(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】フレキシブルデバイス用キャリアシート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20220328BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220328BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
B32B27/00 M
(21)【出願番号】P 2017110476
(22)【出願日】2017-06-02
【審査請求日】2020-03-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 旭平
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆行
(72)【発明者】
【氏名】小澤 祐樹
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-039859(JP,A)
【文献】特開2016-014118(JP,A)
【文献】特開2004-287199(JP,A)
【文献】特開2007-051173(JP,A)
【文献】特開2016-135592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0170414(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルデバイスを保護・搬送するためのフレキシブルデバイス用キャリアシートであって、
前記フレキシブルデバイス用キャリアシートを貼付した状態で光学系の検査工程が行われるフレキシブルデバイスに用いられるものであり、
基材と、
前記基材の一方の面側に積層された粘着剤層と、
前記粘着剤層における前記基材とは反対側の面に積層された剥離シートと
を備えており、
前記基材、前記粘着剤層および前記剥離シートのいずれもが、帯電防止性を有し、
前記基材が、基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面側に形成された帯電防止層とを有しており、
前記基材フィルムの厚さが、50μm以上、188μm以下であ
り、
前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体および帯電防止剤を含有する粘着性組成物から形成されており、
前記帯電防止剤の含有量が、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、0.1質量部以上、10質量部以下である
ことを特徴とするフレキシブルデバイス用キャリアシート。
【請求項2】
前記粘着剤層が、前記基材フィルムの他方の面側に位置するように、前記基材に積層されている
ことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルデバイス用キャリアシート。
【請求項3】
前記粘着剤層が、帯電防止剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブルデバイス用キャリアシート。
【請求項4】
前記剥離シートが、支持体と、前記支持体の少なくとも一方の面側に形成された帯電防止層とを有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のフレキシブルデバイス用キャリアシート。
【請求項5】
23℃、相対湿度50%の環境下において、前記剥離シートを剥離してなる前記フレキシブルデバイス用キャリアシートに対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、前記粘着剤層の露出面の表面抵抗率が、1×10
7Ω/sq以上、1×10
11Ω/sq以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のフレキシブルデバイス用キャリアシート。
【請求項6】
23℃、相対湿度50%の環境下において、前記基材に対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、前記基材における前記粘着剤層とは反対側の面の表面抵抗率が、1×10
7Ω/sq以上、1×10
11Ω/sq以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のフレキシブルデバイス用キャリアシート。
【請求項7】
23℃、相対湿度50%の環境下において、前記剥離シートに対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、前記剥離シートにおける前記粘着剤層側の面の表面抵抗率が、1×10
7Ω/sq以上、1×10
11Ω/sq以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のフレキシブルデバイス用キャリアシート。
【請求項8】
23℃、相対湿度50%の環境下において、前記剥離シートに対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、前記剥離シートにおける前記粘着剤層とは反対側の面の表面抵抗率が、1×10
7Ω/sq以上、1×10
11Ω/sq以下であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のフレキシブルデバイス用キャリアシート。
【請求項9】
前記剥離シートを除く前記フレキシブルデバイス用キャリアシートのヘイズ値が、8%以下であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のフレキシブルデバイス用キャリアシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルデバイスの保護・搬送に用いられるキャリアシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学部材や電子部材等のデバイスにおいては、加工、組立、検査などの工程中、デバイスの表面を保護しながら搬送するために、当該デバイスの表面に、基材および粘着剤層からなるキャリアシートが貼着されることがある。このキャリアシートは、デバイスの保護・搬送の必要がなくなった時点で、デバイスから剥離される。
【0003】
被搬送物であるデバイスとしては、従来、硬質なものが多かったが、近年、フレキシブルなデバイスが現れている。例えば、最近では、光学部材として、硬質な液晶デバイスから、フレキシブルな有機発光ダイオード(OLED)デバイスに移行する動きが活発になっている。したがって、キャリアシートとしても、このようなフレキシブルデバイスに対応したものが必要とされる。
【0004】
ところで、上記のようなキャリアシートでは、使用時に粘着剤層から剥離シートを剥離し、また、使用後にデバイスから剥離されるが、そのときに剥離帯電により静電気が発生することがある。さらに、キャリアシートが貼着されたデバイスは、搬送中や製造工程中に摩擦帯電することがある。
【0005】
静電気が発生すると、空気中のゴミや塵がデバイスに付着して、デバイスの不具合につながることとなる。そのため、静電気が発生しないように、キャリアシートに帯電防止性を付与することが求められる。
【0006】
ここで、特許文献1には、シリコーン粘着剤および帯電防止剤を含有するフレキシブル基板搬送用シリコーン粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に係る発明は、フレキシブルデバイスに関して帯電防止性を考慮してはいるものの、各工程で十分な帯電防止性を得ることは難しい。また、十分な帯電防止性を得ようと帯電防止剤の添加量を増加させた場合、粘着剤層が白濁化してヘイズ値が上がってしまい、光学系の検査工程に使用できないものとなる。
【0009】
本発明は、上記の実状に鑑みてなされたものであり、各工程で帯電防止性に優れるとともに、ヘイズ値を低く抑えることのできるキャリアシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、フレキシブルデバイスを保護・搬送するためのフレキシブルデバイス用キャリアシートであって、基材と、前記基材の一方の面側に積層された粘着剤層と、前記粘着剤層における前記基材とは反対側の面に積層された剥離シートとを備えており、前記基材、前記粘着剤層および前記剥離シートのいずれもが、帯電防止性を有することを特徴とするフレキシブルデバイス用キャリアシートを提供する(発明1)。
【0011】
上記発明(発明1)に係るキャリアシートは、基材、粘着剤層および剥離シートのいずれもが帯電防止性を有することにより、各工程において帯電防止性に優れる。例えば、粘着剤層から剥離シートを剥離した時や、当該キャリアシートをフレキシブルデバイスから剥離した時、あるいはフレキシブルデバイスの加工、積層、検査等の工程中または搬送中や、キャリアシートの繰り出し時に、静電気が発生し難く、静電気に起因して空気中のゴミや塵がフレキシブルデバイスに付着することを抑制することができる。また、基材、粘着剤層および剥離シートのそれぞれが帯電防止性を有することにより、例えば、粘着剤層単層で全体の帯電防止性をまかなう場合よりも、粘着剤層における帯電防止剤使用量を低減することができる。これにより、粘着剤層のヘイズ値、ひいてはキャリアシート全体としてのヘイズ値を低く抑えることができる。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記基材が、基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面側に形成された帯電防止層とを有しており、前記粘着剤層が、前記基材フィルムの他方の面側に位置するように、前記基材に積層されていることが好ましい(発明2)。また、前記粘着剤層は、前記基材フィルムの他方の面に接触するように、前記基材に積層されていることも好ましい。
【0013】
上記発明(発明1,2)においては、前記粘着剤層が、帯電防止剤を含有することが好ましい(発明3)。
【0014】
上記発明(発明1~3)においては、前記剥離シートが、支持体と、前記支持体の少なくとも一方の面側に形成された帯電防止層とを有することが好ましい(発明4)。
【0015】
上記発明(発明1~4)においては、23℃、相対湿度50%の環境下において、前記剥離シートを剥離してなる前記フレキシブルデバイス用キャリアシートに対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、前記粘着剤層の露出面の表面抵抗率が、1×107Ω/sq以上、1×1011Ω/sq以下であることが好ましい(発明5)。
【0016】
上記発明(発明1~5)においては、23℃、相対湿度50%の環境下において、前記基材に対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、前記基材における前記粘着剤層とは反対側の面の表面抵抗率が、1×107Ω/sq以上、1×1011Ω/sq以下であることが好ましい(発明6)。
【0017】
上記発明(発明1~6)においては、23℃、相対湿度50%の環境下において、前記剥離シートに対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、前記剥離シートにおける前記粘着剤層側の面の表面抵抗率が、1×107Ω/sq以上、1×1011Ω/sq以下であることが好ましい(発明7)。
【0018】
