(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】常温保存可能なレディ・トゥ・イートピザとその製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 13/41 20170101AFI20220328BHJP
【FI】
A21D13/41
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017152903
(22)【出願日】2017-08-08
【審査請求日】2020-07-27
(31)【優先権主張番号】102016000083694
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517278200
【氏名又は名称】バリラ ジ.エ エッレ.フラテッリ エッセ.ピ.ア.
【氏名又は名称原語表記】Barilla G. e R. Fratelli S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Mantova, 166 43100 Parma Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ブッティーニ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ ルゲリ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンカルロ リボルディ
(72)【発明者】
【氏名】コラド フェラーリ
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01042956(EP,A1)
【文献】米国特許第06083550(US,A)
【文献】国際公開第2015/169674(WO,A1)
【文献】特開2008-118874(JP,A)
【文献】特開2004-033021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 13/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼いた生地のベースと、表面にはチーズ
およびトマトベースソースを含むトッピングを有し、前記トッピングは保存料不使用であり、前記
焼いた生地のベースと前記表面のトッピングとは実質的に同等の水分活性(Aw)であ
り、
前記焼いた生地のベースの水分活性(Aw)は、0.80~0.92であり、
前記トッピングは、チーズベースの層とトマトベースソースの層とを有し、各層は分離しており、互いに接しているが接触面の境界面は明確であり、
前記トマトベースソースの層の水分活性(Aw)は、0.80~0.92であり、
前記チーズベースの層と前記トマトベースソースの層とは、実質的に同等の水分活性(Aw)を有し、
ピザは、それ自身が密閉包装の中で、常温で、少なくとも60日間保存されることができる、包装されたレディ・トゥ・イートピザ。
【請求項2】
前記ピザの水分活性(Aw)が0.80~0.92であり、全体の水分含量が前記ピザの合計重量に対して26重量%~30重量%で
ある、請求項1に記載のピザ。
【請求項3】
前記ピザの水分活性(Aw)が0.84~0.88で
ある、請求項2に記載のピザ。
【請求項4】
前
記焼いた生地のベース
の水分含量が前記
焼いた生地のベースの全重量に対して
25重量%~
35重量%で
ある、請求項1~3のいずれか一項に記載のピザ。
【請求項5】
前
記焼いた生地のベースの水分活性(Aw)が0.84~0.88で
ある、請求項4に記載のピザ。
【請求項6】
前
記焼いた生地のベースは、小麦
粉と、天然由来の膨張
剤と、食塩と、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のピザ。
【請求項7】
前
記焼いた生地のベースは、さらに、リンゴ酢と、植物油および/又は油脂とを含み
、焼成のための加工助
剤を含む、請求項6に記載のピザ。
【請求項8】
前記トッピングはさらにマスカルポーネを含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載のピザ。
【請求項9】
前記チーズと前記マスカルポーネとを前記トッピングに含み、その重量比が75:25~85:15で
ある、請求項
8に記載のピザ。
【請求項10】
前記トマトベースソース
の層のトマトベースソース全体の重量に対する水分含量が36重量%~40重量%で
ある、請求項
1~9のいずれか一項に記載のピザ。
【請求項11】
前記トマトベースソースの層の水分活性
(Aw)が0.84~0.88で
ある、請求項
10に記載のピザ。
【請求項12】
前記トマトベースソース
の層は乳化剤を
含む、請求項
1~11のいずれか一項に記載のピザ。
【請求項13】
前記乳化剤は前記トマトベースソースの層の全重量に対して0.30重量%~0.7重量%
含まれる、請求項
12に記載のピザ。
【請求項14】
前記ピザの前記トッピングは、ホールオリーブ又はチョップドオリーブ、オレガノ、バジル、ローズマリー、果物、ドライトマト、ケッパー、タマネギ、アーティチョーク、マッシュルーム、アンチョビ、加工肉、及びこれらの任意の組み合わせを含むグループのうちいずれか一つの材料を
含む、請求項1~
13のいずれか一項に記載のピザ。
【請求項15】
前記ピザは、伝統的な円形の小さいピザ(ピッツェッタ)であり、直径が5~18cmで
ある、請求項1~
14のいずれか一項に記載のピザ。
【請求項16】
前記ピザは縁を有し、前記縁は前記ピザの円周全体に沿って延びており、前記縁の厚みは0.5~1.5cmであ
