(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】インタラクティブ方式の解剖学的マッピング及び解剖学的マッピングの品質の推定
(51)【国際特許分類】
A61B 5/367 20210101AFI20220328BHJP
A61B 34/10 20160101ALI20220328BHJP
A61M 25/095 20060101ALI20220328BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
A61B5/367 100
A61B34/10
A61M25/095
A61B18/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017244782
(22)【出願日】2017-12-21
【審査請求日】2020-10-23
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アクラム・ゾアビ
(72)【発明者】
【氏名】ファディ・マサルウィ
【審査官】樋口 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-061789(JP,A)
【文献】特表2010-528683(JP,A)
【文献】特開2015-036124(JP,A)
【文献】特開2015-016328(JP,A)
【文献】特開2014-161734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサとインターフェースとを含む装置の作動方法であって、
前記プロセッサが、患者の器官内の複数のそれぞれの位置で取得した複数の測定値を含
み、前記インターフェースから受信した解剖学的マッピング
に基づいて前記器官の推定される表面を算定することと、
前記器官の前記推定される表面から内側に延在し、所定の厚さを有する、前記器官の三次元(3D)シェルを画定することと、
位置が前記3Dシェル内に収まっている前記測定値に基づいて前記解剖学的マッピングの品質を推定することと、を
行うように構成され、
前記解剖学的マッピングは、複数のマップ点を含み、各マップ点は、前記器官の組織における三次元(3D)座標と、当該座標において測定される生理学的特性の対応する前記測定値を有し、
前記解剖学的マッピングの前記品質を推定することは、位置が前記シェルの少なくとも一部の中に収まっている前記測定値の数を計数することを含む、装置の作動方法。
【請求項2】
前記3Dシェルを画定することは、前記推定される表面から内側の所定距離において仮想面を形成することを含み、前記仮想面は、前記推定される表面と前記仮想面との間に前記シェルを制限する、請求項1に記載の
装置の作動方法。
【請求項3】
前記シェルは、複数のボリュームピクセル(ボクセル)を含み、前記品質を推定することは、前記測定値が収まる前記シェルの前記少なくとも一部の中の前記ボクセルの数に基づいている、請求項
1に記載の
装置の作動方法。
【請求項4】
前記シェルは、複数のピクセルを含む表面を含み、前記品質を推定することは、前記測定値が収まる前記シェルの前記少なくとも一部の中の前記ピクセルの数に基づいている、請求項
1に記載の
装置の作動方法。
【請求項5】
前記器官は、心腔を含む、請求項1に記載の
装置の作動方法。
【請求項6】
インターフェースと、
プロセッサであって、前記プロセッサは、患者の器官内の複数のそれぞれの位置で取得した複数の測定値を含む解剖学的マッピングを前記インターフェースから受信することと、前記
解剖学的マッピングに基づいて前記器官の推定される表面を算定することと、前記器官の前記推定される表面から内側に延在し、所定の厚さを有する、前記器官の三次元(3D)シェルを画定することと、位置が前記3Dシェル内にある前記測定値に基づいて前記解剖学的マッピングの品質を推定することと、を行うように構成されている、プロセッサと、を備え
、
前記解剖学的マッピングは、複数のマップ点を含み、各マップ点は、前記器官の組織における三次元(3D)座標と、当該座標において測定される生理学的特性の対応する前記測定値を有し、
前記プロセッサは、位置が前記シェルの少なくとも一部の中に収まっている前記測定値の数に基づいて前記品質を推定するように構成されている、装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記推定される表面から内側の所定距離において仮想面を形成するように構成されており、前記仮想面は、前記推定される表面と前記仮想面との間に前記シェルを制限する、請求項
6に記載の装置。
【請求項8】
前記シェルは、複数のボリュームピクセル(ボクセル)を含み、前記プロセッサは、前記測定値が収まる前記シェルの前記少なくとも一部の中の前記ボクセルの数に基づいて前記品質を推定するように構成されている、請求項
6に記載の装置。
【請求項9】