上記発明(発明1~7)においては、23℃、相対湿度50%の環境下において、前記剥離シートに対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、前記剥離シートにおける前記粘着剤層とは反対側の面の表面抵抗率が、1×107Ω/sq以上、1×1011Ω/sq以下であることが好ましい(発明8)。
【0019】
上記発明(発明1~8)においては、前記剥離シートを除く前記フレキシブルデバイス用キャリアシートのヘイズ値が、8%以下であることが好ましい(発明9)。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るキャリアシートは、各工程で帯電防止性に優れるとともに、ヘイズ値を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフレキシブルデバイス用キャリアシートの断面図である。
【
図2】打痕試験で取得した画像およびグラフを示す図(カラー)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係るフレキシブルデバイス用キャリアシート(以下、単に「キャリアシート」と称する場合がある。)は、主としてフレキシブルデバイスの加工、積層、検査などの工程中、フレキシブルデバイスの表面を保護しながら搬送するのに用いられる。
【0023】
本明細書におけるフレキシブルデバイスとは、柔軟性を有する光学部材や電子部材等のデバイスをいい、例えば、フレキシブル有機発光ダイオード(OLED)デバイス、フレキシブル液晶デバイス等が挙げられ、中でもフレキシブルOLEDデバイスが好ましい。
【0024】
本実施形態に係るキャリアシートは、基材と、当該基材の一方の面側に積層された粘着剤層と、当該粘着剤層における上記基材とは反対側の面に積層された剥離シートとを備えており、基材、粘着剤層および剥離シートのいずれもが帯電防止性を有するものである。
【0025】
本実施形態に係るキャリアシートは、上記のように基材、粘着剤層および剥離シートのいずれもが帯電防止性を有することにより、粘着剤層から剥離シートを剥離した時や、当該キャリアシートをフレキシブルデバイスから剥離した時、あるいはフレキシブルデバイスの加工、積層、検査等の工程中または搬送中や、キャリアシートの繰り出し時に、静電気が発生し難く、静電気に起因して空気中のゴミや塵がフレキシブルデバイスに付着することを抑制することができる。また、基材、粘着剤層および剥離シートのそれぞれが帯電防止性を有することにより、例えば、粘着剤層単層で全体の帯電防止性をまかなう場合よりも、粘着剤層における帯電防止剤使用量を低減することができる。これにより、粘着剤層のヘイズ値、ひいてはキャリアシート全体としてのヘイズ値を低く抑えることができる。上記のようにヘイズ値が低く抑えられたキャリアシートは、透明性が高く、フレキシブルOLEDデバイス等の発光検査に好適なものとなる。
【0026】
以下、図面を参照して本実施形態の一例であるキャリアシートを説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るキャリアシート1は、基材2と、粘着剤層3と、剥離シート4とを備えている。基材2は、基材フィルム21と、基材フィルム21における粘着剤層3とは反対側の面(
図1では上側の面)に形成された第1の帯電防止層22とを有する。剥離シート4は、支持体41を有するとともに、支持体41における粘着剤層3側の面(
図1では上側の面)に形成された第2の帯電防止層42a、および支持体41における粘着剤層3とは反対側の面(
図1では下側の面)に形成された第3の帯電防止層42bのいずれか一方または両方を有し、好ましくは、第2の帯電防止層42aおよび第3の帯電防止層42bの両方を有する。また、剥離シート4は、粘着剤層3に最も近い位置に剥離剤層43を有する。当該剥離剤層43は、第2の帯電防止層42aが存在する場合には、第2の帯電防止層42aにおける支持体41とは反対側の面に設けられ、第2の帯電防止層42aが存在しない場合には、支持体41における粘着剤層3側の面に設けられる。粘着剤層3は、基材フィルム21に接するように基材2に積層されている。また、本実施形態における粘着剤層3は、帯電防止剤を含有する。
【0027】
本実施形態に係るキャリアシート1の好ましい使用態様の1つとして、キャリアシート1の巻回ロールからキャリアシート1が繰り出され、剥離シート4が剥がされ、露出した粘着剤層3上にフレキシブルデバイスが設置され、搬送されつつ、加工、積層、検査等され、その後、フレキシブルデバイスからキャリアシート1が剥離される態様が挙げられる。上記の繰り出し工程においては、特に、第1の帯電防止層22によって帯電防止性が発揮され、第3の帯電防止層42bが設けられることによって、当該帯電防止性がさらに優れたものとなる。フレキシブルデバイスの加工、積層、検査等の工程中または搬送中においては、特に、第1の帯電防止層22によって摩擦帯電による静電気発生を抑制することができる。一方、キャリアシート1から剥離シート4を剥離した時は、特に、帯電防止剤を含有する粘着剤層3によって帯電防止性が発揮され、第2の帯電防止層42aが設けられることによって、当該帯電防止性がさらに優れたものとなる。また、キャリアシート1をフレキシブルデバイスから剥離した時には、特に、帯電防止剤を含有する粘着剤層3によって帯電防止性が発揮される。
【0028】
なお、剥離シート4の第2の帯電防止層42aおよび第3の帯電防止層42bの一方は、省略されてもよい。ただし、剥離シート4に第2の帯電防止層42aおよび第3の帯電防止層42bの両方が形成されていることにより、キャリアシート1の帯電防止性がより優れたものとなる。
【0029】
また、本実施形態に係るキャリアシート1では、粘着剤層3が帯電防止性を有するため、基材フィルム21の粘着剤層3側には帯電防止層は不要である。ただし、基材フィルム21の粘着剤層3側にさらに帯電防止層が形成されてもよい。
【0030】
1.各部材
(1)基材
(1-1)基材フィルム
基材フィルム21は、フレキシブルデバイスの保護・搬送および各工程に適した物性を有するプラスチックフィルムからなることが好ましい。かかる基材フィルム21としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー等の樹脂からなるプラスチックフィルムが好ましく、単層からなるフィルムであってもよいし、同種又は異種の複数層を積層したフィルムであってもよい。上記の中でも、フレキシブルデバイスに対するハンドリング性、透明性およびコストの面から、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0031】
ここで、被搬送物であるフレキシブルデバイスがフレキシブルOLEDデバイスの場合、フレキシブルOLEDデバイスの発光検査では、液晶デバイス等の発光検査よりも厳しいレベルで検査が行われるため、キャリアシート1には高い透明性が要求される。本実施形態に係るキャリアシート1は、前述した通り、ヘイズ値を低く抑えることができるため、上記のような発光検査に好適である。ただし、さらにキャリアシート1の透明性を高くするために、基材フィルム21は、フィラーを含有しないプラスチックフィルムからなることが好ましい。これによって、キャリアシート1は透明度がさらに高くなり、フレキシブルOLEDデバイスの発光検査により適したものとなる。
【0032】
なお、上記プラスチックフィルムは、本実施形態の前述した効果を損なわない範囲で、フィラー、耐熱性向上剤、紫外線吸収剤、屈折率調整剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0033】
上記基材フィルム21においては、第1の帯電防止層22および/または粘着剤層3との密着性を向上させる目的で、所望により、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、基材フィルム21の種類に応じて適宜選ばれる。
【0034】
基材フィルム21の厚さは、フレキシブルデバイスを被搬送物としたときのハンドリング性、特にフレキシブルデバイスからの剥離の作業性を考慮すると、25μm以上であることが好ましく、耐打痕性を加味すると、50μm以上であることがより好ましく、さらには80μm以上であることが好ましい。また、同様にハンドリング性およびコストを考慮すると、当該厚さは、188μm以下であることが好ましく、特に150μm以下であることが好ましく、さらには125μm以下であることが好ましい。
【0035】
(1-2)帯電防止層
第1の帯電防止層22は、基材フィルム21に所望の帯電防止性を付与することができ、所望の透明性を有する材料からなれば、特に限定されない。このような第1の帯電防止層22としては、例えば、導電性高分子とバインダー樹脂とを含有する帯電防止層用組成物からなる層であることが好ましい。
【0036】
導電性高分子としては、従来公知の導電性高分子の中から、任意のものを適宜選択して用いることができるが、中でも、ポリチオフェン系、ポリアニリン系またはポリピロール系の導電性高分子が好ましい。導電性高分子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
ポリチオフェン系の導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリ(3-アルキルチオフェン)、ポリ(3-チオフェン-β-エタンスルホン酸)、ポリアルキレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホネート(PSS)との混合物(ドープされたものを含む)等が挙げられる。これらの中でも、ポリアルキレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホネートとの混合物が好ましい。上記ポリアルキレンジオキシチオフェンとしては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリプロピレンジオキシチオフェン、ポリ(エチレン/プロピレン)ジオキシチオフェン等が挙げられ、中でもポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が好ましい。すなわち、上記の中でも、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホネートとの混合物(PSSをドープしたPEDOT)が特に好ましい。
【0038】
ポリアニリン系の導電性高分子としては、例えば、ポリアニリン、ポリメチルアニリン、ポリメトキシアニリン等が挙げられる。ポリピロール系の導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリ3-メチルピロール、ポリ3-オクチルピロール等が挙げられる。
【0039】
帯電防止層用組成物中における導電性高分子の含有量は、0.1~30質量%であることが好ましく、特に0.2~20質量%であることが好ましく、さらには0.3~10質量%であることが好ましい。導電性高分子の含有量が上記範囲内であれば、良好な帯電防止性能が得られ、また、当該帯電防止層用組成物から形成される帯電防止層の強度が十分なものとなる。
【0040】
上記帯電防止層用組成物に用いられるバインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分として含有することが好ましい。これらの樹脂は、熱硬化性化合物であってもよく、紫外硬化性化合物であってもよいが、紫外硬化性にするには溶媒を水系から有機溶剤系に置換することが必要であるため、工程数やコストの観点から、熱硬化性化合物であることが好ましい。上記の中でも、プラスチックフィルムへの密着性の高さから、熱硬化性のポリエステル樹脂が好ましく、架橋剤と反応する反応性基、例えば水酸基等を有するポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0041】
