(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】細分化信号の識別
(51)【国際特許分類】
A61B 5/367 20210101AFI20220328BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20220328BHJP
A61B 5/346 20210101ALI20220328BHJP
A61B 18/12 20060101ALN20220328BHJP
【FI】
A61B5/367
A61B5/33 100
A61B5/346
A61B18/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017004930
(22)【出願日】2017-01-16
【審査請求日】2020-01-16
(32)【優先日】2016-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル-タル
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ピー・エム・ホウベン
(72)【発明者】
【氏名】ヤニブ・ベン・ズリヘム
(72)【発明者】
【氏名】スタニスラフ・ゴールドバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ロイ・ウルマン
【審査官】▲瀬▼戸井 綾菜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0216438(US,A1)
【文献】国際公開第2012/097059(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0243641(US,A1)
【文献】米国特許第6236883(US,B1)
【文献】特開2015-171548(JP,A)
【文献】特表2012-509701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05- 5/0538
A61B 5/24- 5/398
A61B 13/00-18/18
A61F 1/00-17/00
A61N 1/00- 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細分化を使用する心臓アブレーションのための関心領域を決定するシステムの作動方法であって、
前記システムが以下のステップを実行し、
前記ステップは、
複数のセンサを介して、心電図(ECG)信号を検出する工程であって、各ECG信号は該複数のセンサのうちの1つを介して検出され、かつ心臓の電気活動を示す、工程と、
該複数のECG信号のそれぞれについて、1つ又は2つ以上の局所興奮到達時間(LAT)を決定する工程であって、該LATはそれぞれ、対応するECG信号の興奮到達時間を示す、工程と、
該複数のECG信号のそれぞれの、該決定した1つ又は2つ以上のLATに基づいて、1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び1つ又は2つ以上の永続因子マップを生成する工程であって、該1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び該1つ又は2つ以上の永続因子マップはそれぞれ、該心臓の該電気活動を表す、工程と、
該永続因子マップから、細分化されたECG信号の電位を含むパラメータを導出する工程であって、該電位は細分化窓内のECG信号の電位を複数の電位信号のテンプレートと比較し、前記細分化窓内のECG信号と類似する前記テンプレートのうち1つが、類似度に従い選択される、工程と、
該導出したパラメータを使用し、細分化領域の促進因子のエビデンス及び永続因子のエビデンスを示すマップを表示する工程と、を含み、
該心臓アブレーションのための関心領域は該細分化領域に従い決定され
、
前記ステップは、
前記LATをフィルタリングし、非細分化単一電位、短い二重電位及び長い二重電位を含む非細分化LATを取り除くことにより前記細分化を行う工程と、
前記フィルタリングしたLATを使用して細分化窓を見つける工程と、
該細分化窓を使用して細分化ECGを作成する工程と、
傾斜分析を使用し、電圧及び時間に対する前記細分化を表示する工程と
前記細分化窓においてピークバレー検出を行い、山と谷を検出する工程と、
該検出した山と谷の細分化傾斜を計算する工程と、
該検出した山と谷を使用して発生率を計算する工程と、
該発生率を使用して、単一電位傾斜について発生率細分化ファーフィールドを計算する工程と、
エビデンス数データを計算する工程と、
判定ルールを実行し、該判定ルールに基づく前記細分化ECGを出力する工程と、を更に含む、方法。
【請求項2】
前記ステップは、
表示デバイスに前記関心領域を表示する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細分化を使用する心臓アブレーションのための関心領域を決定するシステムであって、
複数のセンサであって、該複数のセンサはそれぞれ、経時的に複数の心電図(ECG)信号のうちの1つを検出するように構成され、各ECG信号は心臓の電気活動を示す、複数のセンサと、
1つ又は2つ以上のプロセッサを含む処理デバイスであって、
該複数のECG信号のそれぞれについて、1つ又は2つ以上の局所興奮到達時間(LAT)を決定することであって、該LATはそれぞれ、対応するECG信号の興奮到達時間を示す、ことと、
該複数のECG信号のそれぞれの、該決定した1つ又は2つ以上のLATに基づいて、1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び1つ又は2つ以上の永続因子マップを生成することであって、該1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び該1つ又は2つ以上の永続因子マップはそれぞれ、該心臓の該電気活動を表す、ことと、
該永続因子マップから、細分化されたECG信号の電位を含むパラメータを導出することであって、該電位は細分化窓内のECG信号の電位を複数の電位信号のテンプレートと比較し、前記細分化窓内のECG信号と類似する前記テンプレートのうち1つが、類似度に従い選択される、ことと、を行うように構成されている、処理デバイスと、
該導出したパラメータを使用し、細分化領域の促進因子のエビデンス及び永続因子のエビデンスを示すマップを表示するように構成されたディスプレイと、を含み、
該心臓アブレーションのための関心領域は該細分化領域に従い決定され
、
前記処理デバイスが、
前記LATをフィルタリングし、非細分化単一電位、短い二重電位及び長い二重電位を含む非細分化LATを取り除くことにより前記細分化を行うことと、
前記フィルタリングしたLATを使用して細分化窓を見つけることと、
該細分化窓を使用して細分化ECGを作成することと、
傾斜分析を使用し、電圧及び時間に対する前記細分化を表示することと、
前記細分化窓においてピークバレー検出を行い、山と谷を検出することと、
該検出した山と谷の細分化傾斜を計算することと、
該検出した山と谷を使用して発生率を計算することと、
該発生率を使用して、単一電位傾斜について発生率細分化ファーフィールドを計算することと、
エビデンス数データを計算することと、
判定ルールを実行し、該判定ルールに基づく前記細分化ECGを出力することと、を行うように更に構成されている、システム。
【請求項4】
前記ディスプレイは、前記関心領域を表示するように構成されている、請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
コンピュータプログラム命令が格納された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含むコンピュータソフトウェア製品であって、該命令は、コンピュータにより実行されると、該コンピュータに、
複数のセンサを介して、心電図(ECG)信号を検出する工程であって、各ECG信号は該複数のセンサのうちの1つを介して検出され、かつ心臓の電気活動を示す、工程と、
該複数のECG信号のそれぞれについて、1つ又は2つ以上の局所興奮到達時間(LAT)を決定する工程であって、該LATはそれぞれ、対応するECG信号の興奮到達時間を示す、工程と、
該複数のECG信号のそれぞれの、該決定した1つ又は2つ以上のLATに基づいて、1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び1つ又は2つ以上の永続因子マップを生成する工程であって、該1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び該1つ又は2つ以上の永続因子マップはそれぞれ、該心臓の該電気活動を表す、工程と、
該永続因子マップから、細分化されたECG信号の電位を含むパラメータを導出する工程であって、該電位は細分化窓内のECG信号の電位を複数の電位信号のテンプレートと比較し、前記細分化窓内のECG信号と類似する前記テンプレートのうち1つが、類似度に従い選択される、工程と、
該導出したパラメータを使用し、細分化領域の促進因子のエビデンス及び永続因子のエビデンスを示すマップを表示する工程と、を行わせ、
心臓アブレーションのための関心領域が該細分化領域に従い決定され
、
前記LATをフィルタリングし、非細分化単一電位、短い二重電位及び長い二重電位を含む非細分化LATを取り除くことにより前記細分化を行う工程と、
前記フィルタリングしたLATを使用して細分化窓を見つける工程と、
該細分化窓を使用して細分化ECGを作成する工程と、
傾斜分析を使用し、電圧及び時間に対する前記細分化を表示する工程と、
前記細分化窓においてピークバレー検出を行い、山と谷を検出する工程と、
該検出した山と谷の細分化傾斜を計算する工程と、
該検出した山と谷を使用して発生率を計算する工程と、
該発生率を使用して、単一電位傾斜について発生率細分化ファーフィールドを計算する工程と、
エビデンス数データを計算する工程と、
判定ルールを実行し、該判定ルールに基づく前記細分化ECGを出力する工程と、を更に含むコンピュータソフトウェア製品。
【請求項6】
細分化を使用する心臓アブレーションのための関心領域を決定するシステムの作動方法であって、
前記システムが以下のステップを実行し、
前記ステップは、
複数のセンサを介して、心電図(ECG)信号を検出する工程であって、各ECG信号は該複数のセンサのうちの1つを介して検出され、かつ心臓の電気活動を示す、工程と、
該複数のECG信号のそれぞれについて、1つ又は2つ以上の局所興奮到達時間(LAT)を決定する工程であって、該LATはそれぞれ、対応するECG信号の興奮到達時間を示す、工程と、