前記シェルは、複数のピクセルを含む表面を含み、前記プロセッサは、前記測定値が収まる前記シェルの前記少なくとも一部の中の前記ピクセルの数に基づいて前記品質を推定するように構成されている、請求項
6に記載の装置。
【請求項10】
前記器官は、心腔を含む、請求項
6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、解剖学的マッピングに関し、より具体的には、インタラクティブ方式の解剖学的マッピング及び解剖学的マッピングの品質の推定のための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
解剖学的マッピングは、心不整脈などの様々な種類の医学的状態を診断するために使用され得る。解剖学的マッピングを得るために、かつマッピング処理を制御するために、様々な技術が適用され得る。
【0003】
例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,744,566号は、解剖学的情報を決定及び表示するための方法及びシステムを記載している。方法及びシステムは、カテーテル電極の位置と、電極位置の決定されたサブセットにおける電極からの電気信号とに基づいて、心臓の解剖学的情報を生成することを含む。
【0004】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,457,371号は、構造をマッピングするための方法及び装置を記載している。マッピング装置は、1つ又は2つ以上の電極を含むことができ、これらの電極は、検知又は測定時の電極の三次元位置に関連付けられ得る電圧を検知することができる。面積又は体積のマップは、撮像機器を用いずに、複数の点の検知に基づいて決定することができる。植込み型医療器具は、次いで、マッピングデータに関連して操作され得る。
【0005】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,900,225号は、プローブを患者の身体内の器官と接触させることを含む医療手技を行うための方法を記載している。器官のマップが表示され、そのマップに対するプローブの位置が追跡される。
【0006】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0099468号は、心臓内電気生理学的データの自動処理のための方法、装置及びコンピュータプログラム製品を記載している。方法は、電気記録図データを記録することと、時間的位置を決定するために基準拍動を含む少なくとも1つの基準経路を明確にすることと、時間的位置のインデックスを作成することと、少なくとも1つの電気生理学特徴をリアルタイムで解析することと、更新されたインデックス及び解析の結果を提供することと、を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で説明する本発明の一実施形態は、患者の器官内の複数のそれぞれの位置で取得した複数の測定値を含む解剖学的マッピングを受信することを含む方法を提供する。器官の推定される表面は、測定値に基づいて算定される。器官の推定される表面から内側に延在し、所定の厚さを有する、器官の三次元(3D)シェルが画定される。位置が3Dシェル内に収まっている測定値に基づいて解剖学的マッピングの品質が推定される。
【0008】
いくつかの実施形態では、3Dシェルを画定することは、推定される表面から内側の所定距離において仮想面を形成することを含み、仮想面は、推定される表面と仮想面との間にシェルを制限する。他の実施形態では、解剖学的マッピングの品質を推定することは、位置がシェルの少なくとも一部の中に収まっている測定値の数を計数することを含む。更に他の実施形態では、シェルは、複数のボリュームピクセル(ボクセル)を含み、品質を推定することは、測定値が収まるシェルの少なくとも一部の中のボクセルの数に基づいている。
【0009】
一実施形態では、シェルは、複数のピクセルを含む表面を含み、品質を推定することは、測定値が収まるシェルの少なくとも一部の中のピクセルの数に基づいている。別の実施形態では、器官は、心腔を含む。
【0010】
更に、本発明の別の実施形態により、患者の器官内の複数のそれぞれの位置で取得した複数の測定値を含む部分的な解剖学的マッピングを受信することを含む方法が提供される。器官の推定される一部表面は、測定値に基づいて算定される。測定値に基づいて、部分的な解剖学的マッピングによってまだマッピングされていなかった器官の未到達領域が特定される。未到達領域は、未到達領域のマッピング及び推定される一部表面の拡張においてユーザを補助するように、ユーザに示される。
【0011】
いくつかの実施形態では、複数の測定値は、カテーテルの遠位端を用いて取得され、未到達領域を示すことは、未到達領域をマッピングするためにユーザが遠位端を移動させるべき方向を示すグラフィック表示を表示することを含む。他の実施形態では、方法は、器官の少なくとも一部の中のボリュームピクセル(ボクセル)のグリッドを重ね合わせることを含み、未到達領域を特定することは、部分的な解剖学的マッピングによってまだマッピングされていなかったグリッドの1つ又は2つ以上のボクセルを特定することを含む。更に他の実施形態では、方法は、測定値を取得するために使用されるカテーテルの遠位端から外側に延在する所与の体積を画定することを含み、未到達領域を特定することは、所与の体積の中で、遠位端がまだ到達していなかった位置を特定することを含む。
