(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】関心領域を検出するための総合システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/367 20210101AFI20220328BHJP
A61B 5/361 20210101ALI20220328BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
A61B5/367
A61B5/361
A61B18/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017004940
(22)【出願日】2017-01-16
【審査請求日】2020-01-16
(32)【優先日】2016-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ロイ・ウルマン
(72)【発明者】
【氏名】ズィヤード・ゼイダン
(72)【発明者】
【氏名】スタニスラフ・ゴールドバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ガル・ハヤム
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル-タル
(72)【発明者】
【氏名】ヤニブ・ベン・ズリヘム
(72)【発明者】
【氏名】アチュル・フェルマ
(72)【発明者】
【氏名】ヤリブ・アブラハム・アモス
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ピー・エム・ホウベン
【審査官】▲瀬▼戸井 綾菜
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-171548(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0081114(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0038863(US,A1)
【文献】特表2012-509701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0216438(US,A1)
【文献】特表2014-506171(JP,A)
【文献】特表2014-502556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05- 5/0538
A61B 5/24- 5/398
A61B 13/00-18/18
A61F 2/01
A61N 7/00- 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓アブレーションの標的領域を決定する、処理デバイスの作動方法であって、
該処理デバイスが、
複数のセンサを介して、複数の心電図(ECG)信号を検出することであって、各ECG信号は、該複数のセンサのうちの1つを介して検出され、かつ経時的な心臓の電気活動を示す、ことと、
該複数のECG信号のそれぞれについて、経時的に生じる複数の局所活性化時間(LAT)を決定することであって、各LATは、該心臓の領域での電気的活性化時間を示す、ことと、
該複数のECG信号のそれぞれの該決定した複数のLATに基づいて、該心臓の該電気活動を表す1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報を生成することと、
該心臓の該電気活動を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該生成したマッピング情報に基づいて、該心臓の関心領域(ROI)を、心不整脈を示す状態を表す該心臓の領域として該ROIを識別することにより決定することと、
を実行し、
該複数のECG信号は、カテーテルを介して入手した前記心臓の心内心電図(IC ECG)信号を含み、
該処理デバイスは、
該IC ECG信号のLATの質を決定し、
該IC ECG信号の心房細動の複雑性を決定し、
該LATの質と、該心房細動の複雑性との比較に基づいて、該カテーテルを再配置するか否かを決定するように更に構成されて
おり、
前記マッピング情報を生成することは、心房細動(AF)の1つ又は2つ以上の潜在的なAF促進因子を示す促進因子マッピング情報と、1つ又は2つ以上の潜在的なAF永続因子を示す永続因子マッピング情報とを含む第1のマップを生成することを含み、
前記マッピング情報を生成することは、
前記ECG信号の活性化波を示す活性化波マッピング情報と、
前記ECG信号の伝導速度を示す伝導速度マッピング情報と、
遅延した又は遮断された伝導の領域を示す遮断マッピング情報と、
前記ECG信号の細分化部分を示す細分化マッピング情報と、
前記ECG信号の電圧を示す電圧情報と、
を組みあわせ、第2のマップを生成することを含み、
前記マッピング情報を生成することは、前記第1及び第2のマップの信用性を示す品質マップである第3のマップを生成することを含み、
前記ROIが、前記第1のマップ、第2のマップ及び第3のマップに基づき決定される、
方法。
【請求項2】
前記促進因子マッピング情報は、前記LAT間の時間間隔、前記LATの早さを示す情報、及び前記ECG信号のR波の振幅と前記ECG信号のS波の振幅との比率に従い生成される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記永続因子マッピング情報は、前記ECG信号の細分化、及び前記ECG信号の伝導速度に従い生成される、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記処理デバイスが、
前記複数のECG信号のそれぞれについての前記決定した複数のLATに基づいて、前記心不整脈を示す状態の時空間的発現を表す1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報を生成することと、
前記心不整脈を示す状態の該時空間的発現を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該マッピング情報に基づいて、前記心臓の前記ROIを決定することと、
前記心臓の前記電気活動を表す前記1つ又は2つ以上のマップに関する前記マッピング情報と、前記心不整脈を示す状態の該時空間的発現を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該マッピング情報とを提供することと、
を更に実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
心臓アブレーションの標的領域を決定するためのシステムであって、
それぞれが経時的な心臓の電気活動を示す複数の心電図(ECG)信号を検出するように構成された複数のセンサであって、該複数のセンサのそれぞれは、該ECG信号のうちの1つを検出するように構成されている、複数のセンサと、
1つ又は2つ以上のプロセッサを備える処理デバイスであって、
該複数のECG信号のそれぞれについて、経時的に生じる複数の局所活性化時間(LAT)を決定することであって、各LATは、該心臓の領域での電気的活性化時間を示す、ことと、