該複数のECG信号のそれぞれの、該決定した1つ又は2つ以上のLATに基づいて、1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び1つ又は2つ以上の永続因子マップを生成する工程であって、該1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び該1つ又は2つ以上の永続因子マップはそれぞれ、該心臓の該電気活動を表す、工程と、
該永続因子マップから、細分化されたECG信号の電位を含むパラメータを導出する工程であって、該電位は細分化窓内のECG信号の電位を複数の電位信号のテンプレートと比較し、前記細分化窓内のECG信号と類似する前記テンプレートのうち1つが、類似度に従い選択される、工程と、
該導出したパラメータを使用し、細分化領域の促進因子のエビデンス及び永続因子のエビデンスを示すマップを表示する工程と、を含み、
該心臓アブレーションのための関心領域は該細分化領域に従い決定され、
前記ステップは、
一次傾斜と二次傾斜の時間グルーピングを含む、時間ゲートを用いて傾斜を電位へ変換する工程と、
該電位を、所定の間隔内で連続する傾斜のグループにグルーピングする工程と、
該グルーピングに従って該電位を傾斜の種類として分析する工程と、を更に含む、方法。
【請求項7】
前記グループのサイズは2であり、前記グループは、単一傾斜、短い二重傾斜、長い二重傾斜及び2つの傾斜を含み、前記所定の間隔は50msである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
細分化を使用する心臓アブレーションのための関心領域を決定するシステムであって、
複数のセンサであって、該複数のセンサはそれぞれ、経時的に複数の心電図(ECG)信号のうちの1つを検出するように構成され、各ECG信号は心臓の電気活動を示す、複数のセンサと、
1つ又は2つ以上のプロセッサを含む処理デバイスであって、
該複数のECG信号のそれぞれについて、1つ又は2つ以上の局所興奮到達時間(LAT)を決定することであって、該LATはそれぞれ、対応するECG信号の興奮到達時間を示す、ことと、
該複数のECG信号のそれぞれの、該決定した1つ又は2つ以上のLATに基づいて、1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び1つ又は2つ以上の永続因子マップを生成することであって、該1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び該1つ又は2つ以上の永続因子マップはそれぞれ、該心臓の該電気活動を表す、ことと、
該永続因子マップから、細分化されたECG信号の電位を含むパラメータを導出することであって、該電位は細分化窓内のECG信号の電位を複数の電位信号のテンプレートと比較し、前記細分化窓内のECG信号と類似する前記テンプレートのうち1つが、類似度に従い選択される、ことと、を行うように構成されている、処理デバイスと、
該導出したパラメータを使用し、細分化領域の促進因子のエビデンス及び永続因子のエビデンスを示すマップを表示するように構成されたディスプレイと、を含み、
該心臓アブレーションのための関心領域は該細分化領域に従い決定され、
前記処理デバイスが、
一次傾斜と二次傾斜の時間グルーピングを含む、時間ゲートを用いて傾斜を電位へ変換することと、
前記電位を、所定の間隔内で連続する傾斜のグループにグルーピングすることと、
該グルーピングに従って該電位を傾斜の種類として分析することと、を行うように更に構成されている、システム。
【請求項9】
前記グループのサイズは2であり、前記グループは、単一傾斜、短い二重傾斜、長い二重傾斜及び2つの傾斜を含み、前記所定の間隔は50msである、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
コンピュータプログラム命令が格納された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含むコンピュータソフトウェア製品であって、該命令は、コンピュータにより実行されると、該コンピュータに、
複数のセンサを介して、心電図(ECG)信号を検出する工程であって、各ECG信号は該複数のセンサのうちの1つを介して検出され、かつ心臓の電気活動を示す、工程と、
該複数のECG信号のそれぞれについて、1つ又は2つ以上の局所興奮到達時間(LAT)を決定する工程であって、該LATはそれぞれ、対応するECG信号の興奮到達時間を示す、工程と、
該複数のECG信号のそれぞれの、該決定した1つ又は2つ以上のLATに基づいて、1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び1つ又は2つ以上の永続因子マップを生成する工程であって、該1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び該1つ又は2つ以上の永続因子マップはそれぞれ、該心臓の該電気活動を表す、工程と、
該永続因子マップから、細分化されたECG信号の電位を含むパラメータを導出する工程であって、該電位は細分化窓内のECG信号の電位を複数の電位信号のテンプレートと比較し、前記細分化窓内のECG信号と類似する前記テンプレートのうち1つが、類似度に従い選択される、工程と、
該導出したパラメータを使用し、細分化領域の促進因子のエビデンス及び永続因子のエビデンスを示すマップを表示する工程と、を行わせ、
心臓アブレーションのための関心領域が該細分化領域に従い決定され、
一次傾斜と二次傾斜の時間グルーピングを含む、時間ゲートを用いて傾斜を電位へ変換する工程と、
該電位を、所定の間隔内で連続する傾斜のグループにグルーピングする工程と、
該グルーピングに従って該電位を傾斜の種類として分析する工程と、を更に含む、コンピュータソフトウェア製品。
【請求項11】
前記グループのサイズは2であり、前記グループは、単一傾斜、短い二重傾斜、長い二重傾斜及び2つの傾斜を含み、前記所定の間隔は50msである、請求項10に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願第62/278,676号(2016年1月14日出願)の利益を主張するものであり、当該出願は、その全体が記載されているのと同様に、参照により援用される。本出願は、いずれも2017年1月12日に出願された、米国特許出願第15/404,228号(発明の名称「Region of Interest Focal Source Detection Using Comparisons of R-S Wave Magnitudes and LATs of RS Complexes」)、米国特許出願第15/404,225号(発明の名称「Region of Interest Rotational Activity Pattern Detection」)、米国特許出願第15/404,226号(発明の名称「Overall System and Method for Detecting Regions of Interest」)、米国特許出願第15/404,231号(発明の名称「Non-Overlapping Loop-Type or Spline-Type Catheter To Determine Activation Source Direction and Activation Source Type」)、及び米国特許出願第15/404,266号(発明の名称「Region of Interest Focal Source Detection」)を、それら全体が記載されているのと同様に、参照により援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、心房細動などの心不整脈の治療のためにアブレーションを行う関心領域を決定するためのシステム及び方法に関する。より詳細には、本発明は、活性化マップ(activation map)を改善し関心領域をより良好に決定するための、心内心電図(ECG)信号分析の改善に関する。
【背景技術】
【0003】
心不整脈としては、様々な種類の異常又は不規則な心拍リズム、例えば、急速かつ不規則な鼓動を特徴とする心房細動(AF)などが挙げられる。正常な状態の心臓では、心臓の上の室(即ち、心房)を起点とし、房室(AV)結節を通って心房を通過し、対をなす心臓の下の室(即ち心室)に進む電気パルス(即ち、信号)により、心拍が起こる。信号が心房を通過すると、心房が収縮し、AV結節を介して血液を心室に送る。これにより、心室の収縮が起こり、血液が心臓から体に供給される。しかしAF状態の間は、心房の信号は乱れ、心臓の不規則な拍動を引き起こす。
【0004】
AFはヒトの生活の、物理的、心理的及び感情的な質に悪影響を与え得る。AFは、重症度及び頻度が次第に増加することがあり、治療をせずにいると、慢性疲労、うっ血性心不全、又は脳卒中につながり得る。AF治療の一種としては、洞調律維持薬、及び脳卒中の高いリスクを管理するために使用される薬物などの処方薬が挙げられる。これらの薬物は、無期限に毎日服用しなくてはならない。別の種類のAF治療としては、胸部に配置した電極を介して心臓に電気ショックを与えることにより、正常な心調律の回復を試みる、カルジオバージョンが挙げられる。いくつかの持続性の種類のAFでは、カルジオバージョンは効果的でないか、又は試みることができない。
【0005】
AFを治療するための最近のアプローチとしては、心臓組織をアブレーションして電気経路を断ち切り、心調律異常を引き起こし得る異常な電気インパルスをブロックする(block)、低侵襲性アブレーション処置(例えばカテーテルアブレーション)が挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一方法を使用して、細分化を使用した心臓アブレーションのための1つ又は2つ以上の関心領域を決定することができる。例えば、本方法は、1つ又は2つ以上のセンサを使用して、心電図(ECG)信号を検出し得る。検出される各ECG信号は、心臓の電気活動を示し得る。本方法は次に、これら複数のECG信号のそれぞれについて、1つ又は2つ以上の局所興奮到達時間(LAT)を決定し得る。各LATは、対応するECG信号の興奮到達時間を示し得る。
【0007】
次に本方法は、決定した1つ又は2つ以上のLATに基づいて、1つ又は2つ以上の促進因子(driver)マップを生成することができる。更に、本方法はまた、それぞれが心臓の電気活動を表す1つ又は2つ以上の永続因子(perpetuator)マップを生成することもできる。促進因子マップ及び/又は永続因子マップは、少なくとも細分化を使用して、パラメータを導出するために用いることができる。次に、導出したパラメータを処理し、促進因子のエビデンス及び永続因子のエビデンスに組み合わせ得る。最終的に、本方法は、促進因子のエビデンス及び永続因子のエビデンスを導出するために使用した細分化に従い、心臓アブレーションのための関心領域を決定し得る。
