(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/512 20060101AFI20220328BHJP
A61F 13/475 20060101ALI20220328BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
A61F13/512 210
A61F13/475 100
A61F13/511 400
(21)【出願番号】P 2016060568
(22)【出願日】2016-03-24
【審査請求日】2019-03-05
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 克
【合議体】
【審判長】久保 克彦
【審判官】柳本 幸雄
【審判官】井上 茂夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-291455(JP,A)
【文献】特表2003-503156(JP,A)
【文献】特開2003-126143(JP,A)
【文献】特開2010-17394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/512
A61F13/511
A61F13/475
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、
前記トップシートは、2枚以上の液透過性の不織布から構成され、
身体側最上層のシートのみに、左右一対の第1の切れ込みが、前記吸収性物品の長手方向に延びる吸収性物品の中心線を中心に左右略対称に形成されており、
前記第1の切れ込みは、略コの字状に形成され
ており、前記吸収性物品の幅方向両端部に立体ギャザーが有
り、幅方向外側方向に向かって肌当接側方向に
使用時に反って開口しており、
前記第1の切れ込み及び
前記第1の切れ込みの切断線に包囲されたシート領域が反ることによって、トップシートと切断線に包囲されたシート領域との間にできる空隙である開口部の近傍において、前記身体側最上層のシートは、下層に位置するシートに接合されておらず、前記開口部における前記身体側最上層のシートと、前記下層に位置するシートとが、前記吸収性物品の着用時に離間可能であ
り、
前記第1の切れ込みに加え、前記身体側最上層のシートのみに、第2の切れ込みが、前記吸収性物品の長手方向端部から、前記吸収性物品の長手方向における寸法の3分の1以下の位置に設けられ、
前記第2の切れ込みは、長手方向に直交する方向に設けられるとともに、略コの字状に形成され、身体側からの平面視で長手方向中心方向又は長手方向外側方向に向かって使用時に反って開口しており、
前記第2の切れ込み及び前記第2の切れ込みの切断線に包囲されたシート領域が反ることによって、トップシートと切断線に包囲されたシート領域との間にできる空隙である開口部の近傍において、前記身体側最上層のシートは、下層に位置するシートに接合されておらず、前記開口部における前記身体側最上層のシートと、前記下層に位置するシートとが、前記吸収性物品の着用時に離間可能であり、
前記第1の切れ込みの幅方向の寸法が5mm以上50mm以下であり、長手方向の寸法は、幅方向の寸法よりも大きく、
前記第2の切れ込みの長手方向の寸法が5mm以上50mm以下であり、幅方向の寸法は、長手方向の寸法よりも大きい、吸収性物品。
【請求項2】
吸収性物品が幅方向両端部に
前記立体ギャザーを有し、前記第1の切れ込みが、前記立体ギャザーの前記トップシートとの接合部よりも内側に、長手方向に沿って形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記身体側最上層のシートが、2枚の不織布が接合している不織布シートから構成される、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液の漏れが抑制され、吸収性に優れた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に大人用紙おむつには、テープ止めタイプ、尿取りパッド、パンツタイプ等があり、これらの紙おむつは着用対象者の排泄における介護の必要度に応じて適宜選択されて使用される。これらの吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。このような構成を採用することにより、尿等の体液は、吸収性物品のトップシートを透過して吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。
【0003】
ところで、テープ止めタイプやパンツタイプの紙おむつは、それ自体を単独で使用する場合と、その内側に尿取りパッドを併用する場合があるが、現在は、尿取りパッドと併用し、吸収性物品である尿取りパッドを、トップシート上に重ねて使用する場合がほとんどである。これは、紙おむつ1枚当たりのコストが高いためで、テープ止めタイプやパンツタイプの紙おむつに比して安価な尿取りパッドで排泄物を吸収して保持した後、尿取りパッドのみを交換することで、排泄後においても、よりコストの高いテープ止めタイプやパンツタイプの紙おむつを交換せずに済み、経済的に低いコストで紙おむつを使用できるためである。
【0004】
