(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタおよびクリーニング用のコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220328BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20220328BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 401
B41J2/165 203
B41J2/165 505
B41J2/175 501
B41J2/165 303
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2019114545
(22)【出願日】2019-06-20
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019058324
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】森園 和也
(72)【発明者】
【氏名】澤田 哲平
(72)【発明者】
【氏名】新井 章文
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-079573(JP,A)
【文献】特開2003-154686(JP,A)
【文献】特開2019-025910(JP,A)
【文献】特開2017-065179(JP,A)
【文献】特開2011-156753(JP,A)
【文献】特開2005-001322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを備えたノズル面を有するインクヘッドと、
前記ノズルを覆うように前記ノズル面に装着可能であって、前記ノズル面に装着されたときに前記ノズル面と接触可能な端部を有するキャップ、前記キャップに接続された吸引装置、および、前記ノズル面に対して前記キャップを装着させたり、離間させたりするキャッピング機構を有するキャップユニットと、
前記キャップの前記端部が前記ノズル面に接触しており、かつ、前記吸引装置によって前記ノズル内のインクが吸引されるときの前記キャップの位置である吸引位置、前記キャップの前記端部が前記ノズル面から離間しており、かつ、前記吸引装置によって前記ノズル内のインクが吸引されないときの前記キャップの位置である空吸引位置、および、前記吸引位置と前記空吸引位置との間に位置する微小開放位置を予め記憶している記憶装置と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記キャップを前記吸引位置に配置した状態で、前記ノズルからインクを吸引する吸引処理と、
前記吸引処理の後、前記キャップを前記微小開放位置に向かって移動させる移動処理と、
前記移動処理の後、前記キャップを前記微小開放位置に配置した状態で、前記キャップの移動を停止させる微小開放位置処理と、
を実行するように構成され
、
前記微小開放位置は、前記キャップの前記端部の一部が前記ノズル面に接触し、かつ、前記端部の他の一部が前記ノズル面から離れているときの前記キャップの位置である、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記キャップユニットの前記キャッピング機構は、前記ノズル面に対して前記キャップを傾けて移動させるように構成された、請求項
1に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項3】
インクを吐出するノズルを備えたノズル面を有するインクヘッドと、
前記ノズルを覆うように前記ノズル面に装着可能であって、前記ノズル面に装着されたときに前記ノズル面と接触可能な端部を有するキャップ、前記キャップに接続された吸引装置、および、前記ノズル面に対して前記キャップを装着させたり、離間させたりするキャッピング機構を有するキャップユニットと、
前記キャップの前記端部が前記ノズル面に接触しており、かつ、前記吸引装置によって前記ノズル内のインクが吸引されるときの前記キャップの位置である吸引位置、前記キャップの前記端部が前記ノズル面から離間しており、かつ、前記吸引装置によって前記ノズル内のインクが吸引されないときの前記キャップの位置である空吸引位置、および、前記吸引位置と前記空吸引位置との間に位置する微小開放位置を予め記憶している記憶装置と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記キャップを前記吸引位置に配置した状態で、前記ノズルからインクを吸引する吸引処理と、
前記吸引処理の後、前記キャップを前記微小開放位置に向かって移動させる移動処理と、
前記移動処理の後、前記キャップを前記微小開放位置に配置した状態で、前記キャップの移動を停止させる微小開放位置処理と、
前記微小開放位置処理の後、前記キャップを前記空吸引位置に向かって移動させる他の移動処理と、
前記他の移動処理の後、前記キャップを前記空吸引位置に配置した状態で、前記吸引装置を駆動させる空吸引処理と、
を実行するように構成され
、
前記移動処理における前記キャップの単位時間当たりの移動量は、第1移動量であり、
前記他の移動処理における前記キャップの単位時間当たりの移動量は、前記第1移動量よりも多い第2移動量である、インクジェットプリンタ。
【請求項4】
インクを吐出するノズルを備えたノズル面を有するインクヘッドと、
インクが貯留されるインクタンクと、
前記インクタンクと前記ノズルとを連通させるインク供給路と、
前記インク供給路内の圧力を検出する圧力検出機構と、
前記ノズルを覆うように前記ノズル面に装着可能であって、前記ノズル面に装着されたときに前記ノズル面と接触可能な端部を有するキャップ、前記キャップに接続された吸引装置、および、前記ノズル面に対して前記キャップを装着させたり、離間させたりするキャッピング機構を有するキャップユニットと、
前記キャップの前記端部が前記ノズル面に接触しており、かつ、前記吸引装置によって前記ノズル内のインクが吸引されるときの前記キャップの位置である吸引位置、前記キャップの前記端部が前記ノズル面から離間しており、かつ、前記吸引装置によって前記ノズル内のインクが吸引されないときの前記キャップの位置である空吸引位置、および、前記吸引位置と前記空吸引位置との間に位置する微小開放位置を予め記憶している記憶装置と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記キャップを前記吸引位置に配置した状態で、前記ノズルからインクを吸引する吸引処理と、
前記吸引処理の後、前記キャップを前記微小開放位置に向かって移動させる移動処理と、
前記移動処理の後、前記キャップを前記微小開放位置に配置した状態で、前記キャップの移動を停止させる微小開放位置処理と、
前記微小開放位置を決定する微小開放位置決定処理と、
を実行するように構成され
、
前記微小開放位置決定処理には、
前記キャップが前記ノズル面に装着されている状態において、前記ノズル面に対して前記キャップが離間する方向に前記キャップを移動させる離間移動処理と、
前記離間移動処理が実行されている間、前記インク供給路内の圧力である離間検出圧力を検出し、前記離間検出圧力が所定の判定圧力より大きいか否かを判定する離間圧力判定処理と、
前記離間圧力判定処理において前記離間検出圧力が前記判定圧力より大きいと最初に判定されたときにおける、前記ノズル面に対する前記キャップの位置を前記微小開放位置として前記記憶装置に記憶する位置記憶処理と、
が含まれる、インクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記微小開放位置決定処理には、
前記キャップが前記ノズル面に装着されていない状態において、前記ノズル面に前記キャップが装着される方向に前記キャップを移動させる接近移動処理と、
前記接近移動処理が実行されている間、前記インク供給路内の圧力である接近検出圧力を検出し、前記接近検出圧力が前記判定圧力以下であるか否かを判定する接近圧力判定処理と、
が含まれ、
前記離間移動処理では、前記接近圧力判定処理において前記接近検出圧力が前記判定圧力以下であると最初に判定されたとき、前記ノズル面に対して前記キャップが離間する方向に前記キャップを移動させる、請求項
4に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記インク供給路に配置されたダンパーを備え、
前記ダンパーは、
一部に形成された開口を有し、前記インク供給路と連通した貯留室と、
前記貯留室の前記開口を覆うダンパー膜と、
を備え、
前記圧力検出機構は、前記貯留室内の圧力を検出する、請求項
4または5に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記ダンパーは、
前記ダンパー膜に設けられた押圧体と、
前記ダンパー膜よりも前記貯留室とは反対側に設けられ、前記押圧体の移動に伴って位置が変更されるフィラーと、
を有し、
前記圧力検出機構は、前記フィラーが所定の範囲内に移動したか否かを検出し、前記所定の範囲内に前記フィラーが位置していないとき、前記貯留室内の圧力が前記判定圧力よりも大きいことを検出するように構成されたフィラーセンサであり、
前記離間圧力判定処理では、前記フィラーセンサによって前記フィラーが前記所定の範囲内に位置しているか否かを判定し、
前記位置記憶処理では、前記離間圧力判定処理において前記フィラーが前記所定の範囲内に位置していないと最初に判定されたときにおける、前記ノズル面に対する前記キャップの位置を前記微小開放位置として前記記憶装置に記憶する、請求項
6に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記キャップの前記端部のうち最も上方に位置する前記端部を最上端としたとき、
前記空吸引位置における前記キャップの前記最上端と前記ノズル面との距離は、第1距離であり、
前記微小開放位置における前記キャップの前記最上端と前記ノズル面との距離は、前記第1距離の1/10以下の第2距離である、請求項1
から7までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記制御装置は、前記移動処理を実行しているとき、前記吸引装置を停止するように構成された、請求項1
から8までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記制御装置は、前記微小開放位置処理を実行しているとき、前記吸引装置を駆動するように構成された、請求項1から
9までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項11】
前記制御装置は、前記微小開放位置処理を実行しているとき、所定の時間、前記キャップを前記微小開放位置に配置させ続けるように構成された、請求項1から
10までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項12】
前記キャップユニットは、前記キャップ内に配置された吸収体を有し、
前記微小開放位置において、前記吸収体は前記ノズル面から離間して配置されている、請求項1から
11までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項13】
ワイパーと、
前記ワイパーを支持し、前記ワイパーを前記ノズル面に接触させたり、前記ノズル面から離間させたりするワイピング機構と、
を備え、
前記制御装置は、少なくとも前記微小開放位置処理の後に、前記ワイパーによって前記ノズル面をワイピングするワイピング処理を実行するように構成された、請求項1から
12までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項14】
前記インクヘッドの前記ノズル面は、前記インクと異なる他のインクを吐出する他のノズルを備え、
前記キャップは、前記ノズルおよび前記他のノズルを覆うように前記ノズル面に装着可能である、請求項1から
13までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項15】
請求項1から
14までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタにおいて、前記吸引処理、前記移動処理および前記微小開放位置処理を少なくともコンピュータに実現させるためのクリーニング用のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタおよびクリーニング用のコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、インクを吐出するノズルを有するインクヘッドを備えたインクジェットプリンタが開示されている。上記インクジェットプリンタでは、ノズルの吐出性能を維持するために、キャップユニットが設けられている。キャップユニットは、印刷待機時に、インクヘッドのノズルが形成されたノズル面に装着されるキャップと、キャップに接続された吸引ポンプとを備えている。
【0003】
ノズル面にキャップが装着されることで、ノズル面とキャップとの間に密閉空間が形成される。この密閉空間が形成された状態で吸引ポンプを駆動させることで、インクヘッド内に残留したインクをキャップに排出することができる。このように、インクヘッド内のインクを排出するための吸引の処理を吸引処理という。
【0004】