り、さらに、前記縁の幅は0.5~1.5cmである、請求項1~
15のいずれか一項に記載のピザ。
【請求項17】
前記ピザは、空気や光を防ぐ性質を有する金属化フィルムの包装に包装さ
れる、請求項1~
16のいずれか一項に記載のピザ。
【請求項18】
焼いた生地のベースと、表面にはチーズ
およびトマトベースソースを含むトッピングを有し、前記トッピングは保存料不使用であり、前記
焼いた生地のベースと前記表面のトッピングとは実質的に同等の水分活性(Aw)である
、包装されたレディ・トゥ・イートピザを製造する製造方法であって、以下のステップを含む:
(a)ピザの生地の作製、
(b)前記ピザの生地を円盤状の生地に成形する;
(c)前記円盤状の生地をふくれ上がらせるために、温度20℃~24℃、相対湿度40%~60%の雰囲気中に、25分~35分置いておく;
(d)生地がふくれ上がった時点で、円形断面のプレス機を用いて前記円盤状の生地をプレスすることで円形の縁が盛り上がったプレスされた円盤状の生地を得る、
(e)前記円盤状の生地の盛り上がった縁の内側に、チーズ
およびトマトベースソースを含むトッピングを載せることにより表面が覆われた円盤状の生地を得
る;
(f)前記表面が覆われた生地をふくれ上がらせるために温度30℃~38℃、相対湿度85%~95%の雰囲気中に、70~90分置く;
(g)焼いたピザを得るために、前記表面が覆われ、ふくれ上がった円盤状の生地を、180℃~220℃のオーブン
で焼く;
(h)前記焼いたピザを常温まで冷ます;
(i)前記焼いたピザを包装する、
ここで、前記ステップ(e)において、前記チーズの水分活性(Aw)は、0.94~0.98であり、前記トマトベースソースの水分活性(Aw)は、0.90~0.95であり、前記焼いたピザは、それ自身が密閉包装の中で、常温で、少なくとも60日間保存されることができる、
ピザの製造方法。
【請求項19】
前記ステップ(a)のピザの生地の作製は、捏和機の中で、最初のゆっくりと混ぜる段階と、次の速く混ぜる段階とから構成され、前記捏和機は、前記ゆっくりと混ぜる段階では10~20rpmのスピードで、前記速く混ぜる段階では40~60rpmのスピードで回転する、請求項
18に記載のピザの製造方法。
【請求項20】
前記ステップ(a)において、前記生地は、前記生地の全重量に対し、小麦粉を50~65重量%、水を23~32重量%、植物性脂肪および/又は植物油および/又はその一部を7~12重量%
、酵母を1~4重量%
、食塩を0.1~3
重量%、リンゴ酢を0.2~0.8
重量%、及び焼成のための加工助剤を0~0.1
重量%、
これらの材料を混合することによって作製される、請求項
18または請求項
19に記載のピザの製造方法。
【請求項21】
前記ステップ(b)において、生の前記生地は圧延により成形され、最初に、厚み
が5mm
~15mmの連続した層が得られ、次に、厚
み3mm
~11mmのシート状の生地を得るために前記連続した層を圧延し、前記シート状の生地を2~8枚重ね合わせ、前記重ね合わせたシート状の生地に対してさらなる圧延のステップを行い、圧延した生地を得て、最後に前記圧延した生地をプレスし、前記円盤状の生地を得る、請求項
18~
20のいずれか一項に記載のピザの製造方法。
【請求項22】
前記ステップ(b)において
、生の
前記生地は分割によって成形され、連続した層を重さ22g~30gの複数のボールに変形し、最後に前記複数のボールを圧延することによって前記円盤状の生地を得る、請求項
18~
21のいずれか一項に記載のピザの製造方法。
【請求項23】
前記ステップ(d)において、前記円形の縁の幅が2mm~8mmであり、高さが5mm~15mmである、請求項
18~
22のいずれか一項に記載のピザの製造方法。
【請求項24】
前記ステップ(e)において
、前記トマトベースソースは、トマトの果肉、トマトの濃縮物、エクストラバージンオリーブオイル及び食塩を
含む、請求項
18~
23のいずれか一項に記載のピザの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品産業および食品関連の技術分野に関し、特に、オーブンで焼いたレディ・トゥ・イート(ready-to-eat)製品に関するものである。より具体的には、本発明は常温保存可能に包装された軽食(スナック)であり、レディ・トゥ・イートピザを含む。また、本発明は、このスナックの製造方法にも関係するものである。
【背景技術】
【0002】
ピザはオーブンで焼いたイタリアの代表的な産品であり、イタリア国内及びイタリア国外の両方でよく知られており、人気がある。
【0003】
ピザは小麦粉、塩および酵母を含み、オリーブオイルを任意に加えた生地を練って作られる。生地は薄い層(一般的には円形状)に延ばされ、“トッピング”が載せられる。
【0004】
このトッピングの材料は、伝統的な調理のレシピに基づいてこの食品を製造する頻度が他国より高いイタリアだけでもかなりの種類があり、“パスタフィラータ(pasta filata)”と呼ばれるチーズ(カード紡ぎ法により製造されたチーズ)、トマトベースソース及びエクストラバージンオリーブオイルを含む。
【0005】
ピザはメインの食事としてだけではなく、切り分け方によっては、食事と食事の間の軽食(スナック)としても食べられている伝統を持つ食品である。
【0006】
同様に、円弧状に切り分けたピザ、小片状に切り分けたピザ又は円形状の小さなピザ(ピッツェッタ“pizzetta”)を焼きたてで食べる習慣は、とりわけイタリア国内のみならずイタリア国外にも広まっている。これらすべての商品は、特にイタリアでは、ピザ屋、パン屋、洋菓子屋および/又は市場内の調理販売所及び高級惣菜売り場(bakery and gastronomic food departments)や、スーパーマーケットにおいて購入することが、簡単でありまた一般的と考えられる。
