(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】医用情報処理装置及び医用情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20220328BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20220328BHJP
G06Q 10/04 20120101ALI20220328BHJP
【FI】
G16H20/00
A61B5/00 G
G06Q10/04
(21)【出願番号】P 2017082177
(22)【出願日】2017-04-18
【審査請求日】2020-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】野呂 和正
(72)【発明者】
【氏名】狩野 佑介
(72)【発明者】
【氏名】朴 龍勲
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-100368(JP,A)
【文献】特開2007-108814(JP,A)
【文献】特開2008-210077(JP,A)
【文献】特開2005-165513(JP,A)
【文献】中島直樹 ほか,電子カルテと連携するアウトカム志向型電子パスの事例,映像情報メディカル,第41巻,第5号,日本,産業開発機構株式会社,2009年05月10日,p.494-499
【文献】副島秀久,クリニカルパスと医療の質管理,(株)日科技研:JUSEパッケージ活用事例シンポジウム第14回,日本,(株)日科技研,2005年02月03日,https://www.i-juse.co.jp/statistics/xdata/sympo14_soejima_slide.pdf
【文献】勝尾信一,バリアンス分析総論,日本医療マネジメント学会誌,第7巻,第3号,日本,2006年12月01日,p.395-399
【文献】若田 好史,電子クリニカルパスにおけるオールバリアンス解析,第32回医療情報学連合大会論文集 (第13回日本医療情報学会学術大会) 医療情報学 第32回,2012年11月14日,pp.62-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリニカルパスに沿って実施された診療行為に関するデータ及び前記クリニカルパスで発生したバリアンスに関するデータを取得する取得部と、
前記診療行為に関するデータ及び前記バリアンスに関するデータに基づいて、特定のバリアンスと原因との相関を表す情報を抽出する抽出部と、
抽出された前記情報に基づいて、分析対象となる原因と関連する関連原因を特定する特定部と、
前記関連原因を改善策の候補とし、
前記改善策の候補それぞれについて、各候補と前記特定のバリアンスとの相関
の強さを表す相関値と、前記分析対象となる原因と前記特定のバリアンスとの相関
の強さを表す相関値と
の間の変化量を算出し、算出された相関値の変化量に基づいて、当該改善策の候補の効果を予測する予測部と
を備える、医用情報処理装置。
【請求項2】
前記抽出部は、前記情報として、前記特定のバリアンスと原因との相関の強さを表す情報を抽出する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記情報に含まれる原因の中から、前記分析対象となる原因と診療行為の内容が類似する原因を前記関連原因として特定する、
請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記診療行為の内容は、診療行為の実施日、診療行為の種類、及び、診療行為を実施した患者の属性のうちの少なくとも一つである、
請求項3に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記特定部は、前記情報に含まれる原因の数及び分布の少なくとも一方に基づいて、前記関連原因を特定する際の条件を設定する、
請求項3又は4に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記予測部は、前記相関値の変化量が大きいほど、前記効果が高いと予測する、
請求項
1~5のいずれか一つに記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記予測部は、前記改善策の候補それぞれについて、各候補に関するコストと、前記分析対象となる原因に関するコストとの間の変化量をさらに算出し、算出されたコストの変化量及び前記相関値の変化量に基づいて、前記効果を予測する、
請求項
1~6のいずれか一つに記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記予測部は、
前記コストの変化量が正の値である場合は、当該変化量が小さいほど、前記効果が高いと予測し、
前記コストの変化量が負の値である場合は、当該変化量が大きいほど、前記効果が高いと予測する、
請求項
7に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記改善策の候補それぞれについて、前記効果を表す情報をディスプレイに表示する表示制御部をさらに備える、
請求項1~
8のいずれか一つに記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
取得部が、クリニカルパスに沿って実施された診療行為に関するデータ及び前記クリニカルパスで発生したバリアンスに関するデータを取得するステップと、
抽出部が、前記診療行為に関するデータ及び前記バリアンスに関するデータに基づいて、特定のバリアンスと原因との相関を表す情報を抽出するステップと、
特定部が、抽出された前記情報に基づいて、分析対象となる原因と関連する関連原因を特定するステップと、
予測部が、前記関連原因を改善策の候補とし、
前記改善策の候補それぞれについて、各候補と前記特定のバリアンスとの相関
の強さを表す相関値と、前記分析対象となる原因と前記特定のバリアンスとの相関
の強さを表す相関値と
の間の変化量を算出し、算出された相関値の変化量に基づいて、当該改善策の候補の効果を予測するステップと
