(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】RFIDタグ用フィルタリング装置
(51)【国際特許分類】
H04B 1/59 20060101AFI20220328BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20220328BHJP
H04B 17/318 20150101ALI20220328BHJP
【FI】
H04B1/59
G06K7/10 272
G06K7/10 140
H04B17/318
(21)【出願番号】P 2017148871
(22)【出願日】2017-08-01
【審査請求日】2020-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097560
【氏名又は名称】▲高▼橋 寛
(72)【発明者】
【氏名】松原 裕二
(72)【発明者】
【氏名】蠣久 大輔
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-146173(JP,A)
【文献】特開2006-319730(JP,A)
【文献】特開2009-211548(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0238686(US,A1)
【文献】特開2013-037663(JP,A)
【文献】特開2011-113496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/59
G06K 7/10
H04B 17/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動対象であるが移動せずに待機しているRFIDタグのタグ情報及び移動しているRFIDタグのタグ情報に対してリーダで読み込まれた複数のRFIDタグのタグ情報より移動しているタグ情報を上位システムで取りまとめて記録させるに際して、当該リーダと当該上位システムとの間に接続されるRFIDタグ用フィルタリング装置であって、
前記リーダで読み込まれた複数のRFIDタグのタグ情報のうち、移動体検知フィルタにより移動しているタグ情報を抽出する移動体検知手段を有
し、
前記移動体検知フィルタは、前記リーダで読み込まれた複数のRFIDタグのタグ情報のうち、前記リーダで読み込まれた際の受信信号強度の変化量に基づいて移動しているタグ情報を抽出する受信信号強度変化量フィルタを少なくとも備えることを特徴とするRFIDタグ用フィルタリング装置。
【請求項2】
請求項
1記載のRFIDタグ用フィルタリング装置であって、前記リーダに対する前記上位システムからの接続形態を整合させるブリッジ機能手段を備えることを特徴とするRFIDタグ用フィルタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダで読み込まれた複数のRFIDタグのタグ情報より移動しているタグ情報を抽出するRFIDタグ用フィルタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、UHF帯のRFID(Radio Frequency Identification)技術を用いたRFIDタグ用チップの性能向上に伴い、遠距離に位置する多数のRFIDタグを一括して瞬時に読取ることが可能となってきていることから、用途が拡大し、例えば製品管理等に使用されるようになってきている。
【0003】
例えば、製品管理でRFIDタグを製品ごとに付帯させて利用する場合に、リーダとRFIDタグとが遠距離(例えば10mの範囲)で通信されることから、多数の製品の搬入、搬出に際して、静止及び移動している総ての製品(RFIDタグ)に対して時系列で通信状態とすると例えば1秒間で約2,000件にも達するタグ情報を処理することが必要となる。
【0004】
そこで、処理負荷を軽減させるために一度の通信状態でタグ情報をリーダで受信した後に2度目に応答させないこともプログラム上可能であるが、一度だけの通信状態とすることは、静止しているRFIDタグのタグ情報と移動しているRFIDタグのタグ情報とを区別することができず、移動しているRFIDタグのタグ情報を把握することができない。
【0005】
