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特許7046558目標軌道生成装置および目標軌道生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】目標軌道生成装置および目標軌道生成方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/06 20060101AFI20220328BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W30/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017202389
(22)【出願日】2017-10-19
(65)【公開番号】P2019073229
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真也
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-230862(JP,A)
【文献】特開平08-016982(JP,A)
【文献】特開2012-131460(JP,A)
【文献】特開平11-296229(JP,A)
【文献】特開2016-060223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/06
B60R 21/00
B60W 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動開始位置から目標位置まで車両を移動させる際の目標軌道を生成するための目標軌道生成装置であって、
上記移動開始位置から車両の進行方向および上記目標位置から前方方向に、互いに接する固定半径の2つの円を設定可能か否かを判定する2円設定判定部と、
上記互いに接する固定半径の2つの円を設定可能であると上記2円設定判定部により判定された場合、上記2つの円を2つの仮想図形として設定する2図形設定部と、
上記互いに接する固定半径の2つの円を設定可能ではないと上記2円設定判定部により判定された場合、上記移動開始位置を通る上記固定半径の第1の円、上記目標位置を通る上記固定半径の第2の円、並びに、上記第1の円および上記第2の円の両方に接する補助図形を3つの上記仮想図形として設定する3図形設定部と、
上記2図形設定部により設定された上記2つの仮想図形または上記3図形設定部により設定された上記3つの仮想図形に沿って順次移動する経路を上記目標軌道として生成する軌道生成部とを備え、
上記3図形設定部は、上記第1の円の中心点と上記第2の円の中心点とを結ぶ線の長さが所定長以下の場合に、上記第1の円および上記第2の円の両方に接する上記固定半径の第3の円を上記補助図形として設定する一方、上記所定長より長い場合に、上記第1の円と上記第2の円の両方に接する接線を上記補助図形として設定する
ことを特徴とする目標軌道生成装置。
【請求項2】
上記固定半径は、上記車両のステアリングが直進方向を示す初期舵角から一定速度で一定時間だけ一の方向へ操舵した後、一定速度で一定時間だけ上記一の方向とは逆の方向へ操舵することによって上記ステアリングを上記初期舵角に戻すまでの間に車両の向きを所定角度変えると想定した場合に描かれるクロソイド曲線を繋げることによって生成される円の半径とする
ことを特徴とする請求項1に記載の目標軌道生成装置。
【請求項3】
移動開始位置から目標位置まで車両を移動させる際の目標軌道を生成するための目標軌道生成方法であって、
目標軌道生成装置の2円設定判定部が、上記移動開始位置から車両の進行方向および上記目標位置から前方方向に、互いに接する固定半径の2つの円を設定可能か否かを判定する第1ステップと、
上記目標軌道生成装置の2図形設定部が、上記互いに接する固定半径の2つの円を設定可能であると上記2円設定判定部により判定された場合、上記2つの円を2つの仮想図形として設定する一方、上記目標軌道生成装置の3図形設定部が、上記互いに接する固定半径の2つの円を設定可能ではないと上記2円設定判定部により判定された場合、上記移動開始位置を通る上記固定半径の第1の円、上記目標位置を通る上記固定半径の第2の円、並びに、上記第1の円および上記第2の円の両方に接する補助図形を3つの上記仮想図形として設定する第2ステップと、
上記目標軌道生成装置の軌道生成部が、上記2図形設定部により設定された上記2つの仮想図形または上記3図形設定部により設定された上記3つの仮想図形に沿って順次移動する経路を上記目標軌道として生成する第3ステップとを有し、
上記第2ステップにおいて上記3図形設定部は、上記第1の円の中心点と上記第2の円の中心点とを結ぶ線の長さが所定長以下の場合に、上記第1の円および上記第2の円の両方に接する上記固定半径の第3の円を上記補助図形として設定する一方、上記所定長より長い場合に、上記第1の円と上記第2の円の両方に接する接線を上記補助図形として設定する
ことを特徴とする目標軌道生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標軌道生成装置および目標軌道生成方法に関し、特に、車両を目標位置まで移動させる際の移動経路に相当する目標軌道を生成するための装置および方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のステアリングを自動制御し、あらかじめ生成した移動経路上を走行させながら、車両を駐車場等の目標位置に移動させるようにしたシステムが知られている。駐車位置までの移動経路を生成する方法の1つとして、複数の仮想的な円を設定し、それらの円弧に沿って順次移動するように移動経路を生成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の目標軌道算出装置では、障害物が存在しない場合は、起動位置および移動開始位置を通る前進円と、移動開始位置および駐車位置を通り前進円に接する後退円との半径を、両円における舵の切角値を示す総合値が所定値以下になる条件下で設定し、設定したそれぞれの半径の両円の弧に沿う軌道を目標軌道として算出するようにしている。一方、障害物が存在する場合は、起動位置を通る前進円と駐車位置を通る後退円とが障害物を迂回回避する補助円を介して接するように、3つの円を設定、設定したそれぞれの半径の両円の弧に沿う軌道を目標軌道として算出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-131460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、駐車支援を利用して移動を開始する位置(移動開始位置)と駐車位置(目標位置)との相対関係によっては、2つの円によって目標軌跡を算出することができない場合があるが、そのような場合については何ら考慮されていない。