ここで、パンツタイプの紙おむつと併用される尿取りパッドについては、その全体を紙おむつの内装パッドの立体ギャザーの内側に収める必要があるため、尿取りパッドの長さ、幅、面積ともに、テープ止めタイプの紙おむつと併用される尿取りパッドよりも小さくせざるを得ない。そして、尿取りパッドのサイズが小さいために、吸収した尿が広がりやすく、尿取りパッドの前後左右端部から漏れやすいという問題点があった。体液の横漏れや前後漏れを防止する手段としては、従来、典型的には、立体ギャザーを形成する手段が用いられていた。例えば、特許文献1には、トップシートと、バックシートと、吸収体と、サイドフラップとを有する吸収性物品であって、装着時に股下域において、サイドフラップの側縁と折り返し線の間の接着固定された部分を基端部として上方に起立する二重の立体ギャザーが形成されることを特徴とする吸収性物品が開示されている。
【0005】
しかしながら、立体ギャザーの形成には、立体ギャザーシートや弾性部材等の追加の部材が必要になるとともに、立体ギャザーを形成するための追加の設備も必要になるため、立体ギャザーを有していない吸収性物品に比べ、立体ギャザーを有する吸収性物品はコスト高となる、という問題がある。さらに、立体ギャザーを設けたとしても、立体ギャザーにより横漏れや前後漏れが防止されるのみで、吸収性物品の吸収性能自体については、改善されるものではなかった。
【0006】
排泄物の吸収性を改善した吸収性物品としては、特許文献2に、トップシートと、バックシートとの間に吸収体を有する吸収性物品において、トップシートに弁状の半開口を複数配列したことを特徴とする吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-179638号公報
【文献】特開2003-126143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献に記載の吸収性物品については、体液の漏れの防止と、体液の吸収性能の向上とを両立するという面からは、依然として十分なものではない。したがって、本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、体液の漏れが適切に防止されるとともに、体液の吸収性能も向上された吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、トップシートが、2枚以上の液透過性の不織布から構成され、身体側最上層のシートのみに、所定の性状を有する、前後左右の複数の切れ込みが形成された吸収性物品によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものと提供する。
【0010】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、前記トップシートは、2枚以上の液透過性の不織布から構成され、身体側最上層のシートのみに、左右一対の第1の切れ込みが、前記吸収性物品の長手方向に延びる吸収性物品の中心線を中心に左右略対称に形成されており、前記第1の切れ込みは、略コの字状に形成されており、前記吸収性物品の幅方向両端部に立体ギャザーが有り、幅方向外側方向に向かって肌当接側方向に使用時に反って開口しており、前記第1の切れ込み及び前記第1の切れ込みの切断線に包囲されたシート領域が反ることによって、トップシートと切断線に包囲されたシート領域との間にできる空隙である開口部の近傍において、前記身体側最上層のシートは、下層に位置するシートに接合されておらず、前記開口部における前記身体側最上層のシートと、前記下層に位置するシートとが、前記吸収性物品の着用時に離間可能であり、前記第1の切れ込みに加え、前記身体側最上層のシートのみに、第2の切れ込みが、前記吸収性物品の長手方向端部から、前記吸収性物品の長手方向における寸法の3分の1以下の位置に設けられ、前記第2の切れ込みは、長手方向に直交する方向に設けられるとともに、略コの字状に形成され、身体側からの平面視で長手方向中心方向又は長手方向外側方向に向かって使用時に反って開口しており、前記第2の切れ込み及び前記第2の切れ込みの切断線に包囲されたシート領域が反ることによって、トップシートと切断線に包囲されたシート領域との間にできる空隙である開口部の近傍において、前記身体側最上層のシートは、下層に位置するシートに接合されておらず、前記開口部における前記身体側最上層のシートと、前記下層に位置するシートとが、前記吸収性物品の着用時に離間可能であり、前記第1の切れ込みの幅方向の寸法が5mm以上50mm以下であり、長手方向の寸法は、幅方向の寸法よりも大きく、前記第2の切れ込みの長手方向の寸法が5mm以上50mm以下であり、幅方向の寸法は、長手方向の寸法よりも大きい、吸収性物品である。
【0011】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、吸収性物品が幅方向両端部に立体ギャザーを有し、前記第1の切れ込みが、前記立体ギャザーの前記トップシートとの接合部よりも内側に、長手方向に沿って形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、前記第1の切れ込みに加え、前記身体側最上層のシートのみに、第2の切れ込みが、前記吸収性物品の長手方向端部から、前記吸収性物品の長手方向における寸法の3分の1以下の位置に設けられ、前記第2の切れ込みは、長手方向に直交する方向に設けられるとともに、略コの字状に形成され、身体側からの平面視で長手方向中心方向又は長手方向外側方向に向かって開口しており、前記第2の切れ込み及び開口部の近傍において、前記身体側最上層のシートは、下層に位置するシートに接合されておらず、前記開口部における前記身体側最上層のシートと、前記下層に位置するシートとが、前記吸収性物品の着用時に離間可能であることを特徴とするものである。