【0012】
更に、本発明の一実施形態により、インターフェース及びプロセッサを含む装置が提供される。プロセッサは、患者の器官内の複数のそれぞれの位置で取得した複数の測定値を含む解剖学的マッピングをインターフェースから受信することと、測定値に基づいて器官の推定される表面を算定することと、器官の推定される表面から内側に延在し、所定の厚さを有する、器官の三次元(3D)シェルを画定することと、位置が3Dシェル内にある測定値に基づいて解剖学的マッピングの品質を推定することと、を行うように構成されている。
【0013】
本発明の一実施形態により、インターフェース及びプロセッサを含む装置が更に提供される。プロセッサは、患者の器官内の複数のそれぞれの位置で取得した複数の測定値を含む部分的な解剖学的マッピングを受信することと、測定値に基づいて器官の推定される一部表面を算定することと、測定値に基づいて、部分的な解剖学的マッピングによってまだマッピングされていなかった器官の未到達領域を特定することと、未到達領域のマッピング及び推定される一部表面の拡張においてユーザを補助するように、出力デバイス上で未到達領域をユーザに示すことと、を行うように構成されている。
【0014】
本発明は、図面と総合すれば、以下の「発明を実施するための形態」からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による、解剖学的マッピングを用いたカテーテルに基づく追跡及びアブレーションシステムの概略描写図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、心臓の内側表面の解剖学的マップと、ユーザを表面のマッピングされていない領域に向かわせる可視化手法とを示す概略描写図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、心臓の内側表面の推定される解剖学的マップの概略描写図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、解剖学的マップの品質を推定するための手法を示す概略描写図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
概要
心臓アブレーションなどの一部の医療処置では、心臓の推定される解剖学的マップに基づいて、患者の心臓内に医療用プローブを誘導する。解剖学的マップの推定は、検知電極が遠位端に配設されたカテーテルを挿入し、それらの電極を用いて心臓の内側表面上の組織の複数の位置で特定の信号を測定することによって、実施することができる。当該技術分野においては、高速解剖マッピング(FAM)などの、かかる測定値に基づくマッピングアルゴリズムが知られている。FAM方法は、心臓アブレーションに使用され得る電気生理学的(EP)マッピングなどの、更なるマッピング性能を医師に提供することができる。
【0017】
FAM処理の間、医師は、問題の組織にわたって分布した所望の位置にカテーテルの遠位端を誘導して、そこから解剖学的信号を収集する。原理的に、FAMは、問題の組織の推定される解剖学的マッピングを表す表面を医師に提供することができる。この表面は、EPマッピング及びアブレーション処置中に医師によって使用されることから、EP処置を開始する前に解剖学的マッピングの品質を監視することが重要である。
【0018】
以下に記載される本発明の実施形態は、インタラクティブ方式の解剖学的マッピングのための改良された技術を提供する。開示される技術は、心臓の表面のマッピングされていない(「未到達」)領域を医師に示すために使用され得る。一実施形態では、解剖学的マッピングの部分的な測定値を受信した後、プロセッサは、組織の一部表面を算定し、その一部表面に基づいて、更なる解剖学的マッピングのために、組織内の1つ又は2つ以上の未到達領域を特定する。
【0019】
一実施形態では、プロセッサは、医師を未到達領域に向かわせるグラフィック表示を表示して、表面全体をマッピングすることに関して医師を補助するように構成されている。解剖学的マッピングが終了すると、プロセッサは、表面全体の推定される解剖学的マッピングを表示する。
【0020】
別の実施形態では、プロセッサは、推定される解剖学的表面から内側に延在する三次元(3D)シェルを画定することによって、解剖学的マッピングの品質を推定するように構成されている。例えば、プロセッサは、推定される表面に平行な仮想面を画定してもよく、それにより3Dシェルは、これら2つの面の間に制限された体積となる。いくつかの実施形態では、プロセッサは、位置が所定の体積の中に収まっているマッピング測定値の数に基づいて解剖学的マッピングの品質を推定する。