帯電防止層用組成物は、上記成分以外にも、架橋剤、レベリング剤、防汚剤等を含有してもよい。
【0042】
架橋剤としては、上記の樹脂を架橋することのできるものであればよい。例えば、上記樹脂が反応性基として水酸基を有するものであれば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤等を使用することが好ましい。
【0043】
架橋剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましく、特に5~40質量部であることが好ましく、さらには10~30質量部であることが好ましい。
【0044】
レベリング剤としては、例えば、ジメチルシロキサン系化合物、フッ素系化合物、界面活性剤等を使用することができる。第1の帯電防止層22においては、粘着剤層3との密着性の観点から、界面活性剤を使用することが好ましい。帯電防止層用組成物がレベリング剤を含有することにより、帯電防止層42a,42bの平滑性を向上させることができ、基材2の透視性がより高いものとなる。
【0045】
帯電防止層用組成物中におけるレベリング剤の含有量は、0.1~10質量%であることが好ましく、特に0.2~5質量%であることが好ましく、さらには0.5~3質量%であることが好ましい。
【0046】
第1の帯電防止層22の厚さは、帯電防止性能を考慮すると、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、さらには30nm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、強度およびコストの観点から、200nm以下であることが好ましく、特に150nm以下であることが好ましく、さらには100nm以下であることが好ましい。
【0047】
(1-3)基材の物性
(1-3-1)表面抵抗率
23℃、相対湿度50%の環境下において、基材2に対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、基材2における粘着剤層3とは反対側の面の表面抵抗率は、上限値として、1×1011Ω/sq以下であることが好ましく、特に5×1010Ω/sq以下であることが好ましく、さらには1×1010Ω/sq以下であることが好ましい。上記表面抵抗率の上限値が上記であることにより、キャリアシート1の巻回ロールからキャリアシート1が繰り出される時や、フレキシブルデバイスの加工、積層、検査等の工程中または搬送中に、静電気が発生することをより効果的に抑制することができる。また、上記表面抵抗率の下限値は特に限定されないが、通常は、1×107Ω/sq以上であることが好ましく、特に5×107Ω/sq以上であることが好ましく、さらには1×108Ω/sq以上であることが好ましい。
【0048】
なお、本明細書における表面抵抗率は、JIS K6911に準拠して測定した値であり、当該表面抵抗率の測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
【0049】
(1-3-2)ヘイズ値
基材2のヘイズ値は、8%以下であることが好ましく、特に4%以下であることが好ましく、さらには1%以下であることが好ましい。基材2のヘイズ値が上記であることにより、被搬送物に貼着されるキャリアシート1の透明度が高いものとなり、フレキシブルOLEDデバイスの発光検査にも適したものとなる。なお、上記ヘイズ値の下限値は特に限定されず、0%であることが特に好ましい。ここで、本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値とする。
【0050】
(2)粘着剤層
本実施形態における粘着剤層3は、帯電防止剤を含有する。具体的には、粘着剤層3は、帯電防止剤を含有する粘着剤から形成される。
【0051】
(2-1)粘着剤
粘着剤層3を構成する粘着剤としては、被搬送物(フレキシブルデバイス)への貼着および被搬送物からの剥離に適するものを選択することが好ましい。特に、フレキシブルデバイスからキャリアシート1が剥離し易いように、再剥離性に優れた粘着剤を選択することが好ましい。
【0052】
粘着剤の種類としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤等が挙げられ、再剥離性の観点からは、アクリル系粘着剤およびシリコーン系粘着剤が好ましい。ただし、一般的な帯電防止剤をシリコーン系粘着剤に添加すると、相溶性の低さから、得られる粘着剤層3の透明性が低くなり、また、基材密着性も低下する。一方、一般的な帯電防止剤をアクリル系粘着剤に添加しても、上記のような相溶性の影響が比較的小さい。したがって、アクリル系粘着剤が特に好ましい。以下、帯電防止剤を含有するアクリル系粘着剤について説明する。
【0053】
本実施形態におけるアクリル系粘着剤は、1種または2種以上の(メタ)アクリル酸エステル共重合体および帯電防止剤、好ましくはさらに架橋剤を含有する粘着性組成物を架橋(硬化)したものであることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0054】
上記粘着性組成物は、再剥離性の観点から、(メタ)アクリル酸エステル共重合体として、相対的に重量平均分子量の大きい第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、相対的に重量平均分子量の小さい第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とを含有することが好ましい。当該粘着性組成物は、特に、共重合体を構成するモノマー単位として、水酸基を有するモノマーおよびカルボキシル基を有するモノマーを含有する第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量よりも小さい重量平均分子量を有し、共重合体を構成するモノマー単位として、水酸基を有するモノマーおよびカルボキシル基を有するモノマーを含有する第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)と、イソシアネート系架橋剤(C)と、帯電防止剤(D)とを含有する粘着性組成物であることが好ましい。さらに、当該粘着性組成物は、第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を構成するモノマーにおける水酸基を有するモノマーの割合が、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を構成するモノマーにおける水酸基を有するモノマーの割合よりも大きく、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を構成するモノマーの質量部数の合計100質量部に対し、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を構成するカルボキシル基を有するモノマーの質量部数の合計が、0.1~1.0質量部であり、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とにおける質量を基準とした配合比が、90:10~10:90である粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)であることが好ましい。
【0055】
上記粘着性組成物Pから得られる粘着剤は、フレキシブルデバイスの加工・搬送の際、より長い鎖長を有する第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が、比較的少ない数の架橋点を有し、より自由度が高く、変形しやすいことにより、十分な密着力を示すと推定される。一方、再剥離する際、多くの架橋点を有する第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)によって、上記共重合体(A)の動きは拘束され、所定量以上は変形し難いことにより、比較的小さい粘着力を示すと推定される。これにより、工程中にキャリアシート1がフレキシブルデバイスに密着し、かつ、工程後にキャリアシート1がフレキシブルデバイスから剥離し易いものとなる。
【0056】
粘着性組成物Pでは、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、それぞれ、共重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシル基を有するモノマーを含有する。カルボキシル基を有するモノマーは、架橋の促進剤として作用する。したがって、粘着性組成物Pでは、カルボキシル基を有するモノマーが、モノマー構成単位として共重合体(A)および共重合体(B)に含まれることで、スズ触媒といったその他の架橋促進剤の使用を省略することができる。
【0057】
粘着性組成物Pでは、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を構成するモノマーの質量部数の合計100質量部に対し、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を構成するカルボキシル基を有するモノマーの質量部数の合計が、0.1~1.0質量部であることが好ましく、特に0.15~0.8質量部であることが好ましく、さらには0.3~0.6質量部であることが好ましい。カルボキシル基を有するモノマーの質量部数の合計が1.0質量部以下であることで、架橋反応が過度に促進されて、粘着性組成物Pが粘着剤の形成前にゲル化することが防止され、十分なポットライフを確保することができる。一方、カルボキシル基を有するモノマーの質量部数の合計が0.1質量部以上であることで、架橋促進の効果を得ることができる。
【0058】
第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシル基を有するモノマーを0.01~2.0質量%含有することが好ましく、特に0.05~1.5質量%含有することが好ましく、さらには0.3~1.0質量%含有することが好ましい。当該モノマーの含有量が2.0質量%以下であることで、粘着性組成物のポットライフがより優れたものとなる。また、当該モノマーの含有量が0.01質量%以上であることで、カルボキシル基による架橋促進の効果が十分に得られ、これにより、共重合体(B)を主体に形成される架橋構造の一部に、共重合体(A)が水酸基を介して結合してなる構造が良好に形成され、得られる粘着シートの高速粘着力を低く抑えることができる。
【0059】
第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシル基を有するモノマーを0.01~0.99質量%含有することが好ましく、特に0.05~0.8質量%含有することが好ましく、さらには0.2~0.6質量%含有することが好ましい。当該モノマーの含有量が0.99質量%以下であることで、粘着性組成物のポットライフがより優れたものとなる。また、当該モノマーの含有量が0.01質量%以上であることで、カルボキシル基による架橋促進の効果が得られ、これにより、良好な架橋構造が形成され、得られる粘着シートは再剥離性により優れたものになる。
【0060】
カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、酢酸ビニル等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。架橋促進の観点から、特に、カルボキシル基を有するモノマーとして、アクリル酸を使用することが好ましい。
【0061】
