(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】熱応答性のリップ調整アセンブリを有する押出ダイ
(51)【国際特許分類】
B29C 48/31 20190101AFI20220328BHJP
【FI】
B29C48/31
(21)【出願番号】P 2017184846
(22)【出願日】2017-09-26
【審査請求日】2020-09-24
(32)【優先日】2016-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391019120
【氏名又は名称】ノードソン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】デイル ピー ピッチ
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202013009000(DE,U1)
【文献】特開2005-238505(JP,A)
【文献】特表2009-531452(JP,A)
【文献】特開2005-297314(JP,A)
【文献】特開2002-178385(JP,A)
【文献】実開平03-036820(JP,U)
【文献】特開平8-85145(JP,A)
【文献】特開2007-190682(JP,A)
【文献】米国特許第5888556(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/313274(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出物を形成する押出ダイであって、
第1リップを有する第1ダイ本体部と、
前記第1リップと反対側に隣接して位置決めされた第2リップを有する第2ダイ本体部と、
前記第1リップから前記第2リップまで第1方向に延在するギャップと、
前記第1ダイ本体部に取り付けられ、前記第1リップの前記第2リップに対する位置を調整して前記ギャップを出る押出物の厚みを調整するように構成されたリップ調整アセンブリと、
を備え、
前記ギャップは、前記第1方向と垂直な第2方向にも延在しており、
前記リップ調整アセンブリは、前記第1リップに隣接する作動端と、前記作動端と反対側の露出端と、前記露出端と前記作動端との間の平行移動ユニットと、を有しており、
前記平行移動ユニットは、前記第1リップの位置を調整するべく前記作動端を移動するように構成されており、
前記平行移動ユニットは、トランスレータと、当該トランスレータに結合された取り付け部材と、中央軸を有し前記取り付け部材に結合されたロッドと、を有しており、
前記トランスレータは、前記ロッドに対して固定されており、
前記取り付け部材は、前記トランスレータを前記ロッドから結合解除できるように前記露出端からアクセス可能であるように構成されており、
前記トランスレータは、前記リップ調整アセンブリから取り外し可能であ
り、
前記リップ調整アセンブリは、前記ロッドの前記中央軸回りの回転を抑制するように構成された回転抑制部を有している
ことを特徴とする押出ダイ。
【請求項2】
押出物を形成する押出ダイであって、
第1リップを有する第1ダイ本体部と、
前記第1リップと反対側に隣接して位置決めされた第2リップを有する第2ダイ本体部と、
前記第1リップから前記第2リップまで第1方向に延在するギャップと、
前記第1ダイ本体部に取り付けられ、前記第1リップの前記第2リップに対する位置を調整して前記ギャップを出る押出物の厚みを調整するように構成されたリップ調整アセンブリと、
を備え、
前記ギャップは、前記第1方向と垂直な第2方向にも延在しており、
前記リップ調整アセンブリは、前記第1リップに隣接する作動端と、前記作動端と反対側の露出端と、前記露出端と前記作動端との間の平行移動ユニットと、を有しており、
前記平行移動ユニットは、前記第1リップの位置を調整するべく前記作動端を移動するように構成されており、
前記平行移動ユニットは、トランスレータと、当該トランスレータに結合された取り付け部材と、中央軸を有し前記取り付け部材に結合されたロッドと、を有しており、
前記トランスレータは、前記ロッドに対して固定されており、
前記取り付け部材は、前記トランスレータを前記ロッドから結合解除できるように前記露出端からアクセス可能であるように構成されており、
前記トランスレータは、前記リップ調整アセンブリから取り外し可能であり、
前記トランスレータは、トレイリング端部と、先端部と、前記トレイリング端部から前記先端部まで延在するチャンバと、を有しており、
前記取り付け部材は、前記トランスレータの前記先端部を前記ロッドに取り外し可能に結合しており、
前記取り付け部材は、前記チャンバを介して前記露出端からアクセス可能であり、
前記ロッドは、後端と、当該後端とは反対側の前端と、を有しており、
前記取り付け部材は、前記ロッドの前記後端に取り外し可能に結合されている
ことを特徴とする
押出ダイ。
【請求項3】
前記露出端は、前記平行移動ユニットへのアクセスを提供する
ように、妨げられていない
ことを特徴とする請求項1に記載の押出ダイ。
【請求項4】
前記回転抑制部は、前記トランスレータ及び前記ロッドに結合され
ており、
前記取り付け部材は、前記回転抑制部及び前記ロッドの両方に前記トランスレータを取り外し可能に結合している
ことを特徴とする請求項1に記載の押出ダイ。
【請求項5】
前記リップ調整アセンブリは、前記第2方向に沿って延びるチャネルと、中央軸を有する孔と、を有する調整バーを含んでおり、
前記孔は、前記中央軸に沿って延びて、前記チャネルと整列しており、
前記回転抑制部は、前記チャネルと噛み合っており、
前記ロッドは、前記孔を介して、前記リップ調整アセンブリの前記作動端に延びている
ことを特徴とする請求項4に記載の押出ダイ。
【請求項6】
