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特許7046606農業生産、輸送、および貯蔵における精製過酸化水素ガスの使用方法
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  • 特許-農業生産、輸送、および貯蔵における精製過酸化水素ガスの使用方法 図1A
  • 特許-農業生産、輸送、および貯蔵における精製過酸化水素ガスの使用方法 図1B
  • 特許-農業生産、輸送、および貯蔵における精製過酸化水素ガスの使用方法 図2A
  • 特許-農業生産、輸送、および貯蔵における精製過酸化水素ガスの使用方法 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】農業生産、輸送、および貯蔵における精製過酸化水素ガスの使用方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/00 20060101AFI20220328BHJP
   A01N 3/00 20060101ALI20220328BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20220328BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220328BHJP
   A23B 9/18 20060101ALI20220328BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20220328BHJP
   A01G 7/06 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
A01N59/00 A
A01N3/00
A01P1/00
A01P3/00
A23B9/18
A01G7/00 601Z
A01G7/06 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2017556712
(86)(22)【出願日】2016-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-09
(86)【国際出願番号】 US2016029847
(87)【国際公開番号】W WO2016176486
(87)【国際公開日】2016-11-03
【審査請求日】2019-04-23
(31)【優先権主張番号】62/154,472
(32)【優先日】2015-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510033608
【氏名又は名称】シネクシス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Synexis LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・ディ・リー
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ジェイ・ボスマ
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/186805(WO,A1)
【文献】特表2008-544830(JP,A)
【文献】特表2005-514169(JP,A)
【文献】特開2004-323501(JP,A)
【文献】特開平01-005449(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102304441(CN,A)
【文献】特表2010-535807(JP,A)
【文献】特表2002-510602(JP,A)
【文献】特表平10-501231(JP,A)
【文献】国際公開第2015/139075(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 59/00
A01N 3/00
A01P 1/00
A01P 3/00
A23B 9/18
A01G 7/00
A01G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業生産物におけるエチレン応答を抑制する方法であって、
前記農業生産物を含有している密閉環境に低濃度過酸化水素(DHP)ガスを1.0百万分率(ppm)の終濃度で提供することと、
連続的に提供することによって一定期間、前記密閉環境においてDHPガスの前記濃度を維持することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記抑制されたエチレン応答は、熟成、老化、器官脱離、成長抑制、成長促進、枝分かれ、分げつ、種子形成、花の形成、種子発芽、および種子休眠の解除からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記密閉環境は、貯蔵容器、輸送容器、車両、配送センター、貯蔵設備、卸売りセンター、環境制御農業(CEA)設備、温室、冷床、フープハウス、小売店、台所、レストラン、草花店、納屋、食品加工エリア、市場貯蔵エリア、および市場陳列エリアからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の農業生産物におけるエチレン応答を抑制する方法であって、
前記エチレン応答は、輸送中の前記農業生産物の熟成プロセスであり、
密閉環境は、農業生産物を輸送するための密閉であり、
低濃度過酸化水素(DHP)ガスを前記輸送中に維持することを含む、方法。
【請求項5】
輸送用の前記密閉容器は、貯蔵容器、輸送容器、車両、配送センター、貯蔵設備、卸売りセンター、環境制御農業(CEA)設備、小売店、市場貯蔵エリア、および市場陳列エリアからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記密閉環境は、貯蔵容器、輸送容器、または車両である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抑制されたエチレン応答は熟成である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抑制されたエチレン応答は老化である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記抑制されたエチレン応答は器官脱離である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記提供することは、1つ以上の精製過酸化水素ガス(PHPG)生成機器を用いてDHPを連続的に生成することを含み、前記生成したDHPはプラズマ種または有機種を含まず、0.015ppm未満のオゾンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記密閉環境の湿度は、10~40%の相対湿度である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記農業生産物は、根、塊茎、根茎、球根、球茎、茎、枝、葉茎、包葉、葉鞘、葉、針葉、観賞花、芽、花、花弁、果実、種、および食用菌類からなる群から選択される、請求項2または4に記載の方法。
【請求項13】
前記農業生産物は、アチョクチャ、アマランサス、アンジェリカ、アニス、リンゴ、クズウコン、ルッコラ、アーティチョーク、グローブ、アーティチョーク、キクイモ、アスパラガス、アテモヤ、アボカド、バルサムアップル、ニガウリ、バンバラマメ、タケ、バナナ、プランテン、アセロラ、マメ、ビート、ブラックベリー、ブルーベリー、チンゲンサイ、サツマイモ、ブロッコリー、カイラン、ラーブブロッコリー、メキャベツ、房ブドウ(bunch grape)、ゴボウ、キャベツ、キャベツ、ハマナ、ヨウサイ、ヒョウタン、カンタロープ、マスクメロン、ケッパー、カランボラ(スターフルーツ)、カルドン、ニンジン、キャッサバ、カリフラワー、セロリアック、セロリ、ステムレタス、フダンソウ、チャヤ、ハヤトウリ、チコリー、ナツメ、チャイブ、キク、ショクヨウカヤツリ、コリアンダー、シトロン、ココヤシ、コラード、ヒレハリソウ、マーシュ、トウモロコシ、ボニアートポテト、キュウリ、クシュクシュ、ダイコン、タンポポ、サトイモ、イノンド、ナス、エンダイブ、ユーゲニア、ウイキョウ、イチジク、ガリアマスクメロン、ガルバンゾ、ニンニク、ガーキン、ショウガ、チョウセンニンジン、ウリ、ブドウ、グアーガム、グアバ、セイヨウアブラナ、セイヨウワサビ、ハックルベリー、アイスプラント、ジャボチカバ、パラミツ、ヒカマ、ホホバ、ケール、ヨウサイ、コールラビ、リーキ、レンズマメ、レタス、リュウガン、ビワ、ラベージ、ヘチマヒョウタン、レイシ、マカダミア、マランガ、マメイサポテ、マンゴー、キバナツノゴマ、メロン、カサバ、メロン、ハネデュー、ツルレイシ、マスカディンブドウ、キノコ、マスクメロン、マスタード、マスタードコラード、ナランジロ、ノウゼンハレン、ネクタリン、オクラ、タマネギ、ハマアカザ、オレンジ、パパイヤ、パプリカ、パセリ、ルートパセリ、パースニップ、パッションフルーツ、モモ、プラム、エンドウマメ、ピーナッツ、ナシ、ペカン、コショウ、柿、ピーマン、パイナップル、ピタヤ、ヤマゴボウ、ザクロ、ジャガイモ、サツマイモ、カボチャ、スベリヒユ、赤チコリー、ハツカダイコン、ラッキョウ、ホタルブクロ、ラズベリー、ルバーブ、ロメインレタス、ローゼル、ルタバガ、サフラン、サルシファイ、サポジラ、サルサパリラ、サッサフラス、フタナミソウ、ハマナ、ハマベブドウ、エシャロット、芹、野生セロリ、スイバ、ダイズ、ホウレンソウ、スポンディアス、トウナス、イチゴ、バンレイシ、ヨウサイ、スイートバジル、スイートコーン、サツマイモ、スイスチャード、トマティロ、トマト、タマリロ、トリュフ、カブ、アップランドクレス、セキショウモ、ヒシ、クレソン、スイカ、ヤムイモ、およびズッキーニからなる群から選択される、請求項1、4および6~9のいずれか1項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、限定されるものではないが、果実、野菜、穀粒、塊茎、観葉植物、花およびキノコを含む農業生産物の生産、輸送および貯蔵用の環境に関する。本開示はまた、農業生産物の保存および生産用の環境を調製する方法に関する。また低減されたレベルの微生物および残留有機化合物を有する有機農業生産物が提供される。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素(H2O2)は、強い酸化剤であり、よく知られた抗菌および防腐特性、ならびに有機化合物に対する活性を有する。H2O2は、揮発性有機化合物(VOC)に対し、それらを酸化し、加水分解し、分解する活性を有する。過酸化水素は、他の物質の中でも、ホルムアルデヒド、エチレン、二硫化炭素、含水炭素、有機リンおよび窒素化合物、ならびに多くの他のより複雑な有機分子を加水分解する。H2O2は、概して約3~90%で、無色の液体または水溶液のいずれかとして大量に商業的に生産される。Merck Index、10th Editionの4705~4707を参照されたい。H2O2が、オゾン、プラズマ種、または有機種を含まない精製過酸化水素ガス(PHPG)として生産され得ることが最近示された。
【0003】
PHPGは、水和エアロゾルおよび気化形式を含む過酸化水素の液体形式とは異なるH2O2の非水和ガスの形式である。過酸化水素溶液のエアロゾル化および気化形式は、一般的に、立方ミクロン単位あたり5~25分子を含有するPHPG含有空気に比べて立方ミクロン単位あたり1×106分子よりも多く含む、著しく高いH2O2の濃度を有する。過酸化水素エアロゾルおよび蒸気は、過酸化水素水の水溶液から調製され、またエアロゾルとしてのPHPGとは異なり、水和され、小滴のサイズにかかわらず、重力下で沈下する。気化形式は、濃縮し沈下する。過酸化水素のエアロゾル化形式は、効果的な抗菌剤であるが、それらは、概して、有毒であるとみなされ、専有空間における使用に対し完全に不適切である。例えば、Kahnertらによる、「Decontamination with vaporized hydrogen peroxide is effective against Mycobacterium tuberculosis」Lett Appl Microbiol,.40(6):448-52(2005)を参照されたい。気化過酸化水素の用途は、爆発性蒸気、危険な反応、腐食性、作業者の安全性に関係して制限されていた。Agalloco et al.,「Overcoming Limitations of Vaporized Hydrogen Peroxide」Pharmaceutical Technology,37(9):1-7(2013)を参照されたい。更に、エアロゾル化形式によって処理された空間は、一般的に150~700ppmの濃度において、H2O2が水および酸素への分解によって還元されるまで占有に不適切なままである。PHPGの使用は、エアロゾル化H2O2の有毒性の問題を解決する。H2O2の気化および液体形式はまた、継続的に安全な抗菌および酸化活性を提供することができる。
【0004】
PHPGは、非水和であり、約1.0ppmで存在するときに空気の立方ミクロン単位あたり約25分子の平均濃度に到達するように、環境全体に自由に拡散可能な理想気体として本質的に振る舞う。ガスとして、PHPGは、ほとんどの多孔質材料に浸透可能であり、気密ではない任意の空間を占有するように本質的に自由に拡散する。過酸化水素のガス形式は、10ppmまでの濃度において存在するとき、沈下、沈殿、または凝縮しない。PHPGは、完全に「グリーン」であり、それが水と酸素とに分解するので残留物を残さない。
【0005】
重要なことに、ならびにH2O2の気化およびエアロゾル化形式と対照的に、1ppmまでのH2O2を含有する環境は、現在のOccupational Safety and Health Administration(OSHA)、National Institute for Occupational Safety and Health(NIOSH)、またはAmerican Conference of Industrial Hygienists(ACIH)標準における継続したヒトの業務に対して安全なものとして設計されている。10ppmはまた、まだ監督官庁によって認められていないが、ヒトの業務に対して安全なものであると考えられている。PHPG生成機器の出現と共に、適切な研究が現在、行われることができる。PHPGの効果的な量を生産する能力、抗菌剤としてその有効性と組み合わせられた低濃度過酸化水素(DHP)ガスとして存在するときのPHPGの安全性は、無数の有用な用途を提供する。
【0006】
両方リーに対して、2012年5月1日に発行された米国特許第8,168,122号および2014年4月1日に発行された米国特許第8,685,329号は、微生物制御および/または環境の消毒/浄化のためのPHPGを調製する方法および機器を開示する。国際特許公開第WO2014/186805号として公開された、国際特許出願第PCT/US2014/038652号は、昆虫およびクモ類を含む節足動物の制御のためのPHPGの有効性および使用を開示する。国際特許公開第WO/2015/026958号として公開された、2015年2月26日に出願された、国際特許出願第PCT/US2014/051914号は、向上した耐感染性および哺乳類の肺において向上したヒポチオシアン酸イオンを含む、呼吸器の健康におけるPHPGの有益な効果を開示する。上記先願の各々の内容は、これらの全体における参照によって本明細書に組み込まれる。
【0007】
2013年において、推定13億トンの食料品が廃棄され、世界の食料品廃棄の54パーセントが生産、収穫後処理および貯蔵中に起こっている。www.fao.orgにおいてインターネット上で入手可能なUnited NationsのFood and Agriculture Organizationによって公開されたFood Wastage Footprint:Impacts on Natural Resources(2013)を参照されたい。1995年において、USDAは、腐敗が全米食料品損失の約20%を占めたことを報告した。したがって微生物による腐敗における小さな低減でさえ、著しい経済価値を有することになる。
【0008】
果実および野菜のような、生鮮食料品に対する需要の成長が増大しており、種々の手法が、輸送、貯蔵、およびプロセス中に新鮮さを維持および延長するために用いられてきた。調整雰囲気包装(MAP)、食料品包装の周囲空気のガスまたはガス混合物との置換は、概して、有機体および悪化の原因となるプロセスを抑制することによって輸送および貯蔵中の腐敗性を低減する。MAPにおいて使用されるガスは、多くの場合、窒素(N2)、および酸素(O2)を伴うか、または枯渇したいずれかの二酸化炭素(CO2)の組み合わせである。ほとんどの場合において、制菌効果(例えば、再生および成長の抑圧)は、低下したO2および増加したCO2濃度の組み合わせによって得られる。Farber,J.M.1991.Microbiological aspects of modified-atmosphere packaging technology:a review.J.Food Protect.,54:58-70.を参照されたい。
【0009】
調製雰囲気(MA)はまた、例えば、保冷海上コンテナとしての輸送容器のような非包装環境において用いられる。概して、MA手法は、酸素の低減を含み、例えば、米国特許第8,187,653号、第6,179,986号、および第8,877,271号において説明される。低減された酸素は、成長の防止において有効であるが、廃棄を引き起こす微生物の付着量を低減することはできないであろう。つまり、微生物は大量に残り、一旦、周囲雰囲気が復旧すると、微生物が成長し、付随的に腐敗プロセスが再開し得る。腐敗を引き起こす微生物の付着量を低減する農業生産物の輸送および貯蔵用の改善された雰囲気に対するニーズが存在する。
【0010】
腐敗を引き起こす微生物に加えて、農業生産物はまた、病原菌を潜伏させ伝染させる。いくつかの病原体は、機械的または低温障害を通じてか、または他の有機体によって皮のバリアが剥がされた後に、植物組織に侵入する。農業生産物の表面に存在する他のものは、摂取され得るか、対象物表面を汚染し得、したがって病気をもたらす。莫大な経済的損失を引き起こす他にも、いくつかの有機体、例えば、真菌種は、ヒトに対する潜在的な健康被害を構成する、有毒な代謝物を冒された場所に生成し得る。加えて、野菜は、病原細菌、ウイルス、および寄生虫に対する伝達手段としてしばしば利用されており、多くの食中毒症の発生に関係している。Barthらによる「Microbiological Spoilage of Fruits and Vegetables」in Compendium of the Microbiological Spoilage of Foods and Beverages,Food Microbiology and Food Safety,W.H.Sperber,M.P.Doyle(eds.),Springer Science+Business Media,LLC 2009、Tournas,「Spoilage of Vegetable Crops by Bacteria and Fungi and Related Health Hazards」Critical Reviews in Microbiology,31(1):33-44(2005)を参照されたい。したがって、このような病原体を低減するか、抑えるか、または殺す方法がより強く所望される。