【0021】
開示された技術は、進行中のマッピング手順のリアルタイムの可視化を提供し、かつ推定される解剖学的表面の品質に関してフィードバックを提供し、それによって高品質のマッピング及び処置サイクルタイムの短縮化を達成する。
【0022】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、カテーテルに基づく追跡及びアブレーションシステム20の概略描写図である。システム20は、この例では心臓カテーテルであるカテーテル22と、制御コンソール24と、を備える。本明細書に記載される実施形態では、カテーテル22は、心臓26の腔37の解剖学的マッピングなど、任意の好適な治療用及び/又は診断用目的で使用され得る。
【0023】
コンソール24は、カテーテル22を介して信号を受信するため及び本明細書に記載のシステム20の他の構成要素を制御するための好適なフロントエンド及びインターフェース回路38を有する、典型的には汎用コンピュータであるプロセッサ39を備える。コンソール24は、出力デバイスとも称されるユーザディスプレイ35を更に備え、ユーザディスプレイ35は、以下の
図2~
図4で示すように、解剖学的マッピングを補助するためのツールを表示するように構成されている。
【0024】
解剖学的マッピングの処置は、心臓組織のそれぞれの位置で複数の測定値を収集する遠位端40を用いて実施され、測定値の結果は、本明細書において、マップ点と称される。各マップ点は、腔37の組織における三次元(3D)座標と、当該座標において測定される、何らかの生理学的特性の対応する測定値と、を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、測定値又はマップ点に基づいて、推定される解剖学的表面(
図3及び
図4に図示)を構成し、かつ推定される解剖学的表面をディスプレイ35上で医師30に示すように構成されている。推定される解剖学的表面の構成において、プロセッサ39は、例えばその開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0152684号に記載される高速解剖マッピング(FAM)手順などの手順を、測定値に適用してもよい。
【0026】
組織のアブレーションなどの一部の医療処置では、医師30は予め、アブレーションする組織の解剖学的マップを作成する。解剖学的マッピングを実施するために、医師30は、テーブル29に横たわった患者28の脈管系を通してカテーテル22を挿入する。カテーテル22は、遠位端40に通常設けられる1つ又は2つ以上の電極(図示せず)を含む。電極は、心臓26の腔37の組織を検知するように構成されている。医師30は、カテーテルの近位端付近のマニピュレータ32でカテーテル22を操作することによって、挿入
図23に示すように、遠位端40を腔37へと誘導する。カテーテル22の近位端は、プロセッサ39のインターフェース回路に接続されている。
【0027】
いくつかの実施形態では、腔37内の遠位端の位置は、磁気位置追跡システムの位置センサ(図示せず)によって測定される。測定された位置は、それぞれのマップ点の座標となる。
【0028】
例えば、解剖学的測定値は、いずれもBiosense Webster,Inc.,(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,Calif.91765)から入手可能なNavistar(登録商標)Thermocool(登録商標)カテーテルなどのマッピングカテーテルと協同的にCARTO(登録商標)3システムの高速解剖マッピング(FAM)機能を使用して獲得され得る。
【0029】
この場合、コンソール24は駆動回路34を備え、この駆動回路34は、テーブル29に横たわる患者28の体外における既知の位置、例えば患者の胴体の下に位置する磁界発生器36を駆動する。位置センサは、遠位端に設けられ、磁界発生器36からの検知された外部磁界に応じて位置信号を生成するように構成されている。位置信号は、位置追跡システムの座標系における遠位端の位置を示す。
【0030】
この位置検知方法は、様々な医療応用において、例えば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,Calif.)が製造するCARTO(商標)システムに実装されており、その詳細は、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに、米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に説明されており、それらの開示はすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
いくつかの実施形態では、医師30は、遠位端40を標的位置に誘導するために、かつ腔37の組織を検知及び/又はアブレーションするように電極を作動させるために、プロセッサ39を使用してもよい。代替的な実施形態では、プロセッサ39は、未到達領域のマッピング及び解剖学的マッピングの品質の推定に関して医師30を補助することにのみ使用されてもよい。
