(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】回転電気機械のステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/16 20060101AFI20220328BHJP
H02K 15/085 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
H02K1/16 C
H02K15/085
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018022460
(22)【出願日】2018-02-09
【審査請求日】2020-11-04
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508075579
【氏名又は名称】ヴァレオ エキプマン エレクトリク モトゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】ジミー、シャイルー
(72)【発明者】
【氏名】ピエール-イブ、ビルテリスト
(72)【発明者】
【氏名】アンリ、デリアネ
(72)【発明者】
【氏名】ダビド、マルグリット
(72)【発明者】
【氏名】エリック、ジョゼフォービーツ
(72)【発明者】
【氏名】シルバン、ペロー
(72)【発明者】
【氏名】モハメド、エル-ガザル
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-203527(JP,A)
【文献】特開昭63-305737(JP,A)
【文献】特開2010-263786(JP,A)
【文献】特開2010-183792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0187293(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00 - 1/16
H02K 1/18 - 1/26
H02K 1/28 - 1/34
H02K 15/085
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ本体(20)と、前記ステータ本体(20)に支持されるステータ巻線(22)と、を備える回転電気機械のステータ(2)であって、
前記ステータ本体(20)は、積層されたシートメタルのコアにより形成され、軸(X)を中心として延在するとともに、内側径方向表面(3)と外側径方向表面(4)とによって画定されており、前記ステータ本体(20)は、2つのスロット(5)の間にそれぞれ形成された複数の歯(6)を有し、これにより、前記ステータ本体(20)は、前記ステータ(2)の周囲に沿って、交互配置されたスロット(5)と歯(6)とを有し、前記スロット(5)は、前記ステータ本体(20)に前記内側径方向表面(3)から配設されるとともに軸方向に延在して少なくとも1つのステータ巻線要素(22)を受容し、
前記ステータ本体(20)は、少なくとも1つの変形した歯(6)を有し、前記変形した歯(6)は、前記ステータ(2)の前記内側径方向表面(3)の規定に寄与するその自由端部(7)に、少なくとも1つの隣接するスロット(5)を横切る方向に延在する少なくとも1つの凸部(10)を備え、前記凸部(10)は、前記変形した歯(6)の材料変形により得られ、且つ、
前記凸部(10)は、前記変形した歯(6)内での、前記ステータ(2)の前記外側径方向表面(4)から前記ステータ(2)の前記内側径方向表面(3)への材料の変位の結果として得られるビードにより形成され、
前記変形した歯(6)の径方向延長部に、前記外側径方向表面(4)上において押し潰された少なくとも1つのボス(11)を備える、
ことを特徴とするステータ(2)。
【請求項2】
前記変形した歯(6)の前記自由端部(7)は、前記歯(6)の両側において、前記変形した歯(6)に直接隣接する各スロット(5)を横切る方向に延在する凸部(10)を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のステータ(2)。
【請求項3】
前記変形した歯(6)の前記自由端部(7)は、前記ステータ(2)の前記内側径方向表面(3)において、尖頭状又は直線状のエントリを形成する溝(16)であって、前記歯(6)を取り囲む前記2つの相次ぐスロット(5)の間の寸法として定義される前記歯(6)の厚さに対して中心合わせされた溝(16)を有する、
ことを特徴とする請求項1及び2のいずれか一項に記載のステータ(2)。
【請求項4】
各歯(6)は、変形した歯であり、
前記変形した歯は、その自由端部(7)に、径方向変形により得られる少なくとも1つの凸部(10)を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のステータ(2)。