【0013】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性物品であって、第1の切れ込みの幅方向の寸法が5mm以上50mm以下であり、長手方向の寸法は、幅方向の寸法よりも大きいことを特徴とするものである。
【0014】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性物品であって、第2の切れ込みの長手方向の寸法が5mm以上50mm以下であり、幅方向の寸法は、長手方向の寸法よりも大きいことを特徴とするものである。
【0015】
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記身体側最上層のシートが、2枚の不織布が接合しているシートから構成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の吸収性物品は、トップシートが2枚以上の液透過性の不織布から構成され、身体側最上層のシートのみに、所定の性状を有する左右一対の第1の切れ込みが、吸収性物品の長手方向に延びる吸収性物品の中心線を中心に左右略対称に形成されている。このため、トップシート上、幅方向に広がった体液を当該第1の切れ込みにより形成される開口部で捕捉することができ、排泄された体液の幅方向端部における横漏れを防止することができる。さらに、本発明の吸収性物品においては、第1の切れ込み及び開口部の近傍において、身体側最上層のシートが、下層に位置するシートと接合されておらず、開口部における身体側最上層のシートと、下層に位置するシートとが、吸収性物品の着用時に離間可能となっている。このため、身体側最上層のシートと離間している、下層に位置するシートの表面から、排泄された体液が迅速に吸収されるので、体液の迅速な吸収を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の吸収性物品の平面図を示す図面である(実施例1)。
【
図3】本発明の吸収性物品の平面図を示す図面である(実施例2)。
【
図5】比較例1の吸収性物品の平面図を示す図面である。
【
図6】比較例2の吸収性物品の平面図を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明の実施形態の説明の全体を通して、同じ要素には同じ符号を付している。
【0019】
<吸収性物品>
本明細書の説明において、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の装着時及び装着後の少なくとも一方をいう。吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後に亘る方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、身体側表面とは、吸収体23等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、衣類側表面とは、吸収体23等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。体液とは、尿、血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。さらに、吸収性物品1の用途は、特に限定されるものではなく、一般には、幼児又は成人用を問わず、テープ止めタイプの使い捨ておむつ、パンツタイプの使い捨ておむつ、尿取りパッド、軽失禁パッド、生理用品等であってもよいが、本発明は、パンツタイプの使い捨ておむつと併用される尿取りパッドに好適に適用される。
【0020】
図1及び
図3は、本発明の吸収性物品1の平面図を示す図面であり、
図2は、
図1のX
1-X
1断面図を、
図4は、
図3のX
2-X
2断面図を示す図面である。吸収性物品1は、身体側表面に配された液透過性のトップシート21と、トップシート21に対向して配置された液不透過性のバックシート22と、トップシート21とバックシート22との間に少なくとも1層配置された吸収体23と、を備えている。
【0021】
また、吸収性物品1には、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品1の長手方向に沿って、トップシート21上の幅方向両端部に、立体ギャザー用弾性部材24aを有する一対の立体ギャザー24を備えていてもよい。吸収性物品1の幅方向における立体ギャザー24の外端は、バックシート22に固定され、その内端はトップシート21に固着され、その中央はトップシート21に固定されない自由端となるように、立体ギャザーシート24bが配される。立体ギャザー用弾性部材24aを長手方向に沿って設けることで、立体ギャザー24が起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。立体ギャザー用弾性部材24aとしては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用され、立体ギャザーシート24bとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は不透液性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布等が使用される。
【0022】