粘着性組成物Pでは、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)が、それぞれ、共重合体を構成するモノマー単位として、水酸基を有するモノマーを含有する。本実施形態に係る粘着性組成物は、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(C)を含むため、イソシアネート基との反応性に優れる水酸基が、共重合体(A)および(B)において架橋点として作用する。
【0062】
粘着性組成物Pでは、第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を構成するモノマーにおける水酸基を有するモノマーの割合が、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を構成するモノマーにおける水酸基を有するモノマーの割合よりも大きいことが好ましい。このように、より低分子量の共重合体(B)が、より多くの水酸基を有することにより、再剥離の際に共重合体(B)が共重合体(A)を拘束し易くなり、粘着力が十分に低下する。
【0063】
第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、水酸基を有するモノマーを0.01~5質量%含有することが好ましく、特に0.05~1質量%含有することが好ましく、さらには0.1~0.5質量%含有することが好ましい。
【0064】
第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、水酸基を有するモノマーを0.1~10質量%含有することが好ましく、特に0.6~8質量%含有することが好ましく、さらには1.1~5質量%含有することが好ましい。
【0065】
水酸基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、アクリル酸4-ヒドロキシブチルは、架橋反応における高い反応性を示すため、再剥離性の観点から、水酸基を有するモノマーとして、アクリル酸4-ヒドロキシブチルを使用することが好ましい。
【0066】
粘着性組成物Pでは、第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、共重合体を構成するモノマー単位として、アルキレンオキシド鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル(以下、「アルキレンオキシド鎖含有アクリル酸エステル」と称する場合がある。)を含有することも好ましい。アルキレンオキシド鎖のアルキレンとしては、炭素数2~4のアルキレンであることが好ましく、特に、炭素数2のエチレンオキシドであることが好ましい。この場合、アルキレンオキシド鎖含有アクリル酸エステル1分子中のアルキレンオキシド鎖の平均付加モル数は、1~20モルであることが好ましく、特に3~15モルであることが好ましく、さらには6~10モルであることが好ましい。第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)がモノマー単位としてアルキレンオキシド鎖含有(メタ)アクリル酸エステルを含むことで、この粘着剤にイオン伝導性の帯電防止剤(D)を添加した場合に、粘着剤中の帯電防止剤(D)の移動性が高まることにより、帯電防止剤(D)の効果をより得ることができる。なお、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、共重合体を構成するモノマー単位として、アルキレンオキシド鎖含有(メタ)アクリル酸エステルを含有してもよいものの、共重合体(A)が高分子量であることに起因して、粘着性組成物の粘度が上がり過ぎ、加工性が悪化する場合がある。そのため、アルキレンオキシド鎖含有(メタ)アクリル酸エステルは第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)のみに含まれることが好ましい。また、アルキレンオキシド鎖の末端は、架橋剤(C)と反応しないよう炭素数1~4のアルキル基で保護されていることが好ましい。さらに、帯電防止剤(D)の添加効果をより発揮させると共に、共重合体(A)との相溶性の両立を図る観点から、共重合体(B)中において、モノマー単位として、アルキレンオキシド鎖含有(メタ)アクリル酸エステルを1~30質量%含有させることが好ましく、5~20質量%含有させることがより好ましく、10~17質量%含有させることが特に好ましい。
【0067】
粘着性組成物Pでは、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)が、それぞれ、共重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、所望の粘着性を発現する粘着剤を得ることができる。
【0068】
アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」という場合がある。)としては、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、より好ましい粘着性を得る観点から、アルキル基の炭素数が4~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することが好ましく、そのような例としては、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルが挙げられる。特に、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルの両方を使用することが好ましい。
【0069】
得られる粘着剤に粘着性を付与しつつ、前述の水酸基を有するモノマーおよびカルボキシル基を有するモノマーの配合割合も確保する観点から、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、それぞれ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー構成単位として60~99.8質量%含有することが好ましい。さらに、共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー構成単位として85~99.6質量%含有することがより好ましい。また、共重合体(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー構成単位として65~85質量%含有することがより好ましい。
【0070】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、アクリル酸2-エチルヘキシルおよびアクリル酸ブチルの両方を使用する場合には、搬送時等における密着性と再剥離性との両立を高いレベルで得る観点から、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)のそれぞれにおけるアクリル酸2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルとの比率は、質量換算で95:5~50:50であることが好ましく、特に90:10~60:40であることが好ましい。なお、共重合体(A)では、当該比率は、質量換算で74:26~65:35であることがさらに好ましい。また、共重合体(B)では、当該比率は、質量換算で85:15~76:24であることがさらに好ましい。
【0071】
粘着性組成物Pでは、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)が、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、カルボキシル基を有するモノマーおよび水酸基を有するモノマーの作用を妨げないためにも、反応性を有する官能基を含まないモノマーが好ましい。かかる他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、シリコーン(メタ)アクリレート、フッ素(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロイルモルフォリン等の非架橋性のアクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、スチレン等のビニルモノマーなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
粘着性組成物Pにおいて、上記の第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記の第2の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
粘着性組成物Pでは、前述の通り第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)が第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)よりも架橋点を多く有することに加え、第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の重量平均分子量は、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量よりも小さい。これにより、再剥離性およびフレキシブルデバイスの搬送時等における密着性を効果的に両立することができる。
【0074】
第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量は、5万~50万であることが好ましく、特に10万~40万であることが好ましく、さらには15万~30万であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0075】
第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の重量平均分子量は、0.2万~10万であることが好ましく、特に0.5万~5万であることが好ましく、さらには1万~2万であることが好ましい。
【0076】
粘着性組成物Pにおいて、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とにおける質量を基準とした配合比は、90:10~10:90であることが好ましい。特に、第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の配合量の方が、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の配合量よりも多いことが好ましい。具体的には、上記配合比は、45:55~10:90であることが好ましく、特に42:58~20:80であることが好ましく、さらには40:60~30:70であることが好ましい。第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の配合量の方が多いことにより、フレキシブルデバイスの搬送・加工時には十分な密着性を発揮して剥がれを防止しつつ、一連の工程終了後にはフレキシブルデバイスを糊残りなく剥離できるという効果が高いレベルで得られる。
【0077】
イソシアネート系架橋剤(C)は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。なかでも、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型3量体を使用することが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