【0011】
種々の農業生産物上の有害な病原体の存在は、特に、これらの農業生産物が未加工で消費されるか、またはそうでなければ体内に導入されるときに深刻な健康リスクを消費者に引き起こす。果実および野菜全体における重要な微生物および細菌問題の視点において、多くの小売商およびレストランチェーンは、源流の供給者からそれらに輸送された果実および野菜全体の検査および認可を強制されている。2011年のものとして、Center for Disease Control(CDC)は、食中毒症によって、およそ48百万の人々が病気にかかり、128,000人が入院し、3,000人が死亡していると推定している。www.cdc.gov/foodborneburden/index.htmlを参照されたい。CDCは、食中毒症の約20%が知られた病原体によって引き起こされ、一方で80%が非特定媒介によって引き起こされていると推定している。CDCによると、食中毒症、入院および死亡の大部分の場合の病原体の8つが知られている。食中毒症の91%を占める上位5つの病原体は、ノロウイルス、Salmonella、Costridium perfirnges、Campylobacter spp.、およびStaphylococcus aureusである。CDCは、食中毒症における10%の低減は、5百万の食中毒症を防止することになると推定している。したがって、食中毒病原体による死亡および食中毒症を低減し、販売された農業生産物上の病原体を減少させることによって障害を減少させる、強いニーズがある。
【0012】
微生物を低減することに加えて、腐敗を低減し、農業生産物の貯蔵寿命を増大するための別の手法は、熟成または成熟を防止することである。「未加工」果実および野菜のような、いくつかの農業生産物について、農業生産物は、未熟に収穫され、これによって腐敗前に最終目的地に輸送するための時間を提供し得る。未熟の園芸産物を輸送することによって、園芸産物の貯蔵寿命が延ばされ得るが、これらの園芸産物は、しばしばかなり未熟に採取されるので、それらの長い移動の後でさえ、それらがまだ消費のための準備ができていないことがある。他の農業生産物は、収穫前に熟成していなければならない。熟成されたか、またはほとんど熟成された、果実および野菜のような農業生産物の貯蔵寿命を延ばす方法が所望される。
【0013】
上記の問題の多くを除去しようとするか、または低減するように設計された先行機器およびシステムは、非効率であるか、効果がないか、または高価過ぎる傾向にあり、このためそれらを非常に不適切、非実用的、および/または不適当かつ著しく不十分であると表現する。先行技術は、概して、主として腐敗した区分および農業生産物の洗浄(例えば、希薄塩素洗浄または別の抗細菌および抗ウイルス剤による)、除去および廃棄を行い、継続した監視を行う従来的な方法を利用する。しばしば低温殺菌と呼ばれる、より最近の照射は、殺菌に適切であると証明されているが、食料生産品の良好な外観、水分重量、および風味を向上させることもなく、または保存することもない。また、費用および消費者の抵抗のような、多くの他の問題が照射に伴って存在する。
【0014】
したがって、食料生産品において所望されることおよびこれにおける利益を犠牲にするか、または低減することなく、細菌、ウイルス、および他の有害な病原体を殺すか、または低減し、腐敗を防止する機器および方法が必要とされている。高価かつ一定の市場で受け入れられない照射を必要とせずに微生物付着量を低減する方法がまた所望される。
【0015】
植物および植物部位の重要な調節手段は、気体植物ホルモン、エチレン(IUPAC Name:エテン)である。異なる状況および異なる時期において、エチレンは、花、果実、および野菜の熟成および/または老化、枝葉、花、および果実の器官脱離を含む、幅広い種々の植物プロセスに関係する。Ethylene and Plant Development,Roberts,JA and Tucker GA editors,1985を参照されたい。エチレンはまた、開花および種子形成の発育停止または抑制において有効である。エチレンはまた、種子発芽および休眠打破を刺激する。鉢植え植物、切花、低木、種子、および休眠中の苗のような観賞植物に対して、エチレンは、寿命の短縮に関わる。エンドウマメのような、いくつかの植物において、エチレンは、成長を抑制するが、一方で他のもの、例えば、イネにおいて、エチレンは、成長を刺激する。エチレンはまた、オーキシンの調節および頂端成長の抑制ならびに頂芽優勢の制御に関係する。エチレンは、枝分かれおよび分げつの増加、ならびに茎に対する葉の比率および倒伏を含む植物の形態の変化を引き起こす。エチレンはまた、真菌類のような植物病原体への感染性を改質することに関係する。発育の全段階における農業生産物上の活動を調節および制御するニーズがある。より具体的には、農業生産物の早すぎる熟成または過度な熟成を防止すること、枝葉の器官脱離を防止すること、および観賞用植物の寿命を延ばすことに対するニーズがある。
【0016】
貯蔵寿命を向上するための現在の方法は、エチレン転換器または吸収器と協調することによって貯蔵設備における空気からエチレンを除去するように作用する空気循環システムを含む。エチレン転換器は、エチレンが転換器を通って循環されることを必要とし、このためエチレン生成の発生源(例えば、エチレン生成果実)として作用することができない。エチレン転換器または吸収器は、しばしば触媒反応器である。エチレン転換器の例としては、Swingtherm(登録商標)を含む。同様のエチレン低減結果は、過マンガン酸カリウムを含有する粒子のようなビーズ基盤スクラバーによって得られ得る。現在の方法は、結果として制限された循環を有する「静止点」をもたらす、システムを通る空気を含有するエチレンの連続的な循環の必要性によって妨げられる。これは、農業生産物の包装および輸送を制約する。改善された方法が必要とされる。
【0017】
よく知られる慣用句である「腐ったリンゴは周りのものを駄目にする」は、果実および野菜を含む農業生産物における熟成プロセスの気体ホルモンエチレンを反映している。熟成果実および野菜は、このホルモンを生成し、次に、隣接する果実および野菜に作用しそれらの熟成を引き起こし、次に、更に多くのエチレンガスを生成する。同様に、果実上に存在し熟成し過ぎた果実上で成長し得る糸状菌および真菌類は、隣接する果実を汚染し追加の腐敗をもたらし得る。生産の源流において作用し、農業生産物の生産、輸送および貯蔵の全段階において実装され得る、エチレンガスを低減する改善された方法に対するニーズが存在する。
【0018】
販売および消費の前に、生鮮農業生産物は、輸送、貯蔵および加工においてかなりの時間を費やし、これは、病原菌の低減、腐敗微生物の低減、エチレンのレベルの低減および熟成の低減、ならびに望ましくない節足動物を殺すかまたは追い払うために処理を開始する機会を提供する。本開示は、田畑から食卓までの農業生産物の流れの全段階にわたって実装されることができる方法を提供する。
【0019】
エチレンの作用を防止する1つの方法は、エチレン受容体の信号を遮断することによって農業生産物におけるエチレン応答を抑制することである。不可逆的エチレン抑制剤の例としては、米国特許第5,100,462号において開示されたジアゾシクロペンタジエン、SislerらによるPlant Growth,Reg.9,157-164,1990において開示されたシクロペンタジエンを含む。両方の化合物は、強い臭気を有し、不安定である。Sislerらに対する米国特許第5,518,988号は、エチレン結合の有効な遮断薬として、メチルシクロプロペンを含む、シクロプロペンおよびその誘導体の使用を開示する。1-メチルシクロプロペン(1-MCP)は、植物組織におけるエチレンの結合場所を遮断することによって作用する、知られた熟成抑制剤である。Blankenshipらによる、「1-Methylcyclopropene:a review」Postharvest Biology and Technology,28:1-25(2003)を参照されたい。1-MCPは、不安定(および爆発物)であり、このため用いることが難しかった。これらの問題を解決すべく、Dalyらに対する米国特許第6,017,849号および第6,313,068号は、それらの反応性を安定化するために被包形式を開示し、これによって貯蔵、輸送、および適用または活性化合物を植物に送達する簡便かつ安全な手段を提供する。エチレンを低減または除去する改善された方法は強く所望されている。本方法は、1-MCPおよび関連化合物の代替または補助を提供する。
【発明の概要】
【0020】
本開示は、農業生産物におけるエチレン応答を抑制する方法であって、農業生産物を含有している密閉環境にDHPガスを少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度で提供することと、一定期間、密閉環境においてDHPガスの濃度を維持することと、を含む、方法を提供すると共に、含む。
【0021】
本開示は、輸送中の農業生産物の熟成プロセスを抑制する方法であって、農業生産物を輸送するための密閉容器を提供することと、農業生産物を密閉容器内に配置することと、DHPガスを少なくとも0.05百万分率(ppm)の濃度で密閉容器に提供することと、DHPガス濃度を輸送中に維持することと、を含む、方法を提供すると共に、含む。
【0022】
本開示は、植物または植物生産物における病原体の被害を制御する一般に安全と認められる(GRAS)方法であって、DHPガスを被害にあった植物または植物生産物を含有する密閉環境に少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度で提供することと、病原体を制御するのに十分な期間、密閉環境においてDHPガスを少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度で維持することと、を含む、方法を提供すると共に、含む。
【0023】
本開示は、植物または植物部位における糸状菌の成長を防止する、GRAS方法であって、植物または植物部位をDHPガス含有環境に配置することを含む、方法を提供すると共に、含む。
【0024】
本開示は、病原体の被害にあった植物または植物部位を処理するGRAS方法であって、植物または植物部位をDHPガス含有環境に配置することを含む、方法を提供すると共に、含む。
【0025】
本開示は、輸送中の農業生産物における病原体を制御する方法であって、DHPガス含有輸送容器を用意するために農業生産物を含有する輸送容器にDHPガスを少なくとも0.05百万分率(ppm)の濃度で提供することと、DHPガス含有輸送容器を輸送することと、DHPガス濃度を輸送中に維持することと、を含み、病原体は制御される方法を提供すると共に、含む。
【0026】
本開示は、環境制御農業(CEA)設備において病原体を制御する方法であって、DHPガスをCEA設備に少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度で提供することと、病原体を制御するのに十分な期間、DHPガスを少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度で維持することと、を含む、方法を提供すると共に、含む。
【0027】
本開示は、農業生産物を保護する方法であって、DHPガスを密閉環境に少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度で提供することと、DHPガスを密閉環境において少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度で維持することと、を含む、方法を提供すると共に、含む。
【0028】
本開示は、生産および貯蔵中に農業生産物の病原体または害虫の制御に使用される駆除剤および他の化学物質を置換する方法であって、農業生産物を含有する密閉環境にDHPガスを少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度で提供することと、一定期間、農業生産物を含有する密閉環境においてDHPガスを少なくとも0.05百万分率(ppm)で維持することと、を含む、方法を提供すると共に、含む。
【0029】
作物生産のための有機的方法であって、成長している農業生産物を含有する密閉環境にDHPガスを少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度で提供することと、作物生産中に一定期間、農業生産物を含有する密閉環境においてDHPガスを少なくとも0.05百万分率(ppm)で維持することと、を含む方法を提供すると共に、含む。
【0030】
本開示は、環境制御農業(CEA)設備、温室、貯蔵容器、輸送容器、小売店、配送センター、卸売りセンター、台所、レストラン、草花店、納屋、車両、食品加工エリア、貯蔵設備、市場貯蔵エリア、および市場陳列エリアからなる群から選択される、少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度でDHPガスを含む、密閉環境を提供すると共に、含む。
【0031】
本開示は、貯蔵中の花の早期老化を防止する方法であって、花を含有する密閉環境にDHPガスを少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度で提供することと、花を含有する密閉環境においてDHPガスを少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度で維持することと、を含む、方法を提供すると共に、含む。
【0032】
本開示は、農業生産物上または農業生産物内における侵入種を制御する方法であって、農業生産物を含有する密閉環境に少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度でDHPガスを提供することと、侵入種を制御するのに十分な期間、密閉環境においてDHPガスを少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度で維持することと、を含む、方法を提供すると共に、含む。
【0033】
本開示は、乾燥した農業生産物を調製する方法であって、少なくとも0.05百万分率(ppm)の濃度におけるDHPガスを有し65%未満の相対湿度(RH)を有する密閉環境に農業生産物を配置することと、農業生産物の含水量が低減されるまで密閉環境に農業生産物を維持することと、を含む、方法を提供すると共に、含む。
【0034】
本開示は、低減されたレベルの細菌、真菌類、およびウイルスを有する、風乾された農業生産物を提供すると共に、含む。
【0035】
本開示は、密閉環境における揮発性有機化合物(VOC)の濃度を低減する方法であって、密閉環境に低濃度過酸化水素(DHP)を少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度で提供すること、および密閉環境におけるVOCの濃度が酸化によって低減される期間、DHPガス含有環境を維持することを含む、方法を提供すると共に、含む。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明は、以下の添付図の参照と共に開示される。
【0037】
図1Aおよび1Bは、本開示による代表的な機器の図である。図1Aは、加熱、換気および空調システムにおける実装用のインライン機器を例示する。図1Bは、本発明の構成および方法に適した代表的なスタンドアロン機器を例示する。
【0038】
図2Aおよび2Bは、本開示による、DHPガスなしで、またはDHPガスと共に5日間貯蔵されたイチゴの画像である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
別段に定義されない限り、本明細書において使用される技術および科学用語は、当業者のうちの1人によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。当業者は、多くの方法が本開示の実施において使用され得ることを認めるであろう。実際に、本開示は、開示された方法および物質に決して限定されるものではない。本明細書において引用される任意の参照は、その全体における参照によって組み込まれる。本開示の目的のために、続く用語が以下に定義される。
【0040】
本明細書において使用される、PHPGおよびDHPは、互換的に使用され得る。概して、機器がPHPGを生成し、DHPガスを有する環境が提供される。本明細書において使用されるPHPGは、非水和であり、オゾン、プラズマ種、および有機種を実質的に含まない。
【0041】
本明細書において使用される、病原体、細菌性、真菌類、またはVOCレベルの「低減」は、PHPGを有する環境において、曝されるか、輸送されるか、貯蔵されるか、または加工が行われていない農業生産物上で見つかるレベルに対して、各々のレベルが低減されることを意味する。いくつかの態様において、低減は、病原体、細菌、真菌類を殺すこと、またはVOCの分解を生じてもよく、または病原体、細菌、または真菌類の成長を抑圧した結果であってもよい。
【0042】
本明細書において使用される、病原体、細菌性、真菌類、またはVOCレベルのの「少なくとも部分的に低減」の用語は、PHPGを有する環境において、曝されるか、輸送されるか、貯蔵されるか、または加工が行われていない農業生産物上で見つかるレベルに対して、各々のレベルが少なくとも25%低減されることを意味する。いくつかの態様において、低減は、病原体、細菌、真菌類を殺すこと、またはVOCの分解を生じてもよく、または病原体、細菌、または真菌類の成長を抑圧した結果であってもよい。また本明細書において使用される、病原体、細菌および真菌類の複数個体群を有する環境において、各個体群は、独立的に「部分的に低減」され得る。
【0043】
本明細書において使用される、病原体、細菌、真菌類、またはVOCレベルの「実質的に低減」の用語は、PHPGを有する環境において、曝されるか、輸送されるか、貯蔵されるか、または加工されるかが行われていない農業生産物上で見つかるレベルに対して、各々のレベルが少なくとも75%低減されることを意味する。いくつかの態様において、低減は、病原体、細菌、真菌類を殺すこと、またはVOCの分解を生じてもよく、または病原体、細菌、または真菌類の成長を抑圧した結果であってもよい。また本明細書において使用される、病原体、細菌および真菌類の複数個体群を有する環境において、各個体群は、独立的に「実質的に低減」され得る。
【0044】
本明細書において使用される、病原体、細菌、真菌類、またはVOCレベルの「効果的除去」の用語は、PHPGを有する環境において、曝されるか、輸送されるか、貯蔵されるか、または加工されるかが行われていない農業生産物上で見つかるレベルに対して、各々のレベルが少なくとも95%低減されることを意味する。いくつかの態様において、低減は、病原体、細菌、真菌類を殺すこと、またはVOCの分解を生じてもよく、または病原体、細菌、または真菌類の成長を抑圧した結果であってもよい。また本明細書において使用される、病原体、細菌および真菌類の複数個体群を有する環境において、各個体群は、独立的に「効果的に除去」され得る。PHPGの効果的な量は、病原体、細菌、真菌類、またはVOCの、好ましくは少なくとも部分的に低減、より好ましくは実質的に低減、最も好ましくは効果的除去を提供可能にできる量である。
【0045】
