(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】ローリング補正機能付き光学ユニットおよび3軸振れ補正機能付き光学ユニット
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20220328BHJP
G03B 17/55 20210101ALI20220328BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220328BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B17/55
H04N5/232 480
H04N5/225 430
H04N5/225 300
H04N5/225 400
(21)【出願番号】P 2017136036
(22)【出願日】2017-07-12
【審査請求日】2020-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】南澤 伸司
(72)【発明者】
【氏名】五明 正人
(72)【発明者】
【氏名】須江 猛
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-138928(JP,A)
【文献】特開2012-156581(JP,A)
【文献】国際公開第2017/072996(WO,A1)
【文献】特開2009-188720(JP,A)
【文献】国際公開第2012/137267(WO,A1)
【文献】特開2015-082072(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045791(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00 - 5/06
G03B 17/55
H04N 5/232
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子と、
前記光学素子の反被写体側に配置された撮像素子と、
前記撮像素子が搭載された基板、および、前記基板の反被写体側に配置されて前記基板からの熱が伝達される放熱部材が固定された回転部材と、
前記回転部材の前記反被写体側に配置された固定部材と、
前記放熱部材を介して前記回転部材に固定された回転軸、および、前記固定部材に設けられた軸受部を備える回転支持機構と、
前記回転部材を前記光学素子の光軸回りに回転させるローリング用磁気駆動機構と、を有し、
前記撮像素子および前記放熱部材は、少なくとも一部が、前記
光学素子の光軸方向から見て同一位置で前記回転軸と重なっており、
前記基板は、前記放熱部材と熱伝導層を介して接触しており、
前記回転軸は、前記放熱部材に固定される固定部と、前記固定部から前記反被写体側に延びる軸部と、を備え、
前記固定部は、前記放熱部材の貫通穴または凹部に挿入される凸部と、前記凸部の外周側で前記放熱部材に前記反被写体側から当接する当接部と、を備えることを特徴とするローリング補正機能付き光学ユニット。
【請求項2】
前記当接部は、前記軸部より大径のフランジ部であることを特徴とする請求項1に記載のローリング補正機能付き光学ユニット。
【請求項3】
光学素子と、
前記光学素子の反被写体側に配置された撮像素子と、
前記撮像素子が搭載された基板、および、前記基板の反被写体側に配置されて前記基板からの熱が伝達される放熱部材が固定された回転部材と、
前記回転部材の前記反被写体側に配置された固定部材と、
前記放熱部材を介して前記回転部材に固定された回転軸、および、前記固定部材に設けられた軸受部を備える回転支持機構と、
前記回転部材を前記光学素子の光軸回りに回転させるローリング用磁気駆動機構と、を有し、
前記撮像素子および前記放熱部材は、少なくとも一部が、前記
光学素子の光軸方向から見て同一位置で前記回転軸と重なっており、
前記基板は、前記放熱部材と熱伝導層を介して接触しており、
前記回転軸は、前記放熱部材に前記被写体側から当接する当接部と、前記放熱部材の貫通穴を通って前記放熱部材の前記反被写体側に延びる軸部と、を備えることを特徴とするローリング補正機能付き光学ユニット。
【請求項4】
前記回転軸および前記回転部材の少なくとも一方は、フィラー入りの樹脂部材であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のローリング補正機能付き光学ユニット。
【請求項5】
前記放熱部材の外周端部は、前記回転部材および前記基板から露出する露出部を備えることを特徴とする請求項1から
4の何れか一項に記載のローリング補正機能付き光学ユニット。
【請求項6】
前記基板は多角形であり、
前記放熱部材は、前記基板の各辺に沿う複数の辺を備えており、
前記露出部は、前記放熱部材の全ての辺に設けられていることを特徴とする請求項5に記載のローリング補正機能付き光学ユニット。
【請求項7】
前記放熱部材は、前記光軸方向から見て前記撮像素子より大きいことを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載のローリング補正機能付き光学ユニット。
【請求項8】
前記放熱部材は、前記基板と平行に延在する放熱部材本体部と、前記放熱部材本体部の外周縁から前記反被写体側に延びる突出部を備えることを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載のローリング補正機能付き光学ユニット。
【請求項9】
前記ローリング用磁気駆動機構は、前記回転軸の外周側で前記回転部材と前記固定部材の一方に固定されるコイルと、他方に固定されて前記コイルと前記光軸方向で対向する磁石を備えることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載のローリング補正機能付き光学ユニット。
【請求項10】
請求項1から9の何れか一項に記載のローリング補正機能付き光学ユニットと、
前記ローリング補正機能付き光学ユニットの前記光軸と交差する軸回りの振れを補正する振れ補正機構とを有することを特徴とする3軸振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項11】
前記振れ補正機構は、前記ローリング補正機能付き光学ユニットを前記光軸と交差する第1軸線回りおよび第2軸線回りに揺動させる揺動用磁気駆動機構であり、
前記ローリング補正機能付き光学ユニットは、前記第1軸線と前記第2軸線の間の角度位置に配置される揺動支持部と、前記揺動支持部によって支持される可動枠と、を備えるジンバル機構によって支持されることを特徴とする請求項10に記載の3軸振れ補正機能付き光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光軸回りの振れを補正する振れ補正機能付き光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末や移動体に搭載される光学ユニットには、携帯端末や移動体の移動時の撮影画像の乱れを抑制するために、光学モジュールを揺動あるいは回転させて振れを補正する機構を備えるものがある。この種の光学ユニットは、ピッチング(縦揺れ/チルティング)およびヨーイング(横揺れ/パンニング)の2方向の傾きに対応して、光学モジュールをピッチング方向およびヨーイング方向に揺動させる揺動機構を備える。また、光軸回りの振れに対応して、光学モジュールを光軸回りに回転させるローリング補正機構を備える。
