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特許7046605導電材料、接続構造体及び接続構造体の製造方法
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  • 特許-導電材料、接続構造体及び接続構造体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】導電材料、接続構造体及び接続構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20220328BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20220328BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20220328BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01B1/00 C
H01B5/16
H01R11/01 501C
H01R11/01 501A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017550783
(86)(22)【出願日】2017-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2017034027
(87)【国際公開番号】W WO2018066368
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2016198080
(32)【優先日】2016-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇岡 さやか
(72)【発明者】
【氏名】保井 秀文
(72)【発明者】
【氏名】定永 周治郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将大
(72)【発明者】
【氏名】宋 士輝
(72)【発明者】
【氏名】山中 雄太
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-072383(JP,A)
【文献】国際公開第2013/115360(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/165416(WO,A1)
【文献】特開2013-131464(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104275(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
H01B 1/00
H01B 5/16
H01R 11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部の外表面部分にはんだを有する複数の導電性粒子と、熱硬化性化合物と、酸無水物熱硬化剤と、有機リン化合物とを含む、導電材料。
【請求項2】
前記有機リン化合物が、有機ホスホニウム塩、有機リン酸、有機リン酸エステル、有機ホスホン酸、有機ホスホン酸エステル、有機ホスフィン酸、又は有機ホスフィン酸エステルである、請求項1に記載の導電材料。
【請求項3】
前記有機リン化合物の融点が、170℃以下である、請求項1又は2に記載の導電材料。
【請求項4】
前記有機リン化合物が、25℃で液状である、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電材料。
【請求項5】
前記酸無水物熱硬化剤が、25℃で固体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電材料。
【請求項6】
前記酸無水物熱硬化剤100重量部に対して、前記有機リン化合物の含有量が、0.5重量部以上、10重量部以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の導電材料。
【請求項7】
導電材料100重量%中、前記酸無水物熱硬化剤の含有量が、5重量%以上、50重量%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の導電材料。
【請求項8】
導電ペーストである、請求項1~7のいずれか1項に記載の導電材料。
【請求項9】
少なくとも1つの第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、
少なくとも1つの第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、
前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、
前記接続部の材料が、請求項1~8のいずれか1項に記載の導電材料であり、
前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続されている、接続構造体。
【請求項10】
前記第1の電極と前記接続部と前記第2の電極との積層方向に前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、前記接続部中のはんだ部が配置されている、請求項9に記載の接続構造体。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の導電材料を用いて、少なくとも1つの第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、前記導電材料を配置する工程と、
前記導電材料の前記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、少なくとも1つの第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように配置する工程と、
前記導電性粒子におけるはんだの融点以上に前記導電材料を加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、前記導電材料により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続する工程とを備える、接続構造体の製造方法。
【請求項12】
前記第1の電極と前記接続部と前記第2の電極との積層方向に前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、前記接続部中のはんだ部が配置されている接続構造体を得る、請求項11に記載の接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電部の外表面部分にはんだを有する導電性粒子を含む導電材料に関する。また、本発明は、上記導電材料を用いた接続構造体及び接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等の異方性導電材料が広く知られている。上記異方性導電材料では、バインダー樹脂中に導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、各種の接続構造体を得るために用いられる。上記異方性導電材料による接続としては、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等が挙げられる。
【0004】
上記異方性導電材料により、例えば、フレキシブルプリント基板の電極とガラスエポキシ基板の電極とを電気的に接続する際には、ガラスエポキシ基板上に、導電性粒子を含む異方性導電材料を配置する。次に、フレキシブルプリント基板を積層して、加熱及び加圧する。これにより、異方性導電材料を硬化させて、導電性粒子を介して電極間を電気的に接続して、接続構造体を得る。
【0005】
上記異方性導電材料の一例として、下記の特許文献1には、導電性粒子と、該導電性粒子の融点で硬化が完了しない樹脂成分とを含む異方性導電材料が記載されている。上記導電性粒子としては、具体的には、錫(Sn)、インジウム(In)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、ガリウム(Ga)及びタリウム(Tl)等の金属や、これらの金属の合金が挙げられている。
【0006】
特許文献1では、上記導電性粒子の融点よりも高く、かつ上記樹脂成分の硬化が完了しない温度に、異方性導電樹脂を加熱する樹脂加熱ステップと、上記樹脂成分を硬化させる樹脂成分硬化ステップとを経て、電極間を電気的に接続することが記載されている。また、特許文献1には、特許文献1の図8に示された温度プロファイルで実装を行うことが記載されている。特許文献1では、異方性導電樹脂が加熱される温度にて硬化が完了しない樹脂成分内で、導電性粒子が溶融する。
【0007】
下記の特許文献2には、熱硬化性樹脂を含む樹脂層と、はんだ粉と、硬化剤とを含み、上記はんだ粉と上記硬化剤とが上記樹脂層中に存在する接着テープが開示されている。この接着テープは、フィルム状であり、ペースト状ではない。
【0008】
