(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】ステータ構造およびレゾルバ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/16 20060101AFI20220328BHJP
H02K 1/14 20060101ALI20220328BHJP
H02K 24/00 20060101ALI20220328BHJP
G01D 5/20 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
H02K1/16 Z
H02K1/14 Z
H02K24/00
G01D5/20 110H
(21)【出願番号】P 2018024978
(22)【出願日】2018-02-15
【審査請求日】2021-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2017025894
(32)【優先日】2017-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 紘志
(72)【発明者】
【氏名】中川 隆
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-064409(JP,A)
【文献】特開2015-104241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00- 1/16
H02K 1/18- 1/26
H02K 1/28- 1/34
H02K 24/00
G01D 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の本体部と、前記本体部の内周側から延在し前記本体部の周方向に沿って配列された複数のティース部とを有するステータコアを備え、
前記本体部は、
当該本体部の周方向に沿って円弧状にそれぞれ形成された複数の第1の長孔と、
前記複数の第1の長孔のそれぞれに対応して設けられ、前記周方向に沿って円弧状に形成された複数の第2の長孔と、
前記周方向で対向する2つの前記第1の長孔間に、前記本体部の外周から当該本体部の径方向に形成された複数の切欠部と、
を有し、
前記複数の第1の長孔の少なくとも1つは、前記ステータコアを固定するボルトが挿通されるボルト挿通孔であり、
前記各第2の長孔は、対応する前記第1の長孔と前記ティース部との間に、対応する前記第1の長孔と間隔を空けて対向配置され、
前記本体部の
前記径方向における中心に対する前記第2の長孔の開口角は、前記中心に対する前記
第2の長孔に対応する前記第1の長孔の開口角以上
であり、かつ、対向する前記切欠部間の領域の両端部のそれぞれと前記径方向における前記中心とを結ぶ2つの直線がなす角以上である、
ステータ構造。
【請求項2】
前記第2の長孔は、
前記ボルトが前記第1の長孔に挿通された状態で前記ボルトの頭部が前記径方向と直交する方向から見た場合にオーバラップしない位置に配置される、
請求項1に記載のステータ構造。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のステータ構造を備えたことを特徴とするレゾルバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ構造およびレゾルバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータや発電機などの回転電機の回転角を検出するレゾルバが知られている。レゾルバは、例えば、環状に形成された本体部の内周側から中心に向かって延在する複数のティース部を備えたステータコアと、ステータコアの内側においてステータのティース部に対向配置されるロータとを備える。ティース部にはインシュレータを介して巻線が巻回されており、かかる巻線は、外部から励磁電流が供給される励磁巻線と、ロータの回転角度に応じて2相の信号を出力する2つの出力巻線とで構成されている。
【0003】