【0003】
撮像素子を備える光学ユニットでは、撮像素子の発熱を放熱する放熱構造を設けることが提案されている。特許文献1には、CCDと支持板との間に放熱性セラミックを挟んだ構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
撮像素子を搭載した光学ユニットにおいて、撮像素子の高画素化により、撮像素子からの発熱量が増大するという問題がある。このため、撮像素子で発生した熱を効率良く放熱することが可能な構成が求められている。
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、光軸回りの振れを補正する光学ユニットにおいて、撮像素子で発生した熱を効率的に放熱することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明のローリング補正機能付き光学ユニットは、光学素子と、前記光学素子の反被写体側に配置された撮像素子と、前記撮像素子が搭載された
基板、および、前記基板の反被写体側に配置されて前記基板からの熱が伝達される放熱部材が固定された回転部材と、前記回転部材の前記反被写体側に配置された固定部材と、前記放熱部材を介して前記回転部材に固定された回転軸、および、前記固定部材に設けられた軸受部を備える回転支持機構と、前記回転部材を前記光学素子の光軸回りに回転させるローリング用磁気駆動機構と、を有し、前記撮像素子および前記放熱部材は、少なくとも一部が、前記光学素子の光軸方向から見て同一位置で前記回転軸と重なっており、前記基板は、前記放熱部材と熱伝導層を介して接触しており、前記回転軸は、前記放熱部材に固定される固定部と、前記固定部から前記反被写体側に延びる軸部と、を備え、前記固定部は、前記放熱部材の貫通穴または凹部に挿入される凸部と、前記凸部の外周側で前記放熱部材に前記反被写体側から当接する当接部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ローリング補正を行うために回転支持機構によって回転可能に支持された回転部材に、撮像素子が搭載された基板および基板からの熱が伝達される放熱部材が固定されている。また、回転支持機構の回転軸は、放熱部材を介して回転部材に固定されている。従って、撮像素子の発熱を基板から放熱部材へ伝達し、放熱部材から回転軸へ伝達して回転軸から放熱することができる。また、撮像素子および放熱部材は、光軸方向から見て同一位置で回転軸と重なっている。従って、撮像素子で発生した熱を基板および放熱部材を経由して最短経路で回転軸へ伝達することができるため、撮像素子で発生した熱を効率良く放熱することができる。
【0009】
本発明によれば、前記基板は、前記放熱部材と熱伝導層を介して接触する。従って、熱伝導層により基板から放熱部材へ効率良く放熱できる。従って、撮像素子の発熱を効率良く放熱できる。
【0010】
本発明によれば、前記回転軸は、前記放熱部材に固定される固定部と、前記固定部から前記反被写体側に延びる軸部と、を備え、前記固定部は、前記放熱部材の貫通穴または凹部に挿入される凸部と、前記凸部の外周側で前記放熱部材に前記反被写体側から当接する当接部と、を備える。従って、回転軸と放熱部材とが光軸方向に接触する部位を設けることができるので、放熱量を大きくすることができる。また、前記当接部は、前記軸部より大径のフランジ部であることが望ましい。このようにすると、接触面積を大きくすることができるため、放熱量を大きくすることができる。
【0011】
あるいは、上記の課題を解決するために、本発明のローリング補正機能付き光学ユニットは、光学素子と、前記光学素子の反被写体側に配置された撮像素子と、前記撮像素子が搭載された基板、および、前記基板の反被写体側に配置されて前記基板からの熱が伝達される放熱部材が固定された回転部材と、前記回転部材の前記反被写体側に配置された固定部材と、前記放熱部材を介して前記回転部材に固定された回転軸、および、前記固定部材に設けられた軸受部を備える回転支持機構と、前記回転部材を前記光学素子の光軸回りに回転させるローリング用磁気駆動機構と、を有し、前記撮像素子および前記放熱部材は、少なくとも一部が、前記光学素子の光軸方向から見て同一位置で前記回転軸と重なっており、前記基板は、前記放熱部材と熱伝導層を介して接触しており、前記回転軸は、前記放熱部材に前記被写体側から当接する当接部と、前記放熱部材の貫通穴を通って前記放熱部材の前記反被写体側に延びる軸部と、を備えることを特徴とする。このような形態でも、回転軸と放熱部材との接触面積を大きくすることができるため、放熱量を大きくすることができる。
【0012】
本発明において、前記回転軸および前記回転部材の少なくとも一方は、フィラー入りの樹脂部材であることが望ましい。このようにすると、回転軸および回転部材の少なくとも一方の熱伝導率を大きくすることができる。従って、放熱量を大きくすることができる。また、回転部材および回転軸の少なくとも一方の強度を上げることができる。
【0013】
本発明において前記放熱部材の外周端部は、前記回転部材および前記基板から露出する露出部を備えることが望ましい。このようにすると、放熱部材の外周端部から放熱できるため、撮像素子の発熱を効率良く放熱できる。
【0014】
本発明において、前記基板は多角形であり、前記放熱部材は、前記基板の各辺に沿う複数の辺を備えており、前記露出部は、前記放熱部材の全ての辺に設けられていることが望ましい。このようにすると、放熱部材の全ての辺から放熱できるので、全ての辺から均等に放熱させることができる。
【0015】
本発明において、前記放熱部材は、前記光軸方向から見て前記撮像素子より大きいことが望ましい。このようにすると、放熱部材を撮像素子の発熱箇所と容易に重ねることができる。従って、容易に放熱することができる。
【0016】
本発明において、前記放熱部材は、前記基板と平行な放熱部材本体部と、前記放熱部材本体部の外周縁から前記反被写体側に延びる突出部を備えることが望ましい。このようにすると、突出部から放熱できる。また、突出部をフレキシブルプリント基板の固定部として兼用することができるため、放熱量の増大およびフレキシブルプリント基板の固定構造の簡素化を図ることができる。
【0017】
本発明において、前記ローリング用磁気駆動機構は、前記回転軸の外周側で前記回転部材と前記固定部材の一方に固定されるコイルと、他方に固定されて前記コイルと前記光軸方向で対向する磁石を備える。このようにすると、回転軸の外周側で、回転部材と固定部材の間にローリング用磁気駆動機構を構成できる。従って、ローリング用磁気駆動機構の省スペース化を図ることができる。
