(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】転積装置
(51)【国際特許分類】
B21D 43/22 20060101AFI20220328BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20220328BHJP
B21D 28/02 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
B21D43/22 D
H02K15/02 F
B21D28/02 D
(21)【出願番号】P 2017135597
(22)【出願日】2017-07-11
【審査請求日】2020-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390006585
【氏名又は名称】株式会社三共製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健吾
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-018998(JP,A)
【文献】特開2009-190157(JP,A)
【文献】特開2002-227928(JP,A)
【文献】特開2014-012291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/22
H02K 15/02
B21D 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス装置によって打ち抜かれた板材を所定の角度に従って回転させて積層するための転積装置であって、
ステータ、ロータ、及びロータに固定された出力軸を含むモータ
であって、前記出力軸の回転が、伝達部材を介して前記プレス装置に伝達される、モータと、
前記ステータに固定された制振プレートと、
前記制振プレートの上側及び下側のうちの一方に設けられた第1のプレートと
を備え、
前記制振プレートと前記第1のプレートとの間に設けられた少なくとも1つの第1の振動吸収部材と、
前記転積装置が固定される前記プレス装置の一面に対して垂直になるように前記制振プレート及び前記第1のプレートに固定された第1の張力吸収プレートであって、
前記第1の張力吸収プレートは、制振性のある材料より形成され、前記制振プレート及び前記第1のプレートに対して垂直になるように固定され
、前記出力軸が前記プレス装置の方に引っ張られず、前記出力軸の姿勢が維持されるように、前記伝達部材の張力を吸収して緩和する第1の張力吸収プレートと
を更に備える転積装置。
【請求項2】
前記制振プレートの上側及び下側のうちの他方に設けられた第2のプレートと、前記制振プレートと前記第2のプレートとの間に設けられた少なくとも1つの第2の振動吸収部材とを更に備え、前記第1の張力吸収プレートが、前記第2のプレートに固定されている、請求項1に記載の転積装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1の振動吸収部材及び/又は前記少なくとも1つの第2の振動吸収部材は、ゴム、ウレタン、又は制振合金より形成された制振部材である、請求項2に記載の転積装置。
【請求項4】
前記第1のプレート及び前記第2のプレートは、連結部材によって連結されている、請求項2又は3に記載の転積装置。
【請求項5】
前記第1の張力吸収プレートは、金属又は制振合金より形成されている、請求項1~4の何れか一項に記載の転積装置。
【請求項6】
前記出力軸を基準にして前記第1の張力吸収プレートとは反対側に、前記プレス装置の一面に対して垂直になるように前記制振プレート及び前記第1のプレートに固定された第2の張力吸収プレートであって、
前記第2の張力吸収プレートは、制振性のある材料より形成され
、前記出力軸が前記プレス装置の方に引っ張られず、前記出力軸の姿勢が維持されるように、前記伝達部材の張力を吸収して緩和する第2の張力吸収プレートを更に備える、請求項1~5の何れか一項に記載の転積装置。
【請求項7】
前記第2の張力吸収プレートは、前記制振プレート及び前記第1のプレートに対して垂直になるように固定されている、請求項6に記載の転積装置。
【請求項8】
前記第2の張力吸収プレートは、金属又は制振合金より形成されている、請求項6又は7に記載の転積装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の転積装置を備えるプレス装置であって、
前記打ち抜かれた板材を保持するスクイズリングと、
前記出力軸に固定された駆動プーリと、
前記スクイズリングに固定された従動プーリと、
前記出力軸の回転に基づく前記駆動プーリの回転を前記従動プーリに伝達し、前記スクイズリングを所定の角度に従って回転させるための伝達部材と