また、特許文献2では、上記接着テープを用いた接着方法が開示されている。具体的には、第一基板、接着テープ、第二基板、接着テープ、及び第三基板を下からこの順に積層して、積層体を得る。このとき、第一基板の表面に設けられた第一電極と、第二基板の表面に設けられた第二電極とを対向させる。また、第二基板の表面に設けられた第二電極と第三基板の表面に設けられた第三電極とを対向させる。そして、積層体を所定の温度で加熱して接着する。これにより、接続構造体を得る。
【0009】
下記の特許文献3には、エポキシ化合物と、酸無水物系硬化剤と、第四級ホスホニウム塩系硬化促進剤とを含む硬化性エポキシ樹脂組成物が開示されている。上記エポキシ化合物として、上記エポキシ化合物の全量(100重量%)に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を30重量%~90重量%、及び脂環式エポキシ化合物を10重量%~70重量%含む。上記酸無水物系硬化剤は、非芳香族酸無水物系硬化剤である。特許文献3には、導電性粒子を含むことは記載されておらず、硬化性エポキシ樹脂組成物を導電材料として使用することも記載されていない。
【0010】
下記の特許文献4には、はんだの表面に、エーテル結合又はエステル結合を介してカルボキシル基を含む基が共有結合している導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む導電材料が開示されている。この導電材料は、電極間を電気的に接続して接続構造体を得た場合に、得られた接続構造体における接続抵抗を低くし、かつボイドの発生を抑制することができるものの、導電性粒子の製造には煩雑な工程が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2004-260131号公報
【文献】WO2008/023452A1
【文献】特開2016-124905号公報
【文献】WO2013/125517A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のはんだ粒子や、はんだ層を表面に有する導電性粒子を含む導電材料では、はんだ粒子又は導電性粒子の電極(ライン)上への移動速度が遅いことがある。特に、基板等に導電材料が配置された後、長時間放置された場合には、電極上にはんだが凝集し難くなることがある。結果として、電極間の導通信頼性が低くなり易い。
【0013】
また、電極幅及び電極間幅が狭い場合には、電極上にはんだを選択的に配置しようとしても、電極が形成されていない領域(スペース)にもはんだが残存し易く、マイグレーションが発生することがある。結果として、電極間の絶縁信頼性が低くなり易い。
【0014】
さらに、従来のはんだ粒子や、はんだ層を表面に有する導電性粒子を含む導電材料ではボイドが発生し易く、ボイドを抑制するためには導電性粒子に表面処理等を行う必要があり、導電性粒子の製造には煩雑な工程が必要である。
【0015】
本発明の目的は、導電材料が一定期間放置された場合でも、電極上に導電性粒子におけるはんだを効率的に配置することができ、さらに、電極幅及び電極間幅が狭くても、マイグレーションの発生を効果的に抑制することができ、ボイドの発生を効果的に抑制することができる導電材料を提供することである。また、本発明の目的は、上記導電材料を用いた接続構造体及び接続構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の広い局面によれば、導電部の外表面部分にはんだを有する複数の導電性粒子と、熱硬化性化合物と、酸無水物熱硬化剤と、有機リン化合物とを含む、導電材料が提供される。
【0017】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、前記有機リン化合物が、有機ホスホニウム塩、有機リン酸、有機リン酸エステル、有機ホスホン酸、有機ホスホン酸エステル、有機ホスフィン酸、又は有機ホスフィン酸エステルである。
【0018】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、前記有機リン化合物の融点が、170℃以下である。
【0019】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、前記有機リン化合物が、25℃で液状である。
【0020】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、前記酸無水物熱硬化剤が、25℃で固体である。
【0021】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、前記酸無水物熱硬化剤100重量部に対して、前記有機リン化合物の含有量が、0.5重量部以上、10重量部以下である。
【0022】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、導電材料100重量%中、前記酸無水物熱硬化剤の含有量が、5重量%以上、50重量%以下である。
【0023】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、前記導電材料が、導電ペーストである。
【0024】
本発明の広い局面によれば、少なくとも1つの第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、少なくとも1つの第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、前記接続部の材料が、上述した導電材料であり、前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続されている、接続構造体が提供される。
【0025】
本発明に係る接続構造体のある特定の局面では、前記第1の電極と前記接続部と前記第2の電極との積層方向に前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、前記接続部中のはんだ部が配置されている。
【0026】
本発明の広い局面によれば、上述した導電材料を用いて、少なくとも1つの第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、前記導電材料を配置する工程と、前記導電材料の前記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、少なくとも1つの第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように配置する工程と、前記導電性粒子におけるはんだの融点以上に前記導電材料を加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、前記導電材料により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続する工程とを備える、接続構造体の製造方法が提供される。
【0027】
本発明に係る接続構造体の製造方法のある特定の局面では、前記第1の電極と前記接続部と前記第2の電極との積層方向に前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、前記接続部中のはんだ部が配置されている接続構造体を得る。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る導電材料は、導電部の外表面部分にはんだを有する複数の導電性粒子と、熱硬化性化合物と、酸無水物熱硬化剤と、有機リン化合物とを含む。本発明に係る導電材料では、上記の構成が備えられているので、導電材料が一定期間放置された場合でも、電極上に導電性粒子におけるはんだを効率的に配置することができ、さらに、電極幅及び電極間幅が狭くても、マイグレーションの発生を効果的に抑制することができ、ボイドの発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る導電材料を用いて得られる接続構造体を模式的に示す断面図である。
図2図2(a)~(c)は、本発明の一実施形態に係る導電材料を用いて、接続構造体を製造する方法の一例の各工程を説明するための断面図である。
図3図3は、接続構造体の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0031】
(導電材料)
本発明に係る導電材料は、導電部の外表面部分にはんだを有する複数の導電性粒子と、熱硬化性化合物と、酸無水物熱硬化剤と、有機リン化合物とを含む。はんだは、導電部に含まれ、導電部の一部又は全部である。
【0032】
本発明では、上記の構成が備えられているので、導電材料が一定期間放置された場合でも、電極上に導電性粒子におけるはんだを効率的に配置することができ、さらに、電極幅及び電極間幅が狭くても、マイグレーションの発生を効果的に抑制することができる。例えば、基板等の接続対象部材上に導電材料が配置された後、接続対象部材上で導電材料が一定期間放置された場合でも、電極上に導電性粒子におけるはんだを効率的に配置することができる。
【0033】