該複数のECG信号のそれぞれの該決定した複数のLATに基づいて、該心臓の該電気活動を表す1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報を生成することと、
該心臓の該電気活動を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該生成したマッピング情報に基づいて、該心臓の関心領域(ROI)を、心不整脈を示す状態を表す該心臓の領域として該ROIを識別することにより決定することと、を行うように構成されている、処理デバイスと、を含み
、
該複数のECG信号は、カテーテルを介して入手した前記心臓の心内心電図(IC ECG)信号を含み、
該処理デバイスは、
該IC ECG信号のLATの質を決定し、
該IC ECG信号の心房細動の複雑性を決定し、
該LATの質と、該心房細動の複雑性との比較に基づいて、該カテーテルを再配置するか否かを決定するように更に構成されて
おり、
前記マッピング情報を生成することは、AFの1つ又は2つ以上の潜在的なAF促進因子を示す促進因子マッピング情報と、1つ又は2つ以上の潜在的なAF永続因子を示す永続因子マッピング情報とを含む第1のマップを生成することを含み、
前記マッピング情報を生成することは、
前記ECG信号の活性化波を示す活性化波マッピング情報と、
前記ECG信号の伝導速度を示す伝導速度マッピング情報と、
遅延した又は遮断された伝導の領域を示す遮断マッピング情報と、
前記ECG信号の細分化部分を示す細分化マッピング情報と、
前記ECG信号の電圧を示す電圧情報と、
を組みあわせ、第2のマップを生成することを含み、
前記マッピング情報を生成することは、前記第1及び第2のマップの信用性を示す品質マップである、第3のマップを生成することを含み、
前記ROIが、前記第1のマップ、第2のマップ及び第3のマップに基づき決定される、システム。
【請求項6】
前記促進因子マッピング情報は、前記LAT間の時間間隔、前記LATの早さを示す情報、及び前記ECG信号のR波の振幅と前記ECG信号のS波の振幅との比率に従い生成される、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記永続因子マッピング情報は、前記ECG信号の細分化、及び前記ECG信号の伝導速度に従い生成される、請求項
5に記載のシステム。
【請求項8】
前記処理デバイスは、
前記複数のECG信号のそれぞれについての前記決定した複数のLATに基づいて、前記心不整脈を示す状態の時空間的発現を表す1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報を生成し、
前記心不整脈を示す状態の該時空間的発現を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該マッピング情報に基づいて、前記心臓の前記ROIを決定し、
前記心臓の前記電気活動を表す前記1つ又は2つ以上のマップに関する前記マッピング情報と、前記心不整脈を示す状態の該時空間的発現を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該マッピング情報とを、表示するために提供するように更に構成されている、請求項
5に記載のシステム。
【請求項9】
心臓アブレーションの標的領域を決定するための方法をコンピュータに実行させるための命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、該命令は、
複数のセンサを介して、複数の心電図(ECG)信号を検出することであって、各ECG信号は、該複数のセンサのうちの1つを介して検出され、かつ経時的な心臓の電気活動を示す、ことと、
該複数のECG信号のそれぞれについて、経時的に生じる複数の局所活性化時間(LAT)を決定することであって、各LATは、該心臓の領域での電気的活性化時間を示す、ことと、
該複数のECG信号のそれぞれの該決定した複数のLATに基づいて、該心臓の該電気活動を表す1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報を生成することと、
該心臓の該電気活動を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該生成したマッピング情報に基づいて、該心臓の関心領域(ROI)を、心不整脈を示す状態を表す該心臓の領域として該ROIを識別することにより決定することと、を含み
、
該複数のECG信号は、カテーテルを介して入手した前記心臓の心内心電図(IC ECG)信号を含み、
該命令は、
該IC ECG信号のLATの質を決定し、
該IC ECG信号の心房細動の複雑性を決定し、
該LATの質と、該心房細動の複雑性との比較に基づいて、該カテーテルを再配置するか否かを決定するように更に構成されている、
前記マッピング情報を生成することは、AFの1つ又は2つ以上の潜在的なAF促進因子を示す促進因子マッピング情報と、1つ又は2つ以上の潜在的なAF永続因子を示す永続因子マッピング情報とを含む第1のマップを生成することを含み、
前記マッピング情報を生成することは、
前記ECG信号の活性化波を示す活性化波マッピング情報と、
前記ECG信号の伝導速度を示す伝導速度マッピング情報と、
遅延した又は遮断された伝導の領域を示す遮断マッピング情報と、
前記ECG信号の細分化部分を示す細分化マッピング情報と、
前記ECG信号の電圧を示す電圧情報と、
を組みあわせ、第2のマップを生成することを含み、
前記マッピング情報を生成することは、前記第1及び第2のマップの信用性を示す品質マップである第3のマップを生成することを含み、
前記ROIが、前記第1のマップ、第2のマップ及び第3のマップに基づき決定される、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項10】
前記命令は、
前記複数のECG信号のそれぞれの前記決定した複数のLATに基づいて、前記心不整脈を示す状態の時空間的発現を表す1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報を生成することと、
前記心不整脈を示す状態の該時空間的発現を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該マッピング情報に基づいて、前記心臓の前記ROIを決定することと、
前記心臓の前記電気活動を表す前記1つ又は2つ以上のマップに関する前記マッピング情報と、前記心不整脈を示す状態の該時空間的発現を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該マッピング情報とを提供することと、を更に含む、請求項