【0032】
プロセッサ39は、典型的には汎用コンピュータを含み、コンピュータには、本明細書に記載する機能を実行するソフトウェアがプログラムされている。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、あるいは、代替的に又は追加的に、磁気、光学若しくは電子メモリなどの有形の持続性媒体上に提供及び/又は格納されてもよい。
【0033】
未到達領域を示すことによるインタラクティブ方式の解剖学的マッピング
図2は、本発明の一実施形態による、腔37の解剖学的マップ41と、医師30を腔37のマッピングされていない領域に向かわせる可視化手法とを示す概略描写図である。いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、心臓26の解剖学的データを受信し、その解剖学的データを使用して、心臓26の腔37の推定される体積42を表示する。一実施形態では、体積42は、立方体形状で又は任意の他の好適な形状を用いて、概略的に表示され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、遠位端40から、腔37内の複数のそれぞれの位置で取得した、高速解剖マッピング(FAM)などの、複数の測定値を含む部分的な解剖学的マッピングを更に受信する。一実施形態では、プロセッサ39は、これらの測定値に基づいて、腔37内のマッピング済みの推定される一部表面46を算定するように構成されている。
【0035】
一実施形態では、プロセッサ39は、推定される体積42及び取得済みの測定値を用いて、部分的な解剖学的マッピングによってまだマッピングされていなかった、推定される表面44などの、腔37の未到達領域を特定するように更に構成されている。本発明の文脈では、用語「未到達領域」は、推定される一部表面46としてまだ表されていない腔37の表面の領域を指す。
【0036】
いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、医師30が腔37の組織のマッピングを完成させるのを補助するように、位置追跡システムから受信した遠位端40の位置と、未到達領域の方向を示す矢印48とを解剖学的マップ41上に表示する。
【0037】
他の実施形態では、プロセッサ39は、三次元(3D)ピクセル(ボクセル(図示せず)としても知られる)のグリッドを体積42の上に重ね合わせる。本実施形態では、プロセッサ39は、体積42内のボクセルの一部をサンプリングし、遠位端40がまだ到達していないボクセルを特定する。次いで、プロセッサ39は、未到達のボクセルの方向を示す矢印48を表示する。
【0038】
いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、表面46及び体積42にて取得した測定値に基づいて、未到達領域の表面44を表示してもよい。他の実施形態では、プロセッサは、表面46を推定するために取得した測定値を外挿することなく医師30に未到達領域の方向を示すために、表面46、遠位端40及び矢印48のみを表示してもよい。
【0039】
一実施形態では、プロセッサ39は、遠位端40から外側に延在する所与の体積(図示せず)を画定し、遠位端40がまだ到達していなかった当該所与の体積内の位置を特定する。次いで、プロセッサ39は、医師30が腔37の組織のマッピングを完成させるのを補助するために、所与の体積内の未到達の位置の方向を示す矢印48を表示する。
【0040】
解剖学的マッピングの品質の推定
図3は、本発明の一実施形態による、推定される解剖学的マップ43の概略描写図である。いくつかの実施形態では、解剖学的マップ43を生成するために、プロセッサ39は、腔37内の複数のそれぞれの位置で取得した、高速解剖マッピング(FAM)などの、複数の解剖学的測定値を受信する。
【0041】
プロセッサ39は、測定値に基づいて、推定される表面45を算定し、ディスプレイ35上で解剖学的マップ43に表面45を表示する。なお、表面45の算定は、表面45の連続的マッピングよりもむしろサンプリング測定値に基づいている。いくつかの実施形態では、表面45の算定は、表面45内で取得したサンプリング測定値の内挿を伴い得るため、マップ43に表示されている表面45の少なくとも一部が不正確である場合がある。例えば、複数の測定値間に内挿された領域は、プロセッサ39が作成した推定されるトポグラフィーから外れる可能性のある未到達の解剖学的特徴(例えば、隆起又はクレータ)を含む場合がある。
【0042】
いくつかの実施形態では、医師30は、推定される表面45から内側に、腔37の内部体積へと延在する3Dシェル52を画定してもよい。シェル52の形状は、様々な方法を用いてプロセッサ39によって画定され得る。例えば、プロセッサ39は、医師30によって又はプロセッサ39によって設定された所定の距離(例えば、7mm)において、表面45に平行の仮想面50を画定する。本実施形態では、シェル52の体積は、表面45の境界と表面50の境界との間に制限される。一実施形態では、シェル52の体積は、以下で