また、上記特許文献1に記載の技術では、設定する複数の円(円弧)の位置だけでなく、半径もパラメータとして計算を行っていることから、経路計算のバリエーションが増えてしまい、処理に大きな負荷がかかってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、移動開始位置と目標位置との相対関係によらず、移動開始位置から目標位置まで車両を移動させる際の目標軌道を少ない計算負荷で生成することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明では、移動開始位置から車両の進行方向および目標位置から前方方向に、互いに接する固定半径の2つの円を設定可能か否かを判定し、互いに接する固定半径の2つの円を設定可能な場合は、当該2つの円を2つの仮想図形として設定する一方、互いに接する固定半径の2つの円を設定可能でない場合は、移動開始位置を通る固定半径の第1の円と、目標位置を通る固定半径の第2の円と、第1の円および第2の円の両方に接する補助図形とを3つの仮想図形として設定する。そして、以上のようにして設定された2つの仮想図形または3つの仮想図形に沿って順次移動する経路を目標軌道として生成するようにしている。そして補助図形に関し、第1の円の中心点と第2の円の中心点とを結ぶ線の長さが所定長以下の場合に、第1の円および第2の円の両方に接する固定半径の第3の円を補助図形として設定する一方、所定長より長い場合に、第1の円と第2の円の両方に接する接線を補助図形として設定するようにしている。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した本発明によれば、移動開始位置と目標位置との相対関係によって、互いに接する2つの円を仮想図形に設定してその円弧に沿った目標軌跡を生成することができない場合には、第1の円および第2の円と、それらの間を接続する補助図形との3つを仮想図形として設定して、当該3つの仮想図形に沿った目標軌跡を生成することができる。また、本発明によれば、何れの円も固定半径としているので、計算の際に使用する変動パラメータが少なくなって経路計算のバリエーションが減り、計算負荷を軽減することができる。これにより、本発明によれば、移動開始位置と目標位置との相対関係によらず、移動開始位置から目標位置まで車両を移動させる際の目標軌道を少ない計算負荷で生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る目標軌道生成装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】駐車場に自車両が停車した様子の一例を模式的に示す図である。
図3】位置座標データの一例を模式的に示す図である。
図4】固定半径円の説明に用いる図である。
図5】2円設定判定部の処理の説明に用いる図である。
図6】2図形設定部により設定される第1円および第2円の一例を示す図である。
図7】3図形設定部の処理の説明に用いる図である。
図8】3図形設定部の処理の説明に用いる図である。
図9】3図形設定部の処理の説明に用いる図である。
図10】本発明の一実施形態に係る目標軌道生成装置の動作例を示すフローチャートである。
図11】本発明の一実施形態に係る3図形設定部の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る目標軌道生成装置1の機能構成例を示すブロック図である。図1に示すように、目標軌道生成装置1には、車載装置2が接続されており、この車載装置2には、タッチパネル3および自動運転実行装置4が接続されている。
【0011】
本実施形態に係る目標軌道生成装置1は、車両に搭載された装置であり、車両が駐車スペースSP(図2)に駐車する際に、車両が現在位置から駐車スペースSPに至るまでの軌道を算出(生成)する。なお、本実施形態では、駐車スペースSPへの車両の駐車は、バック駐車により行われるものとする。以下、目標軌道生成装置1が搭載された車両を「自車両」という。目標軌道生成装置1は、算出した軌道を示す情報を、自車両に搭載された車載装置2に出力する。本実施形態に係る車載装置2は、入力した当該情報に基づいて、自動運転を実行する自動運転実行装置4を制御し、自動運転により自車両を現在位置から駐車スペースSPに自動で移動させ、自車両を駐車スペースSPに駐車させる。以下、自動運転により自車両を現在位置から駐車スペースSPに自動で移動させることを「自動駐車」という。
【0012】
タッチパネル3は、液晶表示パネル等の表示パネルと、表示パネルに重ねて設けられたタッチセンサとを備え、表示パネルにより各種画像を表示すると共に、タッチセンサにより車両の搭乗者によるタッチ操作を検出する。自動運転実行装置4は、自車両の各部を制御して、自動運転を実行する。自動運転実行装置4は、「車両の環境(車両が走行する周囲の状況、他の車両を含む障害物との離間距離、車両が走行する路面の状況等)を検出する各種センサ」や、「車両の状態(車両の現在位置や、進行方向、車速、加速度、ヨーレート、ギアの状態、ブレーキの状態等)を検出する各種センサ」、「車両の推進に関する各種機構(エンジンや、トランスミッション、ブレーキ、ステアリング等)を制御するECU」等に接続され、車両の環境および車両の状態に応じてECUを制御して自動運転を実行する。後述するように、自動運転実行装置4は、車載装置2から自動駐車開始コマンドを入力した場合、自車両を現在位置から駐車スペースSPまで自動運転により移動させる。
【0013】
車載装置2は、自動駐車に関し、以下の処理を実行する。すなわち、自車両の運転手は、自動駐車を希望する場合、駐車スペースSPの近傍に自車両を停車させる。そして、運転手は、タッチパネル3に所定のタッチ操作を行って、車載装置2に自動駐車の開始を指示する。図2は、複数の駐車スペースSPが形成された駐車場に自車両が停車した様子を模式的に示す図である。駐車場には、多くの場合、図2で示すように、白線HKで区切られた略長方形または略平行四辺形の駐車スペースSPが、複数、並んで設けられる。以下、図2に示すように、駐車スペースSPについて、中心部から駐車スペースSPの入口に向かう方向を「駐車スペース前方」といい、駐車スペース前方の逆方向を「駐車スペース後方」という。駐車スペース前方および駐車スペース後方は、駐車スペースSPが略長方形または略平行四辺形の場合、長辺に沿って延びる方向である。