9に記載のコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願第62/278,676号(2016年1月14日出願)の利益を主張し、この出願は、十分に記載されているかのように参照により援用されている。本出願は、「Region of Interest Focal Source Detection Using Comparisons of R-S Wave Magnitudes and LATs of RS Complexes」と題する米国特許出願第15/404,228号、「Region of Interest Rotational Activity Pattern Detection」と題する米国特許出願第15/404,225号、「Identification of Fractionated Signals」と題する米国特許出願第15/404,244号、「Non-Overlapping Loop-Type or Spline-Type Catheter To Determine Activation Source Direction and Activation Source Type」と題する米国特許出願第15/404,231号、及び「Region of Interest Focal Source Detection」と題する米国特許出願第15/404,266号(全件2017年1月12日に出願)を、これらの出願が十分に記載されているかのように参照により援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、心房細動等の心不整脈の治療のためにアブレーションを行う関心領域を決定するためのシステム及び方法に関し、より詳細には、検出した心臓の電気活動を表すマップ、及び心臓の電気活動を示す状態の時空間的発現を表すマップを使用してアブレーションを行う心房細動の関心領域を決定するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心不整脈としては、様々な種類の異常又は不規則な心拍リズム、例えば、急速かつ不規則な鼓動を特徴とする心房細動(AF)等が挙げられる。正常な心臓状態では、心拍は、電気パルス(すなわち、信号)により生み出され、電気パルスは、心臓の上部の小室(すなわち、心房)を起点とし、心房から、房室(AV)結節を通って、対をなす心臓の下部の小室(すなわち、心室)に進む。信号が心房を通過すると、心房は、収縮し、血液を心房から心室に供給する。信号がAV結節を通って心室に移動すると、心室の収縮が引き起こされ、血液を心臓から体に供給する。しかしながら、AF状態の間は、心房の信号は乱れ、心臓が不規則に拍動する原因となる。
【0004】
AFは、人々の生活の身体的、心理的及び感情的な質に悪影響を与える可能性がある。AFは、漸進的に重症度及び頻度が増大し、未治療のままとすると、慢性疲労、うっ血性心不全又は脳卒中を引き起こし得る。AF治療の一種としては、リズムコントロール投薬、及び脳卒中の増加したリスクを管理するために使用される投薬等の処方投薬が挙げられる。これらの投薬は、毎日、そして無期限的に行われなければならない。別の種類のAF治療としては、胸部に配置した電極を介して心臓に電気ショックを与えることにより正常な心拍を回復させることを試みる、カルジオバージョンが挙げられる。いくつかの持続型AFでは、カルジオバージョンは効果的でないか、又は試みることができないかのいずれかである。
【0005】
AFを治療するための最近のアプローチとしては、心臓組織をアブレーションして電気経路を打ち切り、心拍疾患を引き起こし得る不完全な電気インパルスを遮断する低侵襲性アブレーション処置(例えば、カテーテルアブレーション)が挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
複数のセンサを介して、心電図(ECG)信号を検出することを含む、心臓アブレーションの標的領域を決定する方法を提供する。各ECG信号は、複数のセンサのうちの1つを介して検出され、かつ経時的な心臓の電気活動を示す。本方法はまた、複数のECG信号のそれぞれについて、経時的に生じる複数の局所活性化時間(LAT)を決定することも含む。各LATは、心臓の領域での電気的活性化時間を示す。本方法は、複数のECG信号のそれぞれの決定した複数のLATに基づいて、心臓の電気活動を表す1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報を生成することと、心臓の電気活動を表す1つ又は2つ以上のマップに関する生成したマッピング情報に基づいて、心臓の関心領域(ROI)を、心不整脈を示す状態を表す心臓の領域としてROIを識別することにより決定することと、を更に含む。
【0007】
それぞれが経時的な心臓の電気活動を示す複数の心電図(ECG)信号のうちの1つを検出するように、それぞれが構成された複数のセンサを含む、心臓アブレーションの標的領域を決定するためのシステムを提供する。本システムはまた、複数のECG信号のそれぞれについて、経時的に生じる複数の局所活性化時間(LAT)を決定するように構成された1つ又は2つ以上のプロセッサを含む処理デバイスも含む。各LATは、心臓の領域での電気的活性化時間を示す。1つ又は2つ以上のプロセッサは、複数のECG信号のそれぞれの決定した複数のLATに基づいて、心臓の電気活動を表す1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報を生成し、かつ、心臓の電気活動を表す1つ又は2つ以上のマップに関する生成したマッピング情報に基づいて、心臓の関心領域(ROI)を、心不整脈を示す状態を表す心臓の領域としてROIを識別することにより決定するように更に構成されている。
【0008】
心臓アブレーションの標的領域を決定するための方法をコンピュータに実行させるための命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体を提供する。命令は、複数のセンサを介して、心電図(ECG)信号を検出することを含む。各ECG信号は、複数のセンサのうちの1つを介して検出され、かつ経時的な心臓の電気活動を示す。命令はまた、複数のECG信号のそれぞれについて、経時的に生じる複数の局所活性化時間(LAT)を決定することも含む。各LATは、心臓の領域での電気的活性化時間を示す。命令は、複数のECG信号のそれぞれの決定した複数のLATに基づいて、心臓の電気活動を表す1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報を生成することと、心臓の電気活動を表す1つ又は2つ以上のマップに関する生成したマッピング情報に基づいて、心臓の関心領域(ROI)を、心不整脈を示す状態を表す心臓の領域としてROIを識別することにより決定することと、を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付図面と共に例によって与えられる以下の説明から、より詳細な理解を得ることができる。
【
図1】本明細書にて開示された実施形態で使用されるAFの例示的な分類を示すブロック図である。
【
図2】本明細書にて開示された実施形態で使用するための、潜在的なアブレーションのROIを決定するために使用される例示的なシステムを示すブロック図である。
【
図3A】本明細書にて開示された実施形態で使用するための、潜在的なアブレーションのROIを決定するための例示的な方法を示すフローチャートの部分図である。
【
図3B】本明細書にて開示された実施形態で使用するための、潜在的なアブレーションのROIを決定するための例示的な方法を示すフローチャートの部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