また、吸引処理の後に、キャップ内に残留したインクを排出するために、ノズル面とキャップとを離間させて、密閉空間を大気圧に開放した状態で再度吸引ポンプを駆動させることが行われている。このことで、インクヘッドに過度な負圧を掛けることなく、キャップ内のインクを排出することができる。このキャップ内のインクを排出するための吸引の処理を空吸引処理という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記インクジェットプリンタにおいて、吸引処理の後において、負圧調整処理が行われることがあり得る。負圧調整処理とは、ノズル面にキャップが装着されている状態で、所定の時間の間、吸引ポンプを停止させる処理である。キャップ内のインクには、ノズル面に付着した埃などが混在することがあり得る。そのため、この負圧調整処理が行われる時間が長いほど、キャップ内のインクであって、埃などが混在したインクがノズル内に逆流するおそれがあった。また、空吸引処理を実行する前に、ノズル面とキャップとが離間するようにキャップがノズル面から取り外される。このようにキャップが取り外される際に、キャップの内部と、キャップの外部との間で圧力差が生じることで、キャップ内のインクが飛散することがあった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクヘッドのノズルにキャップ内のインクが入り込み難く、かつ、キャップ内のインクが飛散し難いインクジェットプリンタおよびクリーニング用のコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェットプリンタは、インクヘッドと、キャップユニットと、記憶装置と、制御装置とを備えている。前記インクヘッドは、インクを吐出するノズルを備えたノズル面を有する。前記キャップユニットは、キャップ、吸引装置、および、キャッピング機構を有する。前記キャップは、前記ノズルを覆うように前記ノズル面に装着可能であって、前記ノズル面に装着されたときに前記ノズル面と接触可能な端部を有する。前記吸引装置は、前記キャップに接続されている。前記キャッピング機構は、前記ノズル面に対して前記キャップを装着させたり、離間させたりする。前記記憶装置は、吸引位置、空吸引位置、および、微小開放位置を予め記憶している。前記吸引位置は、前記キャップの前記端部が前記ノズル面に接触しており、かつ、前記吸引装置によって前記ノズル内のインクが吸引されるときの前記キャップの位置である。前記空吸引位置は、前記キャップの前記端部が前記ノズル面から離間しており、かつ、前記吸引装置によって前記ノズル内のインクが吸引されないときの前記キャップの位置である。前記微小開放位置は、前記吸引位置と前記空吸引位置との間に位置する。前記制御装置は、吸引処理と、移動処理と、微小開放位置処理とを実行するように構成されている。前記吸引処理では、前記キャップを前記吸引位置に配置した状態で、前記ノズルからインクを吸引する。前記移動処理では、前記吸引処理の後、前記キャップを前記微小開放位置に向かって移動させる。前記微小開放位置処理では、前記移動処理の後、前記キャップを前記微小開放位置に配置した状態で、前記キャップの移動を停止させる。
【0009】
本発明に係る他のインクジェットプリンタは、インクヘッドと、キャップユニットと、記憶装置と、制御装置とを備えている。前記インクヘッドは、インクを吐出するノズルを備えたノズル面を有する。前記キャップユニットは、キャップ、吸引装置、および、キャッピング機構を有する。前記キャップは、前記ノズルを覆うように前記ノズル面に装着可能であって、前記ノズル面に装着されたときに前記ノズル面と接触可能な端部を有する。前記吸引装置は、前記キャップに接続されている。前記キャッピング機構は、前記ノズル面に対して前記キャップを装着させたり、離間させたりする。前記記憶装置は、吸引位置、空吸引位置、および、微小開放位置を予め記憶している。前記吸引位置は、前記キャップの前記端部が前記ノズル面に接触しており、かつ、前記吸引装置によって前記ノズル内のインクが吸引されるときの前記キャップの位置である。前記空吸引位置は、前記キャップの前記端部が前記ノズル面から離間しており、かつ、前記吸引装置によって前記ノズル内のインクが吸引されないときの前記キャップの位置である。前記微小開放位置は、前記吸引位置と前記空吸引位置との間に位置する。前記制御装置は、吸引処理と、移動処理と、微小開放位置処理とを実行するように構成されている。前記吸引処理では、前記キャップを前記吸引位置に配置した状態で、前記ノズルからインクを吸引する。前記移動処理では、前記吸引処理の後、前記キャップを前記微小開放位置に向かって移動させる。前記微小開放位置処理では、前記移動処理の後、前記キャップを前記微小開放位置に配置した状態で、前記キャップの移動を停止させ、かつ、前記吸引装置を停止する。
【0010】
上記各インクジェットプリンタによれば、吸引処理の後に、上述のような負圧調整処理が実行されず、微小開放位置処理が実行される。吸引処理のときに吸引装置が駆動することで、キャップ内が負圧になる。キャップ内が負圧の状態で、移動処理によってキャップが微小開放位置に移動し、微小開放位置処理が実行される。微小開放位置処理が実行される直後では、キャップ内は負圧であるため、キャップ内のインクが吸引される。このように、上記各インクジェットプリンタでは、負圧調整処理が実行されずに、キャップ内のインクが吸引される微小開放位置処理が実行される。よって、負圧調整処理に要する時間を短縮することができるため、キャップ内のインクがノズルに入り込む可能性がある時間を短縮することができる。したがって、ノズルにキャップ内のインクを入り込み難くすることができる。また、上記各インクジェットプリンタによれば、微小開放位置処理のときのキャップの位置である微小開放位置は、空吸引位置と比較して、キャップの端部がノズル面に接近している位置である。よって、ノズル面とキャップとの間の隙間を比較的に小さくすることができるため、キャップ内のインクが外部に飛散し難くすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インクヘッドのノズルにキャップ内のインクが入り込み難く、かつ、キャップ内のインクが飛散し難いインクジェットプリンタおよびクリーニング用のコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るインクジェットプリンタの正面図である。
【
図2】キャリッジの下面の構成を模式的に示す図である。
【
図3】インクヘッドとインク供給システムとの関係を示す概念図である。
【
図4】第1インクヘッドに係る2つのインク供給システムの構成を示す模式図である。
【
図5】ダンパーの平面図であり、貯留室の圧力が所定の判定圧力以下の状態を示す図である。
【
図6】ダンパーの平面断面図であり、貯留室の圧力が所定の判定圧力より大きい状態を示す図である。
【
図7】インクヘッドおよびキャップユニットの正面図である。
【
図8】インクヘッドおよびキャップユニットの正面図である。
【
図9】キャップとノズル面との位置関係を示す正面図であり、空吸引位置を示す図である。
【
図10】キャップとノズル面との位置関係を示す正面図であり、微小開放位置を示す図である。
【
図11】キャップとノズル面との位置関係を示す正面図であり、吸引位置を示す図である。
【
図12】インクヘッドおよびワイパーユニットの正面図である。
【
図13】インクジェットプリンタのブロック図である。
【
図14A】空吸引位置を決定する手順を示したフローチャートである。
【
図14B】空吸引位置を決定する手順を示したフローチャートである。
【
図15】クリーニングの手順を示したフローチャートである。
【
図16】クリーニングの各処理におけるキャップの位置、キャップの端部および吸収体とノズル面との接触、キャップ内の圧力、吸引ポンプの駆動、ならびに、第1、2移動処理におけるキャップの単位時間当たりの移動量について示した図である。
【
図17】他の実施形態に係るキャップを示す正面図であり、
図10相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るインクジェットプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタという。)100の正面図である。以下の説明において、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、プリンタ100を正面から見たときの前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。主走査方向Yは、後述のインクヘッド41~44の移動方向である。図面中の符号Xは副走査方向を示している。本実施形態では、副走査方向Xは、前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交する方向である。副走査方向Xは、後述する媒体5の搬送方向である。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ100の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0015】
プリンタ100は、インクジェット式のプリンタである。プリンタ100は、媒体5に対して印刷を行うものである。媒体5は例えばロール状の記録紙である。しかしながら、媒体5は、ロール状の記録紙に限定されず、シート状の記録紙であってもよいし、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。
【0016】
図1に示すように、プリンタ100は、プリンタ本体11と、プラテン13と、搬送機構20と、ガイドレール15と、キャリッジ17と、ヘッド移動機構30と、インクヘッド41~44(
図2参照)と、インク供給システム61~68(
図3参照)と、クリーニングシステム90(
図7参照)と、記憶装置150と、制御装置160とを備えている。
【0017】
プリンタ本体11は、主走査方向Yに延びたケーシングを有している。プラテン13は、媒体5を支持する。プラテン13には、媒体5が載置される。プラテン13上において印刷が行われる。プラテン13は、主走査方向Yに延びたものである。
【0018】
プラテン13に支持された媒体5は、搬送機構20によって副走査方向Xに搬送される。搬送機構20の構成は特に限定されない。本実施形態では、搬送機構20は、ピンチローラ21と、グリットローラ22と、フィードモータ23とを備えている。ピンチローラ21は、プラテン13の上方かつキャリッジ17よりも後方に設けられ、媒体5を上から押さえ付ける。グリットローラ22は、プラテン13に設けられた円筒状の部材である。ここでは、グリットローラ22は、その上面部を露出させた状態でプラテン13に埋設されている。グリットローラ22は、ピンチローラ21と対向している。ここでは、グリットローラ22には、フィードモータ23が接続されている。ピンチローラ21とグリットローラ22との間に媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ23が駆動すると、グリットローラ22が回転する。このことで、媒体5は副走査方向Xに搬送される。
【0019】
ガイドレール15は、プラテン13の上方に配置されている。ガイドレール15は、プラテン13と平行に配置され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール15には、キャリッジ17が係合している。キャリッジ17は、ガイドレール15に摺動可能に設けられている。
【0020】
ヘッド移動機構30は、キャリッジ17およびインクヘッド41~44(
図2参照)を主走査方向Yに移動させる機構である。なお、ヘッド移動機構30の構成は特に限定されない。本実施形態では、ヘッド移動機構30は、左右のプーリ31a、31bと、ベルト32と、キャリッジモータ33とを備えている。左のプーリ31aは、ガイドレール15の左端部に設けられている。右のプーリ31bは、ガイドレール15の右端部に設けられている。ベルト32は、無端状のベルトであり、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ17が取り付けられている。ここでは、右のプーリ31bには、キャリッジモータ33が接続されている。キャリッジモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が走行する。このことで、キャリッジ17およびインクヘッド41~44は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動する。
【0021】
図2は、キャリッジ17の下面の構成を模式的に示す図である。
図2に示すように、インクヘッド41~44は、キャリッジ17に設けられている。インクヘッド41~44は、その下面を露出するように、キャリッジ17に保持されている。以下の説明では、インクヘッド41~44のことを、それぞれ第1~第4インクヘッド41~44と適宜称することがあり得る。インクヘッド41~44は、インクを吐出するものである。インクヘッド41~44は、主走査方向Yに並んで配置されている。本実施形態では、例えば第1インクヘッド41が本発明のインクヘッドの一例である。
【0022】
インクヘッド41~44は、それぞれノズル面45を有している。ノズル面45は、インクヘッド41~44の下面にそれぞれ形成されている。第1インクヘッド41のノズル面45には、複数のノズル51が副走査方向Xに並んで形成され、かつ、複数のノズル52が副走査方向Xに並んで形成されている。同様に、第2インクヘッド42のノズル面45には、複数のノズル53が副走査方向Xに並んで形成され、かつ、複数のノズル54が副走査方向Xに並んで形成されている。第3インクヘッド43のノズル面45には、複数のノズル55が副走査方向Xに並んで形成され、かつ、複数のノズル56が副走査方向Xに並んで形成されている。また、第4インクヘッド44のノズル面45には、複数のノズル57が副走査方向Xに並んで形成され、かつ、複数のノズル58が副走査方向Xに並んで形成されている。ここでは、複数のノズル51~58の列のことを、それぞれノズル列51a~58aと称する。インクヘッド41~44は、それぞれ2つのノズル列を有している。本実施形態では、例えばノズル51が本発明のノズルに対応し、ノズル52が本発明の他のノズルに対応している。