【0014】
駐車スペースSPには、自車両以外の他の車両が駐車している場合があり、この場合、その駐車スペースSPに自車両は駐車できず、また、その駐車スペースSPに駐車する他の車両は、自車両が駐車スペースSPに駐車するときの障害物となる。この他、駐車場には、壁Wや、車両止め用のブロックBK等、自車両が駐車スペースSPに駐車するときに障害となる種々の障害物が存在する。
【0015】
自動駐車の開始の指示を受け付けた場合、車載装置2は、自車両の近傍の駐車スペースSPのうち、自車両を駐車させる駐車スペースSPを運転手に選択させる。駐車スペースSPを運転手に選択させる処理は、既存の方法によって適切に行われる。以下、一例について簡単に説明する。
【0016】
車両に、車両の前方、後方および側方を撮影するカメラが設けられる。車載装置2は、各カメラからの入力に基づいて、自車両周辺の俯瞰画像を生成すると共に、白線検出、障害物の画像認識を含む画像処理を行って、自車両の近傍の駐車スペースSPのうち、他の車両が駐車していない駐車スペースSPの俯瞰画像における領域を特定する。なお、駐車スペースSPの領域の特定に際し、障害物を検出するレーダ装置等のカメラ以外のセンサを利用してもよいことは勿論である。車載装置2は、他の車両が駐車していない駐車スペースSPの領域が明示された状態で俯瞰画像をタッチパネル3に表示する。その際、車載装置2は、任意の1つの駐車スペースSPをタッチ操作により選択可能な状態で、俯瞰画像を表示する。運転手は、タッチ操作を行って、自車両を駐車させることを希望する1つの駐車スペースSPを選択する。なお、車載装置2が、駐車スペースSPの領域が明示されていない状態で俯瞰画像をタッチパネル3に表示し、ユーザが、自車両を駐車させることを希望する駐車スペースSPの領域の四隅をタッチ操作し、車載装置2が、タッチ操作された四隅によって規定される領域を、ユーザにより選択された駐車スペースSPとして特定する構成でもよい。以下、ユーザが選択した駐車スペースSPを「希望駐車スペース」という。
【0017】
運転手により希望駐車スペースが選択されたことを検出すると、車載装置2は、位置座標データを生成する。図3は、図2の状況のときに車載装置2が生成する位置座標データの一例を説明に適した態様で模式的に示す図である。図3では、説明の便宜のため、図2の白線HKに対応する領域を破線で示している。位置座標データとは、緯度、経度を軸とする位置座標系における自車両領域AR1、希望駐車スペース領域AR2、障害物領域AR3、移動開始位置P1、目標位置P2、車両進行方向H1および前方方向H2を示す情報を含むデータである。なお、位置座標系における領域は、複数の点によって規定される多角形形状の領域として表される。
【0018】
自車両領域AR1とは、位置座標系における自車両の領域である。車載装置2には、GPSセンサを含む、自車両の位置を検出する各種センサが設けられており、車載装置2は、各種センサからの入力に基づいて、位置座標系における自車両領域AR1を算出する。希望駐車スペース領域AR2とは、位置座標系における希望駐車スペースの領域である。障害物領域AR3とは、位置座標系における障害物の領域である。車載装置2は、カメラ(レーダ装置等の障害物の検出に用いることが可能な他のセンサを搭載している場合は当該他のセンサを含む)からの入力に基づいて、障害物の領域を推定し、位置座標系における障害物の領域を算出する。
【0019】
移動開始位置P1とは、位置座標系における自車両の左右の後輪の中央の位置である。なお、移動開始位置P1を自車両領域AR1内の他の位置としてもよい。目標位置P2は、位置座標系において、自車両の直進方向が希望駐車スペースについての駐車スペース前方(図2)に沿った状態で、目標位置P2から駐車スペース前方に向かって延びる直線上に自車両の左右の後輪の中央の位置が至った状態となった場合、自車両のステアリングを真っ直ぐにした状態で自車両を後退させれば、そのまま自車両が駐車スペースSPに収まるような位置である。本実施形態では、目標位置P2は、希望駐車スペースにおいて、希望駐車スペースの中央の位置から駐車スペース前方に向かって所定距離だけ離間した位置とされる。車両進行方向H1とは、位置座標系における車両の進行方向である。前方方向H2とは、位置座標系における希望駐車スペースについての駐車スペース前方(図2)である。
【0020】
車載装置2は、位置座標データを生成した後、生成した位置座標データを目標軌道生成装置1に出力する。車載装置2は、位置座標データを出力した後、目標軌道生成装置1から、位置座標データに基づいて生成された自動駐車軌道情報を入力する。自動駐車軌道情報の内容、および、自動駐車軌道情報を入力した後の車載装置2の処理については後述する。
【0021】
図1に示すように、目標軌道生成装置1は、機能構成として、通信部10、位置座標データ取得部11、2円設定判定部12、2図形設定部13、3図形設定部14および軌道生成部15を備えている。また、目標軌道生成装置1は、記憶媒体として、位置座標データ記憶部20を備えている。上記各機能ブロック10~15は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック10~15は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0022】
通信部10は、所定の通信規格に従って、車載装置2と通信する。
【0023】
位置座標データ取得部11は、車載装置2が出力した位置座標データを入力し、取得する。位置座標データ取得部11は、取得した位置座標データを、位置座標データ記憶部20の所定の記憶領域に記憶させる。
【0024】
2円設定判定部12は、位置座標データ記憶部20が記憶する位置座標データに基づいて、移動開始位置P1から自車両の車両進行方向H1、および、目標位置P2から前方方向H2に、互いに接する2つの固定半径円Qを設定可能か否かを判定する。以下、2円設定判定部12の処理について説明する。
【0025】
まず、固定半径円Qについて説明する。図4は、固定半径円Qの説明に用いる図である。固定半径円Qは、固定値の半径の円である。固定半径円Qの半径の値は、以下の方法で定められる。すなわち、図4に示すように、自車両が固定半径円Qの外周の位置PS1aに位置しているとする。位置PS1aにおいて、自車両の進行方向は、矢印Y1に示すように、位置PS1aで固定半径円Qに接する接線SN1aと平行であり、自車両のステアリングの舵角は、車両の直進方向を示す初期舵角である。以下、固定半径円Qが、接線SN1aに平行に伸びるx軸と、これに直行するy軸により定義されるxy座標系に展開されているものとし、図中で右に向かう方向をx軸(+)方向、その逆をx軸(-)方向といい、図中で上に向かう方向をy軸(+)方向、その逆をy軸(-)方向という。