【0018】
次に、本発明の3軸振れ補正機能付き光学ユニットは、上記のローリング補正機能付き光学ユニットと、前記ローリング補正機能付き光学ユニットの前記光軸と交差する軸回り
の振れを補正する振れ補正機構とを有する。このようにすると、3軸振れ補正機能付き光学ユニットにおいて、撮像素子で発生する熱を効率的に放熱できる。
【0019】
この場合に、前記振れ補正機構は、前記ローリング補正機能付き光学ユニットを前記光軸と交差する第1軸線回りおよび第2軸線回りに揺動させる揺動用磁気駆動機構であり、前記ローリング補正機能付き光学ユニットは、前記第1軸線と前記第2軸線の間の角度位置に配置される揺動支持部と、前記揺動支持部によって支持される可動枠と、を備えるジンバル機構によって支持されることが望ましい。このようにすると、揺動用磁気駆動機構が配置される角度位置の間のスペースを利用してジンバル機構の揺動支持部を配置できる。従って、3軸振れ補正機能付き光学ユニットを小型化できる。また、ジンバル機構の一部を構成するローリング補正機能付き光学ユニットの部材に、ローリング補正のための回転支持機構が直接固定されているため、光軸と交差する2軸(第1軸線および第2軸線)の交点と、ローリング補正の回転軸とを一致させ易い。また、ローリング補正機能付き光学ユニットは、ローリング補正の回転軸と撮像素子の中心とを一致させ易い構造である。従って、回転軸と撮像素子の中心とのずれに起因するによる像の欠けを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ローリング補正を行うために回転支持機構によって回転可能に支持された回転部材に、撮像素子が搭載された基板および基板からの熱が伝達される放熱部材が固定されている。また、回転支持機構の回転軸は、放熱部材を介して回転部材に固定されている。従って、撮像素子の発熱を基板から放熱部材へ伝達し、放熱部材から回転軸へ伝達して回転軸から放熱することができる。また、撮像素子および放熱部材は、光軸方向から見て同一位置で回転軸と重なっている。従って、撮像素子で発生した熱を基板および放熱部材を経由して最短経路で回転軸へ伝達することができるため、撮像素子で発生した熱を効率良く放熱することができる。また、熱伝導層により基板から放熱部材へ効率良く放熱できるため、撮像素子の発熱を効率良く放熱できる。さらに、回転軸と放熱部材との接触面積を大きくすることができるため、放熱量を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明を適用した3軸振れ補正機能付き光学ユニットの外観斜視図である。
【
図2】
図1の3軸振れ補正機能付き光学ユニットの分解斜視図である。
【
図3】
図1の3軸振れ補正機能付き光学ユニットの断面図(A-A断面図)である。
【
図4】
図1の3軸振れ補正機能付き光学ユニットの断面図(B-B断面図)である。
【
図5】ローリング補正機能付き光学ユニットを被写体側および反被写体側から見た斜視図である。
【
図6】ローリング補正機能付き光学ユニットを被写体側から見た分解斜視図である。
【
図7】ローリング補正機能付き光学ユニットを反被写体側から見た分解斜視図である。
【
図8】撮像素子、基板、放熱部材、回転台座、および回転軸の断面斜視図および回転軸の固定構造の変形例を示す説明図である。
【
図9】撮像素子、基板、放熱部材、回転台座、および回転軸を被写体側から見た平面図である。
【
図10】ローリング用磁気駆動機構および回転支持機構の平面図および断面図である。
【
図11】変形例の放熱部材を備えたローリング補正機能付き光学ユニットを組み込んだ3軸振れ補正機能付き光学ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したローリング補正機能付き光学ユニット1およびローリング補正機能付き光学ユニット1を備えた3軸振れ補正機能付き光学ユニット100の実施形態を説明する。本明細書において、符号Lはローリング補正機能付き光学ユニット1の光軸であり、L1方向は光軸L方向の被写体側であり、L2方向は光軸L方
向の反被写体側である。
【0023】
(3軸振れ補正機能付き光学ユニット)
図1は本発明を適用した3軸振れ補正機能付き光学ユニット100の外観斜視図であり、
図2は
図1の3軸振れ補正機能付き光学ユニット100の分解斜視図である。また、
図3、
図4は
図1の3軸振れ補正機能付き光学ユニット100の断面図であり、
図3は
図1のA-A断面図、
図4は
図1のB-B断面図である。
図1、
図2に示すXYZの3方向は互いに直交する方向であり、X方向の一方側を+X、他方側を-Xで示し、Y方向の一方側を+Y、他方側を-Yで示し、Z方向の一方側を+Z、他方側を-Zで示す。Z方向は、ローリング補正機能付き光学ユニット1が基準姿勢のとき、ローリング補正機能付き光学ユニット1の光軸L方向と一致する。また、このとき、被写体側L1は+Z方向と一致し、反被写体側L2は-Z方向と一致する。
【0024】
3軸振れ補正機能付き光学ユニット100は、光軸L回りの振れを補正するローリング補正機能付き光学ユニット1を、光軸Lと直交する軸回りの振れを補正する振れ補正機構を備えたユニットに組み込んで、ピッチング(縦揺れ)方向およびヨーイング(横揺れ)方向の振れ補正を行うように構成したものである。はじめに、ローリング補正機能付き光学ユニット1全体を光軸Lと直交する軸回りに揺動可能に支持する揺動支持機構、および、ピッチング(縦揺れ)方向およびヨーイング(横揺れ)方向の振れ補正を行うための揺動用駆動機構について説明する。
【0025】
3軸振れ補正機能付き光学ユニット100は、ローリング補正機能付き光学ユニット1と、ローリング補正機能付き光学ユニット1を保持するホルダ300と、3軸振れ補正機能付き光学ユニット100が搭載される光学機器本体に固定される支持体400と、支持体400に対してローリング補正機能付き光学ユニット1およびホルダ300を揺動可能に支持するジンバル機構500と、支持体400に対してローリング補正機能付き光学ユニット1を揺動させる揺動用磁気駆動機構600と、ローリング補正機能付き光学ユニット1を基準姿勢に復帰させるための磁気バネを構成する磁性部材700を備える。
【0026】
図2に示すように、ローリング補正機能付き光学ユニット1は、円筒状のホルダ筒部11を備えるレンズホルダ10と、レンズホルダ10の反被写体側L2(-Z方向)の端部に固定される固定部材20と、ホルダ筒部11の内周側に保持されるレンズユニット2(
図3、
図4参照)を備えており、レンズユニット2の被写体側L1の先端に、カバーガラス6を備えたキャップ5が取り付けられている。また、ホルダ筒部11の外周側には、可動体であるローリング補正機能付き光学ユニット1の重心位置を調整するためのウェイト19が固定されている。
【0027】