カテーテルアブレーションに使用する従来の方法及びシステムは通常、皮膚の切開部を通って心臓まで誘導されるカテーテルを挿入することを含む。アブレーションを実施する前に、心臓の異なる領域に配置した電極から、心臓の心内心電図(IC ECG)信号が得られる。この信号を監視及び使用して、心臓の1つ又は2つ以上の領域が不規則な心拍を引き起こしているかどうかを判定するための情報を提供する。しかしながら、アブレーションを行うこれらの領域を決定するのに使用する従来の方法及びシステムは、時間がかかり(例えば数時間)、(通常長時間の訓練を必要とする)特定の専門技術及び経験を有する医療関係者に依存している。
【0011】
本明細書にて開示した実施形態は、アブレーションの標的となる、潜在的な関心領域(ROI)を決定するシステム、装置及び方法を用いる。種々のマッピング手法を利用して、AF基質(AF substrate)の電気物理的状態の1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報、及び潜在的な又は標的のアブレーションのROIの効率的かつ正確な決定をもたらすAFプロセスの時空間的発現を表す1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報を生成する。マッピング手法では、得られたIC ECG信号の種々のパラメータ(例えば、周期、早さ、R-S複合体、伝導速度(CV)、遮断及び細分化)、並びに検出した局所活性化時間(LAT)を利用し、AF基質の促進因子(driver)及び永続因子(perpetuator)の潜在的兆候を識別する。潜在的な促進因子及び永続因子の兆候の識別を使用して、AF基質のマッピング(例えば、促進因子マップ及び永続因子マップ)を提供する。マッピング手法はまた、得られたIC ECG信号の種々のパラメータ、及び検出した局所活性化時間を利用して、AFプロセスの時空間的発現を潜在的に表すマップ(例えば、活性化/波マップ、CVマップ、細分化マップ、電圧マップ及び遮断マップ)を提供するためのマッピング情報を生成することも含む。AFプロセスの時空間的発現のマッピングを、AF基質のマッピングに加えて又はその代わりに使用して、潜在的なアブレーションのROIを識別することができる。AFマップを分析する訓練時間を潜在的に減少させ、アブレーションによる成功率を増加させ、AFマップの効率的な判読を容易にするために、マッピング手法が用いられる。簡便化の目的のために、本明細書で記載される実施形態は、AFの治療のために使用されるシステム及び方法について言及する。しかしながら、実施形態は、様々な種類の異常又は不規則な心拍を含む、任意の種類の心不整脈の治療に対して使用できることに留意されたい。
【0012】
図1は、本明細書にて開示された実施形態で使用されるAFの例示的な分類を示すブロック図である。
図1の例示的な分類は、危険性AFと非危険性AF、及びAFの促進因子と永続因子、及びこれらの相対的な時空間的パターンを区別する。
【0013】
例えば、
図1に示すように、AF102として特徴付けられる不規則な心拍は、危険性104又は非危険性106として分類される。非危険性AF106の例としては、心拍が、多くの場合、数秒以内又は数時間後にできるだけ早期に正常化する発作性(すなわち、間欠性)の不規則な心拍発生、及び通常の心拍が拍動医学的治療(rhythm medical therapy)又は処置(例えばカルジオバージョン)により回復し得る、持続型の不規則な心拍発生が挙げられる。危険性AF104の例としては、心臓が絶えず続くAFの状態にあり、状態が永続的であると考えられる、長めの期間(例えば、1年を超えて)継続する長期にわたる持続型の不規則な心拍発生が挙げられる。
【0014】
危険性AFは、IC ECG信号から誘導することができる特徴(例えば、活性化領域)に従って分類することができる。活性化領域は、AFの潜在的な一因となる因子として識別され得る。
図1に示すように、危険性AFは、潜在的なAFの促進因子(以下、「促進因子」)又は潜在的なAF発生源(以下、「発生源」)108、及び潜在的なAFの永続因子110(以下、「永続因子」)を含む、異なる活性化領域に従って分類される。促進因子108は、電気パルスが発生して心臓を刺激して収縮させ、例えば、心房の他の領域への細動伝導を生み出すことにより、潜在的にAF一因となり得る、(例えば、心房内の)活性化領域である。永続因子110は、同様に潜在的にAFの一因となり得る、持続した活性化領域(例えば、電気生理学的プロセス/基質)である。
【0015】
促進因子108及び永続因子110は、それらの時空間的発現に従って表され(例えば、マッピングされ)得る。
図1に示すとおり、促進因子108及び永続因子110は、局所性発生源(焦点)112、及び局在化回転性活性化(LRA)発生源又は回転性活性化パターン(RAP)発生源114を含む例示的な時空間的発現タイプにより分類される。局所性発生源は、一点から遠心的に拡大する、心房の小さい領域を起点にする促進因子の1種である。RAP発生源114は、電気パルスが中央領域の周りを少なくとも360°回転する、心臓の不規則領域である。
【0016】
図1はまた、秩序性伝導遅延116を示すあるタイプ、及び無秩序性伝導遅延118を示す別のタイプを含む、様々なタイプの永続因子110を示している。
図1に示すその他の種類の永続因子110としては、秩序性伝導遅延116によって特徴付けられる心房粗動(AFL)120、並びに、無秩序性伝導遅延118によって特徴付けられる局在化不規則活性(localized irregular activation:LIA)122、線状ギャップ124、及びピボット126(すなわち、中央領域の周りを360°未満回転する電気パルス)が挙げられる。また、RAP発生源114は、促進因子108及び永続因子110の両方として示される。促進因子108及び永続因子110は、例えば、別々にマッピングされ、促進因子のタイプ及び/又は永続因子のタイプの識別を容易にし、かつ潜在的なアブレーションのROIの効率的かつ正確な決定をもたらす。
【0017】
促進因子108及び永続因子110のマッピング及び識別はまた、潜在的にAFの一因となり得る1つ若しくは2つ以上の更なる因子、又はAF基質(すなわち、AFプロセスそのもの)及び/若しくはAFプロセスの発現を潜在的に特徴付け得るパラメータに基づいてもよい。例えば、潜在的な局所性発生源108を識別するために使用されるAFパラメータ又はAF因子としては、ある点からの活性化の無指向的な活性化の拡大、早さ(例えば、興奮間隙の後に開始する局所性発生源)、急速な興奮(例えば、短周期長かつ高い主周波数の)焦点及びブレイクスルー(例えば、肺静脈(PV)、自由壁及び経壁、心内膜及び心外膜)等のトリガ、並びに局所性発生源として発現するマイクロリエントリー回路及び中央障害物の特定の異方性構造に応じて促進因子108として発現可能な短半径のリエントリー回路が挙げられる。
【0018】
RAP発生源114をマッピングし、識別するために使用されるAFパラメータ又はAF因子としては、例えば、反復周期、促進因子発生源108として発現可能な回転子、(例えば、局在化又は分布した)構造的又は機能的異方性、及び中央障害物の特定の異方性構造に応じて促進因子108又は永続因子110のいずれか一方として発現可能な短半径のリエントリー回路が挙げられる。
【0019】