【0008】
一システムを使用して、細分化を使用した心臓アブレーションのための1つ又は2つ以上の関心領域を決定することができる。本システムは、複数のセンサを含み、各センサは、経時的に複数の心電図(ECG)信号を検出するように構成され得る。各ECG信号は、心臓の電気活動を示し得る。
【0009】
本システムは、1つ又は2つ以上のプロセッサを含む処理デバイスを含んでよい。各プロセッサは、複数のECG信号のそれぞれについて、1つ又は2つ以上の局所興奮到達時間(LAT)を決定するように構成され得る。各LATは、対応するECG信号の興奮到達時間を示し得る。各プロセッサは、複数のECG信号のそれぞれの、決定した1つ又は2つ以上のLATに基づいて、1つ又は2つ以上の促進因子マップを生成し得る。各プロセッサは更に、それぞれが心臓の電気活動を表す1つ又は2つ以上の永続因子マップを生成することもできる。
【0010】
各プロセッサは、少なくとも細分化を使用して促進因子マップ及び永続因子マップからパラメータを導出し得る。次に、各プロセッサは、導出したパラメータを処理し、促進因子のエビデンス及び永続因子のエビデンスに組み合わせ得る。次に、各プロセッサは、促進因子のエビデンス及び永続因子のエビデンスを導出するために使用した細分化に従い、心臓アブレーションのための関心領域を決定し、表示デバイスに前記関心領域情報を表示し得る。
【0011】
コンピュータソフトウェア製品は、コンピュータプログラム命令が格納された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含み得る。これらの命令は、コンピュータにより実行されると、該コンピュータに、1つ又は2つ以上の工程を行わせ得る。
【0012】
例えば、コンピュータは、複数のセンサを介して、心電図(ECG)信号を検出する工程を行い得、ここで、各ECG信号は該複数のセンサのうちの1つを介して検出され、かつ心臓の電気活動を示す。コンピュータはまた、複数のECG信号のそれぞれについて、1つ又は2つ以上の局所興奮到達時間(LAT)を決定する工程を実施することもでき、ここで、該LATはそれぞれ、対応するECG信号の興奮到達時間を示す。
【0013】
本コンピュータソフトウェア製品は、コンピュータに、複数のECG信号のそれぞれの、決定した1つ又は2つ以上のLATに基づいて、1つ又は2つ以上の促進因子マップを生成させる工程を行わせ得る。本コンピュータソフトウェア製品はまた、コンピュータに、それぞれが心臓の電気活動を表す1つ又は2つ以上の永続因子マップを生成する工程を行わせ得る。
【0014】
本コンピュータソフトウェア製品は、コンピュータに、少なくとも細分化を使用して、促進因子及び永続因子マップからパラメータを導出する工程を行わせ得る。本コンピュータソフトウェア製品は、コンピュータに、導出したパラメータを処理し、促進因子のエビデンス及び永続因子のエビデンスに組み合わせる工程を行わせ得る。最終的に、本コンピュータソフトウェア製品は、コンピュータに、促進因子のエビデンス及び永続因子のエビデンスを導出するために使用した細分化に従い、心臓アブレーションのための関心領域を決定する工程を行わせ得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明をより良く理解するために、本発明の詳細な説明について例として参照を行う。これらの参照は以下の図面と共に読まれるべきであり、同様の構成要素には同様の参照番号が付与される。
【
図1】本明細書にて開示される実施形態で使用する、AFの例示的分類を示すブロック図である。
【
図2】本明細書で開示される実施形態で使用する、アブレーションに対するAF ROIを決定するために使用される例示的なシステムを示すブロック図である。
【
図3A】一実施形態にかかるアブレーションのためのAF ROIを決定する例示的方法を示すフローチャートの一部である。
【
図3B】一実施形態にかかるアブレーションのためのAF ROIを決定する例示的方法を示すフローチャートの一部である。
【
図4】アブレーションのためのROIを指定するためのマッピングを示す。
【
図6】アブレーションのためのROIを指定するためのAFマッピングにおける細分化分析の概要を示す。
【
図7】アブレーションROIを指定するためのAFマッピングを示す。
【
図8】アブレーションROIを指定するためのAFマッピングを示す。
【
図9】アブレーションROIを指定するためのAFマッピングを示す。
【
図10】アブレーションROIを指定するためのAFマッピングを示す。
【
図11】アブレーションROIを指定するためのAFマッピングを示す。
【
図12】細分化IC ECGを検出してアブレーションROIを指定するためのAFマッピングを示す。
【
図13】アブレーションのためのROIを指定するためのAFマッピングを示す。
【
図14】IC ECGにおける、細分化発生(Fractionated Episode)を検出するためのAFマッピングを示す。
【
図15】IC ECGにおける、細分化発生を検出するためのAFマッピングを示す。
【
図16】IC ECGにおける、細分化発生を検出するためのAFマッピングを示す。
【
図17】IC ECGにおける、細分化発生を検出するためのAFマッピングを示す。
【
図18】特異性が増加した細分化発生を検出するためのAFマッピングを示す。
【
図19】AFマッピングの全体のマッピングを示す。
【
図20】AFマッピングの全体のマッピング-傾斜図を示す。
【
図21】AFマッピングの全体のマッピング(傾斜の特徴付け)を示す。
【
図22】傾斜の種類から、電位の種類への進展(progression)を示す。
【
図23】一次及び二次傾斜の時間ゲート及び時間グルーピングを更に示す。
【
図24】単一傾斜、2つの傾斜グループ、長い二重傾斜グループ、及び>2つの傾斜を更に示す、グルーピングの2つの例を示す。
【
図25】単一傾斜、2つの傾斜グループ、長い二重傾斜グループ、及び>2つの傾斜を更に示す、グルーピングの2つの例を示す。
【
図26】長方形として表す識別した傾斜の空間-時間的分析を示す。
【
図27】例示的なAFマッピングの空間-時間的傾斜分析を示す。
【
図28】例示的なAFマッピングの空間-時間的傾斜分析を示す。
【
図29】例示的なAFマッピングの空間-時間的傾斜分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
カテーテルアブレーションに使用する従来の方法及びシステムは通常、皮膚の切開部を通って心臓まで誘導されるカテーテルを挿入することを含む。アブレーションを実施する前に、心臓の心内心電図(IC ECG)信号を、心臓の異なる領域に配置した電極から得る。この信号を監視して、心臓の1つ又は2つ以上の領域が異常な心拍を引き起こしているかどうかの判定のための情報提供に使用することができる。しかしながら、これらのアブレーション対象領域を決定するために使用される従来の方法及びシステムは、時間がかかり(例えば数時間)、また、(典型的には、長期間の訓練を必要とする)特定の専門技術及び経験を有する医療関係者に依存している。
【0017】
本明細書にて開示した実施形態は、アブレーションの標的となる、潜在的な関心領域(ROI)を判定するシステム、装置及び方法を用いる。種々のマッピング手法を利用して、AF基質(AF substrate)の電気-物理的状態のマップ、及び潜在的なアブレーションのROIを効率的かつ正確に決定することができる、AFプロセスの空間-時間的発現を表すマップが提供される。マッピング技術では、得られたIC ECG信号の種々のパラメータ(例えばサイクル、時間的早さ、R-S複合体、伝導速度(CV)、ブロック及び細分化)、及び検出した局所興奮到達時間(LAT)を利用し、AF基質の促進因子及び永続因子の潜在的エビデンスを特定する。促進因子及び永続因子の潜在的エビデンスの特定を使用して、AF基質のマッピング(例えば促進因子マップと永続因子マップ)を提供する。マッピング技術はまた、得られたIC ECG信号の種々のパラメータ、及び検出した局所興奮到達時間を利用し、AFプロセスの空間-時間的発現を潜在的に示すマッピング(例えば、活性化/波マップ、CVマップ、細分化マップ、電圧マップ及びブロックマップ)を提供することも含む。AFプロセスの空間-時間的発現のマッピングを、AF基質のマッピングに加えて、又はその代わりに使用して潜在的なアブレーションROIを特定することができる。マッピング技術を使用することで、潜在的にAFマップ分析の訓練時間が減少し、アブレーションによる成功率を高め、AFマップの効率的な判読が容易になる。簡明にするため、本明細書で記載される実施形態では、AFの治療に使用するためのシステム及び方法について言及する。しかしながら、実施形態は、様々な種類の異常又は不規則な心拍を含む、任意の種類の心不整脈の治療に対して使用することができることに留意されたい。
【0018】
図1は、本明細書にて開示される実施形態で使用する、AFの例示的分類を示すブロック図である。
図1の例示的な分類は、危険性AFと非危険性AF、及びAFの促進因子と永続因子、及びこれらの相対的な空間-時間的パターンを区別する。
【0019】
例えば、
図1に示すように、AF 102としての特徴を有する不規則な心拍は、危険性104又は非危険性106として分類される。非危険性AF 106の例としては、心拍が多くの場合、数秒以内又は数時間ほどで早期に正常化する発作性(即ち、間欠性)の不規則な心拍の発生、及び拍動の内科治療又は処置(例えば、カルジオバージョン)により、正常な心臓に回復させることができる持続性のある不規則な心拍発生が挙げられる。危険性AF 104の例としては、心臓が絶えず続くAFの状態にあり、状態が永続的であると考えられる長めの期間(例えば、1年を超えて)継続する長期にわたる持続性のある不規則な心拍発生が挙げられる。
【0020】
危険性AFは、IC ECG信号から誘導可能な特徴(例えば活性化領域(area of activation))に従って分類することができる。活性化領域は、AFに潜在的に寄与する因子として特定することができる。
図1に示すように、危険性AFは、AFの潜在的な促進因子(以下、「促進因子」)又はAFの潜在的な発生源(以下、「発生源」)108及び、AFの潜在的な永続因子110(以下、「永続因子」)を含む、様々な活性化の領域に従って分類される。促進因子108は、電気パルスが発生して、心臓を刺激して収縮させ、例えば、心房の他の区域への細動様伝導(fibrillatory conduction)を生み出すことにより、潜在的にAFの一因となり得る(例えば、心房内の)活性化領域である。永続因子110は、また潜在的にAFの一因となり得る持続した活性化領域(例えば、電気生理学的プロセス/基質)である。