本明細書において使用される、単数形「a」「an」および「the」は、文脈が別段に明確に指示しない限り、複数の参照を含む。例えば、「細菌」または「少なくとも1つの細菌」の用語は、それらの混合物を含む、複数の細菌を含み得る。別の例において、「真菌類」または「少なくとも1つの真菌類」は、それらの混合物を含む、複数の細菌を含み得る。同様に、「VOC」または「少なくとも1つのVOC」は、複数VOCおよびそれらの混合物を含み得る。
【0046】
本開示は、農業生産物を含有している密閉環境にDHPガスを少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度で提供することによる、農業生産物におけるエチレン応答の抑制のための方法および構成物を提供する。一定の態様において、密閉環境は、密閉環境に一定期間、農業生産物を配置する前に、DHPガスを少なくとも0.05ppmの終濃度で提供することができる。他の態様において、農業生産物は、密閉環境に配置され、DHPガスは、濃度が少なくとも0.05ppmに到達するまで提供され、該環境において少なくとも0.05ppmの濃度で一定期間、DHPガスを維持する。一定の態様において、DHPガスレベルは、10ppmまでであり得る。一定の態様において、DHPガスレベルは、0.05~10ppmの範囲である。本明細書は、用途に応じてDHPガスの追加のレベルを提供すると共に、含む。DHPガスの適切なレベルは、以下、例えば、段落[0099]~[00101]において提供される。
【0047】
本開示の用途の中には、例えば、植物成長調節がある。また本開示の用途の中には、例えば、花、果実、および野菜の熟成および/または老化と、枝葉、花、および果実の器官脱離と、鉢植え植物、切花、低木、種子、および休眠中の苗のような観賞植物の寿命の短縮と、いくつかの植物(例えば、エンドウマメ)における成長の抑制、成長の刺激(例えば、イネ)、オーキシン活性、頂端成長の抑制、頂芽優勢の制御、枝分かれの増加、分げつの増加、植物の形態の変化、真菌類のような植物病原体への感染性の改質、植物の生化学構成物の変化(例えば、茎領域に対する葉領域の増加)、開花および種子形成の発育停止または抑制、倒伏効果、種子発芽および休眠打破の刺激、ならびにホルモンまたは上偏生長効果のような、種々のエチレン応答を、例えば、改質することがある。
【0048】
当業者によって理解されるであろうように、植物、植物部位、および真菌類のような農業生産物は、エチレンに対し幅広い種々の応答を示す。特定の態様が以下に詳細に提供されるが、後述する態様は、概して、本開示の範囲内であると考えられる。
【0049】
当業者によって理解されるであろうように、エチレン信号伝達の抑制の程度および結果として生じる表現型効果は、種々の変数に依存する。中でも重要な変数は、農業生産物が曝されるDHPガスの終濃度である。本開示による態様において、DHPガスの終濃度は、少なくとも0.05ppm~10ppmのDHPガスの範囲であり得る。理論によって制約されず、少なくとも0.05ppmの濃度のDHPガスは、エチレンを酸化し、これによって種々のエチレン信号伝達経路を抑制する。また理論によって制約されず、DHPガスは、空気量全体に拡散する非水和ガスとして、エチレンをその生成の発生源の近くで酸化することが考えられる。発生源において作用することによって、DHPガスは、エチレン信号伝達の抑制において特に有効である。
【0050】
第2の変数は、DHPガスに曝される時間である。一定の態様において、農業生産物は、例えば、休眠を維持するか、成熟および熟成を防止するために連続的に曝される。他の態様において、DHPガスは、一定期間中に提供され、その後、農業生産物が取り出されるか、またはDHPガスが消散することを許容される。例えば、早期成長段階中に成長する植物は、頂芽優勢を抑制するため、および枝分かれを促進するためにDHPガスに曝され、その後、通常の成長がもたらされ得るように取り出される。理論によって制約されず、これは、葉の多い農業生産物の数および収穫量を増加させることになると考えられる。
【0051】
本開示は、少なくとも0.05ppmのDHPガスを有する密閉環境において成長した植物の収穫量を増加させるためにエチレン応答を抑制する方法および構成物を提供すると共に、含む。エチレン信号伝達の抑制に応じて収穫量が増加した植物の例としては、限定されるものではないが、小さい穀粒、特にオート麦(Avena sativa)、小麦(Triticum aestivum)、および大麦(Hordem spp.)を含み、マメおよび綿(Gossypium hirsurum)のような、他の種類の植物の収穫量を増加することを含む。一態様において、密閉環境は、温室、冷床、またはフープハウスである。
【0052】
本開示は、オーキシン活性を調整するためにエチレン応答を抑制する方法および構成物を提供すると共に、含む。一態様において、本開示は、単子葉および双子葉植物の地下根茎の新芽形成を誘発することを提供する。一態様において、方法は、細胞増殖を誘発すること、および発根を誘発することを提供する。
【0053】
本開示は、成長している植物である農業生産物における頂端成長の抑制、頂芽優勢の制御、枝分かれの増加、および分げつの増加のためにエチレン応答を抑制する方法および構成物を提供すると共に、含む。これらの種類の植物成長応答は、植物種が一定期間、少なくとも0.05ppmのDHPガスに曝されるときに種々の植物種上で引き起こされることができる。一定の態様において、植物種は、限定されるものではないが、イボタノキ(Ligustrum ovalifolium)、ブルーベリー(Vaccinum corymhosum)、ツツジ(Rhododendron ohrusum)、ダイズ(Glycine mas.)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、トマト(Lycopersicon esculentum)、ナガエツルノゲイトウ(Alternanthua philoxeroides)ならびにイネ(Oryza sativa)、ジョンソングラス(Sorghum halopense)およびカラスムギ(Avena fatua)のような単子葉植物を含む。一定の態様において、成長している植物は、先頭の芽が取り除かれている(例えば、摘芽によって)植物であり、少なくとも0.05ppmのDHPガスに曝されることは、脇芽が先頭の芽として優位性を確立することを防止する。本開示はまた、成長している植物をDHPガスに曝すことから先頭の芽の活動を一定期間、阻止することまでを提供し、その後、標準の花および標準の果実の生成を伴う標準成長に先頭の芽を復帰させるためにDHPガスがない状態において植物を成長させる。まずDHPの存在下において成長させ、その後、DHPガスがない状態における成長を提供することの利益は、摘芽に伴う芽の永続損害を回避することである。一定の態様において、本開示の方法によってDHPガスで処理されたタバコ(Nicotiana tabacum)およびキク(Chrysanthemum sp.)のような植物種は、側芽形成を抑制し、吸枝成長を防止する。
【0054】
本開示は、成長している植物の全体の生化学構成物を改善するためにエチレン応答を抑制する方法および構成物を提供すると共に、含む。エチレン信号伝達を抑制することが多くの植物の茎領域に対する葉領域を増加させることが知られている。したがって、本方法および構成物は、茎に対する葉の比率を増加させるために成長期間中に、成長している植物を少なくとも0.05ppmの濃度のDHPガスで処理することによってエチレン信号伝達を抑制することを提供する。他の態様において、エチレン信号伝達の抑制は、植物単位あたりの総タンパク質を増加させる。別の態様において、本方法および構成物は、一定期間、少なくとも0.05ppmのDHPガスの存在下において植物を成長させることによって、処理された植物内のタンパク質、炭化水素、脂肪、ニコチンおよび糖の改質を提供する。
【0055】
本開示は、農業生産物を少なくとも0.05ppmのDHPガスに曝すことか、少なくとも0.05ppmのDHPガスを有する密閉空間を提供することによって、枝葉、花および果実の器官脱離を抑制するためにエチレン応答を抑制する方法および構成物を提供すると共に、含む。植物の離層帯はエチレン信号伝達に敏感であることが良く知られている。したがって、DHPガスを使用するエチレン信号伝達を抑制することによって、器官脱離は、遅延または更に防止され得る。器官脱離が遅延または防止され得る植物の例としては、一度、葉が成熟状態となった、綿、バラ、イボタノキ、リンゴ、柑橘類、およびメキャベツを含む。同様に、DHPを伴う成長および処理によって花および/または果実の器官脱離が遅延され得る植物は、限定されるものではないが、リンゴ(Malus domestica)、エンドウマメ(Pyrus communis)、サクランボ(Prunus avium)、ペカン(Carva illinoensis)、ブドウ(Vitis vinifera)、オリーブ(Olen europaea)、コーヒー(Coffea arahica)およびインゲンマメ(Phaseolus vulgaris)を含む。したがって、本開示の方法および構成物は、器官脱離応答の調節を提供し、果実を収穫するための花の生産を調節するために使用され得る。
【0056】
本開示は、農業生産物を少なくとも0.05ppmのDHPガスに曝すことか、少なくとも0.05ppmのDHPガスを有する密閉環境を提供することによって果実の熟成を抑制するためにエチレン応答を抑制する方法および構成物を提供すると共に、含む。一定の態様において、本方法および構成物は、果実の熟成プロセスに伴う色の変化を抑制する。一定の態様において、果実は、摘まれてもよく、摘まれてなくてもよい。以下に更に詳細に提供されるように、果実の熟成が遅延され、したがって果実を保存し得る。他の態様において、熟成がピークに達する時間が、DHPガスに曝されることが終わるまで遅延されるか、または更に防止される。例えば、リンゴ(Malus domestica)、エンドウマメ(Pyrus communis)、サクランボ(Primus avium)、バナナおよびパイナップル(Ananas comosus)における熟成は、防止されるかもしくは遅延されるか、またはその両方であり得る。他の態様において、果実の未熟色が維持され、例えば、トマト(Lycopersicon esculentum)ならびに再び緑色となったオレンジ(Citrus sinensis)およびレモン(Citrus limon)等の柑橘類のような収穫可能果実からの緑色が遅延され得る。追加の例および特定の態様が以下に提供される。
【0057】
本開示は、農業生産物を少なくとも0.05ppmのDHPガスに曝すことか、または少なくとも0.05ppmのDHPガスを有する密閉環境を提供することによって、開花および結実を防止または抑制するためにエチレン応答を抑制する方法および構成物を提供すると共に、含む。例えば、ダイズ(Glycine max)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、サヤインゲン(Phaseolus vulgaris)およびジニア(Zinnia elegans)のような、採算性を有する作物の数における開花および結実の減少は、本開示の方法および構成物を使用して実現されることができる。
【0058】
本開示は、農業生産物を少なくとも0.05ppmのDHPガスに曝すことか、または少なくとも0.05ppmのDHPガスを有する密閉環境を提供することによって、開花および結実を促進または誘発するためにエチレン応答を抑制する方法および構成物を提供すると共に、含む。一態様において、0.05ppmのDHPガスは、開花および結実を促進または誘発するためにジョンソングラス(Sorghum lzalepense)に提供される。
【0059】
本開示は、農産物を少なくとも0.05ppmのDHPガスに曝すことか、または少なくとも0.05ppmのDHPガスを有する密閉環境を提供することによって、倒伏を促進するためにエチレン応答を抑制する方法および構成物を提供すると共に、含む。
【0060】
本開示は、農業生産物を少なくとも0.05ppmのDHPガスに曝すことか、または少なくとも0.05ppmのDHPガスを有する密閉環境を提供することによって、種子発芽および休眠打破を防止または抑制するためにエチレン応答を抑制する方法および構成物を提供すると共に、含む。一態様において、少なくとも0.05ppmの濃度でDHPガスを提供することは、例えば、レタス種子の発芽を抑制し、種芋のような塊茎の休眠を維持する。以下に論じられることになるように、種子のような農業生産物の処理は、種子表面の微生物付着量を低減する。したがって、本開示は、植え付け前に種子表面の所望されない微生物を低減または除去する方法を提供する。
【0061】
本開示は、農業生産物を少なくとも0.05ppmのDHPガスに曝すことか、または少なくとも0.05ppmのDHPガスを有する密閉環境を提供することによって、凍害を防止するためにエチレン応答を抑制する方法および構成物を提供すると共に、含む。一態様において、DHPガスは、低温に応答して生成されたエチレンを低減または除去することによってエチレン信号伝達を抑制する。一態様において、本開示は、例えば、ライマメまたは柑橘類において、凍害に対する耐性を提供することを提供する。
【0062】
本開示は、成長している農業生産物を少なくとも0.05ppmのDHPガスに曝すことか、または少なくとも0.05ppmのDHPガスを有する密閉環境を提供することによって、一定の植物におけるホルモンまたは上偏生長効果を防止するためにエチレン応答を抑制する方法および構成物を提供すると共に、含む。一態様において、方法は、トマト(Lycopersicon esculentum)における上偏生長を防止する。
【0063】
本開示は、成長している農業生産物を少なくとも0.05ppmのDHPガスに曝すことか、または少なくとも0.05ppmのDHPガスを有する密閉環境を提供し成長調節物質を適用することによって、他の植物調節物質と共にエチレン応答を抑制する方法および構成物を提供すると共に、含む。一態様において、農業生産物は、マレイン酸ヒドラジド、N-ジメチル-アミノコハク酸、ジベレリン酸およびナフタレン酢酸からなる群から選択される、1つ以上の成長調節物質と共に少なくとも0.05ppmのDHPガスで処理され得る。本明細書において提供されるように、DHPガスの相互作用(例えば、エチレン信号伝達の抑制)は、種々の農業生産物において相乗的または拮抗的応答であり得る。適切なように、植物成長調節物質のレベルは、DHPガスによる酸化を介した分解を考慮して増加され得る。
【0064】
本開示は、成長している農業生産物を少なくとも0.05ppmのDHPガスに曝すことか、または除草剤の存在下において少なくとも0.05ppmのDHPガスを有する密閉環境を提供することによって、除草剤に対する応答を向上するためにエチレン応答を抑制する方法および構成物を提供すると共に、含む。一態様において、除草剤は、アミノトリアゾールであり得る。本開示はまた、成長している農業生産物を少なくとも0.05ppmのDHPガスに曝すことか、または除草剤の存在下において少なくとも0.05ppmのDHPガスを有する密閉環境を提供することによって、除草剤に対する応答を抑制するためにエチレン応答を抑制する方法および構成物を提供すると共に、含む。
【0065】
本開示は、成長している農業生産物を少なくとも0.05ppmのDHPガスに曝すことか、または除草剤の存在下において少なくとも0.05ppmのDHPガスを有する密閉環境を提供することによって、耐病性を改善するためにエチレン応答を抑制する方法および構成物を提供すると共に、含む。
【0066】
本開示はまた、発生源においてエチレンを低減または除去することによって、エチレン信号伝達を防止する方法および構成物を提供すると共に、含む。理論によって制約されず、1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸オキシダーゼ(ACO)遺伝子を発現する農業生産物が、エチレンの潜在的発生源である。したがって、一態様において、エチレン信号伝達は、ACOを発現する発生源である農業生産物を少なくとも0.05ppmの濃度でDHPガスに曝すことによって抑制される。
【0067】
本開示は、農業生産物の熟成プロセスを抑制する方法であって、農業生産物を含有する密閉容器に少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度でDHPガスを提供することと、農業生産物を含有する密閉環境において一定期間、少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度でDHPガスを維持することと、を含む、方法を提供すると共に、含む。曝されることが短期間でさえ、結果として農業生産物の熟成に応答するホルモンであるエチレンガスの分解をもたらすことになることが、理解されるであろう。
【0068】
本明細書において使用される、「熟成」は、果実または野菜が、概して、より甘く、苦みが少なくなり、色が変化し、より柔らかくなることによって、より味の良いものになるプロセスを意味する。一定の態様において、熟成は、分解される酸および酸分における一般的減少を伴う、pHにおける変化における変化と関連する。熟成プロセス中、デンプンは、より簡素な糖に転換される。熟成プロセスは、当業者によく知られ、当業者は、特定の農業生産物についての熟成プロセスが知られていることを認めるであろう。
【0069】
本明細書において使用される、「熟成プロセスを抑制すること」は、熟成を最適化する時間が、それ以外の条件下で貯蔵された場合のDHPガスに曝されていない果実に対して遅延されることを意味する。一定の態様において、熟成プロセスは、植物ホルモン、エチレンの分解によって完全に抑制され得る。したがって、熟成のピークは、1週間以上遅延され得る。他の態様において、熟成の抑制は、熟成がピークに達する時間を少なくとも1日遅延する。別の態様において、熟成の抑制は、熟成がピークに達する時間を少なくとも2日遅延する。更に別の態様において、熟成の抑制は、熟成がピークに達する時間を少なくとも3日遅延する。他の態様において、熟成の抑制は、熟成がピークに達する時間を少なくとも4日または少なくとも5日遅延する。更なる態様において、熟成の抑制は、熟成がピークに達する時間を少なくとも6日遅延する。本開示の方法を使用して実現可能な時間の長さが、農業生産物の種類および農業生産物が維持されるDHPガス濃度に依存することが当業者によって理解されるであろう。提供されるように、貯蔵中のDHPガスのレベルを増大させることは、取り除かれるべき任意のエチレンが残っているか否かによって制約される、熟成の抑制を増大させ、熟成がピークに達する時間を延長する。
【0070】
本開示は、農業果実または野菜生産物の熟成プロセスを抑制する方法であって、農業果実または野菜生産物を含有する密閉環境に0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度でDHPガスを提供することと、農業果実または野菜生産物を含有する密閉環境において熟成のピークを少なくとも2日間遅延する一定期間、0.3~10百万分率(ppm)の終濃度でDHPガスを維持することと、を含む、方法を更に提供すると共に、含む。
【0071】
