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特許7046642クリーンルーム及びクリーンルームの排気量調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】クリーンルーム及びクリーンルームの排気量調整方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20220328BHJP
   F24F 3/167 20210101ALI20220328BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F3/167
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018030273
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2019143933
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093388
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 喜三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【弁理士】
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】中澤 賢
(72)【発明者】
【氏名】中岡 将士
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-081338(JP,U)
【文献】特開昭61-272542(JP,A)
【文献】特開2012-251730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内にフィルタでろ過された清浄空気を供給するための給気口と、室内の空気を室外に排出するための吸込口を備えた平面形状を四角形を含め四よりも頂点の多い多角形とするクリーンルームにおいて、
前記吸込口は、多角形の頂点を結ぶ線をなす壁面で囲われ該壁面の下部の隅に多角形の頂点数と同数の複数が設置され、前記クリーンルームの清浄度を維持するための空気ろ過頻度を表す所定の換気回数分の風量をひとつで処理できる能力を持ち、
前記クリーンルームには、細胞を意図したように培養操作する作業空間を内蔵し無菌操作環境とする安全キャビネットが複数台備えられ、
かつそれら各々の吸込口の風量を遠隔で調整する吸込量調整装置が設けられることで、
前記給気口から室内を流れて前記吸込口へ向かう気流を調整して、前記安全キャビネットの前面開口部から前記作業空間にクリーンルームと前記作業空間との気圧差により取り込まれるバリア空気の汚染を防止する
ことを特徴とするクリーンルーム。
【請求項2】
請求項1に記載のクリーンルームにおいて、
前記複数個の吸込口ごとに端部を接続された枝排気ダクトと、
前記枝排気ダクトの途中に設けられた排気量調整装置(吸込量調整装置)と、
複数の前記枝排気ダクトのもう一方の端部が接続される主排気ダクトと、
前記主排気ダクトに設けられた排気ファンと、
前記排気量調整装置を制御して吸込量を変更する制御装置とが備えられてなることを特徴とするクリーンルーム。
【請求項3】
請求項1に記載のクリーンルームにおいて、
前記複数個の吸込口ごとに端部を接続された枝還気ダクトと、
前記枝還気ダクトの途中に設けられた還気量調整装置(吸込量調整装置)と、
複数の前記枝還気ダクトのもう一方の端部が接続される主還気ダクトと、
前記主還気ダクトに接続され給気ダクトにも接続される空調機と、
前記還気量調整装置を制御して吸込量を変更する制御装置とが備えられてなることを特徴とするクリーンルーム。
【請求項4】
平面形状を四角形を含め四よりも頂点の多い多角形とするクリーンルーム室内の空気を室外に排出するための吸込口を備え、
前記吸込口は、多角形の室の頂点を結ぶ線をなす壁面で囲われ該壁面の下部の隅に多角形の頂点数と同数の複数が設置されかつ清浄度を維持するための空気ろ過頻度を表す所定の換気回数分の風量をひとつで処理できる能力を持ち、室内には細胞を意図したように培養操作する作業空間を内蔵し無菌操作環境とする安全キャビネットが複数台備えられ、そしてそれら各々の吸込口の風量を遠隔で調整する吸込量調整装置が設けられてなるクリーンルームの吸込量調整方法において、