永続因子110をマッピングし、識別するために使用されるAFパラメータ又はAF因子としては、例えば、延長した(増大した)経路長、解剖学的(病理学的)ブロック線、繊維症、安定した機能的ブロック線(例えば、不能状態が持続した領域)、臨界部(例えば、ブロック線周辺の最短の経路>経路長)及び細動伝導因子(例えば、分離した波、リエントリー回路因子)が挙げられる。
【0020】
図2は、本明細書にて開示された実施形態で使用するための、アブレーションのためのAFのROIを決定するために使用される例示的なシステム200を示すブロック図である。
図2に示すように、システム200は、カテーテル202、処理デバイス204、及び表示デバイス206を備える。カテーテル202は、それぞれが経時的な心臓の領域の電気活動(電気信号)を検出するように構成された、カテーテルセンサ(例えば、電極)のアレイを含む。IC ECGを実施する場合、それぞれの電極は、電極と接触した心臓の領域の電気活動を検出する。システム200はまた、心臓の電気生理学的パターンが原因の皮膚上での電気的変化の検出を介して心臓の電気活動を検出するように構成された、心外センサ210(例えば、患者の皮膚上の電極)を含む。
【0021】
検出したIC ECG信号及び検出した心外信号を、処理デバイス204により処理(例えば、経時的に記録、フィルタリング、細分化、マッピング、結合、加工等)し、表示デバイス206上に表示する。
【0022】
実施形態は、IC ECG信号及び心外ECG信号を検出するために使用するセンサを含む、ECG信号を検出するために使用する任意数のセンサ210を含んでもよい。簡便化の目的のために、本明細書で記載されるシステム及び方法は、IC ECG信号の検出及び使用を指す。しかしながら、実施形態は、IC ECG信号、又は心外ECG信号、又はIC ECG信号と心外ECG信号の両方の組み合わせを利用できることに留意されたい。
【0023】
処理デバイス204は、それぞれがECG信号を処理するように構成された1つ又は2つ以上のプロセッサを含んでもよい。処理デバイス204の各プロセッサは、経時的にECG信号を記録し、ECG信号をフィルタリングし、ECG信号を信号の構成要素(例えば、傾斜、波、複合体)に細分化し、ECG信号をマッピングし、ECG信号情報を組み合わせ、かつマッピング情報をマッピングして加工する等を行うように構成されていてもよい。
【0024】
表示デバイス206は、それぞれがECG信号、ECG信号情報、AFプロセスのマップ、及びAFプロセスの時空間的発現を表すマップを表示するように構成された1つ又は2つ以上のディスプレイを含んでもよい。
【0025】
カテーテルセンサ208及び心外センサ210は、処理デバイス204と有線又は無線で通信することができる。表示デバイス206もまた、処理デバイス204と有線又は無線で通信することができる。
【0026】
図3A及び
図3Bは、潜在的なアブレーションのROIを決定する例示的な方法300を示すフローチャートの部分図である。方法300は、中心部から外側に向かってIC ECG層、前処理層、LAT検出層、マップ分割層、マップ加工層、及びマップ判読層を含むマッピング分類法を用いる。
【0027】
図3Aは、例示的な方法300の一部分を示す。
図3Aのブロック302に示すように、方法300は、IC ECG層の一部として、心臓の領域の電気活動を表すIC ECG信号を得ることを含む。ブロック302で得られるIC ECG信号は、例えば、心臓の様々な領域と接触する多数の電極のうち1つから得られる。IC ECGを得た(302)後、方法300は、前処理層の一部として、
図3Aのブロック302に示すように、得られたECG信号を前処理することを含む。前処理は、例えば、心室遠視野(ventricular far field)信号の取消、ベースラインの補正、及びノイズ除去等の、1つ又は2つ以上のアルゴリズムの実行を含んでもよい。心室遠視野の検出の例としては、空間平均法(SAM)、時間平均法(TAM)、システム同定法(SIM)、及び主成分分析(PCA)を挙げることができる。
【0028】
ブロック302で得られた各IC ECG信号に関して、対応する前処理したIC ECG信号の1つ又は2つ以上のLATは、ブロック304で検出される。それぞれの信号の(
図3AでLATQとして示される)LATの質(LAT quality)は、例示的なLAT検出層の一部としてブロック306で判定される。信号の(
図3AでCPLXとして示される)AFの複雑性(AF complexity)は、ブロック308で判定される。
【0029】
決定点310で示すように、方法300は、信号のLATの質及びAFの複雑性に基づいて、カテーテルを再配置するか否かを決定することを含む。質の高いIC ECGの典型的な特徴は、ベースラインのうねりがほとんどないこと(例えば、低いベースライン対IC ECG RMSの振幅、制限された心室遠視野電位対IC ECG RMSの振幅)である。IC ECG信号の特徴としては、AF中における、識別可能な心房複合体(例えば、等電セグメント反復傾斜(isoelectric segments repeating slopes)(50~200ms間隔、約150msの中央値)により分離した、閉じ込められた(~50ms)複合体)が挙げられる。質の高い複合体の特徴は通常、複合体内に相当の増幅、及び下方向への急な傾斜(対上方向への傾斜)を有する。IC ECG信号の特徴を(例えば、測定可能な0%~100%の値を有する)測定可能な単一の特徴又はパラメータに組み合わせて、LATの質を規定することができる。LATの質をAFの複雑性と比較して、カテーテルを再配置するか否かを決定することができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、AFの複雑度に関してAFをマッピングする能力により質を規定する。カテーテルを再配置するか否かを決定することは、マップを生成し、生成したマップを使用して、マッピング電極の適用範囲の程度が、AFの複雑度を満たす(例えば、一致する)かどうかに基づき、AFをマッピングすることができる(例えば、マッピングするのに十分である)かどうかを決定することを含んでもよい。AFの複雑度に関してAFをマッピングする能力は、マップの閾値(例えば、十分な程度、信頼できる程度)を満たすことを含んでもよい。単一のパラメータ(すなわち、マッピングの適用範囲)を使用して、マッピング電極の適用範囲の程度を規定する。マッピングの適用範囲を規定するために組み合わせられる特徴の例としては、(1)マッピング電極の接触(例えば、カバーした領域に関係する活性組織(壁)との接触とLATの正確性)、(2)電極の分解能(例えば、平均距離、最小距離及び最大距離を含む電極間の距離及び電極の感度半径)、(3)検出アルゴリズムにより提供されるIC ECGの質及び関係するアノテーションが挙げられる。
【0031】
AFの複雑性としては、AFが波の分解(ブロック線)、融合及び波の湾曲を生成する間の、活性化の複雑性を挙げることができる。したがって、(例えば、y軸に沿って測定される)あるAFの複雑度が所与の場合、(x軸に沿って測定される信号及びアノテーションの品質を含む)マッピング適用範囲が、AFの複雑性をマッピングするのに十分である場合に、AFをマッピングするために使用することができる(例えば、信頼できる又は十分な)マップとして、マップを判定してもよい。そうでない場合、マップの信頼性は損なわれるか、又は不十分となり得る。