前記調整バーは、前記第1ダイ本体部と一体品であり、
前記回転抑制部は、第1部と、前記第1部とは反対側の第2部と、を有しており、
前記トランスレータは、キャビティを有しており、
前記第1部は、前記キャビティと噛み合っており、
前記第2部は、前記チャネルと噛み合っている
ことを特徴とする請求項5に記載の押出ダイ。
【請求項7】
押出物を形成する押出ダイであって、
第1リップを有する第1ダイ本体部と、
前記第1リップと反対側に隣接して位置決めされた第2リップを有する第2ダイ本体部と、
前記第1リップから前記第2リップまで第1方向に延在するギャップと、
前記第1ダイ本体部に取り付けられ、前記第1リップの前記第2リップに対する位置を調整して前記ギャップを出る押出物の厚みを調整するように構成されたリップ調整アセンブリと、
を備え、
前記ギャップは、前記第1方向と垂直な第2方向にも延在しており、
前記リップ調整アセンブリは、前記第1リップに隣接する作動端と、前記作動端と反対側の露出端と、前記露出端と前記作動端との間の平行移動ユニットと、を有しており、
前記平行移動ユニットは、前記第1リップの位置を調整するべく前記作動端を移動するように構成されており、
前記平行移動ユニットは、トランスレータと、当該トランスレータに結合された取り付け部材と、中央軸を有し前記取り付け部材に結合されたロッドと、を有しており、
前記トランスレータは、前記ロッドに対して固定されており、
前記取り付け部材は、前記トランスレータを前記ロッドから結合解除できるように前記露出端からアクセス可能であるように構成されており、
前記トランスレータは、前記リップ調整アセンブリから取り外し可能であり、
前記リップ調整アセンブリは、第1スタンドオフフレームと、前記第1スタンドオフフレームとは反対側の第2スタンドオフフレームと、前記第1及び第2スタンドオフフレームの間に配置された空間と、を有しており、
前記第1及び第2スタンドオフフレームの各々が、前記空間内に前記トランスレータを支持している
ことを特徴とする
押出ダイ。
【請求項8】
前記リップ調整アセンブリは、前記第2方向に沿って互いに対して整列された複数の前記平行移動ユニットを含んでおり、
前記第1及び第2スタンドオフフレームの各々が、前記複数の平行移動ユニットを支持している
ことを特徴とする請求項7に記載の押出ダイ。
【請求項9】
前記第1及び第2スタンドオフフレームの各々は、頂部、底部、第1側面、当該第1側面から間隔を空けた第2側面、及び、1または2以上の窓部、を含んでおり、
前記リップ調整アセンブリは、第1キー溝と、当該第1キー溝とは反対側の第2キー溝と、を有する調整バーを有しており、
前記第1及び第2スタンドオフフレームの前記第1及び第2底部は、それぞれ、前記第1及び第2キー溝に取り付けられる第1及び第2インターロック部を有している
ことを特徴とする請求項7に記載の押出ダイ。
【請求項10】
前記ロッドは、前記中央軸に沿って延びており、
前記調整バーは、孔を有しており、
前記ロッドは、前記孔を通って、前記リップ調整アセンブリの前記作動端まで延びている
ことを特徴とする請求項9に記載の押出ダイ。
【請求項11】
前記リップ調整アセンブリは、環境冷却用に構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の押出ダイ。
【請求項12】
前記リップ調整アセンブリは、強制エア冷却用に構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の押出ダイ。
【請求項13】
前記リップ調整アセンブリは、前記ギャップを調整するために前記第1リップを押すように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の押出ダイ。
【請求項14】
前記リップ調整アセンブリは、前記ギャップを調整するために前記第1リップを押す、及び、引き込むように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の押出ダイ。
【請求項15】
押出ダイのダイ本体部に取り付けられたリップ調整アセンブリの1または2以上の構成要素を交換するための方法であって、
前記リップ調整アセンブリの露出端を介して、前記リップ調整アセンブリの平行移動ユニットにアクセスする工程と、
前記平行移動ユニットのトランスレータから調整アクチュエータを取り外す工程と、
前記平行移動ユニットのロッドから前記トランスレータを結合解除して、前記トランスレータを前記リップ調整アセンブリから前記ロッドに対して取り外し可能とする工程と、
前記結合解除工程の後で、前記トランスレータを前記リップ調整アセンブリから取り外す工程と、
前記平行移動ユニットの第1要素を、前記平行移動ユニットの第2要素で交換する工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記結合解除工程の前に、
前記平行移動ユニットを前記リップ調整アセンブリ内に固定するリテーナアセンブリを取り外す工程
を更に備え、
前記交換工程の後に、
前記ロッドと整列するように前記トランスレータを前記リップ調整アセンブリ内に挿入する工程と、
取り付け部材を介して前記ロッドに前記トランスレータを結合する工程と、
前記結合工程の後、前記平行移動ユニットを前記リップ調整アセンブリに結合するために前記リテーナアセンブリを前記トランスレータ上に位置決めする工程と、
前記リテーナアセンブリを通して前記調整アクチュエータを挿入して前記平行移動ユニットのトランスレータに係合させる工程と、
を更に備えたことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱応答性のリップ調整アセンブリを有する押出ダイに関している。
【背景技術】
【0002】