前記複数個の吸込口から排出される風量の合計が、供給される清浄空気の量と等しくなるように、各吸込口から排出される風量を連動して制御することで、前記給気口から室内を流れて前記吸込口へ向かう気流を調整して、前記安全キャビネットの前面開口部から前記作業空間にクリーンルームと前記作業空間との気圧差により取り込まれるバリア空気の汚染を防止する
ことを特徴とするクリーンルームの吸込量調整方法。
【請求項5】
平面形状を四角形を含め四よりも頂点の多い多角形とするクリーンルーム室内の空気を室外に排出するための吸込口を備え、
前記吸込口は、多角形の室の頂点を結ぶ線をなす壁面で囲われ該壁面の下部の隅に多角形の頂点数と同数の複数が設置されかつ清浄度を維持するための空気ろ過頻度を表す所定の換気回数分の風量をひとつで処理できる能力を持ち、室内には細胞を意図したように培養操作する作業空間を内蔵し無菌操作環境とする安全キャビネットが複数台備えられ、そしてそれら各々の吸込口の風量を遠隔で調整する吸込量調整装置が設けられてなるクリーンルームの吸込量調整方法において、
前記複数個の吸込口から排出される風量の合計が、供給される清浄空気の量より所定量少なくなるように、各吸込口から排出される風量を連動して制御することで、
前記給気口から室内を流れて前記吸込口へ向かう気流を調整して、前記安全キャビネットの前面開口部から前記作業空間にクリーンルームと前記作業空間との気圧差により取り込まれるバリア空気の汚染を防止する
ことを特徴とするクリーンルームの吸込量調整方法。
【請求項6】
平面形状を四角形を含め四よりも頂点の多い多角形とするクリーンルーム室内の空気を室外に排出するための吸込口を備え、
前記吸込口は、多角形の室の頂点を結ぶ線をなす壁面で囲われ該壁面の下部の隅に多角形の頂点数と同数の複数が設置されかつ清浄度を維持するための空気ろ過頻度を表す所定の換気回数分の風量をひとつで処理できる能力を持ち、室内には細胞を意図したように培養操作する作業空間を内蔵し無菌操作環境とする安全キャビネットが複数台備えられ、そしてそれら各々の吸込口の風量を遠隔で調整する吸込量調整装置が設けられてなるクリーンルームの吸込量調整方法において、
前記複数個の吸込口から排出される風量の合計が、供給される清浄空気の量より所定量多くなるように、各吸込口から排出される風量を連動して制御することで、
前記給気口から室内を流れて前記吸込口へ向かう気流を調整して、前記安全キャビネットの前面開口部から前記作業空間にクリーンルームと前記作業空間との気圧差により取り込まれるバリア空気の汚染を防止する
ことを特徴とするクリーンルームの吸込量調整方法。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載のクリーンルームの吸込量調整方法において、
前記複数個の吸込口から排出される風量の合計と、供給される清浄空気の量との関係を、クリーンルーム内室圧の設定により決定して制御することを特徴とするクリーンルームの吸込量調整方法。
【請求項8】
クリーンルームが、前記複数個の吸込口ごとに端部を接続された枝排気ダクトと、前記枝排気ダクトの途中に設けられた排気量調整装置(吸込量調整装置)と、複数の前記枝排気ダクトのもう一方の端部が接続される主排気ダクトと、前記主排気ダクトに設けられた排気ファンと、前記排気量調整装置を制御して吸込量を変更する制御装置とを備え、
前記制御装置によって各々の吸込口の吸込量を変更してなることを特徴とする請求項4~7のいずれか1項に記載のクリーンルームの吸込量調整方法。
【請求項9】
クリーンルームが、前記複数個の吸込口ごとに端部を接続された枝還気ダクトと、前記枝還気ダクトの途中に設けられた還気量調整装置(吸込量調整装置)と、複数の前記枝還気ダクトのもう一方の端部が接続される主還気ダクトと、前記主還気ダクトに接続され給気ダクトにも接続される空調機と、前記還気量調整装置を制御して吸込量を変更する制御装置とを備え、
前記制御装置によって各々の吸込口の吸込量を変更してなることを特徴とする請求項4~7のいずれか1項に記載のクリーンルームの吸込量調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、iPS細胞やES細胞をはじめとする幹細胞の培養を基に再生医療製品や薬剤の開発研究を行う研究施設や、それを発展して再生医療製品や薬剤を生産する工場施設におけるクリーンルーム、特に同一クリーンルーム内で複数の数や種類の培養操作作業を行うことができるよう室内に複数の安全キャビネットが配設できる大部屋方式のクリーンルームに係り、配設される安全キャビネットの台数やそのレイアウト等に対応して、該クリーンルームに備えられた複数個の吸込口からの排気量をそれぞれ調整可能にしてなるクリーンルーム及びクリーンルームの排気量調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