【0032】
次に、信頼できるか又は十分なマップを使用して信号を分析して、カテーテルを再配置すべきか否かを決定することができる。決定点310にてカテーテルを再配置することを決定した場合、カテーテル(例えば、カテーテル202)は、ブロック312で再配置され、ブロック302で新しいIC ECG信号が得られる。決定点310でカテーテルを再配置すべきでないと決定した場合、方法300は、(
図3A及び
図3Bに示される)「点A」313へと続く。
【0033】
図3Aは、簡便化の目的のために、単一のIC ECG信号を得ることを示す。しかしながら、実際には、心臓に接触する複数の電極のそれぞれについての複数の信号が得られる。ブロック202で得られるそれぞれのIC ECG信号、及び信号毎にブロック204で検出された1つ又は2つ以上のLATは、「点A」313で受信される。
【0034】
図3Bは、潜在的なアブレーションのROIを決定するために使用することができる例示的な方法を示す。
図3Bに示すように、得られたそれぞれのIC ECG信号、及び信号毎に検出された1つ又は2つ以上のLATを使用して、(
図3BでAF基質314として示される)AF基質の電気物理的状態を含むAFプロセスのマップ、及び例示的なマップ分割層の一部としての、(
図3BでAFプロセス316として示される)AFプロセスの時空間的発現を表すマップを生成する。
【0035】
例えば、
図3Bに示すAF基質314に関して、検出した1つ又は2つ以上のLATを使用して、AFの一因となり得る1つ又は2つ以上の因子又はパラメータを独立して決定する。
図3Bの左側は、所定の時間窓にわたり情報を収集しながら、後続のLAT318、最初の活性化(早さ)324、並びにRS比320及び細分化322(例えば、細分化した電気記録図)を含むIC ECGの形態的側面の違いに基づく、平均間隔(例えば、周期)を評価することによりAF基質を特徴付ける方法を示す。例えば、検出したLATを使用して、ブロック318にて周期情報(例えば、周期長)を決定し、ブロック324にて早さ情報(例えば、最早期活性化時間、興奮間隙の後に開始する初期の促進因子)を独立して決定する。それぞれのIC ECG信号を使用することで、ブロック320にてR-S複合体情報(例えば、S波に対するR波の比率)、並びにブロック322にてIC ECG信号の細分化(例えば、傾斜情報、例えば、関係する電極が隣接する電極よりも早く活性化された割合を示すといった、複数の電極のうちの1つからの最早期活性化として提示される、発生源の挙動の範囲を示す情報)により得られる情報、並びにブロック326にてCV遮断情報(例えば、心臓を通過する電気インパルスの伝導(すなわち、進行)遅延又は遮断を示す情報、例えば、電気パルスが心臓内のある距離を移動する伝導時間(CT)、経路長(すなわち、距離)、及び電気パルスのCV)もまた独立して決定される。
【0036】
示すように、促進因子マップ328は、周期情報318、早さ情報324、及びR-S複合体情報320から生成される。永続因子マップ330は、CV遮断情報326、及び細分化情報322から生成される。示すように、促進因子マップ328を生成するために使用した情報と、永続因子マップ330を生成するために使用した情報とを組み合わせて(例えば、1つのマップ、又は1つのディスプレイ領域内での重ねたマップ若しくは隣接するマップ)、組み合わせた促進因子/永続因子マップ334を生成する。次に、組み合わせた促進因子/永続因子マップ334を使用して(例えば、例示的なマップ加工層の一部として加工して)、1つ又は2つ以上のアブレーションのROI 350を決定する。
【0037】
図3Bに示すAFプロセス316に関して、検出した1つ又は2つ以上のLATを使用して、活性化/波マップ336、CVマップ338(例えば、電気パルスのCT、経路長及び/又はCVから生成したマップ)、並びに遮断マップ344(例えば、信号の伝導における遮断を示す情報から生成したマップ)を独立して生成する。
【0038】
活性化/波マップは、例えば、同一の波により活性化された隣接電極により制限されるものの、隣接電極よりも早く活性化された対応する電極により検出される、活性化波の割合を示すといった、同一の波により制限された複数の電極のうちの1つの最早期活性化を提示する発生源の挙動の範囲を表すマップを含んでもよい。活性化/波マップはまた、例えば、細動波の開始と関係する電極位置の範囲を表すマップを含んでもよい。
【0039】
各IC ECG信号を使用して、電圧マップ342及び細分化マップ340を独立して生成する。マップ336~344の生成に使用した情報を組み合わせて、組み合わせたマップ又はビデオ346を提供する。いくつかの実施形態において、活性化/波マップ336及び電圧マップ342の生成に使用した情報を組み合わせて、組み合わせた活性化/波/電圧マップ又はビデオを生成し、CVマップ338、遮断マップ344及び細分化マップ340の生成に使用した情報を組み合わせて、組み合わせたCV/遮断/細分化マップ又はビデオを生成する。ブロック348にて、組み合わせたマップ/ビデオ346を分析(例えば、例示的なマップ判読層の一部として、医療関係者により判読)して、ブロック350でアブレーション対象のROIを決定する。組み合わせたマップ/ビデオ346は、容易に可視化及び判読可能なAFプロセスの時空間的発現を表し、アブレーションのためのROIを決定するための、効率的かつ正確なプロセスを容易にすることができる。決定されたROIを、例えば、色、4Dマップ上の3D断面、アイコン(例えば、動的に変化するアイコン)等により表す(例えば、表示する)ことができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、組み合わせた促進因子/永続因子マップ334及び組み合わせたマップ/ビデオ346の両方を使用して、ブロック350にてアブレーションのためのROIを決定する。いくつかの実施形態において、組み合わせた促進因子/永続因子マップ334又は組み合わせたマップ/ビデオ346のいずれかを使用して、ブロック350にてアブレーションのためのROIを決定する。例えば、組み合わせたマップ/ビデオ346を使用(例えば、確認、分析)することなく、組み合わせた促進因子/永続因子マップ334を使用して、ブロック350にてアブレーションのためのROIを決定することができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、品質マップ332もまた、組み合わせた促進因子/永続因子マップ334及び/又は組み合わせたマップ/ビデオ346と組み合わせて使用し、ブロック350にてアブレーションのためのROIを決定する。品質マップ332を使用して、AF基質314に関係する生成されたマップ(例えば、促進因子マップ328、永続因子マップ330、及び促進因子/永続因子マップ334)、並びに、AFプロセス316パラメータに関係する生成されたマップ(例えば、活性化/波マップ336、CVマップ338、細分化マップ340、電圧マップ342、及び遮断マップ344)の信用性を決定する。品質マップの質が低いと、生成されたマップは、信頼性が低く、品質マップが生成されたマップの基準として高い質の信号(IC ECG)を示す場合と比較して、アブレーションのROI(350)の指定を、(例えば、医師による)注意レベルが高いとみなさなければならない。