を備えるプレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置によって打ち抜かれた板材を所定の角度に従って回転させて積層するための転積装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板状の圧延鋼板が、圧延されてロール状に巻かれた状態で、プレス装置の上金型と下金型との間に供給され、上下に摺動可能な上金型と下金型との協働によって所定の形状に打ち抜かれる。そして、転積装置は、打ち抜かれた板状の圧延鋼板を積層して、モータコアと呼ばれるロータ、ステータ、等を形成するために使用される。ところで、圧延鋼板は、圧延時において、幅方向の両端となる圧延ローラの支持部における圧力と、幅方向の中央となる圧延ローラの中央部における圧力とが相違するために、幅方向において僅かに相違する厚みを有している。このため、プレス装置に供給された圧延鋼板を上金型と下金型によって打ち抜いて、打ち抜かれた板状の圧延鋼板をそのまま積層すると、打ち抜かれた板状の圧延鋼板の厚い部分同士及び薄い部分同士が積層され、このように積層された部材は、厚い部分同士が積層された部分は厚くなる一方で薄い部分同士が積層された部分は薄くなって、形状が傾いてしまう。このような傾いた部材を、ロータやステータとして使用するとモータの性能が低下する虞がある。従って、積層された部材が傾かないようにするために、転積装置によって打ち抜かれた板状の圧延鋼板を所定の角度に従って回転させて積層している。
【0003】
近年、機械装置、自動車、等において、モータが多く使用され、モータの需要が高まっており、その結果、モータを構成しているロータ、ステータ、等のモータコアの需要も高まっており、モータコアの製造効率の向上が求められている。製造効率を向上させるには、打ち抜かれた板状の圧延鋼板を高速で回転して積層していくことができる転積装置が求められている。また、プレス装置に供給された板状の圧延鋼板を、上金型と下金型との協働によって所定の形状に打ち抜く際、プレス装置は上下方向に振動する。特に製造効率の向上のため高速に打ち抜く際にその振動はより顕著となる。その振動が転積装置に伝達することによって、転積装置に備えられたモータの回転精度が低下してモータコアの製造精度が低下し、更には、転積装置に備えられたモータが破損して故障する。従って、プレス装置による振動を抑制することができる転積装置が求められている。
【0004】
特許文献1には、外形打ち抜きパンチを含む上金型と、外径打ち抜きパンチに対応する外形打ち抜きダイに固定されて下方へ延びるスクイズリングを含む下金型と、スクイズリングを間欠的に回動駆動するインデックス装置とを備える、電磁鋼板から鋼板片を打ち抜いて積層した積層鉄心を製造する積層鉄心製造装置が開示されている。このインデックス装置は、サーボモータと、サーボモータの出力軸の回転を減速する減速ギヤ機構と、減速ギヤ機構の減速出力軸の回転角を検出するエンコーダと、サーボモータを制御する制御手段とを有し、制御手段は、減速ギヤ機構の出力回転をスクイズリングに伝達するベルト式伝動機構によってスクイズリングを所定角度回転させるように、サーボモータを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によるインデックス装置は、モータの出力軸の回転を、減速ギヤ機構を介してスクイズリングに伝達しているため、モータの出力軸の回転に対して減速を余儀なくされ、スクイズリングを高速で回転させるためには不向きであるという問題点がある。また、減速ギヤ機構のバックラッシによって、スクイズリングの回転角度精度を維持すること難しいという問題点がある。
【0007】
スクイズリングを高速で回転させ、且つ、バックラッシをなくすために、特許文献1によるインデックス装置から減速ギヤ機構を除いて、サーボモータの出力軸の出力回転をベルト式伝動機構によって直接スクイズリングに伝達することもできる。しかし、この場合、プレス装置による電磁鋼板からの鋼板片の打ち抜きの際に発生する上下振動がサーボモータに伝達し、その上下振動によってサーボモータが振動して高精度にスクイズリングを回転させることができず、更にサーボモータが破損して故障するという問題点がある。また、高速でスクイズリングを回転させるために、サーボモータの出力軸とスクイズリングとを連結しているベルト式伝動機構のテンション(張力)を高める必要がある。しかし、その高いテンションによってサーボモータの出力軸がスクイズリングの方に引っ張られてサーボモータの出力軸の姿勢が傾斜し、それによって、スクイズリングの回転角度精度が低下して、モータコアの製造精度が低下するという問題点がある。