押出ダイは、ポリマー(重合体)のフィルムやラミネート等を形成するために利用されている。押出ダイは、溶融したポリマー材料を、間隔を空けたリップによって形成されたギャップに強制的に通すことで、典型的には押出物と呼ばれる押出フィルムを形成する。押出物は、当該ギャップを出る時に冷却され、その後の処理にとって好適な形態にパッケージングするべく、容器ないし装置によって集められる。とりわけ、ギャップのサイズが、押出物の厚みないしゲージ(gauge)を規定し得る。熱応答性のリップ調整アセンブリが、押出物のゲージの、幅に関する変動と送り方向の変動との両方を制御することを助けるために利用され得る。リップ調整アセンブリは、典型的には、トランスレータと、当該トランスレータに結合されたロッドと、を有する。トランスレータは、温度変化に応答して膨張ないし収縮するように構成されている。ロッドは、トランスレータの膨張ないし収縮に応じて移動する。ロッドの移動が、リップの移動を引き起こし、必要な場合においてギャップ寸法が調整される。トランスレータの移動は、当該ギャップにおける、あるいは、当該ギャップの下流におけるゲージ測定に応じて、プロセス中に制御システムによって制御され得る。トランスレータは、ギャップ寸法を調整するために必要に応じて手動でも調整され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
典型的なリップ調整アセンブリの修理とメンテナンスとは、複雑で時間を要し得る。修理や交換のためにリップ調整アセンブリの内部部品にアクセスするための分解処理は、多数の部品の取り外しを必要とする。例えば、トランスレータ及びロッドにアクセスするためには、多数の部品を取り外す必要がある。例えば、カバープレート、リテーナバー、ワイヤボックス、等である。更に、これらの部品へのアクセスが、押出ダイの他の要素や、ギャップ近くのコレクタ装置によって、妨げられていることもある。意図された修理やと交換が完了した後の再組立も、複雑で時間を要し得る。結果として、押出フィルムを製造するために利用されるメンテナンスのために、長い時間のロスが生じている。時間のロスは、メンテナンスコストを増大させ、製造コストも増大させ、押出ダイの投資回収に不利な影響を与える。これらは全て、望ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、組立とメンテナンスとを簡略化するリップ調整アセンブリを有する押出ダイのニーズがある。本発明の一実施形態は、押出物を形成する押出ダイである。当該押出ダイは、1リップを有する第1ダイ本体部と、前記第1リップと反対側に隣接して位置決めされた第2リップを有する第2ダイ本体部と、前記第1リップから前記第2リップまで第1方向に延在するギャップと、を備える。前記ギャップは、前記第1方向と垂直な第2方向にも延在している。当該押出ダイは、前記第1ダイ本体部に取り付けられ、前記第1リップの前記第2リップに対する位置を調整して前記ギャップを出る押出物の厚みを調整するように構成されたリップ調整アセンブリを更に備える。前記リップ調整アセンブリは、前記第1リップに隣接する作動端と、前記作動端と反対側の露出端と、前記露出端と前記作動端との間の平行移動ユニットと、を有している。前記リップ調整アセンブリは、前記第2方向に対して角度的にオフセットするように位置決めされている。前記平行移動ユニットは、前記第1リップの位置を調整するべく前記作動端を移動するように構成されている。前記平行移動ユニットは、トランスレータと、当該トランスレータに結合された取り付け部材と、前記取り付け部材に結合されたロッドと、を有しており、前記トランスレータは、前記ロッドに対して固定されている。前記取り付け部材は、前記トランスレータを前記ロッドから結合解除できるように前記露出端からアクセス可能であるように構成されており、前記トランスレータは、前記リップ調整アセンブリから取り外し可能である。
【0005】
本発明の以上の要旨は、例示的な実施形態についての以下の詳細な説明と同様、添付の図面と一緒に読まれる時、より良く理解されるであろう。本発明の説明の目的で、本発明の例示的な実施形態が、図面に図示されている。もっとも、本発明は、図示の詳細な構成及び態様に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による押出ダイの上方斜視図である。
【0007】
【
図3A】
図3Aは、
図2の押出ダイの一部の断面図である。ダイ本体部に取り付けられたリップ調整アセンブリが図示されている。
【0008】
【
図3B】
図3Bは、
図3Aの押出ダイの一部の詳細な断面図である。押出ダイの隣接するリップ間のギャップが図示されている。
【0009】
【0010】
【0011】
【
図6】
図6は、
図4のリップ調整アセンブリの平行移動ユニットの縦断面図である。
【0012】
【
図7】
図7は、
図4のリップ調整アセンブリの一部の詳細な縦断面図である。
【0013】
【
図8A】
図8Aは、
図4のリップ調整アセンブリの第1スタンドオフフレームの斜視図である。
【
図8B】
図8Bは、
図4のリップ調整アセンブリの第2スタンドオフフレームの斜視図である。
【0014】
【
図9】
図6は、
図4のリップ調整アセンブリの調整バーの端部斜視図である。
【0015】
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態による押出ダイの斜視図である。リップ調整アセンブリが、環境冷却用に構成されている。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態による押出ダイの断面図である。リップ調整アセンブリが、環境冷却用に構成されている。
【0016】
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態による、