iPS細胞やES細胞を基に再生医療製品や薬剤の開発研究のために培養操作を行うクリーンルームにおいては、検体としての細胞などを取り扱う際、多くの場合、前記検体から由来しない細菌など別な細胞のコンタミネーションや、検体の意図しない培養を防止するためのバリア装置として前記クリーンルーム内に安全キャビネットを設置し無菌操作環境としている。
この安全キャビネットを設置したクリーンルーム内の空気清浄度は、注射液バイアルなど無菌医薬品製造(厚生労働省の「無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針」が基準)に準じ、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AME)が制定しようとする「再生医療等製品の操作法ガイドライン(案)」においては、ISO基準(14644-1)におけるISO7(作業時)に設定されており、本発明のクリーンルームでは、その清浄度を維持するため、フィルタでろ過した空気を天井に設けられた給気口から室内に大量に供給し、室内で発生した塵埃を該クリーンルームの4隅の壁面下部に設けられた4箇所の吸込口からの還気・排気とともにいち早く排出させて前記フィルタに還流して除去し、清浄化した空気を再度クリーンルームに循環させてクリーンルーム内の空気清浄度を前記ガイドラインに適合させて維持するよう構成している。
なお、このクリーンルームへの給気風量は、1時間当たり当該クリーンルームの室内容積の30~150倍(つまり換気回数:30~150回/時間)に相当するほどの大風量となっている。
【0003】
前記クリーンルーム内の清浄度を損ねるものの一つとして、クリーンルーム内に設置されることの多いインキュベータがあり、これは恒温恒湿で細胞を培養する環境を維持する装置であって、本来の意図と異なり有害なカビを増殖させてしまうことがある。これら装置からの汚染リスクを避けるためには、室内の気流の設定が重要となる。
さらに、別のリスクとして、検体間(異なる患者の細胞)の取り違え・交叉汚染は、絶対にあってはならず、ひとつ同じ室内で複数検体を同時に取り扱うことを行わないことが主流であった。
したがって、従来のクリーンルームにおいては、1ルームに1台の安全キャビネットを設置して上記諸条件に対応させることが一般的であった。
【0004】
従来のクリーンルームにおける1ルームに1台の安全キャビネットを設置した場合におけるクリーンルーム内の空気の流れを、以下に詳細に説明する。
ここでは、安全キャビネット1台をひとつのクリーンルームに設置して作業を行う場合のクリーンルーム内の空気の流れの図を図13として説明する。
同図に見られるように、安全キャビネット51内の作業空間53には上部からフィルタ55により濾過されて供給される清浄空気A1と、作業空間53内の負圧により当該安全キャビネットの前面からクリーンルーム内の清浄空気を吸込んで作業空間内の清浄空気A1流れに沿ってバリア空気A2となって、作業空間53内の空気は、作業台57に設けられた前面吸込み孔58及び背面吸込み孔59から安全キャビネットの上部に設置される送風機56により吸引され、空気連通路63を通り、送風機56により送風機吐出プレナム67に吹き出された空気の一部は給気用HEPAフィルタ54により清浄化され作業空間53に供給され、残りは排気用HEPAフィルタ55により清浄化され、空気排出路を通り安全キャビネット51の上方にある排気吹出口90からクリーンルーム室内へ放出される。
一方、給気口からクリーンルーム70内に供給された空気は、その一部が作業空間53内の気圧と該クリーンルーム70内の気圧差により、安全キャビネットの前面開口部66からバリア空気A2として作業空間53内に取り込まれ、作業空間53の上部の給気用HEPAフィルタ54から供給される降下気流としての清浄空気A1と混合され作業空間53を満たす。
【0005】