【0008】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解決して、プレス装置による上下振動を抑制し、且つ、モータの出力軸の姿勢を維持する、プレス装置によって打ち抜かれた板材を所定の角度に従って回転させて積層するための転積装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの観点によれば、プレス装置によって打ち抜かれた板材を所定の角度に従って回転させて積層するための転積装置は、ステータ、ロータ、及びロータに固定された出力軸を含むモータと、ステータに固定された制振プレートと、制振プレートの上側及び下側のうちの一方に設けられた第1のプレートとを備える。また、転積装置は、制振プレートと第1のプレートとの間に設けられた少なくとも1つの第1の振動吸収部材と、転積装置が固定されるプレス装置の一面に対して垂直になるように制振プレート及び第1のプレートに固定された第1の張力吸収プレートとを更に備える。
【0010】
本発明の一具体例によれば、転積装置において、第1の張力吸収プレートは、制振プレート及び第1のプレートに対して垂直になるように固定されている。
【0011】
本発明の一具体例によれば、転積装置は、制振プレートの上側及び下側のうちの他方に設けられた第2のプレートと、制振プレートと第2のプレートとの間に設けられた少なくとも1つの第2の振動吸収部材とを更に備える。また、第1の張力吸収プレートは、第2のプレートに固定されている。
【0012】
本発明の一具体例によれば、転積装置において、第1のプレート及び第2のプレートは、連結部材によって連結されている。
【0013】
本発明の一具体例によれば、転積装置は、モータの出力軸を基準にして第1の張力吸収プレートとは反対側に、転積装置が固定されるプレス装置の一面に対して垂直になるように制振プレート及び第1のプレートに固定された第2の張力吸収プレートを更に備える。
【0014】
本発明の一具体例によれば、転積装置において、第2の張力吸収プレートは、制振プレート及び第1のプレートに対して垂直になるように固定されている。
【0015】
本発明の一具体例によれば、転積装置において、第1の張力吸収プレート及び/又は第2の張力吸収プレートは、制振性のある材料より形成されている。
【0016】
本発明の一具体例によれば、転積装置において、第1の張力吸収プレート及び/又は第2の張力吸収プレートは、金属又は制振合金より形成されている。
【0017】
本発明の一具体例によれば、転積装置において、少なくとも1つの第1の振動吸収部材及び/又は少なくとも1つの第2の振動吸収部材は、ゴム、ウレタン、又は制振合金より形成された制振部材である。
【0018】
本発明の別の観点によれば、上記転積装置を備えるプレス装置が、打ち抜かれた板材を保持するスクイズリングと、モータの出力軸に固定された駆動プーリと、スクイズリングに固定された従動プーリと、モータの出力軸の回転に基づく駆動プーリの回転を従動プーリに伝達し、スクイズリングを所定の角度に従って回転させるための伝達部材とを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プレス装置から転積装置のモータに伝達される上下振動を抑制することができるために、板材を高精度に積層することができ、そして、モータの破損及び故障を防止することができ、更には、モータ、転積装置、転積装置が固定されるプレス装置の寿命を延ばすことできて、生産現場におけるコスト削減を達成することができる。また本発明によれば、減速ギヤ機構を介さないために、板材を高速に積層することができ、そして、板材を高速に積層する場合においてもモータの出力軸の姿勢を維持することができるために、板材を高精度に積層することができる。
【0020】
なお、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態としての転積装置を備えるプレス装置の正面から見た概略図である。
【
図2】
図1のプレス装置の一部の部品に連結された転積装置を上面方向から見た斜視図である。
【
図3】
図1の転積装置の上面方向から見た斜視図である。
【
図6】
図1の転積装置の、
図5のVI-VI線における矢印の方向から見た断面図である。
【
図7】
図1の転積装置の、
図5のVII-VII線における矢印の方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
図1~
図7を参照して、本発明の転積装置の一実施形態を説明する。
【0024】