【請求項5】
2つの相次ぐ歯(6)が、異なる軸方向位置に、前記ステータ(2)の前記周囲に沿って配設された凸部(10)を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のステータ(2)。
【請求項6】
請求項
1乃至5のいずれか一項に記載のステータ(2)のステータ本体(20)を形成するように軸方向に互いに積層されたシートメタルのコアであって、
前記ステータ本体(20)の前記外側径方向表面(4)に対応する前記シートメタルのコアの外壁から突出する少なくとも1つのボス(11)が作製される、
ことを特徴とするシートメタルのコア。
【請求項7】
前記ボス(11)は、前記シートメタルのコアの所定数のシートメタル上に軸方向に延在する、
請求項
6に記載のシートメタルのコア。
【請求項8】
請求項
6又は
7に記載のシートメタルのコアの変形によって請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のステータ(2)を得るためのツールであって、
前記ツールは、前記シートメタルのコアのうちの少なくとも1つのシートメタルの前記歯(6)の前記自由端部(7)に接触する内側ツール(13)と、前記シートメタルのコアのうちの少なくとも1つのシートメタルの前記外壁に接触する外側ツール(12)と、を備え、
前記外側ツール(12)は、前記シートメタルのコアの前記周囲と少なくとも1つのボス(11)とに一定的に当接するように構成された一定の外郭を有
し、
前記内側ツール(13)は、少なくとも1つの尖頭部(14)を有し、
前記内側ツール(13)は、前記ボス(11)の材料が前記ステータ本体(20)の内部に向かって、前記外側ツール(12)によって印加される圧力の移動方向に移動するように、前記尖頭部(14)が前記シートメタルのコアのうちの任意のシートメタルの歯(6)の自由端部(7)に接触するように配置される、
ことを特徴とするツール。
【請求項9】
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のステータ(2)を得るための方法であって、
‐前記ステータ巻線要素(22)を、前記シートメタルのコアに配設された前記スロット(5)内に挿入するステップと、
‐前記ステータ巻線要素(22)がそれぞれの前記スロット(5)に配置された状態で、前記シートメタルのコアの外壁上の少なくとも1つのボス(11)を、互いに対して移動可能な外側ツール(12)と内側ツール(13)とを用いて押圧することによって前記シートメタルのコアの材料を変形させて、前記シートメタルのコアの、前記外壁の反対側の端部に、前記スロット(5)を横切る方向に延在する凸部(10)を作製するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
前記変形のステップは、
内側ツール(13)を前記歯(6)の前記自由端部(7)に接して配置するステップであって、前記内側ツール(13)は、前記ステータ巻線要素(22)が前記スロット(5)の外部に脱出することも抑制するステップと、
前記ツールのうちの一方を他方に近づけるステップであって、外側ツール(12)を、前記シートメタルのコアの前記外壁に対して、固定されたままの前記内側ツール(13)の方向に移動するステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記単数又は複数のステータ巻線要素(22)を前記ステータ本体(20)内に挿入する前に、電気的絶縁部材が前記ステータ本体(20)に適用される、
請求項
9又は
10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのステータ(2)を備える回転電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電気機械の分野に関し、より具体的には、このような回転電気機械用のステータの設計に関する。
【0002】
自動車両において回転電気機械を使用することが公知である。特に、機械的エネルギーを電気的エネルギーに、及びこの逆に変換するように構成された多相オルタネータが課題である。このような可逆オルタネータは、オルタネータ‐ステータと称され、ある機能において、車両の操作中に生成された機械的エネルギーを、当該車両のバッテリの再充電に使用することを可能とし、他の機能において、特に車両の熱機関を始動させるように機械的エネルギーを供給することを可能とする。
【0003】
この機械は、ケースと、その内部でシャフトと一体回転するロータと、小さいエアギャップが存在した状態でロータを取り囲むステータであって、ステータの相を組み付けるためのスロットを設けられた本体を備えるステータと、を主に備える。したがって、ステータは、ステータ本体と、このステータ本体に装着されたステータ巻線と、を備えるものとして説明され得る。ステータ本体は、交互配置された歯とスロットとを有し、各スロットは、歯の周囲に少なくとも1つの巻線のハウジングを提供する。巻線は、例えば、従来的には絶縁体で被覆された、連続ワイヤから得られる。