【0026】
固定半径円Qの半径の値は、図4に示すように、自車両が、位置PS1aから、固定半径円Qの外周に沿って、位置PS1aから中心角が120°分だけ離間した位置PS1bに至る場合に、スムーズな操舵によって移動ができるような値とされる。なお、位置PS1bにおいて、自車両の進行方向は、矢印Y2に示すように、位置PS1bで固定半径円Qに接する接線SN1bと平行であり、自車両のステアリングの舵角は、車両の直進方向を示す初期舵角である。これは、後に明らかとなる通り、本実施形態では、車両が現在位置から駐車スペースSPに至るまでの軌道に、固定半径円Qの円弧が含まれることになるため、固定半径円Qの円弧に沿って自車両が確実に走行できるようにすることを考慮したものである。また、位置PS1aと、位置PS1bとの中心角の大きさを「120°」としたのは、以下の理由である。すなわち、後述するように、本実施形態では、現在位置から駐車スペースSPに至るまでの軌道として、3つの固定半径円Qの円弧に沿った経路が算出される場合がある。そして、位置PS1aと、位置PS1bとの中心角の大きさを「120°」としたのは、3つの固定半径円Qが互いに接する場合において、第1の固定半径円Qと第2の固定半径円Qとの接点に位置する自車両が、第1の固定半径円Qの円弧に沿って、中心角が120°だけ離間した位置である第1の固定半径円Qと第3の固定半径円Qとの接点に移動し、当該接点において方向転換する場合に、できるだけスムーズに自車両が走行できるようにすることを考慮したものである。
【0027】
本実施形態において、具体的には、固定半径円Qの半径の値は、以下のようにして定められる。すなわち、自車両を位置PS1aから前進させると共に、ステアリングを初期舵角から一定速度で一定時間だけ一の方向(本例では、自車両を右に向かって旋回させる方向)へ操舵した後、中心角が60°分だけ離間した位置PS1cに至った時点で、当該一の方向へのステアリングの操舵を停止させる。周知のとおり、位置PS1aから位置PS1cまで、自車両は、クロソイド曲線に沿って移動するが、図4では、説明の便宜上、固定半径円Qの円弧に沿って移動するものとして線を描画している。さらに、自車両を位置PS1cから前進させると共に、ステアリングを当該一定速度で当該一定時間だけ当該一の方向とは逆の方向へ操舵することによってステアリングを初期舵角に戻し、自車両を、位置PS1aから中心角が120°分だけ離間した位置PS1bに至らせる。位置PS1cから位置PS1bまで、自車両は、クロソイド曲線に沿って移動する。そして、本実施形態では、位置PS1a、位置PS1cおよび位置PS1bを外周に含む円(特許請求の範囲における「クロソイド曲線を繋げることによって生成される円」に相当)の半径を、固定半径円Qの半径として定める。
【0028】
より詳細には、位置PS1aから位置PS1cのx軸方向の距離を距離Lxとし、y軸方向の距離を距離Lyとする。距離Lxは、位置PS1aから位置PS1cまでの移動にあたって、自車両がx軸(-)方向に移動する距離であり、距離Lyは、当該移動にあたって、自車両がy軸(+)方向に移動する距離である。なお、距離Lxおよび距離Lyの値は、事前のテストやシミューレーションの下、ハンドルをスムーズに操舵できるような値に定められる。このとき、位置PS1aおよび位置PS1cを対頂点とする長方形における長辺の長さは距離Lxであり、短辺の長さは距離Lyである。また、位置PS1cおよび位置PS1bを対頂点とする長方形、および、位置PS1bおよび位置PS1dを対頂点とする長方形についても、長辺の長さは距離Lxであり、短辺の長さは距離Lyである。位置PS1dは、位置PS1aから中心角が180°分だけ離間した位置である。位置PS1aと位置PS1cとのy軸方向の離間距離は「Lx・sin0°+Ly・cos0°」である。位置PS1cと位置PS1bとのy軸方向の離間距離は「Lx・sin60°+Ly・cos60°」である。位置PS1bと位置PS1dとのy軸方向の離間距離は「Lx・sin120°+Ly・cos120°」である。以上により、固定半径円Qの直径は、「(Lx・sin0°+Ly・cos0°)+(Lx・sin60°+Ly・cos60°)+(Lx・sin120°+Ly・cos120°)=2Lx・sin60°+Ly」となり、直径に基づいて半径が定まる。
【0029】
図5は、2円設定判定部12の処理の説明に用いる図である。2円設定判定部12は、位置座標系において、移動開始位置P1を始点として、車両進行方向H1に向かって延びる第1半直線HT1を算出する。また、2円設定判定部12は、位置座標系において、目標位置P2を始点として、前方方向H2に向かって延びる第2半直線HT2を算出する。そして、2円設定判定部12は、第1半直線HT1と第2半直線HT2とが、これら半直線の交点と目標位置P2との離間距離が閾値T1を下回った状態で、交わるか否かを判定する。つまり、2円設定判定部12は、計算上、第1半直線HT1と第2半直線HT2とが交わる場合であっても、これら半直線の交点と目標位置P2との離間距離が閾値T1以上の場合は、これら半直線が交わらないと判定する。後述するように、2円設定判定部12によって、これら半直線が交わると判定された場合、2つの固定半径円Qを利用して目標軌道(後述)が算出されるが、これら半直線の交点と目標位置P2との離間距離が閾値T1以上の場合は、駐車場の広さの制限から、算出された目標軌道に沿って自車両が走行することが現実にはできないか、または、著しく困難だからである。以下の説明では、単に、「第1半直線HT1と第2半直線HT2とが交わる」と表現する場合、これら半直線の交点と目標位置P2との離間距離が閾値T1を下回った状態でこれら半直線が交わることを意味する。
【0030】
図5(A)は、位置座標系において第1半直線HT1と第2半直線HT2とが交わる場合の例を模式的に示している。一方、図5(B)および図5(C)は、それぞれ、位置座標系において第1半直線HT1と第2半直線HT2とが交わらない場合の例を模式的に示している。2円設定判定部12は、第1半直線HT1と第2半直線HT2とが交わると判定した場合、移動開始位置P1から自車両の車両進行方向H1および目標位置P2から前方方向H2に、互いに接する2つの固定半径円Qを設定可能と判定する。一方、2円設定判定部12は、それ以外の場合、互いに接する2つの固定半径円Qを設定可能ではないと判定する。