【0007】
しかしながら、ピザは品質が劣化しやすい食品であることからできたてのうちに食べなければならず、オーブンから出してすぐに食べることが好ましい。小片状に切り分けたピザ、円形状のピッツェッタまたは同様の持ち帰り商品は、常温での一般的な貯蔵寿命(シェルフライフ、shelf-life)が24時間未満である。実際、オーブンから出して数時間後のピザの性質、すなわち、食べた際の硬さや、官能特性について、調理した生地のベース及びトッピング材料の両方とも、次第に劣化が始まる。この商品の劣化は、外的要因と内的要因の両方によるものである。外的要因は、例えば、大気中の酸素による製品の酸化や、空気の相対湿度、保存温度または外部環境由来の微生物などによるものである。内的要因としては特に調理した生地のベースとトッピングの様々な構成要素との間の水分や液体成分の移行によるものが一般的であり、これと同様にトッピング自体の構成要素同士の間におけるものも含まれる。
【0008】
このようにピザの持つ特徴的な味わいと香りの特徴を失わないためには、ピザは調理してから数時間以内に食べなければならないという制約のあることが明らかである。
【0009】
したがって、その保管のために特別な保管条件に置いて見張る必要なく、調理されてから数週間から数ヶ月経っても食べるのに適した状態であるピザまたはピッツェッタに対する一定数の消費需要がある。
【0010】
この需要に応えるため、食品会社は様々な解決方法を考案してきている。例えば、仕出し用途とスーパーでの販売の両方において、冷蔵または冷凍にしたり、焼成状態(baked)または半焼成状態(semi-baked)にしたりした、ピザまたはピッツェッタをMA包装(packed in a modified atmosphere)にしたりして提供してきた。
【0011】
しかしながら、これらの商品を完全な状態で提供するためには、食べる直前に、消費者または仕出し業者が焼くか、又は少なくとも解凍/加熱を行う必要がある。
【0012】
したがって、これらの製品は、いつでも食べられるレディ・トゥ・イートの便利なピッツェッタと比べると制限があり、特に、例えば学校や職場などの環境、または旅行の際などの、設備の整ったキッチンがない条件において制限がある。
【0013】
米国特許第4,416,904号は、焼いた生地のベースとトッピングにチーズ及びトマトを含む常温保存可能なピザを開示している。このピザは約8週間保存でき、ピザのベースは調理済みであるため、食べる前にさらに焼く必要はなく、温めるだけでよい。
【0014】
いずれにしても、冷凍またはMA(雰囲気調整、modified atmospheres)を用いて保管するための技術に関する文献が無い限り、米国特許第4,416,904号に開示されているピザを作り上げるために必要なもの、すなわち生地のベース、チーズ及びトマトソースのすべてに、必然的に防かび剤を含むことになり、防かび剤としては例えばカルシウム、プロピオン酸ナトリウム、又はソルビン酸、あるいはそれらの誘導体等を必然的に含むということを指摘しておきたい。
【0015】
さらに、様々な難点の中でも、前述の特許に記載の製品は、その貯蔵寿命の間に、その様々な構成要素の組成および硬さの変質にさらされる。特に明らかな難点の一つは、トマトソースから焼いた生地のベースへ、水分が移ることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の基礎を構成する技術的課題は、できたてのピザと同等の見た目と官能特性を有し、常温で長期間貯蔵安定性を保ち、その特徴的な見た目、食べたときの硬さおよび官能特性を貯蔵寿命の間ずっと維持し、加えてすぐに食べられる状態であり、すなわち、食べる前に調理を完了させるための他の処理を必要としない、包装された焼いたピザを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、上記の技術的課題は、焼きたてのピザと同等な見た目と官能特性を有し、柔軟性を有する焼いた生地のベースと、表面にはチーズを含むトッピングを有し、前記トッピングは保存料不使用であり、前記ベースと前記表面のトッピングとは実質的に同等の水分活性(Aw)である、常温で長期保存可能な包装されたレディ・トゥ・イートピザを提供することにより解決される。
【0018】
上記の焼いたピザの水分活性(Aw)は、好ましくは0.82~0.92であり、より好ましくは0.84~0.88であり、さらに好ましくは0.86である。さらに、上記のピザは、ピザの合計重量に対する水分含量が全体として25重量%~35重量%であり、好ましくは28重量%である。
【0019】
したがって、焼いた後の上記ベースと上記トッピングの水分活性(Aw)は、それぞれ0.80~0.92であり、好ましくは0.84~0.88であり、さらに好ましくは0.86である。
【0020】
本発明におけるピザの柔軟性を有する焼いた生地のベースは、上記ピザのベースの合計重量に対する水分含量が25重量%~35重量%であり、好ましくは30重量%である。
【0021】
上記柔軟性を有する焼いた生地のベースは、一般に、小麦粉、天然酵母(natural yeast)および食塩から構成される。小麦粉は、軟質小麦である0粉(ゼロ粉)が好ましく、天然酵母は醸造酵母(brewer's yeast)が好ましい。また、焼いた生地のベースは、リンゴ酢と、植物油および/又は油脂と、焼成のための加工助剤と、を含んでいてもよい。
【0022】