本開示は、熟成している農業生産物によって概して生成されるエチレンに農業生産物が曝されることを低減することによって農業生産物の熟成プロセスを抑制することを更に提供する。農業生産物が熟成(または傷つくかもしくは損傷)すると、それは、エチレンを生成し、エチレンの発生源となり、発生源自身の熟成比率を自己的に増大し得るか、または別の農業生産物上で異種的に作用し得る。理論によって制約されず、熟成プロセスが、無色ガスであり天然植物ホルモンである、エチレンとして一般的に知られるエテン、C2H4によって制御されることが概して理解されている。それは、植物によって自然に生成され、1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸オキシダーゼ(ACO)の活性を必要とし、また酵素を形成するエチレンとしても知られている。ACOを発現する農業生産物は、エチレンの発生源として作用し得る。エチレンは、五員環からなる二量体膜貫通受容体の族に結合することによって作用する。二量体膜貫通受容体(ETRの)のうちの1つ以上を発現する農業生産物は、他の物質の中でも、熟成を開始または加速する、エチレンの存在に応答し得る。農業生産物は、ACOおよびETRの両方を発現し得、したがってそれ自身および近くの農業生産物の熟成の比率を増加させ得る。他の態様において、発生源である農業生産物と受容する農業生産物とは、異なり得る。
【0072】
本発明による態様において、エチレンの発生源は、受容する農業生産物とは異なる種類の農業生産物であり得る。一態様において、発生源である農業生産物は、1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸オキシダーゼ(ACO)遺伝子を発現する農業生産物である。一定の態様において、熟成プロセスを抑制する方法は、エチレンを二酸化炭素と水とに転換することによって発生源である農業生産物によって生成されたエチレンのレベルを低減することを含む。したがって、生成されたエチレンが敏感な農産物に影響を及ぼすことが防止される。
【0073】
本発明の実施形態による方法は、農業生産物の熟成もしくは老化、または両方を抑制する。本明細書において使用される、熟成は、農業生産物が実る植物にまだある状態の農業生産物の熟成、および農業生産物が実る植物から収穫された後の農業生産物の熟成を含む。熟成および/または老化を抑制するために本発明の方法によって処理され得る農業生産物は、レタス(例えば、Lactuea sativa)、ホウレンソウ(Spinaca oleracea)、およびキャベツ(Brassica oleracea)のような葉菜野菜、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、ニンジン(Daucus)のような種々の根、タマネギ(Allium sp.)のような球根、バジル(Ocimum basilicum)、オレガノ(Origanum vulgare)、イノンド(Anethum graveolens)のようなハーブ、ならびにダイズ(Glycine max)、ライマメ(Phaseolus limensis)、エンドウマメ(Lathyrus spp.)、トウモロコシ(Zea mays)、ブロッコリー(Brassica oleracea italica)、カリフラワー(Brassica oleracea botrytis)、およびアスパラガス(Asparagus officinalis)を含む。
【0074】
本明細書において使用される、「農業生産物」は、栽培され集められた植物生産物および植物を含む。農業生産物に含まれるものは、ヒトまたは動物のいずれかのための食料品用に成長したか、または集められた植物および植物の部分である。また本開示によって提供されるものは、切花、観葉植物、または乾燥植物に対するような、装飾用に成長した農業生産物である。本明細書において使用される、農業生産物は、限定されるものではないが、例えば、バイオ燃料用に成長した植物、および繊維作物を含む、原材料として使用される植物を含む。
【0075】
本明細書において使用される、農業生産物は、ヒトまたはヒト以外の食料品用に使用される栽培され集められた植物および植物生産物を含む。本明細書において使用される、食料品用に栽培され集められた農業生産物は、根、塊茎、根茎、球根、球茎、茎、枝、葉茎、包葉、葉鞘、葉、針葉、観賞花、芽、花、花弁、果実、種子、および食用菌類を含む。本明細書において開示され、以下に詳細に説明される方法および構成物は、新鮮さを延長する(例えば、熟成を遅延する)、病原体または害虫を殺すまたはその被害を防止する、害虫を追い払う、真菌類、糸状菌およびウイルスを殺す、ならびに侵入種を制御するために使用され得る。特に、本開示の方法および構成物は、完全に天然、「グリーン」、非有毒および安全であり、水および酸素以外は残留物を全く残さない。重要なことに、本開示の方法および構成物は、占有された領域における使用に適しており、Occupational Safety and Health Administration(OSHA)、National Institute of Occupational Safety and Health(NIOSH)、およびEnvironmental Protection Agency(EPA)によって安全であることが判定されている。
【0076】
本開示の方法および構成物の使用は、田畑からの輸送中のような個々に、または配送または小売設備において輸送または貯蔵されるときの種々の部分として、本明細書において熟成された農業生産物の各々に対して提供される。経済的利益のために、特定の農業生産物は、1つ以上のリストの部分として列挙され、リストにおける農業生産物の中に含まれるものは、本開示の方法および構成物による各々個々の農業生産物の使用以外のものとして意図されるように解釈されるべきではない。より具体的には、本開示が任意の1つの個々の農業生産物を特定の態様として列挙する場合でさえ、当業者のうちの1人によって一点の疑いもなく、リストに列挙されていようがいまいが、各々個々の農業生産物が同様に開示されることが理解されるべきである。
【0077】
本開示は、ヒトが消費するための農業生産物を生産する方法であって、ヒトが消費するための農業生産物を収穫することと、収穫された農業生産物を含有する密閉環境に0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度でDHPガスを提供することと、収穫された農業生産物を含有する密閉環境において0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度でDHPガスを維持することと、を含む、方法を更に提供すると共に、含む。本開示は、ヒトが消費するための収穫された農業生産物と、0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度のDHPガスと、を含む密閉環境を提供する貯蔵容器を更に提供すると共に、含む。
【0078】
本開示は、野菜である農業生産物を提供すると共に、含む。本明細書において使用される、「野菜」は、食料品として概して消費される農業生産物を含み、限定される必要はないが、根、塊茎、球根、球茎、茎、葉茎、葉鞘、葉、芽、花、果実、種子、および食用菌類を含む。一定の食用植物について、果実、種子、葉および他の部分が消費され得ることが概して理解される。本開示の方法および構成物に対して適切な野菜の中に含まれるものは、限定されるものではないが、レタス、キャベツ、チンゲンサイ、ホウレンソウ、高菜、コラードの葉を含む葉野菜である。本開示による他の葉野菜は、限定されるものではないが、メキャベツ、ヨウサイ、ノゲシ、赤チコリー、フダンソウ、スイバ、タアサイ、春菊、クレソン、チコリー、およびハクサイ(Peking cabbage)を含む。
【0079】
本開示はまた、それらの種子(マメ)および芽を含む、マメ科植物と使用するための方法および構成物を提供する。一定の態様において、本方法および構成物は、潜在的健康リスクを持ち出す病原体、真菌類、糸状菌、細菌、およびウイルスが低減され得るか、または除去され得る、調理されていない生の農業生産物に対する用途に特に適している。一定の態様において、潜在的健康リスクを持ち出す病原体、真菌類、糸状菌、細菌およびウイルスの低減または除去に適した生の農業生産物は、葉野菜、果実を含む。
【0080】
本開示による態様において、農業生産物は、球根であり得る。一定の態様において、球根は、ウイキョウ、ニンニク、リーキ、タマネギ、エシャロット、または葉タマネギであり得る。本開示はまた、限定されるものではないが、アーティチョーク(グローブ)、ブロッコフラワー、カリフラワー、ブロッコリー、サイシン、ズッキーニまたは他のトウナス花、および発芽ブロッコリーを含む、花である農業生産物を提供する。他の態様において、農業生産物は、例えば、マメ(グリーン、フレンチ、バター、ヘビ)、ソラマメ、エンドウ、サヤエンドウ、およびスイートコーンを含む種子である。一態様において、農業生産物は、茎、例えば、アスパラガス、セロリまたはコールラビである。
【0081】
本開示の方法および構成物は、以下の農業生産物、アチョクチャ、アマランサス、アンジェリカ、アニス、リンゴ、クズウコン、ルッコラ、アーティチョーク、グローブ、アーティチョーク、キクイモ、アスパラガス、アテモヤ、アボカド、バルサムアップル、ニガウリ、バンバラマメ、タケ、バナナ、プランテン、アセロラ、マメ、ビート、ブラックベリー、ブルーベリー、チンゲンサイ、サツマイモ、ブロッコリー、カイラン、ラーブブロッコリー、メキャベツ、房ブドウ(bunch grape)、ゴボウ、キャベツ、キャベツ、ハマナ、ヨウサイ、ヒョウタン、カンタロープ、マスクメロン、ケッパー、カランボラ(スターフルーツ)、カルドン、ニンジン、キャッサバ、カリフラワー、セロリアック、セロリ、ステムレタス、フダンソウ、チャヤ、ハヤトウリ、チコリー、ナツメ、チャイブ、キク、ショクヨウカヤツリ、コリアンダー、シトロン、ココヤシ、コラード、ヒレハリソウ、マーシュ、トウモロコシ、ボニアートポテト、キュウリ、クシュクシュ、ダイコン、タンポポ、サトイモ、イノンド、ナス、エンダイブ、ユーゲニア、ウイキョウ、イチジク、ガリアマスクメロン、ガルバンゾ、ニンニク、ガーキン、ショウガ、チョウセンニンジン、ウリ、ブドウ、グアーガム、グアバ、セイヨウアブラナ、セイヨウワサビ、ハックルベリー、アイスプラント、ジャボチカバ、パラミツ、ヒカマ、ホホバ、ケール、ヨウサイ、コールラビ、リーキ、レンズマメ、レタス、リュウガン、ビワ、ラベージ、ヘチマヒョウタン、レイシ、マカダミア、マランガ、マメイサポテ、マンゴー、キバナツノゴマ、メロン、カサバ、メロン、ハネデュー、ツルレイシ、マスカディンブドウ、キノコ、マスクメロン、マスタード、マスタードコラード、ナランジロ、ノウゼンハレン、ネクタリン、オクラ、タマネギ、ハマアカザ、オレンジ、パパイヤ、パプリカ、パセリ、ルートパセリ、パースニップ、パッションフルーツ、モモ、プラム、エンドウマメ、ピーナッツ、ナシ、ペカン、コショウ、柿、ピーマン、パイナップル、ピタヤ、ヤマゴボウ、ザクロ、ジャガイモ、サツマイモ、カボチャ、スベリヒユ、赤チコリー、ハツカダイコン、ラッキョウ、ホタルブクロ、ラズベリー、ルバーブ、ロメインレタス、ローゼル、ルタバガ、サフラン、サルシファイ、サポジラ、サルサパリラ、サッサフラス、フタナミソウ、ハマナ、ハマベブドウ、エシャロット、芹、野生セロリ、スイバ、ダイズ、ホウレンソウ、スポンディアス、トウナス、イチゴ、バンレイシ、ヨウサイ、スイートバジル、スイートコーン、サツマイモ、スイスチャード、トマティロ、トマト、タマリロ、トリュフ、カブ、アップランドクレス、セキショウモ、ヒシ、クレソン、スイカ、ヤムイモ、およびズッキーニのうちの1つ以上の新鮮さを延長する(例えば、熟成を遅延する)、病原体または害虫を殺すまたはその被害を防止する、害虫を追い払う、真菌類、糸状菌およびウイルスを殺す、ならびに侵入種を制御するために使用され得る。
【0082】
本開示は、ヒトが消費する農業野菜生産物を生産する方法であって、ヒトが消費する農業野菜生産物を収穫することと、収穫された農業野菜生産物を含有する密閉環境に0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度でDHPガスを提供することと、収穫された農業野菜生産物を含有する密閉環境において0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度でDHPガスを維持することと、を含む、方法を更に提供すると共に、含む。本開示は、ヒトが消費する収穫された農業野菜生産物と、0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度のDHPガスと、を含む密閉環境を提供する貯蔵容器を更に提供すると共に、含む。
【0083】
本開示による態様において、農業生産物は、果実である。本明細書において使用される、「果実」は、種子を囲んで保護する、子房および副次的組織から発達する被子植物の生殖構造を意味する。本開示による果実は、未加工であってもよく、または乾燥されてもよい。本明細書に使用される、果実の用語は、全種類の熱帯果実、樹木の果実、柑橘類果実、ベリー類、およびメロン類を包含する。また含まれ提供されるものは、単果、集合果、複合果、または偽果である。本明細書において使用される、果実は、限定されるものではないが、トマト、バナナ、ブドウ、石果(アーモンド、モモ)、プラム、ナシ状果(ナシ、リンゴ等)のような多肉質の単果を含む。本開示の果実はまた、限定されるものではないが、イチジク、パイナップル、およびクワのような多肉質の複合果を含む。また本開示によって意図され提供されるものは、多肉質の集合果(例えば、イチゴ、ブラックベリー、バンレイシ)である。
【0084】
本開示は、クリマクテリック果実の新鮮さを延長する(例えば、熟成を遅延する)、病原体または害虫を殺すまたはその被害を防止する、害虫を追い払う、真菌類、糸状菌およびウイルスを殺す、ならびに侵入種を制御するために方法および構成物の使用を提供する。クリマクテリック果実は、限定されるものではないが、アンズ、アボカド、バナナ、パンノキ、バンレイシ、ドリアン、フェイジョア、イチジク、グアバ、ハネデューメロン、パラミツ、キウイ、マンゴスチン、マンゴー、ネクタリン、パパイヤ、パッションフルーツ、モモ、ナシ、柿、プランテン、プラム、マルメロ、カンタロープ、サポジラ、サポテ、トマト、またはスイカを含む。本明細書において開示され以下に詳細に説明される方法および構成物は、新鮮さを延長する(例えば、熟成を遅延する)、病原体または害虫を殺すまたはその被害を防止する、害虫を追い払う、真菌類、糸状菌およびウイルスを殺す、ならびに侵入種を制御するために使用され得る。
【0085】
本開示は、非クリマクテリック果実の新鮮さを延長する(例えば、熟成を遅延する)、病原体または害虫を殺すまたはその被害を防止する、害虫を追い払う、真菌類、糸状菌およびウイルスを殺す、ならびに侵入種を制御するために方法および構成物の使用を提供する。非クリマクテリック果実は、限定されるものではないが、ブラックベリー、ブルーベリー、カカオ、カクタスペア、ピーマン、サクランボ、チリ、キュウリ、ナス、ブドウ、グレープフルーツ、レモン、ライム、リュウガン、レイシ、マンダリン、オリーブ、オレンジ、ペピーノ、パイナップル、ピタヤ、ザクロ、カボチャ、ランブータン、ラズベリー、トウナス、イチゴ、タマリロ、またはズッキーニを含む。
【0086】
熟成を抑制するために本発明の方法によって処理され得る果実は、トマト(Lycopersicon esculentum)、リンゴ(Malus domes tica)、バナナ(Musa sapientum)、ナシ(Pyrus communis)、パパイヤ(Carica papya)、マンゴー(Mangifera indica)、モモ(Prunus persica)、アンズ(Prunus armeniaca)、ネクタリン(Prunus persica nectarina)、オレンジ(Citrus sp.)、レモン(Citrus limonia)、ライム(Citrus aurantifolia)、グレープフルーツ(Citrus paradisi)、タンジェリン(Citrus nobilis deliciosa)、キウイ(Actinidia.chinenus)、カンタロープ(C.cantalupensis)およびマスクメロン(C.melo)のようなメロン、パイナップル(Aranae comosus)、柿(Diospyros sp.)およびラズベリー(例えば、FragariaまたはRubus ursinus)、ブルーベリー(Vaccinium sp.)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、キュウリ(C.sativus)およびアボカド(Persea americana)のようなククミス属を含む。
【0087】
本開示は、ヒトが消費する農業果実生産物を生産する方法であって、ヒトが消費する農業果実生産物を収穫することと、収穫された農業果実生産物を含有する密閉環境に0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度でDHPガスを提供することと、収穫された農業果実生産物を含有する密閉環境において0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度でDHPガスを維持することと、を含む、方法を更に提供すると共に、含む。本開示は、ヒトが消費する収穫された農業果実生産物と、0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度のDHPガスと、を含む密閉環境を提供する貯蔵容器を更に提供すると共に、含む。
【0088】
本明細書において開示される方法および構成物は、塊茎、根または真菌類である農業生産物の新鮮さを延長する(例えば、熟成を遅延する)、病原体または害虫を殺すまたはその被害を防止する、害虫を追い払う、真菌類、糸状菌およびウイルスを殺す、ならびに侵入種を制御するために使用され得る。一実施形態において、農業生産物は、限定されることなく、ビートの根、ニンジン、根セロリ、ダイコン、パースニップ、ハツカダイコン、ルタバガ、およびカブを含む、根である。一態様において、農業生産物は、限定されることなく、ホワイトマッシュルーム、ブラウンマッシュルーム、チャワンタケ(平坦ではなく開いた)、エノキ、ヒラタケ、ポルトベロ(茶色の平坦形状または茶碗形)、シイタケ、黒トリュフおよび白トリュフを含む、真菌類である。一態様において、農業生産物は、限定されることなく、アースジェム、キクイモ、クマラ、ジャガイモ、またはヤマノイモを含む、塊茎である。
【0089】
本開示は、ACOを発現する農業生産物によって生成されるエチレンガスを低減または除去することによって熟成を防止するために密閉環境にDHPガスを提供することを提供すると共に、含む。一態様において、農業生産物は、リンゴ、アンズ、アボカド、熟したバナナ、ブルーベリー、カンタロープ、チェリモヤ、クランベリー、イチジク、ネギ、グアバ、ブドウ、ハネデュー、キウイ、マンゴー、マンゴスチン、ネクタリン、パパイヤ、パッションフルーツ、モモ、ナシ、柿、プラム、ジャガイモ、プルーン、マルメロ、およびトマトからなる群から選択される。
【0090】
本開示は、1つの農業生産物によって生成され第2の農業生産物上に作用するエチレンガスを低減または除去することによって熟成を防止するために、密閉環境にDHPガスを提供することを提供すると共に、含む。一定の態様において、熟成は、アスパラガス、未熟バナナ、ブラックベリー、ブロッコリー、メキャベツ、キャベツ、ニンジン、カリフラワー、フダンソウ、キュウリ、ナス、エンダイブ、ニンニク、インゲンマメ、ケール、葉菜、リーキ、レタス、オクラ、タマネギ、パセリ、エンドウマメ、コショウ、ラズベリー、ホウレンソウ、トウナス、イチゴ、サツマイモ、クレソン、またはメロンにおいて抑制され得る。
【0091】