図1に、本発明の一実施形態としての転積装置101を備えるプレス装置201の正面から見た概略図を示す。プレス装置201は、プレス装置201の本体フレームに対して上下方向に摺動可能なスライド部材203と、本体フレームに設けられ、スライド部材203を摺動可能に案内するガイド部材204と、スライド部材203の下面に設けられた上金型202と、本体フレームに設けられた下金型205とを備える。プレス装置201には、板材としての圧延鋼板209が上金型202と下金型205との間に供給され、ガイド部材204を介してスライド部材203が下側方向に摺動する。上金型202の外形打ち抜きパンチと、この打ち抜きパンチに対応する、下金型205の外形打ち抜きダイとによって、供給された圧延鋼板209は打ち抜かれる。打ち抜かれた圧延鋼板209は、外形打ち抜きダイに固定されたスクイズリング206の保持ホール207に摩擦力によって保持される。スクイズリング206には従動プーリ208が固定され、転積装置101に備えられたモータ102の出力軸104には駆動プーリ103が固定されている。モータ102の出力軸104の回転に基づく駆動プーリ103の回転が、伝達部材211を介して従動プーリ208に伝達され、転積装置101は、スクイズリング206を所定の角度に従って回転させることができるようになっている。なお、従動プーリ208、駆動プーリ103は、タイミングプーリであってもよい。また、伝達部材211は、回転を伝達できるものであればよく、タイミングベルトであってもよい。
【0025】
圧延鋼板209が打ち抜かれてスライド部材203が上側方向に摺動すると、上金型202の外形打ち抜きパンチは、下金型205の外形打ち抜きダイから引き抜かれ、そして、打ち抜かれた圧延鋼板209は、スクイズリング206内に抜け落とされて保持ホール207に保持される。続いて、転積装置101のモータ102の出力軸104が所定の角度に従って回転し、その回転が、駆動プーリ103、伝達部材211、従動プーリ208を介して伝達される。これによって、保持ホール207に保持された打ち抜かれた圧延鋼板209も所定の角度に従って回転する。このように打ち抜きと回転を繰り返して打ち抜かれた圧延鋼板209を順次積層することによって、モータを構成しているロータ、ステータ、等のモータコア、等に使用するための、形状の傾きのない積層体210を形成することができる。なお、圧延鋼板209が回転される角度は限定されないが、例えば、圧延鋼板209を、360°を整数で割って割り切れる45°、60°、72°、90°、120°、等のような所定の角度に従って回転して順次積層してもよいし、360°を整数で割って割り切れる角度に対して微小の角度を加算した45°+1°、60°+2°、等のような所定の角度に従って回転してスキューを有するらせん状のように順次積層してもよい。
【0026】
図2~7において、プレス装置201に備えられ、プレス装置201の上金型202の外形打ち抜きパンチと下金型205の外形打ち抜きダイとによって、打ち抜かれた圧延鋼板209を所定の角度に従って回転させて積層するための転積装置101を詳細に示す。転積装置101は、ロータ116、ロータ116の外周に沿って設けられたステータ117、ステータ117を格納するためのハウジング119、及びロータ116の回転に伴って回転するように固定された出力軸104を含むモータ102と、ハウジング119を介してステータ117に固定された制振プレート105とを備える。なお、制振プレート105は、鉄系鋼材より形成されていてもよい。転積装置101には、ロータ116及び出力軸104の回転を支持するための上部軸受120、下部軸受121が設けられている。また、転積装置101には、モータ102に電力及び電気信号を供給するケーブルのためのステー113が設けられていてもよい。
図6及び
図7に示すように、ロータ116は、低消費電力で高速に回転することができるように、慣性モーメントを小さくした中空を有する円筒形状である。なお、ロータ116は、中空を有さない円柱形状であってもよい。また、ハウジング119を含まず、制振プレート105を直接ステータ117に固定してもよい。この場合、ステータ117の少なくとも一部が外気に直接接触するため、モータ102の空冷の効率を向上させることができる。
【0027】
転積装置101は、制振プレート105の上側及び下側のうちの少なくとも一方に、制振プレート105に対して平行に設けられた第1及び/又は第2のプレート106、107を備える。
図3等に示すように、転積装置101は、制振プレート105の上側には上部プレート107、制振プレート105の下側には下部プレート106というように、制振プレート105の上側と下側の両方に上部プレート107及び下部プレート106を備えてもよいし、制振プレート105の上側と下側のうちの一方にのみ上部プレート107又は下部プレート106を備えてもよい。なお、上部プレート107及び下部プレート106は、直接モータ102に連結せず、上部プレート107及び下部プレート106から直接振動が伝達しないようにしている。
【0028】