【0031】
2図形設定部13は、互いに接する2つの固定半径円Qを設定可能であると2円設定判定部12により判定された場合に、以下の2つの第1円W1および第2円W2を仮想図形として設定する。第1円W1は、第1半直線HT1に接すると共に第2円W2に接する固定半径円Qであり、第2円W2は、第2半直線HT2に接すると共に第1円W1に接する固定半径円Qである。2図形設定部13は、所定のルールに従って、1つの第1円W1を設定すると共に、1つの第2円W2を設定する。所定のルールは、軌道生成部15によって第1円W1および第2円W2に基づいて算出される目標軌道の距離をできるだけ短くするといった観点や、軌道生成部15によって希望駐車スペースに自車両をバック駐車させる目標軌道が算出されるようにするといった観点の下、事前に適切に設定される。図6は、図5(A)で例示した状況の場合に、2図形設定部13により設定される第1円W1および第2円W2の一例を示している。
【0032】
3図形設定部14は、互いに接する2つの固定半径円Qを設定可能ではないと2円設定判定部12により判定された場合に、第1図形Y1、第2図形Y2および補助図形Zを仮想図形として設定する。以下、3図形設定部14の処理について詳述する。第1図形Y1は、特許請求の範囲の「第1の円」に相当し、第2図形Y2は、特許請求の範囲の「第2の円」に相当する。
【0033】
図7は、3図形設定部14の処理の説明に用いる図である。図7では、位置座標系において、第1半直線HT1と第2半直線HT2とが交わらない移動開始位置P1および目標位置P2を示している。図7に示すように、3図形形設定部14は、移動開始位置P1を通り、かつ、移動開始位置P1を通って自車両の車両進行方向H1に沿って延びる第1直線TT1に接する2つの固定半径円Qを仮想図形として仮設定する。以下、ここで仮設定された固定半径円Qを、「仮第1図形Q1A、Q1B」とする。図7に示すように、車両進行方向H1に向かって右側に仮設定された固定半径円Qが「仮第1図形Q1A」であり、左側に仮設定された固定半径円Qが「仮第1図形Q1B」である。
【0034】
さらに、図7に示すように、3図形設定部14は、目標位置P2を通り、かつ、目標位置P2を通って前方方向H2に沿って延びる第2直線TT2に接する2つの固定半径円Qを仮設定する。以下、ここで仮設定された固定半径円Qを、「仮第2図形Q2A、Q2B」とする。図7に示すように、前方方向H2に向かって右側に仮設定された固定半径円Qが「仮第2図形Q2A」であり、左側に仮設定された固定半径円Qが「仮第2図形Q2B」である。
【0035】
次いで、3図形設定部14は、「仮第1図形Q1Bと仮第2図形Q2Bとの組み合わせ」、および、「仮第1図形Q1Aと仮第2図形Q2Aとの組み合わせ」の2つの組み合わせを仮設定する。このように、本実施形態では、3図形設定部14は、「移動開始位置P1を通り車両進行方向H1に向かって左側に配置された仮第1図形と、目標位置P2を通り前方方向H2に向かって左側に配置された仮第2図形との組み合わせ」、および、「移動開始位置P1を通り車両進行方向H1に向かって右側に配置された仮第1図形と、目標位置P2を通り前方方向H2に向かって右側に配置された仮第2図形との組み合わせ」を仮設定する。しかしながら、仮第1図形と仮第2図形との他の組み合わせについても仮設定する構成でもよい。本例において、他の組み合わせは、「仮第1図形Q1Bと仮第2図形Q2Aとの組み合わせ」、および、「仮第1図形Q1Aと仮第2図形Q2Bとの組み合わせ」である。
【0036】
次いで、3図形設定部14は、上記の組み合わせ毎に、組み合わせを構成する2つの円のそれぞれに接し、互いに平行な2本の接線を仮設定する。図8(A)は、図7の例において、仮第1図形Q1Bと仮第2図形Q2Bとの組み合わせについて仮設定される2本の接線SS1a、SS1bを示している。また、図8(B)は、図7の例において、仮第1図形Q1Aと仮第2図形Q2Aとの組み合わせについて仮設定される2本の接線SS2a、SS2bを示している。
【0037】
次いで、3図形設定部14は、上記の組み合わせのそれぞれについて、仮第1図形Q1A、Q1B、仮第2図形Q2A、Q2Bおよび接線に従って移動開始位置P1から目標位置P2に至る経路を、接線毎に算出する。図8(A)の例では、3図形設定部14は、接線SS1aを通る経路として、太線で示す経路KR1aを算出する。経路KR1aは、図8(A)に示すように、移動開始位置P1→仮第1図形Q1Bと接線SS1aとの接点→接線SS1aと仮第2図形Q2Bとの接点→目標位置P2と移動する経路である。また、3図形設定部14は、接線SS1bを通る経路として、太線で示す経路KR1bを算出する。経路KR1bは、図8(A)に示すように、移動開始位置P1→仮第1図形Q1Bと接線SS1bとの接点→接線SS1bと仮第2図形Q2Bとの接点→目標位置P2と移動する経路である。
【0038】
また、図8(B)の例では、3図形設定部14は、接線SS2aを通る経路として、太線で示す経路KR2aを算出する。経路KR2aは、移動開始位置P1→仮第1図形Q1Aと接線SS2aとの接点→接線SS2aと仮第2図形Q2Aとの接点→目標位置P2と移動する経路である。また、3図形設定部14は、接線SS2bを通る経路として、太線で示す経路KR2bを算出する。経路KR2bは、移動開始位置P1→仮第1図形Q1Aと接線SS2bとの接点→接線SS2bと仮第2図形Q2Aとの接点→目標位置P2と移動する経路である。
【0039】
次いで、3図形設定部14は、上記の組み合わせ毎に算出した経路のそれぞれについて、経路上に障害物が存在するか否かを判定する。なお、経路上に障害物が存在するか否かの判定は、自車両の形状や、走行特性を踏まえ、自車両が経路を走行する場合に、障害物に影響を受けることなく経路を走行できるか否か、という観点から行われる。自車両の形状に関する情報や、走行特性に関する情報等、判定に必要な情報は事前に登録されている。例えば、図8(A)の例において、3図形設定部14は、経路KR1bについて、経路上に障害物が存在すると判定する。
【0040】
次いで、3図形設定部14は、障害物が存在すると判定した経路は除外して、上記の組み合わせのうち、最も長さの短い経路を有する組み合わせを特定する。例えば、図7の例において、説明の便宜上、仮に、障害物が存在しないと判定された経路が、経路KR1a(図8(A))、および、経路KR2a(図8(B))の2つであったとする。そして、これら2つの経路の長さの関係が、「経路KR1a<経路KR2a」であったとする。この場合、3図形設定部14は、最も長さの短い経路KR1aを有する組み合わせである「仮第1図形Q1Bと仮第2図形Q2Bとの組み合わせ」を特定する。