本開示は、ヒトが消費する農業塊茎、根または真菌類生産物を生産する方法であって、ヒトが消費する農業塊茎、根または真菌類生産物を収穫することと、収穫された農業塊茎、根または真菌類生産物を含有する密閉環境に0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度でDHPガスを提供することと、収穫された農業塊茎、根または真菌類生産物を含有する密閉環境において0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度でDHPガスを維持することと、を含む、方法を更に提供すると共に、含む。本開示は、ヒトが消費する収穫された農業塊茎、根または真菌類生産物と、0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度のDHPガスと、を含む密閉環境を提供する貯蔵容器を更に提供すると共に、含む。
【0092】
老化を抑制するためならびに/または花の寿命および美観を延長する(例えば、萎れることを遅延する)ために本発明の方法によって処理され得る観賞用植物は、鉢植え観賞植物および切花を含む。本発明によって処理され得る鉢植え観賞植物および切花は、ツツジ(Rhododendron spp.)、アジサイ(Macrophylla hydrangea)、ハイビスカス(Hibiscus rosasanensis)、キンギョソウ(Antirrhinum sp.)、ポインセチア(Euphorbia pulcherima)、サボテン(例えば、Cactaceae schlumbergera truncata)、ベゴニア(Begonia sp.)、バラ(Rosa spp.)、チューリップ(Tulipa sp.)、ラッパズイセン(Narcissus spp.)、ペチュニア(Petunia hybrida)、カーネーション(Dianthus caryophyllus)、ユリ(例えば、Lilium sp.)、グラジオラス(Gladiolus sp.)、アルストロメリア(Alstoemeria brasiliensis)、シオン(例えば、Aster carolinianus)、ブーゲンビリア(Bougainvillea sp.)、ツバキ(Camellia sp.)、ホタルブクロ(Campanula sp.)、ケイトウ(celosia sp.)、サワラ(Chamaecyparis sp.)、キク(Chrysanthemum sp.)、クレマチス(Clematis sp.)、シクラメン(Cyclamen sp.)、フリージア(例えば、Freesia refracta)、およびラン科のランを含む。本明細書に開示される方法および構成物は、花の寿命および美観の延長、ならびに病原体または害虫を殺すまたはその被害の防止、害虫を追い払うこと、真菌類、糸状菌、細菌およびウイルスを殺すこと、および侵入種を制御することに使用され得る。
【0093】
「植物」の用語は、本明細書において一般的な感覚で使用され、例えば、高木および低木のような木質の茎を有する植物、ハーブ、野菜、果実、農業作物、および観賞用植物を含む。本明細書において説明される方法によって処理される植物は、農作物、鉢植え植物、種子、切花(茎および花)、ならびに収穫された果実および野菜のような、全植物およびその任意の部分を含む。
【0094】
枝葉、花および果実の器官脱離を抑制するために本発明の方法によって処理され得る植物は、綿(Gossypium spp.)、リンゴ、ナシ、サクランボ(Prunus avium)、ペカン(Carva illinoensis)、ブドウ(Vitis vinifera)、オリーブ(例えば、Olea europaea)、コーヒー(Cofffea arabica)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、およびベンジャミン(Ficus benjamina)、ならびにリンゴを含む種々の果樹のような休眠中の苗、観賞用植物、低木、および苗木を含む。本明細書において開示され説明される方法および構成物は、枝葉、花および果実の器官脱離を抑制する、ならびにまた病原体または害虫を殺すまたはその被害を防止する、害虫を追い払う、真菌類、糸状菌、細菌およびウイルスを殺す、および侵入種を制御するために使用され得る。
【0095】
加えて、枝葉の器官脱離を抑制するために本発明によって処理され得る低木は、イボタノキ(Ligustrum sp.)、カナメモチ(Photinia sp.)、セイヨウヒイラギ(Ilex sp.)、ウラボシ科のシダ、ウコギ(Schefflera sp.)、リョクチク(Aglaonema sp.)、コトネアスター(Cotoneaster sp.)、メギ(Berberis sp.)、ヤマモモ(Myrica sp.)、ツクバネウツギ(Abelia sp.)、アカシア(Acacia sp.)およびパイナップル科のブロメリアを含む。
【0096】
本開示は、バラ、ラン、チューリップ、ラッパズイセン、ヒヤシンス、カーネーション、キク、カスミソウ、ヒナギク、グラジオラス、アガパンサス、アンスリウム、プロテア、オウムバナ、ストレリチア、ユリ、シオン、アイリス、デルフィニウム、リアトリス、トルコギキョウ、スターチス、シタキソウ、フリージア、デンドロビウム、ヒマワリ、キンギョソウのような花に伴う器官脱離を防止するために密閉環境にDHPガスを提供することを提供すると共に、含む。また提供されると共に含まれるものは、バラ、チューリップ、カーネーション、およびキクの挿し木観葉植物、グラジオラス、カスミソウ、ヒナギク、ラン、ユリ、アイリス、およびキンギョソウのような他の花の器官脱離を防止するために密閉環境にDHPガスを提供することである。本明細書において開示され説明される方法および構成物は、器官脱離を抑制する、ならびにまた病原体または害虫を殺すまたはその被害を防止する、害虫を追い払う、真菌類、糸状菌、細菌およびウイルスを殺す、および侵入種を制御するために使用され得る。
【0097】
本開示は、限定されるものではないが、Rosa sp.、Dianthus sp.、Gerbera sp.、Chrysanthemum sp.、Dendranthema sp.、lily、Gypsophila sp.、Torenia sp.、Petunia sp.、orchid、Cymbidium sp.、Dendrobium sp.、Phalaenopsis sp.、Cyclamen sp.、Begonia sp.、Iris sp.、Alstroemeria sp.、Anthurium sp.、Catharanthus sp.、Dracaena sp.、Erica sp.、Ficus sp.、Freesia sp.、Fuchsia sp.、Geranium sp.、Gladiolus sp.、Helianthus sp.、Hyacinth sp.、Hypericum sp.、Impatiens sp.、Iris sp.、Chamelaucium sp.、Kalanchoe sp.、Lisianthus sp.、Lobelia sp.、Narcissus sp.、Nierembergia sp.、Ornithoglaum sp.、Osteospermum sp.、Paeonia sp.、Pelargonium sp.、Plumbago sp.、Primrose sp.、Ruscus sp.、Saintpaulia sp.、Solidago sp.、Spathiphyllum sp.、Tulip sp.、Verbena sp.、Viola sp.、およびZantedeschia sp.を含む切花種の寿命を延長するために密閉環境にDHPガスを提供することを提供すると共に、含む。
【0098】
本開示は、観賞用植物を生産する方法であって、観賞用植物を収穫することと、収穫された観賞用植物を含有する密閉環境に0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度でDHPガスを提供することと、収穫された観賞用植物を含有する密閉環境において0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度でDHPガスを維持することと、を含む、方法を更に提供すると共に、含む。本開示は、収穫された観賞用植物と、0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度のDHPガスと、を含む密閉環境を提供する貯蔵容器を更に提供すると共に、含む。
【0099】
本開示による態様において、DHPガスは、農業生産物を含有する密閉環境に一定期間、少なくとも0.05ppmの終濃度で提供される。DHPガス含有環境は、種々の利益、および、例えば、熟成プロセスを抑制するためのエチレンの分解を含む方法を提供する。本開示によるDHPガスは、病原体または害虫を殺すまたはその被害を防止する、害虫を追い払う、真菌類、糸状菌、細菌およびウイルスを殺す、および侵入種を制御するために使用され得る。エチレンを減少させるためにDHPガスを使用する他の方法および農業生産物上のその効果は、上記の段落[0047]において提供される。一定の態様において、DHPガスレベルは、10ppmまでであり得る。本明細書に提供されるように、DHPガスレベルは、0.05~10ppmの範囲である。
【0100】
本開示による態様において、DHPガスは、農業生産物を含有している密閉環境に少なくとも0.1ppmの終濃度で提供される。別の態様において、DHPガスは、少なくとも0.2ppmの濃度で提供され維持される。更なる態様において、DHPガスは、少なくとも0.3ppmの濃度で提供され維持される。更なる態様において、DHPガスは、少なくとも0.4ppmの濃度で提供され維持される。更なる態様において、DHPガスは、少なくとも0.5ppm、少なくとも0.6ppm、少なくとも0.7ppm、少なくとも0.8ppm、少なくとも0.9ppmの濃度で提供され維持される。一態様において、DHPガスは、1.0ppm未満の濃度で提供され維持される。一態様において、DHPガスは、0.1~0.6ppmの濃度で提供され維持される。別の態様において、DHPガスは、0.4~1.0ppmの濃度で提供され維持される。いくつかの態様において、密閉環境における最終DHPガス濃度は、少なくとも0.1ppmである。他の態様において、密閉環境における最終DHPガス濃度は、少なくとも0.2ppm、少なくとも0.4ppm、少なくとも0.6ppm、または少なくとも0.8ppmである。一態様において、密閉環境における最終DHPガス濃度は、1.0ppm未満である。当業者は、この開示を考慮して、および以下に論じられるように農業生産物の種類、数、および年齢を更に考慮して、PHPGの好ましいレベルを即座に判断し得る。
【0101】
一定の態様において、方法は、DHPガスを10ppmまでにおいて提供することを含む。一定の態様において、方法は、少なくとも0.05~10ppmでDHPガスを提供することを含む。一態様において、方法は、少なくとも0.08ppmでDHPガスを提供することを含む。別の態様において、方法は、少なくとも1.0ppmでDHPガスを提供することを含む。更に別の態様において、方法は、少なくとも1.5ppmでDHPガスを提供することを含む。一態様において、方法は、少なくとも2.0ppmでDHPガスを提供することを含む。別の態様において、方法は、少なくとも3.0ppmでDHPガスを提供することを含む。一態様において、方法は、少なくとも5.0ppmでDHPガスを提供することを含む。別の態様において、方法は、少なくとも6.0ppmでDHPガスを提供することを含む。一態様において、提供されるDHPガスの濃度は、10ppm未満である。一態様において、提供されるDHPガスの濃度は、9.0ppm未満である。別の態様において、提供されるDHPガスの濃度は、8.0ppm未満である。一態様において、提供されるDHPガスの濃度は、7.0ppm未満である。別の態様において、提供されるDHPガスの濃度は、0.05~10.0ppmである。更に別の態様において、提供されるDHPガスの濃度は、0.05~5.0ppmである。一態様において、提供されるDHPガスの濃度は、0.08~2.0ppmである。更に別の態様において、提供されるDHPガスの濃度は、1.0~3.0ppmである。一態様において、本開示のクリーンルームにおいて提供されるDHPガスの濃度は、1.0~8.0ppm、または5.0~10.0ppmである。他の態様において、クリーンルームにおいて提供されるDHPガスの濃度は、DHPガスのより高い濃度とより低い濃度との間で循環する。非限定的な例として、DHPガスは、夜間においてより高い濃度で提供され昼間においてより低い濃度で提供され得る。
【0102】
本開示は、DHPガスを含む密閉環境、および1つ以上PHPG生成機器によって提供されるDHPガスを使用する方法を提供すると共に、含む。適切なPHPG生成機器は、当分野において知られており、2012年5月1日に発行された米国特許第8,168,122号および2014年4月1日に発行された米国特許第8,685,329号において開示されている。少なくとも0.05ppmのDHPガスの濃度を実現するために必要なPHPG生成機器の数および容量は、密閉環境のサイズに依存することが認められるであろう。代表的な機器が図1および2に例示される。
【0103】
いくつかの態様において、完全な温室、または建物が、本開示による密閉環境であり、PHPG生成機器の数が適切に調節され得る。実際には、単一PHPG機器は、約425m3(約15,000ft3)の空間を約0.6ppmで連続的に維持することができることが特定されている。適切な数の機器が、10ppmまでのH2O2を有する密閉環境を提供することができる。特に、密閉環境は、気密または更に外部環境から隔離される必要はない。本開示による態様において、密閉環境は、有効な入口および出口を有する。
【0104】
本明細書において提供されるように、適切なPHPG生成機器は、密閉容器、通気配分機構、紫外線の発生源、および表面に触媒を有する通気性基板構造であって、機器の動作中に湿潤気流が通気性基板構造を通って機器によって生成されたPHPGを密閉容器の外に導く、通気性基板構造を備え得る。本明細書において使用される、密閉容器および通気配分システムは、ダクト配管、ファン、フィルタおよび密閉環境に適したHVACシステムの他の部品であり得る。一定の態様において、PHPG機器は、PHPGの生成を最大化し、PHPGの損失を低減するために、空気がシステムを通って移動するように、空気濾過後に提供される。他の態様において、PHPG生成機器は、スタンドアロン機器であり得る。一定の態様においてPHPG生成機器は、10立方メートルの閉じられた空気量において少なくとも0.005ppmのPHPGの定常状態濃度を確立するために十分な比率でPHPGを生成可能である。一定の態様において、PHPG生成機器は、周囲空気に存在する水からPHPGを生成する。本明細書において使用される、通気配分は、通気性基板構造の表面で測定されたときに約5ナノメートル/秒(nm/s)~10,000nm/sの速度を有する気流を提供する。本明細書において使用される、基板構造は、光源に曝され気流が提供されるときに非水和PHPGを生成するように構成された、表面上に触媒を有する通気性基板構造である。本明細書において使用される、その表面上に触媒を有する通気性基板構造は、総厚さにおいて約5ナノメートル(nm)~約750nmである。本明細書において使用される、通気性基板構造の表面上の触媒は、金属、酸化金属、またはその混合物であり、酸化タングステンまたは酸化タングステンと別の金属もしくは酸化金属触媒との混合物であり得る。
【0105】
本明細書において提供されるように、既存のHVACシステム(例えば、インライン)内に設置され得るか、またはスタンドアローンユニットとして設置され得るPHPG生成機器は、オゾン、プラズマ種、または有機種を本質的に含まないPHPGを生成する。本明細書において使用される、「本質的にオゾンを含まない」の用語は、約0.015ppm未満のオゾンの量を意味する。一態様において、「実質的にオゾンを含まない」は、機器によって生成されるオゾンの量が従来の検出手段を使用する検出のレベル(LOD)未満であるまたはこれに近いことを意味する。このようなレベルは、ヒトの健康に対して概して容認される限度未満である。これに関して、the Food and Drug Administration(FDA)は、屋内医療機器のオゾン出力が0.05ppm以下のオゾンであることを要求する。The Occupational Safety and Health Administration(OSHA)は、労働者が0.10ppmを超える平均濃度のオゾンに8時間曝されないことを要求する。The National Institute of Occupational Safety and Health(NIOSH)は、常に超えるべきではない、0.10ppmのオゾンの上限を推薦する。オゾンに対するEnvironmental Protection Agency(EPA)のNational Ambient Air Quality Standardは、最大8時間の0.08ppmの平均屋外濃度である。拡散機器は、Draeger Tubeによって検出可能なレベルにおけるオゾンを生成しないことが矛盾なく示されている。
【0106】
本明細書において使用される、水和作用を実質的に有しないことは、過酸化水素ガスが少なくとも99%、静電引力およびロンドン力によって結合された水分子を含まないことを意味する。また本明細書において使用される、プラズマ種を実質的に含まないPHPGは、少なくとも99%、水酸化物イオン、水酸化ラジカル、ヒドロニウムイオン、および水素ラジカルを含まない過酸化水素ガスを意味する。本明細書において使用される、PHPGは、有機種を本質的に含まない。
【0107】
本明細書において説明されるように、本開示の一定の態様において、過酸化水素は、ほぼ理想気相のPHPGとして生成される。この形式の過酸化水素は、あらゆる点で、ほぼ理想気体として振る舞い、生成時に水和されず、またはそうでなければ水と結合される。この様式において、ほぼ理想気相の過酸化水素は、気体自体が達することができるあらゆる空間に浸透することができる。これは、微生物および有機化合物のような汚染物質が存在する、物質間の裂け目、通気性の布の内側、通気性の壁、天井、床、および備品内のような、部屋における全領域を含む。ただし、理論によって制約されず、本開示の方法および機器が光触媒の結果として実現されるものではなく、一度、環境に放出されたときのほぼ理想気体のPHPGの効果によることが留意されるべきである。
【0108】
PHPG拡散機器を介して連続的に生成された、本明細書において論じられる、0.05百万分率を超過する平衡濃度のほぼ理想気相の過酸化水素は、環境において連続的に実現され維持され得る。1気圧および19.51℃での平衡において、ほぼ理想気相の過酸化水素は、各々0.04百万分率の濃度に対して立方ミクロンあたり1分子の平均量で立方ミクロンごとの空気において存在することになる。1百万分率において、立方ミクロンあたりの過酸化水素分子の平均数は、25であることになり、3.2百万分率においてそれは80であることになる。
【0109】
理論によって制約されず、ほぼ理想気相の過酸化水素は、任意の空気がアクセス可能な空間を含む、環境の容積全体に散在されることになる。低濃度でさえほぼ理想気相の過酸化水素に連続的に曝される結果として、連続的に、細菌、ウイルス、糸状菌を含む微生物を殺すかまたはこの成長を抑圧する、ならびに昆虫およびクモ類を追い払うかまたは殺す。昆虫を含むほとんどの節足動物は、肺を有しないが、単に気管のネットワークにより体を通って酸素を分配することによって生きている。これによって、ほぼ理想気相の過酸化水素が節足動物の体の全部分に達し、昆虫のような節足動物に死をもたらす。理論に制約されず、ほぼ理想気相の過酸化水素は、それらの空気交換組織を損傷させる。