【0004】
これらの多相巻線は、例えば、スター結線又はデルタ結線の三相巻線であり、その出力部は、例えばダイオードや、特に文書FR A 2 745 445(US A 6 002 219)に記載のようなオルタネータ‐ステータに関する場合、MOSFET‐タイプのトランジスタ等の整流要素を備える少なくとも1つの整流ブリッジに接合される。
【0005】
ステータ本体の歯の周囲のワイヤの巻線は、巻線がスロットにしっかりと固定できず、ステータ本体によって規定されたスペースから離脱し得る、すなわち、ステータの内径を超え得る限りにおいて、欠点を有し得る。この欠点は、ステータ本体の内部で回転するロータへの衝突のおそれを生じさせる。
【0006】
ステータ本体を、シートメタルの積層体、又はシートメタルのコアから製造することが知られている。各シートメタルは、交互配置された歯とスロットとを有する形状を呈し、ステータ本体におけるそれらの軸方向寸法は、シートメタルの積層体によって形成される。巻線がステータから離脱するという前述の問題を解決するように、歯の自由端部、すなわちステータの内部を向くそれらの端部を切断し、歯が当該歯の両側に配置されたスロットを横切る方向に部分的に延在する凸部を有することによってシートメタルの特定の形状を作成することが知られている。こうして、シートメタルの積層体は、軸方向に延在するとともにスロットに挿入された巻線のワイヤの通過断面を減少させる凸部の形成を生成する。これにより、一旦スロットに押し込まれると、ステータ巻線は、エンジンの動作中にそれから離脱することは最早有り得ない。
【0007】
しかしながら、このような設計は、ステータ巻線をスロット内に押し込むことが必要であるため、ステータ巻線ワイヤの構造に損傷を与えたり、このワイヤを取り囲む絶縁層の全部又は一部が剥離したりするおそれがある。
【0008】
それ故、歯が根元、すなわち凸部を有しない設計に対する需要があった。ワイヤがスロットから離脱することを抑制するように、文書US7808148は、ワイヤの径方向に直交する幅を増大させるようにワイヤを径方向に押し潰し、これによりワイヤをスロットの縁部に当接させることを教示している。しかしながら、前述のように、ワイヤ及びその絶縁体は、この作業中に損傷を受けやすい。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、本文脈に該当し、ステータ巻線が、ステータ巻線への損傷なしに、これに正確に配置される電気機械であって、エンジンの作動中に、ステータ巻線が割り当てられたスペースにしっかりと保持されることを保証する電気機械を提案することを目的とする。
【0010】
本発明の目的は、ステータ本体と、前記ステータ本体に支持されるステータ巻線と、を備える回転電気機械のステータである。ステータ本体は、軸(X)を中心として延在するとともに、内側径方向表面と外側径方向表面とによって画定される。また、ステータ本体は、2つのスロットの間にそれぞれ形成された複数の歯を有し、前記スロットは、前記ステータ本体に前記内側径方向表面から配設されるとともに軸方向に延在して少なくとも1つのステータ巻線を受容し、これにより、前記ステータ本体は、前記ステータの周囲に沿って、交互配置されたスロットと歯とを有する。各歯を取り囲む2つの相次ぐスロットの間の寸法が、前記歯の厚さとして定義される。
【0011】
本発明によれば、前記ステータ本体は、少なくとも1つの変形した歯を有し、前記変形した歯は、前記ステータの前記内側径方向表面の規定に寄与するその自由端部に、隣接するスロットを横切る方向に延在する少なくとも1つの凸部を備える。前記凸部は、前記変形した歯の材料変形により得られる。
【0012】
前記少なくとも1つの凸部は、材料の変位、また、より正確には、前記ステータの前記外側径方向表面から前記ステータの前記内側径方向表面への材料の変位の結果として得られるビードにより形成され得る。
【0013】
本発明の特徴によれば、前記変形した歯の前記自由端部は、前記歯の両側において、前記変形した歯に直接隣接する各スロットを横切る方向に延在する凸部であって、当該歯に巻き回された前記ステータの前記巻線要素が固定されることを可能としつつ、前記歯の両側で直接隣接するスロットに延在する凸部を備え得る。
【0014】
前記変形した歯の前記自由端部は、前記ステータの前記内側径方向表面において、尖頭状又は直線状のエントリを形成する溝であって、前記歯の厚さに対して中心合わせされた溝を有し得る。
【0015】