より具体的には、小麦粉はあらゆる穀粉から選択することができる。小麦粉は硬質小麦、軟質小麦、ホラーサーン小麦(Khorasan wheat)(Triticum turgidum ssp. turanicum種)、ライ麦、トウモロコシ、米、スペルト小麦、大麦、モロコシ(ソルガム)、キビ(millet)、オート麦、ライ小麦、そば粉、キヌア及びこれらの混合粉を含むグループから選択されることが好ましく、軟質小麦である0粉(ゼロ粉)がさらに好ましい。
【0023】
これらの植物油および/又は油脂および/又はそれらのごく少量は、パーム油、オリーブオイル、ひまわり油、菜種油およびそれらの混合油を含むグループから選択されることが好ましく、エクストラバージンオリーブオイル、高オレイン酸ひまわり油及びそれらの混合油が好ましい。より好ましくは、これらの植物油および/又は油脂および/又はそれらのごく少量は、エクストラバージンオリーブオイルと高オレイン酸ひまわり油との混合油である。
【0024】
本発明の柔軟性を有する焼いた生地のベースは、上記ベースの全重量に対して1重量%~10重量%のエクストラバージンオリーブオイルと、1重量%~10重量%の高オレイン酸ひまわり油を含むことがより好ましい。
【0025】
本発明の柔軟性を有する焼いた生地のベースは、前述のベースの全重量に対して5重量%のエクストラバージンオリーブオイルと、5重量%の高オレイン酸ひまわり油を含むことがさらに好ましい。
【0026】
焼成のための加工助剤は、好ましくはアスコルビン酸および/又は酵素を含む焼成助剤(baking improvement agent)である。
【0027】
他の有利な特徴は製柔軟性を有する焼いた生地のベースの中に湿潤剤を含まなくとも、製品の貯蔵寿命を低下させないことである。これらの湿潤添加剤は柔軟性を有する焼いた生地のオーブン加工品の中に通常含まれており、また、柔らかい生地のオーブン加工品は“風味の良い製品”として分類することができる。湿潤剤として最も一般的に使われているのは、単糖またはポリオールである。この特徴により、栄養特性が向上した製品を得ることが可能となり、そのような製品は主に幼児のための食事に適したものであり、またしばしば単糖を非常に多く含む。
【0028】
本発明にかかる上記焼いたピザのトッピングは、水分活性(Aw)が0.80~0.92であって、より好ましくは0.84~0.88であって、さらに好ましくは0.86であって、トッピングの全重量に対する水分含量が20重量%~24重量%であって、より好ましくはトッピングの全重量に対して22重量%である。
【0029】
“チーズ”の意味は、一つのタイプのチーズという意味だけではなく、複数のチーズの混合物という意味でもある。
【0030】
また、好ましくは、前述のトッピングは、マスカルポーネと、便宜上の前述のチーズと、を含み、前述のトッピングにはマスカルポーネを重量比で75:25~85:15含み、より好ましくは80:20含む。
【0031】
好ましくは、前述のチーズはフレッシュチーズ(unripened cheese)であって、特に好ましくは、殺菌牛乳と、ミルククリームと、塩とで構成される、クリーム状でなめらかなソフトチーズである。
【0032】
本発明に係る焼いたピザに関する特定の実施形態によると、本発明に係るオーブン加工品のトッピングはさらにトマトベースソースを含む。具体的には、このトッピングはチーズベースの層と、トマトベースソースの層という2つの分離した層を有していてもよく、それらは互いに近接しているが、接触面の境界面が明確であるという特徴を有している。
【0033】
好ましくは、前述のトマトベースソースの層は水分活性(Aw)が0.80~0.92であって、より好ましくは0.84~0.88であって、さらにより好ましくは0.86である。
【0034】
さらに、本発明に係る前述の焼成したピザのトマトベースソースの層は、トマトベースソースの層の全重量に対し36重量%~40重量%の水分含量であり、好ましくは前述のトマトベースソースの層の全重量に対し38重量%である。本発明に係る前述の特定の実施形態によると、チーズベースの層とトマトベースソースの層は実質的に同等の水分活性(Aw)を有している。
【0035】
好ましくは、トマトベースソースの層は、次に、乳化剤を含み、より好ましくは、これらの乳化剤は食物性(alimentary)脂肪酸の誘導体であってもよく、より具体的には、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン又はそれらの混合のような、脂肪酸のモノグリセリド又はジグリセリドであってもよい。これらの乳化剤は、トマトベースソースの層の全重量に対し0.30重量%~0.7重量%含まれていてもよく、より好ましくは、0.45重量%~0.55重量%含まれていてもよい。
【0036】
より好ましいことには、トマトベースソースの層に乳化剤を含むことにより、脂肪成分が乳化され、トマトソースからチーズベースの層へ、又は、トマトソースから柔軟性を有する焼いた生地のベースへの、脂肪成分の移動を防止する。
【0037】
より具体的には、追加したエクストラバージンオリーブオイル由来の脂肪分に加え、トマトソースは、ソースをその特徴的な赤色にしているリコピンを含む。長期に渡る製品の貯蔵寿命の間に、リコピンは、脂肪分の割合が高い柔軟性を有する焼いた生地のベースと、同じく脂肪分の割合が高く脂溶性であるチーズベースの層の両方へと簡単に移ることがある。
【0038】
ソースからトマトに至るまで、リコピンの移動は、結果として、柔らかい生地のベース及び/又はチーズベースの層の色の不可逆な変化となり、消費者の選別眼を通すと、製品の新鮮さと好ましさの感じ方が変化する。