接続構造体の作製時には、スクリーン印刷等により導電材料が配置された後、導電材料が電気的に接続されるまでに、一定期間放置されることがある。従来の導電材料では、例えば、導電材料が配置された後に一定期間放置されると、電極上に導電性粒子を効率的に配置することができず、電極間の導通信頼性も低下する。本発明では、上記の構成が採用されているので、導電材料が配置された後に一定期間放置されても、電極上に導電性粒子を効率的に配置することができ、電極間の導通信頼性を十分に高めることができる。
【0034】
また、本発明では、上記の構成が備えられているので、電極間を電気的に接続した場合に、複数の導電性粒子が、上下の対向した電極間に集まりやすく、複数の導電性粒子を電極(ライン)上に効率的に配置することができる。また、複数の導電性粒子の一部が、電極が形成されていない領域(スペース)に配置され難く、電極が形成されていない領域に配置される導電性粒子の量をかなり少なくすることができる。従って、電極間の導通信頼性を高めることができる。しかも、接続されてはならない横方向に隣接する電極間の電気的な接続を防ぐことができ、絶縁信頼性を高めることができる。
【0035】
半導体素子の実装(特に一次実装)においては、電極幅及び電極間幅が狭くなってきている。このため、電極が形成されていない領域(スペース)にはんだが残存していると、マイグレーションが発生し易く、マイグレーションの発生が大きな問題となっている。本発明では、電極幅及び電極間幅が狭くても、マイグレーションの発生を効果的に抑制することができる。
【0036】
また、従来の導電材料では、はんだ溶融時にはんだ表面において発生する水によってボイドが生じることがあり、発生したボイドによって接続信頼性が低下するという問題がある。本発明に係る導電材料では、酸無水物硬化剤を用いることで水の発生を抑えることができ、ボイドの発生を効果的に抑制することができる。
【0037】
また、本発明に係る導電材料では、酸無水物熱硬化剤と有機リン化合物とを併用している。上記酸無水物熱硬化剤のみを用いた導電材料では、耐熱性、耐湿熱性、及び耐マイグレーション性等に優れるものの、電極上に導電性粒子におけるはんだが凝集し難い。本発明者らは、上記酸無水物熱硬化剤と上記有機リン化合物とを併用することで、上記酸無水物熱硬化剤のみを用いた導電材料の特長を活かしつつ、課題であった導電性粒子におけるはんだの凝集性を改善できることを見出した。
【0038】
導電性粒子におけるはんだを電極上により一層効率的に配置する観点からは、上記導電材料の25℃での粘度(η25)は、好ましくは20Pa・s以上、より好ましくは30Pa・s以上であり、好ましくは400Pa・s以下、より好ましくは300Pa・s以下である。
【0039】
上記粘度(η25)は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整可能である。また、フィラーの使用により、粘度を比較的高くすることができる。
【0040】
上記粘度(η25)は、例えば、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)等を用いて、25℃及び5rpmの条件で測定可能である。
【0041】
上記導電材料は、導電ペースト及び導電フィルム等として使用される。上記導電ペーストは、異方性導電ペーストであることが好ましく、上記導電フィルムは、異方性導電フィルムであることが好ましい。導電性粒子におけるはんだをより一層電極上に配置する観点からは、上記導電材料は、導電ペーストであることが好ましい。
【0042】
上記導電材料は、電極の電気的な接続に好適に用いられる。上記導電材料は、回路接続材料であることが好ましい。
【0043】
以下、導電材料に含まれる各成分を説明する。
【0044】
(導電性粒子)
上記導電性粒子は、接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電部の外表面部分にはんだを有する。上記導電性粒子は、はんだにより形成されたはんだ粒子であってもよく、はんだ以外の材料から形成された基材粒子と基材粒子の表面上に配置されたはんだ部とを備える導電性粒子であってもよい。はんだ以外の材料から形成された基材粒子と基材粒子の表面上に配置されたはんだ部とを備える導電性粒子を用いた場合には、電極上に導電性粒子が集まり難くなり、導電性粒子同士のはんだ接合性が低いために、電極上に移動した導電性粒子が電極外に移動しやすくなる傾向があり、電極間の位置ずれの抑制効果も低くなる傾向がある。従って、上記導電性粒子は、はんだにより形成されたはんだ粒子であることが好ましい。
【0045】
上記はんだを導電部の外表面部分に有する導電性粒子を用いることで、はんだが溶融して電極に接合し、はんだが電極間を導通させる。例えば、はんだと電極とが点接触ではなく面接触しやすいため、接続抵抗が低くなる。また、はんだを導電部の外表面部分に有する導電性粒子の使用により、はんだと電極との接合強度が高くなる結果、はんだと電極との剥離がより一層生じ難くなり、導通信頼性が効果的に高くなる。
【0046】
上記はんだ(はんだ部)を構成する材料は、JIS Z3001:溶接用語に基づき、液相線が450℃以下である溶加材であることが好ましい。上記はんだの組成としては、例えば亜鉛、金、銀、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウム等を含む金属組成が挙げられる。低融点で鉛フリーである錫-インジウム系(117℃共晶)、又は錫-ビスマス系(139℃共晶)が好ましい。すなわち、上記はんだは、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むはんだ、又は錫とビスマスとを含むはんだであることが好ましい。
【0047】
上記導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは3μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは40μm以下である。上記導電性粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上に導電性粒子におけるはんだをより一層効率的に配置することができ、電極間に導電性粒子におけるはんだを多く配置することが容易であり、導通信頼性がより一層高くなる。
【0048】
上記導電性粒子の粒子径は、平均粒子径であることが好ましく、数平均粒子径であることがより好ましい。導電性粒子の平均粒子径は、例えば、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することや、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。
【0049】
上記導電性粒子の粒子径の変動係数は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上であり、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。上記粒子径の変動係数が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだをより一層効率的に配置することができる。但し、上記導電性粒子の粒子径の変動係数は、5%未満であってもよい。
【0050】
上記変動係数(CV値)は、以下のようにして測定できる。
【0051】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:導電性粒子の粒子径の標準偏差
Dn:導電性粒子の粒子径の平均値
【0052】
上記導電性粒子の形状は特に限定されない。上記導電性粒子の形状は、球状であってもよく、扁平状等の球形状以外の形状であってもよい。
【0053】
上記導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上、最も好ましくは30重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、更に好ましくは70重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上に導電性粒子におけるはんだをより一層効率的に配置することができ、電極間に導電性粒子におけるはんだを多く配置することが容易であり、導通信頼性がより一層高くなる。導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子の含有量は多い方が好ましい。
【0054】
(熱硬化性化合物)
本発明に係る導電材料は、熱硬化性化合物を含む。上記熱硬化性化合物は、加熱により硬化可能な化合物である。上記熱硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。導電材料の硬化性及び粘度をより一層良好にし、導通信頼性をより一層高める観点から、エポキシ化合物又はエピスルフィド化合物が好ましく、エポキシ化合物がより好ましい。上記導電材料は、エポキシ化合物を含むことが好ましい。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0055】