レゾルバの回転角検出対象である回転電機の巻線に電流が流れた場合、回転電機の巻線からの漏れ磁束がステータの出力巻線に入り込むことで、かかる出力巻線から出力される信号の波形に漏れ磁束がノイズ成分として重畳しレゾルバの角度検出精度が低下するおそれがある。そこで、特許文献1において、ステータのうち環状に形成された本体部における外周側の領域と内周側の領域とにそれぞれ周方向に沿って複数の空隙が形成され、本体部の外周面側から進入した漏れ磁束を複数の空隙で遮断するレゾルバが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたステータは、本体部における外周側の空隙がボルト挿通孔として用いられており、かかる外周側の空隙に、例えば鉄材料によって形成されるボルトが挿通される。しかしながら、かかるステータにおいて、外周側の空隙における周方向の中央部は、本体部の径方向において、内周側の空隙と対向していない。そのため、かかる中央部にボルトが挿通された場合、本体部の外周面側から進入した漏れ磁束がボルトおよび内周側の空隙間の領域を通じてティース部に巻回された巻線に入り込んでしまい、レゾルバの角度検出精度が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、外部からの磁束に起因する角度検出精度の低下を抑制することができるステータ構造およびレゾルバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るステータ構造は、環状の本体部と、前記本体部の内周側または外周側からそれぞれ延在し前記本体部の周方向に沿って配列された複数のティース部とを有するステータコアを備える。前記本体部は、当該本体部の周方向に沿って円弧状にそれぞれ形成された複数の第1の長孔と、前記複数の第1の長孔のそれぞれに対応して設けられ、前記周方向に沿って円弧状に形成された複数の第2の長孔と、前記周方向で対向する2つの前記第1の長孔間に、前記本体部の外周から当該本体部の径方向に形成された複数の切欠部と、を有する。前記複数の第1の長孔の少なくとも1つは、前記ステータコアを固定するボルトが挿通されるボルト挿通孔である。前記各第2の長孔は、対応する前記第1の長孔と前記ティース部との間に、対応する前記第1の長孔と間隔を空けて対向配置される。前記本体部の前記径方向における中心に対する前記第2の長孔の開口角は、前記中心に対する前記第2の長孔に対応する前記第1の長孔の開口角以上であり、かつ、対向する前記切欠部間の領域の両端部のそれぞれと前記径方向における前記中心とを結ぶ2つの直線がなす角以上である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外部からの磁束に起因する角度検出精度の低下を抑制することができるステータ構造およびレゾルバを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るレゾルバの模式的平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すレゾルバのモータへの取り付け状態を示す模式的断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すレゾルバのステータの模式的斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すステータコアの模式的平面図である。
【
図5】
図5は、ステータの径方向における中心に対する第1の長孔の開口角と第2の長孔の開口角との関係を示す図である。
【
図6】
図6は、ステータの外周面側から進入する磁束と第1および第2の長孔との関係例を模式的に表した図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係るステータコアの他の構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係るステータコアの他の構成例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係るレゾルバの模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して本発明に係るステータ構造およびレゾルバの実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るレゾルバの模式的平面図であり、