図1乃至
図11の押出ダイのメンテナンスを実施する方法を説明する図である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態による、
図1乃至
図11の押出ダイのメンテナンスを実施する方法を説明する図である。
【
図14】
図14は、本発明の一実施形態による、
図1乃至
図11の押出ダイのメンテナンスを実施する方法を説明する図である。
【
図15】
図15は、本発明の一実施形態による、
図1乃至
図11の押出ダイのメンテナンスを実施する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1乃至
図3Bを参照して、ポリマーフィルム2(押出物の一例)を形成するための押出ダイシステム1が図示されている。押出ダイシステム1は、押出ダイ10と、当該押出ダイ10に取り付けられたリップ調整アセンブリ100と、を備えている。リップ調整アセンブリ100は、押出ダイ10のギャップ20から出るポリマーフィルム2(押出物)のゲージを、局所的にも、押出ダイ10の幅Wに亘っても、制御する。(押出ダイ10の幅Wに亘って、あるいは、押出ダイ10の所定の領域において単に局所的に)押出物2のゲージが厚すぎると判断される場合、リップ調整アセンブリ100が起動され得て、ギャップ20の寸法が低減され、押出物のゲージが所望のゲージに低減される。図示のリップ調整アセンブリ100は、熱応答性のリップ調整アセンブリであり、以下に説明されるように、リップ調整アセンブリ100の1または2以上の構成要素の温度変化に応じて起動され得る。
【0018】
図示のリップ調整アセンブリ100は、プッシュロッド形式の実施形態として構成されて、リップ調整アセンブリ100は、ギャップ20を調整するべく、リップ16を押すように設計されている。別の実施形態では、リップ調整アセンブリ100は、プッシュプル形式の実施形態として構成されて、リップ調整アセンブリ100は、ギャップ20を調整するべく、リップ16を押すことも引くこともできるように設計されている。
【0019】
図3A及び
図3Bを参照して、押出ダイシステム1は、ポリマー材料を押出物2へと処理する。押出ダイシステム1は、溶融ユニット、押出ダイ10に結合されたフィードブロック装置、及び、押出ダイ10によって規定されてギャップ20で終わる1または2以上の通路22、を有し得る。溶融ユニットとフィードブロック装置とは、図面内に図示されていない。溶融ユニットは、ポリマー材料の温度を高めて、溶融ポリマーを形成する。溶融ポリマーは、フィードブロック装置に提供される。あるいは、ポリマー材料は、アダプタを介してダイに提供され得る。フィードブロック装置(またはアダプタ)は、溶融ポリマーを押出ダイ10の通路22へと案内する。通路22は、溶融ポリマーをギャップ20へと案内する。押出ダイシステム1は、ギャップ20の近位に配置された収集装置(不図示)を含み得る。それは、更なる処理のための形態で押出物2を収集するために利用され得る。本実施形態で用いられるポリマー材料は、熱可塑性ポリマー、合成樹脂、または、液晶ポリマーであり得る。もっとも、例えば接着剤のような他の流動可能な材料も、押出ダイシステム1を用いて処理され得る。更に、押出ダイシステム1は、単一のポリマー処理にも複数のポリマー処理にも利用され得る。例えば、フィードブロック装置と押出ダイ10とが、複数の異なる通路を規定し得て、その各々が、多成分押出物または多成分フィルムの形態でギャップ20から出るように様々なポリマー材料を処理して案内するように構成され得る。更に、ダイは、非ポリマー材料を処理するためにも利用され得る。
【0020】
図1乃至
図3Bに示すように、押出ダイ10は、第1ダイ本体部12と第2ダイ本体部14とを含んでおり、それらがギャップ20を規定している。ギャップ20を通って、押出物2は押出ダイ10から出る。第1ダイ本体部12と第2ダイ本体部14は、それぞれ、第1リップ16及び第2リップ18を含んでおり、それらが共にギャップ20の形態の出口開口を規定している。第1ダイ本体部12と第2ダイ本体部14は、第1方向4に沿って互いに対して反対側に位置している。これに関して、第1リップ16は、第2リップ18と反対側で隣接するように位置している。従って、ギャップ20は、第1リップ16から第2リップ18まで第1方向4に沿って延在しており、また、第1方向4に垂直な第2方向6に沿っても延在している。押出物2は、第1方向4及び第2方向6と垂直な第3方向8に沿ってギャップ20を出る。本実施形態では、第1方向4が厚み方向と称される方向であり、第2方向6が幅Wに整列されて幅方向と称され得る方向であり、第3方向8が流れ方向と称される方向である。図示のように、第1ダイ本体部12と第2ダイ本体部14とは、ギャップ距離Gを規定している。当該ギャップ距離Gは、押出ダイ10の幅Wに沿った所与の場所において第1リップ16と第2リップ18とを分離する距離である。ギャップ距離Gは、厚み方向(すなわち第1方向)4に平行である。前述のように、リップ調整アセンブリ100は、ギャップ距離Gを調整するべく、第1リップ16または第2リップ18の一方を移動するように動作可能である。キャップ距離Gが、前述のように、押出物2のゲージを制御する。
【0021】
図3Bに最も良く示されているように、第1リップ16と第2リップ18との少なくとも一方が、ギャップ20の調整を許容するべく移動可能である。図示の実施形態では、第1ダイ本体部12が、第1リップ16として図示された可動リップを含んでいる。可動リップ16は、撓みヒンジ部26と、当該撓みヒンジ部26に結合された係合部材30と、を含んでいる。係合部材30は、部分的に凹部28を規定している。それは、典型的には、撓み切欠部(flex cut)と呼ばれている。撓みヒンジ部26は、十分に薄いので、リップ調整アセンブリ100によって係合部材30に与えられる力に応じて曲がり得る。係合部材30は、リップ調整アセンブリ100の作動端102と接触している。係合部材30は、係合面32を有している。リップ調整アセンブリ100の作動端102、例えばロッド118の前端136は、リップ16の係合面32と接触している。