上記エポキシ化合物は、常温(23℃)で液状又は固体であり、上記エポキシ化合物が常温で固体である場合は、溶融温度がはんだの融点以下であるエポキシ化合物が好ましい。
【0056】
上記導電材料100重量%中、上記熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。上記熱硬化性化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子におけるはんだを電極上により一層効率的に配置し、電極間の位置ずれをより一層抑制し、電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。
【0057】
(酸無水物熱硬化剤)
本発明に係る導電材料は、酸無水物熱硬化剤を含む。上記酸無水物熱硬化剤は、上記熱硬化性化合物を熱硬化させる。
【0058】
上記酸無水物熱硬化剤として、通常、エポキシ化合物等の熱硬化性化合物の硬化剤として用いられる酸無水物を適宜用いることができる。上記酸無水物熱硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、フタル酸誘導体の無水物、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水グルタル酸、無水コハク酸、グリセリンビス無水トリメリット酸モノアセテート、及びエチレングリコールビス無水トリメリット酸等の2官能の酸無水物熱硬化剤、無水トリメリット酸等の3官能の酸無水物熱硬化剤、並びに、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、及びポリアゼライン酸無水物等の4官能以上の酸無水物熱硬化剤等が挙げられる。上記酸無水物熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
導電材料が一定期間放置された場合でも、電極上に導電性粒子におけるはんだをより一層効率的に配置する観点、及びボイドの発生をより一層効果的に抑制する観点からは、上記酸無水物熱硬化剤は、25℃で固体であることが好ましい。
【0060】
電極上に導電性粒子におけるはんだをより一層効率的に配置する観点からは、上記酸無水物熱硬化剤の融点は、上記導電性粒子におけるはんだの融点よりも低いことが好ましい。
【0061】
硬化物の熱劣化をより一層効果的に抑制する観点からは、上記酸無水物熱硬化剤は、環状酸無水物熱硬化剤であることが好ましい。環状酸無水物熱硬化剤としては、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、及びトリアクリルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0062】
導電材料100重量%中、上記酸無水物熱硬化剤の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。上記酸無水物熱硬化剤の含有量が、上記下限以上であると、導電材料を十分に硬化させることが容易であり、電極上にはんだがより一層効率的に配置され、マイグレーションの発生をより一層効果的に抑制できる。上記酸無水物熱硬化剤の含有量が、上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の酸無水物熱硬化剤が残存し難くなり、ボイドの発生を抑制できるとともに硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0063】
上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記酸無水物熱硬化剤の含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは150重量部以下である。上記酸無水物熱硬化剤の含有量が上記下限以上であると、導電材料を十分に硬化させることが容易であり、電極上にはんだがより一層効率的に配置され、マイグレーションの発生をより一層効果的に抑制できる。上記酸無水物熱硬化剤の含有量が上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の酸無水物熱硬化剤が残存し難くなり、ボイドの発生を抑制できるとともに硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0064】
(他の熱硬化剤)
本発明に係る導電材料は、上記酸無水物熱硬化剤ではない他の熱硬化剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記他の熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤等のチオール硬化剤、熱カチオン開始剤(熱カチオン硬化剤)及び熱ラジカル発生剤等が挙げられる。上記他の熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
貯蔵安定性をより一層高める観点、及び絶縁信頼性をより一層高める観点からは、上記他の熱硬化剤の含有量は少ないほど好ましい。上記他の熱硬化剤を用いる場合に、上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記他の熱硬化剤の含有量は、好ましくは5重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。貯蔵安定性をより一層高める観点、及び絶縁信頼性をより一層高める観点からは、上記導電材料は、上記他の熱硬化剤を含まないことが好ましい。
【0066】
上記イミダゾール硬化剤は、特に限定されない。上記イミダゾール硬化剤としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン及び2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。貯蔵安定性をより一層高める観点からは、上記導電材料は、上記イミダゾール硬化剤を含まないことが好ましい。
【0067】
上記チオール硬化剤は、特に限定されない。上記チオール硬化剤としては、トリメチロールプロパントリス-3-メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトールヘキサ-3-メルカプトプロピオネート等が挙げられる。絶縁信頼性をより一層高める観点からは、上記導電材料は、上記チオール硬化剤を含まないことが好ましい。
【0068】
上記アミン硬化剤は、特に限定されない。上記アミン硬化剤としては、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。貯蔵安定性をより一層高める観点からは、上記導電材料は、上記アミン硬化剤を含まないことが好ましい。
【0069】
上記熱カチオン開始剤(熱カチオン硬化剤)としては、ヨードニウム系カチオン硬化剤、オキソニウム系カチオン硬化剤及びスルホニウム系カチオン硬化剤等が挙げられる。上記ヨードニウム系カチオン硬化剤としては、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。上記オキソニウム系カチオン硬化剤としては、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボラート等が挙げられる。上記スルホニウム系カチオン硬化剤としては、トリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。接続信頼性をより一層高める観点からは、上記導電材料は、上記熱カチオン開始剤(熱カチオン硬化剤)を含まないことが好ましい。
【0070】
上記熱ラジカル発生剤は、特に限定されない。上記熱ラジカル発生剤としては、アゾ化合物及び有機過酸化物等が挙げられる。上記アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。上記有機過酸化物としては、ジ-tert-ブチルペルオキシド及びメチルエチルケトンペルオキシド等が挙げられる。接続信頼性をより一層高める観点からは、上記導電材料は、上記熱ラジカル発生剤を含まないことが好ましい。
【0071】
(有機リン化合物)
本発明に係る導電材料は、有機リン化合物を含む。上記有機リン化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0072】
電極上に導電性粒子におけるはんだをより一層効率的に配置する観点からは、上記有機リン化合物は、有機ホスホニウム塩、有機リン酸、有機リン酸エステル、有機ホスホン酸、有機ホスホン酸エステル、有機ホスフィン酸、又は有機ホスフィン酸エステルであることが好ましい。電極上に導電性粒子におけるはんだをより一層効率的に配置する観点からは、上記有機リン化合物は、有機ホスホニウム塩であることがより好ましい。
【0073】
上記有機ホスホニウム塩としては、ホスホニウムイオンとその対イオンとで構成されていればよく、例えば、市販品として、日本化学工業社製「ヒシコーリン」シリーズ等が挙げられる。上記有機ホスホニウム塩は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0074】