【0039】
本発明の実施の形態によると、上記のトマトベースソースの層は、安定化剤を含み、好ましくは、小麦のマルトデキストリンを含む。
【0040】
この、トマトベースソースの層は、通常、トマトの果肉、トマトの濃縮物、エクストラバージンオリーブオイル及び食塩を含み、また、乾燥グルコースシロップ(dried glucose syrup)とショ糖を含んでもよい。
【0041】
本発明のさらなる実施の形態によると、本発明のピザのトッピングはまた、香りの良いハーブ、野菜、果物、マッシュルーム、穀物、肉、魚およびそれらの組み合わせを含むグループから選択される少なくとも一つの材料を含んでいてもよい。好ましくは、ピザのトッピングは、オレガノ、バジル、ローズマリー、ドライトマト(dehydrated tomatoes)、オリーブ、ケッパー、タマネギ、アーティチョーク、マッシュルーム、アンチョビ及び加工肉を含むグループから選択される少なくとも一つの材料を含むことが好ましい。
上記リストの材料のうち、ホールオリーブ又はチョップドオリーブと、オレガノが特に好ましい。
【0042】
本発明のピザは、伝統的な円形の小さなピザ(ピッツェッタ)の形状であり、直径は5~18cmであり、好ましくは直径8~14cmである。
【0043】
本発明のピザは、好ましくはピザの円周全体に沿って延びる縁(edge、ピザの耳)を含む。この縁は、厚み0.5cm~1.5cmであることが好ましく、いずれの場合であってもそのピザの中心部の厚みに対して200%以上の厚さであることが好ましく、それと同時に、この縁は、幅0.5~1.5cmであることが好ましい。
【0044】
この縁は、前述のピザに美的観点の価値をもたらすことに加え、トッピングがその外側の包装表面に接触することを減らすことができる。よって、極めて有利なことに、この手段では、ピザが包装され、製品の貯蔵寿命に渡って保存される際に、ピザを覆うフィルムの内側にトッピングが付着することを防ぐように設計される。製品を開封した際に、トッピングが表面に均一に広がっておらず、一部が保護フィルムに付着した製品であることは、消費者にとって非常に魅力がないことである。さらに、この状況は、特に、もし包装が透明であり、外側から製品が見えるような場合、大きな欠点となり得る。
【0045】
ピザは、例えば、内部にボール紙の包装(箱)が任意に挿入されたプラスチックのマルチパックなど、空気や光を防ぐ性質を有する金属化フィルム(metallized film)のタイプの包装に包装されることが好ましい。
【0046】
本発明の焼いたピザは、それ自身が密閉包装の中で、常温で、少なくとも60日間保存、より好ましくは90日間、さらにより好ましくは120日間保存されることが好ましい。
【0047】
前述の技術的問題を、常温で長期間保存でき、焼きたてのピザと同等な見た目と官能特性を有し、柔軟性を有する焼いた生地のベースと、表面にはチーズを含むトッピングを有し、前記トッピングは保存料不使用であり、前記ベースと前記表面のトッピングは実質的に同等の水分活性(Aw)である、包装された焼いたレディ・トゥ・イートピザの製造方法を提供することによって、さらに解決した。その方法は以下のステップを含む:
(a)ピザの生地の作製、
(b)前記ピザの生地を円盤状の生地に成形する;
(c)前記円盤状の生地をふくれ上がらせるために、温度20℃~24℃、相対湿度40%~60%の雰囲気中に、25分~35分置いておく;
(d)生地がふくれ上がった時点で、円形断面のプレス機を用いて前記円盤状の生地をプレス(パンチング、punching)し、円形の縁が盛り上がった、プレスされた円盤状の生地を得る;
(e)前記円盤状の生地の盛り上がった縁の内側に、チーズを含むトッピングを載せることにより表面が覆われた円盤状の生地を得るが、前記チーズの水分活性(Aw)が0.94~0.98であることが好ましい;
(f)前記表面が覆われた円盤状の生地をふくれ上がらせるために、温度30℃~38℃、相対湿度85%~95%の雰囲気中に、70~90分置く;
(g)焼いたピザを得るために、前記表面が覆われ、ふくれ上がった円盤状の生地を、180℃~220℃のオーブンで、好ましくは8~15分焼く;
(h)前記焼いたピザを常温まで冷ます;
(i)前記焼いたピザを包装する。
【0048】
前記ステップ(a)の混合は、捏和機の中で、最初のゆっくりと混ぜる段階と、次の速く混ぜる段階とから構成され、前記捏和機は、前記ゆっくりと混ぜる段階では10rpm~20rpmのスピードで、前記速く混ぜる段階では40~60rpmのスピードで回転させることが好ましい。
【0049】
さらに、前記ステップ(a)の中で、次の材料を混合して作製してもよい。生地の全重量に対し、小麦粉を50~65重量%、水を23~32重量%、植物性脂肪および/又は植物油および/又はその一部を7~12重量%、好ましくはエクストラバージンオリーブオイルを1~3重量%、酵母を1~4重量%、好ましくは醸造酵母、食塩を0.1~3%、リンゴ酢を0.2~0.8%、及び焼成のための加工助剤を0~0.1%である。
【0050】
本発明の特定の実施形態では、前記ステップ(b)において、ピザの生地は、圧延による成形手順を経て作製してもよい。この手順では、厚みが約5mm~15mmの連続した層(continuous layer)が得られる。そして、この連続した層を一連のサイジングローラーに通すことによって、厚さ約3mm~約11mmのシート状の生地を得ることができる。
【0051】
このようにして得た2~8枚のシートを互いに重ね合わせる。これは、最終的な厚みが4mm~8mmとなる圧延した生地を得るために、圧延のステップの次に行うものである。最終的に、生地はプレスのステップを経ることによって、前述の円盤状に成形される。