【0021】
促進因子108及び永続因子110は、それらの空間-時間的発現に従って表す(例えば、マッピングする)ことができる。
図1に示すように、促進因子108及び永続因子110は、病巣源(focal source)(焦点)112、及び局在化回転活性化(LRA)発生源又は回転活性化パターン(RAP)発生源114を含む例示的な空間-時間的発現型により分類される。病巣源は、一点から遠心的に拡大する、心房の小領域を起点にする促進因子の1種である。RAP発生源114は、電気パルスが中央領域の周りを少なくとも360°回転する、心臓の不規則領域である。
【0022】
図1はまた、秩序性伝導遅延116を示すあるタイプ、及び無秩序性伝導遅延118を示す別のタイプを含む、様々なタイプの永続因子110を示している。
図1に示す別のタイプの永続因子110としては、秩序性伝導遅延116を特徴とする心房粗動(AFL)120、並びに無秩序性伝導遅延118を特徴とする、局在化した不規則な活性化(LIA)122、線状ギャップ124、及びピボット126(即ち、中央領域を中心に360°未満回転する電気パルス)が挙げられる。また、RAP発生源114は、促進因子108及び永続因子110の両方として示される。促進因子108及び永続因子110は、例えば、促進因子タイプ及び/又は永続因子タイプの識別を容易にし、潜在的なアブレーションROIの効率的かつ正確な決定を提供するために、別々にマッピングされる。
【0023】
促進因子108及び永続因子110のマッピング及び特定はまた、潜在的にAFに寄与し得る1つ又は2つ以上の更なる因子、又はAF基質(即ちAFプロセスそのもの)及び/若しくはAFプロセスの発現を潜在的に特徴付け得るパラメータに基づくこともできる。例えば、潜在的な病巣源108を特定するために使用されるAFパラメータ又はAF因子としては、一点からの活性化の全方向への活性化拡大、早さ(例えば興奮間隙の後に開始する病巣源)、局所の急速な興奮(例えば短サイクル長かつ非常に優勢な頻度)並びにブレイクスルー(例えば肺静脈(PV)、自由壁及び経壁、心内膜及び心外膜)などのトリガ、並びに、病巣源として発現するマイクロリエントリ回路、及び中央障害物の特定の異方性構造に応じて促進因子108として発現可能な短半径リエントリ回路が挙げられる。
【0024】
RAP発生源114をマッピングし、特定するために使用されるAFパラメータ又はAF因子としては、例えば、反復サイクル、促進因子源108として発現可能な回転子、(例えば、局在化又は分布した)構造的又は機能的異方性、及び中央障害物の特定の異方性構造に応じて、促進因子108又は永続因子110のいずれか一方として発現可能な短半径のリエントリ回路が挙げられる。
【0025】
永続因子110をマッピングし、特定するために使用されるAFパラメータ又はAF因子としては、例えば、延長した(増大した)経路長、解剖学的(病理学的)ブロック線、繊維症、安定した機能的ブロック線(例えば、不能状態が持続した領域)、臨界部(例えば、ブロック線周辺の最短の経路>経路長)及び細動伝導因子(例えば、分離した波、リエントリ回路因子)が挙げられる。
【0026】
図2は、本明細書で開示される実施形態で使用する、アブレーションに対するAF ROIを決定するために使用される例示的なシステム200を示すブロック図である。
図2に示すように、システム200は、カテーテル202、処理デバイス204、及び表示デバイス206を備える。カテーテル202は、それぞれが、経時的に心臓の一領域の電気活動(電気信号)を検出するように構成されている、カテーテルセンサ(例えば電極)のアレイを含む。IC ECGが行われているとき、各電極は、電極と接触した心臓の領域の電気活動を検出する。システム200はまた、心臓の電気生理学的パターンが原因の皮膚上での電気的変化の検出による、心臓の電気活動を検出するように構成された心外センサ210(例えば、患者の皮膚上の電極)を含む。
【0027】
検出したIC ECG信号、及び検出した心外信号を、処理デバイス204により処理(例えば経時的に記録、フィルタリング、細分化、マッピング、結合、加工など)し、表示デバイス206上に表示する。
【0028】
実施形態は、IC ECG信号及び心外ECG信号を検出するために使用するセンサを含む、ECG信号を検出するために使用する任意の数のセンサ210を含んでよい。簡明にするため、本明細書で記載されるシステム及び方法では、IC ECG信号の検出及び使用について述べる。しかしながら、実施形態は、IC ECG信号、又は心外ECG信号、又はIC ECG信号と心外ECG信号との両方の組み合わせを利用することができることに留意されたい。
【0029】
処理デバイス204は、それぞれがECG信号を処理するように構成されている1つ又は2つ以上のプロセッサを含んでよい。処理デバイス204の各プロセッサは、経時的にECG信号を記録し、ECG信号をフィルタリングし、ECG信号を信号構成成分(例えば傾斜、波、複合体)に細分化し、ECG信号をマッピングし、ECG信号情報を組み合わせ、マッピングし、マッピング情報を加工する、などの処理を行うように構成することができる。
【0030】
表示デバイス206は、それぞれが、ECG信号、ECG信号情報、AFプロセスのマップ及びAFプロセスの空間-時間的発現を示すマップを表示するように構成されている1つ又は2つ以上のディスプレイを含んでよい。
【0031】
カテーテルセンサ208及び心外センサ210は、処理デバイス204と有線又は無線で通信することができる。表示デバイス206もまた、処理デバイス204と有線又は無線で通信することができる。
【0032】
図3A及び
図3Bは、潜在的なアブレーションROIを決定する例示的方法300を示すフローチャートの一部である。方法300は、中心から外側に向かってIC ECG層、前処理層、LAT検出層、マップ分割層、マップ加工層、及びマップ判読層を含むマッピング分類法を用いる。
【0033】
図3Aは、例示的な方法300の一部を示す。
図3Aのブロック302に示すように、方法300は、IC ECG層の一部として、心臓の一領域の電気活動を示すIC ECG信号を得ることを含む。ブロック302で得られるIC ECG信号は、例えば、心臓の異なる領域と接触する多数の電極のうちの1つから得られる。IC ECGを得た(302)後、方法300は、前処理層の一部として、
図3Aのブロック302に示すように、得られたECG信号を前処理する工程を含む。この前処理は、例えば心室ファーフィールド信号の打ち消し、ベースライン補正、及びノイズ除去などの、1つ又は2つ以上のアルゴリズムの実行を含んでよい。心室ファーフィールド検出の例としては、空間平均法(SAM)、時間平均法(TAM)、システム特定法(SIM)、及び主成分分析(PCA)を挙げることができる。
【0034】
ブロック302で得られた各IC ECG信号について、対応する前処理されたIC ECG信号の1つ又は2つ以上のLATがブロック304で検出される。それぞれの信号の(
図3AでLATQとして示される)LAT品質(LAT quality)は、例示的なLAT検出層の一部としてブロック306で決定される。信号のAF複雑性(AF complexity)(
図3AでCPLXと示す)は、ブロック308で決定される。
【0035】
判定点310で示すように、方法300は、信号のLAT品質とAF複雑性に基づいて、カテーテルを再配置するかどうかを決定することを含む。高品質のIC ECGの典型的な特徴は、ベースラインのうねりがほとんどないこと(例えば、低いベースライン対IC ECG RMSの振幅、限定された心室遠視野電位対IC ECG RMSの振幅)である。IC ECG信号の特徴としては、AF中の識別可能な心房複合体(例えば、等電セグメント反復傾斜(isoelectric segments repeating slopes)(50~200ms間隔、約150msの中央値)により分離された、閉じ込められた(~50ms)複合体)が挙げられる。品質の高い複合体の特徴は通常、複合体内に相当の増幅、及び下方向への急な傾斜(対上方向への傾斜)を有する。IC ECG信号の特徴を組み合わせて、(例えば、測定可能な0%~100%の値を有する)測定可能な単一の特徴又はパラメータにし、LAT品質を規定することができる。LAT品質をAF複雑性と比較して、カテーテルを再配置するかどうかを決定することができる。
【0036】
いくつかの実施形態においては、AF複雑性の程度に関してAFをマッピングする能力により、品質が規定される。カテーテルを再配置するかどうかを決定することは、マップを生成し、生成したマップを使用して、マッピング電極の範囲の程度が、AF複雑性の程度を満たす(例えば一致する)かどうかに基づき、AFをマッピングすることができる(例えば、マッピングするのに十分である)かどうかを判定することを含んでよい。AF複雑性の程度に関する、AFをマッピングする能力は、マップの閾値(例えば、十分な程度、信頼できる程度)を満たすことを含んでもよい。単一のパラメータ(即ち、マッピング範囲)を使用して、マッピング電極の範囲の程度を規定する。マッピング範囲を規定するのに組み合わせる特徴の例としては、(1)マッピング電極の接触(例えば、カバーした領域に関係する活性組織(壁)との接触とLATの正確性)、(2)電極の分解能(例えば、平均、最少及び最大、並びに距離を含む、電極間の距離及び電極の感度半径)、(3)検出アルゴリズムにより提供されるIC ECGの品質及び関係するアノテーションが挙げられる。
【0037】
AF複雑性としては、AFが波の分解(ブロック線)、融合及び波の湾曲を生成する間の、活性化の複雑性を挙げることができる。したがって、(例えば、y軸に沿って測定した)一定程度のAF複雑性を考慮すると、(x軸に沿って決定した信号及びアノテーションの品質を含む)マッピング範囲が、AF複雑性をマッピングするのに十分である場合に、AFをマッピングするために使用することができる(例えば、信頼できる又は十分な)マップとして、マップを判定してもよい。そうでない場合、マップの信頼性は損なわれるか、又は不十分となり得る。
【0038】
次に、信頼できるか又は十分なマップを使用して信号を分析し、カテーテルを再配置すべきかどうかを判定してよい。決定点310にてカテーテルの再配置を決定した場合、カテーテル(例えば、カテーテル202)はブロック312で再配置され、ブロック302で新しいIC ECG信号が得られる。決定点310でカテーテルを再配置すべきであることを判定した場合、方法300は、(
図3A及び
図3Bに示される)「点A」313へと続く。
【0039】
図3Aは、簡明にするため、単一のIC ECG信号の取得を示す。しかしながら、実際には、心臓に接触する複数の電極のそれぞれについての複数の信号が得られる。ブロック202で得られるそれぞれのIC ECG信号、及び各信号についてブロック204で検出される1つ又は2つ以上のLATは、「点A」313で受信される。