凸部は、前記ステータの全ての歯に存在し得る。それらは、歯の径方向変形によって得られ、同一のスロットにおいて異なる高さを有し得る。換言すれば、各歯は、変形した歯であり得る。前記変形した歯は、その自由端部に、前記ステータの径方向変形により得られる少なくとも1つの凸部を備える。そして、2つの相次ぐ歯が、異なる軸方向位置に前記ステータの前記周囲に沿って配設された凸部を有し得る。したがって、2つの相次ぐ歯の2つの凸部が、同一スロットにおいて、異なる軸方向高さ(レベル)において対面し得る。これにより、前記ステータの前記巻線要素は、より効果的に固定され得る。
【0016】
前記変形した歯の前記延長部において、前記ステータの前記外側径方向表面は、前記変形した歯に存在する凸部の根元における材料の変位を許容する方法を実施した結果として押し潰されたボスを有する。
【0017】
前記ステータの前記本体は、シートメタルの軸方向積層体により、お互いを越えてシートメタルのコアを形成するように形成され得る。これらのシートメタルは、前記シートメタルのコアの外壁から突出する少なくとも1つの凸状ボスが出現するように配設される。この外壁は、前記ステータの前記本体の形成後に、その外側径方向表面に対応するようになる。
【0018】
当該ボスは、前記シートメタルのコアの所定数のシートメタル上に軸方向に延在し得る。したがって、ボスは、積層コアの全高に亘って、又は好適にはこの軸の一部のみに亘って延在し得る。これにより、同一のスロットに面する凸部が、異なる軸方向高さにおいて配設されることが可能とされる。凸部のこのような互い違いの配置により、ステータの巻線要素をより良く保持できる。このようなシートメタルのコアにおいて、すなわち、材料の変形前において、各ボスの径方向延長部に配設された歯は直線状であって、ボスの反対側に、一定の、すなわち凸部のない自由端部を有している。
【0019】
本発明は、上述のようにシートメタルのコアの変形によってステータを得ることを可能とするツールに関する。このツールは、前記シートメタルのコアのうちの少なくとも1つのシートメタルの前記歯の前記自由端部に接触する内側ツールと、前記シートメタルのコアのうちの少なくとも1つのシートメタルの前記外壁に接触する外側ツールと、を備える。
【0020】
前記内側ツールは、少なくとも1つの尖頭部を有し得る。この尖頭部が前記シートメタルのコアのうちの少なくとも1つのシートメタルの歯の自由端部に接触する。一方、前記外側ツールは、前記シートメタルのコアの前記周囲と少なくとも1つのボスとに一定的に当接するように構成された一定の外郭を有し得る。
【0021】
上述のステータを得るように、前記ステータの前記巻線要素を、前記シートメタルのコアの配置により形成された前記スロット内に挿入することからなる第1ステップが実施される。次いで、前記ステータ巻線の要素がそれぞれの前記スロットに配置された状態で、前記歯に沿った前記スロットの少なくとも一部を横切る方向に延在する凸部を反対側の端部に作製するように、前記シートメタルのコアの材料を、前記シートメタルのコアの前記外壁の高さにある少なくとも1つのボスの圧力によって、外側ツールを用いて変形させることからなる後のステップが実施される。
【0022】
前記変形ステップは、特に、少なくとも2つのステップに分割され得る。ツール、また、具体的には、内側ツールを前記歯の前記自由端部に接して配置し、外側ツールを前記外側径方向表面の前記周囲に配置するステップと、前記外側ツールを前記シートメタルのコアの前記外壁に対して、固定されたままの前記内側ツールの方向に移動するステップである。この外側ツールの固定された前記内側ツールへの移動により、前記ステータの前記外側径方向表面から前記ステータの前記内側径方向表面への材料の変位が可能とされ、これにより、前記歯の変形が生じ、こうして前記ステータの前記巻線要素を最終的に固定し得る凸部が作製される。
【0023】
前記単数又は複数のステータ巻線要素を前記ステータの前記本体内に挿入する前に、電気的絶縁部材が前記ステータの本体に適用されることも可能である。
【0024】
当該ステータは、例えば、回転電気機械に設置され得る。
【0025】
本発明の他の特徴、詳細、及び利点が、以下に表示を目的としてなされる詳細な説明を、以下の図面に記載の本発明の種々の例示的な実施形態を参照しつつ読むことでより明瞭になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】従来の実施形態による少なくとも1つのステータを備える回転電気機械を示す図。
【
図2】従来の実施形態によるステータ本体の斜視図。
【
図3】本発明によるステータを、ステータの回転軸に垂直な平面において示す、自由端部に凸部の形成を生じさせる歯の変形方法の実施後の概略部分図。
【
図4】本発明のステータ本体を、
図3と同様に、ステータの回転軸に垂直な平面において示す部分概略図であって、特にステータの外側径方向表面に歯の径方向延長部において配設されたボスを示す図。
【
図5】自由端部に凸部の形成を生じさせる歯の変形方法の第1ステップを概略的に示す図。
【