【0042】
いくつかの実施形態において、ブロック350でのアブレーションのためのROIを決定することは、アブレーションのための1つ又は2つ以上のROIの決定に使用する1つ又は2つ以上のアブレーション部位を指定又は選択することを含む。例えば、促進因子の兆候及び永続因子の兆候からアブレーション部位を指定又は選択(例えば、促進因子マップ328、永続因子マップ330、又は組み合わせた促進因子/永続因子マップ334から決定)してもよく、指定した部位に基づいてROIを決定してもよい。
【0043】
本明細書にて開示したマップ及びマッピング手法は、潜在的に、(i)AFマップの分析訓練時間を減少させ、(ii)アブレーションのためのROIを決定する時間を減少させ、(iii)AFマップの効率的な判読を容易にし、(iv)促進因子の分離及び消滅、経路の延長、リエントリー回路、細動伝導、及び細分化した電位の低速化を目的とするアブレーションに対するアブレーションの成功率を増加させる。
【0044】
本明細書における開示に基づき多くの変更が可能であると理解されるべきである。特定の組み合わせにおける特徴及び構成要素を上述したが、それぞれの特徴又は構成要素は、他の特徴及び構成要素なしで単独で、又は他の特徴及び構成要素と種々に組み合わせて、若しくは組み合わせることなく使用することができる。
【0045】
参照により本特許出願に組み込まれた文書は、これらの組み込まれた文書で定義されているあらゆる用語が、本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と相反するような場合を除いて、本出願の一体部分と見なされるべきであり、本明細書における定義のみが検討されるべきである。
【0046】
提供した方法は、汎用コンピュータ、プロセッサ、又はプロセッサコアへの実装を含む。好適なプロセッサとしては、例として、汎用プロセッサ、特殊用途のプロセッサ、従来のプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、複数個のマイクロプロセッサ、DSPコアと連携する1つ若しくは2つ以上のマイクロプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、現場でプログラミング可能なゲートアレイ(FPGA)回路、任意の他の種類の集積回路(IC)、及び/又はステートマシンが挙げられる。かかるプロセッサは、処理したハードウェア記述言語(HDL)の命令の結果、及びネットリストを含む他の仲介データ(コンピュータの可読媒体に保管可能なかかる命令)を使用する製造プロセスを構成することにより製造することができる。かかる処理の結果は、続いて半導体製造工程で使用し、本明細書で記載される方法を実装するプロセッサを製造するためのマスクワークとすることができる。
【0047】
本明細書において提供する方法又はフローチャートは、汎用コンピュータ若しくはプロセッサにより実行するための、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に組み込まれるコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアで実装することができる。非一時的コンピュータ可読記憶媒体の例としては、ROM、ランダムアクセスメモリ(RAM)、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体記憶装置、内部ハードディスク及び取り外し可能なディスク等の磁気媒体、磁気光学媒体、並びにCD-ROMディスク、及びデジタル汎用ディスク(DVD)等の光学媒体が挙げられる。
【0048】
〔実施の態様〕
(1) 心臓アブレーションの標的領域を決定する方法であって、
複数のセンサを介して、複数の心電図(ECG)信号を検出することであって、各ECG信号は、該複数のセンサのうちの1つを介して検出され、かつ経時的な心臓の電気活動を示す、ことと、
該複数のECG信号のそれぞれについて、経時的に生じる複数の局所活性化時間(LAT)を決定することであって、各LATは、該心臓の領域での電気的活性化時間を示す、ことと、
該複数のECG信号のそれぞれの該決定した複数のLATに基づいて、該心臓の該電気活動を表す1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報を生成することと、
該心臓の該電気活動を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該生成したマッピング情報に基づいて、該心臓の関心領域(ROI)を、心不整脈を示す状態を表す該心臓の領域として該ROIを識別することにより決定することと、を含む、方法。
(2) 前記ROIは、心房細動(AF)を示す状態を表すものとして識別される、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記心臓の前記電気活動を表す前記1つ又は2つ以上のマップに関する前記生成したマッピング情報は、AFの1つ又は2つ以上の潜在的なAF促進因子(one or more potential AF drivers)を示す促進因子マッピング情報と、1つ又は2つ以上の潜在的なAF永続因子(one or more potential AF perpetuators)を示す永続因子マッピング情報とを生成することを含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記促進因子マッピング情報は、前記LAT間の時間間隔、前記LATの早さを示す情報、及び前記ECG信号のR波の振幅と前記ECG信号のS波の振幅との比率に従い生成される、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記永続因子マップは、前記ECG信号の細分化、及び前記ECG信号の伝導速度に従い生成される、実施態様3に記載の方法。
【0049】
(6) 前記複数のECG信号のそれぞれについての前記決定した複数のLATに基づいて、前記心不整脈を示す状態の時空間的発現を表す1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報を生成することと、
前記心不整脈を示す状態の該時空間的発現を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該マッピング情報に基づいて、前記心臓の前記ROIを決定することと、
前記心臓の前記電気活動を表す前記1つ又は2つ以上のマップに関する前記マッピング情報と、前記心不整脈を示す状態の該時空間的発現を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該マッピング情報とを提供することと、を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記心不整脈を示す状態の前記時空間的発現を表す前記1つ又は2つ以上の生成したマップに関する前記生成したマッピング情報は、
前記LATにより、前記ECG信号の活性化波を示す活性化波マッピング情報と、
前記LATにより、前記ECG信号の伝導速度を示す伝導速度マッピング情報と、