図2に示すように、ホルダ300は、ローリング補正機能付き光学ユニット1のホルダ筒部11が保持される円形の保持孔311が形成されたホルダ本体部310と、保持孔311に保持されるホルダ筒部11のX方向の両側に設けられた一対の壁部301、302と、ホルダ筒部11のY方向の両側に設けられた一対の壁部303、304を備える。ホルダ300は、ジンバル機構500により、光軸L方向(Z方向)と直交する第1軸線R1回りに揺動可能に支持されているとともに、光軸L方向および第1軸線R1と直交する第2軸線R2回りに揺動可能に支持されている。第1軸線R1および第2軸線R2は、X方向およびY方向に対して45度傾いている。ローリング補正機能付き光学ユニット1はホルダ300に固定されているため、ホルダ300と一体になって揺動する。
【0028】
図1、
図2に示すように、支持体400は、光軸L方向から見て略8角形の外形をした筒状ケース410と、筒状ケース410に対して被写体側L1から組み付けられる被写体側ケース420と、筒状ケース410に対して反被写体側L2から組み付けられる反被写
体側ケース430を備える。被写体側ケース420の中央には、ローリング補正機能付き光学ユニット1の被写体側L1の先端部が配置される円形の開口部421が形成されている。また、被写体側ケース420には、開口部421を挟んで反対側の2箇所に、後述するジンバル機構500の第2揺動支持部502が形成されている。筒状ケース410には、-X方向の側面を反被写体側L2から切り欠いた切り欠き411が形成されている。
【0029】
ジンバル機構500は、ホルダ300と支持体400との間に構成されている。ジンバル機構500は、ホルダ本体部310の第1軸線R1上の対角位置に設けられた第1揺動支持部501と、支持体400の被写体側ケース420における第2軸線R2上の対角位置に設けられた第2揺動支持部502と、第1揺動支持部501および第2揺動支持部502によって支持される可動枠503を備える。可動枠503は、光軸回りの4か所に設けられた支点部を備えており、各支点部の外側面には溶接等によって金属製の球体(図示省略)が固定されている。この球体は、ホルダ300に設けられた第1揺動支持部501、および、支持体400に設けられた第2揺動支持部502に保持される接点ばね505と点接触する。従って、可動枠503は、光軸L方向と直交する2方向(第1軸線R1方向および第2軸線R2方向)の各方向回りに回転可能な状態で支持される。
【0030】
揺動用磁気駆動機構600は、ホルダ300と支持体400の間に設けられた4組の磁気駆動機構601を備える。各磁気駆動機構601は、磁石602とコイル603を備える。コイル603はホルダ300の壁部301~304の外側面に保持される。磁石602は、支持体400の筒状ケース410のX方向の両側の内側面、および、Y方向の両側の内側面に保持される。揺動用磁気駆動機構600は、ローリング補正機能付き光学ユニット1のレンズホルダ10のホルダ筒部11の外周側のスペースを利用して配置される。
【0031】
ホルダ300と支持体400との間では、+X方向側、-X方向側、+Y方向側、-Y方向側のいずれにおいても、磁石602とコイル603とが対向する磁気駆動機構601が構成される。ホルダ300の+Y方向側および-Y方向側に位置する2組の磁気駆動機構601は、コイル603への通電時にX軸回りの同一方向の磁気駆動力を発生させる。また、ホルダ300の+X方向側および-X方向側に位置する2組の磁気駆動機構601は、コイル603への通電時にY軸回りの同一方向の磁気駆動力を発生させる。揺動用磁気駆動機構600は、X軸回りの回転、および、Y軸回りの回転を合成することにより、ローリング補正機能付き光学ユニット1およびホルダ300を第1軸線R1回りおよび第2軸線R2回りに回転させる。X軸回りの振れ補正、およびY軸回りの振れ補正を行う場合は、第1軸線R1回りの回転および第2軸線R2回りの回転を合成する。
【0032】
磁性部材700は、壁部301~304の内側面に固定され、コイル603を挟んで磁石602と径方向で対向する。磁性部材700と磁石602は、可動体であるローリング補正機能付き光学ユニット1およびホルダ300を基準姿勢に復帰させるための磁気バネを構成する。
【0033】
(ローリング補正機能付き光学ユニット)
図5は、ローリング補正機能付き光学ユニット1を被写体側L1および反被写体側L2から見た斜視図である。
図3、
図4に示すように、ローリング補正機能付き光学ユニット1は、光学素子であるレンズ3を鏡筒4に組み付けたレンズユニット2と、レンズユニット2を保持するレンズホルダ10と、レンズユニット2の被写体側L1の端部に取り付けられるキャップ5と、レンズホルダ10の反被写体側L2の端部に固定される固定部材20を備える。レンズホルダ10は、固定部材20との間に弾性部材18を挟み込んだ状態で、ねじ部材17によって固定部材20にねじ止めされる。
【0034】
(レンズホルダおよび固定部材)
図2~5に示すように、レンズホルダ10は、円筒状のホルダ筒部11と、ホルダ筒部11の反被写体側L2の端部から径方向外側に拡がる段部12と、段部12の外周縁から反被写体側L2に筒状に延びる側板部13を備える。
図3、
図4に示すように、レンズユニット2の鏡筒4は、ホルダ筒部11の内周側に保持される。この状態で、レンズユニット2の光軸Lは、レンズホルダ10のホルダ筒部11の中心軸線と一致する。段部12は、光軸L方向から見た場合の形状が、正方形の4箇所の角部が切り欠かれた形状である。側板部13には、一方の側面およびその両側の角部に設けられた面取り面の反被写体側L2の縁を所定の高さで切り欠いた切り欠き部14が形成されている。また、側板部13には、切り欠き部14が形成された側面を除く他の3方向の側面にそれぞれ1箇所ずつボス部15が形成されている。
【0035】
固定部材20は全体として板状であり、光軸L方向に対して垂直に配置される。固定部材20は、側板部13を光軸L方向から見た形状の一方側(切り欠き部14側)の縁を直線上に切り欠いた形状である。従って、側板部13の反被写体側L2の端部に固定部材20が固定されると、切り欠き部14と固定部材20との間に光軸L方向の反被写体側L2および光軸L方向と直交する方向に開口する開口部7が形成される。この開口部7から、後述するフレキシブルプリント基板8、9がローリング補正機能付き光学ユニット1の外部へ取り出される。
【0036】
固定部材20の外周縁と、レンズホルダ10の側板部13との間には、切り欠き部14が形成された範囲を除き、弾性部材18が挟まれている。従って、開口部7が形成された範囲を除き、弾性部材18によってレンズホルダ10と固定部材20との隙間がシールされる。固定部材20には、側板部13に形成されたボス部15と光軸L方向に対向する3箇所に径方向外側に突出する突出部21が形成されている。固定部材20をレンズホルダ10に固定するねじ部材17は、突出部21に形成されたねじ穴に通されてボス部15にねじ止めされる。ねじ部材17による固定箇所は、弾性部材18が挟まれた位置より径方向外側である。3箇所のねじ部材17のねじ締め状態を調節することにより、レンズホルダ10に保持されるレンズユニット2の光軸Lの傾きが調節される。従って、撮像素子40に対するレンズユニット2の傾角調整を行うことができる。