図6】自由端部に凸部の形成を生じさせる歯の変形方法の第1ステップを概略的に示す図。
【
図7】自由端部に凸部の形成を生じさせる歯の変形方法の第2ステップを概略的に示す図。
【
図9】自由端部に凸部の形成を生じさせる歯の変形方法の実施後の、ステータの外側径方向面の斜視図。
【
図10】自由端部に凸部の形成を生じさせる歯の変形方法の実施後の、ステータの内側径方向面の斜視図。
【
図11】自由端部に凸部の形成を生じさせる歯の変形方法とは異なる2つの実施形態の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に説明する実施形態は制限的なものでは全くない。具体的には、以下に記載の特徴のうちの1つの選択肢であって、他の記載された特徴とは別個の選択肢のみを備える本発明の代替例を、特徴の当該選択肢が技術的利点を授与する、又は本発明を従来技術から区別することが十分である場合に、想定可能である。
【0028】
図1は、回転電気機械1であって、機械のケースと一体のステータ2と、ステータ2の内部に配置されて駆動シャフト1bを支持する内側ロータ1aと、を備える回転電気機械1を概略的に示す。ステータ2は、ステータ本体20と、ステータ巻線22とを備え、永久磁石、又は図示のような、本例においてロータと関連付けられた界磁巻線と相互作用するように構成され、電気的に接続されている。
【0029】
図2は、従来の実施形態によるステータ本体20の斜視図である。ステータ本体20は、回転軸Xを持つ環状形状を有している。ステータ本体20は、内側径方向表面3と、外側径方向表面4とを備える。外側径方向表面4は、連続的で一定的且つ平滑な形状を有するのに対し、内側径方向表面3は、スロット5を有する不連続的な形状を有する。スロット5は、内側径方向表面3から径方向にステータ本体20の厚さにおいて延在している。これにより、ステータ本体20の内側径方向表面3において、これらのスロット5と、スロット5間に残る材料により形成された歯6とが交互配置されている。内側径方向表面3は、それ故、歯6の自由端部7とスロット5との交互配置によって規定される。各歯6を取り囲む2つの相次ぐスロット5の間の寸法が、歯の厚さとして定義される。
【0030】
図3に記載の本発明のステータ2を説明する。特に、スロット5に配置されて歯に巻き回されたステータ巻線22が図示される。ステータ2は、ステータ本体20と、ステータ本体20に形成された歯6に巻き回されたステータ巻線22とから構成される。以下により詳細に説明するように、本発明は、スロット5を横切る方向に延在する凸部10であって、ステータ巻線22がスロット5から離脱することを抑制する凸部10を作製するように歯6を変形することを目的とする。これらの歯6の変形方法は、スロット5に配置されるステータ巻線22のための、歯6の一回のみの変形が、ステータ巻線22のステータ本体20における固定を可能とするようなものであることが理解される。
【0031】
図3は、歯の自由端部7に、すなわち、ステータ2の内側径方向表面3に配設されたそれらの端部に、凸部10の形成を生じさせる歯6の変形方法を実施した後の本発明のステータ2を示す。同図において、ステータ2の外側径方向表面4に歯6の径方向延長部において配置された押し潰されたボス11が見られる。「歯の径方向延長部」とは、歯の延長部において、外側径方向表面4に向かって径方向に延在するステータの材料を意味するものとして理解される。ボス11は、尖頭状で当該径方向延長部の端部にある、ステータの張出部を形成する。
【0032】
下記のように、これらのボス11を押し潰すことにより、外側径方向表面4の材料が内側径方向表面3に向かって移動する。そして、以下に説明する好適なツールを更に使用することで、歯6の自由端部7に凸部10を形成することが可能とされる。図示のように、これらの凸部10は、歯6から突出するように配設され、これにより、ある凸部10は、対応する歯に直接隣接するスロット5を横切る方向に少なくとも部分的に延在する。「少なくとも部分的」とは、形成された凸部10が、スロット5の全体を横切る方向に延在し得るし、又、当該スロット5の一部を横切る方向に延在し得るが、常にステータ巻線22がステータ本体20のスロット5に少なくとも十分に固定され得るように延在し得ることを意味するものとして理解される。したがって、このステータ巻線22は、ステータ2の内部に向かって移動することはできず、これにより、ステータ2の中心に配置されたロータの回転が妨げられることはない。
【0033】
ステータ巻線22がスロット5に保持されている間に適切なツールを使用して変形されるステータ本体20について、ステータ本体20の最初の形状は、電気モータが作動中のステータ2におけるステータ本体20の形状とは異なることが理解される。ステータ本体20の当初形状は、実際に、シートメタルのコアの外側径方向表面4がより目立つボスを有する点、及びその内側径方向表面3が歯6にスロット5を横切る方向に延在する凸部10を有しない点において、その最終形状とは異なっている。