【0022】
図2及び
図3Bに示すように、リップ調整アセンブリ100は、押出ダイ10に取り付けられている。リップ調整アセンブリ100は、第2リップ18に対して第1リップ16を移動するように動作可能である。図示のように、リップ調整アセンブリ100は、複数の取り付けボルト42を介して第1ダイ本体部12の面40に取り付けられている。第1ダイ本体部12の面40は、第1方向4及び第2方向6に対して角度付けられており、取り付けられたリップ調整アセンブリ100は、全体として、第1方向4及び第2方向6に対して角度的にオフセットされている。別の実施形態では、第1ダイ本体部12の面40は、実質的に、押出ダイ10から押出物2が出る流れ方向8に垂直である。これに関して、リップ調整アセンブリ100は、第1方向4と略整列され、a)第2方向6とb)流れ方向8との両方に垂直である。
【0023】
図4乃至
図6を参照して、リップ調整アセンブリ100は、第1リップ16に隣接する作動端102と、中央軸Aに沿って作動端102から間隔を空けた露出端104と、を有している。作動端102は、リップ16と係合(当接作用)してリップ16の位置を調整するように設計されている。中央軸Xは、リップ調整アセンブリ100の中心線を規定して、第1方向4及び第2方向6に対して角度的にオフセットされている。もっとも、前述のように、リップ調整アセンブリ100の中心線は、a)第1方向4に整列されて、b)第2方向6と第3方向(流れ方向)8とに垂直であってもよい。リップ調整アセンブリ100は、平行移動ユニット110と、調整バー140と、調整バー140に対して平行移動ユニット110を支持する複数のスタンドオフフレーム160と、平行移動ユニット110をスタンドオフフレーム160に結合するリテーナアセンブリ180と、を有している。また、露出端104に隣接して接続箱115が設けられており、それは、平行移動ユニット110を動作させるための配線や電子部品を案内(収容)している。接続箱115は、リップ調整アセンブリ100の露出端104からオフセットされている。このことは、リップ調整アセンブリ100のリテーナアセンブリ180及び他の構成要素へのアクセスを改善し、メンテナンス作業の複雑さを低減することを助ける。露出端104は、平行移動ユニット110にアクセスを提供するよう、実質的に妨げられていない。リップ調整アセンブリ100の各要素が、以下に説明される。
【0024】
図4乃至
図6を参照して、平行移動ユニット110は、作動端102と露出端104との間で中央軸Aに沿って延在している。ここで用いられる平行移動ユニット110は、トランスレータ112と、トランスレータ112に結合された取り付け部材114と、トランスレータ112を当該ロッド118に固定するべく取り付け部材114に結合されたロッド118と、トランスレータ112に結合された調整アクチュエータ120と、を有している。
【0025】
リップ調整アセンブリ100は、また、図示のように、ロッド118の前端136に結合された調整ブロック128を有し得る。例えば、調整ブロック128は、図面に示されるようなプッシュロッド形式のリップ調整アセンブリ100にとって、選択的である。プッシュロッド形式のリップ調整アセンブリでは、平行移動ユニットが、ギャップ20を調整するべくリップ16を押圧するように構成される。別の実施形態では、リップ調整アセンブリ100が、プッシュプル形式のリップ調整アセンブリとして構成される。プッシュプル形式のリップ調整アセンブリでは、プッシュロッド118がリップ16を押圧してギャップ20のサイズを低減するのに用いられ、且つ、調整ブロック(調整ブロック128と同様であり得る)がリップ16を引いてギャップ20を開放する。このようなプッシュプル形式のリップ調整アセンブリにおいては、調整ブロックがダイのリップ16によって規定される溝内に着座する突出部を含む。トランスレータがロッド118を引き込ませる時、調整ブロックは、当該突出部と当該溝との間の干渉を介して、ギャップ20を調整するべくリップ16を引き込む。本発明の特徴は、プッシュロッド形式のリップ調整アセンブリでも、プッシュプル形式のリップ調整アセンブリでも、利用され得る。
【0026】
図6を参照して、トランスレータ112は、トレイリング端部122と、先端部124と、軸Aに沿ってトレイリング端部122から先端部124まで延在するチャンバ126と、加熱要素127を収容する細長孔129と、を有している。トランスレータは、また、調整インサート130を収容するインサートキャビティ(符号は付されていない)を含む。トランスレータ112の先端部124は、更に後述されるように、回転抑制部116を受容する取り付けキャビティ132を含む。
【0027】
図6の参照を継続して、ロッド118は、中央軸Aに沿って延びており、後端134と、軸Aに沿って後端134と反対側の前端136と、を規定している。取り付け部材114は、ロッド118の後端134に、取り外し可能に結合されている。前端136は、調整ブロック128に結合され、これを支持している。調整ブロック128は、取り付けボルト(符号は付されていない)を介してロッド118の前端に取り付けられており、ロッド118の移動が調整ブロック128の移動を引き起こす。トランスレータ112の先端部124は、ロッド118の後端134に押圧力を伝えるように構成されている。そして、ロッド118の前端136が、当該押圧力を第1リップ16に伝える。ロッド118は、選択的に、例えば中実ロッドのような、単一のモノシリック体によって規定され得る。