図2は、第1の実施形態に係るレゾルバの回転電機への取り付け状態を示す模式的断面図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係るレゾルバ1は、ロータ10と、ステータ20とを備えるVR(Variable Reluctance)型レゾルバである。
図1に示すレゾルバ1は、インナーロータ型のレゾルバであり、ロータ10がステータ20の内側に配置されている。
【0012】
ロータ10は、
図2に示すように、回転電機80の出力軸81に固定されており、出力軸81の回転に伴って回転する。回転電機80は、例えば、交流電動機、交流発電機、または交流電動発電機であり、出力軸81と、出力軸81に固定されたロータ82と、巻線83を有するステータ84とを備える。
【0013】
回転電機80が交流電動機である場合、ステータ84の巻線83は、励磁巻線であり、かかる励磁巻線に励磁電流が流れることによって、回転電機80のロータ82が回転し、ロータ82の回転に伴って出力軸81が回転する。以下において、ロータ10の回転軸の延伸方向を「軸方向」と記載し、かかる軸方向は、ロータ10に接続された回転電機80の出力軸81の延伸方向と一致する。また、軸方向に直交する方向を「径方向」と記載し、かかる径方向は、回転電機80の出力軸81の延伸方向と直交する方向と一致する。
【0014】
レゾルバ1におけるロータ10の外周面は、径方向に凹凸した非円形状に形成されている。
図1に示すロータ10は、外周面に2箇所の凸部11を有しており、ロータ10の軸倍角が2Xの場合を示している。なお、ロータ10の軸倍角は、1Xであってもよく、3X以上であってもよい。ロータ10は、複数枚のコアを有しており、かかる複数枚のコアが軸方向に積層して構成される。コアは、ケイ素鋼板などのように軟磁性材料から形成されたプレートをプレス加工して製作される。
【0015】
図1に示すように、ステータ20は、ステータコア21と、インシュレータ22と、複数のステータ巻線23とを備える。ステータコア21、インシュレータ22および複数のステータ巻線23は、ステータ構造を構成している。ステータコア21は、ロータ10と同様に、複数枚のコアを有しており、かかる複数枚のコアが軸方向に積層して構成される。コアは、ケイ素鋼板などのように軟磁性材料から形成されたプレートをプレス加工して製作される。
【0016】
ステータコア21は、環状のステータ本体部31と、かかるステータ本体部31の内周側からステータ本体部31の径方向中心に向けてそれぞれ延在する複数のティース部32とを有する。
図1に示すステータコア21は16個のティース部32を有するが、ティース部32の数は
図1に示す数に限定されない。複数のティース部32は、ステータ本体部31の周方向に沿って等角度間隔で配置される。なお、ステータ本体部31の構成については後で詳述する。
【0017】
インシュレータ22は、例えば、絶縁性材料である樹脂から構成されており、インサートモールド成形によってステータコア21の表面のうち複数のティース部32を含む一部の領域上に形成される。また、インシュレータ22には、ステータ本体部31における径方向外側に延在する端子台部50が一体成形によって形成される。
【0018】
図3は、第1の実施形態に係るレゾルバ1のステータ20の模式的斜視図であり、後述するステータ巻線23が取り付けられる前の状態を示している。
図3に示すように、端子台部50の上面には導電材からなる複数の端子ピン51の一端部52が軸方向に立設して設けられる。各端子ピン51は、L字状に形成されており、各端子ピン51の一端部52には、ステータ巻線23の端線が絡げて接続され、各端子ピン51の他端部53には、不図示のリード線が接続される。端子台部50は、
図1および
図3の構成に限定されず、コネクタハウジングを形成した構成であってもよい。
【0019】
なお、インシュレータ22は、ステータコア21の軸方向において2つに分割して形成されていてもよい。すなわち、インシュレータ22は、ステータコア21の軸方向における一方側を覆う第1のインシュレータとステータコア21の軸方向における他方側を覆う第2のインシュレータとにより構成されていてもよい。これら第1および第2のインシュレータは、樹脂の射出成形によって形成することができる。
【0020】