を含む、医用情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用情報処理装置及び医用情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院等では、医療の質を改善するという目的で、標準的な診療計画を定義したクリニカルパスが導入されている。このクリニカルパスを改善するための技術として、クリニカルパスで記述された標準的な診療計画と実際の診療との差異であるバリアンスを収集して原因を分析することで、クリニカルパスの改善項目を抽出する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、クリニカルパスに関する効果的な改善策を提示することができる医用情報処理装置及び医用情報処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る医用情報処理装置は、取得部と、特定部と、予測部とを備える。取得部は、クリニカルパスに沿って実施された診療行為に関するデータ及び前記クリニカルパスで発生したバリアンスに関するデータを取得する。特定部は、前記診療行為に関するデータ及び前記バリアンスに関するデータに基づいて、分析対象となる原因と関連する関連原因を特定する。予測部は、前記関連原因を改善策の候補とし、当該改善策の候補の効果を予測する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る取得機能によって取得されるクリニカルパスデータの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る取得機能によって取得される患者データの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る取得機能によって取得される実績データの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る取得機能によって取得されるバリアンスデータの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る取得機能によって取得されるバリアンスコードマスタデータの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る抽出機能によって生成される相関ルールデータの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る特定機能によって行われる関連原因の特定の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る特定機能によって用いられる実施項目マスタデータの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係る特定機能によって用いられる実施項目マスタデータの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態に係る特定機能によって特定される関連原因の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態に係る予測機能によって行われるタイミング変更に関する改善策の候補の効果の予測の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第1の実施形態に係る予測機能によって行われるタイミング変更に関する改善策の候補の効果の予測の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第1の実施形態に係る予測機能によって行われる種類変更に関する改善策の候補の効果の予測の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、第1の実施形態に係る予測機能によって行われる種類変更に関する改善策の候補の効果の予測の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、第1の実施形態に係る予測機能によって行われる実施/非実施変更に関する改善策の候補の効果の予測の一例を示す図である。
【
図17】
図17は、第1の実施形態に係る予測機能によって行われる実施/非実施変更に関する改善策の候補の効果の予測の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、第1の実施形態に係る表示制御機能によって表示される画面の一例を示す図である。
【
図19】
図19は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、第2の実施形態に係る特定機能によって行われる関連原因の特定の一例を示す図である。
【
図21】
図21は、第3の実施形態に係る予測機能によって用いられるコストデータの一例を示す図である。
【
図22】
図22は、第3の実施形態に係る予測機能によって行われる改善策の候補の効果の予測の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、医用情報処理装置及び医用情報処理方法の実施形態について詳細に説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置の構成例を示す図である。
【0009】
例えば、
図1に示すように、本実施形態に係る医用情報処理装置100は、ネットワーク200を介して、電子カルテ保管装置300と通信可能に接続される。例えば、医用情報処理装置100及び電子カルテ保管装置300は、病院等に設置され、院内LAN等のネットワーク200によって相互に接続される。
【0010】
電子カルテ保管装置300は、病院等で行われた各種の診療に関する診療データを保管する。例えば、電子カルテ保管装置300は、病院等で導入されている電子カルテシステムの一部として設置され、電子カルテシステムによって生成された診療データを保管する。例えば、電子カルテ保管装置300は、DB(Database)サーバ等のコンピュータ機器によって実現され、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等の記憶回路に診療データを記憶させる。
【0011】
医用情報処理装置100は、ネットワーク200を介して電子カルテ保管装置300から診療データを取得し、取得した診療データを用いて各種情報処理を行う。例えば、医用情報処理装置100は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。
【0012】
具体的には、医用情報処理装置100は、I/F(インターフェース)回路110と、記憶回路120と、入力回路130と、ディスプレイ140と、処理回路150とを有する。
【0013】
I/F回路110は、処理回路150に接続され、電子カルテ保管装置300との間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。例えば、I/F回路110は、電子カルテ保管装置300から診療データを受信し、受信した診療データを処理回路150に出力する。例えば、I/F回路110は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0014】
記憶回路120は、処理回路150に接続され、各種データを記憶する。例えば、記憶回路120は、電子カルテ保管装置300から受信した診療データを記憶する。例えば、記憶回路120は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0015】
入力回路130は、処理回路150に接続され、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路150に出力する。例えば、入力回路130は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、タッチパネル等によって実現される。