【0110】
本開示は、限定されるものではないが、本方法および構成物によって使用され得る貯蔵容器、トラック、鉄道車両、船、飛行機を含む、持ち運び可能な密閉容器にPHPG生成機器を設置することを提供すると共に、含む。1つ以上のPHPG生成機器を更に備える適切なHVACシステムを有する密閉環境は、0.05ppmの濃度のDHPガスでクリーンルームを維持するために十分である(例えば、インラインPHPG生成機器)。
【0111】
本開示は、農業生産物を保存する方法および構成物を提供すると共に、含む。開発の段階において、農産物が風乾されて保存され得ることが観察された。より具体的には、本開示が糸状菌の成長を防止し、腐敗を防止する方法を提供しているので、農業生産物が低湿度の条件下で貯蔵されるときに、脱水または乾燥されることが観察された。したがって、本開示は、少なくとも0.05百万分率(ppm)の濃度のDHPガスを有し、65%未満のRHを有する密閉環境内に農業生産物を配置すること、および農業生産物の含水量が低減されるまで農業生産物を密閉環境において維持することによって農業生産物を保存する方法を提供する。一定の態様において、農業生産物は、農業生産物の含水量が約25%以下であったときに乾燥されて保存される。他の態様において、農業生産物は、含水量が20%以下であるときに乾燥されて保存される。また他の態様において、農業生産物は、含水量が15%以下であるときに乾燥されて保存される。農業生産物を保存および乾燥するための密閉環境についてのDHPガスの適切なレベルは、上記、例えば、段落[0099]~[00101]において提供される。
【0112】
本明細書において提供される風乾による保存の速度はRHに依存する。提供されたように、RHは、65%未満であるべきである。他の態様において、RHは、50%未満である。いくつかの態様において、RHは、40%未満または30%未満である。更に他の態様において、RHは、20%または更に10%以下であり得る。当業者のうちの1人は、乾燥の速度が重要であり、速度が速すぎる(例えば、RHが低すぎる)場合、果実の外層が非常に速く乾燥し、硬化し、より多くの水分が消失されることを阻止する、表面硬化が起こり得ることを認識するであろう。当業者は、表面硬化を最小化し回避するために適した湿度を判断することができる。
【0113】
本開示は、インゲンマメ、ブロッコリー、チリメンキャベツ、ホワイトキャベツ、ニンジン、セロリ、コリアンダー、トウモロコシ、イノンド、ニンニク、ケール、リーキ、キノコ、タマネギ、パセリ、エンドウマメ、コショウ、ジャガイモ、カボチャ、エシャロット、ホウレンソウ、トウナス、トマト、ズッキーニ、リンゴ、アンズ、バナナ、ブルーベリー、クランベリー、グーズベリー、ハックルベリー、ラズベリー、クロミグワ、イチゴ、サクランボ、デーツ、イチジク、ブドウ、キウイ、キンカン、マンゴー、ネクタリン、モモ、パパイヤ、ナシ、柿、パイナップル、プラムおよびプルーンからなる群から選択される風乾され保存された農業生産物を提供する。一態様において、風乾され保存された農業生産物は、イチゴである。乾燥および保存のための他の適切な農業生産物は、上記の段落[0074]および[0075]において提供される。本明細書に提供されるように、乾燥および保存に適した農業生産物は、そのまま全部であってもよく、刻まれてもよく、スライスされてもよく、さいの目に切られてもよく、または粉末にされてもよい。
【0114】
本開示は、乾燥のための密閉環境内に農業生産物を配置する前に農業生産物を前処理することを更に提供すると共に、含む。一定の態様において、前処理は、黒ずむことおよび変色することを防止するものである。他の態様において、前処理を行うことは、追加の糖および甘味を乾燥された農業生産物に提供する。適切な前処理は、当分野において知られている。一態様において、前処理は、硫黄燻蒸である。別の態様において前処理は、例えば、亜硫酸浸漬のように、亜硫酸による処理である。別の態様において、アスコルビン酸溶液が前処理として使用される。更に別の態様において、前処理は、果実ジュース浸漬である。一定の態様において、果実ジュース浸漬は、柑橘類果実を含む。一態様において、果実ジュースは、レモン、オレンジ、パイナップル、ブドウまたはクランベリージュースである。また提供されるものは、乾燥前にハチミツ内に農業生産物を浸漬することを含む前処理である。別の態様において、農業生産物は、シロップブランチングされ得る。別の態様において、農業生産物は、乾燥前の前処理としてスチームブランチングされ得る。
【0115】
本開示は、貯蔵前に乾燥された農業生産物を調整することを更に提供すると共に、含む。当業者によって理解されることになるように、調整を行うことは、水分の均一拡散を許容するために複数の農業生産物を一緒に密封環境に貯蔵することを含む。理論に制約されず、例えば、乾燥された果実のような、乾燥された農業生産物における含水量は、初期含水量、乾燥環境における位置、皮の存在、サイズの違い、または他の理由に依存して個々の品物の間で異なり得る。したがって、包装および貯蔵の前に、農業生産物は、含水量を複数の間で平衡させるための時間を提供される。
【0116】
本開示は、乾燥によって農業生産物を保存する方法および構成物を提供すると共に含み、以下の段落[00140]~[00168]において列挙されるように低減されたレベルの糸状菌、真菌類、細菌およびウイルスを提供する。したがって、本開示による、乾燥された農業生産物は、低減されたレベルの細菌、ウイルスおよび真菌類を有する。一定の態様において、乾燥された農業生産物は、低減されたレベルの細菌、ウイルスおよび真菌類を有すると共に有機生産物である。
【0117】
本開示は、農業生産物を生産する方法であって、農業生産物を収穫することと、40%未満および10%を超える相対湿度、ならびに0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度のDHPガスの存在下における貯蔵環境において農業生産物を貯蔵することと、を含む、方法を更に提供すると共に、含む。本開示は、収穫された農業生産物、40%未満および10%を超える相対湿度ならびに0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度のDHPガスを含む密閉環境を提供する貯蔵容器を更に提供すると共に、含む。
【0118】
本開示は、農業生産物のエチレン応答を抑制するための方法および構成物であって、密閉環境に少なくとも0.05ppmの終濃度でDHPガスを提供することと、シクロプロペンまたはシクロプロペン誘導体を更に提供することと、を含む、方法および構成を更に提供すると共に、含む。本明細書において使用される、シクロプロペンまたはシクロプロペン誘導体は、図1に示される構造を有し、
【化1】



ここで、nは、1~4の数であり、Rは、水素、飽和または非飽和C1~C4アルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン、C1~C4アルコキシ基、アミノ基およびカルボキシ基からなる基から選択される。一態様において、シクロプロペン誘導体は、1-メチルシクロプロペンである。別の態様において、シクロプロペン誘導体は、ジメチルシクロプロペンである。
【0119】
本開示は、農業生産物を生産する方法であって、農業生産物を収穫することと、0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度のDHPガスの存在下、ならびに1-メチルシクロプロペンおよび/またはジメチルシクロプロペンの存在下における密閉環境に農業生産物を貯蔵することと、を含む方法を更に提供すると共に、含む。本開示は、収穫された農業生産物、0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度のDHPガス、ならびに1-メチルシクロプロペンおよび/またはジメチルシクロプロペンを含む密閉環境を提供する貯蔵容器を更に提供すると共に、含む。
【0120】
本明細書において使用される、「密閉環境」は、1つ以上のPHPG生成機器を使用して少なくとも0.05百万分率のPHPGの定常状態レベルにおいて維持され得る任意の囲まれた空間である。一定の密閉環境について、密閉環境は、リスクを持ち出すことのない1ppmまでのPHPGとしてヒトの業務に適している。これに対し、非密閉屋外環境のような囲まれていない環境は、生成されたPHPGが吹き払われ拡散されることになるので、少なくとも0.05百万分率のPHPGの定常状態レベルに到達することができない。本明細書において提供される、密閉環境は、1つ以上の適切なPHPG生成機器の生成の速度よりも速いPHPGの消失を防止するために十分に囲まれていることのみを必要とする。したがって、ドア、窓、入口、孔、裂け目、スクリーンおよび他の開口部の存在は、その空間が密閉空間ではないことを意味しない。
【0121】
PHPGは、エチレン応答を抑制し、新鮮さを延長する(例えば、熟成、器官脱離、老化を遅延する)ために密閉環境に提供され得る。PHPGは、エチレン応答を抑制し、熟成、老化、器官脱離を遅延または防止する、成長抑制を提供する、成長促進を提供する、枝分かれ、分げつ、種子形成、花の形成、種子発芽、および種子休眠の解除を促進または抑制するために密閉環境に提供され得る。PHPGはまた、病原体または害虫を殺すかまたはその被害を防止する、害虫を追い払う、真菌類、糸状菌、細菌およびウイルスを殺す、ならびに侵入種を制御するために密閉環境に提供され得る。
【0122】
本開示は、貯蔵容器、輸送容器、車両、配送センター、貯蔵設備、卸売りセンター、CEA設備、温室、冷床、フープハウス、小売店、台所、レストラン、草花店、納屋、食品加工エリア、市場貯蔵エリア、および市場陳列エリアからなる群から選択される密閉環境を提供する。
【0123】
本開示は、少なくとも0.05百万分率(ppm)の濃度でDHPガスを有するCEA設備を提供すると共に、含む。適切なCEA設備は、温室、ならびに水耕およびアクアポニックス設備を含む。
【0124】
本開示は、少なくとも0.05ppmのDHPガスを有する、標準インターモーダル貨物輸送容器としても知られる、輸送容器を提供すると共に、含む。一定の態様において、DHPガスレベルは、10ppmまでであり得る。一定の態様において、DHPガスレベルは、0.05~10ppmである。追加の適切なDHPガスのレベルが、例えば、段落[0099]~[00101]において提供される。
【0125】
本明細書において提供される、輸送容器は、段ボール箱、木箱、木枠、中間バルクコンテナ(IBC)、フレキシブル中間バルクコンテナ(FIBC)、バルク箱、ドラム、隔離された輸送容器、および航空コンテナを含む。本明細書において提供される、本開示による輸送容器は、1つ以上の一体型PHPG生成機器を更に備え得るか、または密閉空間に配置されることによってDHPガスを供給され得る(例えば、少なくとも0.05ppmの濃度でDHPガスを有する船または飛行機の倉庫において)。一定の態様において、輸送容器は、PHGPを備え、適宜、冷却および加熱ユニットを更に備え得る。本開示の構成物および方法に適した輸送容器は、限定されるものではないが、以下、ISO6346:1995、ISO668:2013、ISO1161:1984、およびISO1496-1:2013の国際標準のうちの1つ以上に従う輸送容器を含む。
【0126】
本開示は、輸送中の農業生産物の熟成プロセスを抑制する方法であって、農業生産物を輸送するための密閉容器を提供することと、農業生産物を密閉容器内に配置することと、密閉容器に少なくとも0.05百万分率(ppm)の濃度でDHPガスを提供することと、DHPガス濃度を輸送中に維持することと、を含む、方法を提供すると共に、含む。
【0127】
本開示の態様によると、熟成が輸送中に抑制され、熟成がピークに達する時間を遅延する。本開示は、輸送中の農業生産物の熟成プロセスを抑制する方法であって、農業生産物を輸送するための密閉容器を提供することと、農業生産物を密閉容器内に配置することと、DHPガスを密閉容器に提供することと、DHPガス濃度を輸送中に維持することと、を含む、方法を提供すると共に、含む。本方法は、熟成のピークを少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、または少なくとも2週間遅延するために十分なDHPガスの濃度を提供することを含む。熟成の抑制および熟成がピークに達する時間を延長するための本開示によるDHPガスレベルは、、上記の段落[0099]~[00101]に提供される。
【0128】
いくつかの態様において、DHPガスによる熟成の抑制のための条件下で輸送する農業生産物は、果実である。他の態様において、農業生産物は、野菜である。他の態様において、農業生産物は、堅果、種子、穀粒、または塊茎である。一態様において、米、小麦、トウロモコシ、および大麦からなる群から選択される。いくつかの態様において、輸送容器は、輸送会社と、鉄道およびトラック会社との間でそれらを互換させるように国際標準に基づいて構築される。更に他の態様において、DHPガス含有輸送容器は、輸送中の標準として、任意に保冷されてもよく、またはそうでなければ処理されてもよい。別の態様において、農業生産物は、腐敗し易い生産物である。一定の態様において、農業生産物は、外来種の輸送および渡来を最小化または回避するためにDHPガスを有する環境において輸送される。
【0129】
本開示は、輸送中の農業生産物における病原体を制御する方法および構成物であって、DHPガス含有輸送容器を調製するために、農業生産物を含有する輸送容器に少なくとも0.05百万分率(ppm)の濃度でDHPガスを提供することと、DHPガス含有輸送容器を輸送することと、輸送中のDHPガス濃度を維持し、これによって病原体を制御することと、を含む、方法および構成物を提供すると共に、含む。本開示は、10ppmまでおよび段落[0099]~[00101]において列挙されるようにDHPガスレベルを提供する。本開示によって制御された病原体は、限定されるものではないが、段落[00140]において始まる以下に列挙される病原体を含む。
【0130】
本開示は、貯蔵設備において農業生産物の熟成プロセスを制御する方法を提供すると共に、含む。本開示による貯蔵設備は、個人的および工業的貯蔵設備を含む。一態様において、貯蔵設備は、サイロ、ドラム、大箱、コンテナ、冷却庫、冷蔵庫、およびバッグからなる群から選択され得る。方法は、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、または少なくとも2週間、熟成のピークを遅延するために十分なDHPガスの濃度を提供することを含む。一定の態様において、DHPガスは、連続的に貯蔵設備に提供される。他の態様において、DHPガスは、断続的に貯蔵設備に提供される。一態様において、DHPガスは、昼間中、提供される。別の態様において、DHPガスは、夜間中、提供される。
【0131】
本開示による態様において、貯蔵設備における熟成を制御するためのDHPガスは、少なくとも0.05ppmから10ppmまでの終濃度で貯蔵設備に提供される。別の態様において、DHPガス濃度は、少なくとも0.2ppmの濃度で提供され維持される。更なる態様において、DHPガス濃度は、少なくとも0.3ppmの濃度で提供され維持される。更なる態様において、DHPガス濃度は、少なくとも0.4ppmの濃度で提供され維持される。更なる態様において、DHPガス濃度は、少なくとも0.5ppm、少なくとも0.6ppm、少なくとも0.7ppm、少なくとも0.8ppm、または少なくとも0.9ppmの濃度で提供され維持される。一態様において、DHPガス濃度は、1.0ppm未満で提供され維持される。一態様において、DHPガス濃度は、0.1~0.6ppmで提供され維持される。別の態様において、DHPガス濃度は、0.4~1.0ppmで提供され維持される。当業者は、この開示を考慮して、および農業生産物の種類、数、および産地を更に考慮して、DHPの好ましいレベルを即座に判断し得る。貯蔵設備における熟成を制御するための本開示によるDHPガスレベルは、上記の段落[0099]~[00101]において提供される。
【0132】
本開示は、DHPガス濃度が一定期間、維持される方法および構成物を提供すると共に、含む。一定の態様において、密閉環境は、不確定の期間、少なくとも0.05ppmのDHPガス濃度を有して維持される。他の態様において、密閉環境は、10ppmまでのDHPガス濃度で維持される。DHPガスレベルを維持することは、微生物および節足動物に対する連続的なDHPガス活性を提供し、したがって輸送中の農業生産物の表面は、漸進的に微生物付着量が低減され、節足動物が殺されるかまたは追い払われるようになる。
【0133】
DHPガスは、種々の微生物および節足動物のレベルを低減することにおいて非常に有効である。以下の実施例2、表1において提供されるように、H1N1ウイルスは、30分未満で90%低減され得る。病原細菌MRSAは、5時間未満で90%低減される。増殖型の真菌類であるAspergillus nigerは、農業生産物、例えば、イチゴ上に存在するときに7時間で90%低減され得る。当業者によって理解されることになるように、1時間未満の簡易的処理でさえ、結果として多数の病原体または微生物の減少をもたらす。同様に、DHPガスは、例えば、エチレン等のVOCに対しても即効性を有するが、エチレン介在の活性上の効果は、DHPガスの連続した適用に依存する。本明細書において提供されるように、農業生産物が、例えば、貯蔵および輸送中、延長された期間、DHPガス含有環境において維持されることが予期される。
【0134】
本開示は、農業生産物を少なくとも15分間処理することを提供すると共に、含む。他の態様において、DHPガスは、少なくとも1時間提供される。一定の態様において、DHPガスは、少なくとも2時間提供される。追加の態様において、DHPガスは、少なくとも3または4時間提供される。一定の態様において、農業生産物は、少なくとも6時間または更に12時間、DHPガスを有する密閉環境に曝される。他の態様は、少なくとも24時間、曝されることを提供する。
【0135】
また本開示において提供され含まれるものは、1週間以上の農業生産物へのDHPガスの適用である。他の態様において、DHPガスは、1か月以上、密閉環境に提供され得る。また含まれるものは、DHPガスが、例えば、輸送または貯蔵中、連続的に提供される方法および構成物である。特に、DHPガスの安全性および効能が与えられた、DHPガスを有する密閉環境は、ヒトが居る場所に対して安全であり、このため、労働者は、農業生産物を追加するおよび取り出すためにDHPガス含有環境に出入りし得る。同様に、消費者は、本開示によるDHPガス含有環境において農業生産物を吟味し購入するために進入し得る。
【0136】
本開示は、農業生産物を生産する方法であって、農業生産物を収穫することと、15分~24時間の期間、0.3~10百万分率(ppm)の範囲における終濃度のDHPガスの存在下の密閉環境において農業生産物を貯蔵することと、を含む、方法を更に提供すると共に、含む。
【0137】
本開示は、密閉環境におけるVOCの濃度を低減する方法であって、一定期間、少なくとも0.05ppmの濃度で環境にPHPGを提供することを含み、VOCが酸化によって低減される、方法を提供すると共に、含む。本開示は、密閉環境におけるVOCの濃度を低減する方法であって、一定期間、少なくとも10ppmの濃度で環境にPHPGを提供することを含み、VOCが酸化によって低減される、方法を含むと共に提供する。本開示による態様において、VOCは、炭化水素、アルコール、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、ハロゲン化アルキル、アミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。密閉環境におけるVOCの濃度を低減するための本開示によるDHPガスレベルは、上記の段落[0099]~[00101]において提供される。