図1に示すように、複数のステータ巻線23は、インシュレータ22を介して複数のティース部32にそれぞれ巻回される。かかる複数のステータ巻線23には、複数の励磁巻線と、複数の出力巻線とが含まれる。励磁巻線の端線は、他端部53が外部からの励磁電流を伝送する不図示のリード線に接続された端子ピン51の一端部52に接続されており、励磁巻線には外部からリード線を通じて励磁電流が供給される。
【0021】
複数の出力巻線は、ロータ10の回転に伴ってsin相の信号を出力するsin相出力巻線と、sin信号と90度位相が異なったcos相の信号を出力するcos相出力巻線とから構成される。各出力巻線の端線は、他端部53が端子ピン51に接続されており、sin相の信号およびcos相の信号が端子ピン51の他端部53に接続された不図示のリード線を通じて外部に出力される。
【0022】
次に、レゾルバ1のステータ20におけるステータ本体部31の構成について説明する。ステータ本体部31は、
図1および
図3に示すように、複数の第1の長孔41と、複数の第2の長孔42と、複数の切欠部43とを備える。複数の第1の長孔41と複数の第2の長孔42とは互いに同心円上に形成される。
【0023】
切欠部43は、ステータ本体部31の外周面に形成され、周方向に対向する第1の長孔41間に位置する。かかる切欠部43には、図示しない位置決めピンが挿通される。位置決めピンは、例えば、回転電機80のハウジング85の内部に形成され、かかる位置決めピンが切欠部43に挿通されることで、回転電機80のハウジング85に対するレゾルバ1の位置決めが行われる。
【0024】
図4は、第1の実施形態に係るステータコア21の模式的平面図である。
図4に示す例では、説明の便宜上、複数の第1の長孔41を第1の長孔41a~41hとして表し、複数の第2の長孔42を第2の長孔42a~42hとして表している。なお、
図1、
図3および
図4に示すステータ20では、第1の長孔41の数および第2の長孔42の数は、それぞれ8つであるが、第1の長孔41の数および第2の長孔42の数は、それぞれ7つ以下であってもよく、それぞれ9つ以上であってもよい。
【0025】
各第1の長孔41は、ステータ本体部31の周方向に沿って円弧状に形成される。複数の第1の長孔41は、ステータ本体部31の中心O(
図5参照)に対して互いに回転対称に形成され、ステータ本体部31の周方向に沿って等角度間隔で配置される。第1の長孔41は、ステータ20を固定するためのボルトを挿通するための挿通孔として用いることができ、
図2に示す例では、ステータ20がボルト90によって回転電機80のハウジング85に固定される。ボルト90は、例えば、鉄材料によって形成される。なお、ボルト90が挿通される第1の長孔41は、複数の第1の長孔41のうち一部であるが、すべての第1の長孔41にボルト90が挿通されてもよい。
【0026】
各第2の長孔42は、ステータ本体部31の周方向に沿って円弧状に形成される。複数の第2の長孔42は、ステータ本体部31の中心O(
図5参照)に対して互いに回転対称に形成され、ステータ本体部31の周方向に沿って等角度間隔で配置される。複数の第2の長孔42は、複数の第1の長孔41よりも内周側に形成される。
【0027】
複数の第2の長孔42は、複数の第1の長孔41のそれぞれに対応して設けられており、各第2の長孔42は、対応する第1の長孔41とティース部32との間に、対応する第1の長孔41と間隔を空けて対向配置される。例えば、
図4に示すように、第2の長孔42aは、第1の長孔41aに対応して設けられ、対応する第1の長孔41aとティース部32との間に、対応する第1の長孔41aと間隔を空けて対向配置される。また、第1の長孔41b~41hと第2の長孔42b~42hとの関係も、第1の長孔41aと第2の長孔42aとの関係と同様である。
【0028】
図5は、ステータ本体部31の径方向における中心Oに対する第1の長孔41aの開口角θ
Aと第2の長孔42aの開口角θ
Bとの関係を示す図である。
図5に示すように、ステータ本体部31の径方向における中心Oに対する第2の長孔42aの開口角θ
Bは、第2の長孔42aに対応する第1の長孔41aの中心Oに対する開口角θ
Aよりも大きい。
【0029】
なお、
図5に示す例では、より好ましい例として、θ
A<θ