【0052】
別の実施形態では、前記ステップ(b)において、ピザの生地を、分割による成形手順によって作製してもよい。この手順では、生地はディバイダーラウンダーによって重さ26gのボール状に分割される。このようにして得られたボールは、次に、直径85±3mmおよび高さ6±2mmの円盤形状とするために圧延される。
【0053】
この、後者の成形方法は、切り落とす断片が最少量で済むため、特に有利である。実際、この場合は、かなりの量の加工廃棄物が出ることでよく知られるプレス工程を用いずに、生地を円形状に成形している。その結果として、上記の分割を用いた成形工程は、特に、使用する原材料の量をより少なくし、機械の洗浄工程も簡易なもので済むという理由から、大幅なコスト削減という結果をもたらす。
【0054】
前記ステップ(d)において、前記円盤状の生地は幅2mm~8mm、高さ3mm~12mmの縁を形成するためにプレスされる。
【0055】
前述の別の実施形態によると、前記プレスされた円盤は直径82mm~88mmであって、高さ4mm~8mmであることが好ましい。
【0056】
それに応じて、前記ステップ(d)では、円形断面のプレス機として、直径60mm~88mm、好ましくは直径80mmのものを用いてもよい。
【0057】
パンチング(punching)工程は、底面に位置する生地を外側へ押し、下側の生地の厚みを減らし、生地を外側に向かわせる作用があり、それにより、生地は外側の、プレスした外周に沿って集まり、前述の円形の縁が形成される。
【0058】
有利なことに、縁を形成した結果、微生物学的観点において、信頼性の高い製造工程が思いがけずもたらされた。実際、前述の縁の提供(provision)のおかげで、パンチング(punching)の後、包装の前のステップの間、トッピングが搬送面(transportation surface)に接触することが減少する。さらにまた、縁は、前述のステップ(i)の間、製品の正確な包装を容易にし、トッピングの表面と包装のフィルムとが接触することを防ぐ。
【0059】
前記ステップ(e)の間、さらに、水分活性(Aw)が好ましくは0.90~0.95であるトマトベースソースを含むトッピングを前記円盤の上に載せてもよい。このトマトベースソースは通常、トマトの果肉、トマトの濃縮物、エクストラバージンオリーブオイル及び食塩を含み、また、乾燥グルコースシロップ(dried glucose syrup)とショ糖を含んでもよい。
【0060】
前記ステップ(h)で冷ましている間、焼いたピザが20℃~25℃の温度になるまで、25~35分間常温に置いて冷やしてもよい。
【0061】
さらに、生地を置いておくステップ(f)の、特定の時間、温度、および湿度のプロファイルと、オーブンの中で生地を焼くステップ(g)および冷ますステップ(h)の特定の時間および温度のプロファイルとは、焼いたピザが望ましい硬さ、水分、味および見た目となるように、発明者によって最適化された。
【0062】
前述の包装のステップ(i)では、得られたピザは、例えば、内部にボール紙の包装(箱)が任意に挿入されたプラスチックのマルチパックなど、空気や光を防ぐ性質を有する金属化フィルムの包装に挿入される。
【0063】
本明細書における“ピザ”または“ピッツェッタ”という用語は、ベーカリー製品(bakery product)という意味であると解され、焼いた生地と表面のトッピングを含む。ベースは生地をこねることによって得られ、その生地は、小麦粉、水、酵母および食塩を含み、さらに、植物性脂肪および/又は植物油および/又はそれらのごく少量を含んでいてもよく、この生地はふくれ上がるまで置かれ、具が載せられ、そして焼かれる。このピザは通常、円形状であることが好ましく、食べた際に、焼いたベースの味と、通常より良い香りでかつ風味豊かなトッピングの味との間で、バランスの取れたコントラストを提供する。
【0064】
本発明のピザに用いられる“レディ・トゥ・イート(ready-to-eat)”という語句は、解凍や焼成といったあらゆる準備の必要がなく、そのまま食べられるピザという意味であると解される。
【0065】
本明細書における“常温”とは、気温18℃~35℃という意味であると解される。
【0066】
本明細書における“柔らかい(soft)”という用語は、本発明の柔らかい生地を焼いたベースは、動力計テクスチャ解析(dynamometer Texture Analyzer SMS)によって測定して、4~8N、好ましくは6Nの圧縮耐性があるという意味であると解される。
【0067】
本明細書における“外面(superficial)”とは、準備と焼成の間、上向きに露出している表面という意味であると解される。ピザに言及するときの“表面(surface)”とは、他に特に規定されていない場合、常に上部表面を指すものと解される。
【0068】
本明細書における“フレッシュチーズ(unripened cheese)”とは、ライパン工程(ripening process)は行わないがエージング工程(aging process)は行うチーズ、又は、ライパン期間(ripening period)を6ヶ月未満としてライパン工程(ripening process)を行うチーズという意味であると解される。
【0069】
“マスカルポーネ”とは、酢酸またはクエン酸を加えることによって、牛のミルククリームを熱凝固と酸凝固(heat-acid coagulation)することによって得られる乳製品という意味であると解される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】本発明の実施工程の2つのモードの要約フロー図を示す。
【