【0041】
次いで、3図形設定部14は、特定した組み合わせについての仮第1図形および仮第2図形を、それぞれ、第1図形Y1および第2図形Y2として設定する。例えば、図7の例において、3図形設定部14は、経路の長さが最も短くなる組み合わせとして、「仮第1図形Q1Bと仮第2図形Q2Bとの組み合わせ」を特定した場合、仮第1図形Q1Bを第1図形Y1として設定し、仮第2図形Q2Bを第2図形Y2として設定する。
【0042】
次いで、3図形設定部14は、設定した第1図形Y1の中心点と、設定した第2図形Y2の中心点とを結ぶ線の長さが、固定半径円Qの直径の2倍の長さ以下であるか否かを判定する。図9(A)は、第1図形Y1の中心点と第2図形Y2の中心点とを結ぶ線の長さが、固定半径円Qの直径の2倍の長さ以下の場合の一例を示す図である。図9(A)に示すように、この場合、位置座標系に、第1図形Y1と第2図形Y2との両方に接する固定半径円Qを描画することができる。図9(B)は、第1図形Y1の中心点と第2図形Y2の中心点を結ぶ線の長さが、固定半径円Qの直径の2倍の長さより長い場合の一例を示す図である。図9(B)に示すように、この場合、位置座標系に、第1図形Y1と第2図形Y2との両方に接する固定半径円Qを描画することができない。
【0043】
なお、本実施形態では、第1図形Y1の中心点と第2図形Y2の中心点とを結ぶ線の長さが、固定半径円Qの直径の2倍の長さ以下であるか否かを判定しており、「固定半径円Qの直径の2倍の長さ」が特許請求の範囲の「所定長」に相当する。ただし、所定長は、「固定半径円Qの直径の2倍の長さ」より一定のマージン分だけ短い長さであってもよい。
【0044】
3図形設定部14は、第1図形Y1の中心点と第2図形Y2の中心点とを結ぶ線の長さが、固定半径円Qの直径の2倍の長さ以下の場合、第1図形Y1および第2図形Y2の両方に接する固定半径円Qを補助図形Zとして設定する。図9(A)を用いて詳述すると、第1図形Y1および第2図形Y2の両方に接する固定半径円Qは、2つ描画することができる。図9(A)の例では、固定半径円Q9aと、固定半径円Q9bとである。3図形設定部14は、2つの固定半径円Qのうち、第1図形Y1および第2図形Y2を特定する際に、最も短い経路と判定された経路に含まれる接線に対応する固定半径円Qを補助図形Zとして設定する。ここで、第1図形Y1および第2図形Y2の両方に接し、互いに平行な接線は、2本、存在する。図9(A)の例では、接線SS3aおよび接線SS3bである。図9(A)の例において、接線SS3aが、最も短い経路と判定された経路に含まれる接線の場合、3図形設定部14は、接線SS3aに対応する固定半径円Q9aを補助図形Zとして設定する。
【0045】
3図形設定部14は、第1図形Y1の中心点と第2図形Y2の中心点とを結ぶ線の長さが、固定半径円Qの直径の2倍の長さより長い場合、第1図形Y1および第2図形Y2の両方に接する接線を補助図形Zとして設定する。上述のとおり、第1図形Y1および第2図形Y2の両方に接し、互いに平行な接線は、2本、存在するが、3図形設定部14は、最も短い経路と判定された経路に含まれる接線を、補助図形Zとして設定する。図9(B)の例において、接線SS4aと接線SS4bとのうち、接線SS4aが最も短い経路と判定された経路に含まれる接線の場合、3図形設定部14は、接線SS4aを補助図形Zとして設定する。
【0046】
軌道生成部15は、設定された仮想図形に基づいて目標軌道を算出する。軌道生成部15は、2円設定判定部12により2つの固定半径円Qを設定可能であると判定され、これに応じて2図形設定部13により、第1円W1および第2円W2が仮想図形として設定された場合と、2円設定判定部12により2つの固定半径円Qを設定可能ではないと判定され、これに応じて3図形設定部14により、第1図形Y1、第2図形Y2および補助図形Zが仮想図形として設定された場合とで異なる処理を実行する。以下、各場合の軌道生成部15の処理について詳述する。
【0047】
<2図形設定部13により仮想図形が設定された場合>
まず、2図形設定部13により仮想図形が設定された場合の軌道生成部15の処理について図6を援用して説明する。この場合、2図形設定部13は、第1半直線HT1、第1円W1、第2円W2および第2半直線HT2に沿って、移動開始位置P1から目標位置P2まで順次移動する経路KR3を目標軌道として算出する。軌道生成部15は、所定のルールに従って、目標軌道を算出する。所定のルールは、算出される目標軌道の距離をできるだけ短くするといった観点や、希望駐車スペースに自車両をバック駐車させる目標軌道が算出されるようにするといった観点の下、事前に適切に設定される。所定のルールに従って目標軌道を算出する点は、3図形設定部14により仮想図形が設定された場合も同様である。図6の例では、軌道生成部15は、以下の経路KR3を目標軌道として算出する。移動開始位置P1から、第1半直線HT1に沿って、第1半直線HT1と第1円W1との接点ST1Aに至る。接点ST1Aから、第1円W1に沿って、第1円W1と第2円W2との接点ST1Bに至る。接点ST1Bから第2円W2に沿って、第2円W2と第2半直線HT2との接点ST1Cに至る。接点ST1Cから、第2半直線HT2に沿って、目標位置P2に至る。
【0048】
<3図形設定部14により仮想図形が設定された場合>
次に、3図形設定部14により仮想図形が設定された場合の軌道生成部15の処理について図9を援用して説明する。この場合、軌道生成部15は、第1図形Y1、補助図形Zおよび第2図形Y2に沿って、移動開始位置P1から目標位置P2まで順次移動する経路を目標軌道として算出する。上述のとおり、図9(A)は、3図形設定部14により補助図形Zとして固定半径円Qが設定されている場合の、第1図形Y1、第2図形Y2および補助図形Zの例を示している。図9(A)の例の場合、軌道生成部15は、移動開始位置P1から、第1図形Y1に沿って、第1図形Y1と補助図形Zとの接点ST2Aに至り、接点ST2Aから、補助図形Zに沿って、補助図形Zと第2図形Y2との接点ST2Bに至り、接点ST2Bから、第2図形Y2に沿って、目標位置P2に至る経路KR4を目標軌道として算出する。また、上述のとおり、図9(B)は、3図形設定部14により補助図形Zとして第1図形Y1および第2図形Y2の両方に接する接線が設定されている場合の、第1図形Y1、第2図形Y2および補助図形Zを示している。図9(B)の例の場合、軌道生成部15は、移動開始位置P1から、第1図形Y1に沿って、第1図形Y1と補助図形Zとの接点ST3Aに至り、接点ST3Aから、補助図形Zに沿って、補助図形Zと第2図形Y2との接点ST3Bに至り、接点ST3Bから、第2図形Y2に沿って、目標位置P2に至る経路KR5を目標軌道として算出する。