転積装置101において、制振プレート105の上面と上部プレート107の下面との間には少なくとも1つの振動吸収部材114が設けられ、制振プレート105の下面と下部プレート106の上面との間には少なくとも1つの振動吸収部材114が設けられている。上部プレート107及び下部プレート106は、固定部材111に固定され、転積装置101は、固定部材111をプレス装置201の一面である固定面212に当接するようにして固定ボルト112によってプレス装置201に固定される。なお、制振プレート105は、固定部材111に固定されていない。プレス装置201が、上金型202の外形打ち抜きパンチと下金型205の外形打ち抜きダイとによって、圧延鋼板209を打ち抜く際、上下方向に振動が発生する。この振動が、固定面212、固定部材111、上部プレート107、下部プレート106を介してモータ102に伝達されて、モータ102のロータ116に固定された出力軸104、駆動プーリ103の回転精度を低下させ、更には、伝達部材211を介して従動プーリ208、スクイズリング206の回転精度を低下させ、圧延鋼板209を高精度に積層させることができない。また、この振動が、モータ102を破損させたり、故障させたりする場合もある。そこで、この振動を吸収するために、振動吸収部材114が、制振プレート105の上面と上部プレート107の下面との間に固定され、及び/又は、制振プレート105の下面と下部プレート106の上面との間に固定されている。振動吸収部材114によって、プレス装置201からのモータ102への振動は抑制されるので、出力軸104、駆動プーリ103、従動プーリ208、スクイズリング206の回転精度を維持することができ、圧延鋼板209を高精度に積層することができ、更には、モータ102の破損や故障を防止することができる。なお、振動吸収部材114は、ゴム、ウレタン、又は制振合金より形成された制振部材であってもよいが、これに限られず、振動を吸収することができる、防振ゴム、防振パッド、空気ばね、等の弾性体その他の防振部材であってもよい。
【0029】
転積装置101は、上部プレート107と下部プレート106とを連結するための連結部材108を備えていてもよい。連結部材108によって、上部プレート107と下部プレート106との間の距離が画定されて、上部プレート107と下部プレート106との間に挟まれている振動吸収部材114が圧縮され、上部プレート107に設けられた振動吸収部材114と下部プレート106に設けられた振動吸収部材114との弾性率が合成され、その結果、全体の弾性率が増加する。
図5に示すように上面から見た転積装置101は略正方形であるが、略正方形の各辺に板状の連結部材108が備えられていてもよいし、平行する2辺のみに連結部材108が備えられていてもよい。なお、連結部材108は、上部プレート107と下部プレート106との間の距離を画定できる形状であればよく、形状は板状に限られない。
【0030】
転積装置101は、プレス装置201の固定面212に対して垂直になるように制振プレート105と上部プレート107及び/又は下部プレート106とに固定された張力吸収プレート(ダイアフラム)109を備える。モータ102の出力軸104の回転を、伝達部材211を介してスクイズリング206に伝達しているが、伝達部材211によってモータ102の出力軸104がプレス装置101の方に引っ張られて、出力軸104の回転軸線方向は、引っ張られなければ鉛直方向であるところ、引っ張られることによって鉛直方向からプレス装置101に傾斜し、出力軸104の姿勢を維持することができない。特に、高速でスクイズリング206を回転させる場合には、出力軸104とスクイズリング206とを連結している伝達部材211のテンションを高める必要があるが、その高いテンションによって更に出力軸104がプレス装置101の方に引っ張られて、出力軸104の姿勢を維持することができず、スクイズリング206の回転角度精度が低下する。そこで、張力吸収プレート109が伝達部材211のテンションを吸収して緩和することによって、出力軸104はプレス装置101の方に引っ張られず、出力軸104の姿勢を維持することができる。張力吸収プレート109は、制振プレート105と上部プレート107及び/又は下部プレート106とに対して垂直になるように、すなわち出力軸102の回転軸線方向に垂直である面に対して垂直になるように制振プレート105と上部プレート107及び/又は下部プレート106とに固定されてもよい。
【0031】
図5に示すように上面から見た転積装置101は略正方形であるが、張力吸収プレート109は、プレス装置201の固定面212に当接する固定部材111に対して垂直になるように、制振プレート105、上部プレート107、及び下部プレート106に固定されている。張力吸収プレート109は、連結部材108に隣り合って設けられているが、連結部材108には固定さていない。また、転積装置101には、プレス装置201の固定面212に当接する固定部材111に対して垂直になるように、複数の張力吸収プレート109が設けられていてもよい。