【0040】
図3Bは、潜在的なアブレーションのROIを決定するために使用することができる例示的な方法を示す。
図3Bに示すように、得られたそれぞれのIC ECG信号、及び各信号について検出した1つ又は2つ以上のLATを使用して、AF基質(
図3BでAF基質314として示す)の電気-物理的状態を含むAFプロセスのマップ、及び、例示的なマップ分割層の一部としての、AFプロセス(
図3BでAFプロセス316として示す)の空間-時間的発現を表すマップを生成する。
【0041】
例えば、
図3Bに示すAF基質314に関して、検出した1つ又は2つ以上のLATを使用して、AFに寄与し得る1つ又は2つ以上の因子又はパラメータを独立して決定する。
図3Bの左側は、所定の時間窓にわたり情報を収集しながら、後続のLAT 318、最初の興奮(早さ)324、並びにRS比320及び細分化322(例えば、細分化した電位図)を含むIC ECGの形態的側面の違いに基づく、平均間隔(例えば、サイクル)を評価することによりAF基質を特徴付ける方法を示す。例えば、検出したLATを使用して、ブロック318にてサイクル情報(例えば、サイクル長)、及びブロック324にて早さ情報(例えば最も早い興奮到達時間、興奮間隙の後に開始する初期の促進因子)を独立して決定する。また、各IC ECG信号を使用し、R-S複合体情報320(例えば、R波の、S波の振幅に対する比率)、及びIC ECG信号の細分化情報322(例えば傾斜情報、例えば、関係する電極が隣接する電極よりも早く活性化された割合を示すなどの、複数の電極のうちの1つから、最も早い興奮として示される、発生源の挙動の発生率(incidence)を示す情報)、及びCVブロック情報326(例えば、電気パルスが心臓内のある距離を移動する伝導時間(CT)、経路長(即ち距離)及び電気パルスのCVなどの、心臓を通る電気インパルスの伝導(即ち進行)の遅延又はブロックを示す情報)を個別に決定する。
【0042】
図示されるように、促進因子マップ328は、サイクル情報318、早さ情報324、及びR-S複合体情報320から生成される。永続因子マップ330は、CVブロック情報326、及び細分化情報322から生成される。図示されるように、促進因子マップ328を生成するために使用した情報と、永続因子マップ330を生成するために使用した情報を組み合わせ(例えば1つのマップ、又は1つのディスプレイ領域内にて重ねたマップ若しくは隣接させたマップ)、組み合わせた促進因子/永続因子マップ334を生成する。次に、組み合わせた促進因子/永続因子マップ334を使用して(例えば、例示的なマップ加工層の一部として加工して)、1つ又は2つ以上のアブレーションROI 350を決定することができる。
【0043】
図3Bに示すAFプロセス316に関して、検出した1つ又は2つ以上のLATを使用して、活性化/波マップ336、CVマップ338(例えば、電気パルスのCT、経路長及び/又はCVから生成したマップ)、並びにブロックマップ344(例えば、信号の伝導におけるブロックを示す情報から生成したマップ)を独立して生成する。
【0044】
活性化/波マップ336は、例えば、同一の波により活性化された隣接電極により制限されるものの、隣接電極よりも早く活性化された対応する電極により検出される、活性化波の割合を示すといった、同一の波により制限された複数の電極のうちの1つの最早期興奮を提示する発生源の挙動の発生率を表すマップを含んでもよい。活性化/波マップ336はまた、例えば、細動波の開始と関係する電極位置の発生率を表すマップを含んでもよい。
【0045】
各IC ECG信号を使用して、電圧マップ342及び細分化マップ340を独立して生成する。マップ336~344の生成に使用した情報を組み合わせて、組み合わせたマップ又はビデオ346を提供する。いくつかの実施形態において、活性化/波マップ336及び電圧マップ342の生成に使用した情報を組み合わせて、組み合わせた活性化/波/電圧マップ又はビデオを生成し、CVマップ338、ブロックマップ344、及び細分化マップ340の生成に使用した情報を組み合わせて、組み合わせたCV/ブロック/細分化マップ又はビデオを生成する。ブロック348にて、組み合わせたマップ/ビデオ346を分析(例えば、例示的なマップ判読層の一部として、医療関係者により判読)して、ブロック350でアブレーションするROIを決定する。組み合わせたマップ/ビデオ346は、容易に可視化及び判読可能なAFプロセスの空間-時間的発現を表し、アブレーションのためのROIを決定するための、効率的かつ正確なプロセスを容易にする。決定したROIを、例えば色、4Dマップ上の3D断面、アイコン(例えば動的に変化するアイコン)などにより表して(例えば表示して)よい。
【0046】
いくつかの実施形態において、組み合わせた促進因子/永続因子マップ334と、組み合わせたマップ/ビデオ346の両方を使用して、アブレーション350のためのROIを決定する。例えば、組み合わせたマップ/ビデオ346を使用する(例えば、見る、分析する)ことなく、組み合わせた促進因子/永続因子マップ334を使用して、アブレーション350のためのROIを決定することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、品質マップ332もまた、組み合わせた促進因子/永続因子マップ334及び/又は組み合わせたマップ/ビデオ346と組み合わせて使用して、アブレーション350のためのROIを決定する。品質マップ332を使用して、AF基質314に関係する生成されたマップ(例えば、促進因子マップ328、永続因子マップ330、及び促進因子/永続因子マップ334)、並びにAFプロセス316パラメータに関係する生成されたマップ(例えば、活性化/波マップ336、CVマップ338、細分化マップ340、電圧マップ342、及びブロックマップ344)の信頼性を決定する。品質マップの品質が低いと、生成したマップは信頼性が低く、品質マップが、生成したマップの基準として高い品質の信号(IC ECG)を示す場合と比較して、アブレーションのROI 350を指定することは、(例えば、医師による)注意レベルが高いとみなさなければならない。
【0048】
いくつかの実施形態において、アブレーション350のためのROIを決定することは、アブレーションのための1つ又は2つ以上のROIの決定に使用する1つ又は2つ以上のアブレーション部位の指定又は選択を含む。例えば、促進因子のエビデンス及び永続因子のエビデンスからアブレーション部位を指定又は選択(例えば、促進因子マップ328、永続因子マップ330、又は組み合わせた促進因子/永続因子マップ324から判定)してもよく、指定した部位に基づいてアブレーションROI 350を決定してもよい。
【0049】
本明細書にて開示したマップ及びマッピング手法は、潜在的に、(i)AFマップの分析訓練時間を減少させ、(ii)アブレーションのためのROIを決定する時間を減少させ、(iii)AFマップの効率的な判読を容易にし、(iv)促進因子の隔離及び消滅、経路の延長、リエントリ回路、細動伝導、及び細分化した電位の低速化を目的とするアブレーションに対するアブレーションの成功率を増加させる。
【0050】
本明細書で提示した本発明の技術は、アブレーションのために標的化される正確なROIを効率的に決定するための細分化を組み込む。
【0051】
図4は、促進因子マップ328(サイクル、早さ、RS)及び永続因子マップ330(ブロック及び細分化)に基づいた、アブレーションのROI(
図3Bに示す)を生成するためのプロセスのハイレベルブロック図を示す。これらの促進因子マップ328及び永続因子マップ330から、促進因子に関係するパラメータ401及び永続因子に関係するパラメータ402が導出される。促進因子に関係するパラメータ401には、サイクル長403(短いサイクル、速い繰り返し)、早さ404(AFプロセスを促進する早い興奮)、及びRS比405(S波の優位性)が含まれる。永続因子に関係するパラメータ402には、ブロック406(ブロック線)、及び不均一な伝導を示す細分化した電位407が含まれる。促進因子に関係するパラメータ401及び永続因子に関係するパラメータ402の両方を更に処理し、促進因子のエビデンス408(De)及び永続因子のエビデンス409(Pe)に組み合わせる。最終的に、促進因子のエビデンス408及び永続因子のエビデンス409を(不整脈原性のCoumelの三角形(Coumel’s triangle)の2つのカテゴリーとして)使用し、促進因子プロセス若しくは永続因子プロセスのいずれか、又は両方として作用する、アブレーション350のための潜在的なROIを導出する。
【0052】
図5は、促進因子/永続因子マップ334、及び時間的活性化/細分化マップ(52、53)の例を示す。
図5の右上パネルは促進因子/永続因子マップ334であり、ここで、ドット510は、所定の閾値を超えている、増加した促進因子のエビデンス(
図4に示すDe 408)を有する例示的領域を表し、ドット520は、増加した永続因子のエビデンス(Pe>T)(
図4に示すPe 409)の例示的領域を表す。
【0053】
図6は、細分化分析を使用した、アブレーションのためのROIを指定するためのAFマッピングを示すフローチャートとしての、本発明の技術の概要を示す。
図6に示すように、工程S61において、取得したIC ECG信号302と一致する合成単一電位及び短い二重電位を含む、テンプレートライブラリ701からのテンプレートを使用して、IC ECG上でテンプレートマッチングを実施する。テンプレートライブラリ601の作成は、
図7~10を参照して以下に更に詳細に記載される。
【0054】
工程S62において、細分化窓が、テンプレートに一致する工程S61からのLATを使用して発見される。これは以下で詳細に論じられる。
図11及び12を参照のこと。非細分化窓は分析されず、接触332又は品質分析のために検討されることに留意されたい。
【0055】
工程S63において、細分化窓を使用し、また非細分化窓を接触として(as contact)使用して細分化を分析し、細分化IC ECGを作成する。この分析の一実施形態を、
図13を参照して以下で更に詳細に説明する。
【0056】
細分化の検出は、単一電位、短い二重電位及び長い二重電位を含む、非細分化IC ECG電位を検出して取り除くフィルタリング工程に基づく。
図7~11は、細分化IC ECGの検出を示すアブレーションROIを指定するためのAFマッピングを示す。
【0057】
図7は、心臓の異なる領域と接触する多数の電極のうちの1つから取得した様々な種類の電位図の分布及び見本701を示す(
図3A、ブロック302を参照のこと)。これらは、単一電位702、短い二重電位703、長い二重電位704及び細分化した電位