なお、本発明の吸収性物品1は、立体ギャザー24を備えていてもよいが、
図3及び
図4に示すように、立体ギャザー24を備えていなくても、後述する第1の切れ込み213及び第2の切れ込み214の作用により、体液の横漏れや背漏れが効果的に防止される。
【0023】
[トップシート]
トップシート21は、体液が吸収体へと移動するような液透過性を備えた基材から形成すればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布等から形成される。また、トップシート21には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート21には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。さらに、強度及び加工性の点から、トップシート21を構成する不織布1枚あたりの坪量は、13g/m2以上50g/m2以下であることが好ましい。トップシート21の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体23へと誘導するために必要とされる、吸収体23を覆う形状であればよい。
【0024】
本発明の吸収性物品1においては、トップシート21は2枚以上の不織布から構成されている。トップシート21を構成する不織布の枚数は、2枚以上4枚以下とすることが好ましく、2枚以上3枚以下とすることがより好ましい。また、トップシート21を構成する2枚以上の不織布の組み合わせとしては、同一の種類の不織布を組み合わせて用いてもよいし、異なる種類の不織布を組み合わせて用いてもよい。なお、身体側最上層の2枚の不織布を接合することにより形成した不織布シートにより、身体側最上層のシート211を構成することが好ましい。これにより、身体側最上層のシート211の剛性が向上し、後述する第1の切れ込み213が起立性を有するものとなる。
【0025】
(第1の切れ込み)
図1及び
図3に示すように、本発明の吸収性物品1のトップシート21には、身体側最上層のシート211のみに、左右一対の第1の切れ込み213が、吸収性物品1の長手方向に延びる吸収性物品の中心線Aを中心として左右略対称に形成されている。すなわち、本発明の吸収性物品1のトップシート21においては、長手方向に延びる前記吸収性物品の中心線Aより右寄りの部位と、左寄りの部位とに、当該中心線Aを中心として略対称の形状を有する、一対の第1の切れ込み213が形成されている。このため、トップシート21上、幅方向に広がった体液を第1の切れ込み213により形成される開口部215で捕捉することができ、排泄された体液の幅方向端部における横漏れを防止することができる。第1の切れ込み213は、略コの字状の形状を有しているが、2箇所の角部は角丸加工がなされていてもよい。2箇所の角部に角丸加工がなされていることにより、吸収性物品1を着用したときに、角部が着用者の肌に刺激を与えることを防止できる。
【0026】
第1の切れ込み213は、身体側からの平面視で、幅方向中心方向又は幅方向外側方向に向かって開口している。第1の切れ込み213が、幅方向中心方向又は幅方向外側方向に向かって開口していることにより、幅方向に広がる体液を、第1の切れ込み213で捕捉しやすくすることができる。第1の切れ込み213は、特に、
図3に示すように、幅方向中心方向に向かって開口していることが好ましい。
【0027】
図2及び
図4に示すように、本発明の吸収性物品1においては、第1の切れ込み213及び第1の切れ込み213により形成される開口部215の近傍において、身体側最上層のシート211は、下層に位置するシート212に接合されておらず、第1の切れ込み213により形成される開口部215における身体側最上層のシート211と、下層に位置するシート212とが、吸収性物品1の着用時に離間可能である。このため、身体側最上層のシート211と離間している、下層に位置するシート212の表面から、排泄された体液が迅速に吸収されるので、体液の迅速な吸収を担保することができる。
【0028】
ここで、
図1に示すように、吸収性物品1に立体ギャザー24が設けられる場合、第1の切れ込み213は、立体ギャザー24のトップシート21との接合部よりも内側に、長手方向に沿って形成されていることが好ましい。このような構成を採用することにより、第1の切れ込み213により形成される開口部215に捕捉されなかった体液を、立体ギャザー24で捕捉できるほか、立体ギャザー24の内側に滞留している体液を、身体側最上層のシート211から離間した、下層に位置するシート212の表面で迅速に吸収することもできる。
【0029】
第1の切れ込み213の幅方向の寸法は、5mm以上50mm以下であることが好ましく、10mm以上40mm以下であることがより好ましい。また、長手方向の寸法は、幅方向の寸法よりも大きいことが好ましく、30mm以上200mm以下であることがより好ましい。
【0030】
(第2の切れ込み)
図1及び
図3に示すように、本発明の吸収性物品1のトップシート21には、身体側最上層のシート211のみに、第2の切れ込み214が設けられていることが好ましい。第2の切れ込み214は、吸収性物品1の長手方向端部から、吸収性物品1の長手方向における寸法の3分の1以下の位置に設けられていることが好ましく、4分の1以下の位置に設けられていることがより好ましい。さらに、第2の切れ込み214は、吸収性物品1のもう一方の長手方向端部から長手方向における寸法の3分の1以下の位置に設けられていてもよい(図示せず)。第2の切れ込み214は、吸収性物品1の長手方向に直交する方向に沿って設けられるとともに、身体側からの平面視で、長手方向中心方向又は長手方向外側方向に向かって開口していることが好ましい。これにより、トップシート21上、長手方向に広がった体液を第2の切れ込み214により形成される開口部で捕捉することができ、排泄された体液の長手方向端部における前後漏れを防止することができる。また、第2の切れ込み214が、長手方向中心方向又は長手方向外側方向に向かって開口していることにより、長手方向に広がる体液を、第2の切れ込み214で捕捉しやすくすることができる。