図5及び
図6に示すように、一つの張力吸収プレート109は、転積装置101のプレス装置201の固定面212に対して垂直な一つの面に設けてられている一方で、他の張力吸収プレート109は、モータ102の出力軸104を基準にして反対側にある、転積装置101のプレス装置201の固定面212に対して垂直な他の面に設けてられている。このように、出力軸104を基準にして両方に2つの張力吸収プレート109を設けることによって、偏りなく伝達部材211のテンションを吸収して緩和することができる。更に、この2つの張力吸収プレート109は、制振プレート105、上部プレート107、及び下部プレート106に対して垂直になるように、すなわち出力軸104の回転軸線方向に垂直である面に対して垂直になるように制振プレート105、上部プレート107、及び下部プレート106に固定されてもよい。
【0032】
図3~
図6のおいては、張力吸収プレート109は、制振プレート105、上部プレート107、及び下部プレート106のそれぞれの端面に設けられているが、これに限られず、プレス装置201の固定面212に対して垂直であれば、制振プレート105、上部プレート107、及び下部プレート106のそれぞれの端面より内側に設けられていてもよい。また、
図5においては、上面から見た転積装置101は略正方形であるが、これに限られず、その他の形状であってもよい。
【0033】
張力吸収プレート109は、伝達部材211のテンションによって変形されない材料であって、且つ、制振性のある材料より形成され、引張り強度が高い材料より形成されることが好ましい。張力吸収プレート109は、金属又は制振合金より形成されていてもよい。金属としては、例えばステンレス鋼等があり、制振合金としては、例えばマグネシウム系合金、マグネシウム-ジルコニウム系合金、マンガン-銅系合金、鉄-クロム-アルミニウム系合金、等がある。
【0034】
張力吸収プレート109を金属より形成する場合、板厚を厚くするとプレス装置201からの振動が伝達されやすくなるために、板厚は薄い方が好ましい。例えば、張力吸収プレート109をばね用ステンレス鋼(例えば、SUS301-CSP、SUS304-CSP、等)より形成する場合には、板厚は、1.5mm以下が好ましく、更には1mm以下が好ましい。なお、板厚を薄くし過ぎると変形しやすくなるため、0.5mm以上が好ましい。なお、張力吸収プレート109を制振合金より形成すれば、その材質によりプレス装置201からの振動は伝達されにくくなるために、板厚の影響は小さくなる。
【0035】
また、転積装置101は、クランプ122によって転積装置101にクランプ締めされた回転角度センサ115を備えて、ロータ116の回転角度を検出できてもよい。回転角度センサ115としては、例えば磁気式のレゾルバ、光学式のエンコーダがある。転積装置101は、回転角度センサ115によって検出されたロータ116の回転角度に関する信号を受信する制御装置を備えていてもよい。制御装置は、検出されたロータ116の回転角度が所定の回転角度に対応しているかを判定して、伝達部材211を介して回転するスクイズリング206の回転角度を高精度に割出すことができる。
【0036】
なお、モータ102を冷却するために、モータ102は、ハウジング119の外周に複数の冷却口110を備えていてもよい。1つの冷却口110から導入された気体又は液体は、ステータ117とハウジング119との間を流れて、他の冷却口110から排出される。また、ステータ117には溝118が設けられていてもよい。溝118によって、気体又は液体がステータ117に接触する面積が増加するために、冷却効率を向上させることができ、モータ102の回転動作を高速化させることができる。
【0037】
上記記載は特定の実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理と添付の特許請求の範囲の範囲内で種々の変更及び修正をすることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0038】
101 転積装置
102 モータ
103 駆動プーリ
104 出力軸
105 制振プレート
106 下部プレート
107 上部プレート
108 連結部材
109 張力吸収プレート
110 冷却口
111 固定板材
112 固定ボルト
113 ステー
114 振動吸収部材
115 回転角度センサ
116 ロータ
117 ステータ
118 溝
119 ハウジング
120 上部軸受
121 下部軸受
122 クランプ
201 プレス装置
202 上金型
203 スライド部材
204 ガイド部材
205 下金型
206 スクイズリング
207 保持ホール
208 従動プーリ
209 圧延鋼板
210 積層体
211 伝達部材
212 固定面