従来、静止しているRFIDタグのタグ情報と移動しているRFIDタグのタグ情報とを区別する技術が特許文献1により知られている。特許文献1には、RFIDリーダによって移動RFIDタグ及び静止RFIDタグを含む複数のRFIDタグの時系列読取データを取得し、読取った複数のRFIDタグの情報から、チラ読みフィルタ、RSSI絶対値フィルタ、RSSI非連続上昇フィルタ、RSSI谷型フィルタ、過読フィルタ、位相振れ少フィルタ、垂直方向移動フィルタのうち少なくとも一つ以上の個別静止RFIDタグフィルタを用いて静止RFIDタグと移動RFIDタグを識別し、移動RFIDタグを識別するもので、上記個別静止RFIDタグフィルタがコンピュータ装置又はRFIDリーダに備えられる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の技術では、上記個別静止RFIDタグフィルタをRFIDリーダに備えさせることはメモリ容量が少ないため、RFIDタグ読取処理とフィルタリング処理を並行した場合に処理能力が低下する一方、コンピュータ装置に当該個別静止RFIDタグフィルタを備えさせることはフィルタリング処理にCPUリソースが多く必要であることから、移動しているRFIDタグが20枚を超えるような場合に処理能力が低下し、1度に読取れるRFIDタグの枚数が少なくなるという問題がある。
【0008】
このような場合にRFIDタグリーダやコンピュータ装置の処理性能を高めたものとすればよいが、そうすると既存のRFIDタグリーダやコンピュータ装置を使用することができず、システム全体のコスト高を招くこととなる。
【0009】
そこで、本発明は上記課題に鑑みなされたもので、複数のRFIDタグに対する既存のリーダ及び処理装置に適用可能とし、複数のRFIDタグのタグ情報から多数の移動しているタグ情報を抽出可能として低コスト化を図るRFIDタグ用フィルタリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、移動対象であるが移動せずに待機しているRFIDタグのタグ情報及び移動しているRFIDタグのタグ情報に対してリーダで読み込まれた複数のRFIDタグのタグ情報より移動しているタグ情報を上位システムで取りまとめて記録させるに際して、当該リーダと当該上位システムとの間に接続されるRFIDタグ用フィルタリング装置であって、前記リーダで読み込まれた複数のRFIDタグのタグ情報のうち、移動体検知フィルタにより移動しているタグ情報を抽出する移動体検知手段を有し、前記移動体検知フィルタは、前記リーダで読み込まれた複数のRFIDタグのタグ情報のうち、前記リーダで読み込まれた際の受信信号強度の変化量に基づいて移動しているタグ情報を抽出する受信信号強度変化量フィルタを少なくとも備える構成とする。
【0011】
請求項2の発明では、「前記リーダに対する前記上位システムからの接続形態を整合させるブリッジ機能手段を備える」構成とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、移動対象であるが移動せずに待機しているRFIDタグのタグ情報及び移動しているRFIDタグのタグ情報に対してリーダと上位システムとの間に接続されるRFIDタグ用フィルタリング装置であり、リーダで読み込まれた複数のRFIDタグのタグ情報のうち、移動体検知フィルタにより移動しているタグ情報を抽出する移動体検知手段を備えさせ、移動体検知フィルタに少なくとも備える受信信号強度変化量フィルタにおいて、リーダで読み込まれた複数のRFIDタグのタグ情報のうち、リーダで読み込まれた際の受信信号強度の変化量に基づいて移動しているタグ情報を抽出する構成とすることにより、リーダより複数のRFIDタグのタグ情報を得て移動しているRFIDタグのタグ情報のみを上位システムに提供する単独の装置として、複雑なフィルタリング処理を行うことなく移動しているRFIDタグのタグ情報を抽出させることができ、これによってフィルタリング処理能力を向上させることが可能となって既存のリーダ及び上位システムに適用させることができ、システム全体としてコスト低減を図ることができるものである。
【0014】
請求項2の発明によれば、リーダに対する上位システムからの接続状態を整合させるブリッジ機能手段を備えさせることにより、既存のリーダと既存の上位システムとの通信形態のプロトコルが異なっても容易に接続可能とさせることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るRFIDタグ用フィルタリング装置が適用されるシステム全体の説明図である。
【
図2】
図1のRFIDタグ用フィルタリング装置のブロック構成図である。
【
図3】
図2のRFIDタグ用フィルタリング装置によるフィルタリング処理の説明図(1)である。
【
図4】
図2のRFIDタグ用フィルタリング装置によるフィルタリング処理の説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図により説明する。
図1に、本発明に係るRFIDタグ用フィルタリング装置が適用されるシステム全体の説明図を示す。
図1(A)において、RFIDタグ用フィルタリング装置(以下、単にフィルタリング装置とする)11は、RFIDタグリーダライタ12と、上位システム(ここではコンピュータとする)13との間に単独の装置として接続される。接続形態は、有線、無線を問わないが、大量データの転送には有線であることが好ましい。