上記有機リン酸、上記有機リン酸エステル、上記有機ホスホン酸、上記有機ホスホン酸エステル、上記有機ホスフィン酸、及び上記有機ホスフィン酸エステルとしては特に限定されず、従来公知の化合物や市販品を用いることができる。これらは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0075】
電極上に導電性粒子におけるはんだをより一層効率的に配置する観点からは、上記有機リン化合物の融点は、170℃以下であることが好ましい。電極上に導電性粒子におけるはんだをより一層効率的に配置する観点からは、上記有機リン化合物は、25℃で液状であることが好ましい。
【0076】
電極上に導電性粒子におけるはんだをより一層効率的に配置する観点からは、上記有機リン化合物の融点は、上記酸無水物熱硬化剤の融点よりも低いことが好ましい。
【0077】
上記酸無水物熱硬化剤100重量部に対して、上記有機リン化合物の含有量は、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは0.8重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは8重量部以下である。上記有機リン化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電材料が一定期間放置された場合でも、電極上に導電性粒子におけるはんだをより一層効率的に配置することができる。
【0078】
(フラックス)
上記導電材料は、フラックスを含むことが好ましい。フラックスの使用により、導電性粒子におけるはんだを電極上により一層効果的に配置することができる。該フラックスは特に限定されない。フラックスとして、はんだ接合等に一般的に用いられているフラックスを使用できる。
【0079】
上記フラックスとしては、例えば、塩化亜鉛、塩化亜鉛と無機ハロゲン化物との混合物、塩化亜鉛と無機酸との混合物、溶融塩、リン酸、リン酸の誘導体、有機ハロゲン化物、ヒドラジン、有機酸及び松脂等が挙げられる。上記フラックスは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0080】
上記溶融塩としては、塩化アンモニウム等が挙げられる。上記有機酸としては、乳酸、クエン酸、ステアリン酸、グルタミン酸、リンゴ酸及びグルタル酸等が挙げられる。上記松脂としては、活性化松脂及び非活性化松脂等が挙げられる。上記フラックスは、カルボキシル基を2個以上有する有機酸、又は松脂であることが好ましい。上記フラックスは、カルボキシル基を2個以上有する有機酸であってもよく、松脂であってもよい。カルボキシル基を2個以上有する有機酸、又は松脂の使用により、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
【0081】
上記松脂はアビエチン酸を主成分とするロジン類である。上記フラックスは、ロジン類であることが好ましく、アビエチン酸であることがより好ましい。この好ましいフラックスの使用により、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
【0082】
上記フラックスの活性温度(融点)は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、より一層好ましくは160℃以下、さらに好ましくは150℃以下、さらに一層好ましくは140℃以下である。上記フラックスの活性温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、フラックス効果がより一層効果的に発揮され、導電性粒子におけるはんだが電極上により一層効率的に配置される。上記フラックスの活性温度(融点)は80℃以上、190℃以下であることが好ましい。上記フラックスの活性温度(融点)は80℃以上、140℃以下であることが特に好ましい。
【0083】
フラックスの活性温度(融点)が80℃以上、190℃以下である上記フラックスとしては、コハク酸(融点186℃)、グルタル酸(融点96℃)、アジピン酸(融点152℃)、ピメリン酸(融点104℃)、スベリン酸(融点142℃)等のジカルボン酸、安息香酸(融点122℃)、及びリンゴ酸(融点130℃)等が挙げられる。
【0084】
また、上記フラックスの沸点は200℃以下であることが好ましい。
【0085】
上記フラックスは、加熱によりカチオンを放出するフラックスであることが好ましい。加熱によりカチオンを放出するフラックスの使用により、導電性粒子におけるはんだを電極上により一層効率的に配置することができる。
【0086】
上記加熱によりカチオンを放出するフラックスとしては、上記熱カチオン開始剤(熱カチオン硬化剤)が挙げられる。
【0087】
上記フラックスは、酸化合物と塩基化合物との塩であることがさらに好ましい。上記酸化合物は、金属の表面を洗浄する効果を有することが好ましく、上記塩基化合物は、上記酸化合物を中和する作用を有することが好ましい。上記フラックスは、上記酸化合物と上記塩基化合物との中和反応物であることが好ましい。上記フラックスは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0088】
電極上に導電性粒子におけるはんだをより一層効率的に配置する観点からは、上記フラックスの融点は、上記導電性粒子におけるはんだの融点よりも、低いことが好ましく、5℃以上低いことがより好ましく、10℃以上低いことがさらに好ましい。但し、上記フラックスの融点は、上記導電性粒子におけるはんだの融点よりも高くてもよい。通常、上記導電材料の使用温度は上記導電性粒子におけるはんだの融点以上であり、上記フラックスの融点が上記導電材料の使用温度以下であれば、上記フラックスの融点が上記導電性粒子におけるはんだの融点よりも高くても、上記フラックスは十分にフラックスとしての性能を発揮することができる。例えば、導電材料の使用温度が150℃以上であり、導電性粒子におけるはんだ(Sn42Bi58:融点139℃)と、リンゴ酸とベンジルアミンとの塩であるフラックス(融点146℃)とを含む導電材料において、上記リンゴ酸とベンジルアミンとの塩であるフラックスは、十分にフラックス作用を示す。
【0089】
電極上に導電性粒子におけるはんだをより一層効率的に配置する観点からは、上記フラックスの融点は、上記酸無水物熱硬化剤の反応開始温度よりも、低いことが好ましく、5℃以上低いことがより好ましく、10℃以上低いことがさらに好ましい。
【0090】
上記酸化合物は、カルボキシル基を有する有機化合物であることが好ましい。上記酸化合物としては、脂肪族系カルボン酸であるマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、クエン酸、リンゴ酸、環状脂肪族カルボン酸であるシクロヘキシルカルボン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、芳香族カルボン酸であるイソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、及びエチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。上記酸化合物は、グルタル酸、アゼライン酸、又はリンゴ酸であることが好ましい。
【0091】
上記塩基化合物は、アミノ基を有する有機化合物であることが好ましい。上記塩基化合物としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ベンズヒドリルアミン、2-メチルベンジルアミン、3-メチルベンジルアミン、4-tert-ブチルベンジルアミン、N-メチルベンジルアミン、N-エチルベンジルアミン、N-フェニルベンジルアミン、N-tert-ブチルベンジルアミン、N-イソプロピルベンジルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、イミダゾール化合物、及びトリアゾール化合物が挙げられる。上記塩基化合物は、ベンジルアミン、2-メチルベンジルアミン、又は3-メチルベンジルアミンであることが好ましい。
【0092】
上記フラックスは、導電材料中に分散されていてもよく、導電性粒子の表面上に付着していてもよい。フラックス効果をより一層効果的に高める観点からは、上記フラックスは、導電性粒子の表面上に付着していることが好ましい。
【0093】
導電材料の保存安定性をより一層高くする観点からは、上記フラックスは、25℃で固体であることが好ましく、25℃の導電材料中で、上記フラックスが固体で分散していることが好ましい。
【0094】
上記導電材料100重量%中、上記フラックスの含有量は好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。フラックスの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだ及び電極の表面に酸化被膜がより一層形成され難くなり、さらに、はんだ及び電極の表面に形成された酸化被膜をより一層効果的に除去できる。
【0095】
(フィラー)