【0023】
図3は、インクヘッド41~44と、インク供給システム61~68との関係を示す概念図である。
図3に示すように、インク供給システム61~68は、インクヘッド41~44にインクを供給するシステムである。インク供給システム61~68は、ノズル列51a~58aごとに設けられている。本実施形態では、ノズル列の数は「8」であるため、インク供給システムの数も「8」である。ノズル列51a~58aを構成するノズル51~58には、それぞれインク供給システム61~68が接続されている。ここでは、インク供給システム61~68は、いずれも同じ構成を有している。そこで、以下では、第1インクヘッド41に係るインク供給システム61および62について説明し、その他のインク供給システム63~68についての説明は、省略または簡略化する。ただし、インク供給システム61~68において、一部のインク供給システム61~68の構成は、他のインク供給システム61~68の構成と異なっていてもよい。
【0024】
図4は、第1インクヘッド41に係るインク供給システム61および62の構成を示す模式図である。
図4に示すように、インク供給システム61は、第1インクタンク71aと、第1インク供給路72aと、第1送液ポンプ73aと、第1ダンパー74aとを備えている。インク供給システム62は、第2インクタンク71bと、第2インク供給路72bと、第2送液ポンプ73bと、第2ダンパー74bとを備えている。
【0025】
第1インクタンク71aは、インクが貯留された容器である。第1インクタンク71aには、例えばプロセスカラーインクおよび特色インク(例えばホワイトインク、クリアインクなど)のうちの1つのインクが貯留されている。ただし、第1インクタンク71aに貯留されるインクの色は特に限定されない。また、インクの材料も何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、上記インクは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インクなどであってもよい。
【0026】
第1インク供給路72aは、第1インクタンク71aと第1インクヘッド41とを接続する流路である。第1インク供給路72aの一端は、第1ダンパー74aを介して第1インクヘッド41に接続されている。詳しくは、第1インク供給路72aの一端は、ノズル列51aを構成するノズル51に接続され、ノズル51と連通している。第1インク供給路72aの他端は、第1インクタンク71aに接続されている。第1ノズル列51aを構成する複数のノズル51からは、第1インクタンク71aに貯留されたインクが吐出される。なお、第1インク供給路72aの材質は特に限定されない。第1インク供給路72aは、例えば可撓性のチューブなどによって構成されている。
【0027】
第1送液ポンプ73aは、第1インク供給路72aに設けられている。第1送液ポンプ73aは、第1インクタンク71aに貯留されたインクをノズル列51aのノズル51に供給すると共に、第1インクヘッド41からのインクの吐出に適した圧力に調整するためのポンプである。第1送液ポンプ73aは、駆動時には、第1インクタンク71aからノズル列51aのノズル51に向かってインクを送液する。第1送液ポンプ73aの種類は特に限定されないが、例えば、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプなどである。
【0028】
第1ダンパー74aは、インクの圧力変動を緩和して、第1インクヘッド41のインクの吐出動作を安定させるものである。第1ダンパー74aは、第1ダンパー74aに流入するインクの流量(言い換えると、第1ダンパー74a内の圧力)を検出する。そして、インクの流量の検出結果に基づいて、第1送液ポンプ73aが制御される。
図4に示すように、第1ダンパー74aは、第1インクヘッド41に接続されている。ここでは、第1ダンパー74aは、第1インクヘッド41の上部に設けられている。なお、第1ダンパー74aの構成は特に限定されない。
【0029】
図5は、ダンパー74aおよび74bの平面図であり、貯留室82の圧力が所定の判定圧力以下の状態を示す図である。
図6は、ダンパー74aおよび74bの平面断面図であり、貯留室82の圧力が所定の判定圧力より大きい状態を示す図である。本実施形態では、
図5に示すように、第1ダンパー74aは、ダンパー本体81と、貯留室82と、ダンパー膜83と、検出機構84とを備えている。
【0030】
ダンパー本体81は中空のものである。貯留室82は、ダンパー本体81内に形成されており、一部に形成された開口を有している。貯留室82には、インクが一時的に貯留される。貯留室82は、第1インク供給路72a(
図4参照)および第1インクヘッド41(
図4参照)と連通している。本実施形態では、ダンパー本体81の上部には、第1インク供給路72aが接続された流入口85aが形成され、ダンパー本体81の下部には、第1インクヘッド41に接続された流出口85b(
図4参照)が形成されている。ただし、流入口85aおよび流出口85bの形成位置は特に限定されない。本実施形態では、第1ダンパー74aは、印刷時に流入口85aから貯留室82に流入したインクが流出口85bを通じて第1インクヘッド41へ流れるように構成されている。
【0031】
図5に示すように、ダンパー膜83は、貯留室82の開口部分を覆うようにダンパー本体81に設けられている。ここでは、ダンパー膜83とダンパー本体81によって囲まれた空間が貯留室82である。ダンパー膜83は、例えば可撓性を有する樹脂製のフィルムによって構成されている。ダンパー膜83は、貯留室82内のインクの貯留量や、貯留室82内の圧力に基づいて、
図5および
図6に示すように、貯留室82の内側および外側に変形可能である。ダンパー膜83は、貯留室82の内側および外側にそれぞれ撓むことができる程度の張力で、ダンパー本体81に取り付けられている。
【0032】
本実施形態では、
図5に示すように、貯留室82には、バネ85が設けられている。バネ85は、圧縮された状態で貯留室82に配置されており、ダンパー膜83に向かって弾性力を付与する。ここでは、バネ85は、ダンパー膜83の貯留室82側の面に接続されている。なお、バネ85の種類は特に限定されず、例えば、バネ85はコイルバネである。
【0033】
検出機構84は、貯留室82内の圧力を検出する機構である。ここでは、検出機構84は、貯留室82内の圧力を検出することで、第1インク供給路72a(
図4参照)内の圧力を間接的に検出する。なお、検出機構84の構成は特に限定されない。本実施形態では、検出機構84は、押圧体86と、フィラー87と、フィラーセンサ88とを備えている。押圧体86は、ダンパー膜83に設けられている。本実施形態では、押圧体86は、ダンパー膜83の貯留室82側の面に設けられている。押圧体86は、バネ85に支持されており、ダンパー膜83の撓みと共に、貯留室82の内側および外側に移動可能である。
【0034】
フィラー87は、ダンパー膜83または押圧体86と接触可能にダンパー本体81に設けられている。本実施形態では、ダンパー本体81には、支持バネ89が設けられおり、フィラー87は、支持バネ89に支持されている。フィラー87の形状は特に限定されない。ここでは、フィラー87は、略コの字状に形成されている。詳しくは、フィラー87は、押圧体86の右方において、前後方向に延びた接触部87aと、接触部87aの後部から左方に延びた支持部87bと、接触部87aの前部から左方に延びた被検出部87cとを有している。接触部87aは、ダンパー膜83または押圧体86に接触する。支持部87bは、支持バネ89に支持されている。被検出部87cは、フィラーセンサ88によって検出される部位である。
【0035】
フィラーセンサ88は、フィラー87の位置を検出することによって、貯留室82内の圧力を検出する。フィラーセンサ88は、貯留室82内の圧力を検出することで、第1インク供給路72aの圧力を間接的に検出する。ここでは、第1ダンパー74aのフィラーセンサ88は、本発明の圧力検出機構の一例である。本実施形態では、フィラーセンサ88は、非接触式のセンサであるが、接触式のセンサであってもよい。本実施形態では、フィラーセンサ88は、一対の検出部88aを有している。
図5に示すように、一対の検出部88aの間に、フィラー87の被検出部87cが位置しているとき、フィラーセンサ88は、貯留室82の圧力が所定の判定圧力以下であることを検出する。
【0036】
図6に示すように、貯留室82の圧力が大きくなるにしたがって、ダンパー膜83が貯留室82の外側に撓む。このとき、押圧体86によって、フィラー87が貯留室82の外側に押されることで、フィラー87は、接触部87aと支持部87bとの間に位置する軸87dを軸にして回転する。そして、貯留室82の圧力が所定の判定圧力より大きくなったとき、フィラー87の被検出部87cがフィラーセンサ88の一対の検出部88aの間から外れた位置に移動する。フィラーセンサ88は、一対の検出部88aの間に、フィラー87の被検出部87cが位置していないとき、貯留室82の圧力が所定の判定圧力よりも大きいことを検出する。なお、本実施形態では、第1ダンパー74aにおける一対の検出部88aの間の範囲は、本発明の所定の範囲に対応する。
【0037】
本実施形態では、
図5に示すように、フィラーセンサ88の一対の検出部88aの間に、フィラー87の被検出部87cが位置しているとき、すなわち、貯留室82の圧力が所定の判定圧力以下のとき、「フィラー87がヒットしている」という。一方、
図6に示すように、フィラーセンサ88の一対の検出部88aの間に、フィラー87の被検出部87cが位置していないとき、すなわち、貯留室82の圧力が所定の判定圧力よりも大きいとき、「フィラー87がアンヒットしている」という。
【0038】
図4に示すように、インク供給システム62は、インク供給システム61と同様の構成を有している。インク供給システム62において、第2インクタンク71bと、第2インク供給路72bと、第2送液ポンプ73bと、第2ダンパー74bとは、それぞれインク供給システム61の第1インクタンク71aと、第1インク供給路72aと、第1送液ポンプ73aと、第1ダンパー74aと同じ構成である。
【0039】
ここでは、第2インクタンク71bには、第1インクタンク71aに貯留されたインクとは異なるインクが貯留されている。ここで、「異なるインク」とは、インクの成分が異なることである。例えば「異なるインク」とは、インクの色が異なることである。ただし、色が同じであっても、インクの成分が異なる場合には、それらのインクは「異なるインク」である。本実施形態では、ノズル51とノズル52から、それぞれ異なるインクが吐出される。しかしながら、ノズル51およびノズル52から、同じインクが吐出されてもよい。第2インクタンク71bに貯留されたインクは、本発明の他のインクの一例である。
【0040】
詳細な説明は省略するが、
図3に示すように、第2インクヘッド42に係る2つのインク供給システム63および64、第3インクヘッド43に係る2つのインク供給システム65および66、第4インクヘッド44に係る2つのインク供給システム67および68も、インク供給システム61と同じ構成を備えている。これらのインク供給システム61~68で供給されるインクは、全て異なるインクであってもよく、一部が同じインクであってもよい。
【0041】
図7、
図8は、それぞれインクヘッド41~44およびキャップユニット110の正面図である。
図7は、インクヘッド41~44が第2位置P2に位置しているときの図である。
図8は、インクヘッド41~44が第1位置P1に位置しているときの図である。
図9、
図10、
図11は、キャップ111~114とノズル面45との位置関係を示す正面図である。
図12は、インクヘッド41~44およびワイパーユニット140の正面図である。
【0042】
次に、クリーニングシステム90について説明する。クリーニングシステム90は、
図7および
図12に示すように、インクヘッド41~44をクリーニングするシステムである。クリーニングシステム90は、キャップユニット110と、ワイパーユニット140とを備えている。
【0043】
図7に示すように、キャップユニット110は、第1~第4キャップ111~114と、ベース115と、バネ116(
図9参照)と、キャッピング機構120と、第1~第4吸引ポンプ131~134とを有している。
図8に示すように、キャップ111~114は、それぞれインクヘッド41~44のノズル面45に装着可能に構成されている。ここで、「装着」とは、底面視においてノズル51~58がキャップ111~114に囲まれている状態、言い換えるとキャップ111~114の後述する端部118(
図9参照)が環状にノズル面45に接触している状態のことをいう。「装着」とは、キャップ111~114の端部118の上端の全体がノズル面45に接触しており、キャップ111~114の端部118とノズル面45との間に隙間が形成されていない状態のことをいう。キャップ111~114は、それぞれノズル51~58(
図2参照)を覆うものである。例えば第1キャップ111は、第1インクヘッド41のノズル面45に形成された複数のノズル51、および、複数のノズル52を覆うものである。
【0044】
本実施形態では、キャップ111~114は、同じ構成を有している。そのため、ここではキャップ111の構成について説明し、キャップ112~114の構成の説明は省略する。
図9に示すように、キャップ111は、中空の部材である。キャップ111は、上部に形成された開口117と、開口117を囲む端部118とを有している。端部118は、キャップ111の上部を構成している。