図4に示すように、表面45の解剖学的マッピングの品質を推定するために使用される。
【0043】
図4は、本発明の実施形態による、解剖学的マップ43の品質を推定するための手法を示す概略描写図である。いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、表面45及び50と、シェル52と、上述の
図1~
図3で示したように遠位端40を用いて、表面45の選択位置に到達することによって取得した測定値54とを解剖学的マップ43上に表示する。
【0044】
いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、シェル52の体積内で、断片56及び58などの1つ又は2つ以上の断片を選択するように構成されている。断片は、プロセッサ39によってランダムに、あるいは医師30が手動で又はプロセッサ39が自動的に設定した所定のパラメータ(例えば、シェル52内の特定の位置)に従って選択され得る。
【0045】
一実施形態では、各断片は、複数のピクセルを含むシェル52内のサブ表面又はサブ体積を表す。
図4の例では、各断片は、明確にするために示された9つのピクセルを含む。実際には、各断片は、任意の好適な数のピクセルを含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、各断片は、それぞれの断片内に収まる測定値54を表すピクセル55を含んでもよい。一実施形態では、プロセッサ39は、表面45によって表される解剖学的マッピングの品質を推定するために、各断片内に収まるピクセル55の部分を確認するように構成されている。一実施形態では、挿入
図66及び68はそれぞれ、断片56及び58内のピクセル55の分布を表す。一般的に、高密度の断片は、高いマッピング品質を表し、その逆もまたしかりである。
【0047】
挿入
図66では、ピクセル55が断片56のピクセルの大部分(例えば、9つ中8つ)を表しているため、断片56は、マップ41の左側の解剖学的マッピングが高品質であることを示す高いスコア(例えば、89%(8/9=0.89として導出)を得るであろうと考えられる。同一の方法論を用いると、断片58にはたった2つのピクセル55しか収まっておらず、断片58のスコアは、22%(9つ中2つのピクセルを計数することによって導出)であり、解剖学的マップ41の上部中央領域における解剖学的マッピングが低品質であることを示している。
【0048】
いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、上述のスコア付け方法に基づいて、腔37の各領域の解剖学的マッピングの品質を表す定量的マップを表示するように構成されている。一実施形態では、医師30は、1つ又は2つ以上の品質閾値を設定してもよく、それによりプロセッサ39は、腔37の特定の位置において解剖学的マッピングが所望の品質より低い場合に、医師30に警告を行う。
【0049】
他の実施形態では、断片56及び58は、ピクセル55が2Dピクセルよりもむしろボクセル(図示せず)を表示できるように、二次元(2D)表面よりもむしろ体積要素を表してもよい。
【0050】
本明細書に記載される実施形態は、主として心臓学用途に関するが、本明細書に記載される方法及びシステムは、耳鼻咽喉(ENT)などの他の用途及び気管支鏡検査にも用いることができる。
【0051】
上記に述べた実施形態はあくまで実例として挙げたものにすぎず、本発明は上記に詳細に示し、説明したものに限定されない点は理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、従来技術において開示されていない変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮すべきものとする点を除き、本出願の一部をなすものとみなす。
【0052】
〔実施の態様〕
(1) 患者の器官内の複数のそれぞれの位置で取得した複数の測定値を含む解剖学的マッピングを受信することと、
前記測定値に基づいて前記器官の推定される表面を算定することと、
前記器官の前記推定される表面から内側に延在し、所定の厚さを有する、前記器官の三次元(3D)シェルを画定することと、
位置が前記3Dシェル内に収まっている前記測定値に基づいて前記解剖学的マッピングの品質を推定することと、を含む、方法。