図705を含んでよい。見本701を全て、合成した単一電位801及び短い二重電位802のテンプレートライブラリ601を作成するための基準として使用する。
【0058】
図8において、合成した単一電位801は、区分的三次スプライン補間82により接続された6個の特徴点81(例えば、
図8の左下に示す塗りつぶした円)、及び帯域幅削減(<250Hz)により規定される。一実施形態では、R波とS波の振幅の9つの比率(R~RS~S波)を、合成した単一電位83として作成する。一実施形態では、合成した異なる単一電位83は、振幅(A)と持続時間(ミリ秒)を変化させ、更に250Hzのローパスフィルタ(LPF)によるカットオフなどの、帯域幅削減を実施することにより作成される。これについては、以降で更に詳細に説明される。
図8の右の円85に示すように、合成電位83は、取得した一致する単一電位702に重ねることができる。示すように、各合成電位について、必ずしも一致するわけではない。
【0059】
図9は、2つの合成電位(一次電位83及び二次電位84)を選択して使用すると、合成した短い二重電位が作成されるような、合成した二重電位を作成することに関するテンプレートマッチングについての更なる詳細を示す。一次電位83は無変化のままであるが、二次電位84は、一次電位83と合成して短い二重電位を作成する前に、振幅(A)を調整し、時間(t)を移動させることの両方が可能である。
図9に示すように、まずは、短い二重電位のテンプレートの合成セットを作成するために、2つの単一電位の全ての組み合わせを選択する(S91)。一次電位83の構成成分を、更に操作することなく使用することができる。二次電位84の構成成分に関して、以下の処置を実施してよい。二次構成成分の振幅調整(S92)をまず実施する。次に、記録している電極を通過する二次構成成分の相対的な遅延時間に関して時間の移動(S93)を行う。最後に、重み付けをして遅延させた単一、一次及び二次構成成分を合計し(S94)、8,748個のテンプレートセットの入力を行う。一実施形態では、テンプレートライブラリの規格は、9つの比率、例えばR、Rs、RS、fS、Sなどが作成されるように、単一電位セットからの2つのテンプレートの順列を含んでよい。一実施形態では、振幅調整(例えば0又は50%の振幅減少)を使用してよい。一実施形態では、二次構成成分の時間移動は、一例として4、8、12、16msのいずれかであってよい。
【0060】
図10は、振幅(A
R、A
S)が0、25、50、75及び100%、持続時間(R
Dur、S
Dur)が4、9、15ms、並びにRS
Durが2msのパラメータを使用して作成した、合成した単一電位83及び短い二重電位101のライブラリを示す。図示されているように、振幅を変化させ、続いて持続時間を変化させることにより、27個の単一電位83が作成される。例えば、ある単一電位はA
R=0、A
S=0、R
Dur=4msであり、2つ目の単一電位はA
R=25%、A
S=0、R
Dur=9msであり、別の単一電位はA
R=50%、A
S=0、R
Dur=14msであり、更に別の単一電位はA
R=75%、A
R=0、R
Dur=4ms、などである。これらの合成した単一電位83、及び二重電位101はテンプレートライブラリに保存され、細分化分析のテンプレートマッチング部分に使用される。
【0061】
図11は、合成した単一電位83及び短い二重電位84のライブラリに関するテンプレートライブラリ規格を含むテンプレートマッチング方法を示す。最初に、細動電位図(IC ECG)を得る(S1101)。次に、ベースライン補正を行い(S1102)、ここで心室ファーフィールドのアーチファクト111を取得する。次に、QRSサブトラクションを行い(S1103)、心室ファーフィールドのアーチファクトを取り除き、簡略化したECGを作成する。次に、以下のように、簡略化したECGにおいてテンプレートマッチングを行う。分析窓を作成し、簡略化したECG上で移動させる。
図11では、簡略化したECGの中央に窓112が示され、また、適用されているテンプレートライブラリからのテンプレートを示す6つの「テンプレートマッチング」テンプレートも示されている。図示されているように、最初のテンプレート112aは0.54(約54%)の類似度を有する。2番目のテンプレート112bは、0.65(約65%)の類似度を有する。3番目のテンプレート112cは、0.63(約63%)の類似度を有する。4番目のテンプレート112dは0.48(約48%)であり、5番目のテンプレート112eは0.91(約91%)であり、6番目のテンプレート112fは約0.78(約78%)である。したがって、窓112は、類似度0.91の「最も高い一致」を示す。
【0062】
テンプレートマッチングを行った後、「最も高い一致」、例えば類似度0.91のテンプレートを使用して細動コレログラム113を作成することができる(S1105)。この細動コレログラム113は、最も適合するテンプレートの関連(例えば、最大の関連)を計算することにより作成することができる。最後に、細動コレログラム113の、所定の最大閾値(S1106)、例えば0.4又は0.5未満の閾値未満の関連をブランキング処理する。更に、
図11に示すブランキング処理した細動コレログラム113は、テンプレート番号、及び各ピーク114の検出点を含む。
【0063】
図12は、細分化IC ECGの検出を示すグラフを示す。細分化発生の検出は、テンプレートマッチングを使用して単一及び短い二重電位を除外することにより実施することができる。例えば検出プロセスは、一致が検出されない1201(2列目、楕円で示す)などの領域を見つける。これらの不一致領域1201は特別であり、アブレーションROI 350を決定する場合に対象となる。細分化分析は、AFの間の永続領域の識別を目的としてよい。したがって、細分化とブロックを組み合わせることで、
図12の短い線1202(上の列)に示す永続因子を決定することができる。
【0064】
図13は、アブレーションのためのROIを指定するためのAFマッピングの異なる例を表すグラフを示す。細動マップ(上の列)、細動電位(中央の列)、及び細動電位のウェーブレット分解から得られるスケーログラム(下の列)を
図13に示す。例Dは、複数の分解した波、エピエンド分解、並びに、細分化領域を位置決めするためのツール又はエビデンスとして使用される、遅延した、及び/又は時間差のある伝導を表示する。
【0065】
図14は、IC ECGにおける細分化発生を検出するためのAFマッピングを示す。
図14に示すように、複数の窓112(-200ms←+TM検出→+10ms)を、テンプレートマッチング(即ちTM検出)から得られる各検出点114の周辺で作成する。後に続く窓が重複する限り、細分化は検出されない。重複していない窓が検出される場合、細分化信号はゼロに設定される。
【0066】
図15及び16は、IC ECGにおける細分化発生を検出するためのAFマッピングの例を示す。上のグラフ(IC ECG)151は、取得されたECGを示す。次のグラフ152は、
図11に関する上記手順に従って導出したコレログラム113を示す。次のグラフ153は、二乗平均平方根(RMS)の振幅処理を示す。下のグラフ154は、非細分化発生と細分化発生(即ち、細分化窓112)が互い違いに発生していることを示す。即ち、下のグラフ154は、ECG信号の細分化要素を示す。
【0067】
図16を参照すると、このグラフは、非細分化IC ECG、続いて細分化IC ECGを示す。縦の点線は、非細分化IC ECGから細分化IC ECGへの移行を示す。このようにして、移行の変化を、IC ECGにおいて明確に観察することができる。
【0068】
図17は、傾斜分析を使用した、一実施形態における細分化発生を検出するためのAFマッピングのための方法の、より詳細なフローチャートである。IC ECG細分化窓が入力され、ピークバレー検出が実施される(S171)。山と谷が出力され、続いて正/負の傾斜持続時間及び振幅が計算される(S172)。細分化傾斜が工程S172から出力され、傾斜間隔、持続時間及び振幅を使用して、持続時間、振幅及び発生率を計算する(S173)。
【0069】
次に、持続時間、振幅及び発生率を使用して、細分化の数(NFRAC)、ファーフィールドの数(NFFLD)及び単一電位傾斜の数(NSINGLE)を計算する(S174)。NFRAC、NFFLD及びNSINGLEは工程S174から出力され、S175に入力される。工程S175において、細分化のエビデンス数(EFRAC)、ファーフィールドのエビデンス数(EFFLD)及び単一電位のエビデンス数(ESINGLE)を計算する。EFRAC、EFFLD及びESINGLEは工程S175から出力され、工程S176に入力される。工程S176において、判定ルールが実行され、細分化IC ECGが出力される。一実施形態では、EFRACが所定の高い閾値(例えば90%)を超える場合に、細分化IC ECGが識別されてよい。別の実施形態において、EFRACが、別のより低い所定の閾値(例えば70%)を超え、かつEFFLD及びESINGLEが共に、第3の低い所定の閾値未満である場合に、細分化IC ECGが識別されてよい。
【0070】
更に他の実施形態において、所定の閾値(QUALITYTHRESHOLD)、パラメータを有する低い傾斜振幅、例えばSLOPEAMPLOW{frac、ffld、単一}、パラメータを有する高い傾斜振幅(SLOPEAMPHIGH{frac})、及び/又はパラメータを有する傾斜持続時間(SLOPEDUR{frac、ffld、単一})などのデータを工程S174に入力することができる。この実施形態において、このデータを使用して、NFRAC、NFFLD、NSINGLEの数又は発生率を計算することができる。
【0071】
細分化マップは2つのカテゴリー、即ち振幅及び間隔を含むことができる。細分化振幅マップは、細分化した電位と関係する電極位置の発生率を示す。細分化間隔マップは、細分化した電位と関係する電極位置の発生率を示す。
【0072】
図18は、
図17のS171、即ちピークバレー検出の実施形態を示す。
図18に示すように、傾斜分析は、取得したECG 302の山181及び谷182を表示することを含むことができる。点線の長方形ボックス183はそれぞれ、谷182、山181、及び谷182の「三組の」傾斜値を含む。更に、長方形ボックス183のそれぞれは、高さ262として傾斜の振幅を、また幅263として傾斜の持続時間を有する。これは更に、
図26で説明される。
【0073】
図19は、正/負の傾斜振幅持続時間及び振幅の計算に関するS172及びS173の実施形態を示す。
図26は、ソリッドボックス191としての、
図18の点線の長方形ボックス183を示す。
図18のように、
図19の長方形ボックスは、各ボックスの高さ262が傾斜振幅であり、各ボックスの幅263が傾斜持続時間となるような傾斜を示す。細分化分析に関しては、本明細書で論じるように、下方向への傾斜が対象であり、上方向への傾斜は通常無視されることに留意されたい。