【0049】
このように、軌道生成部15は、移動開始位置P1の車両進行方向H1、および、目標位置P2の前方方向H2に、目標軌道の算出に利用する2つの固定半径円Qを設定できる場合は、2図形設定部13により仮想図形として設定された第1円W1および第2円W2を利用して目標軌道を算出する。本実施形態では、第1円W1および第2円W2は、共に、固定値の半径の固定半径円Qである。従って、2つの円を用いて目標軌道を算出する場合において、2つの円の半径を可変値とする場合と比較して、目標軌道の候補となる軌道のバリエーションを少なくすることができ、目標軌道を算出する処理についての計算負荷を低減することができる。
【0050】
さらに、従来は、移動開始位置P1と目標位置P2との相対関係によって、2つの円によって目標軌跡を算出することができない場合(例えば、図5(B)や図5(C)の場合)、2つの円によって目標軌跡を算出することができるような位置に車両を移動することが促され、移動後の車両の位置に係る移動開始位置P1と目標位置P2とに基づいて改めて2つの円を利用した目標軌道の算出が行われていた。一方、本実施形態によれば、移動開始位置P1と目標位置P2との相対関係に起因して2つの円では目標軌跡を算出することができない場合であっても、3図形設定部14により、第1図形Y1、第2図形Y2および補助図形Zを仮想図形として設定し、これら3つの仮想図形を利用して移動開始位置P1から目標位置P2に至る目標軌道を算出することができる。従って、従来のように、一旦、車両を移動させて改めて目標軌道を算出する必要が無く、ユーザの利便性がよい。
【0051】
さらに、3図形設定部14が、3つの円を仮想図形として設定する場合、これら3つの円はそれぞれ半径が固定値の固定半径円Qである。従って、2図形設定部13が2つの円を仮想図形として設定する場合と同様、3つの円の半径を可変値とする場合と比較して、目標軌道の候補となる軌道のバリエーションを少なくすることができ、目標軌道を算出する処理についての計算負荷を低減することができる。
【0052】
さて、目標軌道を算出した後、軌道生成部15は、目標軌道に、目標位置P2から駐車スペース後方へ向かって所定距離だけ延びる軌道を付加した自動駐車軌道を算出する。目標軌道に付加される軌道は、自車両の左右の後輪の中央の位置が目標位置P2に至った後、自車両を駐車スペース後方へ向かって更にバックさせて、自車両を希望駐車スペースの駐車位置にまで至らせる軌道である。自動駐車軌道を算出した後、軌道生成部15は、算出した自動駐車軌道を示す自動駐車軌道情報を車載装置2に出力する。
【0053】
車載装置2は、自動駐車軌道情報を入力し、自動駐車開始コマンドを生成し、自動運転実行装置4に出力する。自動駐車開始コマンドは、自動駐車軌道を示す情報を含み、自動運転実行装置4に自動駐車軌道に沿って自車両を自動運転により走行させることを指示する制御コマンドである。自動運転実行装置4は、入力した制御コマンドに基づいて、自車両の各部を制御して自動運転により自車両を自動駐車軌道に沿って走行させ、自動駐車を実行する。
【0054】
図10は、本実施形態に係る目標軌道生成装置1の動作例を示すフローチャートである。目標軌道生成装置1は、運転手からの指示に応じて車載装置2から位置座標データを入力した場合に、図10のフローチャートの処理を実行する。
【0055】
図10に示すように、目標軌道生成装置1の位置座標データ取得部11は、位置座標データを入力して取得する(ステップSA1)。位置座標データ取得部11は、取得した位置座標データを位置座標データ記憶部20に記憶する。2円設定判定部12は、位置座標データ記憶部20が記憶する位置座標データに基づいて、移動開始位置P1から自車両の車両進行方向H1、および、目標位置P2から前方方向H2に、互いに接する2つの固定半径円Qを設定可能か否かを判定する(ステップSA2)。
【0056】
2円設定判定部12により2つの固定半径円Qを設定可能と判定された場合(ステップSA2:YES)、2図形設定部13は、第1円W1および第2円W2を仮想図形として設定する(ステップSA3)。上述のとおり、第1円W1は、移動開始位置P1を始点として車両進行方向H1に向かって延びる第1半直線HT1に接すると共に第2円W2に接する固定半径円Qである。また、第2円W2は、目標位置P2を始点として前方方向H2に向かって延びる第2半直線HT2に接すると共に第1円W1に接する固定半径円Qである。ステップSA3の処理後、目標軌道生成装置1は、処理手順をステップSA5へ移行する。
【0057】
一方、2円設定判定部12により2つの固定半径円Qを設定可能ではないと判定された場合(ステップSA2:NO)、3図形設定部14は、第1図形Y1、第2図形Y2および補助図形Zを仮想図形として設定する(ステップSA4)。ステップSA4の処理については、後に図11のフローチャートを用いて詳述する。ステップSA4の処理後、目標軌道生成装置1は、処理手順をステップSA5へ移行する。
【0058】
ステップSA5において、軌道生成部15は、目標軌道を算出する。より詳細には、軌道生成部15は、2円設定判定部12により2つの固定半径円Qを設定可能であると判定され、これに応じて2図形設定部13により、第1円W1および第2円W2が仮想図形として設定された場合は、第1円W1および第2円W2を利用した目標軌道を算出する。一方、軌道生成部15は、2円設定判定部12により2つの固定半径円Qを設定可能ではないと判定され、これに応じて3図形設定部14により、第1図形Y1、第2図形Y2および補助図形Zが仮想図形として設定された場合は、第1図形Y1、第2図形Y2および補助図形Zを利用した目標軌道を算出する。
【0059】
軌道生成部15は、算出した目標軌道に基づいて、自動駐車軌道を算出する(ステップSA6)。軌道生成部15は、算出した自動駐車軌道を示す自動駐車軌道情報を車載装置2に出力する。上述のとおり、車載装置2は、自動駐車軌道情報を入力し、自動駐車を実行する。
【0060】
図11は、ステップSA4の処理の詳細を示すフローチャートである。図11に示すように、3図形設定部14は、移動開始位置P1を通り、かつ、移動開始位置P1を通って自車両の車両進行方向H1に沿って延びる第1直線TT1に接する2つの固定半径円Q(仮第1図形Q1A、Q1B)を仮想図形として仮設定する(ステップSB1)。さらに、3図形設定部14は、目標位置P2を通り、かつ、目標位置P2を通って前方方向H2に沿って延びる第2直線TT2に接する2つの固定半径円Q(仮第2図形Q2A、Q2B)を仮設定する(ステップSB2)。