イソシアネート系架橋剤(C)の含有量は、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の合計100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、特に1~8質量部であることが好ましく、さらには2~6質量部であることが好ましい。
【0079】
帯電防止剤(D)としては、得られる粘着剤に帯電防止性を付与することができるものであればよく、例えば、イオン性化合物、ノニオン性化合物等が挙げられるが、中でもイオン伝導性を有するイオン性化合物が好ましい。イオン性化合物は、室温で液体であってもよいし、固体であってもよいが、耐久条件に曝されても安定した帯電防止性を発現しやすいという観点から、室温で固体のものが好ましい。ここで、本明細書におけるイオン性化合物とは、陽イオンと陰イオンとが主として静電気引力によって結び付いてなる化合物をいう。
【0080】
イオン性化合物としては、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、含リンオニウム塩、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が好ましく、得られる粘着剤が耐久性に優れる観点から、特に含窒素オニウム塩またはアルカリ金属塩が好ましく、さらには含窒素オニウム塩が好ましい。含窒素オニウム塩は、含窒素複素環カチオンとその対アニオンとから構成されるイオン性化合物であることが好ましい。
【0081】
含窒素複素環カチオンの含窒素複素環骨格としては、ピリジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、トリアゾール環、インドール環等が好ましく、中でもピリジン環が好ましい。また、アルカリ金属塩の陽イオンとしては、リチウムイオン、カリウムイオンまたはナトリウムイオンが好ましく、リチウムイオンまたはカリウムイオンが特に好ましい。
【0082】
一方、上記イオン性化合物を構成するアニオンとしては、ハロゲン化リン酸アニオンまたはスルホニルイミド系アニオンが好ましく挙げられる。ハロゲン化リン酸アニオンとしては、ヘキサフルオロホスフェートなどが好ましく挙げられる。また、スルホニルイミド系アニオンとしては、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドまたはビス(フルオロスルホニル)イミドなどが好ましく挙げられる。
【0083】
上記帯電防止剤(D)の具体例としては、N-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N-ヘキシル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N-オクチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N-オクチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N-ドデシルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N-テトラデシルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N-ヘキサデシルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N-ドデシル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N-テトラデシル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート等のピリジニウムヘキサフルオロホスフェート系化合物;N-デシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ブチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-へキシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-へキシル-3-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウムビス(フルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロメタンスルホニル)イミド等のフルオロスルホニルイミド系化合物などが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)との相溶性の観点から、N-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N-ヘキシル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N-オクチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N-デシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、およびカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドが好ましく、特に、N-オクチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、およびカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドが好ましい。以上の帯電防止剤(D)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
2種以上を組み合わせる場合は、ピリジニウムヘキサフルオロホスフェート系化合物とフルオロスルホニルイミド系化合物とを組み合わせて使用することが好ましく、特にN-オクチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェートおよびカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドを使用することが好ましい。これにより、得られる粘着剤の帯電防止性がより優れたものとなる。ピリジニウムヘキサフルオロホスフェート系化合物とフルオロスルホニルイミド系化合物との配合比(質量基準)は、90:10~10:90であることが好ましく、特に、80:20~20:80であることが好ましく、さらには、75:25~55:45であることが好ましい。
【0085】
粘着性組成物P中における帯電防止剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、特に0.5質量部以上であることが好ましく、さらには1.0質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることが最も好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に8質量部以下であることが好ましく、さらには5質量部以下であることが好ましい。本実施形態に係るキャリアシート1では、基材2、粘着剤層3および剥離シート4のそれぞれが帯電防止性を有することにより、上記のように粘着性組成物P中における帯電防止剤(D)の含有量を比較的少なくすることができる。このため、得られる粘着剤層3のヘイズ値、ひいてはキャリアシート1全体としてのヘイズ値を低く抑えることができる。また、帯電防止剤(D)の含有量が上記範囲内にあることで、帯電防止性を効果的に発揮することができるとともに、耐久性、反り抑制性などの物性の低下を防止することができる。
【0086】
粘着性組成物Pは、可塑剤を含有してもよい。可塑剤を含有させることで、得られる粘着剤の粘着力を容易に制御することができ、再剥離性に優れたものにすることができる。
【0087】
可塑剤の具体例としては、アセチルクエン酸トリブチル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0088】
可塑剤の含有量は、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の合計100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、特に3~15質量部であることが好ましく、さらには6~12質量部であることが好ましい。
【0089】
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。
【0090】
なお、粘着性組成物Pは、スズ化合物を含有しないことが好ましく、特に、有機スズ化合物を含有しないことが好ましい。粘着性組成物Pでは、カルボキシル基を有するモノマーによって架橋が促進されるため、架橋促進剤としてスズ触媒といったスズ化合物を含有させる必要がない。粘着性組成物Pがスズ化合物を含有しないことにより、環境への負荷が低減された粘着剤を得ることができる。
【0091】
粘着性組成物Pは、例えば、以下のようにして製造することができる。
すなわち、先に、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および(B)を、好ましくは後述する重合溶媒中で、それぞれ別個に通常のラジカル重合法により調製する。次に、得られた両共重合体の溶液を混合し、固形分濃度が10~40質量%になるように希釈溶媒を加える。その後、イソシアネート系架橋剤(C)、帯電防止剤(D)、および所望により可塑剤や添加剤を添加し、十分に混合することにより、溶媒で希釈された粘着性組成物(塗布溶液)を得る。
【0092】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0093】
また、粘着性組成物Pは、以下に示す一連重合によって製造することが好ましい。
【0094】
具体的には、
(1)第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を構成するモノマーを含有する混合液(a)において、転化率50~90%でラジカル重合して、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を製造した後、
(2)第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を構成するモノマーを含有する混合液(b)を添加し、当該モノマーと第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合時に残留するモノマーとを、上記第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の存在下で、好ましくは転化率70~100%でラジカル共重合して、第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を製造し、次いで、
(3)イソシアネート系架橋剤(C)、帯電防止剤(D)、ならびに所望により可塑剤および各種添加剤を添加する。
【0095】
混合液(a)に含有される第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を構成するモノマーは、前述した通りである。また、混合液(a)における、カルボキシル基を有するモノマー、水酸基を有するモノマーおよび(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、それぞれ、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を構成するモノマー単位として前述した含有量と同じとすることができる。