【0037】
(ローリング補正機能付き光学ユニットの内部構造)
図3、
図4に示すように、レンズユニット2の反被写体側L2には、撮像素子40が搭載された基板41と、撮像素子40を被写体側L1から覆うように被せられたカバー部材30と、基板41の反被写体側L2に配置される板状の放熱部材90と、放熱部材90および基板41が固定される回転台座50と、回転台座50を光軸L周りに回転可能に支持する回転支持機構60と、回転台座50を光軸L周りに回転させるローリング用磁気駆動機構70が設けられている。
【0038】
(カバー部材)
図6、
図7は、ローリング補正機能付き光学ユニット1の分解斜視図であり、
図6は被写体側から見た分解斜視図であり、
図7は反被写体側から見た分解斜視図である。
図6、
図7に示すように、カバー部材30は、撮像素子40を被写体側L1から覆う略矩形の端板部31と、端板部31の外周縁から反被写体側L2側へ突出する側板部32と、端板部31の外周縁より径方向内側から被写体側L1に立ち上がる円筒状の筒部34を備える。筒部34の内周側で、且つ、端板部31の中央には、撮像素子40への光入射領域を規定するアパーチャ35が形成されている。レンズユニット2からの光は、アパーチャ35を通過して撮像素子40へ入射する。アパーチャ35の位置および形状は、撮像素子40に応じて決定される。本形態では、光軸L方向から見た撮像素子40の形状が矩形であるため、アパーチャ35は矩形である。
【0039】
図3、
図4に示すように、カバー部材30の端板部31は、基板41の外周縁に対して被写体側L1から当接する。これにより、撮像素子40は、アパーチャ35を除いて外側から覆われた状態となる。アパーチャ35を囲んで被写体側L1に立ち上がる筒部34の外周面は、ホルダ筒部11の内周面と所定の隙間を隔てて径方向に対向する。また、カバー部材30の端板部31は、筒部34の外周側において、レンズホルダ10の段部12と所定の隙間を隔てて光軸L方向に対向する。つまり、レンズホルダ10とカバー部材30との間には、屈曲した狭い隙間が形成され、ラビリンス構造が形成されている。
【0040】
(回転台座への基板、放熱部材、回転軸の固定構造)
図6に示すように、回転台座50は、被写体側L1を向く放熱部材固定面51と、放熱部材固定面51の外周縁の3個所から被写体側L1へ突出する基板固定部52を備える。また、回転台座50には、放熱部材固定面51の中央を貫通する円形孔53が形成されている。放熱部材固定面51は、光軸Lに対して垂直な面である。回転台座50には、放熱部材90および基板41が固定される。本形態では、放熱部材固定面51に放熱部材90が固定され、3箇所の基板固定部52に基板41が固定される。基板固定部52に基板41を固定すると、基板41は、放熱部材90に貼り付けられた熱伝導性シート99と接触する(
図3、
図4、
図8参照)。
【0041】
図8(a)は、撮像素子40、基板41、放熱部材90、回転台座50、および回転軸59の断面斜視図である。本形態では、放熱部材90に回転支持機構60の回転軸59が固定され、放熱部材90を介して、回転軸59が回転台座50に固定されている。
図8(a)に示すように、回転軸59は、放熱部材90に固定される固定部591と、固定部591から反被写体側L2に突出する軸部592を備える。固定部591は、軸部592より大径のフランジ部593と、フランジ部593の中央から被写体側L1に突出する凸部594を備える。放熱部材90の中央には円形の貫通穴である回転軸固定孔91が形成されている。回転軸59の凸部594は回転軸固定孔91に挿入され、フランジ部593は、回転軸固定孔91の外周側において放熱部材90に反被写体側L2から当接する。つまり、フランジ部593は、放熱部材90に反被写体側L2から当接して放熱部材90との接触面積を確保するための当接部として機能する。また、凸部594は、回転軸固定孔91に固定される。本形態では、回転軸固定孔91から被写体側L1に突出した凸部594をカシメることにより、回転軸59が放熱部材90に固定されている。なお、凸部594は、カシメでなく圧入により固定してもよい。また、フランジ部593を放熱部材90に固定することもできる。あるいは、回転軸59および放熱部材90を金属製とする場合には、レーザー溶接により回転軸59を固定することもできる。カシメ以外の方法により回転軸59を固定する場合、回転軸固定孔91は貫通穴でなく凹部であってもよい。
【0042】
回転台座50の円形孔53は、フランジ部593より大径である。従って、放熱部材90を回転台座50に固定する際、フランジ部593は円形孔53に配置され、放熱部材90は回転台座50の放熱部材固定面51に当接して固定される。回転軸59の軸部592は、回転台座50の円形孔53から反被写体側L2に突出する。
図3、
図4に示すように、回転軸59の軸部592は、回転台座50の反被写体側L2において、固定部材20に設けられた軸受部61に回転可能に保持される。回転軸59の先端は、軸受部61から反被写体側L2に突出している。従って、回転軸59の先端は、固定部材20の反被写体側L2で露出しているので、回転軸59から効率的に放熱することができる。また、軸受部61を介して固定部材20に熱を伝導することで放熱することができる。
【0043】
図8(b)、
図8(c)は回転軸59の固定構造の変形例を示す説明図である。
図8(b)に示す回転軸59Aは、軸部592Aよりも小径の凸部594Aを備え、凸部594Aの外周側に被写体側L1を向く段部595Aが形成されている。この形態では、段部595Aが放熱部材90に反被写体側L2から当接する当接部となり、カシメ、圧入、レー
ザー溶接などの方法により回転軸59Aを放熱部材90に固定することができる。また、
図8(c)に示す回転軸59Bは、被写体側L1の端部に形成されたフランジ部593Bが放熱部材90に被写体側から当接する当接部となり、軸部592Bは回転軸固定孔91を通って反被写体側L2に突出する。
図8(c)の形態では、フランジ部593Bをレーザー溶接により放熱部材90に固定するか、あるいは、軸部592Bを回転軸固定孔91に圧入して固定することができる。
【0044】
図6、
図7に示すように、回転台座50において、レンズホルダ10の切り欠き部14が設けられた角度位置には、外周側に矩形状に張り出す突出部58が形成されている。放熱部材固定面51の外形は、突出部58が形成された角度位置を除いて略円形である。放熱部材固定面51の外周縁に形成された3箇所の基板固定部52のうちの1箇所は、突出部58の中央に形成されている。他の2箇所の基板固定部52は、円形孔53を挟んで突出部58と反対側に形成され、突出部58の中央に形成された基板固定部52に対して対称に配置されている。3箇所の基板固定部52は、それぞれ、光軸L方向の途中位置に形成された基板固定面54と、基板固定面54から被写体側L1に突出する基板固定用凸部55を備える。
【0045】