【0034】
一実施形態によれば、本発明のステータ本体20は、シートメタルのコアを形成するシートメタルの積層体から実現され得る。このシートメタルのコアは、次いで、下記のツールを用いて変形される。
【0035】
材料の変形前の元の形状(
図4)におけるステータ本体20の形成に寄与するシートメタルのコアの形状、及び材料変形(
図5乃至7及び11)からステータ2を得ることを可能にする製造ステップをより詳細に説明する。
【0036】
図4は、内側径方向表面3からシートメタル内に窪んだスロット5によって隣接する歯から離間している複数の歯6が示される、シートメタルの一部概略図である。シートメタルの積層体は、各シートメタルの歯6とスロット5とを重ね合わせて、軸方向に、すなわちステータ2の回転軸Xに対して平行に延在する歯とスロットとを形成するようにして実現される。歯6の径方向延長部は、ステータ本体20の外側径方向表面4から突出するように配設された一連のボス11を含む。以下に説明するように、これらのボス11は、外側径方向表面4の材料が、内側径方向表面3に向かって移動し、それぞれ径方向に延長する歯6の自由端部7の変形を生じさせることを可能とする。
【0037】
全ての歯6は、ヨークと称されるステータ本体20の外縁部に接合される。各歯6は、その自由端部7において最小厚さを、そして、そのヨークとの接合部において最大厚さを有している。これを台形歯と称する。代替的な実施形態において、各歯は、その厚さが全長に亘って一定である矩形形状を有し得る。これらのボス11は、平坦なドームの形状を有し、ステータ2の径方向軸Rに沿って計測されるそれらの高さは、ステータ本体20のヨークの外縁に亘って計測されるそれらの幅より小さい。更に、これらのボス11の前記幅は、それが存在する歯6の径方向延長部において、歯6の最大厚さを超えない。
【0038】
有利には、これらのボス11が湾曲形状であるため、それらを押し潰すことが容易である一方、それらのサイズにより、材料の制御された変位、及び各ボス11に対する各歯6における中心合わせが保証される。ステータ本体20の変形を可能とする方法を実施するために、特に
図5及び7に示す2つのツール:ステータ2の外側径方向表面4に当接するように構成された外側ツール12、及びステータ2の内側径方向表面3に支持されるように構成された内側ツール13が必要である。
【0039】
本方法は、ステータ巻線のワイヤをステータ本体のスロットのうちの全部又は一部に配設しつつツールを位置合わせ(配置)するステップと、2つのツールのうちの一方を他方に近付けることによってステータ本体20をプレスするステップとを含む少なくとも2つの相次ぐステップを備える。これら2つのステップを以下に詳細に説明するとともに
図5乃至8に示す。
【0040】
図5及び6は、ツールを位置合わせするステップを示す。内側ツール13が、ステータ2の歯6の自由端部7に接触するように配置される。この内側ツール13は、
図6に示す尖頭部14を有しており、これを歯6の各自由端部7に接触するように位置付ける。好適には、材料の変位によって形成される凸部10の対称的な分散配置を得るように、これらの尖頭部を歯6の自由端部7の表面に対して中心に配置する。
【0041】
内側ツール13は湾曲形状を有し得るため、歯6の全ての自由端部7に同時に当接する。このように、内側ツール13の位置合わせをするステップは一回だけで実施され、こうしてこの内側ツール13は、本方法の他のステップ中ずっと固定され続ける。
【0042】
更に、この内側ツール13を配置することで、上述の方法を実施する前に、ステータ本体20に巻線要素22を最初に一時的に固定することが可能となる。
【0043】
一方、外側ツール12は、
図5に示すようにステータ2の外側径方向表面4の周囲にボス11に面して配置される。本実施形態における図示の配置ステップにおいて、内側ツールはステータ本体に接して配置されるのに対し、外側ツールは当該ステータ本体から離間して配置されることが理解される。外側ツールを内側ツールに近付けることにより、外側ツールが、ステータ本体に、最初にこのステータ本体から突出するボスに接触することが可能となる。したがって、当該方法を実施する場合、この外側ツール12がボス11を押し潰し、外側径方向表面4の材料が内側径方向表面3に向かって移動することが可能となり、歯6の自由端部7に凸部10が作製されることとなる。
【0044】
図7は、圧力が、ステータ本体20に、外側ツール12を用いて、外側径方向表面4から内側径方向表面3に向かって径方向軸Rに沿って印加される、本方法の当該ステップを概略的に示す。
【0045】
内側ツール13が固定された状態でステータ2は径方向に保持され得るため、ボス11の材料は、ステータ本体20の内部に向かって、外側ツール12によって印加される圧力の移動方向に移動する。ボス11は外側ツール12によって押し潰され、外側径方向表面4の材料の内側径方向表面3に向かう変位によって、ビードの形状を取る凸部10が歯6の自由端部7に作製される。