【0096】
混合液(b)に含有される第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を構成するモノマーは、前述した通りである。また、混合液(b)における、カルボキシル基を有するモノマー、水酸基を有するモノマー、アルキレンオキシド鎖含有(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、それぞれ、第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を構成するモノマー単位として前述した含有量と同じとすることができる。
【0097】
混合液(a)と混合液(b)との配合比は、質量換算で90:10~10:90であることが好ましい。特に、混合液(b)の配合量の方が、混合液(a)の配合量よりも多いことが好ましく、例えば、上記配合比は、45:55~10:90であることが好ましく、特に42:58~20:80であることが好ましく、さらには40:60~30:70であることが好ましい。
【0098】
イソシアネート系架橋剤(C)および可塑剤の配合量は、それぞれ、粘着性組成物P中の含有量として前述した量と同じであってよい。この場合、上記工程(2)において生成された第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の合計100質量部に対して、前述した量のイソシアネート系架橋剤(C)または可塑剤を使用することができる。
【0099】
上記の一連重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0100】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0101】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0102】
上記のようにして調製された粘着性組成物の塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~40質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。
【0103】
粘着剤層3を構成する好ましい粘着剤は、上記粘着性組成物Pを架橋してなるものである。粘着性組成物Pの架橋は、加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、粘着性組成物Pの希釈溶媒等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0104】
加熱処理を行う場合、加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、30秒~3分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。さらに、加熱処理後、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けることが特に好ましい。
【0105】
上記の加熱処理(及び養生)により、イソシアネート系架橋剤(C)によって、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)が架橋して、三次元網目構造を形成する。特に、第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の方が架橋点を多く有するため、第2の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)同士の架橋が優先的に生じるものと推定される。
【0106】
以上のように、粘着剤層3が帯電防止剤を含有するアクリル系粘着剤から形成されると、粘着剤層3の基材2に対する密着性が優れたものとなる。これにより、製品としての安定性・信頼性が高く、また、フレキシブルデバイスからキャリアシート1を剥離したときに、フレキシブルデバイス側に粘着剤層3または粘着剤が残存するおそれがない。
【0107】
(2-2)厚さ
粘着剤層3の厚さは、5μm以上であることが好ましく、特に12μm以上であることが好ましく、さらには17μm以上であることが好ましい。粘着剤層3の厚さが5μm以上であると、良好な粘着性を得ることができる。また、粘着剤層3の厚さが12μm以上であると、仮にキャリアシート1における粘着剤層3(粘着面)とフレキシブルデバイスとの間にゴミや塵等の異物が付着したとしても、当該異物は粘着剤層3に埋め込まれる。その結果、キャリアシート1とフレキシブルデバイスとの間にて、異物に起因するエアの噛み込みが発生することを抑制し、発光検査等を問題なく行うことができる。
【0108】
一方、粘着剤層3の厚さは、剥離性の観点から、75μm以下であることが好ましく、特に50μm以下であることが好ましく、さらには30μm以下であることが好ましい。
【0109】
(2-3)粘着剤層の物性
23℃、相対湿度50%の環境下において、剥離シート4を剥離してなるキャリアシート1に対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、粘着剤層3の露出面(粘着面)の表面抵抗率は、上限値として、1×1011Ω/sq以下であることが好ましく、特に5×1010Ω/s以下であることが好ましく、さらには1×1010Ω/s以下であることが好ましい。上記表面抵抗率の上限値が上記であることにより、特に、キャリアシート1から剥離シート4を剥離した時や、キャリアシート1をフレキシブルデバイスから剥離した時に、静電気が発生することをより効果的に抑制することができる。また、上記表面抵抗率の下限値は特に限定されないが、通常は、1×107Ω/sq以上であることが好ましく、特に5×107Ω/sq以上であることが好ましく、さらには1×108Ω/sq以上であることが好ましい。
【0110】
(3)剥離シート
(3-1)支持体
支持体41としては、粘着剤層3に悪影響を与えないものであれば、特に限定されることはなく、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。上記の中でも、ハンドリング性に優れたポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0111】
支持体41の厚さについては特に制限はないが、通常15~100μmであることが好ましく、特に25~75μmであることが好ましい。
【0112】
(3-2)帯電防止層
第2の帯電防止層42aおよび第3の帯電防止層42bは、いずれも、剥離シート4に所望の帯電防止性を付与することができる材料からなれば、特に限定されない。このような帯電防止層42a,42bの材料としては、前述した基材2の第1の帯電防止層22と同様の材料を使用することが好ましい。また、帯電防止層42a,42bの厚さも、基材2の第1の帯電防止層22と同様の厚さとすることが好ましい。
【0113】
ここで、前述した通り、本実施形態に係るキャリアシート1において、第2の帯電防止層42aおよび第3の帯電防止層42bは、一方のいずれかを省略することができる。ただし、省略する場合は、第3の帯電防止層42bを省略することが好ましい。粘着剤層3に接触する第2の帯電防止層42aが存在すると、粘着剤層3から剥離シート4を剥離するときの帯電防止性を効果的に高めることができる。
【0114】
(3-3)剥離剤層
剥離剤層43を構成する剥離剤としては、特に制限はなく、粘着剤層3の粘着剤の種類に応じて、従来公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような剥離剤としては、例えば、シリコーン樹脂系、フッ素樹脂系、アルキド樹脂系、オレフィン樹脂系、アクリル系、長鎖アルキル基含有化合物系、ゴム系等の剥離剤が挙げられる。特に、粘着剤層3の粘着剤がアクリル系粘着剤の場合には、当該粘着剤層3の剥離性の観点から、シリコーン樹脂系の剥離剤が好ましい。なお、粘着剤層3の粘着剤がシリコーン系粘着剤の場合には、剥離剤層43は省略されてもよい。
【0115】
剥離剤層43の厚さは、下限値として、0.01μm以上であることが好ましく、特に0.03μm以上であることが好ましく、さらには0.05μm以上であることが好ましい。厚さの下限値が上記であることで、剥離剤層43としての機能が十分に発揮され得る。また、剥離剤層43の厚さは、上限値として、3μm以下であることが好ましく、特に1μm以下であることが好ましく、さらには0.5μm以下であることが好ましい。厚さの上限値が上記であることで、剥離剤層43の硬化を十分なものとすることができる。
【0116】
(3-4)剥離シートの物性
23℃、相対湿度50%の環境下において、剥離シート4に対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、剥離シート4における粘着剤層3側の面(剥離剤層43の露出面)の表面抵抗率は、上限値として、1×1011Ω/sq以下であることが好ましく、特に5×1010Ω/sq以下であることが好ましく、さらには1×1010Ω/sq以下であることが好ましい。上記表面抵抗率の上限値が上記であることにより、キャリアシート1(粘着剤層3)から剥離シート4を剥離した時に、静電気が発生することを良好に抑制することができ、キャリアシート1をフレキシブルデバイスに貼着するときに、空気中のゴミや塵がデバイスに付着することをより効果的に抑制することができる。また、上記表面抵抗率の下限値は特に限定されないが、通常は、1×107Ω/sq以上であることが好ましく、特に5×107Ω/sq以上であることが好ましく、さらには1×108Ω/sq以上であることが好ましい。
【0117】
また、23℃、相対湿度50%の環境下において、剥離シート4に対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、剥離シート4における粘着剤層3とは反対側の面(第3の帯電防止層42bの露出面)の表面抵抗率は、上限値として、1×1011Ω/sq以下であることが好ましく、特に5×1010Ω/sq以下であることが好ましく、さらには1×1010Ω/sq以下であることが好ましい。上記表面抵抗率の上限値が上記であることにより、キャリアシート1の巻回ロールからキャリアシート1が繰り出される時に、静電気が発生することをより効果的に抑制することができる。また、上記表面抵抗率の下限値は特に限定されないが、通常は、1×107Ω/sq以上であることが好ましく、特に5×107Ω/sq以上であることが好ましく、さらには1×108Ω/sq以上であることが好ましい。
【0118】
2.キャリアシートの製造方法
(1)基材の製造
本実施形態における基材2を製造するには、一例として、基材フィルム21の一方の面に、帯電防止層用組成物および所望により溶媒を含有する塗布液を塗布した後、乾燥し、硬化させることにより、第1の帯電防止層22を形成する。
【0119】
上記溶媒としては特に制限はなく、様々なものを用いることができる。例えば、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、アルコール系溶媒と精製水との混合溶媒等が使用される。
【0120】
帯電防止層用組成物の塗布液の塗布は、常法によって行えばよく、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法等によって行えばよい。
【0121】
上記塗布液を塗布したら、塗膜を加熱乾燥させることが好ましい。加熱乾燥の加熱温度は70~140℃であることが好ましく、加熱時間は30~60秒程度であることが好ましい。
【0122】
(2)剥離シートの製造