図1及び
図3に示すように、第2の切れ込み214は、特に、長手方向中心方向に向かって開口していることが好ましい。
【0031】
第2の切れ込み214は、略コの字状に形成されていることが好ましいが、2箇所の角部は角丸加工がなされていてもよい。2箇所の角部に角丸加工がなされていることにより、吸収性物品1を着用したときに、角部が着用者の肌に刺激を与えることを防止できる。
【0032】
本発明の吸収性物品1においては、第2の切れ込み214及び第2の切れ込み214により形成される開口部の近傍において、身体側最上層のシート211は、下層に位置するシート212に接合されておらず、第2の切れ込み214により形成される開口部における身体側最上層のシート211と、下層に位置するシート212とが、吸収性物品1の着用時に離間可能である。このため、身体側最上層のシート211と離間している、下層に位置するシート212の表面から、排泄された体液が迅速に吸収されるので、体液の迅速な吸収を担保することができる。
【0033】
第2の切れ込み214の長手方向の寸法は、5mm以上50mm以下であることが好ましく、10mm以上40mm以下であることがより好ましい。また、幅方向の寸法は、長手方向の寸法よりも大きいことが好ましく、30mm以上150mm以下であることがより好ましい。
【0034】
[バックシート]
バックシート22は、吸収体23が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成すればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0035】
強度及び加工性の点から、バックシート22の坪量は、15g/m2以上40g/m2以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート22は、通気性を持たせることが好ましい。バックシート22に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート22にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0036】
[吸収体]
吸収体23は、基材としての吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(SAP)と、を含有することが好ましい。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体23の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、100g/m2以上800g/m2以下の坪量とすることが好ましい。
【0037】
吸収体23の高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。吸収体23のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、50g/m2以上500g/m2以下の坪量とすることが好ましく、15質量%以上50質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0038】
吸収体23において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したもの、あるいは、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートとしたものであることが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体23の形状の安定化の目的から、吸収体23をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0039】
吸収体23は、上層吸収体と下層吸収体とを積層してなるものであることが好ましい。この場合、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の長さは、上層吸収体の長さが下層吸収体の長さより長くてもよく、上層吸収体の長さが下層吸収体の長さと同じであってもよく、上層吸収体の長さが下層吸収体の長さより短くてもよい。
【0040】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法は、周知の方法を採用することができ、例えば、(A)吸収性繊維を高吸収性ポリマーとともに積繊して吸収体マットを作成し、吸収体23を形成する工程、(B)トップシート21と立体ギャザー24をホットメルト系接着剤で固定・一体化する工程、(C)トップシート21、立体ギャザー24、及びバックシート22の内側にホットメルト系接着剤を塗工する工程、(D)集合ドラムにおいて、吸収体23の上部にトップシート21を、吸収体23の下部にバックシート22を配置し、各構成部材を固定・一体化する工程、(E)吸収性物品1の半製品をカッター装置により製品寸法でカットし、個々の吸収性物品1を切り離す工程、を有する製造方法等を挙げることができる。そして、本発明においてトップシート21を積層するに先立って、任意のカッター等により、トップシート21に第1の切れ込み213や第2の切れ込み214を形成しておけばよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