【0016】
ディスプレイ140は、処理回路150に接続され、処理回路150から出力される各種情報及び各種画像データを表示する。例えば、ディスプレイ140は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0017】
処理回路150は、入力回路130を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、医用情報処理装置100の構成要素を制御する。例えば、処理回路150は、I/F回路110から出力される診療データを記憶回路120に記憶させる。また、例えば、処理回路150は、記憶回路120から診療データを読み出し、ディスプレイ140に表示する。例えば、処理回路150は、プロセッサによって実現される。
【0018】
以上、本実施形態に係る医用情報処理装置100の全体構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係る医用情報処理装置100は、病院等で導入されているクリニカルパスに関する効果的な改善策を提示するための機能を有する。
【0019】
具体的には、処理回路150が、取得機能151と、抽出機能152と、特定機能153と、予測機能154と、表示制御機能155とを有する。なお、取得機能151は、特許請求の範囲における取得部の一例である。また、抽出機能152は、特許請求の範囲における抽出部の一例である。また、特定機能153は、特許請求の範囲における特定部の一例である。また、予測機能154は、特許請求の範囲における予測部の一例である。また、表示制御機能155は、特許請求の範囲における表示制御部の一例である。
【0020】
取得機能151は、クリニカルパスに沿って実施された診療行為に関するデータ及びクリニカルパスで発生したバリアンスに関するデータを取得する。
【0021】
具体的には、取得機能151は、電子カルテ保管装置300から、クリニカルパスデータと、患者データと、実績データと、バリアンスデータと、バリアンスコードマスタデータとを取得する。そして、取得機能151は、取得した各データを記憶回路120に記憶させる。
【0022】
ここで、クリニカルパスデータは、クリニカルパスごとに、実施すべき診療行為や、評価すべきアウトカム、診療行為の実施予定日等を記録したデータである。また、患者データは、患者の基本情報を記録したデータである。また、実績データは、患者に対して実施された診療行為の履歴や、患者状態に関する経過等を記録したデータである。また、バリアンスデータは、クリニカルパスから逸脱した際に生成されるデータであり、バリアンスの発生日や、発生理由を表す分類コード、テキスト等を記録したデータである。また、バリアンスコードマスタデータは、バリアンスの分類を記録したデータである。
【0023】
例えば、取得機能151は、電子カルテ保管装置300から取得した各データをクリニカルパス分析に最適なフォーマットに変換して、記憶回路120に記憶させる。なお、ここでは、各データに含まれる情報が電子カルテ保管装置300に保管されているデータから直接的に得られるものとするが、実施形態はこれに限られない。例えば、各データに含まれる情報に、電子カルテ保管装置300に保管されているデータから直接的に得られないものが含まれている場合には、取得機能151は、変換用のテーブルを用いて情報を変換したうえで、記憶回路120に記憶させてもよい。その場合には、変換用のテーブルは、予め記憶回路120に記憶される。
【0024】
なお、取得機能151は、各データを取得する際に、クリニカルパスが適用された患者に関するデータだけを取得してもよいし、クリニカルパスが適用された患者及びクリニカルパスが適用されていない患者の両方に関するデータを取得してもよい。
【0025】
図2は、第1の実施形態に係る取得機能151によって取得されるクリニカルパスデータの一例を示す図である。
【0026】
例えば、
図2に示すように、クリニカルパスデータは、データ項目として、パス名称と、パスコードと、診療行為/アウトカムと、実施予定日とを含む。ここで、パス名称には、クリニカルパスの名称が設定される。また、パスコードには、当該クリニカルパスを一意に識別するコードが設定される。また、診療行為/アウトカムには、当該クリニカルパスで実施される診療行為又はアウトカム(特定の期間に達成されるべき患者の目標の状態)を示す情報が設定される。例えば、診療行為を示す情報には、当該クリニカルパスに一般的に含まれる観察、投薬、検査、処置、指示、栄養、説明に関する内容等が含まれる。また、実施予定日には、診療行為又はアウトカムの評価が実施される予定日が設定される。なお、実施予定日は、時間単位まで設定されてもよい。
【0027】
図3は、第1の実施形態に係る取得機能151によって取得される患者データの一例を示す図である。
【0028】
例えば、
図3に示すように、患者データは、データ項目として、患者コードと、パスコードと、性別と、年齢と、病名とを含む。ここで、患者コードには、患者を一意に識別するコードが設定される。また、パスコードには、クリニカルパスを一意に識別するコード(
図2に示したパスコードと同じ内容)が設定される。また、性別には、当該患者の性別が設定される。また、病名には、当該患者の病名が設定される。なお、患者データには、ここで挙げた情報の他にも、患者の身長、体重、入院歴、アレルギー等のように、クリニカルパスの適用が開始される際に確定している他の情報が含まれていてもよい。
【0029】
図4は、第1の実施形態に係る取得機能151によって取得される実績データの一例を示す図である。
【0030】
例えば、
図4に示すように、実績データは、データ項目として、患者コードと、診療行為/アウトカムと、項目と、結果と、実施日とを含む。なお、実績データでは、診療行為/アウトカム、項目、結果、及び実施日が、それぞれ患者コードと関連付けられて設定される。
【0031】
ここで、患者コードには、患者を一意に識別するコードが設定される(
図3に示した患者コードと同じ内容)。また、診療行為/アウトカムには、当該患者に対して実施された診療行為又はアウトカムを示す情報が設定される(
図2に示した診療行為/アウトカムと同じ内容)。また、項目には、診療行為又はアウトカムの評価によって得られた項目が設定される。また、結果には、診療行為又はアウトカムの評価によって得られた結果が設定される。なお、結果には、診療行為の実施結果(実施済み/未実施)の他に、診療行為の結果として得られたデータ(食事量(%)、体温(度)等)が設定される。また、結果には、アウトカムの評価結果(達成/未達成)が設定される。また、実施日には、診療行為又はアウトカムの評価が実施された実施日が設定される。
【0032】
図5は、第1の実施形態に係る取得機能151によって取得されるバリアンスデータの一例を示す図である。
【0033】
例えば、
図5に示すように、バリアンスデータは、データ項目として、患者コードと、診療行為/アウトカムと、バリアンスコードと、バリアンス内容と、発生日とを含む。ここで、バリアンスデータでは、診療行為/アウトカム、バリアンスコード、バリアンス内容、及び発生日が、それぞれ患者コードと関連付けられて設定される。