【0074】
図20は、2つの判定長方形が提示される、傾斜特性の分類に関するS174の実施形態の図である。これらは傾斜情報を示す判定長方形である。図示されているように、2つの長方形2001、2002はそれぞれ、ファーフィールド(FFLD)、ノイズ、一次(PRIM)及び二次(SECU)構成成分などの傾斜の種類を示す、より小さい長方形を含む。傾斜パラメータ閾値は、傾斜の種類の1つを明確に選択するために、長方形、つまり、関係する負の傾斜持続時間×振幅2001、及び負の傾斜×負の傾斜振幅2002を位置決めするように規定される。例えば、傾斜持続時間は、長方形2001に示すように、0ms~100msの範囲とすることができる一方で、傾斜は長方形2002に示すように、0~1mV/msの範囲とすることができる。傾斜特性は以下でより詳細に論じている。
【0075】
図21は、4つのグラフを示す。上から下に向かって、これらのグラフは電位
図2101、振幅2102、持続時間2103及び傾斜2104である。上のグラフ2101は、傾斜特性(傾斜振幅、持続時間及び傾斜)に基づいた傾斜の分類(PRIM、SECI又はFFLD)と共に、検出したIC ECG及び傾斜のタイミングを示し、これらの傾斜特性は、閾値と共に下の3つのグラフ2102、2103、2104で別々に示している。下のグラフ2104は、傾斜のタイムスタンプ(例えば傾斜発生率)を示す。各グラフは、一次傾斜1、二次傾斜2及びファーフィールド傾斜3を含む。このデータを使用し、以下でより詳細に論じるように、ECGに関する決定、及びECGが細分化を含むか否かについての決定を行う。
【0076】
図22は、傾斜の種類から、可能性のある種類への進展を示す。一実施形態では、一次傾斜2201、二次傾斜2202及びファーフィールド傾斜2203は、単一電位2220、短い二重電位2221、長い二重電位2222、細分化複合体2223、ファーフィールド2224及び近いファーフィールド2225からなる電位の種類に進展することができる。一次傾斜2201及び二次傾斜2202からの進展はまず、時間ゲート2204を使用して実施される。時間ゲート2204は、時間制限内で傾斜を処理し、この時間制限は、
図22に示すように、例えば15ms及び50msとすることができる。しかし、これらの持続時間は単なる例であり、他のタイミングを使用してもよい。一次傾斜2201及び二次傾斜2202の両方が時間ゲート2204に入力され、これらの時間制限に基づいて、傾斜を電位に変換するための初期的な決定が行われる。例えば、50msの時間制限を有する一次及び二次傾斜は、傾斜が1つであるか、又はまとまって(grouped)いるかに基づいて、2つの傾斜グループ、即ち、単一傾斜2205、又は>2つの傾斜グループ(> two slope group)2208のうちの1つとなることができる。また、15msの時間間隔を有する一次傾斜2201及び二次傾斜2202は、長い(15msを超える間隔)グループ2207、又は短いグループ2206(15ms以下の間隔)(例えば、2つの傾斜グループS(短)2206、若しくは2つの傾斜グループL(長)2207)にグルーピングすることができる。2つを超える傾斜、及び50ms未満の間隔を有するグループは、>2つの傾斜グループ2208にグルーピングされる。時間ゲート2204での処理の後、傾斜は電位に進展する。示すように、単一傾斜は特別な関係を有すると考えられる。これらは単一電位2220に進展する。2つの傾斜グループS 2206は通常3×3倍され、短い二重電位2221に進展する。2つの傾斜グループL 2227は長い二重電位2222に進展し、>2つの傾斜グループ2208は細分化複合電位2223に進展し、これらは本明細書で論じられるように特別であり、特別な確認を受ける。電位は、間隔が50ms未満の連続した傾斜にグルーピングされ、傾斜グループ毎に傾斜の種類として分析される。グループ内にないこれらの電位は非接触2209として出力され、更なる分析は受けない。通常、グループサイズは(2、>2)である。
【0077】
図23は、一次及び二次傾斜の時間ゲート及び時間グルーピングを更に示す。
図23に示すように、時間ゲート2209により作り出された非接触電位を、以下のように分析することができる。非接触電位については、3×3の空間-時間的時間窓を分析し、FFLD傾斜のアノテーションを実施する。非接触のエビデンスは、ファーフィールド及び追加の非接触電位についての3×3の近傍を調査することにより収集される。更に、窓(t±W)内の傾斜アノテーションを、一次傾斜について分析する。この分析により、一次傾斜が中央電極のIC ECGでは見られないか、又は一次傾斜が中央電極のIC ECGで見られるか、のいずれかを明らかにすることができる。一次傾斜が見つからないことは、非接触のエビデンス、及び、非接触のエビデンスの隣接電極でファーフィールド傾斜のみが見出されること、更に、非接触のエビデンスの隣接電極で一次傾斜が見出されることに基づく。中央電極のIC ECGにおける一次傾斜を見つけることは、ファーフィールド電位のエビデンス、及び非接触のエビデンスの隣接電極で見出される同時的な一次傾斜に基づく。
【0078】
図24及び25は、単一傾斜2205、2つの傾斜グループ2206、長い二重傾斜グループ2207、及び>2つの傾斜2208(上で規定したように)を更に示す、グルーピングの2つの例を示す。これらの図は、上から下に向かってそれぞれ、電位
図2401、2501、振幅2402、2502、持続時間2403、2503、及び傾斜2404、2504のグラフを示す。それぞれは、一次傾斜1、二次傾斜2及びファーフィールド傾斜3を含む。
図24及び25は、以下で更に論じる近隣グループを更に示す。
【0079】
図26は、長方形として表す識別した傾斜の空間-時間的分析を示す。左側のマトリクス、即ち円の集合は、1~8と標識した8個の隣接電極、及びC(即ち中央の電極)のトポロジカルな位置を示す。
図26の右側には、一連の傾斜記録が示される。一番上の記録261は、長方形が傾斜の振幅及び持続時間を表す、中央の電極Cの傾斜を示す。上述のように、傾斜の振幅262(A)は高さとして示され、傾斜の持続時間263(D)は幅として示される。下の記録1~8は、中央の電極Cを取り巻く、他の8個の隣接電極1~8に関する同じ情報を示す。例えば、電極1及び8の出力を
図26に示す。
【0080】
図27~29は、取得したECG 302と、その各部分が細分化されているか否かに関する更なるエビデンスを提供するのに使用可能な、AFマッピングの空間-時間的傾斜分析を示す。中央の電極Cの傾斜と、隣接電極1~8の傾斜との間の空間-時間的関係を評価する。中央電極の傾斜261と、隣接電極のIC ECGのそれぞれにおける傾斜264との間の空間-時間的関係を識別する。
【0081】
図27は、伝導し電気的に緊張した、取得したECG信号302のグラフとしての、中央電極の傾斜261を示す。点線のボックスは、伝導271(広い窓)又は電気緊張272(狭い窓)の関係のいずれかの検索窓を示す。伝導関係271は、間隔制限内、伝導範囲内の要素、及び相当する傾斜プロファイルを含む。電気緊張関係272は、ファーフィールド傾斜プロファイルを含み、瞬間的なものである。伝導窓の幅263は通常、伝導速度、及び中央から隣接電極までの距離に依存する。中央電極Cと8個の隣接電極1~8との間で形成可能な関係が大きくなるほど、中央電極Cの傾斜の正しいアノテーションのエビデンスは強くなる。
【0082】
図28及び29は、中央電極の傾斜プロファイル261と、隣接電極のうちの1つの傾斜プロファイルとの伝導関係、電気緊張関係、及び電気緊張と伝導を組み合わせた関係の特定の例を示す。
【0083】
図28は、中央電極Cと隣接電極1~8の傾斜関係を決定するためのグラフを示す。伝導又は電気緊張関係の両方により、試験した一次傾斜は単一電位に関係しているというエビデンスの増大が判明した。グラフに示すように、単一電位のエビデンスは、1)隣接電極との伝導傾斜の関係(上2つのグラフ);2)隣接電極との電子傾斜の関係(真ん中の2つのグラフ);及び3)ブロックに対する伝導及び電子的性質の組み合わせ(下2つのグラフ)の場合に増大する。線281は、窓の中の中央近傍の傾斜の時間移動を示し、それらの伝導関係を示している。
【0084】
図29は、電気緊張(上)又は一次傾斜(下)に関係するファーフィールド傾斜を示す。ファーフィールド電位のエビデンスは、示した3つの因子の場合に増大し得る。第1の因子は、隣接電極と、最大の単一電位を1つ示す傾斜との電気緊張傾斜の関係とすることができる。この因子は、傾斜の初期特性(T
*、E
*)又は、傾斜の種類のより早い割り当て(T、E)の結果のいずれかに基づくことができることに留意されたい。第2の因子は、上の2つのグラフ2901、2902に示すように、FFで示すか、下の2つのグラフ2903、2904で示すように、単一電位のみのいずれかとすることができる。最終的に、電子傾斜の関係のみが見つかる場合、性質は(一時的に)非接触電極であるか、又はファーフィールド(例えば心室)である。
図29の右側は、2つの異なる電極グループ2905の測定間の空間的差異を図によって示す。
【0085】
本明細書における開示に基づき多くの変更が可能であると理解されるべきである。特定の組み合わせにおける特徴及び構成要素を上述したが、それぞれの特徴又は構成要素は、他の特徴及び構成要素なしで単独で、又は他の特徴及び構成要素と種々に組み合わせて、若しくは組み合わせることなく使用することができる。
【0086】
提供される方法は、汎用コンピュータ、プロセッサ、又はプロセッサコアへの実装を含む。好適なプロセッサとしては、例として、汎用プロセッサ、特殊用途のプロセッサ、従来のプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、複数個のマイクロプロセッサ、DSPコアと連携する1つ又は2つ以上のマイクロプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)回路、任意の他の種類の集積回路(IC)、及び/又はステートマシンが挙げられる。かかるプロセッサは、処理したハードウェア記述言語(HDL)の命令の結果、及びネットリストを含む他の仲介データ(コンピュータの可読媒体に保管可能なかかる命令)を使用する製造プロセスを構成することにより製造することができる。かかる処理の結果は、続いて、本明細書に記載の方法を実装するプロセッサを製造するための、半導体製造プロセスで使用されるマスクワークとすることができる。
【0087】