【0046】
同図は、これらの凸部10によって、ステータ巻線22が効果的にスロット5内に固定されることが可能となるため、ステータ巻線が外れたりステータ2の中心に配置されたロータの回転を妨害したりすることが抑制されることを示す。
【0047】
図8は、上述の歯の変形方法が実施された後の歯6の自由端部7を示す。同図は、点線によって、材料の変位により変形される前の、歯の一定の自由端部7を示す。したがって、歯の変形の効果、すなわち、歯6の自由端部7に余剰材料が出現することが看取され得る。自由端部7の中心に、内側ツール13に接触した歯6の全表面に亘る溝16が形成されていることが観察され得る。この溝16は、歯6の自由端部7に対して尖頭部14により印加される圧力の結果として形成される。他の実施形態によれば、変形前に、歯に当該溝16を予め形成することも可能である。これにより、予め形成された溝16と内側ツール13に存在する尖頭部14とを向き合わせて配設することにより、内側ツール13の位置合わせが容易とされ得る。
【0048】
一方、凸部10は、実質的に対称的に、歯6の前記自由端部7の両側に分散配置される。前面23及び後面24が、凸部10に観察される。前面23は、内側ツール13の形状を取り、後面24は、その湾曲が内側径方向表面3の材料の外側径方向表面4に向かう縮小によって作製されたものである。
【0049】
ここでは図示しない代替的な実施形態において、歯6を取り囲むスロット7のうちの1つに嵌合するビードであって、歯6の側における材料の使用を省くビードを有する内側ツール13が想定され得ることが理解される。これにより、歯6の変形後に得られる材料の変位が片側だけになる。
【0050】
ボス11は、外側径方向表面4の材料の内側径方向表面3への変位において最初に押し潰されるが、所望の固定のタイプに応じて複数のレベルで配置され得る。複数のパラメータ:各歯6に面するボス11の個数、ボス11が各歯6に面して延在するシートメタルの個数、ボス11が対面配置される歯6の個数、及びこれらのボス11を作製するのに使用される材料の量、が変更され得る。
【0051】
最初の配設工程は、ボス11をステータ本体20の外側径方向表面4の全体に、すなわち、その軸方向寸法の全部に、且つ各歯6に面して配置することからなる。この配設工程が、ステータ本体のスロット内にステータ巻線22を固定する最高レベルを有する場合、より廉価な他のタイプの配設工程であって、材料においてそれほど費用のかからず、且つ製造においてより軽量で安価な配設工程が実施され得ることが理解される。
【0052】
特に、ボス11は、全高に亘って、すなわち、ステータ本体の軸方向寸法に亘って延在せずに、所定数のシートメタルに配置され得ることが可能である。したがって、複数のボス11が各歯6に面してステータ2の軸方向に沿って互いに配設され得る実施形態であって、各ボス11が所定数のシートメタル上に配置される実施形態が考えられる。このシステムは、ステータ2を製造するために使用される材料の量を相当に削減しつつも、上述の実施形態と同等の固定レベルを呈することができる。
【0053】
ボス11を2つの面する歯6のうちの1つのみに配置することも、完全に可能である。各ボス11により、変形した歯6の各隣接するスロット5に延在する凸部10が作製されることが可能となる。このような配置により、凸部10は全てのスロット5を横切る方向に少なくとも部分的に延在する一方、ボス11の作製に使用される材料の量は、上述の2つの実施形態に比較して少なくとも半減する。
【0054】
図9及び10に示す、上述の代替例の組合せからなる特定の実施形態によれば、ボス11を外側径方向表面4上に互い違いとなるパターンにおいて作製することを選択することができる。
図9に示すように、ボスは、2つのボス11a及び11cが同一の第1の歯6に軸方向に面して配設され、次いで1つだけのボス11cが次の歯6に面した状態で、交互に配置される。上述の方法の実施後に形成された凸部10が
図10に示され、10a乃至10cの符号が付されている。ボス11を示すのに使用した各文字が、対応する凸部10を示すように再び使用されている。
【0055】
本実施形態により、ステータ2の対向する軸方向端部における固定だけでなく中心における固定が各スロットに対して達成され、これにより凸部10を作製するのに使用される材料の量が削減される。
【0056】
また、ボス11は異なる厚さを有し得る。選択されたボス11の厚さ、したがって最初に想定されるステータ本体20の材料の余剰量にしたがって、材料の変位後に当該ボス11の延長部に位置する歯6の自由端部7に得られる凸部10はより大きい、又はより小さい。これにより、スロット5の充填レベル、ひいてはステータ本体20内部の巻線要素22の固定レベルを調節することができる。