上記導電材料には、フィラーを添加してもよい。フィラーは、有機フィラーであってもよく、無機フィラーであってもよい。フィラーの添加により、基板の全電極上に対して、導電性粒子を均一に凝集させることができる。
【0096】
上記導電材料は、上記フィラーを含まないか、又は上記フィラーを5重量%以下で含むことが好ましい。結晶性熱硬化性化合物を用いている場合には、フィラーの含有量が少ないほど、電極上にはんだが移動しやすくなる。
【0097】
上記導電材料100重量%中、上記フィラーの含有量は、好ましくは0重量%(未含有)以上であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下である。上記フィラーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子が電極上により一層効率的に配置される。
【0098】
(他の成分)
上記導電材料は、必要に応じて、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、チキソ剤、レベリング剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0099】
(接続構造体及び接続構造体の製造方法)
本発明に係る接続構造体は、少なくとも1つの第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、少なくとも1つの第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、上記第1の接続対象部材と、上記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備える。本発明に係る接続構造体では、上記接続部の材料が、上述した導電材料である。本発明に係る接続構造体では、上記第1の電極と上記第2の電極とが、上記接続部中のはんだ部により電気的に接続されている。
【0100】
本発明に係る接続構造体の製造方法は、上述した導電材料を用いて、少なくとも1つの第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、上記導電材料を配置する工程を備える。本発明に係る接続構造体の製造方法は、上記導電材料の上記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、少なくとも1つの第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、上記第1の電極と上記第2の電極とが対向するように配置する工程を備える。本発明に係る接続構造体の製造方法は、上記導電性粒子におけるはんだの融点以上に上記導電材料を加熱することで、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、上記導電材料により形成し、かつ、上記第1の電極と上記第2の電極とを、上記接続部中のはんだ部により電気的に接続する工程とを備える。
【0101】
本発明に係る接続構造体及び上記接続構造体の製造方法では、特定の導電材料を用いているので、導電性粒子におけるはんだが第1の電極と第2の電極との間に集まりやすく、はんだを電極(ライン)上に効率的に配置することができる。また、はんだの一部が、電極が形成されていない領域(スペース)に配置され難く、電極が形成されていない領域に配置されるはんだの量をかなり少なくすることができる。従って、第1の電極と第2の電極との間の導通信頼性を高めることができる。しかも、接続されてはならない横方向に隣接する電極間の電気的な接続を防ぐことができ、絶縁信頼性を高めることができる。
【0102】
また、導電性粒子におけるはんだを電極上に効率的に配置し、かつ電極が形成されていない領域に配置されるはんだの量をかなり少なくするためには、上記導電材料は、導電フィルムではなく、導電ペーストを用いることが好ましい。
【0103】
電極間でのはんだ部の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。電極の表面上のはんだ濡れ面積(電極の露出した面積100%中のはんだが接している面積)は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上であり、好ましくは100%以下である。
【0104】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0105】
図1は、本発明の一実施形態に係る導電材料を用いて得られる接続構造体を模式的に示す断面図である。
【0106】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材3と、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とを接続している接続部4とを備える。接続部4は、上述した導電材料により形成されている。本実施形態では、導電材料は、導電性粒子と、熱硬化性化合物と、酸無水物熱硬化剤と、有機リン化合物とを含む。本実施形態では、上記導電性粒子として、はんだ粒子を含む。上記熱硬化性化合物と上記熱硬化剤とを、熱硬化性成分と呼ぶ。
【0107】
接続部4は、複数のはんだ粒子が集まり互いに接合したはんだ部4Aと、熱硬化性成分が熱硬化された硬化物部4Bとを有する。
【0108】
第1の接続対象部材2は表面(上面)に、複数の第1の電極2aを有する。第2の接続対象部材3は表面(下面)に、複数の第2の電極3aを有する。第1の電極2aと第2の電極3aとが、はんだ部4Aにより電気的に接続されている。従って、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とが、はんだ部4Aにより電気的に接続されている。なお、接続部4において、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まったはんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)では、はんだは存在しない。はんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)では、はんだ部4Aと離れたはんだは存在しない。なお、少量であれば、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まったはんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)に、はんだが存在していてもよい。
【0109】
図1に示すように、接続構造体1では、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に、複数のはんだ粒子が集まり、複数のはんだ粒子が溶融した後、はんだ粒子の溶融物が電極の表面を濡れ拡がった後に固化して、はんだ部4Aが形成されている。このため、はんだ部4Aと第1の電極2a、並びにはんだ部4Aと第2の電極3aとの接続面積が大きくなる。すなわち、はんだ粒子を用いることにより、導電部の外表面部分がニッケル、金又は銅等の金属である導電性粒子を用いた場合と比較して、はんだ部4Aと第1の電極2a、並びにはんだ部4Aと第2の電極3aとの接触面積が大きくなる。このため、接続構造体1における導通信頼性及び接続信頼性が高くなる。なお、導電材料は、フラックスを含んでいてもよい。フラックスを用いた場合には、加熱により、一般にフラックスは次第に失活する。
【0110】
なお、図1に示す接続構造体1では、はんだ部4Aの全てが、第1,第2の電極2a,3a間の対向している領域に位置している。図3に示す変形例の接続構造体1Xは、接続部4Xのみが、図1に示す接続構造体1と異なる。接続部4Xは、はんだ部4XAと硬化物部4XBとを有する。接続構造体1Xのように、はんだ部4XAの多くが、第1,第2の電極2a,3aの対向している領域に位置しており、はんだ部4XAの一部が第1,第2の電極2a,3aの対向している領域から側方にはみ出していてもよい。第1,第2の電極2a,3aの対向している領域から側方にはみ出しているはんだ部4XAは、はんだ部4XAの一部であり、はんだ部4XAから離れたはんだではない。なお、本実施形態では、はんだ部から離れたはんだの量を少なくすることができるが、はんだ部から離れたはんだが硬化物部中に存在していてもよい。
【0111】
はんだ粒子の使用量を少なくすれば、接続構造体1を得ることが容易になる。はんだ粒子の使用量を多くすれば、接続構造体1Xを得ることが容易になる。
【0112】
上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の60%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることがより好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の70%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることがさらに好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の80%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが特に好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の90%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが最も好ましい。上記の好ましい態様を満足することで、導通信頼性をより一層高めることができる。