本実施形態における剥離シート4を製造するには、一例として、支持体41の一方の面に、帯電防止層用組成物および所望により溶媒を含有する塗布液を塗布した後、乾燥し、硬化させることにより、第2の帯電防止層42aを形成する。また、支持体41の他方の面に、帯電防止層用組成物および所望により溶媒を含有する塗布液を塗布した後、乾燥し、硬化させることにより、第3の帯電防止層42bを形成する。帯電防止層42a,42bの形成方法は、前述した基材2における第1の帯電防止層22の形成方法と同様である。
【0123】
さらに、第2の帯電防止層42a上に、剥離剤層43を形成する。剥離剤層43は、剥離剤および所望により溶剤等を含有する剥離剤塗布液を塗布した後、必要に応じて加熱し、乾燥することで形成することができる。剥離剤塗布液の塗布方法は、帯電防止層の塗布液の塗布方法と同様である。
【0124】
(3)キャリアシートの製造
本実施形態に係るキャリアシート1を製造するには、一例として、基材2における第1の帯電防止層22とは反対側の面に、粘着剤組成物および所望により希釈剤を含有する塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物を架橋し、塗布層を形成する。次いで、その塗布層に、剥離剤層43が接するように剥離シート4を貼合する。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層3となる。これにより、上記キャリアシート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0125】
上記粘着性組成物の塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0126】
なお、上記の製造方法では、粘着性組成物の塗布液は基材2に対して塗布したが、剥離シート4に対して塗布し、その後、塗布層に基材2を貼合してもよい。
【0127】
3.キャリアシートの物性等
(1)総厚
本実施形態に係るキャリアシート1における剥離シート4以外の積層体(本実施形態では、基材2および粘着剤層3の積層体)の総厚は、下限値として、75μm以上であることが好ましく、特に100μm以上であることが好ましく、さらには125μm以上であることが好ましい。上記総厚の下限値が上記であることにより、キャリアシート1を貼着したフレキシブルデバイスを搬送し易いものにすることができる。また、キャリアシート1に外力が点荷重で加わった場合でも、当該キャリアシート1は打痕が付き難いものとなり、耐打痕性に優れるものとなる。したがって、当該キャリアシート1が貼着されたフレキシブルデバイスを良好に保護することができる。
【0128】
一方、上記総厚は、上限値として、300μm以下であることが好ましく、特に250μm以下であることが好ましく、さらには200μm以下であることが好ましい。上記総厚の上限値が上記であることにより、キャリアシート1のハンドリング性が良好なものとなり、また、コストが過大になることを抑制することができる。
【0129】
(2)剥離帯電圧
23℃、相対湿度50%の環境下において、本実施形態に係るキャリアシート1における粘着剤層3から剥離シート4を手作業により2.0m/minの剥離速度で剥離したときの、剥離5秒後に測定した粘着剤層3の露出面(粘着面)から2.0cmの位置の静電電位(剥離帯電圧)は、200V以下であることが好ましく、特に150V以下であることが好ましく、さらには100V以下であることが好ましい。剥離帯電圧が上記であることにより、粘着剤層3から剥離シート4を剥離した時に静電気が発生し難く、静電気に起因して空気中のゴミや塵がデバイスに付着することを効果的に抑制することができる。上記剥離帯電圧の下限値は特に限定されないが、0Vであることが好ましい。なお、剥離帯電圧の測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
【0130】
また、23℃、相対湿度50%の環境下において、本実施形態に係るキャリアシート1における粘着剤層3から剥離シート4を手作業により2.0m/minの剥離速度で剥離したときの、剥離5秒後に測定した剥離シート4の粘着剤層3側の露出面から2.0cmの位置の静電電位(剥離帯電圧)は、200V以下であることが好ましく、特に150V以下であることが好ましく、さらには100V以下であることが好ましい。剥離帯電圧が上記であることにより、粘着剤層3から剥離シート4を剥離した時に静電気が発生し難く、静電気に起因して空気中のゴミや塵がデバイスに付着することを効果的に抑制することができる。上記剥離帯電圧の下限値は特に限定されないが、0Vであることが好ましい。
【0131】
(3)粘着力
本実施形態に係るキャリアシート1のソーダライムガラスに対する粘着力は、上限値として、300mN/25mm以下であることが好ましく、特に250mN/25mm以下であることが好ましく、さらには200mN/25mm以下であることが好ましい。上記粘着力の上限値が上記であると、当該キャリアシート1のフレキシブルデバイスからの剥離性が優れたものとなる。一方、上記粘着力は、下限値として、50mN/25mm以上であることが好ましく、特に75mN/25mm以上であることが好ましく、さらには100mN/25mm以上であることが好ましい。上記粘着力の下限値が上記であると、フレキシブルデバイスに貼着したキャリアシート1が、各工程中にて意図せずに剥がれることが抑制される。
【0132】
また、本実施形態に係るキャリアシート1のポリエチレンテレフタレートフィルムに対する粘着力は、上限値として、300mN/25mm以下であることが好ましく、特に250mN/25mm以下であることが好ましく、さらには200mN/25mm以下であることが好ましい。上記粘着力の上限値が上記であると、当該キャリアシート1のフレキシブルデバイスからの剥離性が優れたものとなる。一方、上記粘着力は、下限値として、50mN/25mm以上であることが好ましく、特に75mN/25mm以上であることが好ましく、さらには100mN/25mm以上であることが好ましい。上記粘着力の下限値が上記であると、フレキシブルデバイスに貼着したキャリアシート1が、各工程中にて意図せずに剥がれることが抑制される。
【0133】
ここで、本明細書における粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいうが、測定サンプルは25mm幅、100mm長とし、当該測定サンプルを被着体に貼付し、0.5MPa、50℃で20分加圧した後、常圧、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、剥離速度2.0m/minにて測定するものとする。
【0134】
(4)ヘイズ値
本実施形態に係るキャリアシート1における剥離シート4以外の積層体(本実施形態では、基材2および粘着剤層3の積層体)のヘイズ値は、8%以下であることが好ましく、特に5%以下であることが好ましく、さらには2%以下であることが好ましい。ヘイズ値が上記以下であることにより、フレキシブルOLEDデバイスの発光検査にも適したものとなる。本実施形態に係るキャリアシート1においては、基材2、粘着剤層3および剥離シート4のそれぞれが帯電防止性を有することにより、粘着剤層3における帯電防止剤の使用量を低減し、粘着剤層3のヘイズ値を低く抑えることができる。これにより、上記のような低いヘイズ値を達成することができる。なお、上記ヘイズ値の下限値は特に限定されず、0%であることが特に好ましい。ここで、本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値とする。
【0135】
4.用途
前述した通り、本実施形態に係るキャリアシート1は、主としてフレキシブルデバイスの加工、積層、検査などの工程中、フレキシブルデバイスの表面を保護しながら搬送するのに用いられる。
【0136】
本実施形態に係るキャリアシート1を使用するには、最初に、粘着剤層3から剥離シート4を剥離し、露出した粘着剤層3を介して、キャリアシート1(基材2および粘着剤層3の積層体)を被搬送物であるフレキシブルデバイスに貼着する。その後、フレキシブルデバイスは、キャリアシート1が貼着された状態で、搬送されながら、加工、積層、検査などの工程に付される。これらの工程中、フレキシブルデバイスは、キャリアシート1が貼着されていることにより、表面が傷付いたりすることが防止される。上記の工程が終了し、キャリアシート1が不要になった時点で、キャリアシート1はフレキシブルデバイスから剥離される。
【0137】
本実施形態に係るキャリアシート1においては、基材2、粘着剤層3および剥離シート4のいずれもが帯電防止性を有している。具体的には、基材2は第1の帯電防止層22を有しており、粘着剤層3は帯電防止剤を含有しており、剥離シート4は第2の帯電防止層42aおよび第3の帯電防止層42bの少なくとも一方を有している。これにより、キャリアシート1は、各工程で優れた帯電防止性を発揮する。例えば、キャリアシート1の繰り出し工程中、粘着剤層3から剥離シート4を剥離してキャリアシート1をフレキシブルデバイスに貼着するとき、フレキシブルデバイスの加工、積層、検査等の工程中、そしてキャリアシート1をフレキシブルデバイスから剥離した時に、静電気が発生し難く、静電気に起因して空気中のゴミや塵がフレキシブルデバイスに付着することを抑制することができる。また、本実施形態に係るキャリアシート1においては、基材2、粘着剤層3および剥離シート4のそれぞれが帯電防止性を有することにより、粘着剤層3における帯電防止剤の使用量を低減することができる。これにより、粘着剤層3のヘイズ値、ひいてはキャリアシート1全体としてのヘイズ値を低く抑えることができる。したがって、当該キャリアシート1が貼着されたフレキシブルOLEDデバイス等の発光検査を良好に行うことができる。
【0138】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0139】
例えば、基材フィルム21には第1の帯電防止層22以外の層がさらに形成されてもよい。また、剥離シート4の剥離剤層43は省略されてもよいし、剥離シート4には帯電防止層42a,42bおよび剥離剤層43以外の層がさらに形成されてもよい。
【実施例】
【0140】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0141】
〔実施例1〕
1.基材の製造(帯電防止層の形成)
水溶性の水酸基含有ポリエステル樹脂と、PSSをドープしたPEDOTとを、ジメチルスルホキシドおよび水で希釈してなる希釈液(中京油脂社製,製品名「S-495」,固形分8.2質量%)に対して、水溶性メチロールメラミンおよび水からなるメラミン化合物溶液(中京油脂社製,製品名「P-795」,固形分70.0質量%)と、レベリング剤として界面活性剤および水からなるレベリング剤水溶液(中京油脂社製,製品名「R-438」,固形分10.0質量%)とを混合し、そこへさらに、水およびイソプロピルアルコールの混合溶媒(質量比1:1)を加えて、固形分0.6質量%となるように希釈して、帯電防止層用組成物の塗布液を得た。
【0142】
基材フィルムとしてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂社製,製品名「PET125T-100」,厚さ:125μm,フィラー含有)の一方の面(粘着剤層側とは反対側の面)に、上記帯電防止層用組成物の塗布液をナイフコーターで塗布したのち、130℃で60秒間加熱処理して、厚さ50nmの第1の帯電防止層を形成し、第1の帯電防止層/基材フィルムからなる基材を得た。
【0143】
2.粘着性組成物の塗布液の調製
2-1.工程(1)