図11に示すように、キャップ111がノズル面45に装着される際、端部118はノズル面45と接触する。なお、キャップ111を形成する材料の種類は特に限定されない。キャップ111の少なくともノズル面45と接触する部分(ここでは端部118)は、例えばゴムなどによって形成されている。
【0045】
本実施形態では、キャップユニット110は、吸収体119を有している。吸収体119は、キャップ111~114内に配置されている。ここでは、吸収体119は、キャップ111~114の底面に載置されている。吸収体119は、キャップ111~114内のインクを吸収するものである。本実施形態では、吸収体119は、キャップ111~114内に収容されており、吸収体119の上端は、端部118の上端よりも下方に位置する。そのため、ノズル面45にキャップ111~114が装着されているとき、吸収体119は、ノズル面45に接触しない。吸収体119の具体的な種類は特に限定されない。吸収体119は例えばスポンジである。なお、
図7、
図8では、吸収体119の図示は省略されている。
【0046】
図8に示すように、ガイドレール15の右端部分には、印刷待機時に、インクヘッド41~44が待機する位置である第1位置P1が設定されている。この第1位置P1とは、いわゆるホームポジションのことである。この第1位置P1にインクヘッド41~44が位置しているとき、インクヘッド41~44のノズル面45には、それぞれキャップ111~114が装着される。
【0047】
図7に示すように、キャップ111~114は、ベース115に支持されている。ベース115は、キャップ111~114の下方に配置されている。なお、ベース115の形状は特に限定されないが、ここでは板状の部材である。本実施形態では、
図9に示すように、キャップ111とベース115との間には、バネ116が設けられている。図示は省略するが、キャップ112~114とベース115とのそれぞれの間にも、バネ116が設けられている。なお、バネ116の数は特に限定されないが、本実施形態では、1つのキャップ111~114につき2つである。
図7、
図8においてバネ116は省略されている。バネ116は、ベース115からキャップ111に向かって弾性力を付勢するように設けられている。
【0048】
本実施形態では、
図9に示すように、キャップ111がノズル面45に装着されていないとき、すなわちキャップ111がノズル面45から離間しているとき、キャップ111はノズル面45に対して斜めに傾けて配置されている。換言すると、キャップ111がノズル面45から離間しているとき、キャップ111の端部118の上端面は、傾斜している。ここでは、
図10に示すように、端部118の一部がノズル面45に接触しているときも、キャップ111はノズル面45に対して斜めに傾けて配置されている。ここで、「離間」とは、キャップ111~114の端部118がノズル面45に完全に接触していない状態のことをいう。「離間」とは、キャップ111~114の端部118とノズル面45との間に、全体に亘って隙間が形成されている状態のことをいう。
【0049】
以下の説明では、キャップ111の端部118のうち最も上方に位置する端部118を最上端118a(
図10参照)という。本実施形態では、キャップ111がノズル面45に接触する際には、
図10に示すように、端部118の最上端118aから接触する。そして、キャップ111がさらに上昇すると、最上端118aがノズル面45に押し付けられるため、右側のバネ116が縮み、キャップ111は水平方向に配置されるように傾く。そして、
図11に示すように、キャップ111がノズル面45に装着されているとき、キャップ111は略水平に配置された状態となる。このような構成は、キャップ112~114も同様である。
【0050】
図7および
図8に示すように、キャッピング機構120は、インクヘッド41~44のノズル面45に対して、それぞれキャップ111~114を装着させたり、離間させたりするものである。ここでは、キャッピング機構120は、キャップ111~114を昇降させる機構である。
図9および
図10に示すように、キャッピング機構120は、ノズル面45に対してキャップ111~114を傾けて移動させるように構成されている。本実施形態では、キャッピング機構120は、インクヘッド41~44の主走査方向Yへの移動に連動して、キャップ111~114を主走査方向Yおよび上下方向に移動させるように構成されている。しかしながら、キャッピング機構120は、インクヘッド41~44の位置を固定させた状態で、キャップ111~114を上下方向に移動させるように構成されていてもよい。
【0051】
図7に示すように、ガイドレール15の右端部分であって、第1位置P1よりも左方の位置には、第2位置P2が設定されている。この第2位置P2は、プラテン13(
図1参照)の真上には位置していない。第2位置P2から第1位置P1へインクヘッド41~44が移動している間、キャッピング機構120は、キャップ111~114が第2位置P2から第1位置P1へ移動しながら、インクヘッド41~44のノズル面45に向かって移動するように構成されている。一方、第1位置P1から第2位置P2へインクヘッド41~44が移動している間、キャッピング機構120は、キャップ111~114が第1位置P1から第2位置P2へ移動しながら、インクヘッド41~44のノズル面45から離間するように構成されている。本実施形態では、「キャッピング機構120を制御する」とは、ヘッド移動機構30を制御して、インクヘッド41~44を主走査方向Yに移動させることに連動して、キャップ111~114をノズル面45に対して装着させたり、離間させたりすることをいう。
【0052】
キャッピング機構120の具体的な構成は特に限定されない。本実施形態では、キャッピング機構120は、第2位置P2から第1位置P1に向かって上方斜めに延びたガイド孔122が形成されたガイド部材123と、ガイド孔122に係合し、ベース115に設けられた支持軸124とを備えている。例えばキャリッジ17には、第2位置P2から第1位置P1の間において、ベース115に接触する接触部(図示せず)が設けられている。
【0053】
インクヘッド41~44が第2位置P2から第1位置P1へ移動している間、キャリッジ17の上記接触部がベース115を第1位置P1側に押す。このとき、ベース115およびキャップ111~114は、ガイド孔122にガイドされながら、ノズル面45に向かって移動し、かつ、第2位置P2から第1位置P1に向かって移動する。このとき、インクヘッド41~44のノズル面45と、キャップ111~114との位置は、
図9、
図10、
図11の順に変化する。そして、
図8に示すように、インクヘッド41~44が第1位置P1に到達したとき、インクヘッド41~44のノズル面45にキャップ111~114が装着された状態(
図11参照)となる。一方、キャリッジ17およびインクヘッド41~44が第1位置P1から第2位置P2に移動している間、キャリッジ17の上記接触部も第1位置P1から第2位置P2へ移動する。このとき、ベース115およびキャップ111~114は、ガイド孔122にガイドされながら、ノズル面45から離間して移動すると共に、キャリッジ17の上記接触部にベース115が接触しながら、第1位置P1から第2位置P2に向かって移動する。このとき、インクヘッド41~44のノズル面45と、キャップ111~114との位置は、
図11、
図10、
図9の順に変化する。なお、
図7に示すように、キャップ111~114は、第2位置P2に到達したとき、第2位置P2に待機するように構成されている。
【0054】
図7に示すように、吸引ポンプ131~134は、キャップ111~114にそれぞれ接続されている。吸引ポンプ131~134は、それぞれキャップ111~114内のインクや空気などを吸引する部材である。本実施形態では、例えば吸引ポンプ131が本発明の吸引装置の一例である。吸引ポンプ131~134は、例えば、真空ポンプである。吸引ポンプ131~134は、それぞれチューブなどを介して、キャップ111~114の底面に接続されている。吸引ポンプ131~134は、駆動時には、それぞれに対応するインクヘッド41~44に接続されたインク供給路内の負圧よりも低い負圧を形成するように構成されている。例えば、キャップ111~114がインクヘッド41~44に装着された状態で吸引ポンプ131~134が駆動された時には、インクヘッド41~44のノズル51~58からインクなどが吸い出される。吸引ポンプ131~134に吸引されたインクなどは、図示しないチューブなどを介して図示しない廃液タンクに廃棄される。
【0055】
図12に示すように、ワイパーユニット140は、インクヘッド41~44のノズル面45をワイピングするものである。ワイパーユニット140は、ワイパー141と、ワイピング機構145とを備えている。ワイパー141およびワイピング機構145は、主走査方向Yにおいて第2位置P2(
図7参照)に配置されたときのインクヘッド41~44と、プラテン13(
図1参照)との間に設けられている。ワイパー141およびワイピング機構145は、インクヘッド41~44のノズル面45を拭ってクリーニング(換言すると、ワイピング)する機構である。ワイパー141は、インクヘッド41~44のそれぞれのノズル面45を拭う部材である。ワイパー141は、前後方向と上下方向に延びる平板状の部材である。ワイパー141の前後方向の長さは、インクヘッド41~44の前後方向の長さよりも長く構成されている。ワイパー141は、例えばゴムで形成されている。
【0056】
ワイピング機構145は、ワイパー141を支持し、ワイパー141をインクヘッド41~44のノズル面45に接触させたり、インクヘッド41~44のノズル面45から離間させたりするものである。ワイピング機構145は、回転軸146と、洗浄液槽147と、回転モータ148とを備えている。回転軸146は、ワイパー141の一端を支持しており、ワイパー141の一端に接続されている。ワイパー141は、回転軸146を中心に回転可能である。回転軸146は、前後方向に延びている。ワイパー141が、回転軸146から遠い方の端部を上にするような回転位置に配置されるとき、当該端部は、インクヘッド41~44のノズル面45よりもわずかに高い位置に位置する。そこで、ワイパー141をこのような回転位置に配置しつつ、キャリッジ17を走行させると、ワイパー141によりインクヘッド41~44のノズル面45をワイピングすることができる。一方、ワイパー141は、回転軸146から遠い方の端部を下にするような回転位置に配置されるとき、回転軸146の下方に設置された洗浄液槽147中の洗浄液に浸漬される。ワイパー141は、回転モータ148によって回転されている。
【0057】
なお、本実施形態では、ヘッド移動機構30によってインクヘッド41~44を主走査方向Yに移動させることで、ワイパー141に対してインクヘッド41~44を相対的に主走査方向Yに移動させている。
【0058】
次に、記憶装置150(
図1参照)および制御装置160(
図1参照)について説明する。記憶装置150は、各種のパラメータなどを記憶する装置である。制御装置160は、印刷に関する制御、および、インクヘッド41~44のクリーニングに関する制御を行う装置である。記憶装置150および制御装置160の構成は特に限定されない。本実施形態では、記憶装置150および制御装置160は、例えばマイクロコンピュータによって構成されている。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリと、を備えている。なお、記憶装置150および制御装置160は必ずしもプリンタ100の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ100の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ100と通信可能に接続されたコンピュータなどであってもよい。本実施形態では、記憶装置150と制御装置160とは一体的に構成されており、互いが通信可能に接続されている。
【0059】
図13は、本実施形態に係るプリンタ100のブロック図である。
図13に示すように、制御装置160は、搬送機構20のフィードモータ23と、ヘッド移動機構30のキャリッジモータ33と、インクヘッド41~44と、送液ポンプ73a、73bと、ダンパー74a、74bのフィラーセンサ88と、吸引ポンプ131~134と、ワイパーユニット140の回転モータ148とにそれぞれ通信可能に接続されており、それらを制御可能に構成されている。
【0060】
本実施形態では、制御装置160は、吸引制御部162と、第1移動制御部163と、微小開放位置制御部164と、第2移動制御部165と、空吸引制御部166と、ワイピング制御部167とを備えている。上述した制御装置160の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば上述した各部は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。なお、制御装置160の上記各部の具体的な制御については、後述する。
【0061】
以上、本実施形態に係るプリンタ100の構成について説明した。ところで、インクヘッド41~44に対してクリーニングを行う際、空吸引処理が行われる。ここでは、インクヘッド41~44のそれぞれに対する空吸引処理は、同じ処理である。そのため、以下では、インクヘッド41に対する空吸引処理について説明し、インクヘッド42~44に対する空吸引処理についての説明は適宜省略する。
【0062】