【0113】
次に、本発明の一実施形態に係る導電材料を用いて、接続構造体1を製造する方法の一例を説明する。
【0114】
先ず、第1の電極2aを表面(上面)に有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、図2(a)に示すように、第1の接続対象部材2の表面上に、熱硬化性成分11Bと、複数のはんだ粒子11Aとを含む導電材料11を配置する(第1の工程)。導電材料11は、熱硬化性成分11Bとして、熱硬化性化合物と熱硬化剤とを含む。
【0115】
第1の接続対象部材2の第1の電極2aが設けられた表面上に、導電材料11を配置する。導電材料11の配置の後に、はんだ粒子11Aは、第1の電極2a(ライン)上と、第1の電極2aが形成されていない領域(スペース)上との双方に配置されている。
【0116】
導電材料11の配置方法としては、特に限定されないが、ディスペンサーによる塗布、スクリーン印刷、及びインクジェット装置による吐出等が挙げられる。
【0117】
また、第2の電極3aを表面(下面)に有する第2の接続対象部材3を用意する。次に、図2(b)に示すように、第1の接続対象部材2の表面上の導電材料11において、導電材料11の第1の接続対象部材2側とは反対側の表面上に、第2の接続対象部材3を配置する(第2の工程)。導電材料11の表面上に、第2の電極3a側から、第2の接続対象部材3を配置する。このとき、第1の電極2aと第2の電極3aとを対向させる。
【0118】
次に、はんだ粒子11Aの融点以上に導電材料11を加熱する(第3の工程)。好ましくは、熱硬化性成分11B(熱硬化性化合物)の硬化温度以上に導電材料11を加熱する。この加熱時には、電極が形成されていない領域に存在していたはんだ粒子11Aは、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まる(自己凝集効果)。導電フィルムではなく、導電ペーストを用いた場合には、はんだ粒子11Aが、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に効果的に集まる。また、はんだ粒子11Aは溶融し、互いに接合する。また、熱硬化性成分11Bは熱硬化する。この結果、図2(c)に示すように、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とを接続している接続部4を、導電材料11により形成する。導電材料11により接続部4が形成され、複数のはんだ粒子11Aが接合することによってはんだ部4Aが形成され、熱硬化性成分11Bが熱硬化することによって硬化物部4Bが形成される。はんだ粒子11Aが十分に移動すれば、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に位置していないはんだ粒子11Aの移動が開始してから、第1の電極2aと第2の電極3aとの間にはんだ粒子11Aの移動が完了するまでに、温度を一定に保持しなくてもよい。
【0119】
本実施形態では、上記第2の工程及び上記第3の工程において、加圧を行わない方が好ましい。この場合には、導電材料11には、第2の接続対象部材3の重量が加わる。このため、接続部4の形成時に、はんだ粒子11Aが、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に効果的に集まる。なお、上記第2の工程及び上記第3の工程の内の少なくとも一方において、加圧を行えば、はんだ粒子が第1の電極と第2の電極との間に集まろうとする作用が阻害される傾向が高くなる。
【0120】
また、本実施形態では、加圧を行っていないため、導電材料を塗布した第1の接続対象部材に、第2の接続対象部材を重ね合わせた際に、第1の電極と第2の電極とのアライメントがずれた状態でも、そのずれを補正して、第1の電極と第2の電極とを接続させることができる(セルフアライメント効果)。これは、第1の電極と第2の電極との間に自己凝集した溶融したはんだが、第1の電極と第2の電極との間のはんだと導電材料のその他の成分とが接する面積が最小となる方がエネルギー的に安定になるため、その最小の面積となる接続構造であるアライメントのあった接続構造にする力が働くためである。この際、導電材料が硬化していないこと、及び、その温度、時間にて、導電材料の導電性粒子以外の成分の粘度が十分低いことが望ましい。
【0121】
はんだの融点での導電材料の粘度は、好ましくは50Pa・s以下、より好ましくは10Pa・s以下、さらに好ましくは1Pa・s以下であり、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.2Pa・s以上である。上記粘度が上記上限以下であれば、導電性粒子におけるはんだを効率的に凝集させることができ、上記粘度が上記下限以上であれば、接続部でのボイドを抑制し、接続部以外への導電材料のはみだしを抑制することができる。
【0122】
はんだの融点での導電材料の粘度は以下のようにして測定される。
【0123】
上記はんだの融点での導電材料の粘度は、STRESSTECH(EOLOGICA社製)等を用いて、歪制御1rad、周波数1Hz、昇温速度20℃/分、測定温度範囲25℃~200℃(但し、はんだの融点が200℃を超える場合には温度上限をはんだの融点とする)の条件で測定可能である。測定結果から、はんだの融点(℃)での粘度が評価される。
【0124】
このようにして、図1に示す接続構造体1が得られる。なお、上記第2の工程と上記第3の工程とは連続して行われてもよい。また、上記第2の工程を行った後に、得られる第1の接続対象部材2と導電材料11と第2の接続対象部材3との積層体を、加熱部に移動させて、上記第3の工程を行ってもよい。上記加熱を行うために、加熱部材上に上記積層体を配置してもよく、加熱された空間内に上記積層体を配置してもよい。
【0125】
上記第3の工程における上記加熱温度は、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上であり、好ましくは450℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。
【0126】
上記第3の工程における加熱方法としては、導電性粒子におけるはんだの融点以上及び熱硬化性成分の硬化温度以上に、接続構造体全体を、リフロー炉を用いて又はオーブンを用いて加熱する方法や、接続構造体の接続部のみを局所的に加熱する方法が挙げられる。
【0127】
局所的に加熱する方法に用いる器具としては、ホットプレート、熱風を付与するヒートガン、はんだゴテ、及び赤外線ヒーター等が挙げられる。
【0128】
また、ホットプレートにて局所的に加熱する際、接続部直下は、熱伝導性の高い金属にて、その他の加熱することが好ましくない個所は、フッ素樹脂等の熱伝導性の低い材質にて、ホットプレート上面を形成することが好ましい。
【0129】
上記第1,第2の接続対象部材は、特に限定されない。上記第1,第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、半導体パッケージ、LEDチップ、LEDパッケージ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びに樹脂フィルム、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル、リジッドフレキシブル基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板等の電子部品等が挙げられる。上記第1,第2の接続対象部材は、電子部品であることが好ましい。
【0130】
上記第1の接続対象部材及び上記第2の接続対象部材の内の少なくとも一方が、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板であることが好ましい。上記第2の接続対象部材が、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板であることが好ましい。樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル及びリジッドフレキシブル基板は、柔軟性が高く、比較的軽量であるという性質を有する。このような接続対象部材の接続に導電フィルムを用いた場合には、はんだが電極上に集まりにくい傾向がある。これに対して、導電ペーストを用いることで、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板を用いたとしても、はんだを電極上に効率的に集めることで、電極間の導通信頼性を十分に高めることができる。樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板を用いる場合に、半導体チップ等の他の接続対象部材を用いた場合と比べて、加圧を行わないことによる電極間の導通信頼性の向上効果がより一層効果的に得られる。