アクリル酸2-エチルヘキシル68.04質量部、アクリル酸ブチル30.46質量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル0.23質量部およびアクリル酸1.27質量部の混合液(a)100質量部を調製し、その40質量部を分取し溶液重合法により共重合させて、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を調製した。この重合体(A)の分子量を後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したところ、重量平均分子量(Mw)18万であった。また、このときの転化率(モノマーを重合して得られる共重合体の質量を、原料として用いたモノマーの総質量で除した値)は、80%であった。
【0144】
2-2.工程(2)
アクリル酸2-エチルヘキシル65.25質量部、アクリル酸ブチル12.99質量部、メトキシ末端を有するエチレンオキシド鎖(平均付加モル数=9モル)含有アクリル酸エステル16.23質量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル4.72質量部およびアクリル酸0.81質量部の混合液(b)100質量部を調製し、その60質量部を分取して、上記工程(1)により得られた共重合体(A)を含む溶液に添加して、第1の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合時に残留するモノマーとともに共重合させた。その後、溶液の一部についてGPCを用いて測定したところ、上記共重合体(A)の重量平均分子量18万のピークトップにほぼ変化がないことを確認するとともに、今回のGPC測定の結果から工程(1)におけるGPC測定の結果を差し引くことにより、新たに重量平均分子量1.5万の共重合体(B)の生成を確認した。ここで、共重合体(A)と共重合体(B)との配合比は、上記工程(1)における転化率が80%であったことから、32:68の質量比となる。
【0145】
2-3.工程(3)
上記工程(2)により得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分換算100質量部を分取し、メチルエチルケトンにて固形分濃度20質量%となるように希釈した。そして、イソシアネート系架橋剤(C)として、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型3量体(日本ポリウレタン社製,商品名「コロネートHX」)3.5質量部(固形分換算値を表す。以下同様とする。)と、帯電防止剤(D)として、N-オクチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート2.0質量部およびカリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(三菱マテリアル電子化成社製,製品名「K-FSI」)1.0質量部と、可塑剤として、アセチルクエン酸トリブチル1.0質量部とを添加し、十分に撹拌することにより、粘着性組成物の塗布液を得た。
【0146】
ここで、前述した重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0147】
3.剥離シートの製造
支持体としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製,製品名「PET25T-100」,厚さ:25μm)の一方の面に、前述した第1の帯電防止層と同様にして第2の帯電防止層を形成し、他方の面に、同じく前述した第1の帯電防止層と同様にして第3の帯電防止層を形成した。
【0148】
一方、シリコーン系剥離剤(信越化学工業社製)と、硬化触媒(信越化学工業社製)とを混合し、トルエンにて希釈し、これを剥離剤層用の塗工液とした。得られた塗工液を、上記第2の帯電防止層上にマイヤーバーにより均一に塗工した後、100℃で30秒間乾燥させて、厚さ0.1μmの剥離剤層を形成した。このようにして、剥離剤層/第2の帯電防止層/支持体/第3の帯電防止層の構成を有する剥離シートを得た。
【0149】
4.キャリアシートの製造
上記工程1で得られた基材における第1の帯電防止層が存在しない側の面に、上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布液をナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して、厚さ25μmの粘着剤層を形成した。次いで、上記工程3で得られた剥離シートを、当該剥離シートの剥離剤層が粘着剤層に接するように上記粘着剤層に貼合し、キャリアシートを得た。
【0150】
〔実施例2~7,比較例1〕
基材フィルム、粘着剤層および剥離シートを表1に示すものに変更する以外、実施例1と同様にしてキャリアシートを製造した。なお、実施例3の剥離シートとしては、粘着剤層側のみに帯電防止層を有するものを使用した。実施例4の基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製,製品名「PET75U48」,厚さ:75μm,フィラー非含有)を使用した。実施例6の剥離シートとしては、粘着剤層側に帯電防止層のないものを使用した。実施例7の基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製,製品名「T100F38」,厚さ:38μm,フィラー含有)を使用した。比較例1の粘着性組成物としては、帯電防止剤を含有しない以外、実施例1の粘着性組成物と同様のものを使用した。
【0151】
〔試験例1〕(表面抵抗率の測定)
実施例および比較例で使用した基材の粘着剤層側とは反対側(キャリアシート表面側)の面、キャリアシートから剥離シートを剥離して露出した粘着剤層の粘着面、ならびに剥離シートの粘着剤層側の面およびその反対側(キャリアシート裏面側)の面について、JIS K6911に準拠して、表面抵抗率を測定した。具体的には、23℃、相対湿度50%の環境下において、抵抗率測定器(三菱アナリテック社製,製品名「ハイレスタUP MCP-HT450型」)を使用して、基材、剥離シートを剥離したキャリアシート(基材+粘着剤層)、または剥離シート(100mm×100mm)に対して100Vの電圧を10秒間印加した後の各表面の表面抵抗率(Ω/sq)を測定した。結果を表1に示す。なお、実施例3で使用した剥離シートのキャリアシート裏面側の表面抵抗率、実施例6で使用した剥離シートの粘着剤層側の表面抵抗率、および比較例1のキャリアシートにおける粘着剤層の粘着面の表面抵抗率は、いずれも測定限界を超える値だった。
【0152】
〔試験例2〕(ヘイズ値の測定)
実施例および比較例で使用した基材のヘイズ値(%)を、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH7000」)を用いて、JIS K7136:2000に準じて測定した。結果を表1に示す。また、実施例および比較例で製造したキャリアシートから剥離シートを剥離し、得られた積層体のヘイズ値(%)を、同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0153】
〔試験例3〕(剥離帯電圧)
実施例および比較例で製造したキャリアシートを25mm×100mmに裁断し、これをサンプルとした。23℃、相対湿度50%の環境下において、サンプルから剥離シートを手作業により2.0m/minの剥離速度で剥離し、剥離5秒後に、静電気測定器(シムコジャパン社製,製品名「FMX-003」)を使用して、粘着剤層の露出面(粘着面)から2.0cmの位置の静電電位(剥離帯電圧;V)および剥離シートの粘着剤層側の露出面から2.0cmの位置の静電電位(剥離帯電圧;V)を測定した。結果を表2に示す。
【0154】
〔試験例4〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で製造したキャリアシートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、ソーダライムガラス(セントラルガラス社製)に貼付したのち、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、剥離速度2.0m/min、剥離角度180度の条件で粘着力(mN/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z 0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表2に示す。
【0155】
また、被着体をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製,製品名「ルミラー50T60」,厚さ50μm,ガラス板に固定)に変更する以外、上記と同様にして粘着力(mN/25mm)を測定した。結果を表2に示す。
【0156】
〔試験例5〕(打痕試験)
実施例および比較例で製造したキャリアシートを、基材側を上にして硬質の平板上に載置した。そして、デュロメーター(高分子計器社製,製品名「アスカーゴム硬度計C2型」,押芯形状は直径2.54mmの半球状)を用いて、上記キャリアシートの基材表面に400gの点荷重を10秒印加し、打痕を付けた。その1分後に、光干渉顕微鏡(Veeco社製,製品名「表面形状測定装置WYKO NT110」)を用いて、打痕深さを測定した。このとき、測定条件VSI、倍率2.5倍、測定範囲2.5mm×1.9mmとした。なお、当該測定で取得した画像およびグラフを参考として
図2に示す。測定結果に基づいて、以下の評価基準の下、耐打痕性について評価した。結果を表2に示す。
◎:打痕深さが0.5μm未満
○:打痕深さが0.5μm以上、1.0μm未満
×:打痕深さが1.0μm以上
【0157】
〔試験例6〕(異物埋め込み試験)
7cm×7cmのソーダライムガラス板上に、シリコーン樹脂フィラー(モメンティブ社製,製品名「トスパール145L」,平均粒径:4.5μm)を極微量散布し、単分散させた。実施例および比較例で製造したキャリアシートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を上記ソーダライムガラス板上に貼付した。次いで、50℃、0.5MPaの条件下で20分間オートクレーブ処理した後、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置し、これをサンプルとした。
【0158】
得られたサンプルについて、フィラーが粘着剤層に埋め込まれているか否か(フィラーに起因するエアの噛み込みがあるか否か)、キャリアシート側から目視で観察し、以下の基準により異物埋め込み性を評価した。結果を表2に示す。
○:フィラーが粘着剤層に十分に埋め込まれている
△:部分的にエアの噛み込みが発生
×:全体的にエアの噛み込みが発生
【0159】
【0160】
【0161】
表2から明らかなように、実施例で製造したキャリアシートは、少なくとも粘着剤層の粘着面における剥離帯電防止性に優れるとともに、ヘイズ値が低く抑えられている。また、実施例1~3,5,6で製造したキャリアシートは、耐打痕性にも優れる。さらに、実施例1,3,4,6で製造したキャリアシートは、異物埋め込み性にも優れる。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明に係るフレキシブルデバイス用キャリアシートは、特にフレキシブルOLEDデバイスの加工、積層、検査などの工程で使用されるキャリアシートとして好適である。
【符号の説明】
【0163】
1…フレキシブルデバイス用キャリアシート
2…基材
21…基材フィルム
22…第1の帯電防止層
3…粘着剤層
4…剥離シート
41…支持体
42a…第2の帯電防止層
42b…第3の帯電防止層
43…剥離剤層