<実施例1>
(吸収体の作製)
パルプシートを粉砕して解繊したフラッフパルプ20gと、高吸収性ポリマー6gとをともに積繊した吸収体マットを準備し、長さ420mm、幅150mmにカットした。この吸収体をトップシート及びバックシートとともに積層するとともに、1対の横漏れ防止用立体ギャザーを形成し、長さ480mm、幅200mmの尿取りパッドを作製し、実施例1のサンプルとした。なお、トップシートとしては、身体側にエアスルー不織布(坪量20g/m
2)を2枚と、その下層にスパンボンド不織布(15g/m
2)を1枚用い、バックシートとしては、通気性ポリエチレンフィルム(坪量35g/m
2)を用いるとともに、トップシートのうち、身体側のエアスルー不織布を接合して一体化し、身体側最上層となる一体化したエアスルー不織布のみに、長手方向の寸法が120mm、幅方向の寸法が25mmである、幅方向外側に向かって開口する1対の第1の切れ込みを形成するとともに、長手方向の寸法が25mm、幅方向の寸法が80mmである、長手方向中心部に向かって開口する1つの第2の切れ込みを形成した。身体側最上層となる一体化したエアスルー不織布と、その下層となるスパンボンド不織布とは、第1の切れ込み及び第2の切れ込み、並びにこれらの開口部が離間可能なようにした。得られた尿取りパッドの概要を
図1及び
図2に示す。得られた尿取りパッドの吸収速度、液戻り量を以下に従って測定・評価するとともに、モニターテストの官能評価により、横漏れし難さ、背漏れし難さを評価した。得られた結果を表1に示す。
【0043】
(吸収速度)
外径80mmの円柱の中央に内径75mmの穴が開いており、重さ100gとした測定冶具を、トップシートを上に向けた状態で、尿取りパッドの長手方向、かつ幅方向の中央部の上に置き、上部の穴から生理食塩水150mlを投下し、生理食塩水が尿取りパッドに接触した時点から、測定治具中央円内の円周に生理食塩水が完全に吸い込まれるまでを終点として時間を計測し、吸収速度とした。
【0044】
(液戻り量)
吸収性物品の中央に生理食塩水300mlを注入し、10分経過後に、あらかじめ重量を測定したろ紙(ADVANTEC社製No.2ろ紙、直径55mm)を注入部の中心に置き、ろ紙の上に687gの錘を載せた(圧力;35gf/cm2)。錘を載せてから1分経過後に、ろ紙の重量を測り、試験前後のろ紙の重量差(g)を液戻り量とした。液戻り量は、N=10サンプルについて行ったものの平均値とした。液戻り量が少ないほど吸収性能に優れる。
【0045】
(横漏れし難さ)
20名のパネラーにより、吸収性物品の着用時の横漏れについて、「横漏れがある」または「横漏れがない」の選択で調査を行い、以下の基準により評価を行った。
◎:「横漏れがない」が16人以上20人以下のとき
○:「横漏れがない」が11人以上15人以下のとき
△:「横漏れがない」が6人以上10人以下のとき
×:「横漏れがない」がいないか、1人以上5人以下の時
【0046】
(背漏れし難さ)
20名のパネラーにより、吸収性物品の着用時の背漏れについて、「背漏れがある」または「背漏れがない」の選択で調査を行い、以下の基準により評価を行った。
◎:「背漏れがない」が16人以上20人以下のとき
○:「背漏れがない」が11人以上15人以下のとき
△:「背漏れがない」が6人以上10人以下のとき
×:「背漏れがない」がいないか、1人以上5人以下の時
【0047】
<実施例2>
図3及び
図4に示すように、第1の切れ込みを、開口部が幅方向内側を向くように形成し、立体ギャザーを形成しなかった点以外は、実施例1と同様の方法により尿とりパッドを作製して、実施例2のサンプルとし、実施例1と同一の試験・評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0048】
<比較例1及び2>
図5及び
図6に示すように、第1の切れ込み及び第2の切れ込みを形成しなかった点以外は、実施例1及び2と同様の方法により、尿とりパッドを作製して、比較例1及び2のサンプルとし、実施例1と同一の試験・評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0049】
【0050】
表1に示すように、実施例1及び2の吸収性物品においては、第1の切れ込み及び第2の切れ込みを形成していない比較例1及び2の吸収性物品と比較して、吸収速度が有意に向上するとともに、体液の横漏れ及び背漏れについても、より改善されたものとなった。このような結果より、本発明によれば、体液の漏れが適切に防止されるとともに、体液の吸収性能も向上した吸収性物品を提供可能であることが分かる。
【符号の説明】
【0051】
1 吸収性物品
21 トップシート
211 身体側最上層のシート
212 下層に位置するシート
213 第1の切れ込み
214 第2の切れ込み
215 第1の切れ込みにより形成される開口部
22 バックシート
23 吸収体
24 立体ギャザー
24a 立体ギャザー用弾性部材
24b 立体ギャザーシート
A 長手方向に延びる吸収性物品の中心線
Y 長手方向
X 幅方向