Bとしているが、θ
A=θ
Bとなるように第1の長孔41aと第2の長孔42aとを形成してもよい。このように、θ
A≦θ
Bとすることで、第1の長孔41aの周方向における両端部と中心Oとを結ぶ2つの直線が、第2の長孔42aの周方向における両端部と中心Oとを結ぶ直線で挟まれる領域に含まれるように第1および第2の長孔41a,42aが形成される。また、第1の長孔41b~41hと第2の長孔42b~42hとの関係も、第1の長孔41aと第2の長孔42aとの関係と同様である。
【0030】
図2に示す回転電機80の巻線83に励磁電流が流れた場合、回転電機80の巻線83からの漏れ磁束がレゾルバ1におけるステータ20の外周面側から進入する場合がある。ステータ20の外周面側から進入した漏れ磁束の一部が、ステータ20の出力巻線に入り込むと、かかる出力巻線から出力される信号にノイズ成分が重畳してレゾルバ1の角度検出精度が低下するおそれがある。
【0031】
そこで、本実施形態に係るレゾルバ1のステータ20には、上述したように、第1の長孔41とティース部32との間に、第1の長孔41に対応して第2の長孔42が設けられ、θ
A≦θ
Bとなるように第1の長孔41aと第2の長孔42aとが形成される。
図6は、ステータ20の外周面側から進入する漏れ磁束と第1および第2の長孔41a,42aとの関係例を模式的に表した図である。
【0032】
図6に示すように、第1の長孔41aのうちボルト90が挿通されない領域では、第1の長孔41aによって漏れ磁束のティース部32への進入が抑制される。また、第1の長孔41aのうちボルト90が挿通されている領域では、ボルト90を通してステータ本体部31の内周側へ流れ込んだ漏れ磁束のティース部32への進入が第2の長孔42aによって抑制される。そのため、ステータ20の出力巻線から出力される信号に回転電機80の漏れ磁束に起因するノイズ成分が重畳することが抑制され、レゾルバ1の角度検出精度の低下を抑制できる。
【0033】
上述したように、複数の第1の長孔41の少なくとも一つにはボルト90が挿入され、ボルト90によってステータ20が固定される。ボルト90によってステータ20が固定された場合、ボルト90の締結力によってステータコア21に歪みが生じることがある。本実施形態のステータ20は、第1の長孔41に対向して第2の長孔42が形成されるため、かかる第2の長孔42によって歪みがティース部32の外周側の領域に伝わることが抑制され、ティース部32の外周側の領域に歪みが生じることが抑制される。
【0034】
ティース部32の外周側の領域は、ティース部32に巻回したステータ巻線23によって生じる磁束が流れる磁路を形成するが、上述したように第2の長孔42によりティース部32の外周側の領域に歪みが生じることが抑制される。そのため、ステータコア21の磁気特性が低下することが抑制され、レゾルバ1の角度検出精度の低下を防止することができる。
【0035】
また、
図6に示すように、第2の長孔42aは、ボルト90が第1の長孔41aに挿通された状態でボルト90の頭部が平面視においてオーバラップしない位置に配置される。すなわち、ボルト90が第1の長孔41aに挿通された状態で平面視(径方向と直交する軸方向から見た場合)においてボルト90の頭部が第2の長孔42aにオーバラップしないように、第1の長孔41aと第2の長孔42aとの間の距離D1が設定される。そのため、第2の長孔42aの径方向の距離分だけのエアギャップが確保され、レゾルバ1の角度検出精度の低下を精度よく抑制できる。このことは、第2の長孔42a以外の第2の長孔42についても同様である。
【0036】
なお、第2の長孔42は、上述の
図5等に示すものに限定されない。
図7および
図8は、第2の長孔42の他の構成例を示す図である。
図7に示す第2の長孔42aの開口角θ
Bは、周方向で対向する切欠部43間の領域の両端部のそれぞれと中心Oとを結ぶ線のなす角θ
C以上に形成される。これにより、周方向で対向する切欠部43間の領域の両端部と中心Oとを結ぶ2つの直線が、第2の長孔42aの周方向における両端部と中心Oとを結ぶ直線で挟まれる領域に含まれるように第2の長孔42aが形成される。
【0037】