放熱部材90の外形は略矩形であり、基板固定部52と重なる3箇所に切り欠き92が形成されている。従って、放熱部材90は、3箇所の切り欠き92に基板固定部52を嵌合させ、放熱部材90の中央に固定された回転軸59を円形孔53に配置して、放熱部材固定面51に被写体側L1から当接する状態に組み付けられる。一方、撮像素子40が搭載された基板41には、基板固定用凸部55と重なる3箇所に固定孔42が形成されている。基板41の固定孔42に基板固定用凸部55を嵌合させ、基板固定面54に基板41の端部を当接させると、放熱部材90の被写体側L1の面に貼り付けられた熱伝導性シート99の表面に基板41が接触する。
【0046】
放熱部材90は、アルミや銅などの非磁性の金属製の板材である。撮像素子40による発熱は、基板41から熱伝導性シート99を経由して放熱部材90に伝達される。熱伝導性シート99は、基板41と放熱部材90との間に熱伝導層を形成するものであればよい。例えば、熱伝導性の良いゴムシートを用いることができる。あるいは、熱伝導性の良いゲル状ペーストや熱伝導性の接着材を放熱部材90の表面に塗布し、熱伝導層を形成してもよい。回転台座50はフィラー入りの樹脂部材であるため、熱伝導性が良い。例えば、ガラス繊維強化材かつ高熱伝導性フィラー入りの樹脂部材を用いる。フィラー入りの樹脂部材を用いることにより、放熱部材90からの熱は、回転台座50に効率的に伝達される。また、本形態では、回転軸59もフィラー入りの樹脂部材であり、放熱部材90に回転軸59が固定されているため、放熱部材90からの熱は、回転軸59に効率的に伝達される。なお、回転軸59と回転台座50のいずれか一方のみがフィラー入りの樹脂部材であってもよく、回転軸59は金属であってもよい。
【0047】
図9は、撮像素子40、基板41、放熱部材90、回転台座50、および回転軸59を被写体側L1から見た平面図である。本形態では、放熱部材90および基板41はいずれも矩形であり、放熱部材90は、基板41より一回り大きい。
図9に示すように、放熱部材90の外周縁は、基板41の外周縁の4辺に沿って延在する第1辺90a、第2辺90b、第3辺90c、第4辺90dを備える。第1辺90a、第2辺90b、第3辺90c、第4辺90dは、基板固定部52と重なる切り欠き92が形成された3か所を除き、基板41の外周縁より外周側に位置する。すなわち、放熱部材90は、第1辺90a、第2辺90b、第3辺90c、第4辺90dの全ての辺が、基板41より外周側に張り出している。
【0048】
図3、
図4、
図8に示すように、放熱部材90の外周縁は、切り欠き92が形成された
3か所を除き、基板41および回転台座50から露出した状態になっている。すなわち、放熱部材90は、第1辺90a、第2辺90b、第3辺90c、第4辺90dの全ての辺に、基板41および回転台座50から露出した露出部93が設けられている。露出部93は、基板41および回転台座50だけでなく、他の部材とも接触していない。従って、放熱部材90の全ての辺において、露出部93から放熱できるため、周方向に均等に放熱することができる。よって、撮像素子40で発生する熱を、放熱部材90から効率的に放熱することができる。
【0049】
なお、本形態では、基板41および放熱部材90は矩形であるが、矩形以外の多角形でもよい。放熱部材90は、基板41より一回り大きく、基板41の各辺に沿う放熱部材90の各辺が、基板41の各辺より外周側に張り出していて、全ての辺に露出部が設けられていることが望ましい。
【0050】
図8、
図9に示すように、基板41に搭載された撮像素子40は、光軸L方向に見て、放熱部材90および回転軸59と同一位置で重なっている。また、放熱部材90は、撮像素子40より大きく、撮像素子40全体が、光軸L方向に見て放熱部材90および回転軸59と重なっている。従って、撮像素子40から基板41および放熱部材90を経由して回転軸59へ熱を伝達する経路が短いので、効率的に熱を伝達できる。従って、撮像素子40から発生する熱を、回転軸59から効率的に放熱することができる。
【0051】
図6、
図7に示すように、放熱部材90には、回転軸59の径方向外側で、且つ、光軸Lを中心として対称な2箇所に、磁性部材81を取り付けるための磁性部材配置孔95が形成されている。磁性部材配置孔95は、光軸Lを中心として対称な2箇所に形成されている。磁性部材81は、後述するように、回転台座50を基準回転位置に復帰させるための磁気バネ(姿勢復帰機構80)を構成する部材である。
【0052】
(回転支持機構)
図3、
図4、
図7に示すように、固定部材20の径方向の中央には、軸受保持部22が形成されている。軸受保持部22は、固定部材20を光軸L方向に貫通する保持孔23を備える。固定部材20の反被写体側L2の面には、保持孔23を囲んで反被写体側L2に立ち上がる環状突出部24が形成されている。回転支持機構60は、回転台座50に固定される回転軸59と、軸受保持部22に保持される軸受部61と、軸受部61の径方向外側で固定部材20と回転台座50との間に構成される回転支持部65を備える。すなわち、回転支持機構60は、回転軸59および軸受部61と回転支持部65の2組の回転支持部によって構成されている。
【0053】
図10は、ローリング用磁気駆動機構70および回転支持機構60の平面図および断面図であり、
図10(a)は平面図であり、
図10(b)は
図10(a)のC-C断面図である。
図10(b)に示すように、軸受部61は、固定部材20の保持孔23の内周面に固定される外輪62と、回転軸59の外周面に固定される内輪63と、外輪62と内輪63との間に配置されるボール64を備える。
図3、
図4、
図5(b)に示すように、回転軸59の先端は、軸受部61の内輪63から反被写体側L2に突出しており、固定部材20に形成された環状突出部24より反被写体側L2に突出している。
図3、
図4に示すように、回転支持部65は、固定部材20の被写体側L1の面に形成された固定部材側環状溝66と、回転台座50の反被写体側L2の面に形成された回転部材側環状溝67(
図8参照)と、固定部材側環状溝66と回転部材側環状溝67との間に配置された転動体68と、固定部材側環状溝66と回転部材側環状溝67との間で転動体68を保持するリテーナ69を備える。
【0054】
図3、
図4に示すように、固定部材側環状溝66は、軸受部61の外輪62の外周面よ
り径方向外側に形成されている。そのため、固定部材側環状溝66の底面は、軸受部61の外輪62の被写体側L1の端面より反被写体側L2に窪んだ位置にある。また、回転支持部65は、固定部材側環状溝66と回転部材側環状溝67が光軸L方向に対向する構造となっているため、光軸L方向の厚さが軸受部61よりも小さい。従って、回転支持機構60は、軸受部61のようなボールベアリングを光軸L方向に2組重ねて配置する構成と比較して、光軸L方向の高さが小さい構造となっている。
【0055】
(ローリング用磁気駆動機構)
図10(a)では、回転台座50が基準回転位置にある場合のローリング用磁気駆動機構70の平面図を示している。