空吸引処理は、例えばインクヘッド41のノズル面45からキャップ111を離間させた状態で、吸引ポンプ131を駆動させることで、キャップ111内のインクを吸引すると共に、インクヘッド41のノズル51、52内のインクをキャップ111に排出しない処理である。空吸引処理を実行する際、キャップ111にはインクが満杯に貯留されていることがあり得る。そのため、インクヘッド41のノズル面45と、キャップ111との間隔を空け過ぎた状態で、空吸引処理が実行されると、キャップ111内のインクが外部に漏れるおそれがある。また、キャップ111が装着されたノズル面45からキャップ111が取り外される際に、キャップ111内のインクが外部に飛散するおそれがある。
【0063】
以下の説明では、ノズル面45とキャップ111との間隔とは、ノズル面45と、キャップ111の端部118のうち最もノズル面45と離れた位置の部分との距離のことをいう。本実施形態では、キャップ111には、ノズル51から吐出されたインク、および、ノズル52から吐出されたインクが混在している。また、キャップ111内のインクには、ノズル面45に付着していた埃などが混在していることがあり得る。空吸引処理時、インクヘッド41のノズル51、52内は、負圧状態が維持されている。そのため、インクヘッド41のノズル面45と、キャップ111との間隔が離れ過ぎると、キャップ111とノズル面45とが離れるタイミングで、キャップ111内のインクの一部がノズル面45に付着することがあり得る。ノズル面45に付着したインクは、色が混在した混在インクであり、埃が混在した混在インクである。このとき、インクヘッド41の内部が負圧であるため、ノズル面45に付着した混在インクがノズル51、52に吸い込まれるおそれがある。
【0064】
なお、空吸引処理とは直接関係ないが、インクヘッド41のノズル面45と、キャップ111との間隔をゼロまたは狭くし過ぎる(ここでは、ノズル面45にキャップ111を完全に装着させた状態にする)場合であっても、キャップ111内の混在インクがノズル51、52に吸い込まれるおそれがある。ここで、「ノズル面45にキャップ111を完全に装着させた状態」とは、ノズル面45とキャップ111の端部118との間に、隙間が全くない状態のことであり、
図11の状態である。
【0065】
以上のことから、仮に空吸引処理が実行されるときには、キャップ111内のインクが外部に飛散し難く、かつ、ノズル面45に付着した混在インクがノズル51、52に吸い込まれ難くすることが好ましい。そこで、本実施形態では、空吸引処理の前に微小開放位置処理を実行することとした。この微小開放位置処理については後述する。
【0066】
本実施形態では、記憶装置150には、吸引位置P51(
図11参照)と、空吸引位置P52(
図9参照)と、微小開放位置P53(
図10参照)とが予め記憶されている。
図11に示すように、吸引位置P51とは、吸引処理が実行されるときのインクヘッド41のノズル面45に対するキャップ111の位置(詳しくは、キャップ111の上下方向の位置)である。ここで、「吸引処理」とは、インクヘッド41のノズル51、52内のインクを吸引し、かつ、キャップ111内のインクを吸引する処理のことをいう。吸引位置P51は、インクヘッド41のノズル面45にキャップ111が装着され、キャップ111の端部118の全体がノズル面45に接触しているようなキャップ111の位置(詳しくは、キャップ111の上下方向の位置)である。吸引位置P51は、吸引ポンプ131によってノズル51、52内のインクが吸引されるときのキャップ111の位置である。吸引位置P51では、キャップ111の端部118の上部は、ノズル面45に押し潰された状態である。
【0067】
図9に示す空吸引位置P52とは、空吸引処理が実行されるときのノズル面45に対するキャップ111の位置である。空吸引位置P52とは、ノズル面45からキャップ111の端部118が離間しており、キャップ111の端部118の全体がノズル面45に接触していないようなキャップ111の位置である。空吸引位置P52では、キャップ111は、ノズル面45の下方に配置されている。空吸引位置P52は、吸引ポンプ131によってノズル51、52内のインクが吸引されずに、キャップ111内のインクが吸引されるときのキャップ111の位置である。言い換えると、空吸引位置P52は、吸引ポンプ131が駆動している場合に、ノズル51、52からインクが吸引されないようなキャップ111の位置である。
【0068】
図10に示す微小開放位置P53とは、微小開放位置処理が実行されているときのノズル面45に対するキャップ111の位置である。ここで、微小開放位置処理とは、インクヘッド41のノズル51、52からインクを吸引せず、かつ、ノズル面45に付着したインクの少なくとも一部を吸引する処理のことである。ここでは、微小開放位置P53は、吸引位置P51と空吸引位置P52との間に位置する。言い換えると、微小開放位置P53は、吸引位置P51よりも下方に位置し、かつ、空吸引位置P52よりも上方に位置する。微小開放位置P53において、インクヘッド41のノズル面45と、キャップ111との間隔は、キャップ111内からインクが外部に漏れず、かつ、ノズル51、52にキャップ111内のインクが吸い込まれない程度の微小な距離である。この微小な距離とは、目視することができないような非常に微小な距離である。このように、ノズル面45とキャップ111との間隔を上記微小な距離にすることで、吸引ポンプ131を駆動したとき、ノズル51、52内のインクは吸引され難い。
【0069】
本実施形態では、微小開放位置P53とは、ノズル面45とキャップ111の端部118の一部(ここでは最上端118a)が接触し、端部118の他の一部(ここでは最上端118a以外の端部118の部位)が離れているときのキャップ111の位置である。ここで、「端部118の一部が接触している」には、ノズル面45にキャップ111の端部118の一部が直接接触している場合の他に、ノズル面45とキャップ111の端部118の一部とがインク(例えば、インクの液柱)を介して接触している状態も含まれる。微小開放位置P53では、キャップ111の最上端118aは、ノズル面45に接触しているが、最上端118aは、ノズル面45に押し潰されていない状態である。ただし、最上端118aは、ノズル面45に押し潰された状態であってもよい。最上端118aがノズル面45に押し潰されている場合、キャップ111の端部118とノズル面45との間には他の隙間が形成されていることが好ましい。また、微小開放位置P53とは、インクヘッド41のノズル面45とキャップ111の端部118との間に少なくとも隙間が形成され、キャップ111内のインクは吸引され、ノズル51、52からインクが吸引されず、かつ、インクヘッド41のノズル面45に付着した少なくとも一部のインクを除去できる程度に調整された位置である。ここで、「ノズル51、52からインクが吸引されない」とは、ノズル51、52からインクが全く吸引されない場合の他に、ノズル51、52から微量のインクが吸引される場合も含まれるものとする。
【0070】
本実施形態では、微小開放位置P53とは、キャップ111内のインクを吸引する際、インクヘッド41のノズル51、52からインクを吸引することができないときのキャップ111の位置の中で、キャップ111がノズル面45に最も接近したときのキャップ111の位置である。言い換えると、微小開放位置P53は、インクヘッド41のノズル面45に対するキャップ111の位置のうち、ノズル51、52のインクを吸引することができないときにおける、最も上方に配置されたときのキャップ111の位置である。この空吸引位置にキャップ111を配置した状態から、少しでも上方にキャップ111を移動させると、ノズル51、52のインクを吸引することが可能となる。
【0071】
本実施形態では、
図9および
図10に示すように、ノズル面45から微小開放位置P53までの距離(ここでは上下方向の距離)は、ノズル面45から空吸引位置P52までの距離の1/10以下である。
図9に示すように、空吸引位置P52におけるキャップ111の最上端118aとノズル面45との距離は、第1距離D1である。
図10に示すように、微小開放位置P53におけるキャップ111の最上端118aとノズル面45との距離は、第2距離D2である。ここで、第2距離D2には、0が含まれる。第2距離D2は、第1距離D1よりも短い。ここでは、第2距離D2は、例えば第1距離D1の1/10以下である。ただし、第2距離D2は、第1距離D1の1/8以下であってもよいし、第1距離D1の1/5以下であってもよいし、第1距離D1の1/2以下であってもよい。
【0072】
本実施形態では、微小開放位置P53の決定は、制御装置160によって行われる。
図13に示すように、微小開放位置P53を決定する処理を実行するために、制御装置160は、更に、前処理実行部180と、接近移動制御部181と、接近圧力判定部182と、離間移動制御部183と、離間圧力判定部184と、位置被記憶部185とを備えている。なお、微小開放位置P53を決定するための制御装置160の上記各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば上述した各部は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。なお、微小開放位置P53を決定するための制御装置160の上記各部の具体的な制御については、後述する。
【0073】
本実施形態では、前処理実行部180、接近移動制御部181、接近圧力判定部182、離間移動制御部183、離間圧力判定部184および位置被記憶部185が行う処理を「微小開放位置決定処理」という。ここで、微小開放位置決定処理は、微小開放位置P53を決定する処理である。微小開放位置決定処理は、例えば、プリンタ100の出荷前や、ユーザが最初にプリンタ100を使用する前に実行される処理である。
【0074】
次に、微小開放位置決定処理の手順について、
図14Aおよび
図14Bのフローチャートに沿って説明する。本実施形態では、キャップ111~114の各微小開放位置P53を決定する処理は同じであるため、以下、キャップ111の微小開放位置P53を決定する処理について説明する。
【0075】
まず、
図14AのステップS101では、前処理が実行される。本実施形態では、前処理実行部180は、前処理を実行するようにプログラムされている。ここで、前処理とは、微小開放位置決定処理の前段階に行われる処理である。前処理は、第1インク供給路72a(
図4参照)内の圧力、および、第2インク供給路72a(
図4参照)内の圧力が、所定の判定圧力よりも大きくなるようにする処理である。前処理実行部180は、前処理を実行するために、送液ポンプ73aおよび73b(
図4参照)の駆動を制御する。ここで、圧力が所定の判定圧力よりも大きいとは、
図6に示すように、ダンパー74aおよび74bのフィラー87が共にアンヒットしている、すなわち、フィラーセンサ88の一対の検出部88aの間に、フィラー87が位置していないことと同義である。
【0076】
前処理として、具体的には、前処理実行部180は、送液ポンプ73aおよび73bが駆動しているか否かを判定し(ステップS1010)、送液ポンプ73aおよび73bが駆動していないとき、送液ポンプ73aおよび73bを駆動させる(ステップS1011)。以下の説明において、「送液ポンプの駆動を制御」とは、フィラー87がヒットした場合には、送液ポンプを駆動(言い換えると、回転)させるように自動で制御し、それ以外の場合には、送液ポンプを待機状態(例えば、停止状態)に自動で制御することをいう。ここでは、「送液ポンプの駆動を制御」する状態とは、自動制御状態のことである。次に、前処理実行部180は、フィラー87がアンヒットしているか否かを判定する(ステップS1012)。ここでは、送液ポンプ73aおよび73bによって、インクがインクヘッド41に供給されることで、
図6に示すように、ダンパー74aおよび74bの貯留室82内のインクの量が徐々に多くなり、ダンパー膜83が外側に撓む。このことで、フィラー87がアンヒットしている状態となる。すなわち、第1インク供給路72a内の圧力、および、第2インク供給路72b内の圧力が、所定の判定圧力よりも大きくなる。
【0077】
ここで、ステップS1012による判定がNoの場合には、前処理実行部180は、所定の待機時間(例えば、1秒間)の間、待機し(ステップS1013)、再び、ステップS1012の判定を行う。ステップS1012において、フィラー87がアンヒットしていると判定された場合、前処理実行部180は、送液ポンプ73aおよび73bの駆動を停止、および、送液ポンプ73aおよび73bを閉鎖する(ステップS1014)。ここでは、送液ポンプ73aおよび73bを閉鎖することで、インク供給路72a、72bを閉鎖する。このことで、後述するステップS1020の吸引ポンプ131の駆動で、インクを吸引した際に、インクタンク71a、71bからインク供給路72a、72bにインクが供給されて、インク供給路72a、72b内の圧力低下が阻害されることを防止することができる。なお、インク供給路72a、72bを閉鎖する方法は、送液ポンプ73aおよび73bを閉鎖することに限定されず、例えば、インク供給路72a、72bに設けられたバルブ(図示せず)を閉鎖してもよい。その後、前処理実行部180は、インクヘッド41およびキャップ111を所定の位置に移動させる(ステップS1015)。ここで、所定の位置とは、フラッシング位置である。フラッシング位置とは、インクヘッド41からキャップ111に向かってインクを吐出させるフラッシングが行われる位置のことであり、例えば、第1位置P1(
図8参照)と第2位置P2(
図7参照)との間に設定されている。
【0078】
以上のように、ステップS101の前処理が終了した後、微小開放位置決定処理が行われる。ここでは、微小開放位置決定処理には、接近処理(ステップS102)と離間処理(ステップS103)とが含まれる。まずステップS102では、接近処理が実行される。本実施形態では、接近処理には、接近移動処理と、接近圧力判定処理とが含まれる。接近移動処理は、キャップ111がノズル面45に装着されていない状態(ここでは、インクヘッド41がフラッシング位置に位置している状態)において、ノズル面45にキャップ111が装着される方向にキャップ111を移動させる処理である。
