情報が含まれている。
【0063】
端末20の出力部204は、ルート案内をする際、事故案内データを参照し、案内ルート上に、事故案内データに含まれるリンクを通るルートが存在するか否かを確認する。事故案内データに含まれるリンクを通るルートが存在する場合、当該リンクに対応する事故交差点側ノードIDで示される交差点を通過する際に、当該リンクに対応する事故内容に従って、ドライバーに注意喚起メッセージを出力する。
【0064】
例えば、出力部204は、事故の内容が直進時に生じた事故である場合、案内ルートにおいてノードIDに対応する交差点を直進する場合に、事故の内容に応じた注意喚起メッセージを出力し、右折又は左折時については注意喚起メッセージを出力しない。また、出力部204は、事故の内容が右折時に生じた事故である場合、案内ルートにおいてノードIDに対応する交差点を右折する場合に、事故の内容に応じた注意喚起メッセージを出力し、直進又は左折時については注意喚起メッセージを出力しない。また、出力部204は、事故の内容が左折時に生じた事故である場合、案内ルートにおいてノードIDに対応する交差点を左折する場合に、事故の内容に応じた注意喚起メッセージを出力し、右折又は直進時については注意喚起メッセージを出力しない。
【0065】
図15は、端末20がルート案内を行う処理を説明するための図である。例えば、事故案内データのリンクID、事故交差点側ノードID及び事故データには、それぞれ、「リンクL102、リンクL103、リンクL104及びリンクL105」、「ノードN101」及び「左折時、歩行者及び自転車の巻き込み事故」のデータが格納されていると仮定する。また、案内ルートは、リンクL101、リンクL102、L104の順に設定されているものとする。
【0066】
この場合、案内ルート上に、事故案内データに含まれるリンクL102及びリンクL104が含まれており、案内ルートで最初に出会うリンクL102の両端のノードのうち事故交差点側のノードはノードN101であり、かつ、事故内容が左折時であることから、出力部204は、車両がリンクL102を通ってノードN101を左折する際に、“歩行者及び自転車の巻き込み事故”に注意すべき注意喚起メッセージを出力する。
【0067】
図16に注意喚起メッセージの出力例を示す。出力部204は、案内ルート上に、事故案内データに含まれるリンク(第1リンク識別子又は第2リンク識別子)が存在する場合、ルート案内を開始する際にメッセージM1(第1注意喚起メッセージ)を出力し、案内ルート上において当該リンクに対応する事故交差点側ノードIDの交差点から所定の距離前の地点(例えば300m手前など)を通過する際にメッセージM2(第2注意喚起メッセージ)を出力し、案内ルート上において当該リンクに対応する事故交差点側ノードIDの交差点を通過する際にメッセージM3(第3注意喚起メッセージ)を出力するようにしてもよい。また、注意喚起メッセージは、画面への表示のみならず、スピーカーから音声として出力されてもよい。
【0068】
<まとめ>
以上、本実施形態について説明した。本実施形態によれば、外部装置などからマッチング前事故データを取得し、マッチング前事故データに含まれる事故道路区間データ(マッチング前)や事故交差点データ(マッチング前)と地図データのリンク及びノードとマッチングさせることで、ナビゲーション機能に利用する地図データに、事故が多発する交差点であることを示す情報を対応づけることが可能になる。また、ルート案内中に、事故に関連する交差点につながる任意のリンクを通る際、ドライバーに対して注意喚起を行うことが可能になる。
【0069】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…ナビゲーションシステム、10…マッチング装置、11…CPU、12…記憶装置、13…通信IF、14…入力デバイス、15…出力デバイス、20…端末、101…記憶部、102…取得部、103…抽出部、104…特定部、105…出力部、201…記憶部、202…取得部、203…特定部、204…出力部