図3に示すように、放熱部材90を介して回転台座50に固定された回転軸59が軸受保持部22に取り付けられた軸受部61を介して回転可能に保持されると、回転台座50と固定部材20との間にローリング用磁気駆動機構70が構成される。ローリング用磁気駆動機構70は、回転台座50に固定された回転軸59を間に挟んで径方向の両側に配置された一対のコイル71と、固定部材20の軸受保持部22を間に挟んで径方向の両側に配置された一対の磁石72を備える。コイル71と磁石72は、光軸L方向で所定のギャップを空けて対向する。
【0056】
図10(a)に示すように、磁石72は周方向に2分割されており、コイル71と対向する面の磁極が径方向に延びる着磁分極線73を境にして異なるように着磁されている。コイル71は空芯コイルであり、径方向に延びる長辺部分が有効辺として利用される。一方のコイル71の内側にはホール素子74が配置される。ホール素子74は、コイル71への給電用のフレキシブルプリント基板9に固定される。ホール素子74は、回転台座50が予め定めた基準回転位置にあるときに、磁石72の着磁分極線73と対向する。ローリング用磁気駆動機構70は、ホール素子74の信号に基づいて検出されたローリング方向の原点位置に基づいて制御され、回転台座50にカバー部材30、撮像素子40、基板41、および放熱部材90を固定した回転体を光軸L回りに回転させてローリング補正を行う。つまり、ローリング補正機能付き光学ユニット1は、レンズユニット2およびレンズホルダ10を含まない小型の回転体を回転させることによってローリング補正を行う。
【0057】
図4、
図7に示すように、回転台座50には、固定部材20に向けて突出する回転規制用凸部512が形成されている。また、
図4、
図6に示すように、固定部材20には、回転規制用凸部512の先端が挿入される回転規制用凹部25が形成されている。
図6に示すように、回転規制用凹部25は周方向に所定の角度範囲にわたって延在する。回転規制用凸部512および回転規制用凹部25は、固定部材20に対する回転台座50の回転範囲(ローリング補正の回転範囲)を規制する回転規制部を構成する。
【0058】
(姿勢復帰機構)
ローリング補正機能付き光学ユニット1は、回転台座50を予め定めた基準回転位置に復帰させるための姿勢復帰機構80を備える。姿勢復帰機構80は、回転台座50に固定された2個の磁性部材81と、ローリング用磁気駆動機構70を構成する2個の磁石72によって構成される2組の磁気バネである。上述したように、各磁性部材81は、放熱部材90の磁性部材配置孔95に配置されている。磁性部材81は、コイル71を間に挟んで磁石72と光軸L方向に対向する。
図10(a)に示すように、磁性部材81は周方向の寸法が径方向の寸法より大きい長方形である。回転台座50が基準回転位置に位置するとき、磁性部材81の周方向の中心82は、磁石72の着磁分極線73と光軸L方向から見て重なる位置にある。
【0059】
回転台座50が基準回転位置から回転すると、磁性部材81の中心82が、磁石72の着磁分極線73から周方向にずれるため、磁性部材81と磁石72との間には、磁性部材81の中心82と、磁石72の着磁分極線73の角度位置を一致させる方向の磁気吸引力
が働く。すなわち、回転台座50が基準回転位置からずれると、姿勢復帰機構80は、回転台座50を基準回転位置に復帰させる方向の磁気吸引力が働く。なお、本形態では、磁性部材81と磁石72からなる磁気バネを2組用いているが、磁気バネは1組であってもよい。すなわち、磁性部材81は1個のみであってもよい。また、ローリング用磁気駆動機構70は、コイル71と磁石72を少なくとも1組備えていればよい。
【0060】
(フレキシブルプリント基板の固定構造)
図4に示すように、撮像素子40が搭載された基板41には、撮像素子用のフレキシブルプリント基板8が接続されている。フレキシブルプリント基板8が接続される基板41の縁は、レンズホルダ10の切り欠き部14と固定部材20との間に形成される開口部7に面している。フレキシブルプリント基板8は、基板41から開口部7を通って径方向外側へ引き出された後、U字状に折り返されて固定部材20の反被写体側L2に引き回される。
【0061】
図4、
図5(b)に示すように、ローリング用磁気駆動機構70用のフレキシブルプリント基板9は、回転台座50の反被写体側L2の面に形成された固定溝511(
図7、
図8参照)に配置されて、コイル71の位置へ引き回される。フレキシブルプリント基板9は、一方のコイル71と他方のコイル71の間の角度位置から径方向外側へ引き出される。この角度位置には、開口部7が設けられている。従って、ローリング用磁気駆動機構70用のフレキシブルプリント基板9は、撮像素子40用のフレキシブルプリント基板8と共に、開口部7を通って径方向外側へ引き出され後、U字状に折り返されて固定部材20の反被写体側L2に引き回される。
【0062】
図4に示すように、ローリング用磁気駆動機構70用のフレキシブルプリント基板9、および、撮像素子40用のフレキシブルプリント基板8は、開口部7の外側で、U字状に折り返された直後の部分が回転台座50から突出する突出部58に設けられた固定面581に固定されている。つまり、固定面581には、フレキシブルプリント基板8、9が重なった状態でまとめて固定される。
図7に示すように、突出部58は略直方体状であり、突出部58の反被写体側L2の端面が固定面581となっている。
【0063】
図7に示すように、固定面581はフレキシブルプリント基板8、9が引き出される方向(すなわち、径方向)と直交する方向の幅が長い横長の矩形面である。固定面581の幅方向の中央には、フレキシブルプリント基板9の厚さに対応する深さの幅広の溝582が形成されている。溝582の幅方向の中央には、回転台座50から径方向外側へ引き出されるフレキシブルプリント基板9の部分を通すための凹部583が形成されている。
【0064】
固定面581には、フレキシブルプリント基板8を固定するための固定部として、凸部584およびフック部585が形成されている。また、フレキシブルプリント基板8には、係合穴8aおよび引っ掛け部8bが形成されている。フレキシブルプリント基板8を固定面581に固定する際には、フレキシブルプリント基板9にフレキシブルプリント基板8を重ねて、固定面581に沿ってフレキシブルプリント基板8をスライドさせて、引っ掛け部8bをフック部585に係合させる。また、係合穴8aに凸部584を嵌め込む(
図5(b)参照)。これにより、撮像素子40用のフレキシブルプリント基板8が固定面581に固定される。また、ローリング用磁気駆動機構70用のフレキシブルプリント基板9は、フレキシブルプリント基板8によって押さえられるので、固定面581に固定される。
【0065】
(本形態の主な作用効果)
本形態のローリング補正機能付き光学ユニット1は、ローリング補正を行うために回転支持機構60によって回転可能に支持された回転台座50に、撮像素子40が搭載された