【0138】
一定の農業生産物の生産中、種々の有機化合物、例えば、害虫駆除剤および殺菌剤が適用される。VOCのように、これらの化合物は、PHPGによって酸化可能である種々の化学基を有する。したがって、農業生産物のPHPG処理は、結果としてこれらのしばしば所望しない有機化合物の低減をもたらす。本方法は、生産物が洗浄を必要とせず、処理が安全であることにおいて、先行技術の方法に対する改善となる。このように、労働者が任意の危険な条件に曝されることになる心配がない。
【0139】
一定の態様において、農業生産物は、低減されたレベルの害虫駆除剤、殺菌剤、殺虫剤および他の有機残留物を有することになる。一定の態様において、有機残留物は、少なくとも10%または少なくとも20%低減されることになる。他の態様において、有機残留物は、少なくとも30%低減されることになる。別の態様において、有機残留物は、少なくとも40%低減されることになる。別の態様において、有機残留物は、少なくとも50%低減されることになる。別の態様において、有機残留物は、少なくとも60%または少なくとも70%低減されることになる。本開示は、害虫駆除剤、殺菌剤、殺虫剤等の有機残留物における80%以上の低減を提供する。一定の態様において、有機残留物は、90%または95%低減されることになる。いくつかの態様において、99%までの害虫駆除剤、殺菌剤、殺虫剤等の有機残留物が除去され得る。本明細書において使用される、有機残留物の除去は、H2O2による、より簡素な化合物への残留物の酸化とも言える。
【0140】
本開示は、農業生産物上の病原体の被害を制御する方法であって、被害にあった農業生産物を含有する密閉環境に少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度でDHPガスを提供することと、病原体を制御するために十分な期間、密閉環境において少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度でDHPガスを維持することと、を含む、方法を提供すると共に、含む。本開示はまた、農業生産物上の病原体の被害を制御する方法であって、少なくとも10ppmの終濃度でDHPガスを提供することを含む、方法を含む。植物または植物生産物上の病原体の被害を制御するための本開示によるDHPガスレベルは、上記の段落[0099]~[00101]において提供される。
【0141】
本開示による態様において、農業生産物上の病原体の被害を制御する方法において、植物または植物生産物は、果実、野菜、種子、根、葉、および花からなる群から選択される植物生産物を含む。植物または植物生産物上の病原体の被害を制御するのに適した密閉環境は、上記の段落[00120]~[00123]において提供される。植物または植物生産物上の病原体の被害を制御するのに適した密閉環境は、段落[00124]および[00125]で提供されたような輸送容器および段落[00130]で提供されたような貯蔵容器を含む。
【0142】
本開示は、病原体が、植物または植物生産物上の病原体の被害を制御する方法であって、病原体が、ウイルス、ウイロイド、ウイルス様有機体、細菌、フィトプラズマ、原虫、藻類、線虫、寄生虫、昆虫、クモ類、卵菌、真菌類、または糸状菌である、方法を提供すると共に、含む。本明細書において使用される、病原体を制御することは、全活動の停止、病原性の低減、病毒性の低減、伝染性の低減、繁殖の低減、量の低減、被害の防止、および除去を含む。
【0143】
種々の態様において、病原体は、真菌類、古細菌、プロテスト、原虫、細菌、細菌胞子、細菌内生胞子、ウイルス、ウイルスベクター、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。他の態様において、微生物は、Naegleria fowleri、Coccidioides immitis、Bacillus anthracis、Haemophilus influenzae、Listeria monocytogenes、Neisseria meningitides、Staphylococcus aureus、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus agalactiae、Pseudomonas aeruginosa、Yersinia pestis、Clostridium botulinum、Francisella tularensis、variola major、ニパウイルス、ハンタウイルス、ピチンデウイルス、クリミア-コンゴ出血熱ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサウイルス、フニンウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(「HIV」)、またはSARS関連コロナウイルス(「SARS-CoV」)からなる群から選択され得る。
【0144】
本開示の方法は更に、S.Aureus、Alcaligenes Xylosoxidans、Candida Parapsilosis、Pseudomonos Aeruginosa、Enterobacter、Pseudomonas Putida、Flavobacterium Meningosepticum、Pseudomonas Picketti、Citrobacter、およびCorynebacteriaからなる群から選択される病原体の低減または除去を更に提供する。本開示は、C.difficile、Chlamydia、肝炎ウイルス、非天然痘orthopoxvirudae、インフルエンザ、ライム病、Salmonella sp.、流行性耳下腺炎、はしか、メチシリン耐性のStaphylococcus aureus(MRSA)、またはバンコマイシン耐性のStaphylococcus aureus(VRSA)を低減または除去する方法を含む。追加の態様において、本開示は、Yersinia pestis、Francisella tularensis、Leishmania donovani、Mycobacterium tuberculosis、Chlamydia psittaci、Venezuelan equine encephalitis virus、Eastern equine encephalitis virus、SARS coronavirus、Coxiella burnetii、Rift Valley fever virus、Rickettsia rickettsii、Brucella sp.、rabies virus、chikungunya、yellow fever virus、およびWest Nile virusの低減または除去を提供する。
【0145】
本開示は、農業生産物上の病原体の被害を制御する方法および構成物であって、農業生産物を含有する密閉環境に少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度でPHPGを提供することを含む、方法および構成物を提供すると共に、含む。一態様において、方法は、農業生産物上の病原体の被害を制御するGRAS方法である。本開示はまた、農業生産物上の病原体の被害を制御する方法であって、少なくとも10ppmの終濃度でDHPガスを提供することを含む、方法を含む。農業生産物上の病原体の被害を制御するための本開示による他の適切なDHPガスレベルは、上記の段落[0099]~[00101]に提供される。農業生産物は、限定されるものではないが、段落[0074]および[0075]に列挙されたものを含む。
【0146】
農業生産物上の病原体の数を低減することによって、本開示は、低減された数の病原体を有する農業生産物を提供する。本開示は、化学物質により照射または処理されていない農業生産物を提供する。H2O2が水と酸素とに完全に分解されるので、本方法および農業生産物は、完全に「グリーン」およびGRASである。
【0147】
本開示は、CEA設備において病原体を制御する方法および構成物であって、少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度でDHPガスを提供することと、病原体を制御するのに十分な期間、少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度でDHPガスを維持することと、を含む、方法および構成物を提供すると共に、含む。適切なCEA設備は、限定されるものではないが、温室、フープハウス、冷床、水耕およびアクアポニックス設備を含む。一定の態様において、DHPガスは、断続的に提供される。一定の態様において、DHPガスは、昆虫およびクモのような害虫を追い払うかまたは殺すために提供される。他の態様において、DHPガスは、連続的に提供される。
【0148】
一態様において、本開示は、低減された数の病原菌を有する有機農業生産物を提供する。一態様において、病原菌の数は、少なくとも25%低減される。別の態様において、病原菌は、少なくとも50%低減される。更なる態様において、病原菌は、少なくとも60%低減される。別の態様において、病原菌は、少なくとも70%低減される。また別の態様において、病原菌は、少なくとも75%低減される。他の態様において、病原菌は、少なくとも80%低減される。本開示は、未処理の農業生産物に対して少なくとも90%の病原菌の低減を有する農業生産物を提供する。一定の態様において、農業生産物上の病原菌は、少なくとも95%低減される。いくつかの態様において、病原菌は、少なくとも99.9%低減される。当業者のうちの1人は、農業生産物がDHPガスによって処理される時間に低減の程度が依存することを認識するであろう。農業生産物を処理する適切な時間は、上記の段落[00132]において列挙される。特定の態様において、農業生産物は、上記の段落[0078]~[0081]において列挙されたような野菜である。別の特定の態様において、農業生産物は、段落[0083]~[0086]において列挙されたような果実である。
【0149】
本開示は、農業生産物上の病原体の被害を制御する方法および構成物であって、農業生産物を含有する密閉環境に少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度でPHPGを提供することを含む、方法および構成物を提供すると共に、含む。本開示による態様において、病原体は、細菌である。一定の態様において、低減される細菌は、ヒトの病気の原因であると共に農業生産物を介して伝染される細菌である(例えば、レタスを介して伝染され摂取される一定のE.coli)。他の態様において、細菌は、農業生産物の腐敗の原因である。したがって一定の態様において、細菌の数の低減は、結果として、腐敗の低減および農業生産物の貯蔵寿命の増大をもたらす。一定の態様において、農業生産物は、段落[0078]~[0081]および段落[0083]~[0086]にそれぞれ列挙された野菜または果実である。
【0150】
一態様において、細菌は、Lactobacillus、Leuconostoc、Pediococcus、Lactococcus、およびEnterococcusのような乳酸菌である。別の態様において、細菌は、グラム陰性である。また別の態様において、細菌は、グラム陽性である。一定の態様において、細菌は、Acetobacter、Gluconobacter、Aeromonas、Arthrobacter、Aureobacterium、Xanthomonas、Pseudomonas、Clostridium、Cytophaga、Corynebacterium、Enterobacter、Erwinia、Flavobacterium、Bacillus、Klebsiella、Serratia、Alcaligenes、およびPantoeaからなる群から選択される属の子である。別の態様において、細菌は、Erwinia amylovora、Erwinia aphidicola、Erwinia billingiae、Erwinia mallotivora、Erwinia papayae、Erwinia persicina、Erwinia psidii、Erwinia pyrifoliae、Erwinia rhapontici、Erwinia toletana、Erwinia tracheiphila、Candidatus Erwinia dacicolaであり得る。別の態様において、細菌は、Erwinia carotovora、Xanthomonas campestris、Penicillium expansum、Botrytis cinerea、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas viridiflava、Pseudomonas tolaasii、Pseudomonas marginalis、Leuconostoc mesenteroides、Pantoea agglomerans Burkholderia cepacia Burkholderia cepacia Pantoea herbicola、P.marginalisおよびP.chlororaphis、Pseudomonas cichorii、P.syringae、P.viridiflava、またはL.mesenteroidesであり得る。
【0151】
本開示は、食中毒症を低減する方法および構成物であって、細菌、ウイルス、および寄生虫の存在数を低減するために、少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度でDHPガスにより農業生産物を処理することを含む、方法および構成物を提供すると共に、含む。本開示はまた、食中毒症を低減する方法および構成物であって、農業生産物上の細菌、ウイルス、および寄生虫の存在数を低減するために、少なくとも最大10ppmの終濃度でDHPガスにより農業生産物を処理することを含む、方法および構成物を提供すると共に、含む。一定の態様において、農業生産物は、段落[0078]~[0081]および段落[0083]~[0086]においてそれぞれ列挙されたような野菜または果実である。一定の態様において、農業生産物は、生の農業生産物である。
【0152】
本開示は、農業生産物上の細菌性病原体の低減を提供し、これによって食中毒症のリスクを減少させる。一態様において、農業生産物は、E.coli O157:H7を低減するためにDPHガスにより処理される。一態様において、細菌性病原体は、Salmonella属細菌である。別の態様において、細菌性病原体は、Clostridium perfringensである。また別の態様において、細菌性病原体は、Camplylobacter属細菌である。更なる態様において、細菌性病原体は、Staphylococcus属細菌である。一態様において、Staphylococcus属細菌は、Staphylococcus aureusである。
【0153】
また本開示について含まれ提供されるものは、農業生産物上のウイルスである病原体の被害を制御する方法および構成物である。一態様において、方法は、農業生産物上のウイルスの除去を提供し、他の態様において、ウイルスは、未処理の農業生産物に対して低減される。ガス、液体または蒸気として提供されることにかかわらず、H2O2に耐性を有する任意の種類のウイルスは知られていない。重要なことに、伝染され農業生産物として摂取されるウイルスは、結果的に重大なヒトの病気および死亡率をもたらす。
【0154】
ウイルス付着量および活動的ウイルスは、少なくとも0.05ppmの濃度でDHPガスを含む密閉環境において処理されるか、輸送されるかまたは貯蔵されるときに、農業生産物上で低減または除去され得る。本開示の方法および構成物は、例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、およびポックスウイルスを含む二本鎖DNA(dsDNA)ウイルスを含むクラスIウイルスと、一本鎖DNA(ssDNA)ウイルス、例えば、パルボウイルスを含むクラスIIウイルスと、例えば、レオウイルスを含むクラスIII二本鎖RNA(dsRNA)ウイルスと、プラス鎖一本鎖((+)ssRNA)ウイルス、例えば、ピコルナウイルスおよびトガウイルスを含むクラスIVウイルスと、マイナス鎖一本鎖RNA((-)ssRNA)ウイルス、例えば、オルソミクソウイルス、およびArenaviridaeを含むラブドウイルスを含むクラスVウイルスと、ライフサイクルにおいてDNA中間体を伴うRNAゲノムを有する一本鎖RNA逆転写(ssRNA-RT)ウイルス(例えば、レトロウイルス)を含むクラスVIウイルスと、二本鎖DNA逆転写(dsDNA-RT)ウイルス(例えば、肝炎ウイルスを含むヘパドナウイルス)を含むクラスVIIウイルスと、を含むウイルスの全クラスに対して有効である。H2O2ガスは、全ウイルスを不活性化することおよび殺すことにおいて有効であると期待される。耐性を有するウイルスは、知られていない。
【0155】
本開示は、限定されるものではないが、Herpesviridae(ヘルペスウイルス、Varicella Zosterウイルスを含む)、Adenoviridae、Asfarviridae(アフリカブタコレラウイルスを含む)、Polyomaviridae(サルウイルス40、JCウイルス、BKウイルスを含む)、およびPoxviridae(牛痘ウイルス、天然痘を含む)から選択される群を含む全クラスIウイルスに対して有効な方法および構成物を提供する。
【0156】
本開示は、限定されるものではないが、PicobirnaviridaeおよびReoviridae(ロタウイルスを含む)を含む全クラスIIIウイルスに対して有効な方法および構成物を提供する。
【0157】
本開示は、限定されるものではないが、Coronaviridae(コロナウイルス、SARS)、Picornaviridae(ポリオウイルス、ライノウイルス(風邪ウイルス)、A型肝炎ウイルス)、Flaviviridae(黄熱ウイルス、西ナイルウイルス、C型肝炎ウイルス、デング熱ウイルス)、Caliciviridae(ノロウイルスとしても知られるノーウォークウイルス)およびTogaviridae(風疹ウイルス、ロスリバーウイルス、シンドビスウイルス、チクングニアウイルス)からなる群から選択される科を含む全クラスIVウイルスに対して有効な方法および構成物を提供する。
【0158】
本開示は、最も致命的なウイルスとして知られるうちのいくつかを含む9つのウイルスの科を含む全クラスVウイルスに対して有効な方法および構成物を提供する。本開示の方法は、Arenaviridae、Bunyaviridae、Rhabdoviridae、Filoviridae、およびParamyxoviridae科のウイルスを低減または除去することにおいて有効である。
【0159】