図7に示す第2の長孔42aは、例えば、ステータ20の外周面側から進入した漏れ磁束が第1の長孔41aと切欠部43との間の領域を通じてティース部32の外周側の領域へ進入することを第2の長孔42aによってより抑制することができる。そのため、レゾルバ1の角度検出精度の低下を、より精度よく抑制できる。このことは、第2の長孔42a以外の第2の長孔42についても同様である。
【0038】
図8は、第1の実施形態に係るステータコア21の他の構成例を示す図であり、連結孔44が形成される点で、
図5に示すステータコア21と異なる。すなわち、
図8に示すステータコア21は、周方向で対向する2つの第2の長孔42間に連結孔44が形成されており、2つの第2の長孔42同士が連結孔44によって連結される。これにより、ステータ20の外周面側から進入した漏れ磁束が、2つの第2の長孔42間を通じてティース部32の外周側の領域へ進入することを連結孔44によって抑制することができる。そのため、レゾルバ1の角度検出精度の低下を、より精度よく抑制できる。
【0039】
以上のように、第1の実施形態に係るレゾルバ1は、ロータ10と、ステータ20とを備える。ステータ20は、環状のステータ本体部31(本体部の一例)と、ステータ本体部31の内周側からそれぞれ延在しステータ本体部31の周方向に沿って配列された複数のティース部32とを有するステータコア21とを備える。ステータ本体部31は、ステータ本体部31の周方向に沿って円弧状にそれぞれ形成された複数の第1の長孔41と、ステータ本体部31の周方向に沿って円弧状に形成された複数の第2の長孔42とを有する。複数の第2の長孔42は、複数の第1の長孔41のそれぞれに対応して設けられ、対応する第1の長孔41とティース部32との間に、対応する第1の長孔41と間隔を空けて対向配置される。そして、ステータ本体部31の径方向における中心Oに対する第2の長孔42の開口角θBは、第2の長孔42に対応する第1の長孔41の中心Oに対する開口角θA以上である。そのため、第1の長孔41にボルト90が挿通された場合であっても、ボルト90を介して回転電機80の漏れ磁束がティース部32へ進入することを第2の長孔42によって抑制でき、これにより、レゾルバ1の角度検出精度の低下を抑制できる。また、第1の長孔41にボルト90が挿通された場合であっても、第2の長孔42によってティース部32の外周側の領域に歪みが生じることを抑制することができる。
【0040】
また、複数の第1の長孔41の少なくとも1つは、ステータコア21を固定するボルト90が挿通されるボルト挿通孔であり、第2の長孔42は、ボルト90が第1の長孔41に挿通された場合にボルト90の頭部がステータ本体部31の径方向と直交する方向から見てオーバラップしない位置に配置される。これにより、第2の長孔42の径方向の距離分だけのエアギャップが確保され、レゾルバ1の角度検出精度の低下を精度よく抑制できる。
【0041】
また、ステータ本体部31は、周方向で対向する2つの第1の長孔41間に、外周から径方向の中心Oに向けて形成された複数の切欠部43を有する。ステータ本体部31の径方向における中心Oに対する第2の長孔42の開口角θBは、周方向で対向する切欠部43間の領域の両端部のそれぞれと中心Oとを結ぶ2つの線のなすθC以上である。これにより、ステータ20の外周面側から進入した漏れ磁束が第1の長孔41と切欠部43との間の領域を通じてティース部32の外周側の領域へ進入することを第2の長孔42aによってより抑制することができる。そのため、レゾルバ1の角度検出精度の低下を、より精度よく抑制できる。
【0042】
また、複数の第2の長孔42のうち周方向で対向する2つの第2の長孔42が連結孔44を介して連結される。これにより、2つの第2の長孔42間を通じてティース部32の外周側の領域へ漏れ磁束が進入することを連結孔44によってより抑制することができ、これにより、レゾルバ1の角度検出精度の低下を、より精度よく抑制できる。
【0043】
(第2の実施形態)
第1の実施形態に係るレゾルバ1は、インナーロータ型のレゾルバであるのに対し、第2の実施形態に係るレゾルバは、アウターロータ型のレゾルバである点で異なる。
【0044】
図9は、第2の実施形態に係るレゾルバ1Aの模式的平面図である。
図9に示すように、第2の実施形態に係るレゾルバ1Aは、ロータ10Aと、ステータ20Aとを備えるVR型レゾルバであり、ロータ10Aがステータ20Aの外側に配置される。