【0131】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極、SUS電極、及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極、銀電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0132】
上記接続対象部材の形態にはペリフェラルやエリアアレイ等が存在する。各部材の特徴として、ペリフェラル基板では、電極が基板の外周部のみに存在する。エリアアレイ基板では、面内に電極が存在する。
【0133】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0134】
熱硬化性成分(熱硬化性化合物):
(1)ADEKA社製「EP-3300」、ベンゾフェノン型エポキシ化合物
(2)新日鉄住金化学社製「YDF-8170C」、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
【0135】
熱硬化性成分(熱硬化剤):
(1)日立化成工業社製「HN-5500」、酸無水物熱硬化剤、25℃で液状
(2)新日本理化社製「リカシッドTH」、酸無水物熱硬化剤、25℃で固形
(3)明和化成社製「MEH-8000H」、フェノールノボラック熱硬化剤
(4)SC有機化学社製「TMMP」、多官能チオール熱硬化剤
【0136】
有機リン化合物:
(1)日本化学工業社製「ヒシコーリン PX-4MP」、有機ホスホニウム塩、25℃で液状
(2)日本化学工業社製「ヒシコーリン PX-4FB」、有機ホスホニウム塩、融点99℃
(3)日本化学工業社製「ヒシコーリン PX-4B」、有機ホスホニウム塩、融点112℃
(4)日本化学工業社製「ヒシコーリン PX-4ET」、有機ホスホニウム塩、25℃で液状
(5)日本化学工業社製「ヒシコーリン PX-4PB」、有機ホスホニウム塩、融点230℃
(6)東京化成工業社製「フェニルホスホン酸」、有機ホスホン酸、融点162℃
(7)東京化成工業社製「フェニルホスフィン酸」、有機ホスフィン酸、融点85℃
(8)東京化成工業社製「リン酸フェニル」、リン酸エステル、融点100℃
【0137】
導電性粒子:
(1)三井金属工業社製「Sn42Bi58」、はんだ粒子Sn42Bi58
【0138】
(実施例1~9及び比較例1~4)
(1)異方性導電ペーストの作製
下記の表1,2に示す成分を下記の表1,2に示す配合量で配合して、異方性導電ペーストを得た。
【0139】
(2)接続構造体(エリアアレイ基板)の作製
(条件Aでの接続構造体の具体的な作製方法)
作製直後の異方性導電ペーストを用いて、以下のようにして、接続構造体を作製した。
【0140】
第1の接続対象部材として、半導体チップ本体(サイズ5×5mm、厚み0.4mm)の表面に、400μmピッチで直径250μmの銅電極が、エリアアレイにて配置されており、最表面にパッシベーション膜(ポリイミド、厚み5μm、電極部の開口径200μm)が形成されている半導体チップを準備した。銅電極の数は、半導体チップ1個当たり、10個×10個の合計100個である。
【0141】
第2の接続対象部材として、ガラスエポキシ基板本体(サイズ20×20mm、厚み1.2mm、材質FR-4)の表面に、第1の接続対象部材の電極に対して、同じパターンとなるように、銅電極が配置されており、銅電極が配置されていない領域にソルダーレジスト膜が形成されているガラスエポキシ基板を準備した。銅電極の表面とソルダーレジスト膜の表面との段差は、15μmであり、ソルダーレジスト膜は銅電極よりも突出している。
【0142】
上記ガラスエポキシ基板の上面に、作製直後の異方性導電ペーストを厚さ100μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層の上面に半導体チップを電極同士が対向するように積層した。異方性導電ペースト層には、上記半導体チップの重量は加わる。その状態から、異方性導電ペースト層の温度が、昇温開始から5秒後に139℃(はんだの融点)となるように加熱した。さらに、昇温開始から15秒後に、異方性導電ペースト層の温度が160℃となるように加熱し、異方性導電ペースト層を硬化させ、接続構造体を得た。加熱時には、加圧を行わなかった。
【0143】
(条件Bでの接続構造体の具体的な作製方法)
以下の変更をしたこと以外は、条件Aと同様にして、接続構造体を作製した。
【0144】
条件Aから条件Bへの変更点:
上記ガラスエポキシ基板の上面に、作製直後の異方性導電ペーストを厚さ100μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した後、25℃及び湿度50%の環境下に6時間放置した。放置後、異方性導電ペースト層の上面に半導体チップを電極同士が対向するように積層した。
【0145】
(導電材料の25℃での粘度)
作製した導電材料の25℃での粘度(η25)を、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)を用いて、25℃及び5rpmの条件で測定した。
【0146】
(評価)
(1)耐湿熱性
異方性導電ペーストを170℃で1時間熱硬化させて、5mm×30mm(厚み0.5mm)の形状を有する第1の硬化物を得た。得られた第1の硬化物を110℃及び湿度85%の環境下に100時間放置して第2の硬化物を得た。第1の硬化物の形状と比較して、第2の硬化物の形状が変化しているか否かを顕微鏡で観察し、耐湿熱性を評価した。耐湿熱性を下記の基準で判定した。
【0147】
[耐湿熱性の判定基準]
○:第1の硬化物の形状と比較して、第2の硬化物の形状が変化していない
△:第1の硬化物の形状と比較して、第2の硬化物の形状がやや変化している
×:第1の硬化物の形状と比較して、第2の硬化物の形状が大きく変化している
【0148】
(2)電極上のはんだの配置精度
条件A及び条件Bにて得られた接続構造体において、第1の電極と接続部と第2の電極との積層方向に第1の電極と第2の電極との対向し合う部分をみたときに、第1の電極と第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の、接続部中のはんだ部が配置されている面積の割合Xを評価した。電極上のはんだの配置精度を下記の基準で判定した。
【0149】
[電極上のはんだの配置精度の判定基準]
○○:割合Xが70%以上
○:割合Xが60%以上、70%未満
△:割合Xが50%以上、60%未満
×:割合Xが50%未満
【0150】
(3)上下の電極間の導通信頼性
条件Aにて得られた接続構造体(n=15個)において、上下の電極間の1接続箇所当たりの接続抵抗をそれぞれ、4端子法により、測定した。接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。導通信頼性を下記の基準で判定した。
【0151】
[導通信頼性の判定基準]
○○:接続抵抗の平均値が50mΩ以下
○:接続抵抗の平均値が50mΩを超え、70mΩ以下
△:接続抵抗の平均値が70mΩを超え、100mΩ以下
×:接続抵抗の平均値が100mΩを超える、又は接続不良が生じている
【0152】
(4)横方向に隣接する電極間の絶縁信頼性(マイグレーション)
条件Aにて得られた接続構造体(n=15個)を、110℃及び湿度85%の環境下に100時間放置後、横方向に隣接する電極間に、5Vを印加し、抵抗値を25箇所で測定した。絶縁信頼性(マイグレーション)を下記の基準で判定した。
【0153】
[絶縁信頼性(マイグレーション)の判定基準]
○○:接続抵抗の平均値が10Ω以上
○:接続抵抗の平均値が10Ω以上、10Ω未満
△:接続抵抗の平均値が10Ω以上、10Ω未満
×:接続抵抗の平均値が10Ω未満
【0154】
(5)ボイドの有無
条件Aにて得られた接続構造体(n=15個)を、超音波探査映像装置(日本バーンズ社製「C-SAM D9500」)を用いて観察した。ボイドの有無を下記の基準で判定した。
【0155】
[ボイドの判定基準]
○:半導体チップの面積に対するボイド発生部分の面積が1%未満
△:半導体チップの面積に対するボイド発生部分の面積が1%以上、5%未満
×:半導体チップの面積に対するボイド発生部分の面積が5%以上
【0156】
結果を下記の表1,2に示す。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
フレキシブルプリント基板、樹脂フィルム、フレキシブルフラットケーブル及びリジッドフレキシブル基板を用いた場合でも、同様の傾向が見られた。
【符号の説明】
【0160】
1,1X…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…第1の電極
3…第2の接続対象部材
3a…第2の電極
4,4X…接続部
4A,4XA…はんだ部
4B,4XB…硬化物部
11…導電材料
11A…はんだ粒子(導電性粒子)
11B…熱硬化性成分
図1
図2
図3