【0017】
上記フィルタリング装置11の詳細は
図2で説明する。上記RFIDタグリーダライタ12及び上位システム13は、既存のもので特に高処理能力機能のものでなくともよい。すなわち、RFIDタグリーダライタ12は、通信用アンテナを備え、RFIDタグと交信してタグ情報を受信して外部に送信するリーダとしての機能を少なくとも有すればよく、また、上位システム13は、パーソナルコンピュータやサーバとして入力したタグ情報を取りまとめて記録するソフトウエア及びハードウエアを備えて処理する能力を有すれば十分である。
【0018】
フィルタリング装置11には、外部機器14が接続される。当該外部機器14としては、ここでは入出力接点を有する既存のDIOユニット15及び表示灯16であり、DIOユニット15にはセンサ17が接続される。
【0019】
上記のようなシステムを製品搬出の製品管理に適用させた場合、
図1(B)に示すように、例えば搬送コンベア等の搬送手段21の所定位置の上方にRFIDタグリーダライタ12が配置され、当該RFIDタグリーダライタ12の上流側にセンサ17が配置される。
【0020】
例えば、搬送手段21の両側に搬送対象となる個別のRFIDタグが付帯された製品が所定数収納された搬送収納体22が積まれて待機され、一の搬送収納体22が順次搬送手段21上に移動されて搬送される。そして、搬送手段21上で搬送されてくる搬送収納体22がセンサ17により検知されることでRFIDタグリーダライタ12により当該搬送収納体22内の製品に付帯された個別毎のRFIDタグと交信し、読み込まれたタグ情報を順次フィルタリング装置11に送信するものである。
【0021】
ここで、
図2に、
図1のRFIDタグ用フィルタリング装置のブロック構成図を示す。
図2において、フィルタリング装置11は、CPU31、ROM32、RAM33、ブリッジ機能手段34、移動体検知手段35及びインタフェース36を備え、当該移動体検知手段35は、移動体検知フィルタとして、RSSI(受信信号強度インジケータ)41、出現回数フィルタ42及びRSSI変化量フィルタ43を備える。
【0022】
上記CPU31は、この装置全体を統括的に処理制御する物理的な中央処理装置であり、ROM32に記憶されているプログラムに基づくアルゴリズム処理を行う。上記RAM33は、各フィルタによるフィルタリング処理するプログラムを展開、実行させるための作業領域としての役割をなすもので、例えば半導体メモリで構成される。
【0023】
上記ブリッジ機能手段34は、RFIDタグリーダライタ12に対する上位システム13からの接続形態に応じたプロトコルを整合させるプロトコルコンバータとしての機能を有するもので、当該上位システム13にRFIDタグリーダライタ12を接続状態とするための制御コマンドを当該RFIDタグリーダライタ12のプロトコルに合致させて送信する。なお、当初よりプロトコルが合致していればスルー状態とする。
【0024】
上記移動体検知手段35は、全体的には、RFIDタグリーダライタ12で読み込まれた複数のRFIDタグの総てのタグ情報をRFIDタグリーダライタ固有のデータフォーマットで入力し、当該タグ情報のうち、移動体検知フィルタにより移動しているタグ情報を抽出するもので、抽出したタグ情報を上位システム13の指定するデータフォーマット若しくはRFIDタグリーダライタ固有のデータフォーマットで送信する。
【0025】
上記移動体検知フィルタの一部を構成するRSSI値フィルタ41は、指定期間内に読み込まれたRSSI値が閾値以上のタグ情報を抽出するもので、RFIDタグリーダライタ12のアンテナから遠い位置にあるRFIDタグのタグ情報を除外する。
【0026】
上記移動体検知フィルタの一部を構成する出現回数フィルタ42は、指定期間内のRFIDタグの読取回数が閾値以上のタグ情報を抽出して、RFIDタグリーダライタ12において金属体による反射によって読み込まれたRFIDタグのタグ情報を除外する。
【0027】
上記移動体検知フィルタの一部を構成するRSSI変化量フィルタ43は、RFIDタグリーダライタ12で読み込まれた複数のRFIDタグのタグ情報のうち、当該RFIDタグリーダライタ12で読み込まれた際の受信信号強度の変化量に基づいて移動しているタグ情報を抽出するもので、具体的には、指定期間内に読み込まれたタグ情報のRSSI変化総量が閾値以上のデータを抽出して、静止しているRFIDタグのタグ情報を除外するものである。
【0028】
なお、移動体検知フィルタで移動しているRFIDタグのタグ情報を抽出するに際して、上記RSSI変化量フィルタ43のみで移動しているRFIDタグのタグ情報を抽出することは可能であるが、上記RSSI値フィルタ41及び出現回数フィルタ42を用いることで、当該RSSI変化量フィルタ43による処理負荷を軽減させることができるものである。また、RSSI値フィルタ41、出現回数フィルタ42による処理を行わせないオンオフ機能を備えさせてもよい。