本明細書において提供する方法又はフローチャートは、汎用コンピュータ若しくはプロセッサにより実行するための、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に組み込まれるコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアに実装することができる。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体の例としては、ROM、ランダムアクセスメモリ(RAM)、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体記憶装置、内部ハードディスク及び取り外し可能なディスクなどの磁気媒体、磁気光学媒体、並びにCD-ROMディスク、及びデジタル汎用ディスク(DVD)などの光学媒体が挙げられる。
【0088】
〔実施の態様〕
(1) 細分化を使用する心臓アブレーションのための関心領域を決定する方法であって、
複数のセンサを介して、心電図(ECG)信号を検出する工程であって、各ECG信号は該複数のセンサのうちの1つを介して検出され、かつ心臓の電気活動を示す、工程と、
該複数のECG信号のそれぞれについて、1つ又は2つ以上の局所興奮到達時間(LAT)を決定する工程であって、該LATはそれぞれ、対応するECG信号の興奮到達時間(time of activation)を示す、工程と、
該複数のECG信号のそれぞれの、該決定した1つ又は2つ以上のLATに基づいて、1つ又は2つ以上の促進因子マップ(driver maps)及び1つ又は2つ以上の永続因子マップ(perpetuator maps)を生成する工程であって、該1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び該1つ又は2つ以上の永続因子マップはそれぞれ、該心臓の該電気活動を表す、工程と、
少なくとも細分化を使用して該促進因子マップ及び永続因子マップからパラメータを導出する工程と、
該導出したパラメータを処理し、促進因子のエビデンス及び永続因子のエビデンスに組み合わせる工程と、
該促進因子のエビデンス及び該永続因子のエビデンスを導出するために使用した該細分化に従い、心臓アブレーションのための該関心領域を決定する工程と、を含む、方法。
(2) 前記LATをフィルタリングし、非細分化単一電位、短い二重電位及び長い二重電位を含む非細分化LATを取り除くことにより前記細分化を行う工程と、
前記フィルタリングしたLATを使用して細分化窓を見つける工程と、
該細分化窓を使用して細分化ECGを作成する工程と、を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 傾斜分析を使用し、電圧及び時間に対する前記細分化を表示する工程を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記細分化窓においてピークバレー検出を行い、山と谷(peak valleys)を検出する工程と、
該検出した山と谷の細分化傾斜を計算する工程と、
該検出した山と谷を使用して発生率を計算する工程と、
該発生率を使用して、単一電位傾斜について発生率細分化ファーフィールド(incidence fractionation far field)を計算する工程と、
エビデンス数データを計算する工程と、
判定ルールを実行し、該判定ルールに基づく前記細分化ECGを出力する工程と、を更に含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 一次傾斜と二次傾斜の時間グルーピングを含む、時間ゲートを用いて傾斜を電位へ変換する工程と、
該電位を、所定の間隔内で連続する傾斜のグループにグルーピングする工程と、
該グルーピングに従って該電位を傾斜の種類として分析する工程と、を更に含む、実施態様1に記載の方法。
【0089】
(6) 前記グループのサイズは2であり、前記グループは、単一傾斜、短い二重傾斜、長い二重傾斜及び2つの傾斜を含み、前記所定の間隔は50msである、実施態様5に記載の方法。
(7) 表示デバイスに前記関心領域を表示する工程を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 細分化を使用する心臓アブレーションのための関心領域を決定するシステムであって、
複数のセンサであって、該複数のセンサはそれぞれ、経時的に複数の心電図(ECG)信号のうちの1つを検出するように構成され、各ECG信号は心臓の電気活動を示す、複数のセンサと、
1つ又は2つ以上のプロセッサを含む処理デバイスであって、
該複数のECG信号のそれぞれについて、1つ又は2つ以上の局所興奮到達時間(LAT)を決定することであって、該LATはそれぞれ、対応するECG信号の興奮到達時間を示す、ことと、
該複数のECG信号のそれぞれの、該決定した1つ又は2つ以上のLATに基づいて、1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び1つ又は2つ以上の永続因子マップを生成することであって、該1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び該1つ又は2つ以上の永続因子マップはそれぞれ、該心臓の該電気活動を表す、ことと、
少なくとも細分化を使用して該促進因子マップ及び永続因子マップからパラメータを導出することと、
該導出したパラメータを処理し、促進因子のエビデンス及び永続因子のエビデンスに組み合わせることと、
該促進因子のエビデンス及び該永続因子のエビデンスを導出するために使用した該細分化に従い、心臓アブレーションのための該関心領域を決定することと、を行うように構成されている、処理デバイスと、
表示デバイスと、を含む、システム。
(9) 前記処理デバイスが、
前記LATをフィルタリングし、非細分化単一電位、短い二重電位及び長い二重電位を含む非細分化LATを取り除くことにより前記細分化を行うことと、
前記フィルタリングしたLATを使用して細分化窓を見つけることと、
該細分化窓を使用して細分化ECGを作成することと、を行うように更に構成されている、実施態様8に記載のシステム。
(10) 前記処理デバイスが、
傾斜分析を使用し、電圧及び時間に対する前記細分化を表示するように更に構成されている、実施態様8に記載のシステム。
【0090】
(11) 前記処理デバイスが、
前記細分化窓においてピークバレー検出を行い、山と谷を検出することと、
該検出した山と谷の細分化傾斜を計算することと、
該検出した山と谷を使用して発生率を計算することと、
該発生率を使用して、単一電位傾斜について発生率細分化ファーフィールドを計算することと、
エビデンス数データを計算することと、
判定ルールを実行し、該判定ルールに基づく前記細分化ECGを出力することと、を行うように更に構成されている、実施態様10に記載のシステム。
(12) 前記処理デバイスが、
一次傾斜と二次傾斜の時間グルーピングを含む、時間ゲートを用いて傾斜を電位へ変換することと、
前記電位を、所定の間隔内で連続する傾斜のグループにグルーピングすることと、
該グルーピングに従って該電位を傾斜の種類として分析することと、を行うように更に構成されている、実施態様8に記載のシステム。
(13) 前記グループのサイズは2であり、前記グループは、単一傾斜、短い二重傾斜、長い二重傾斜及び2つの傾斜を含み、前記所定の間隔は50msである、実施態様12に記載のシステム。
(14) 前記表示デバイスに前記関心領域を表示する工程を更に含む、実施態様7に記載のシステム。
(15) コンピュータプログラム命令が格納された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含むコンピュータソフトウェア製品であって、該命令は、コンピュータにより実行されると、該コンピュータに、
複数のセンサを介して、心電図(ECG)信号を検出する工程であって、各ECG信号は該複数のセンサのうちの1つを介して検出され、かつ心臓の電気活動を示す、工程と、
該複数のECG信号のそれぞれについて、1つ又は2つ以上の局所興奮到達時間(LAT)を決定する工程であって、該LATはそれぞれ、対応するECG信号の興奮到達時間を示す、工程と、
該複数のECG信号のそれぞれの、該決定した1つ又は2つ以上のLATに基づいて、1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び1つ又は2つ以上の永続因子マップを生成する工程であって、該1つ又は2つ以上の促進因子マップ及び該1つ又は2つ以上の永続因子マップはそれぞれ、該心臓の該電気活動を表す、工程と、
少なくとも細分化を使用して該促進因子マップ及び永続因子マップからパラメータを導出する工程と、
該導出したパラメータを処理し、促進因子のエビデンス及び永続因子のエビデンスに組み合わせる工程と、
該促進因子のエビデンス及び該永続因子のエビデンスを導出するために使用した該細分化に従い、心臓アブレーションのための該関心領域を決定する工程と、を行わせる、コンピュータソフトウェア製品。
【0091】
(16) 前記LATをフィルタリングし、非細分化単一電位、短い二重電位及び長い二重電位を含む非細分化LATを取り除くことにより前記細分化を行う工程と、
前記フィルタリングしたLATを使用して細分化窓を見つける工程と、
該細分化窓を使用して細分化ECGを作成する工程と、を更に含む、実施態様15に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(17) 傾斜分析を使用し、電圧及び時間に対する前記細分化を表示する工程を更に含む、実施態様15に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(18) 前記細分化窓においてピークバレー検出を行い、山と谷を検出する工程と、
該検出した山と谷の細分化傾斜を計算する工程と、
該検出した山と谷を使用して発生率を計算する工程と、
該発生率を使用して、単一電位傾斜について発生率細分化ファーフィールドを計算する工程と、
エビデンス数データを計算する工程と、
判定ルールを実行し、該判定ルールに基づく前記細分化ECGを出力する工程と、を更に含む、実施態様17に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(19) 一次傾斜と二次傾斜の時間グルーピングを含む、時間ゲートを用いて傾斜を電位へ変換する工程と、
該電位を、所定の間隔内で連続する傾斜のグループにグルーピングする工程と、
該グルーピングに従って該電位を傾斜の種類として分析する工程と、を更に含む、実施態様15に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(20) 前記グループのサイズは2であり、前記グループは、単一傾斜、短い二重傾斜、長い二重傾斜及び2つの傾斜を含み、前記所定の間隔は50msである、実施態様19に記載のコンピュータソフトウェア製品。