前記LATにより、遅延した又は遮断された伝導の領域を示す遮断マッピング情報と、
前記ECG信号の細分化部分を示す細分化マッピング情報と、
前記ECG信号の電圧を示す電圧情報と、を生成することを含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記複数のECG信号は、カテーテルを介して入手した前記心臓の心内心電図(IC ECG)信号を含み、
前記方法は、該IC ECG信号のLATの質、及び該IC ECG信号の複雑性に基づいて、該カテーテルを再配置するか否かを決定することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 心臓アブレーションの標的領域を決定するためのシステムであって、
それぞれが経時的な心臓の電気活動を示す複数の心電図(ECG)信号を検出するように構成された複数のセンサであって、該複数のセンサのそれぞれは、該ECG信号のうちの1つを検出するように構成されている、複数のセンサと、
1つ又は2つ以上のプロセッサを備える処理デバイスであって、
該複数のECG信号のそれぞれについて、経時的に生じる複数の局所活性化時間(LAT)を決定することであって、各LATは、該心臓の領域での電気的活性化時間を示す、ことと、
該複数のECG信号のそれぞれの該決定した複数のLATに基づいて、該心臓の該電気活動を表す1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報を生成することと、
該心臓の該電気活動を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該生成したマッピング情報に基づいて、該心臓の関心領域(ROI)を、心不整脈を示す状態を表す該心臓の領域として該ROIを識別することにより決定することと、を行うように構成されている、処理デバイスと、を含む、システム。
(10) 前記ROIは、心房細動(AF)を示す状態を表すものとして識別される、実施態様9に記載のシステム。
【0050】
(11) 前記心臓の前記電気活動を表す前記1つ又は2つ以上の生成したマップに関する生成したマッピング情報は、AFの潜在的なAF促進因子を示す促進因子マッピング情報と、潜在的なAF永続因子を示す永続因子マッピング情報とを生成することを含む、実施態様10に記載のシステム。
(12) 前記促進因子マッピング情報は、前記LAT間の時間間隔、前記LATの早さを示す情報、及び前記ECG信号のR波の振幅と前記ECG信号のS波の振幅との比率に従い生成される、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記永続因子マッピング情報は、前記ECG信号の細分化、及び前記ECG信号の伝導速度に従い生成される、実施態様11に記載のシステム。
(14) 前記処理デバイスは、
前記複数のECG信号のそれぞれについての前記決定した複数のLATに基づいて、前記心不整脈を示す状態の時空間的発現を表す1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報を生成し、
前記心不整脈を示す状態の該時空間的発現を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該マッピング情報に基づいて、前記心臓の前記ROIを決定し、
前記心臓の前記電気活動を表す前記1つ又は2つ以上のマップに関する前記マッピング情報と、前記心不整脈を示す状態の該時空間的発現を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該マッピング情報とを、表示するために提供するように更に構成されている、実施態様9に記載のシステム。
(15) 前記処理デバイスは、
前記LATにより、前記ECG信号の活性化波を示す活性化波マッピング情報と、
前記LATにより、前記ECG信号の伝導速度を示す伝導速度マッピング情報と、
前記LATにより、遅延した又は遮断された伝導の領域を示す遮断マッピング情報と、
前記ECG信号の細分化部分を示す細分化マッピング情報と、
前記ECG信号の電圧を示す電圧情報と、を生成することにより、前記心不整脈を示す状態の前記時空間的発現を表す前記1つ又は2つ以上の生成したマップに関する前記マッピング情報を生成するように更に構成されている、実施態様14に記載のシステム。
【0051】
(16) 前記複数のECG信号は、カテーテルを介して入手した前記心臓の心内心電図(IC ECG)信号を含み、
前記処理デバイスは、該IC ECG信号のLATの質、及び該IC ECG信号の複雑性に基づいて、該カテーテルを再配置するか否かを決定するように更に構成されている、実施態様9に記載のシステム。
(17) 心臓アブレーションの標的領域を決定するための方法をコンピュータに実行させるための命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、該命令は、
複数のセンサを介して、複数の心電図(ECG)信号を検出することであって、各ECG信号は、該複数のセンサのうちの1つを介して検出され、かつ経時的な心臓の電気活動を示す、ことと、
該複数のECG信号のそれぞれについて、経時的に生じる複数の局所活性化時間(LAT)を決定することであって、各LATは、該心臓の領域での電気的活性化時間を示す、ことと、
該複数のECG信号のそれぞれの該決定した複数のLATに基づいて、該心臓の該電気活動を表す1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報を生成することと、
該心臓の該電気活動を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該生成したマッピング情報に基づいて、該心臓の関心領域(ROI)を、心不整脈を示す状態を表す該心臓の領域として該ROIを識別することにより決定することと、を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
(18) 前記ROIは、心房細動(AF)を示す状態を表すものとして識別される、実施態様17に記載のコンピュータ可読媒体。
(19) 前記心臓の前記電気活動を表す前記1つ又は2つ以上のマップに関する前記生成したマッピング情報は、AFの1つ又は2つ以上の潜在的なAF促進因子を示す促進因子マッピング情報と、1つ又は2つ以上の潜在的なAF永続因子を示す永続因子マッピング情報とを生成することを含む、実施態様18に記載のコンピュータ可読媒体。
(20) 前記命令は、
前記複数のECG信号のそれぞれの前記決定した複数のLATに基づいて、前記心不整脈を示す状態の時空間的発現を表す1つ又は2つ以上のマップに関するマッピング情報を生成することと、
前記心不整脈を示す状態の該時空間的発現を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該マッピング情報に基づいて、前記心臓の前記ROIを決定することと、
前記心臓の前記電気活動を表す前記1つ又は2つ以上のマップに関する前記マッピング情報と、前記心不整脈を示す状態の該時空間的発現を表す該1つ又は2つ以上のマップに関する該マッピング情報とを提供することと、を更に含む、実施態様18に記載のコンピュータ可読媒体。