【0034】
ここで、患者コードには、患者を一意に識別するコードが設定される(
図3に示した患者コードと同じ内容)。また、診療行為/アウトカムには、当該患者に対して実施された診療行為又はアウトカムを示す情報が設定される(
図2に示した診療行為/アウトカムと同じ内容)。また、バリアンスコードには、バリアンスが発生した原因に関するコードが設定される。また、バリアンス内容には、クリニカルパスで発生したバリアンスの内容を示す情報が設定される。例えば、バリアンス内容には、バリアンスの詳細な内容を記載したテキスト情報が設定される。また、発生日には、バリアンスが発生した発生日が設定される。
【0035】
図6は、第1の実施形態に係る取得機能151によって取得されるバリアンスコードマスタデータの一例を示す図である。
【0036】
例えば、
図6に示すように、バリアンスコードマスタデータは、データ項目として、バリアンスコードと、大分類と、バリアンス分類とを含む。ここで、バリアンスコードには、バリアンスが発生した原因に関するコードが設定される(
図5に示したバリアンスコードと同じ内容)。また、大分類には、当該バリアンスが発生した原因の大分類(患者要因、職員要因、施設要因、社会要因等)が設定される。また、バリアンス分類には、当該バリアンスが発生した原因の小分類(身体的要因、患者の意思又は希望、医師からの指示等)が設定される。
【0037】
図1に戻って、抽出機能152は、クリニカルパスに沿って実施された診療行為に関するデータ及びクリニカルパスで発生したバリアンスに関するデータに基づいて、特定のバリアンスと原因との相関の強さを表す情報を抽出する。
【0038】
具体的には、抽出機能152は、特定のバリアンスと原因との相関の強さを表す情報として、記憶回路120に記憶されている患者データ、実績データ、及びバリアンスデータの情報を用いて、特定のバリアンスと、原因となる要素との組み合わせである相関ルールを抽出する。ここで、相関ルールを生成するための手法としては、各種の公知の分析手法を用いることが可能である。
【0039】
本実施形態では、抽出機能152は、相関ルールと相関の強さを表す数値とのセットが複数得られるものを想定して、アソシエーション分析を用いて、相関ルールを生成する。なお、抽出機能152は、発生順序を考慮に入れたアソシエーション分析である時系列アソシエーション分析又は系列パターンマイニングを用いてもよい。
【0040】
アソシエーション分析は、条件部となる項目をX、結論部となる項目をYとした場合に、「Xという条件の時にYが起こる」というルールを抽出するものであり、一般的に、以下のように定義される支持度、信頼度、及びリフトを指標値として、ルールを評価する。
【0041】
【0042】
ここで、n(X)は、Xを含むトランザクションの数であり、n(Y)は、Yを含むトランザクションの数である。また、n(X∩Y)は、XとYを共に含むトランザクションの数であり、n(A)は、トランザクションの総数である。
【0043】
本実施形態では、抽出機能152は、クリニカルパスの開始から終了までに発生した診療行為/アウトカムに関するデータ、当該クリニカルパスの開始から終了までに発生したバリアンスに関するデータ、及び、当該クリニカルパスが適用された患者に関するデータの集合をトランザクションとして、アソシエーション分析を行う。
【0044】
具体的には、抽出機能152は、入力回路130を介して、操作者から、クリニカルパス及びバリアンスを指定する操作を受け付ける。そして、抽出機能152は、患者データを参照して、操作者によって指定されたクリニカルパスが適用された患者に関するデータを特定する。また、抽出機能152は、実績データを参照して、特定した患者ごとに、各患者に対して実施された診療行為又はアウトカムに関するデータを特定する。さらに、抽出機能152は、バリアンスデータを参照して、特定した患者ごとに、各患者に対して実施された診療行為によって発生したバリアンスに関するデータを特定する。そして、抽出機能152は、対応する診療行為/アウトカムに関するデータ、バリアンスに関するデータ、及び、患者に関するデータの集合をトランザクションとして生成する。
【0045】
ここで、アソシエーション分析では、各項目は質的データである必要があるため、数値データを有するデータは質的データに変換される。例えば、1日目にソルデム3A500mlがクリニカルパスの計画通りに実施された場合には、「ソルデム3A500ml(1,計画通り実施)」、計画通りに実施されなかった場合には、「ソルデム3A500ml(1,非実施)」、クリニカルパスにない項目が実施された場合には、「ジーフリード100ml(2,計画外実施)」のように、各項目が名義尺度のラベルに変換される。ここで、括弧の意味は、(実施日又は発生日,クリニカルパスとの関係性)を表す。ここで、名義尺度は、複数段階に分けられてもよい。また、複数の実施日又は発生日がまとめて一つのラベルに変換されてもよい。
【0046】
そして、抽出機能152は、生成した各トランザクションを用いて、診療行為/アウトカムに関するデータを条件部とし、操作者によって指定されたバリアンスに関するデータを結論部とした相関ルールを生成し、生成した相関ルールについて、支持度、信頼度、及びリフトを算出する。そして、抽出機能152は、相関ルールと各指標値とを対応付けた相関ルールデータを生成し、記憶回路120に記憶させる。
【0047】
図7は、第1の実施形態に係る抽出機能152によって生成される相関ルールデータの一例を示す図である。
【0048】
例えば、
図7に示すように、相関ルールデータは、データ項目として、クリニカルパスコードと、条件部と、結論部と、支持度と、信頼度と、リフトとを含む。ここで、クリニカルパスコードには、操作者によって指定されたクリニカルパスに対応するコードが設定される。また、条件部には、診療行為/アウトカムに関するデータが設定される。また、結論部には、操作者によって指定されたバリアンスに関するデータが設定される。また、支持度、信頼度、及びリフトには、抽出機能152によって算出された支持度、信頼度、及びリフトの値がそれぞれ設定される。
【0049】
なお、
図7は、「直腸/結腸切除(P0001)」のクリニカルパス及び「縫合不全」のバリアンスに対してアソシエーション分析が実施された場合に生成される相関ルールデータの例を示している。また、
図7に示す条件部に含まれる「+」は、同時に発生した診療行為又はアウトカムの組み合わせを表している。
【0050】
このように、相関ルールデータでは、結論部が、バリアンスを表し、条件部が、当該バリアンスと相関のある原因を表すことになる。また、支持部、信頼度、及びリフトが、各原因と当該バリアンスとの相関の強さを表す相関値となる。
【0051】
図1に戻って、特定機能153は、クリニカルパスに沿って実施された診療行為に関するデータ及びクリニカルパスで発生したバリアンスに関するデータに基づいて、分析対象となる原因と関連する関連原因を特定する。
【0052】