図2】好ましい実施の形態である実施例2の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
上述の通り、本発明は、焼きたてのピザと同等な見た目と官能特性を有し、柔軟性を有する焼いた生地のベースと、表面にはチーズを含むトッピングを有し、前記トッピングは保存料不使用であり、前記ベースと前記表面のトッピングとは実質的に同等の水分活性(Aw)である、常温で長期保存可能な包装されたレディ・トゥ・イートピザを提供するものである。
【0072】
本発明の製品は一切れ(single portions)として食べることができるように提供されることが好ましい。
【0073】
本発明の焼いたピザは、密閉包装の中、常温で、少なくとも60日間、好ましくは少なくとも90日間、さらに好ましくは少なくとも120日、保存することができる。
【0074】
したがって、本発明の製品は、食べる前に、さらなる焼成および/または解凍のステップを必要としない。いずれの態様においても、消費者個人の味の趣向や好みに応じて、本発明の製品はホットプレート又はオーブンを用いて温められるものであってもよい。
【0075】
さらに、本発明の製品は、例えば不活性ガス(窒素、二酸化炭素等)であるMA(modified atmosphere)の使用や真空にすることなく、空気や光を防ぐ性質を有する金属化フィルムの包装の中で、常温保存可能である。
【0076】
バリアー性を有する金属化フィルムの例としては、Manucor社によって流通しているSMMLフィルムや、同様のフィルムがあり、それらの二層構造のタイプのフィルムであってもよく、これらは、透湿度(water vapor transfer value)(g/m2/24時間)が1であり酸素透過度(oxygen transfer value)(g/m2/24時間)が10である。ただし、空気や光を防ぐ性質を有し、少なくとも60日間常温で保存することを保証するような、市販されている他のタイプの金属化フィルムも用いることができる。
【0077】
本発明の焼いたピッツェッタの他の特有な特徴は、表面のトッピングに保存料をまったく使用していないということである。特に有利なことは、表面のトッピングが通常は常温で長期間保存できない食材であるチーズや、好ましくはフレッシュチーズ(unripened cheese)から構成されていても、本製品は長期間保存できる食品であるということである。
【0078】
本発明の製品は上述の通り、表面を覆うトッピングに保存料を含んでいないにも関わらず、常温で長期間保存できる。そして、この貯蔵寿命の間、官能特性や構造的な特徴が実質的に変わらない状態で維持することができる。それは、前述の調理した柔らかい生地のベースと、前述のトッピングとが、実質的に同等な水分活性(Aw)を有しているためでもある。
【0079】
この実質的同等性によって、ベースからトッピングへと生じ得る水分の移行は、対応するトッピングからベースへの水分の移行によって実質的に相殺され、逆もまた同様であるため、ベースとトッピングの官能特性と味の一貫性(tasting consistency)の変化は製品の貯蔵寿命の間ずっと、最小限に抑えられる。
【0080】
最終製品の乾燥物質に対して最大2%量のエチルアルコールを用いて表面処理をすることによって、製品の持続期間をさらに延ばすことができる。
【0081】
本発明について、以下の実施例と
図1および
図2を参照してさらに説明するが、以下の実施例に限定されるわけではない。
【0082】
<実施例1>
[チーズがトッピングされたピッツェッタ]
最初のゆっくりと混ぜる段階では、周囲の気温を18℃に制御し、螺旋状の羽根がついた捏和機(spiral-hook kneader)の中で、15rpm(1分あたり15回転)というゆっくりした回転スピードでピザの生地を作製した。この生地は、表1に分量が示されている材料から作った。次の速く混ぜる段階では、50rpmで12分間混ぜ、先ほどのゆっくりと混ぜた後の生地を均一にした。最終的に、総重量2.5kgの生地を得た。
【0083】
【0084】
このようにして得た生のピザ生地に対し、次に、圧延により成形する手順を行った。レオン自動機株式会社のストレスフリー(登録商標)ローラー(機械による生地へのダメージを防ぐ)を備えたV4成形機を用いて、厚み約12mmの連続した層を得た。この連続した層を、レオン自動機株式会社(Rheon Japan)のマルチローラーストレッチャーSM2を用いた一連のサイジングローラーを通して、厚み約10mmのシート状の生地を得た。
【0085】
このようにして得た4枚のシートを、生地の弾力性を高めるために互いに重ね合わせ、次に、最終的な厚みが6mmの圧延した生地を得るために、圧延ステップ(rolling step)を行った。
【0086】
このようにして得た生地をプレスすることにより、直径85mmで約26gの80枚の円盤状の生地を得た。
【0087】
基準通り休ませた生地を得るため、先ほど形成した円盤状の生地がふくれ上がるように、気温22℃、相対湿度を約50%に制御し、約30分間置いた。
【0088】
そして、円盤状の生地は、幅5mm、高さ10mmの縁を作るために、直径80mmの円形断面のプレス機を使ってプレスされた。
【0089】
このようにして得た円盤状の生地に、次に、トッピング作業を行った。最初に、上記盛り上がった縁の内側の円盤状の生地の上にトッピングを載せた。フレッシュチーズ(unripened cheese)とマスカルポーネとの重量比が実質的に約80:20になるように、水分活性(Aw)が0.96のチーズベースの混合物を12g載せた。用いたフレッシュチーズの状態は柔らかく、低温殺菌した全乳と、ミルククリームと、塩とで構成されるものであった。そして、冷凍の種抜き黒オリーブをカットして小さなリング状にしたものを4gと、押し潰し乾燥させたオレガノの葉を0.1gとを、既にチーズベースの混合物がトッピングされた円盤状の生地の上記盛り上がった縁の内側に載せた。