【0045】
ロータ10Aは、ロータ10と同様に、回転電機80の出力軸81に固定され、出力軸81の回転に伴って回転する。ロータ10Aの内周面は、径方向に凹凸した非円形状に形成される。
図9に示すレゾルバ1Aのロータ10Aは、内周面に3箇所の凸部11Aを有しており、ロータ10Aの軸倍角が3Xの場合を示しているが、ロータ10Aの軸倍角は、2X以下であってもよく、4X以上であってもよい。ロータ10Aは、ロータ10と同様に、複数枚のコアが軸方向に積層して構成される。
【0046】
ステータ20Aは、ステータコア21Aを備えており、ステータコア21と同様に、複数枚のコアが軸方向に積層して構成される。ステータコア21Aは、環状のステータ本体部31Aと、かかるステータ本体部31Aの外周側からステータ本体部31Aにおける径方向外側にそれぞれ延在する複数のティース部32Aとを有する。複数のティース部32Aは、ステータ本体部31Aの周方向に沿って等角度間隔で配置される。なお、ティース部32と同様に、ティース部32Aには不図示のインシュレータを介して不図示のステータ巻線が巻回される。本実施形態では、ステータコア21Aは14個のティース部32Aを有するが、ティース部32Aの数は
図9に示す数に限定されない。
【0047】
図10は、第2の実施形態に係るステータコア21Aの模式的平面図である。
図10に示すように、複数の第1の長孔41Aと、複数の第2の長孔42Aとを備える。各第1の長孔41Aは、ステータ本体部31Aの周方向に沿って円弧状に形成されており、複数の第1の長孔41Aは、ステータ本体部31Aの周方向に沿って等角度間隔で配置される。第1の長孔41Aは、第1の長孔41と同様に、ステータ20Aを固定するためのボルトを挿通するための挿通孔として用いることができる。
【0048】
各第2の長孔42Aは、ステータ本体部31Aの周方向に沿って円弧状に形成されており、複数の第2の長孔42Aは、ステータ本体部31Aの周方向に沿って等角度間隔で配置される。複数の第2の長孔42Aは、複数の第1の長孔41Aよりも外周側に形成される。
【0049】
複数の第2の長孔42Aは、複数の第1の長孔41Aのそれぞれに対応して設けられており、各第2の長孔42Aは、対応する第1の長孔41Aとティース部32Aとの間に、対応する第1の長孔41Aと間隔を空けて対向配置される。また、ステータ本体部31Aの径方向における中心Oに対する第2の長孔42Aの開口角θB1は、対応する第1の長孔41Aの中心Oに対する開口角θA1よりも大きい。
【0050】
なお、
図10に示す例では、より好ましい例として、θ
A1<θ
B1としているが、θ
A1=θ
B1となるように第1の長孔41Aと第2の長孔42Aとを形成してもよい。このように、θ
A1≦θ
B1とすることで、第1の長孔41Aの周方向における両端部と中心Oとを結ぶ2つの直線が、第2の長孔42Aの周方向における両端部と中心Oとを結ぶ直線で挟まれる領域に含まれるように第1および第2の長孔41A,42Aが形成される。
【0051】
レゾルバ1Aに隣接配置される回転電機の巻線に励磁電流が流れた場合、回転電機の巻線からの漏れ磁束の一部がレゾルバ1Aにおけるステータ20Aの内周面側から進入する場合がある。ステータ20Aの内周面側から進入した漏れ磁束の一部が、ステータ20Aの出力巻線に入り込むと、出力巻線から出力される信号にノイズ成分が重畳してレゾルバ1Aの角度検出精度が低下するおそれがある。
【0052】
そこで、本実施形態に係るレゾルバ1Aのステータ20Aには、上述したように、第1の長孔41Aとティース部32Aとの間に、第1の長孔41Aに対応して第2の長孔42Aが設けられ、θA1≦θB1となるように第1の長孔41Aと第2の長孔42Aとが形成される。そのため、第1の長孔41Aの任意の位置にボルトが挿通された場合であっても、ボルトを通して流れ込んだ漏れ磁束のティース部32Aへの進入が第2の長孔42Aによって抑制される。そのため、出力巻線から出力される信号に外部からの磁束に起因するノイズ成分が重畳することが抑制され、レゾルバ1Aの角度検出精度の低下を抑制できる。
【0053】