具体的には、特定機能153は、入力回路130を介して、操作者から、分析対象となる原因を指定する操作を受け付ける。そして、特定機能153は、抽出機能152によって抽出された情報に基づいて、操作者によって指定された分析対象となる原因と関連する関連原因を特定する。ここで、関連原因とは、相関ルールデータに設定されている情報から構成される一つ以上の軸において、分析対象となる原因と近い位置にある原因のことである。例えば、ここでいう軸を構成する情報としては、「診療行為の実施日」、「診療行為の種類」、「診療行為を実施した患者の属性(年齢、性別、身長、体重等)」等のような、診療行為の内容が挙げられる。
【0053】
例えば、特定機能153は、抽出機能152によって抽出された原因の中から、分析対象となる原因と「診療行為の実施日」及び「診療行為の種類」が類似する原因を関連原因として特定する。この場合には、特定機能153は、「診療行為の実施日」及び「診療行為の種類」の2軸を用いて、関連原因を特定する。
【0054】
具体的には、特定機能153は、入力回路130を介して、操作者から、実施日に関する時間の範囲を指定する操作を受け付ける。そして、特定機能153は、相関ルールデータを参照して、分析対象となる原因と実施項目(例えば、ソルデム3A500ml)が同じで時間のみが異なる原因を特定する。
【0055】
図8は、第1の実施形態に係る特定機能153によって行われる関連原因の特定の一例を示す図である。
図8では、横軸が「診療行為の実施日」(日時)を示しており、縦軸が「診療行為の種類」(種類)を示している。また、
図8に示す星形の図形は、抽出機能152によって抽出された原因を示している。
【0056】
例えば、
図8に示すように、特定機能153は、分析対象となる原因がソルデム3A500ml(4,計画通り実施)であった場合には、ソルデム3A500ml(2,計画通り実施)や、ソルデム3A500ml(3,計画外実施)、ソルデム3A500ml(4,非実施)等の原因を特定する。そして、特定機能153は、特定した原因の中から、操作者によって指定された時間の範囲内の原因をさらに特定し、特定した原因を関連原因とする。
図8では、設定された時間範囲によって、ソルデム3A500ml(3,計画外実施)と、ソルデム3A500ml(4,非実施)とが特定された場合の例を示している。
【0057】
さらに、特定機能153は、相関ルールデータを参照して、分析対象となる原因の実施項目(例えば、ソルデム3A500ml)と親実施項目が同じ原因を、関連原因として特定する。このとき、例えば、特定機能153は、予め記憶回路120に記憶されている実施項目マスタデータを参照して、分析対象となる原因の実施項目と親実施項目が同じ原因を特定する。
【0058】
図9及び10は、第1の実施形態に係る特定機能153によって用いられる実施項目マスタデータの一例を示す図である。
【0059】
例えば、
図9に示すように、実施項目マスタデータは、データ項目として、実施項目IDと、実施項目内容と、階層数と、親実施項目IDとを含む。ここで、実施項目IDには、実施項目を一意に識別する識別情報が設定される。また、実施項目内容には、当該実施項目の内容を示す情報が設定される。また、階層数には、実施項目の内容を階層化して表した場合の当該実施項目の位置を示す階層数が設定される。また、親実施項目IDには、当該実施項目の親実施項目(上位の実施項目)を一意に識別する識別情報が設定される。
【0060】
図9に示す例については、例えば、
図10に示すように、「薬剤」(実施項目ID:P00003)が、「注射」(実施項目ID:P00135)及び「処方」(実施項目ID:P00136)の親実施項目となっている。また、「注射」(実施項目ID:P00135)が、「ソルデム3A500ml」(実施項目ID:P03258)及び「ビーフリード1000ml」(実施項目ID:P03432)の親実施項目となっている。また、「処方」(実施項目ID:P00136)が、「マグコロールP」(実施項目ID:P04556)の親実施項目となっている。
【0061】
この例では、例えば、
図8に示すように、特定機能153は、分析対象となる原因がソルデム3A500ml(4,計画通り実施)であった場合には、親実施項目IDが「P00135」であるビーフリード1000ml(5,計画通り実施)、ビーフリード1000ml(4,計画外実施)等を抽出する。この例では、ビーフリード1000mlは、ソルデム3A500mlと同じく「注射」という親実施項目に属しているため、関連原因として特定される。一方、マグコロールPは、「注射」ではなく「処方」という親実施項目に属しているため、関連原因として特定されない。
【0062】
なお、特定機能153は、分析対象となる原因の実施項目と親実施項目が同じ原因を特定するだけでなく、さらに、親実施項目の親実施項目が同じ原因を特定するようにしてもよい。この場合には、例えば、ソルデム3A500mlと親実施項目の親実施項目が同じく「薬剤」(実施項目ID:P00003)であるマグコロールPがさらに特定されることになる。このような特定に関する条件は、例えば、操作者によって任意に設定される。
【0063】
図11は、第1の実施形態に係る特定機能153によって特定される関連原因の一例を示す図である。なお、
図11に示す例は、分析対象となる原因が「ソルデム3A500ml(4,計画通り実施)」であった場合に特定される関連原因を示している。
【0064】
例えば、
図11に示すように、特定機能153は、分析対象となる原因が「ソルデム3A500ml(4,計画通り実施)」であった場合には、当該「ソルデム3A500ml(4,計画通り実施)」に関する相関ルールデータと、「ソルデム3A500ml(3,計画外実施)」、「ソルデム3A500ml(4,非実施)」、「ビーフリード1000ml(5,計画通り実施)」、及び「ビーフリード1000ml(4,計画外実施)」等の相関ルールデータを特定する。
【0065】
図1に戻って、予測機能154は、特定機能153によって特定された関連原因を改善策の候補とし、当該改善策の候補の効果を予測する。
【0066】
具体的には、予測機能154は、改善策の候補それぞれについて、各候補と特定のバリアンスとの相関の強さを表す相関値と、分析対象となる原因と特定のバリアンスとの相関の強さを表す相関値との間の変化量を算出し、算出された相関値の変化量に基づいて、効果を予測する。例えば、予測機能154は、相関値の変化量が大きいほど、効果が高いと予測する。
【0067】
ここで、予測機能154は、入力回路130を介して、操作者から、改善したい内容を指定する操作を受け付ける。そして、予測機能154は、操作者によって指定された改善したい内容に応じて、関連原因から必要な情報を改善策の候補として抽出し、分析対象となる原因とバリアンスとの相関と、改善策の候補とバリアンスとの相関を比較する。そして、予測機能154は、相関値の変化量が大きいほど、改善策の候補とバリアンスとの相関が低い、すなわち、効果の高い改善策であると予測する。
【0068】
以下、予測機能154によって行われる改善策の候補の効果の予測について、改善したい内容に応じた3つの例を説明する。なお、ここでは、分析対象となる原因がソルデム3A500ml(4,計画通り実施)である場合の例を説明する。