【0079】
接近圧力判定処理は、接近移動処理が実行されている間、第1インク供給路72a(
図4参照)内の圧力である第1接近検出圧力を検出すると共に、第2インク供給路72b(
図4参照)内の圧力である第2接近検出圧力を検出し、第1接近検出圧力および第2接近検出圧力のうち少なくとも一方が判定圧力以下であるか否か、すなわち、ダンパー74aおよび74bのそれぞれのフィラー87のうち少なくとも一方がヒットしたか否かを判定する。この第1接近検出圧力および第2接近検出圧力のうち少なくとも一方が所定の判定圧力以下になったときとは、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131に吸引されたときである。インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131に吸引されたとき、ダンパー74aおよび74bのうち少なくとも一方のダンパー膜83は内側に撓み、貯留室82内のインクが減少する。ここでは、接近移動制御部181は、接近移動処理を実行するようにプログラムされている。接近圧力判定部182は、接近圧力判定処理を実行するようにプログラムされている。
【0080】
本実施形態では、ステップS102の接近処理は、ステップS1020~S1022に沿って行われる。具体的には、まず接近圧力判定部182は、所定の時間(例えば10秒)の間、第1吸引ポンプ131を駆動させる(ステップS1020)。次に、接近圧力判定部182は、ダンパー74aおよび74bのうち少なくとも一方のフィラー87がヒットしたか否かを判定する(ステップS1021)。ステップS1021では、ダンパー74aおよび74bのうち少なくとも一方のフィラー87がヒットすることで、上記第1接近検出圧力および上記第2接近検出圧力のうち少なくとも一方が所定の判定圧力以下であると判定される。ステップS1021において、Noと判定された場合、接近移動制御部181は、インクヘッド41が第1位置P1(
図8参照)に向かって、所定の距離(例えば、0.1mm)移動するようにヘッド移動機構30を制御する(ステップS1022)。このとき、ヘッド移動機構30と連動したキャッピング機構120によって、インクヘッド41のノズル面45とキャップ111とは接近する。その後、再度、ステップS1020の制御が行われる。
【0081】
一方、ステップS1021において、ダンパー74aおよび74bのうち少なくとも一方のフィラー87がヒットしていると判定された場合、Yesに進み、ステップS102の接近処理が終了する。このように、ダンパー74aおよび74bのフィラー87のうち少なくとも一方がヒットしたのは、ノズル51および52のうち少なくとも一方からインクが吸引されて、インク供給路72aおよび72bの圧力のうち少なくとも一方の圧力が変化したためである。インクヘッド41内のインクが吸引される状態とは、キャップ111がインクヘッド41のノズル面45に装着されている状態であるともいう。
【0082】
次に、
図14BのステップS103では、離間処理を実行する。離間処理には、離間移動処理と、離間圧力判定処理と、位置記憶処理とが含まれる。離間移動処理は、接近圧力判定処理において第1接近検出圧力および第2接近検出圧力のうち少なくとも一方が判定圧力以下であると最初に判定されたとき、キャップ111がノズル面45に装着されている状態において、ノズル面45に対してキャップ111が離間する方向にキャップ111を移動させる処理である。
【0083】
離間圧力判定処理は、離間移動処理が実行されている間、第1インク供給路72a(
図4参照)内の圧力である第1離間検出圧力を検出し、第1離間検出圧力が所定の判定圧力より大きいか否かを判定する。ここでは、離間圧力判定処理は、離間移動処理が実行されている間、上記第1離間検出圧力を検出すると共に、第2インク供給路72b(
図4参照)内の圧力である第2離間検出圧力を検出し、第1離間検出圧力および第2離間検出圧力が共に判定圧力より大きいか否か、すなわち、ダンパー74aおよび74bのフィラー87が共にヒットしないか否かを判定する。この第1離間検出圧力および第2離間検出圧力が共に所定の判定圧力より大きくなったときとは、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131に吸引された状態から解除されたときである。インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131に吸引されなくなったとき、
図6に示すように、ダンパー74aおよび74bのダンパー膜83は外側に撓んだ状態が維持される。
【0084】
位置記憶処理は、離間圧力判定処理において第1離間検出圧力が判定圧力より大きいと最初に判定されたときにおける、ノズル面45に対するキャップ111の位置を微小開放位置P53として記憶装置150に記憶する処理である。ここでは、位置記憶処理は、離間圧力判定処理において第1離間検出圧力および第2離間検出圧力が共に判定圧力より大きいと最初に判定されたときにおける、ノズル面45に対するキャップ111の位置を微小開放位置P53として記憶装置150に記憶する。本実施形態では、離間移動制御部183は、離間移動処理を実行するようにプログラムされている。離間圧力判定部184は、離間圧力判定処理を実行するようにプログラムされている。位置被記憶部185は、位置記憶処理を実行するようにプログラムされている。
【0085】
本実施形態では、ステップS103の離間処理は、ステップS1030~S1036に沿って行われる。具体的には、まず離間圧力判定部184は、送液ポンプ73aおよび73bを駆動させ(ステップS1030)、所定の時間(例えば3秒間)の間、待機する(ステップS1031)。その後、離間圧力判定部184は、送液ポンプ73aおよび73bの駆動を停止、および、送液ポンプ73aおよび73bを閉鎖する(ステップS1032)。これらのステップを実行することで、ダンパー74aおよび74bのフィラー87をアンヒットにすることができる。
【0086】
次に、離間圧力判定部184は、所定の時間(例えば10秒)の間、吸引ポンプ131を駆動する(ステップS1033)。その後、離間圧力判定部184は、ダンパー74aおよび74bのそれぞれのフィラー87がヒットしているか否か、すなわち、フィラー87がアンヒット状態から変化したか否かを判定する(ステップS1034)。ここでは、ダンパー74aおよび74bのフィラー87がアンヒットのとき、第1離間検出圧力および第2離間検出圧力が所定の判定圧力よりも大きいと判定される。ステップS1034において、Yesと判定された場合、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131によって吸引されて、貯留室82内のインクが減少した状態である。この場合、離間移動制御部183は、インクヘッド41が第2位置P2(
図7参照)に向かって、所定の距離(例えば、0.1mm)移動するようにヘッド移動機構30を制御する(ステップS1035)。このとき、ヘッド移動機構30に連動したキャッピング機構120によって、インクヘッド41のノズル面45と、キャップ111とは離れる方向に移動する。その後、離間圧力判定部184は、再度、ステップS1030の制御を行う。
【0087】
一方、ステップS1034において、ダンパー74aおよび74bのフィラー87がアンヒットしている判定された場合、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131によって吸引されずに、貯留室82内のインクの量が変化していない状態である。この場合、Noに進み、次にステップS1036では、位置被記憶部185は、このときのインクヘッド41のノズル面45に対するキャップ111の位置を記憶装置150に記憶させる。このとき、位置被記憶部185は、インクヘッド41の主走査方向Yの位置を記憶装置150に記憶させてもよい。なお、このときのキャップ111の位置とは、キャップ111にノズル51および52内のインクが吸引されなくなった位置である。このときのキャップ111の位置が微小開放位置P53となる。
【0088】
なお、本実施形態では、吸引ポンプの「駆動」には、吸引ポンプが常に駆動している状態はもちろんのこと、吸引ポンプが一時的に駆動していない、すなわち停止している状態が含まれていてもよい。吸引ポンプの「駆動」には、例えばキャップ111~114がノズル面45から離間する方向に移動している間、少なくとも一部の時間において吸引ポンプを停止させたり、吸引ポンプの吸引力を適宜変化させたりする状態が含まれる。なお、本実施形態では、キャップ111~114がノズル面45から離間する方向に移動している間、吸引ポンプ131~134が常に駆動している状態である。このとき、吸引ポンプ131~134は、最大限の吸引力が維持されるように駆動している。吸引ポンプ131~134が駆動している間、吸引ポンプ131~134の吸引力は変化してもよい。
【0089】
以上、微小開放位置決定処理について説明した。
図15は、インクヘッド41~44に対するクリーニングの手順について示したフローチャートである。次に、インクヘッド41~44に対するクリーニングの手順について、
図15に示したフローチャートに沿って説明する。本実施形態では、インクヘッド41~44のそれぞれに対するクリーニングの手順は同じである。そのため、ここでは、インクヘッド41に対するクリーニングの手順について説明し、その他のインクヘッド42~44に対するクリーニングの手順に関する説明は適宜省略する。
【0090】
本実施形態では、
図15に示すように、インクヘッド41~44に対するクリーニングとして、吸引処理(ステップS201)、微小開放位置処理(ステップS203)、空吸引処理(ステップS205)、および、ワイピング処理(ステップS206)が順に実行される。上記各処理は、制御装置160によって実行されるものである。なお、
図15においてステップS201~ステップS205の処理では、4つのインクヘッド41~44に対して同時に処理が行われる。ステップS206の処理は、インクヘッド41~44に対して順に処理されるものである。なお、ステップS201の吸引処理が実行される前において、
図13に示すように、記憶装置150には、上述した
図14Aおよび
図14Bのフローチャートに沿って決定された微小開放位置P53が予め記憶されている。また、記憶装置150には、吸引位置P51および空吸引位置P52が予め記憶されている。
【0091】
まず、
図15のステップS201では、吸引処理が行われる。本実施形態では、
図13の吸引制御部162は吸引処理を実行するようにプログラムされている。吸引処理は、吸引位置P51(
図11参照)にキャップ111を配置した状態で行われる処理である。吸引処理とは、上述のように、キャップ111をインクヘッド41のノズル面45に装着させ、かつ、インクヘッド41のノズル51、52からインクを吸引する処理である。言い換えると、吸引処理では、インクヘッド41のノズル51、52内のインクをキャップ111に排出する。ここでは、吸引制御部162は、まずキャップ111を吸引位置P51に配置するようにヘッド移動機構30を制御することで、キャッピング機構120を間接的に制御する。詳しくは、吸引制御部162は、
図8に示すように、インクヘッド41を第1位置P1に移動させるように、ヘッド移動機構30を制御する。このとき、ヘッド移動機構30の制御と連動したキャッピング機構120によって、キャップ111がインクヘッド41のノズル面45に向かって徐々に移動し、第1位置P1において、
図11に示すように、インクヘッド41のノズル面45にキャップ111が装着されて、キャップ111が吸引位置P51に配置される。
【0092】
図16は、各処理におけるキャップ111の位置、キャップ111の端部118および吸収体119とノズル面45との接触、キャップ111内の圧力、吸引ポンプ131の駆動、ならびに、第1、2移動処理のときのキャップ111の単位時間当たりの移動量について示した図である。
図16に示すように、吸引処理の吸引位置P51では、ノズル面45とキャップ111の端部118の全体とが完全に接触している状態であり、ノズル面45とキャップ111との間には、密閉空間が形成されている。吸引位置P51では、吸収体119はノズル面45に接触していない。
【0093】
このように、キャップ111を吸引位置P51に配置した状態で、吸引制御部162は、吸引ポンプ131を駆動させて、キャップ111内を負圧にする。このときのキャップ111内の圧力の具体的な数値は特に限定されないが、例えば-5kPa以下である。本実施形態では、吸引制御部162による制御によって、キャップ111内が負圧になり、インクヘッド41のノズル51、52内のインクがキャップ111に排出される。キャップ111内に排出されたインクは、ノズル51内のインクと、ノズル52内のインクとが混ざり合った混在インクである。
【0094】
本実施形態では、吸引処理の後、いわゆる負圧調整処理が実行されずに、ステップS202以降の処理が実行される。ここで、上記負圧調整処理とは、インクヘッド41のノズル面45にキャップ111が装着されている状態で、所定の時間の間、吸引ポンプ131を停止させる処理である。
【0095】
吸引処理が実行された後、
図15のステップS202では、第1移動処理が行われる。第1移動処理は、本発明の移動処理の一例である。本実施形態では、第1移動制御部163は、第1移動処理を実行するようにプログラムされている。第1移動処理は、キャップ111を微小開放位置P53に向かって移動させる処理である。ステップS201の吸引処理では、キャップ111は吸引位置P51に配置されているため、第1移動処理では、キャップ111を吸引位置P51から微小開放位置P53に移動させる。第1移動制御部163は、記憶装置150に記憶された微小開放位置P53にキャップ111が配置されるように、ヘッド移動機構30を制御する。