【0090】
これに続き、発酵工程を34℃で75分間、相対湿度を90%に制御した雰囲気を有する部屋の中で行った。
【0091】
発酵が終わった時点で、円盤状の生地を平均温度210℃のコンベクションオーブンの中で9分間焼いて、本発明にかかる柔軟性を有する焼いた生地のオーブン加工品であって円状のピッツェッタの形状を有するものを得た。オーブンに入れたピザは、中央の厚みが約5mm、縁の厚みが約10mmであった。
【0092】
オーブンの中に2分置いたところで、ピザをベーキングトレーから取り出し、メッシュトレーの上に載せ、温度が約22℃になるまで約30分間冷ました。
【0093】
温度が25℃になった時点で、製品は包装機へと送られ、空気や光を防ぐ性質を有する金属化フィルムからなる容器型のパッケージに、ピッツェッタはそれぞれ1枚ずつ包装された。
【0094】
実施例1に従って作られた1枚のピッツェッタの重さは、約41gであった。
【0095】
<実施例2>
[チーズのトッピングとトマトベースソースのピッツェッタ]
本実施例のピザは、実施例1に示したレシピに従って成形したピザ生地を用いて、作製した。
【0096】
最初のゆっくりと混ぜる段階では、周囲の気温を18℃に制御し、螺旋状の羽根がついた捏和機(spiral-hook kneader)の中で、15rpm(1分あたり15回転)というゆっくりした回転スピードでピザの生地を作製した。この生地は、表1に分量が示されている材料から作った。次の速く混ぜる段階では、50rpmで12分間混ぜ、先ほどのゆっくりと混ぜた後の生地を均一にした。最終的に、総重量2.5kgの生地を得た。
【0097】
このようにして得た生のピザ生地を、ディバイダーラウンダーを用いた分割の成形にかけ、連続した層をカットし、それぞれ重さ26gのボール状に分割した。このようにして得たボール状の生地を、直径が85mm、高さが6mmの円盤状の生地が得られるまで圧延した。
【0098】
基準通り休ませた生地を得るため、先ほど形成した円盤状の生地がふくれ上がるように、気温23℃、相対湿度を約50%に制御し、約30分間置いた。
【0099】
そして、円盤状の生地は、幅5mm、高さ10mmの縁を作るために、直径80mmの円形断面のプレス機を使ってプレスされた。
【0100】
このようにして得た円盤状の生地に、次に、トッピング作業を行った。最初に、上記盛り上がった縁の内側の円盤状の生地の上に、水分活性(Aw)が0.93の、表2に分量が示されている材料からなるトマトベースソースを9g載せた。
【0101】
トマトベースソースの材料
【表2】
合計:100%
【0102】
そして、フレッシュチーズ(unripened cheese)とマスカルポーネとの重量比が実質的に78:22となるように、水分活性(Aw)が0.95のチーズベースの混合物を8g載せた。用いたフレッシュチーズの固さは柔らかく、低温殺菌した成分無調整牛乳と、ミルククリームと、塩とを含むものであった。
【0103】
これに続き、発酵工程を34℃で75分間、相対湿度が90%である雰囲気に制御した部屋の中で行った。
【0104】
発酵が終わった時点で、円盤状の生地を平均温度210℃のコンベクションオーブンの中で10分焼いて、本発明にかかる円状のピッツェッタの形状のオーブン加工品である柔軟性を有する焼いた生地を得た。オーブンに入れたピザは、中央の厚みが約5mm、縁の厚みが約10mmであった。
【0105】
オーブンの中に2分置いたところで、ピザをベーキングトレーから取り出し、メッシュトレーの上に載せ、温度が約22℃になるまで約30分間冷ました。
【0106】
温度が25℃になった時点で、製品は包装機へと送られ、空気や光を防ぐ性質を有する金属化フィルムからなる容器のようなパッケージに、ピッツェッタはそれぞれ1枚ずつ包装された。
【0107】
実施例2に従って作られた1枚のピッツェッタの重さは、約38gであった。
【0108】
実施例1及び実施例2のピザは両方とも、官能特性と見た目の特徴が、焼きたてのピザと同等であった。それぞれのピザは、その中央部分がトッピングによって十分に覆われており、トッピングは盛り上がった縁の内側のピザの表面全体に、十分に広がっている。トッピングで覆われていない表面は、実質的に、盛り上がったピザの縁に相当する。縁の色は変化に富んでおり、明るい部分は黄金色、暗い部分は茶色みがかっている。
【0109】
本発明のピザを味見する時、バランスの取れた、わずかな塩気のある調理したベースは、濃く(intense)ほぼほろ苦い味のトッピングによって変化する。同様に、重要なのは、ベースの生地と、トッピングに入れた場合はトマトベースソースとの両方に入っている、エクストラバージンオリーブオイルのわずかな苦みである。噛んだ時、ピザは柔らかく、硬くはない。
【0110】
香りに関して、ピザは、フレッシュチーズからなるトッピングによるほのかに甘い香りと、オリーブオイル、オレガノ、及び/又はトマトベースソースがもしあれば、温かく(warm)、香りのよい、バルサム(balsamic)のようなニュアンス(overtones)の香りとの、適度に強い香りを有している。ピザ生地(bread)とピザの耳(bread crust)の香りもまた、かなり際だっている。
【0111】
上記実施例1及び実施例2のピザは、その官能特性と構造の特徴とが実質的に変化せずに、貯蔵寿命(70日)の間ずっと維持され、さらに、微生物学的な観点からも、優れた状態であった。