【0069】
例えば、予測機能154は、改善したい内容が、分析対象となる原因の実施タイミングである場合(タイミング変更)には、関連原因の中から、「タイミング変更」に関わるものを「改善策の候補」として抽出する。具体的には、予測機能154は、「実施項目名(ソルデム3A500ml)が同じ&実施日が異なる&計画外実施となっている」という抽出条件で、「タイミング変更」に関わる関連原因を抽出する。そして、予測機能154は、抽出した一つ以上の改善策の候補の相関値と、対象となる原因の相関値とを比較し、相関値の変化量を算出する。
【0070】
図12及び13は、第1の実施形態に係る予測機能154によって行われるタイミング変更に関する改善策の候補の効果の予測の一例を示す図である。
【0071】
例えば、
図12に示すように、予測機能154は、分析対象となる原因が「ソルデム3A500ml(4,計画通り実施)」である場合に、「ソルデム3A500ml(5,計画外実施)」に関するデータと、「ソルデム3A500ml(3,計画外実施)」に関するデータと、「ソルデム3A500ml(2,計画外実施)」に関するデータとを改善策の候補として抽出する。
【0072】
その後、例えば、
図13に示すように、予測機能154は、抽出した改善策の候補それぞれについて、対象となる原因である「ソルデム3A500ml(4,計画通り実施)」の信頼度との間で信頼度を比較し、信頼度の変化量を算出する。そして、予測機能154は、改善策の候補のうち信頼度の変化量が最も大きいものを、最も効果の高い改善策であると予測する。すわわち、
図13に示す例では、予測機能154は、信頼度の変化量が3つの改善策の候補の中で最も大きい「0.70」である「ソルデム3A500ml(3,計画外実施)」を、最も効果の高い改善策であると予測する。
【0073】
また、例えば、予測機能154は、改善したい内容が、分析対象となる原因の種類である場合(種類変更)には、関連原因の中から、「種類変更」に関わるものを「改善策の候補」として抽出する。このとき、予測機能154は、「実施項目名が異なる&実施日が同じ&計画外実施となっている」という抽出条件で、「種類変更」に関わる関連原因を抽出する。そして、予測機能154は、抽出した一つ以上の改善策の候補の相関値と、対象となる原因の相関値とを比較し、相関値の変化量を算出する。
【0074】
図14及び15は、第1の実施形態に係る予測機能154によって行われる種類変更に関する改善策の候補の効果の予測の一例を示す図である。
【0075】
例えば、
図14に示すように、予測機能154は、分析対象となる原因が「ソルデム3A500ml(4,計画通り実施)」である場合に、「ビーフリード1000ml(4,計画外実施)」に関するデータと、「トリフリード1000ml(4,計画外実施)」に関するデータと、「パントール注射液500mg(4,計画外実施)」に関するデータとを改善策の候補として抽出する。
【0076】
その後、例えば、
図15に示すように、予測機能154は、抽出した改善策の候補それぞれについて、対象となる原因である「ソルデム3A500ml(4,計画通り実施)」の信頼度との間で信頼度を比較し、信頼度の変化量を算出する。そして、予測機能154は、改善策の候補のうち信頼度の変化量が最も大きいものを、最も効果の高い改善策であると予測する。すわわち、
図15に示す例では、予測機能154は、信頼度の変化量が3つの改善策の候補の中で最も大きい「0.70」である「パントール注射液500mg(4,計画外実施)」を、最も効果の高い改善策であると予測する。
【0077】
また、例えば、予測機能154は、改善したい内容が、分析対象となる原因の実施/非実施である場合(実施/非実施変更)には、関連原因の中から、「実施/非実施変更」に関わるものを「改善策の候補」として抽出する。このとき、予測機能154は、「実施項目名が同じ&実施日が同じ&非実施となっている」という抽出条件で、「実施/非実施変更」に関わる関連原因を抽出する。そして、予測機能154は、抽出した一つ以上の改善策の候補の相関値と、対象となる原因の相関値とを比較し、相関値の変化量を算出する。
【0078】
図16及び17は、第1の実施形態に係る予測機能154によって行われる実施/非実施変更に関する改善策の候補の効果の予測の一例を示す図である。
【0079】
例えば、
図16に示すように、予測機能154は、分析対象となる原因が「ソルデム3A500ml(4,計画通り実施)」である場合に、「ソルデム3A500ml(4,非実施)」に関するデータを改善策の候補として抽出する。
【0080】
その後、例えば、
図17に示すように、予測機能154は、抽出した改善策の候補それぞれについて、対象となる原因である「ソルデム3A500ml(4,計画通り実施)」の信頼度との間で信頼度を比較し、信頼度の変化量を算出する。そして、予測機能154は、改善策の候補のうち信頼度の変化量が最も大きいものを、最も効果の高い改善策であると予測する。なお、
図17に示す例では、改善策の候補が一つであるので、予測機能154は、信頼度の変化量が「0.55」である「ソルデム3A500ml(4,非実施)」を、最も効果の高い改善策であると予測する。
【0081】
なお、ここでは、予測機能154が、改善したい内容を「タイミング変更」、「種類変更」又は「実施/非実施」とした場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、予測機能154は、「タイミング変更かつ種類変更」というように、複数の改善したい内容を組み合わせて、改善策の候補の効果を予測してもよい。
【0082】
また、ここでは、予測機能154が、相関値として信頼度を用いる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、予測機能154は、相関値として、支持度又はリフトを用いて、改善策の候補の効果を予測してもよい。
【0083】
図1に戻って、表示制御機能155は、改善策の候補それぞれについて、予測機能154によって予測された効果を表す情報をディスプレイ140に表示する。
【0084】
具体的には、表示制御機能155は、操作者によって指定されたクリニカルパス、バリアンス、及び、分析対象となる原因について、改善策の候補及び当該改善策の候補の効果を表す情報を提示する画面を生成して、ディスプレイ140に表示する。
【0085】
図18は、第1の実施形態に係る表示制御機能155によって表示される画面の一例を示す図である。
【0086】
例えば、
図18に示すように、表示制御機能155は、クリニカルパスのパス名、バリアンス名、及び、分析対象となる原因を示す情報161と、改善策の候補を示す表162とを配置した画面160を生成して、ディスプレイ140に表示する。
【0087】
例えば、表示制御機能155は、表162として、複数の改善策の候補をそれぞれ実施日及び種類の組み合わせで表し、横方向に、改善策の実施日を時系列順に示し、縦方向に、改善策の種類を示した表を表示する。そして、例えば、表示制御機能155は、表162において、分析対象となる原因に対応する欄に、所定の形状(