【0096】
なお、
図16に示すように、第1移動処理によって、キャップ111が微小開放位置P53に向かって移動しているときには、キャップ111の端部118は、ノズル面45に接触しており、キャップ111が微小開放位置P53に配置されたときには、キャップ111の端部118の一部(ここでは最上端118a)がノズル面45に接触し、端部118の他の一部がノズル面45から離れた状態となる。また、第1移動処理によって、キャップ111が微小開放位置P53に移動している間、吸収体119は、ノズル面45には接触していない。
【0097】
本実施形態では、第1移動処理を実行している間、第1移動制御部163は、吸引ポンプ131を停止させている。すなわち第1移動処理を実行している間、キャップ111内のインクは、吸引ポンプ131によって吸引されていない。しかしながら、ステップS201では、キャップ111内が負圧であるため、ステップS202の第1移動処理では、キャップ111内は負圧の状態が維持されている。ただし、第1移動処理において、キャップ111内は負圧であるが、その値は、吸引処理のときの圧力(例えば-5kPa)以下である。
【0098】
また、第1移動処理を実行している間、第1移動制御部163は、キャップ111を微小開放位置P53に向かって移動させる際、キャップ111の単位時間当たりの移動量は、第1移動量M1である。言い換えると、第1移動制御部163は、キャップ111を第1速度で移動させる。ここで、キャップ111の移動量とは、キャップ111の端部118のうちノズル面45から最初に離れた部位の移動量のことをいう。しかしながら、キャップ111の移動量の基準となる部位は特に限定されない。例えばキャップ111の移動量は、キャップ111の中心の移動量であってもよいし、キャップ111の最下端の移動量であってもよい。
【0099】
第1移動処理を実行した後、
図15のステップS203では、微小開放位置処理が実行される。本実施形態では、微小開放位置制御部164は微小開放位置処理を実行するようにプログラムされている。微小開放位置処理は、微小開放位置P53(
図10参照)にキャップ111を配置した状態で行われる処理である。微小開放位置P53は、
図10に示すように、ノズル面45とキャップ111の端部118の一部(ここでは最上端118a)が接触し、端部118の他の一部が離れているときのキャップ111の位置であり、上述のように
図14Aおよび
図14Bのフローチャートに沿って決定された位置である。微小開放位置P53では、吸収体119はノズル面45に接触していない。例えばインクヘッド41のノズル面45には、キャップ111内の混在インクが付着することがあり得る。しかしながら、ノズル面45に付着した混在インクは、微小開放位置P53にキャップ111が配置されているとき、キャップ111内の混在インクと繋がっている状態となる。
【0100】
微小開放位置処理の具体的な処理として、微小開放位置P53にキャップ111が配置されている状態で、微小開放位置制御部164は、
図16に示すように、吸引ポンプ131を駆動させる。また、微小開放位置制御部164は、所定の時間、キャップ111を微小開放位置P53に配置させ続けるように構成されている。そのため、微小開放位置処理では、所定の時間、吸引ポンプ131が駆動され続けている。ここで、所定の時間とは、記憶装置150に予め記憶されているものである。所定の時間は、微小開放位置処理でキャップ111内のインクを吸引したいインク量に応じて適宜に設定されるものである。本実施形態では、微小開放位置P53において、キャップ111の端部118とノズル面45との間に微小な隙間が形成される。そのため、上記隙間から外部の大気を吸引する状態となる。微小開放位置処理において、キャップ111内は負圧であるが、その値は例えば-5kPa以下である。
【0101】
微小開放位置処理では、キャップ111内のインクが吸引される。また、本実施形態では、ノズル面45に混在インクが付着している場合、ノズル面45に付着した混在インクは、上述のように、キャップ111内のインクと繋がっているため、キャップ111内のインクと共に、吸引ポンプ131によって吸引される。よって、ノズル面45には混在インクが残留し難い。
【0102】
微小開放位置処理の後、
図15のステップS204では、第2移動処理が実行される。第2移動処理は、本発明の他の移動処理の一例である。本実施形態では、第2移動制御部165は、第2移動処理を実行するようにプログラムされている。第2移動処理は、キャップ111を空吸引位置P52(
図9参照)に向かって移動させる処理である。ステップS203の微小開放位置処理では、キャップ111は微小開放位置P53に配置されているため、第2移動処理では、キャップ111を微小開放位置P53から空吸引位置P52に移動させる。第2移動制御部165は、記憶装置150に記憶された空吸引位置P52にキャップ111が配置されるように、ヘッド移動機構30を制御する。なお、第2移動処理では、キャップ111は、傾けられた状態で移動するように構成されていてもよいし、傾けられずに移動するように構成されていてもよい。
【0103】
なお、第2移動処理によって、キャップ111が微小開放位置P53に向かって移動しているときには、キャップ111の端部118の全体は、ノズル面45に接触しておらず、吸収体119もノズル面45には接触していない。本実施形態では、第2移動処理を実行している間、第2移動制御部165は、吸引ポンプ131を停止させている。すなわち第2移動処理を実行している間、キャップ111内のインクは、吸引ポンプ131によって吸引されていない。そのため、キャップ111内は大気圧となる。
【0104】
また、第2移動処理を実行している間、第2移動制御部165がキャップ111を空吸引位置P52に向かって移動させる際、キャップ111の単位時間当たりの移動量は、第2移動量M2(
図16参照)である。言い換えると、第2移動制御部165は、キャップ111を第2速度で移動させる。ここで、第2移動量M2は、ステップS202の第1移動処理におけるキャップ111の移動量である第1移動量M1よりも多い。言い換えると、第2速度は、第1移動処理におけるキャップ111の移動速度である第1速度よりも速い。すなわち、第2移動処理では、第1移動処理と比較して、キャップ111を速く移動させている。
【0105】
第2移動処理の後、
図15のステップS205では、空吸引処理が実行される。本実施形態では、空吸引制御部166は、空吸引処理を実行するようにプログラムされている。空吸引処理は、空吸引位置P52(
図9参照)にキャップ111を配置した状態で行われる処理である。空吸引位置P52では、キャップ111の端部118の全体がノズル面45に接触しておらず、かつ、吸収体119もノズル面45に接触していない。
【0106】
空吸引処理では、空吸引位置P52にキャップ111が配置されている状態で、空吸引制御部166は、
図16に示すように、吸引ポンプ131を駆動させる。本実施形態では、空吸引位置P52において、キャップ111はノズル面45から離間している。そのため、キャップ111とノズル面45との間から外部の大気を吸引する状態となる。空吸引処理において、キャップ111内は負圧であるが、その値は例えば-5kPa以下である。空吸引処理では、キャップ111内のインクは吸引されるが、ノズル面45に付着したインクやノズル51、52内のインクは吸引されない。
【0107】
空吸引処理の後、
図15のステップS206では、ワイピング処理が行われる。本実施形態では、ワイピング制御部167は、ワイピング処理を実行するようにプログラムされている。ワイピング処理は、微小開放位置処理および空吸引処理の後に、ワイパー141によってノズル面45をワイピングする処理である。ここでは、ワイピング制御部167は、ワイピング機構145(
図12参照)の上方にインクヘッド41が移動するように、ヘッド移動機構30を制御する。そして、インクヘッド41がワイピング機構145の上方を通過するとき、ワイピング制御部167は、ワイパー141を回転させ、ワイパー141でインクヘッド41のノズル面45をワイピングする。ここでは、インクヘッド41、42、43、44に対して、同時にワイピングが行われずに、インクヘッド41、42、43、44の順でワイピングが行われる。以上のようなステップを実行することで、インクヘッド41~44に対するクリーニングが終了する。
【0108】
以上、本実施形態では、
図13に示すように、記憶装置150には、吸引位置P51と、空吸引位置P52と、微小開放位置P53とが記憶されている。
図11に示すように、吸引位置P51は、キャップ111の端部118がノズル面45に接触しており、かつ、吸引ポンプ131によってノズル51、52内のインクが吸引されるときのキャップ111の位置である。
図9に示すように、空吸引位置P52は、キャップ111の端部118がノズル面45から離間しており、かつ、吸引ポンプ131によってノズル51、52内のインクが吸引されないときのキャップ111の位置である。
図10に示す微小開放位置P53は、吸引位置P51と空吸引位置P52との間に位置する。制御装置160は、キャップ111を吸引位置P51に配置した状態で、ノズル51、52からインクを吸引する吸引処理(
図15のステップS201)と、吸引処理の後、キャップ111を微小開放位置P53に向かって移動させる第1移動処理(
図15のステップS202)と、第1移動処理の後、キャップ111を微小開放位置P53に配置した状態で、キャップ111の移動を停止させる微小開放位置処理(
図15のステップS203)と、を実行するように構成されている。
【0109】
本実施形態では、吸引処理(
図15のステップS201)の後に、いわゆる負圧調整処理が実行されずに、微小開放位置処理(
図15のステップS203)が実行される。吸引処理のときに吸引ポンプ131が駆動することで、キャップ111内が負圧になる。キャップ111内が負圧の状態で、第1移動処理(
図15のステップS202)によってキャップ111が微小開放位置P53に移動し、微小開放位置処理が実行される。微小開放位置処理が実行される直後では、キャップ111内は負圧であるため、キャップ111内のインクが吸引される。このように、本実施形態に係るプリンタ100では、いわゆる負圧調整処理が実行されずに、キャップ111内のインクが吸引される微小開放位置処理が実行される。よって、負圧調整処理に要する時間を短縮することができるため、キャップ111内のインクがノズル51、52に入り込む可能性がある時間を短縮することができる。したがって、ノズル51、52にキャップ111内のインクを入り込み難くすることができる。
【0110】
また、本実施形態では、微小開放位置処理のときのキャップ111の位置である微小開放位置P53は、空吸引位置P52と比較して、キャップ111の端部118がノズル面45に接近している位置である。よって、ノズル面45とキャップ111との隙間を比較的に小さくすることができるため、キャップ111内のインクが飛散し難くすることができる。
【0111】
本実施形態では、
図9および
図10に示すように、空吸引位置P52におけるキャップ111の最上端118aとノズル面45との距離は、第1距離D1である。微小開放位置P53におけるキャップ111の最上端118aとノズル面45との距離は、第1距離D1の1/10以下の第2距離D2である。このことによって、微小開放位置P53では、空吸引位置P52と比較して、キャップ111の端部118がノズル面45により接近している。よって、微小開放位置P53において、ノズル面45とキャップ111の端部118との隙間をより小さくすることができる。したがって、微小開放位置処理を実行しているときに、ノズル51、52にキャップ111内のインクをより入り込み難くすることができる。
【0112】
本実施形態では、制御装置160は、キャップ111を吸引位置P51から微小開放位置P53に移動させる第1移動処理を実行しているとき、
図16に示すように、吸引ポンプ131を停止するように構成されている。例えば吸引処理、および、微小開放位置処理において、ダンパー74a、74b(
図4参照)によってインク供給路72a、72b(
図4参照)のインク量を検出する処理が行われる。ここで、仮に第1移動処理を実行しているときに、吸引ポンプ131が駆動している場合、吸引処理において検出されたインク量と、微小開放位置処理において検出されたインク量とにバラツキが生じることがあり得る。しかしながら、本実施形態では、第1移動処理を実行しているときには、吸引ポンプ131が停止しているため、上記のバラツキの発生を抑制することができる。
【0113】
本実施形態では、
図10に示すように、微小開放位置P53は、キャップ111の端部118の一部(ここでは最上端118a)がノズル面45に接触し、かつ、端部118の他の一部(ここでは最上端118a以外の上端)がノズル面45から離れているときのキャップ111の位置である。このことによって、吸引位置P51(
図11参照)に配置されたキャップ111が微小開放位置P53に向かって移動する際、
図10に示すように、キャップ111の端部118の上端の全てが同時にノズル面45から離れずに、端部118は、順にノズル面45から離れていく。
図10の一例では、端部118の左側の部位から順にノズル面45から離れていく。よって、ノズル面45に装着されたキャップ111がノズル面45から離間する際、キャップ111の端部118に付着しているインクが飛び散り難い。
【0114】
また、本実施形態では、キャップユニット110(
図7参照)のキャッピング機構120(
図7参照)は、
図9に示すように、ノズル面45に対してキャップ111を傾けて移動させるように構成されている。このことによって、キャップ111自体を傾けるという簡易的な方法でキャップ111の上端面を傾けることができる。
【0115】