【0028】
更に、前述のように、プッシュプル形式のリップ調整アセンブリの場合、トランスレータは、押圧力をリップ16に伝えると共に、引込力をもリップ16に伝えることができる。このような実施形態では、調整ブロックがロッド118の前端136に取り付けられて、ロッド118の移動が調整ブロック128の移動を引き起こす。押圧力は、前述のようにリップ16に適用される。一方、トランスレータ112の先端部124は、ロッド118の後端134に引込力を伝えるように構成されており、これが調整ブロックを後方に彦込ませる。そして、ロッド118の調整ブロックが、当該引込力を第1リップ16に伝える。
【0029】
図6及び
図7に示すように、取り付け部材114は、トランスレータ112をロッド118の後端135に固定している。取り付け部材114は、また、トランスレータ112をロッド118から結合解除するように、露出端104からアクセス可能であるように構成されており、トランスレータ112は、必要に応じて、リップ調整アセンブリ100から取り外し可能である。具体的には、トランスレータ112は、第1ダイ本体部12やリップ調整アセンブリ100の他の要素からロッド118を結合解除する必要無しに、ロッド118についてリップ調整アセンブリから取り外し可能である。
【0030】
図4乃至
図6を参照して、調整アクチュエータ120は、トランスレータ112内に収容された調整インサート130を介して、トランスレータ112に移動可能に結合されている。調整アクチュエータ120は、調整ネジ138と調整ナット139とを有している。調整ネジ138は、インサート130と調整ナット139とに螺合されている。調整ナット139は、一方で、リテーナアセンブリ180に対して回転に関して固定されている。従って、オペレータによる調整ネジ138の回転によって、固定された調整ナット139に対して、トランスレータ112が中央軸Aに沿って移動する。トランスレータの移動の方向は、調整ネジ138が回転される方向に依存する。第1回転方向への回転により、トランスレータ112は露出端104に向かって移動し、第1回転方向とは逆の第2回転方向への回転により、トランスレータ112はリップ16に向かって移動する。調整アクチュエータ120は、トランスレータ112乃至ロッド118を手動で平行移動させるように利用されてもよい。これにより、リップ16の位置を手動で変更させ、ギャップ20を手動で調整させることが可能である。
【0031】
図4、
図7及び
図9は、リップ調整アセンブリ100の調整バー140を図示している。調整バー140は、トランスレータ112と、スタンドオフフレーム160と、ロッド118と、を支持している。調整バー140は、取り付けボルト42(
図3Aに示された取り付けボルト)を介して第1ダイ本体部12に取り付けられるように構成された調整本体部142を有している。調整バー140は、第1ダイ本体部12に取り付けられた分離部として図示されているが、調整バー140と第1ダイ本体部12とは、一体品であってもよい。調整本体部142は、係合端部144、中央軸Aに沿って係合端部144と反対側の先端部146、外側148a、及び、第1ダイ本体部12に面する内側148b、を含んでいる。調整バー140を第1ダイ本体部12に固定する取り付けボルト42は、調整バー140の外側148aからアクセス可能である。これにより、オペレータは、リップ調整アセンブリ100または押出ダイ10の他の構成要素を取り外す必要なしに、直接的に取り付けボルト42にアクセス可能である。カバープレート137(
図3A及び
図6)が、調整バー140の先端部に結合され、調整ブロック128を覆っている。調整本体部142は、第2方向6に沿って互いに対して間隔を空けた対向する第1側端部149aと第2側端部149bをも含んでいる。調整バー140は、第1側端部149aから第2側端部149bまで延びる幅Xを規定している。
【0032】
図7及び
図9を参照して、調整バー140は、平行移動ユニット110の回転抑制部116の一部を受容するチャネル150を含んでいる。調整本体部142、特に係合端部144は、第1側面151a、第1側面151aに面する(対向する)第2側面151b、及び、第1側面151aから第2側面151bに延びる底面151c、を含んでいる。これらの表面151a、151b、151cが、共にチャネル150を規定している。調整本体部142は、中央軸Aに垂直な方向9に沿って第1表面151aから第2表面151bに延びるチャネル寸法Yを規定している。チャネル150は、また、調整バー140の第2方向6にも延びて、幅Xを規定している。チャネル寸法Yは、回転抑制部116の一部の同様の寸法に倣っている。この点に関して、回転抑制部116は、チャネル150内で回転について固定されている。
【0033】
図4、
図7及び
図9を参照して、調整バー140は、更に、各々が平行移動ユニット110のロッド118を受容する複数の細長い孔152を含んでいる。各孔152は、チャネル150(あるいは底面151c)から先端部146まで調整本体部142を通って延びている。各孔152は、調整バー140を通ってその先端部146の外へと延びるロッド118を受容するサイズとなっている。
【0034】
図4、
図7及び
図9の参照を継続して、調整バー140、特に係合端部144は、第1キー溝154と、第1キー溝154と反対側の第2キー溝156と、を有している。第1キー溝154及び第2キー溝156は、第1及び第2スタンドオフフレーム160を受容して保持している。係合端部144は、チャネル150に対して横方向に延在する固定孔157を含んでいる。固定孔157は、スタンドオフフレーム160a、160bを調整バー140に取り付けるボルト169(
図7参照)を受容している。これは、更に後述される。更に、調整バー140は、第1ダイ本体部12に係合する畝部158のような他の取り付け特徴部をも含む。