基板41および基板41からの熱が伝達される放熱部材90が固定されている。また、回転軸59は、放熱部材90を介して回転台座50に固定されている。従って、撮像素子40の発熱を基板41から放熱部材90へ伝達し、放熱部材90から回転軸59へ伝達して放熱することができる。また、撮像素子40および放熱部材90は、光軸L方向から見て同一位置で回転軸59と重なっている。従って、撮像素子40で発生した熱を基板41および放熱部材90を経由して短い経路で回転軸59へ伝達することができるので、撮像素子40で発生した熱を効率良く放熱することができる。また、基板41は、放熱部材90と熱伝導層(熱伝導性シート99)を介して接触するため、熱伝導層により基板41から放熱部材90へ効率良く放熱できる。従って、撮像素子40の発熱を効率良く放熱できる。
【0066】
本形態では、回転軸59は、放熱部材90に固定される固定部591と、固定部591から反被写体側L2に延びる軸部592を備え、固定部591は軸部592より大径のフランジ部593を備えている。従って、回転軸59に、放熱部材90と光軸L方向に接触する部位を設けることができるので、この部位から熱を伝導させることができる。また、フランジ部593は軸部592より大径であるため、放熱部材90との接触面積が大きい。従って、放熱量を大きくすることができる。なお、回転軸59に軸部592より大径のフランジ部593を設ける代わりに、
図8(b)に示したように、軸部592Aに段部595Aを設け、段部595Aと放熱部材90とを光軸L方向に当接させる形態を採用してもよい。また、
図8(c)に示したように、被写体側L1から放熱部材90に当接するフランジ部593Bを設けた形態を採用してもよい。
【0067】
本形態では、回転軸59および回転台座50は、フィラー入りの樹脂部材で形成されているため、回転軸59および回転台座50の熱伝導率が大きい。従って、放熱量を大きくすることができる。また、回転軸59および回転台座50の強度を上げることができる。
【0068】
本形態の放熱部材90は、外周端部に回転台座50および基板41から露出する露出部93を備えているため、露出部93から放熱でき、撮像素子40の発熱を効率良く放熱できる。また、放熱部材90の4辺の全てに露出部93が設けられているため、放熱部材90の全ての辺から均等に放熱させることができる。よって、効率良く放熱することができる。
【0069】
本形態の放熱部材90は、光軸L方向から見て撮像素子40より大きいため、放熱部材90を撮像素子40の発熱箇所と容易に重ねることができる。従って、容易に放熱することができる。
【0070】
本形態のローリング補正機能付き光学ユニット1は、ローリング用磁気駆動機構70として、回転軸59の外周側で回転台座50に固定されるコイル71と、固定部材20に固定されてコイル71と光軸L方向で対向する磁石72を備えており、回転軸59の外周側で、回転台座50と固定部材20の間にローリング用磁気駆動機構70を構成できる。なお、回転台座50に磁石72を固定し、固定部材20にコイル71を固定してもよい。このような構成により、ローリング用磁気駆動機構70の省スペース化を図ることができる。
【0071】
本形態のローリング補正機能付き光学ユニット1は、ローリング補正機能付き光学ユニット1の光軸Lと交差する軸回りの振れを補正する振れ補正機構を備えた3軸振れ補正機能付き光学ユニット100を構成することができる。これにより、3軸振れ補正機能付き光学ユニット100において、撮像素子40で発生する熱を効率的に放熱することができる。
【0072】
(変形例)
図11は、変形例の放熱部材90Aを備えたローリング補正機能付き光学ユニット1Aを組み込んだ3軸振れ補正機能付き光学ユニット100Aの断面図である。以下、上記形態の放熱部材90と異なる点のみ説明する。変形例の放熱部材90Aは、上記形態の放熱部材90と同一形状の放熱部材本体部96と、放熱部材本体部96の外周縁から反被写体側L2に屈曲して直線状に延びる突出部97を備える。突出部97は、固定部材20の反被写体側L2まで延びており、その先端部は支持体400の反被写体側ケース430の近傍まで突出して、フレキシブル配線基板を固定する固定部となっている。このように、突出部97をフレキシブルプリント基板の固定部として兼用することができるため、放熱量の増大およびフレキシブルプリント基板の固定構造の簡素化を図ることができる。
【0073】
例えば、
図11に示す変形例の3軸振れ補正機能付き光学ユニット100Aでは、基板41に接続されるフレキシブルプリント基板8、ローリング用磁気駆動機構のコイルへ給電するフレキシブルプリント基板9A、および、揺動用磁気駆動機構のコイルへ給電するフレキシブルプリント基板9Bが光軸Lを中心として巻いた形状に引き回されており、その巻き始めの部分が突出部97に固定されている。
【符号の説明】
【0074】
1、1A…ローリング補正機能付き光学ユニット、2…レンズユニット、3…レンズ、4…鏡筒、5…キャップ、6…カバーガラス、7…開口部、8、9、9A、9B…フレキシブルプリント基板、8a…係合穴、8b…引っ掛け部、10…レンズホルダ、11…ホルダ筒部、12…段部、13…側板部、14…切り欠き部、15…ボス部、17…ねじ部材、18…弾性部材、19…ウェイト、20…固定部材、21…突出部、22…軸受保持部、23…保持孔、24…環状突出部、25…回転規制用凹部、30…カバー部材、31…端板部、32…側板部、34…筒部、35…アパーチャ、40…撮像素子、41…基板、42…固定孔、50…回転台座、51…放熱部材固定面、52…基板固定部、53…円形孔、54…基板固定面、55…基板固定用凸部、58…突出部、59、59A、59B…回転軸、60…回転支持機構、61…軸受部、62…外輪、63…内輪、64…ボール、65…回転支持部、66…固定部材側環状溝、67…回転部材側環状溝、68…転動体、69…リテーナ、70…ローリング用磁気駆動機構、71…コイル、72…磁石、73…着磁分極線、74…ホール素子、80…姿勢復帰機構、81…磁性部材、82…磁性部材の中心、90a…第1辺、90b…第2辺、90c…第3辺、90d…第4辺、90、90A…放熱部材、91…回転軸固定孔、92…切り欠き、93…露出部、95…磁性部材配置孔、96…放熱部材本体部、97…突出部、99…熱伝導性シート、100、100A…3軸振れ補正機能付き光学ユニット、300…ホルダ、301、302、303、304…壁部、310…ホルダ本体部、311…保持孔、400…支持体、410…筒状ケース、411…切り欠き、420…被写体側ケース、421…開口部、430…反被写体側ケース、500…ジンバル機構、501…第1揺動支持部、502…第2揺動支持部、503…可動枠、505…接点ばね、511…固定溝、512…回転規制用凸部、581…固定面、582…溝、583…凹部、584…凸部、585…フック部、591…固定部、592、592A、592B…軸部、593、593B…フランジ部、594、594A…凸部、595A…段部、600…揺動用磁気駆動機構、601…磁気駆動機構、602…磁石、603…コイル、700…磁性部材、L…光軸、L1…被写体側、L2…反被写体側、R1…第1軸線、R2…第2軸線