【0061】
次いで、3図形設定部14は、仮第1図形Q1Aと仮第2図形Q2Aとの組み合わせ、および、仮第1図形Q1Bと仮第2図形Q2Bとの組み合わせをそれぞれを仮設定する(ステップSB3)。次いで、3図形設定部14は、上記の組み合わせ毎に、組み合わせを構成する2つの円のそれぞれに接し、互いに平行な2本の接線を仮設定する(ステップSB4)。次いで、3図形設定部14は、上記の組み合わせのそれぞれについて、仮第1図形Q1A、Q1B、仮第2図形Q2A、Q2Bおよび接線に従って移動開始位置P1から目標位置P2に至る経路を、接線毎に算出する(ステップSB5)。次いで、3図形設定部14は、上記の組み合わせ毎に算出した経路のそれぞれについて、経路上に障害物が存在するか否かを判定する(ステップSB6)。
【0062】
次いで、3図形設定部14は、障害物が存在すると判定した経路は除外して、上記の組み合わせのうち、最も長さの短い経路を有する組み合わせを特定する(ステップSB7)。次いで、3図形設定部14は、特定した組み合わせについての仮第1図形および仮第2図形を、それぞれ、第1図形Y1および第2図形Y2として設定する(ステップSB8)。
【0063】
次いで、3図形設定部14は、設定した第1図形Y1の中心点と、設定した第2図形Y2の中心点とを結ぶ線の長さが、固定半径円Qの直径の2倍の長さ以下であるか否かを判定する(ステップSB9)。第1図形Y1の中心点と第2図形Y2の中心点とを結ぶ線の長さが、固定半径円Qの直径の2倍の長さ以下の場合(ステップSB9:YES)、3図形設定部14は、第1図形Y1および第2図形Y2の両方に接する固定半径円Qを補助図形Zとして設定する(ステップSB10)。一方、第1図形Y1の中心点と第2図形Y2の中心点とを結ぶ線の長さが、固定半径円Qの直径の2倍の長さより長い場合(ステップSB9:NO)、3図形設定部14は、第1図形Y1および第2図形Y2の両方に接する接線を補助図形Zとして設定する(ステップSB11)。
【0064】
以上詳しく説明したように、本実施形態に係る目標軌道生成装置1は、移動開始位置P1から自車両のの車両進行方向H1および目標位置P2から前方方向H2に、互いに接する固定半径円Qを設定可能か否かを判定し、互いに接する固定半径円Qを設定可能な場合は、互いに接する固定半径円Qを2つの仮想図形として設定する。一方、目標軌道生成装置1は、互いに接する2つの固定半径円Qを設定可能でない場合は、移動開始位置P1を通る第1図形Y1(固定半径円Q)と、目標位置P2を通る第2図形Y2(固定半径円Q)と、第1図形Y1および第2図形Y2の両方に接する補助図形Zとを3つの仮想図形として設定する。そして、目標軌道生成装置1は、以上のようにして設定された2つの仮想図形または3つの仮想図形に沿って順次移動する経路を目標軌道として生成する。
【0065】
この構成によれば、移動開始位置P1と目標位置P2との相対関係によって、互いに接する2つの円を仮想図形に設定してその円弧に沿った目標軌跡を生成することができない場合には、第1図形Y1および第2図形Y2と、それらの間を接続する補助図形Zとの3つを仮想図形として設定して、当該3つの仮想図形に沿った目標軌跡を生成することができる。また、上記構成によれば、仮想図形として使用する何れの円も固定半径としているので、計算の際に使用する変動パラメータが少なくなって経路計算のバリエーションが減り、計算負荷を軽減することができる。これにより、上記構成によれば、移動開始位置P1と目標位置P2との相対関係によらず、移動開始位置P1ら目標位置P2まで自車両を移動させる際の目標軌道を少ない計算負荷で生成することができる。
【0066】
なお、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0067】
例えば、上記実施形態では、目標軌道生成装置1は、自車両が駐車スペースに駐車する場合において、自車両の現在位置から駐車スペースまでの経路に対応する目標軌道を算出(生成)した。この点に関し、目標軌道生成装置1は、自車両の現在位置から駐車スペースまでの経路に対応する目標軌道に限らず、一の位置(移動開始位置)から、当該一の位置とは異なる他の位置(目標位置)までの目標軌道を算出可能である。
【0068】
また、上記実施形態では、3図形設定部14は、設定した第1図形Y1の中心点と、設定した第2図形Y2の中心点とを結ぶ線の長さが、固定半径円Qの直径の2倍の長さ以下であるか否かを判定し、判定結果に応じて、補助図形Zを固定半径円Qまたは接線のいずれかに決定した。この点に関し、3図形設定部14が、設定した第1図形Y1の中心点と、設定した第2図形Y2の中心点とを結ぶ線の長さが、固定半径円Qの直径の2倍の長さ以下であるか否かにかかわらず、補助図形Zを接線とする構成でもよい。この構成によれば、処理を省略することができ、計算負荷を更に軽減することができる。ただし、判定結果に応じて、補助図形Zを固定半径円Qまたは接線のいずれかに決定することによって、目標軌道の長さをより短くすることが可能である。
【0069】
また、3図形設定部14が、設定した第1図形Y1の中心点と、設定した第2図形Y2の中心点とを結ぶ線の長さが、固定半径円Qの直径の2倍の長さ以下であるか否かにかかわらず、補助図形Zを固定半径円Qとする構成でもよい。この場合において、固定半径円Qの半径の大きさを、移動開始位置P1と目標位置P2との距離として想定される距離を踏まえた十分な大きさとすれば、ほとんど全ての場合において、設定した第1図形Y1の中心点と、設定した第2図形Y2の中心点とを結ぶ線の長さを、固定半径円Qの直径の2倍の長さ以下とすることができる。
【0070】
また、上記実施形態では、目標軌道生成装置1が車両に搭載されているものとして、実施の形態を説明したが、目標軌道生成装置1は、車両に搭載されている必要は無く、例えば、車載装置2とネットワークを通信可能なサーバであってもよい。
【0071】
また、上記実施形態で車載装置2が実行する処理として説明した処理の一部または全部を目標軌道生成装置1が実行する構成でもよい。また、上記実施形態では、固定半径円Qの半径の求め方を具体的に説明したが、固定半径円Qの求め方は上記実施形態で例示した方法に限らない。
【符号の説明】
【0072】
1 目標軌道生成装置
12 2円設定判定部
13 2図形設定部
14 3図形設定部
15 軌道生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11