【0035】
図4及び
図7に示すように、リップ調整アセンブリ100は、トランスレータ112とロッド118とに結合された回転抑制部116を含んでいる。回転抑制部116は、中央軸A回りのロッド118の回転を抑制するように構成されている。回転抑制部116は、トランスレータ112のキャビティ132と噛み合う第1部119aと、調整バー140のチャネル150と噛み合う第2部119bと、を含んでいる。前述のように、第1部119a及び第2部119bの両方の断面寸法は、キャビティ132及びチャネル150の対応する寸法(すなわち、寸法Y)と同様である。これにより、回転抑制部116は、トランスレータ112とロッド118との両方に対して、回転について固定されている。換言すれば、回転抑制部116は、トランスレータ112とロッド118との互いにタイする回転を固定している。これにより、調整アセンブリに近接する調整ブロック128の回転も抑制される。調整ブロック128の回転が、当該調整ブロック自身に近接ないし隣接する位置に固定されたリテーナバーとロッド118の前端136とによって抑制される、というように典型的なリップ調整アセンブリが設計されるという点で、回転抑制部116はユニークである。これは、調整ブロックやロッドにアクセスするために、リップ16、18に近接する様々な構成要素、例えばリテーナバー、の取り外しを要求していた。それは、時間を要し、面倒であった。
【0036】
次に、
図4及び
図5を参照して、リップ調整アセンブリ100は、第1スタンドオフフレーム160a及び第2スタンドオフフレーム160bのような複数のスタンドオフフレーム160を含んでいる。図示の実施形態では、第2スタンドオフフレーム160bは、第1スタンドオフフレーム160aに対向していて、それらの間に延在する中間空間161を規定している。第1スタンドオフフレーム160a及び第2スタンドオフフレーム160bは、中間空間161内にトランスレータ112を支持している。第1スタンドオフフレーム160a及び第2スタンドオフフレーム160bは、互いに同様であるから、一方のスタンドオフフレームのみが以下に説明される。本明細書において、参照符号160a、160b、160は、スタンドオフフレームを示すものとして、交換可能に用いられている。
【0037】
図8A及び
図8Bに最も良く示されているように、各スタンドオフフレーム160a、160bは、頂部162、頂部162と反対側の底部164、第1側面166、第2方向6(すなわち幅)に沿って第1側面166と反対側の第2側面170、及び、1または2以上の窓部168、を含んでいる。各フレームは、第1外側面163aと、トランスレータ112に面する第1外側面163aと反対側の内側面163bと、を含んでいる。各フレームの頂部162は、スタンドオフフレーム160の底部164に向かう方向に延びる頂部取り付け孔165を含んでいる。取り付けボルト181(
図5参照)が、頂部取り付け孔165を通って延びて、リテーナアセンブリ180をスタンドオフフレーム160a、160bに結合している。各スタンドオフフレーム160a、160bは、当該フレームの底部164から突出する畝部、すなわちインターロック部171a、171bを含んでいる。各インターロック部171a、171bは、調整バー140の各キー溝154、156と噛み合うようなサイズとなっている。具体的には、
図7に最も良く示されているように、第1スタンドオフフレーム160aは、第1キー溝154と噛み合う第1インターロック部171aを含んでおり、第2スタンドオフフレーム160bは、第2キー溝156と噛み合う第1インターロック部171bを含んでいる。各フレームの底部164は、第1側面166から第2側面170に向かう方向に沿って延びる側方取り付け孔167を有している。側方取り付け孔167は、固定ボルト169を受容するサイズとなっている。固定ホルト169は、
図5に最も良く示されているように、各スタンドオフフレーム160の底部164を調整バー140に取り付ける。
【0038】
図5を参照して、第1及び第2スタンドオフフレーム160は、2以上の平行移動ユニット110を支持するように構成されている。具体的には、リップ調整アセンブリ100は、第2方向6に沿って互いに整列された複数の平行移動ユニット110を含んでいる。第1及び第2スタンドオフフレーム160a、160bは、複数の平行移動ユニット110を支持している。図示の実施形態では、第1及び第2スタンドオフフレーム160a、160bが、3つの平行移動ユニット110a、110b、110cを支持している。スタンドオフフレーム160は、3より多い平行移動ユニット110を支持するサイズとなっている。典型的なリップ調整アセンブリ100は、平行移動ユニット毎に1つのフレームを有している。従って、ここで説明されるスタンドオフフレーム160は、複数の平行移動ユニット110を支持しており、典型的なリップ調整アセンブリを超えた重量上の節約に帰結している。
【0039】
リテーナアセンブリ180は、
図4及び
図5に最も良く示されている。リテーナアセンブリ180は、スペーサ182と、リテーナプレート184と、を含んでいる。スペーサ182は、スタンドオフフレーム160の頂部162に隣接して配置されている。スペーサは、スタンドオフフレーム160の頂部取り付け孔165に整列する取り付け孔185と、調整ネジ138を受容するサイズの中央孔186と、を含んでいる。リテーナプレート184は、スペーサ182の取り付け孔185とスタンドオフフレーム160の頂部取り付け孔165とに整列する取り付け孔187を含んでいる。リテーナプレート184は、調整ネジ138を受容するサイズの中央孔188を含んでいる。スペーサ182の中央孔186とリテーナプレート184の中央孔188とは、それぞれ、第1保持部189aと、第2保持部189bと、を含んでいる。第1及び第2保持部189a、189bは、調整ナット139の対応部分と係合しており、調整ナット139はリテーナアセンブリ180に対して回転について固定されている。取り付けボルト181は、リテーナプレート184の取り付け孔187とスペーサの取り付け孔185とを貫いて、スタンドオフフレーム160の頂部取り付け孔165と係合している。これにより、取り付けボルト181は、リテーナアセンブリ180をスタンドオフフレーム160に固定し、一方、リテーナアセンブリ180は、調整アクチュエータ120の調整ナット139に固定される。この点に関して、リテーナアセンブリ180は、平行移動ユニット110をスタンドオフフレーム160に固定している。