【0029】
上記インタフェース36には外部機器14のDIOユニット15の出力端子が接続されると共に、RFIDタグリーダライタ12の汎用入出力ポート(GPIO)に接続される。すなわち、センサ17で読取対象のRFIDタグ(上記RFIDタグ付帯製品の搬送収納体22)を検知したときに、DIOユニット15を介して検知信号をトリガとしてRFIDタグリーダライタ12に送信して、当該RFIDタグリーダライタ12によるRFIDタグに対するタグ情報読み込みを開始させるもので、RFIDタグリーダライタ12に予め設定した指定期間内で当該読み込みが時系列で行われる。なお、上記センサ17からの検知信号に応じてDIOユニット15を介して表示灯16を読み込み開始として点灯させるものである。
【0030】
なお、上記外部機器14(DIOユニット15、表示灯16)及びセンサ17をRFIDタグリーダライタ12側に接続することとしてもよく、この場合には、インタフェース36は不要となる。
【0031】
そこで、
図3及び
図4に、
図2のRFIDタグ用フィルタリング装置によるフィルタリング処理の説明図を示す。
図3(A)は、フィルタリング装置11の移動体検知手段35に、RFIDタグリーダライタ12より指定期間内において時系列で読み込まれた総てのRFIDタグのタグ情報が入力されたグラフであり、総てのタグ情報には、移動しているRFIDタグのタグ情報、静止しているRFIDタグのタグ情報及び金属体などで反射によって読み込まれたタグ情報である。
【0032】
上記
図3(A)に示す総てのタグ情報に対して、
図3(B)に示すように、RSSI値フィルタ41が、指定期間内に読み込まれたRSSI値が閾値以上のタグ情報を抽出してRFIDタグリーダライタ12のアンテナから遠い位置にあるRFIDタグのタグ情報を除外する。
【0033】
続いて、
図4(A)に示すように、出現回数フィルタ42が、RSSI値が閾値以上のタグ情報のうち、指定期間内のRFIDタグの読取回数が閾値以上のタグ情報を抽出して、RFIDタグリーダライタ12において金属体による反射によって読み込まれたRFIDタグのタグ情報を除外する。なお、上記RSSI値フィルタ41及び出現回数フィルタ42の処理は、その順序を問わない。
【0034】
そして、
図4(B)に示すように、RSSI変化量フィルタ43が、RFIDタグリーダライタ12で読み込まれた複数のRFIDタグの総てのタグ情報から、RSSI値フィルタ41でRFIDタグリーダライタ12のアンテナから遠い位置にあるRFIDタグのタグ情報が除外され、出現回数フィルタ42で金属体による反射によって読み込まれたRFIDタグのタグ情報が除外されたタグ情報のうち、当該指定期間内に読み込まれたタグ情報のRSSI変化総量が閾値以上のデータを抽出して、静止しているRFIDタグのタグ情報を除外する。
【0035】
すなわち、
図4(A)に示すRFIDタグのうちの所定のタグ情報のRSSI変化量a(x)の総量と他のタグ情報のRSSI変化量b(x)の総量が閾値以上か否かを判別し、閾値以下のRSSI変化量b(x)のタグ情報を除外して、
図4(B)に示す閾値以上のRSSI変化量a(x)に対応するタグ情報を移動しているRFIDタグのものとして抽出するものである。
【0036】
このように、RFIDタグリーダライタ12より複数のRFIDタグのタグ情報を得て移動しているRFIDタグのタグ情報のみを上位システム13に提供する単独の装置としてフィルタリング処理能力を向上させることが可能となって既存のRFIDタグ用のリーダやリーダライタ及び上位システム13に適用させることができ、システム全体としてコスト低減を図ることができるものである。
【0037】
また、移動体検知フィルタ(特にRSSI変化量フィルタ43)により複雑なフィルタリング処理を行うことなく移動しているRFIDタグのタグ情報を抽出させることができるものである。さらに、ブリッジ機能手段34により既存のRFIDタグ用のリーダやリーダライタ及び上位システム13との通信形態のプロトコルが異なっても容易に接続可能とさせることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のRFIDタグ用フィルタリング装置は、RFIDタグのタグ情報を取りまとめて記録させるシステムの製造、販売、使用等の産業分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
11 RFIDタグ用フィルタリング装置
12 RFIDタグリーダライタ
13 上位システム
14 外部機器
15 DIOユニット
16 表示灯
17 センサ
21 搬送手段
22 搬送収納体
34 ブリッジ機能手段
35 移動体検知手段
36 インタフェース
41 RSSI値フィルタ
42 出現回数フィルタ
43 RSSI変化量フィルタ