本開示は、限定されるものではないが、Alpharetrovirus、Betaretrovirus、Gammaretrovirus、Deltaretrovirus、Epsilonretrovirus、およびLentivirusを含むクラスVIの全レトロウイルスに対して有効な方法および構成物を提供する。本開示の方法および構成物はまた、Bornaviridae(ボルナ病ウイルスを含む)、Filoviridae(エボラウイルス、マールブルグウイルスを含む)、Paramyxoviridae(麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ニパウイルス、ヘンドラウイルス、RSVおよびNDV)、Rhabdoviridae(狂犬病ウイルスを含む)、Nyamiviridae(ニャウイルスを含む)、Arenaviridae(ラッサウイルスを含む)、Bunyaviridae(ハンタウイルス、クリミア-コンゴ出血熱を含む)、Ophioviridae(植物に感染する)、およびオルソミクソウイルス科(インフルエンザウイルスを含むを含む)のウイルス科に対して有効である。
【0160】
また本開示において提供され含まれるものは、低減された数のウイルスのプラーク形成単位(PFU)を有する農業生産物である。本明細書において使用される、プラーク形成単位は、活動的(感染性)ウイルス粒子の数を意味する。一定の態様において、農業生産物は、放射線によって処理されない。他の態様において、農業生産物は、化学物質によって処理されない。また別の態様において、農業生産物は、放射線または化学物質のいずれかによって処理されない。
【0161】
一態様において、本開示は、低減された数のウイルスのPFUを有する有機農業生産物を提供する。一態様において、PFUの数は、少なくとも25%低減される。別の態様において、PFUは、少なくとも50%低減される。また別の態様において、PFUは、少なくとも75%低減される。本開示は、未処理の農業生産物に対して少なくとも90%のPFUの低減を有する農業生産物を提供する。特定の態様において、農業生産物は、上記の段落[0078]~[0081]に列挙されたような野菜である。別の特定の態様において、農業生産物は、段落[0083]~[0086]に列挙されるような果実である。
【0162】
本開示によって含まれ提供されるものは、農業生産物上の真菌類である病原体の被害を制御する方法および構成物である。真菌類は、以下の真菌類、Botrytis cinerea、Botryodiplodia theobromae、Ceratocystis fimbriata、Fusarium spp.、Rhizopus oryzae、Cochliobolus lunatus (Curvularia lunata)、Macrophomina phaseolina、Sclerotium rolfsii、Rhizoctonia solani、および/またはPlenodomus destruensのうちの1つ以上であり得る。別の態様において、真菌類は、属、Alternaria、Aspergillus、Botrytis、Cladosporium、Colletotrichum、Thamnidium、Phomopsis、Fusarium、Penicillium、Phoma、Phytophthora、Pythium、またはRhizopusに属し得る。別の態様において、真菌類は、Alternaria alternata、Aspergillus amstelodami、Aspergillus chevalieri、Aspergillus flavus、Aspergillus fumigatus、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus repens、Aspergillus terreus、Aspergillus ustus、Aspergillus versicolor、Aureobasidium pullulans、Chaetomium globosum、Cladosporium cladosporoides、Cladosporium herbarum、Botrytis cinerea、Ceratocystis fimbriata、Rhizoctonia solani、およびSclerotinia sclerotiorumからなる群から選択される種であり得る。
【0163】
本開示によって含まれ提供されるものは、農業生産物上の真菌類である病原体の被害を制御する方法および構成物である。真菌類は、以下のPenicillium、Phytophthora、Alternaria、Botrytis、Fusarium、Cladosporium、Phoma、Trichoderma、Aspergillus、Alternaria、Rhizopus、Aureobasidium、またはColletotrichumのうちの1つ以上であり得る。
【0164】
本開示による態様において、病原体の被害を制御することは、農業生産物上の病原体付着量を低減することによる腐敗の制御および低減を提供する。一定の態様において、腐敗は、Penicillium、Phytophthora、Alternaria、Botrytis、Fusarium、Cladosporium、Phoma、Trichoderma、Aspergillus、Alternaria、Rhizopus、Aureobasidium、およびColletotrichumからなる群から選択される真菌類の胞子の数を低減することによって低減され得る。
【0165】
また本開示において提供され含まれるものは、Penicillium、Phytophthora、Alternaria、Botrytis、Fusarium、Cladosporium、Phoma、Trichoderma、Aspergillus、Alternaria、Rhizopus、Aureobasidium、およびColletotrichumからなる群から選択される、低減された数の真菌類の胞子を有する農業生産物である。一定の態様において農業生産物は、放射線によって処理されない。他の態様において農業生産物は、化学物質によって処理されない。また別の態様において、農業生産物は、放射線または化学物質のいずれかによって処理されない。
【0166】
一態様において、本開示は、Penicillium、Phytophthora、Alternaria、Botrytis、Fusarium、Cladosporium、Phoma、Trichoderma、Aspergillus、Alternaria、Rhizopus、Aureobasidium、およびColletotrichumからなる群から選択される低減されたレベルの真菌類胞子を有する有機農業生産物を提供する。
一態様において、真菌類胞子の数は、少なくとも25%低減される。別の態様において、真菌類胞子は、少なくとも50%低減される。また別の態様において、真菌類胞子は、少なくとも75%低減される。本開示は、未処理の農業生産物に対して少なくとも90%の真菌類胞子の低減を有する農業生産物を提供する。特定の態様において、農業生産物は、上記の段落[0078]~[0081]において列挙されたような野菜である。別の特定の態様において、農業生産物は、上記の段落[0083]~[0086]において列挙されたような果実である。
【0167】
本開示による一定の態様において、真菌類は、Candida spp.、Cryptococcus albidus、Rhodotorula spp.、Trichosporon penicillatum、およびSaccharomyces cerevisiaeからなる群から選択される酵母菌である。一定の態様において、本開示は、果実の発酵に関連している属、Saccharomyces、Candida、Torulopsis、およびHansenulaの酵母菌のレベルにおける低減を提供する方法および構成物を提供する。加えて、生産の品質損失を引き起こし得る、Rhodotorula mucilaginosa、R.glutinis、Zygosaccharomyces bailii、Z.bisporus、およびZ.rouxiiを含む他の酵母菌は、本開示の方法および構成物によって低減される。
【0168】
一態様において、本開示は、属、Saccharomyces、Candida、Torulopsis、およびHansenulaから選択される低減されたレベルの酵母菌を有する有機農業生産物を提供する。別の態様において、本開示は、Rhodotorula mucilaginosa、R.glutinis、Zygosaccharomyces bailii、Z.bisporus、またはZ.rouxiiから選択される低減されたレベルの酵母菌を有する農業生産物を提供する。一態様において、酵母菌の数は、少なくとも25%低減される。別の態様において真菌類胞子は、少なくとも50%低減される。また別の態様において、酵母菌は、少なくとも75%低減される。本開示は、未処理の農業生産物に対して少なくとも90%の酵母菌の低減を有する農業生産物を提供する。特定の態様において、農業生産物は、上記の段落[0078]~[0081]において列挙されたような野菜である。別の特定の態様において、農業生産物は、段落[0083]~[0086]において列挙されたような果実である。
【0169】
ますます、農業生産物は、国際的に輸送されており、高まっている懸念は、輸送に伴い得る「密航者」の存在である。これらの密航者は、その名の由来である果実に同行する有毒バナナグモ、または地中海ショウジョウバエを含む。農業生産物輸送上、望ましくない同行者である多くの昆虫およびクモ類が存在する。
【0170】
本開示は、輸送中の農業生産物における節足動物を制御する方法であって、PHPG含有輸送容器を調整するために農業生産物を含有する輸送容器にPHPGを提供することと、コンテナを輸送することと、PHPG濃度を所定濃度で維持することと、を含む、方法を提供すると共に、含む。一態様において、PHPG濃度は、少なくとも0.05百万分率(ppm)の濃度で提供され維持される。一態様において、PHPG濃度は、少なくとも10ppmの濃度で提供され維持される。また本開示において含まれ提供されるものは、節足動物の向上した初期致死を提供するために、輸送濃度よりも高い濃度でPHPGが初期に提供される方法である、以下のおよび当分野において知られる方法を使用することで、輸送中のPHPGの最適量を判定することは、慣例的実験のみで実現され得る。輸送中の農業生産物における節足動物を制御するための本開示によるDHPガスレベルは、上記の段落[0099]~[00101]において提供される。
【0171】
本開示は、農業生産物を保護する方法および構成物であって、密閉環境に適切に少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度でDHPガスを提供することと、DHPガスを少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度で維持することと、を含む、方法および構成物を提供すると共に、含む。いくつかの態様において、DHPガスは10ppmまでの濃度で提供される。本明細書において提供される、農業生産物の保護は、上記のような病原体および節足動物害虫からの保護を含む。DHPガスによって保護可能な密閉環境は、限定されるものではないが、温室、フープハウス、冷床、水耕環境、または水耕栽培環境を含む、農業生産物を成長させるのに適した密閉環境を含む。含まれ提供されるものは、上記の段落[0078]~[0086]において列挙されたもののような、農業生産物である。
【0172】
本開示による態様において、DHPガスは、上記に列挙されたものを含むウイルスまたは細菌による、密閉環境において成長している農業生産物の汚染を防止または抑制することによる保護を提供する。別の態様において、DHPガスは、密閉環境において成長している農業生産物上における寄生菌による損傷および死傷を防止または抑制することによる保護を提供する。別の態様において、DHPガスは、農業生産物が密閉環境において成長する栄養ベッド上における寄生菌による損傷および死傷を防止または抑制することによる保護を提供する。他の態様において、DHPガスは、密閉環境において成長している農業生産物上における昆虫またはクモ類の活動による損傷を防止または抑制することによる保護を提供する。いくつかの態様において、DHPガスは、密閉環境において成長している農業生産物を更に含む密閉環境内への昆虫もしくはクモ類の侵入を阻止することによる保護を提供する。別の態様において、DHPガスは、密閉環境において成長している農業生産物を更に含む密閉環境の外に昆虫もしくはクモ類を追い出すことによる保護を提供する。また別の態様において、DHPガスは、密閉環境において成長している農業生産物を更に含む密閉環境において昆虫もしくはクモ類を眠らせて死なせることによる保護を提供する。更なる態様において、DHPガスは、密閉環境において成長している農業生産物を更に含む密閉環境において昆虫もしくはクモ類の幼虫、卵、もしくは蛹を殺すことによる保護を提供する。別の態様において、DHPガスは、農業生産物によって生じたエチレンガスをエチレンガスが腐敗を促進し得る前に二酸化炭素と水とに転換することによる保護を提供する。
【0173】
他の態様において、農業生産物を成長させることに適した密閉環境は、農業生産物を成長のために導入する前にDHPガスで前処理され得る。いくつかの態様において密閉環境は、10ppmまでの濃度にてDHPガスで前処理される。一定の態様において、前処理のための時間は、1日以上である。いくつかの態様において前処理時間は、2または3日である。他の態様において、前処理のための時間は、1週間である。本開示は、第1の農業生産物の収穫後、第2の農業生産物の導入前に密閉環境の前処理を提供する。
【0174】
本開示は、作物生産のための有機的方法であって、農業生産物を含有する密閉環境に少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度でDHPガスを提供することと、作物生産中に一定期間、少なくとも0.05百万分率(ppm)の終濃度でDHPガスを維持することと、を含む、方法を提供すると共に、含む。一定の態様において、DHPガス濃度は、10ppmまでであり得る。H2O2が水と酸素とを生成し残留物を残さずに反応または分解されることは明白であり、したがってこの安全で有効な方法は完全に有機的である。
【0175】
本開示は、有機的である本開示の方法による、DHPガスによる処理後の農業生産物を提供すると共に、含む。処理後の農業生産物は、低減されたレベルの病原体、低減されたレベルの害虫駆除剤、殺菌剤、および生産中に農業生産物にしばしば適用される化合物の他の残留物を有する。農業生産物に適用された添加化合物が「有機的」であろうとなかろうと、H2O2の酸化作用により、表面上において到達可能な化合物は、必然的に低減される。十分な時間が提供されると、これらの化合物(および病原体)は、本質的にゼロまで低減され得る。未処理の農業生産物と比較した場合、本開示の方法は、化合物および病原体における少なくとも10%の低減を提供する。他の態様において低減は、少なくとも50%以上である。一定の態様において、低減は、50%~75%である。また他の態様において、低減は、少なくとも80%である。また他の態様において、適用された化合物の少なくとも90%が低減されるかまたは分解される。低減された細菌および真菌類を有する農業生産物は、長寿命化が期待され、任意の化学物質が適用された場合、化学物質の低減は、改善された健康上の利益を提供し得る。
【0176】
本明細書に記載され、請求項の書類において請求される本発明の種々の実施形態および態様は、以下の実施例において実験的支持を見出す。以下の実施例は、例示の目的のために提示され、限定として解釈されるべきではない。
実施例
実施例1:腐敗し易い果実上における糸状菌の制御のためのDHPガスの実験室内試験
【0177】
腐敗し易い食料生産品上におけるDHPガスの効果が、空間におけるDHPガスの間接的な拡散を使用して糸状菌腐敗を制御する上での効能を判定するために調べられた。実験は、1584立方フィートの試験室で実施された。試験室の温度は、華氏73度~華氏78度で維持され、周囲空気の湿度は40%~65%であった。新鮮なイチゴがDHPガスなし(対照用)か、または0.1ppm~0.4ppmの終濃度のDHPガスと共に、試験室に恒温放置された。5日間の恒温放置期間後、イチゴは、糸状菌腐敗の存在を評価された。5日間の恒温放置期間後、対照用のイチゴは、著しい糸状菌腐敗を示した。これに対し、DHPガスの存在下において恒温放置されたイチゴは、糸状菌腐敗の兆候を示さなかった。サンプル結果が図1に示される。
実施例2:DHPガスの細菌および真菌類の制御
【0178】
細菌および真菌類におけるDHPガスの有効性を示すために、試験表面は、表1において提供されるように細菌および真菌類を植え付けられた。対照用の表面および試験表面は、DHPガスを含まない、およびDHPガスを含有する環境に配置され、残っている生物数を判定するために24時間にわたって採取された。
【表1】
実施例3:Geobacillus Stearothermophilus胞子の制御のためのDHPガスの実験室内試験
Geobacillus stearothermophilus胞子におけるDHPガスの効果が、空間におけるDHPガスの間接的な拡散を使用して胞子を殺す上での効能を判定するために調べられた。G.stearothermophilus胞子は、それらが致死することに対する特定の耐性を有するとして選択され、蒸気滅菌法を評価するためにしばしば使用される。これらの実験において、G.stearothermophilus胞子の致死率は、約0.3ppmの濃度でDHPガスに処理されるG.stearothermophilusと含浸されたフィルタ片を使用して測定された。試験片は、特定の期間、DHPガスに曝されることに続いて視覚的な読取値を提供する。G.stearothermophilusに含浸された試験片は、まずDHPガスに曝され、トリプシンダイズブロス溶液に浸漬され、24時間の恒温放置期間、ドライバスに配置された。恒温放置期間に続いて、各試験片は、任意の生存細菌の存在を判定するために分析された。24時間の恒温放置期間の満了前の色の変化または濁りの存在は、DHPガスに曝された後に視認可能な胞子が残っていることを示す。反対に、24時間の恒温放置期間の満了前に色の変化または濁りがないことは、G.stearothermophilus胞子の根絶を示す。結果が以下の表2に提示される。
【表2-1】
【表2-2】
【0179】
明瞭化のために、別個の実施形態の文脈で説明された本発明の一定の特徴は、単一実施形態における組み合わせにおいてまた提供され得ることが認められる。反対に、簡便化のために、単一実施形態の文脈で説明された本発明の種々の特徴は、別個に、または任意の適切な部分的組み合わせ、もしくは本発明の任意の他の説明された実施形態におけるものとして提供され得る。種々の実施形態の文脈において説明された一定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしで作用不能でない限り、それらの実施形態の本質的特徴として考慮されるべきではない。
【0180】
本発明は、その特定の実施形態に関して説明されたが、多くの代替、変更および変形が当業者にとって明らかであろうことは、明白である。したがって、添付の請求項の概念および広い範囲内に収まる、全てのこのような代替、変更および変形を包含することが意図される。
【0181】
本明細書において述べられた全ての刊行物、特許、特許出願は、各々個々の刊行物、特許または特許出願が、具体的かつ個別的に参照によって本明細書に組み込まれると示されているのと同一に、参照によってその全体が本明細書にここで組み込まれる。加えて、本出願における任意の参照の引用または同定は、そのような参照が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されてはならない。節の見出しが使用される点において、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。
図1A
図1B
図2A
図2B