【0057】
特に
図11を参照して、ステータ本体にステータ巻線を固定することを可能とする本発明のステータを得るためのステータ本体の変形方法について更に詳しく説明する。
図11は、凸部10が歯の自由端部7に形成される同じ実施形態とは異なる2つの実施形態を概略的に示す。
【0058】
第1実施形態によれば、ステータ巻線要素22は、最初にステータ本体20の歯6の周囲に巻き回される。その後、丸みを帯びた内側ツール13が、歯6の自由端部7においてステータ本体20に接しつつ、内側径方向表面3全体を覆うように配置される。次いで、外側ツール12が、ステータ本体20の外側径方向表面4から離間して配置される。そして、この外側ツール12を軸方向軸Rに沿って固定された内側ツール13に向けて移動することにより、上述のような材料の変形を可能とするように、圧力が前記外側ツール12の移動方向においてステータ本体20に印加される。本例において、外側ツール12は、外側径方向表面4の全てを覆っていないので、外側ツール12による径方向軸Rに沿った圧力の印加を複数回繰り返す必要がある。これにより、各圧力印加の間に、
図11に示すように外側ツール12が回転軸Aに沿って移動することが保証される。同図は単なる一概略図であり、本
図11に示すものに反して、2つより多いボス11が同時に覆われ得るように外側ツール12を設計することも完全に可能であることを理解されたい。
【0059】
第1ステップが上述の実施形態のものと同一である第2実施形態によれば、外側ツール12ではなく内側ツール13について、ステータ2を回転軸Bに沿って移動させる。同じく、同図は単なる一概略図であり、本
図11に示すものに反して、2つより多いボス11が同時に覆われ得るように外側ツール12を設計することも完全に可能であることを理解されたい。
【0060】
選択される実施形態がいずれであっても、凸部10は必要に応じて形成され、
図11には外側ツール12によって押し潰されたボス11についてのみ示す。
【0061】
外側ツール12の接線方向の寸法は、材料の径方向移動を保証するためにボスの中心に位置合わせされるその適応性と、実施すべき多数の工程との折衷(妥協)を提供しなければならないことが理解される。実際に、長すぎる外側ツール12は、その丸みを帯びた形状を理由として、ステータ2の外側径方向表面4に対する不均一な圧力を生成しがちであり、そのために凸部10も不均一になって、巻線要素22を最適な態様で固定することができなくなるおそれがある。これに対し、短すぎる外側要素12は、ボス11に対する正確な位置合わせを可能とするものであるが、本方法を実施する担当の技術者に対して多すぎる作業工程数を発生させるであろう。したがって、当該外側ツール12について、このような2つの制約の間の折衷を提供する寸法を見出すことが重要である。
【0062】
従って、外側径方向表面4の材料の内側径方向表面3への変位による上述の方法により、ステータ本体20に配置された巻線要素22の固定を保証する凸部10を得ることができる。こうして、前記ステータ本体20に固定されたステータ巻線22は、もはや外れることがなく、したがって、ステータ2に配置されたロータの回転を妨げることもない。
【0063】
更に、本方法において、ステータ巻線要素22を変形していないステータ本体20に配置した後、変形の手段を一度実施するだけでステータ巻線22を固定することができる。したがって、それらは、スロット5に挿入する障害物を発生させることなく固定される。
【0064】
この利点は、ステータ本体20の特別な設計により得られる。これは、その当初の形状において、余剰材料のエリアを有する。これにより、所望のエリアへの材料の変形によって、ステータ巻線要素22が固定されることを保証する凸部10の作製が可能となる。この設計により、ステータ巻線要素22を、変形方法を実施する前の変形されていないステータ本体20の歯6に巻き回すことが可能となり、したがって、前記ステータ巻線要素22が固定されることが可能となる。こうして、ステータ巻線要素22は、内部ロータの回転を妨げることなく、挿入のために変形したり損傷を受けたりすることもなく、ステータ本体20にしっかりと保持される。更に、ステータ本体20の当初形状は凸部を有しないので、スロット5の充填率が向上し、スロット5の幅に一致する幅を有する巻線22の挿入が可能となる。また、回転電気機械の操作中に、変形により作製された凸部10は、従来技術による回転電気機械の歯の根元の代理を務めつつ、前記機械の磁気性能を向上させることが可能である。
【0065】
本発明は、上記の及び図示の手段や構成に制限されるものではなく、同等の全ての手段又は構成及びこのような手段の技術的に動作可能なあらゆる組合せをもカバーする。特に、本方法を実施するステップ、及びボス11を積層されたシートメタルのコアの外壁に配置するステップは、それらが本文書に記載の機能を果たす限り、本発明を損なわずに変更され得る。