図18に示す例では、星形)のマーク163を表示する。このように、表示制御機能155が、複数の改善策の候補を時系列及び種類別で表示することによって、クリニカルパスとの対応が分かりやすくなる。
【0088】
そして、表示制御機能155は、複数の改善策の候補それぞれについて、表162内の対応する欄に、各改善策の候補の効果の大きさを示す情報を表示する。具体的には、表示制御機能155は、予測機能154によって算出された相関値の変化量の大きさに基づいて、各改善策の候補の効果の大きさを示す情報を表示する。例えば、表示制御機能155は、相関値の変化量の大きさに応じて、表162の各欄を異なる濃度の色で表示する。より具体的には、例えば、表示制御機能155は、相関値の変化量の大きさが大きくなるほど、表162の欄の色を濃くする。このとき、表示制御機能155は、対応する改善策の候補が無い欄については、色付けをせずに表示する。この場合に、例えば、表示制御機能155は、相関値の変化量の大きさと色の濃度との対応付けを示すバー状のグラフィック164を画面160上に表示する。このように、表示制御機能155が、表162上で、各改善策の候補に関する相関値の変化量の大きさを色の濃度で示すことによって、操作者が、相関値の変化量が大きい改善策、すなわち、効果が大きい改善策を容易に把握できるようになる。
【0089】
また、表示制御機能155は、表162に含まれる複数の欄の中からいずれか一つの欄を選択する操作を操作者から受け付けることで、複数の改善策の候補の中からいずれか一つの候補を選択する操作を操作者から受け付ける。そして、表示制御機能155は、操作者によって改善策の候補が選択された場合には、選択された改善策の候補について、具体的な改善の内容及び効果を示す情報165を画面160上に表示する。なお、このとき、表示制御機能155は、改善策の候補の効果を示す情報として、相関値の変化量の大きさを表示する。このように、表示制御機能155が、表162から操作者によって選択された改善策の候補について、具体的な改善の内容及び効果を示す情報165を画面160上に表示することによって、操作者が、各改善策の候補に関する具体的な改善の内容及び効果を画面160上で容易に確認できるようになる。
【0090】
以上、処理回路150が有する各処理機能について説明した。上述した各処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路120に記憶される。処理回路150は、各プログラムを記憶回路120から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、
図1に示した各処理機能を有することとなる。
【0091】
なお、
図1では、上述した各処理機能が単一の処理回路150によって実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路150は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路150が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0092】
また、上述した説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路120に保存されたプログラムを読み出して実行することで、機能を実現する。なお、記憶回路120にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合は、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0093】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、後述する各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0094】
図19は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置100によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、取得機能151が、クリニカルパスに沿って実施された診療行為に関するデータ及びクリニカルパスで発生したバリアンスに関するデータを取得する処理は、以下で説明する処理手順とは非同期で実施される。ここで、取得機能151によって行われる処理は、例えば、処理回路150が取得機能151に対応する所定のプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。
【0095】
例えば、
図19に示すように、本実施形態では、抽出機能152が、操作者から分析条件(クリニカルパス及びバリアンス)を受け付ける(ステップS1)。その後、抽出機能152は、操作者によって指定されたクリニカルパスに沿って実施された診療行為に関するデータ及びクリニカルパスで発生したバリアンスに関するデータに基づいて、操作者によって指定されたバリアンスと相関のある原因を抽出する(ステップS2)。
【0096】
続いて、特定機能153が、抽出機能152によって抽出された原因の中から、分析対象となる原因と関連する関連原因を特定する(ステップS3)。
【0097】
その後、予測機能154が、特定機能153によって特定された関連原因を改善策の候補として、当該改善策の候補の効果を予測する(ステップS4)。
【0098】
そして、表示制御機能155が、改善策の候補それぞれについて、予測機能154によって予測された効果を表す情報をディスプレイ140に表示する(ステップS5)。
【0099】
ここで、操作者によって新たな分析条件が指定された場合には(ステップS6,Yes)、ステップS1に戻って、上述した処理手順が再度実行される。また、操作者によって分析条件が指定されない場合には(ステップS6,No)、処理が終了される。
【0100】
なお、上述したステップS1及びS2は、例えば、処理回路150が抽出機能152に対応する所定のプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS3は、例えば、処理回路150が特定機能153に対応する所定のプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS4は、例えば、処理回路150が予測機能154に対応する所定のプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS5は、例えば、処理回路150が表示制御機能155に対応する所定のプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。
【0101】
上述したように、第1の実施形態では、特定機能153が、クリニカルパスに沿って実施された診療行為に関するデータ及びクリニカルパスで発生したバリアンスに関するデータに基づいて、分析対象となる原因と関連する関連原因を特定する。また、予測機能154が、特定機能153によって特定された関連原因を改善策の候補として、当該改善策の候補の効果を予測する。したがって、第1の実施形態によれば、クリニカルパスに関する効果的な改善策を提示することができる。