本実施形態では、制御装置160は、微小開放位置処理を実行しているとき、
図16に示すように、吸引ポンプ131を駆動するように構成されている。このことによって、微小開放位置処理において、キャップ111内のインクを吸引ポンプ131によって積極的に吸引することができる。
【0116】
本実施形態では、制御装置160は、微小開放位置処理を実行しているとき、所定の時間、キャップ111を微小開放位置P53に配置させ続けるように構成されている。微小開放位置P53においてキャップ111とノズル面45との間には、微小な隙間が形成されており、その隙間から大気がキャップ111内に取り込まれる。そのため、キャップ111が微小開放位置P53に配置されている状態を、所定の時間、維持することで、キャップ111内の負圧が解除される方向に移行し易い。
【0117】
本実施形態では、制御装置160は、微小開放位置処理の後、キャップ111を空吸引位置P52に向かって移動させる第2移動処理(
図15のステップS204)と、第2移動処理の後、キャップ111を空吸引位置P52に配置した状態で、吸引ポンプ131を駆動させる空吸引処理と、を実行するように構成されている。
図16に示すように、第1移動処理(
図15のステップS202)におけるキャップ111の単位時間当たりの移動量は、第1移動量M1である。第2移動処理におけるキャップ111の単位時間当たりの移動量は、第1移動量M1よりも多い第2移動量M2である。このことによって、第1移動処理におけるキャップ111の移動速度は、第2移動処理におけるキャップ111の移動速度よりも遅い。そのため、第1移動処理において、キャップ111内のインクが上部から漏れ難くすることができる。
【0118】
本実施形態では、微小開放位置P53において、吸収体119はノズル面45から離間して配置されている。仮に吸収体119がノズル面45に接触している場合、ノズル面45が吸収体119によって傷が付き、その結果、ノズル51、52の吐出不良を引き起こす可能性があり得る。しかしながら、本実施形態では、吸収体119がノズル面45に接触していないため、吸収体119によってノズル面45が傷付くことを抑制することができる。
【0119】
本実施形態では、インクヘッド41のノズル面45に形成されたノズル51、52において、ノズル51から吐出されるインクは、ノズル52から吐出されるインクと異なるインクである。制御装置160は、少なくとも微小開放位置処理の後に、ノズル面45からキャップ111を離間させ、ワイパー141によってノズル面45をワイピングするワイピング処理を実行する。本実施形態では、吸引処理のとき、キャップ111内には、ノズル51、52から吸引された異なる2種類のインクが混在した混在インクが溜められる。微小開放位置処理では、微小開放位置P53にキャップ111を移動させた状態で、キャップ111内の混在インクを吸引している。微小開放位置処理では、例えばノズル面45に混在インクが付着している場合であっても、ノズル面45に付着した混在インクは、キャップ111内の混在インクと共に吸引され易い。よって、ワイピング処理時において、ノズル面45をワイピングする際、インクヘッド41のノズル51、52に混在インクが入り込み難い。
【0120】
本実施形態では、制御装置160は、微小開放位置P53を決定する微小開放位置決定処理が実行されるように構成されている。微小開放位置決定処理には、離間移動処理と、離間圧力判定処理と、位置記憶処理とが含まれる。例えば、キャップ111がインクヘッド41のノズル面45に装着されている状態で、吸引ポンプ131を駆動させることで、インクヘッド41内のインクが吸引され、キャップ111内に排出される。このとき、インクヘッド41に係るインク供給路72aおよび72b内の圧力は、インクが排出されたために下がり、所定の検出圧力以下となる。一方、インク供給路72aおよび72b内の圧力が、所定の検出圧力より大きい場合には、インクヘッド41内のインクが吸引されていない状態となる。このように、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131によって排出された場合から、排出されない場合に切り替わったときのノズル面45に対するキャップ111の位置が、キャップ111内のインクを吸引し、かつ、ノズル51、52内のインクを吸引しない位置であって、ノズル面45に対してキャップ111が最も接近している位置である。本実施形態では、インク供給路72aおよび72b内の圧力を検出することで、キャップ111内のインクを吸引し、かつ、ノズル51、52内のインクを吸引しないことが可能であって、ノズル面45に対してキャップ111が最も接近している位置を設定することができる。このような位置を微小開放位置P53とし、微小開放位置P53で微小開放位置処理を行うことで、インクヘッド41内に混在インクが入り込むことを抑制することができる。また、ノズル面45に対してキャップ111が比較的に接近した状態であるため、キャップ111内のインクが外部に漏れることを抑制することができる。よって、微小開放位置処理を適切に行うことができる。
【0121】
本実施形態では、離間移動処理と離間圧力判定処理とを含む離間処理(
図14BのステップS103)が行われる前に、接近移動処理と接近圧力判定処理とを含む接近処理(
図14AのステップS102)が行われている。ここで、接近処理では、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131によって吸引されない場合から、吸引される場合に切り替わったタイミングを判定している。一方、離間処理では、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131によって吸引された場合から、吸引されない場合に切り替わったタイミングを判定している。吸引ポンプ131によって吸引されたインクは、廃棄されるものであり、無駄なインクとなる。そのため、離間処理の処理時間が長い程、廃棄されるインクが多くなり、インクの無駄となる。しかしながら、本実施形態では、離間処理の前に接近処理を行うことで、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131によって吸引されない凡その位置を特定することができる。よって、接近処理の後に離間処理を行うことで、離間処理の処理時間を比較的に短くすることができ、吸引ポンプ131に吸引されるインクの量を軽減することができる。よって、微小開放位置P53を決定するための制御を行うことで廃棄されるインクの量を軽減することができる。
【0122】
図5に示すダンパー74aおよび74bは、印刷時にインクの供給のタイミングを制御するために用いられるものである。本実施形態では、ダンパー74aおよび74bのフィラーセンサ88を使用して、インク供給路72aおよび72bの圧力を検出することで、微小開放位置P53を決定している。よって、微小開放位置P53を決定するための専用の圧力センサをインク供給路72aおよび72bに設けなくてもよいため、部品点数を減らすことができると共に、製造コストを抑えることができる。
【0123】
なお、本実施形態には、制御装置160によって実行される吸引処理、第1移動処理、微小開放位置処理、第2移動処理、空吸引処理、および、ワイピング処理をコンピュータに実現させるためのクリーニング用のコンピュータプログラムが含まれる。また、本実施形態には、制御装置160によって実行される微小開放位置決定処理(詳しくは、接近移動処理、接近圧力判定処理、離間移動処理、離間圧力判定処理、および、位置記憶処理)をコンピュータに実現させるための微小開放位置決定用のコンピュータプログラムが含まれる。
【0124】
以上、本実施形態に係るインクジェットプリンタ100について説明した。上記実施形態では、ステップS202の第1移動処理、および、ステップS204の第2移動処理では、吸引ポンプ131~134は停止していた。しかしながら、第1移動処理では、第1移動制御部163は、吸引ポンプ131~134を駆動させるように制御してもよい。第2移動処理では、第2移動制御部165は、吸引ポンプ131~134を駆動させるように制御してもよい。
【0125】
上記実施形態では、ステップS203の微小開放位置処理では、吸引ポンプ131~134は駆動していた。しかしながら、微小開放位置処理において、吸引ポンプ131~134は停止されていてもよい。この場合であっても、吸引処理および第1移動処理におけるキャップ111内の負圧の状態が、微小開放位置処理においても維持されるため、キャップ111内のインクが吸引される。よって、いわゆる負圧調整処理を省略することができるため、キャップ111内のインクがノズルに入り込む可能性がある時間を短縮することができる。したがって、ノズル51、52にキャップ111内のインクを入り込み難くすることができる。なお、微小開放位置処理において、吸引ポンプ131~134を停止するためには、キャップ111内の負圧が高い(例えば通常の吸引処理時の圧力程度であり、例えば-50kPa以下程度)場合や、ステップS205の空吸引処理が省略されずに実行される場合であることが好ましい。
【0126】
上記実施形態では、ステップS205の空吸引処理では、吸引ポンプ131~134は駆動していた。しかしながら、ステップS203の微小開放位置処理において、キャップ111内のインクのほとんど(例えばキャップ111内のインクの9割以上の量)が吸引されている場合、空吸引制御部166は、吸引ポンプ131~134を停止させるように制御してもよい。なお、ステップS203の微小開放位置処理において、キャップ111内のインクのほとんどが吸引された場合、ステップS204の第2移動処理、および、ステップS205の空吸引処理は省略されてもよい。この場合、微小開放位置処理には、空吸引処理が含まれることになる。
【0127】
上記実施形態では、キャップ111は、キャップ111自体が傾けられることで、キャップ111の端部118が傾けられた状態で吸引位置P51と微小開放位置P53との間、および、微小開放位置P53と空吸引位置P52との間を移動している。しかしながら、
図17の他の実施形態のように、キャップ111は、傾けられずに移動可能に構成されていてもよい。この場合、キャップ111の端部118の上端面は、傾斜していてもよい。この端部118の上端面が傾斜しているとは、端部118の上端面が、キャップ111の底面に対して傾斜していることをいう。このことによって、キャップ111自体を傾斜させることなく、ノズル面45に対して端部118の上端面を傾けることができる。
【0128】
上記実施形態では、微小開放位置P53では、キャップ111の端部118の一部(ここでは最上端118a)がノズル面45に接触し、端部118の他の一部は、ノズル面45から離間していた。しかしながら、微小開放位置P53において、キャップ111の端部118の最上端118aは、ノズル面45に接触しておらず、最上端118aとノズル面45との間に僅かながらの隙間が形成されていてもよい。
【0129】
上記実施形態では、1つのインクヘッドから異なる種類のインクが吐出されていた。1つのインクヘッドには、2つのインク供給システムが接続されていた。しかしながら、1つのインクヘッドから同じインクが吐出されてもよい。1つのインクヘッドには、1つのインク供給システムが接続されていてもよい。
【0130】
上記実施形態では、キャッピング機構120は、ヘッド移動機構30に連動して、キャップ111~114を昇降させていた。しかしながら、本発明に係るキャッピング機構は、駆動モータを備え、この駆動モータを駆動させることで、キャップ111~114を昇降させてもよい。また、本発明に係るキャッピング機構は、第1位置P1にインクヘッド41~44が到達した後に、第1位置P1において、キャップ111~114を昇降させるように構成されていてもよい。
【0131】
上記実施形態では、接近処理(
図14AのステップS102)の後に、離間処理(
図14BのステップS103)が行われていた。しかしながら、この接近処理は、省略することが可能である。この場合、離間処理は、ノズル面45にキャップ111~114が装着されている状態の位置(例えば、第1位置P1)から開始されるとよい。
【0132】
上記実施形態では、接近圧力判定処理(ここでは、接近圧力判定部182の制御)では、第1接近検出圧力および第2接近検出圧力のうち少なくとも一方が判定圧力以下であるか否かを判定していた。そして、離間移動処理(ここでは、離間移動制御部183の制御)では、第1接近検出圧力および第2接近検出圧力のうち少なくとも一方が判定圧力以下であるとき、ノズル面45に対してキャップ111~114が離間する方向にキャップ111~114を移動させていた。しかしながら、接近圧力判定部182は、第1接近検出圧力および第2接近検出圧力が共に判定圧力以下であるか否かを判定してもよい。この場合、離間移動制御部183は、接近圧力判定部182によって、第1接近検出圧力および第2接近検出圧力が共に判定圧力以下であるとき、ノズル面45に対してキャップ111~114が離間する方向にキャップ111~114を移動させる。
【0133】
上記実施形態では、本発明の第1圧力検出機構および第2圧力検出機構は、ダンパー74aおよび74bのフィラーセンサ88であった。しかしながら、第1圧力検出機構および第2圧力検出機構は、インク供給路72aおよび72bに設けられた、いわゆる圧力センサであってもよい。
【符号の説明】
【0134】
41 インクヘッド
45 ノズル面
51 ノズル
52 ノズル(他のノズル)
100 プリンタ(インクジェットプリンタ)
110 キャップユニット
111~114 キャップ
120 キャッピング機構
131~134 吸引ポンプ(吸引装置)
141 ワイパー
145 ワイピング機構
150 記憶装置
160 制御装置
162 吸引制御部
163 第1移動制御部
164 微小開放位置制御部
165 第2移動制御部
166 空吸引制御部
167 ワイピング制御部