(2) 前記3Dシェルを画定することは、前記推定される表面から内側の所定距離において仮想面を形成することを含み、前記仮想面は、前記推定される表面と前記仮想面との間に前記シェルを制限する、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記解剖学的マッピングの前記品質を推定することは、位置が前記シェルの少なくとも一部の中に収まっている前記測定値の数を計数することを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記シェルは、複数のボリュームピクセル(ボクセル)を含み、前記品質を推定することは、前記測定値が収まる前記シェルの前記少なくとも一部の中の前記ボクセルの数に基づいている、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記シェルは、複数のピクセルを含む表面を含み、前記品質を推定することは、前記測定値が収まる前記シェルの前記少なくとも一部の中の前記ピクセルの数に基づいている、実施態様3に記載の方法。
【0053】
(6) 前記器官は、心腔を含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 患者の器官内の複数のそれぞれの位置で取得した複数の測定値を含む部分的な解剖学的マッピングを受信することと、
前記測定値に基づいて前記器官の推定される一部表面を算定することと、
前記測定値に基づいて、前記部分的な解剖学的マッピングによってまだマッピングされていなかった前記器官の未到達領域を特定することと、
前記未到達領域のマッピング及び前記推定される一部表面の拡張においてユーザを補助するように、前記未到達領域を前記ユーザに示すことと、を含む、方法。
(8) 前記複数の測定値は、カテーテルの遠位端を用いて取得され、前記未到達領域を示すことは、前記未到達領域をマッピングするために前記ユーザが前記遠位端を移動させるべき方向を示すグラフィック表示を表示することを含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記器官の少なくとも一部の中のボリュームピクセル(ボクセル)のグリッドを重ね合わせることを含み、前記未到達領域を特定することは、前記部分的な解剖学的マッピングによってまだマッピングされていなかった前記グリッドの1つ又は2つ以上のボクセルを特定することを含む、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記測定値を取得するために使用されるカテーテルの遠位端から外側に延在する所与の体積を画定することを含み、前記未到達領域を特定することは、前記所与の体積の中で、前記遠位端がまだ到達していなかった位置を特定することを含む、実施態様7に記載の方法。
【0054】
(11) インターフェースと、
プロセッサであって、前記プロセッサは、患者の器官内の複数のそれぞれの位置で取得した複数の測定値を含む解剖学的マッピングを前記インターフェースから受信することと、前記測定値に基づいて前記器官の推定される表面を算定することと、前記器官の前記推定される表面から内側に延在し、所定の厚さを有する、前記器官の三次元(3D)シェルを画定することと、位置が前記3Dシェル内にある前記測定値に基づいて前記解剖学的マッピングの品質を推定することと、を行うように構成されている、プロセッサと、を備える、装置。
(12) 前記プロセッサは、前記推定される表面から内側の所定距離において仮想面を形成するように構成されており、前記仮想面は、前記推定される表面と前記仮想面との間に前記シェルを制限する、実施態様11に記載の装置。
(13) 前記プロセッサは、位置が前記シェルの少なくとも一部の中に収まっている前記測定値の数に基づいて前記品質を推定するように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(14) 前記シェルは、複数のボリュームピクセル(ボクセル)を含み、前記プロセッサは、前記測定値が収まる前記シェルの前記少なくとも一部の中の前記ボクセルの数に基づいて前記品質を推定するように構成されている、実施態様13に記載の装置。
(15) 前記シェルは、複数のピクセルを含む表面を含み、前記プロセッサは、前記測定値が収まる前記シェルの前記少なくとも一部の中の前記ピクセルの数に基づいて前記品質を推定するように構成されている、実施態様13に記載の装置。
【0055】
(16) 前記器官は、心腔を含む、実施態様11に記載の装置。
(17) 出力デバイスと、
プロセッサであって、前記プロセッサは、患者の器官内の複数のそれぞれの位置で取得した複数の測定値を含む部分的な解剖学的マッピングを受信することと、前記測定値に基づいて前記器官の推定される一部表面を算定することと、前記測定値に基づいて、前記部分的な解剖学的マッピングによってまだマッピングされていなかった前記器官の未到達領域を特定することと、前記未到達領域のマッピング及び前記推定される一部表面の拡張においてユーザを補助するように、前記出力デバイス上で前記未到達領域を前記ユーザに示すことと、を行うように構成されている、プロセッサと、を備える、装置。
(18) 前記複数の測定値は、カテーテルの遠位端を用いて取得され、前記プロセッサは、前記未到達領域をマッピングするために前記ユーザが前記遠位端を移動させるべき方向のグラフィック表示を前記出力デバイス上に表示するように構成されている、実施態様17に記載の装置。