【0102】
例えば、従来技術の中には、バリアンスに関するデータに基づいて、クリニカルパスの改善項目を抽出して提示するものもある。しかし、改善項目を提示するだけでは、その改善策について、どのような改善策を行うことが効果的であるかを判断することは難しい。例えば、「抗生剤投与」が改善項目として提示された場合に、抗生剤投与をやめるべきか、抗生剤の種類を変更すべきか、抗生剤投与のタイミングを変更すべきかを利用者自身で判断しなければならない。このような従来技術に対し、上述した実施形態では、クリニカルパスに関する効果的な改善策が提示されるので、利用者が適切な改善策を容易に判断することができる。
【0103】
(第2の実施形態)
なお、上述した実施形態では、特定機能153が、操作者によって指定された範囲に基づいて、分析対象となる原因と関連する関連原因を特定する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
【0104】
以下では、第2の実施形態として、特定機能153が、抽出機能152によって抽出された原因の数及び分布の少なくとも一方に基づいて、分析対象となる原因と関連する関連原因を特定する際の条件を設定する場合の例を説明する。なお、第2の実施形態では、上述した実施形態と異なる点を中心に説明することとし、上述した実施形態と重複する内容については説明を省略する。
【0105】
図20は、第2の実施形態に係る特定機能153によって行われる関連原因の特定の一例を示す図である。
図20では、
図8に示した例と同様に、横軸が「診療行為の実施日」(日時)を示しており、縦軸が「診療行為の種類」(種類)を示している。また、
図20に示す星形の図形は、
図8に示した例と同様に、抽出機能152によって抽出された原因を示している。
【0106】
例えば、
図20に示すように、特定機能153は、抽出機能152によって抽出された原因のデータを、「診療行為の実施日」(日時)を横軸とし、「診療行為の種類」(種類)を縦軸とした座標に配置した場合に、分析対象となる原因のデータとその周辺のデータとを含み、かつ、データの密度が最大となるような範囲を設定する。そして、特定機能153は、設定した範囲に基づいて、分析対象となる原因と関連する関連原因を特定する。具体的には、この場合には、特定機能153は、抽出機能152によって抽出された原因の中から、データの密度に基づいて設定した範囲内の原因を特定し、特定した原因を関連原因とする。
【0107】
このように、第2の実施形態では、特定機能153が、抽出機能152によって抽出された原因の数及び分布の少なくとも一方に基づいて関連原因を特定する際の条件を設定する。したがって、第2の実施形態によれば、原因の数や分布に応じて、関連原因を特定する際の条件を最適なものに設定することができ、分析対象となる原因と関連の深い原因を効果的に抽出することができる。
【0108】
(第3の実施形態)
また、上述した実施形態では、予測機能154が、改善策の候補それぞれについて、バリアンスとの相関の強さを表す相関値の変化量に基づいて効果を予測する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
【0109】
以下では、第3の実施形態として、予測機能154が、改善策の候補それぞれについて、各候補に関するコストと、分析対象となる原因に関するコストとの間の変化量をさらに算出し、算出されたコストの変化量及び相関値の変化量に基づいて、効果を予測する場合の例を説明する。例えば、予測機能154は、コストの変化量が正の値である場合は、当該変化量が小さいほど、効果が高いと予測し、コストの変化量が負の値である場合は、当該変化量が大きいほど、効果が高いと予測する。なお、第3の実施形態では、上述した実施形態と異なる点を中心に説明することとし、上述した実施形態と重複する内容については説明を省略する。
【0110】
例えば、予測機能154は、予め記憶回路120に記憶されているコストデータを参照して、分析対象となる原因に関するコストと、改善策の候補に関するコストとを取得する。そして、予測機能154は、改善策の候補ごとに、各候補に関するコストと、分析対象となる原因に関するコストとの間の変化量を算出し、算出されたコストの変化量と、上述した実施形態で説明した相関値の変化量とに基づいて、改善策の候補の効果を予測する。
【0111】
図21は、第3の実施形態に係る予測機能154によって用いられるコストデータの一例を示す図である。
【0112】
例えば、
図21に示すように、コストデータは、データ項目として、診療行為と、コスト(円)とを含む。ここで、診療行為には、患者に対して実施される診療行為を示す情報が設定される。また、コスト(円)には、当該診療行為にかかる費用を示す価格(円)が設定される。なお、例えば、コストには、価格の代わりに診療点数が設定されてもよい。
【0113】
図22は、第3の実施形態に係る予測機能154によって行われる改善策の候補の効果の予測の一例を示す図である。
【0114】
例えば、
図22に示すように、予測機能154は、改善策の候補それぞれについて、分析対象となる原因との間でコストを比較し、コストの変化量を算出する。ここで、例えば、予測機能154は、コストの変化量として、改善策の候補に関するコストが、分析対象となる原因に関するコストの何倍になるかを算出する。
【0115】
さらに、予測機能154は、改善策の候補それぞれについて、コストの変化量が正の値である場合には、信頼度の変化量×(1/コストの変化量)を評価値として算出し、コストの変化量が負の値である場合には、信頼度の変化量×|コストの変化量|を評価値として算出する。そして、予測機能154は、改善策の候補のうち評価値が最も大きいものを、最も効果の高い改善策であると予測する。すわわち、
図22に示す例では、予測機能154は、評価値が3つの改善策の候補の中で最も大きい「0.35」である「パントール注射液500mg(4,計画外実施)」を、最も効果の高い改善策であると予測する。
【0116】
そして、本実施形態では、表示制御機能155は、複数の改善策の候補それぞれについて、相関値の変化量の大きさの代わりに、評価値の大きさに基づいて、各改善策の候補の効果の大きさを示す情報を表示する。
【0117】
このように、第3の実施形態では、予測機能154が、バリアンスとの相関値の変化量及びコストの変化量の両方に基づいて、改善策の候補の効果を予測する。したがって、第3の実施形態によれば、コストについても考慮したより効果的な改善策を提示することができる。
【0118】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、クリニカルパスに関する効果的な改善策を提示することができる。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0120】
100 医用情報処理装置
150 処理回路
151 取得機能
152 抽出機能
153 特定機能
154 予測機能
155 表示制御機能