また、第1の長孔41Aに対向して第2の長孔42Aが形成されるため、かかる第2の長孔42Aによって歪みがティース部32Aの内周側の領域に伝わることが抑制され、ティース部32Aの内周側の領域に歪みが生じることが抑制される。そのため、ステータコア21Aの磁気特性が低下することが抑制され、レゾルバ1Aの角度検出精度の低下を防止することができる。
【0054】
また、第2の長孔42Aは、第2の長孔42と同様に、ボルトが第1の長孔41Aに挿通された状態で平面視においてボルトの頭部がオーバラップしない位置に配置される。これにより、第2の長孔42Aの径方向の距離分だけのエアギャップが確保され、レゾルバ1Aの角度検出精度の低下を精度よく抑制できる。
【0055】
なお、第2の実施形態に係るステータコア21Aにおいても、第1の実施形態に係るステータコア21と同様に、周方向で対向する2つの第2の長孔42A間に連結孔を設けて、2つの第2の長孔42A同士を連結孔によって連結してもよい。また、ステータ本体部31Aの内周側に、ステータ本体部31の切欠部43と同様の位置決め用の切欠部を設け、かかる切欠部と第2の長孔42Aとの関係を、切欠部43と第2の長孔42との関係(θB≧θC)と同様にすることもできる。
【0056】
また、
図9および
図10に示す例では、第1の長孔41Aおよび第2の長孔42Aの数とティース部32Aの数とが異なるが、第1の長孔41Aおよび第2の長孔42Aの数とティース部32Aの数とを同じにしてもよい。例えば、各ティース部32Aに対応させて第1の長孔41Aおよび第2の長孔42Aを1つずつ配置し、ティース部32Aの内周側の領域が径方向において第1の長孔41Aおよび第2の長孔42Aに対向するようにすることができる。なお、第1の実施形態に係るステータ20において、各ティース部32に対応させて第1の長孔41および第2の長孔42を1つずつ配置し、ティース部32の内周側の領域が径方向において第1の長孔41および第2の長孔42に対向するようにすることもできる。
【0057】
以上のように、第2の実施形態に係るステータ20Aは、環状のステータ本体部31A(本体部の一例)と、ステータ本体部31Aの外周側からそれぞれ延在しステータ本体部31Aの周方向に沿って配列された複数のティース部32Aとを有するステータコア21Aを備える。ステータ本体部31Aは、ステータ本体部31Aの周方向に沿って円弧状にそれぞれ形成された複数の第1の長孔41Aと、ステータ本体部31Aの周方向に沿って円弧状に形成された複数の第2の長孔42Aとを有する。複数の第2の長孔42Aは、複数の第1の長孔41Aのそれぞれに対応して設けられ、対応する第1の長孔41Aとティース部32Aとの間に対応する第1の長孔41Aと間隔を空けて対向配置される。そして、ステータ本体部31Aの径方向における中心Oに対する第2の長孔42Aの開口角θB1は、第2の長孔42Aに対応する第1の長孔41Aの中心Oに対する開口角θA1以上である。そのため、第1の長孔41Aにボルトが挿通された場合であっても、ボルトを介して回転電機の漏れ磁束がティース部32Aへ進入することを第2の長孔42Aによって抑制でき、これにより、レゾルバ1Aの角度検出精度の低下を抑制できる。また、第1の長孔41Aにボルトが挿通された場合であっても、第2の長孔42Aによってティース部32Aの外周側の領域に歪みが生じることを抑制することができる。
【0058】
なお、第1の長孔41,41Aの径方向(第1の長孔41,41Aの短手方向)の長さは、第2の長孔42,42Aの径方向(第2の長孔42,42Aの短手方向)の長さよりも大きいが、かかる例に限定されない。例えば、第1の長孔41,41Aの径方向の長さは、第2の長孔42,42Aの径方向の長さ以下であってもよい。また、上述した例では、レゾルバ1,1Aを固定するために、第1の長孔41,41Aにボルト90が挿通される例を説明したが、レゾルバ1,1Aの固定は、ボルト90以外の締結部材であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1,1A レゾルバ
10,10A ロータ
20,20A ステータ
21,21A ステータコア
22 インシュレータ
23 ステータ巻線
31,31A ステータ本体部(本体部の一例)
32,32A ティース部
41,41A 第1の長孔
42,42A 第2の長孔
43 切欠部
44 連結孔
80 回転電機
81 出力軸
90 ボルト
O ステータ本体部の中心
θA,θA1,θB,θB1 開口角