【0040】
図1乃至
図9に示されたリップ調整アセンブリ100は、強制的なエア冷却用に構成されており、平行移動ユニット110の上方にカバー111を含んでいる(
図1参照)。従って、リップ調整アセンブリ100は、冷却を助けるべくエア(空気)をトランスレータ112の周囲に強制的に送り込むために、エア制御装置とエア導管とを含み得る。例えば、強制的なエア冷却は、トランスレータ112の温度をより迅速に低下させることを助け得る。これは、リップ調整アセンブリ100の制御指令への応答速度を高め得る。別の実施形態では、押出ダイシステム1は、環境冷却用に構成され得る。例えば、
図10及び
図11の押出ダイは、そのようなタイプである。
図10及び
図11においては、リップ調整アセンブリ200が、第1ダイ本体部12に取り付けられている。リップ調整アセンブリ200は、
図1乃至
図9を用いて前述されたリップ調整アセンブリ100と略同様である。リップ調整アセンブリ100とリップ調整アセンブリ200とに共通する特徴には、同様の参照符号を付してある。
図10及び
図11の実施形態においては、リップ調整アセンブリ200が、トランスレータ112に隣接するカバーを有しておらず、環境空気に曝されている。これにより、リップ調整アセンブリ200は、環境冷却用に構成されている。
【0041】
本発明の一実施形態は、第1ダイ本体部12に取り付けられたリップ調整アセンブリ100、200を含む押出ダイ10を組み立てる方法である。押出ダイ及びリップ調整アセンブリは、製造中、あるいは、設置場所において、押出ダイ10及びリップ調整アセンブリ100(または200)の前述の説明に従って、組み立てられ得る。
【0042】
使用中、例えば典型的なメンテナンス作業が押出ダイに実施される時に、ある構成要素が交換される必要があるかもしれない。リップ調整アセンブリ100、200は、メンテナンス作業を容易にするように構成されており、典型的な(従来の)リップ調整アセンブリで利用されていた典型的な(従来の)メンテナンス手順と比較して、リップ調整アセンブリ100、200のトランスレータ及び他の構成要素にアクセスするための工程がより少なくなっている。従って、本発明の一実施形態は、押出ダイ10及びリップ調整アセンブリ100、200にメンテナンス作業を実施する方法を含んでおり、それは
図12乃至
図17に図示されている。ここで、「メンテナンス作業」とは、リップ調整アセンブリを分解すること、その構成要素を交換ないし修理すること、そして、当該リップ調整アセンブリを再組み立てすること、を含んでいる。
【0043】
図12乃至
図17を参照して、当該方法は、リップ調整アセンブリの露出端104を介してリップ調整アセンブリのトランスレータにアクセスする工程を含む。当該アクセス工程は、リップ調整アセンブリ100からリテーナアセンブリ180を取り外す。
図12及び
図13に示されるように、当該アクセス工程は、リテーナアセンブリ180から取り付けボルト181を取り外す工程を含み、その後、リテーナプレート184を取り外す工程を含む。その後、
図14に示すように、当該方法は、トランスレータ112から調整アクチュエータ120を取り外す工程に進む。
図15に示すように、スペーサ182が、第1及び第2スタンドオフフレーム160から取り外される。次に、
図16A及び
図16Bに示すように、トランスレータ112が、ロッド118から結合解除される。工具108が、チャンバ126を通って、取り付け部材114と係合される。工具108は、ロッド118から取り付け部材114を結合解除するように起動される。これにより、トランスレータ112がロッド118から結合解除される。
図17A及び
図17Bにおいて、トランスレータ112は、リップ調整アセンブリ100から取り外されるが、ロッド118は元の位置のままである。
【0044】
トランスレータ112がリップ調整アセンブリ100から取り外された状態で、平行移動ユニット110の任意の必要な構成要素、例えばネジ付き調整インサート130やトランスレータ等、が交換され得る。交換工程の後で、トランスレータ112は、ロッド118と整列するようにリップ調整アセンブリ100内に戻される。トランスレータ112は、工具108を用いて、取り付け部材114を介して、ロッド118に再結合される。トランスレータ112がロッド118と結合された後で、スペーサ182は第1及び第2スタンドオフフレーム160の頂部162上に位置決めされる。調整アクチュエータ120は、スペーサ182を介して、トランスレータ112と係合される。その後、リテーナプレート184が、スペーサ182に結合される。ボルトが、リテーナアセンブリ180を平行移動ユニット110に固定する。
【0045】
添付の特許請求の範囲の広い範囲から逸脱することなく、本明細書の内容に対する様々な修正及び変更がなされ得る、ということが当業者に理解されるであろう。当該修正ないし変更の幾つかは、前述されているし、他は、当業者に自明であろう。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ制限される。