そして、クリーンルーム70内に供給された空気のバリア空気A2以外の部分は、室内で発塵のあった塵埃を同伴しながら、全体的には下降しながら吸込口75に吸込まれる。また、安全キャビネット51の作業空間53に供給されたのち排気用HEPAフィルタ55により清浄化され、空気排出路を通り安全キャビネット51の上方にある排気吹出口90からクリーンルーム室内へ放出された空気も、天井や壁面に当たって方向転換されながらも全体的には下降しながら吸込口75に吸込まれる。吸込口75で吸込まれた空気は、還気として図示しない還気ダクトを通って、一部は排気ファンに吸われろ過された無害化された排気として大気へ放出され、残りの一部は空調機へ還気として戻され、フィルタにてろ過されて清浄空気として給気口73からクリーンルーム70内へ再び供給される。
そして安全キャビネットの送風機56が作動している間は、上記空気の流れが繰り返して行われる。
【0006】
このように、安全キャビネット51のバリア空気A2としてクリーンルーム70の循環する清浄度維持空気から吸込んで扱うので、安全キャビネット51を設置するクリーンルーム70の清浄度環境として、ISO7(35.2万個/m2未満)に設定される。天井部の給気口(通常、室中央部に設置)に対して、室の4隅下部に吸込口がそれぞれ設置されている。吸込口がたとえば室の4隅にある場合、部屋の新設時の通常の設計では、陽圧室の場合は室の所定の還気回数から所定の風量を減じた、陰圧室の場合は室の所定の還気回数に所定の風量を加算した、室全体風量について、4つの吸込口で均等あるいは不均等でも按分して各吸込み風量を設定する。
【0007】
特許文献1には、安全キャビネットの例として、クリーンルーム内に設置して上部からろ過されて無害化された排気の取り回しに工夫したことで培養操作に有利となった、本出願人が特許出願した安全キャビネットを示す。
【0008】
上記構成は、従来の安全キャビネット1台をクリーンルームに設置して作業を行う場合のクリーンルーム内の空気の流れであるが、最近は、iPS細胞やES細胞など幹細胞を用いての再生医療製品や薬剤の開発研究が盛んに行われるようになっているために、クリーンルームにおける作業の需要が増大してきており、また生産を想定する場合では効率や合理化が要求されるようになり、従来のように1クリーンルームに安全キャビネット1台を配設するシステムでは、1人の患者の細胞の作業しかできず、引き続き他の患者の細胞を扱う場合には、作業し終えたクリーンルームを出て更衣室で更衣した後、別のクリーンルームに移行して作業を行うなど、交叉汚染を防ぐ手順を行う必要がある。そのため、作業効率の上でも、また取り扱う検体数や品目を増やす場合、施設や設備を増強しなければならないといった経済面での問題も出てきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-166646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、1つのクリーンルーム内で複数の培養操作の作業が行えるように複数の安全キャビネットを配設した大部屋方式クリーンルームを提供するにあたっての問題点、即ち大部屋方式クリーンルームの清浄化が最大化できるよう、設置される安全キャビネットの台数とそのレイアウトに基づいて整えられるように、排気口の位置や数、さらにはそれぞれの排気口から排気する量の配分比率を調整可能にする機能を備えたクリーンルーム及び該クリーンルームの排気量調整方法を提供し、作業数の増加による安全キャビネットの追加設置(台数増加)や、それに伴うレイアウトの変更など当初計画と異なる要求が生じた場合にも即時・容易に対応できるようにしておこうとするものである。
【0011】
前記大部屋方式クリーンルームにあっては、通常は初期設定された安全キャビネットの台数、及びレイアウトに適合した気流が得られるように、排気ダクト・還気ダクトや吸込み器具が初期風量を按分して選定されそれに応じた施工が行われる。このため、このように安全キャビネットの追加設置や、レイアウト変更がなされた場合は、再生医療等製品や細胞加工品の汚染防止のため、給気口から室内を流れて排気口へ向かう気流の再調整が必要となるが、排気口で調整できる風量範囲が狭く、適切な気流とすることができなくなる場合も出てくる。
【0012】
また、クリーンルーム内には、再生医療製品などの培養を目的としているが真菌や細菌などどのような細胞でも培養可能性のあるインキュベータ等無菌操作に対して汚染源となりうる装置が設置されることが多く、このためインキュベータなどの汚染源から培養への操作を行う安全キャビネット設置域側へ空気が流れるようになっている場合、安全キャビネットによる開放系の無菌操作において汚染リスクが高まるのでこの空気流の遮断も課題となる。
【0013】
本発明は、上記のような問題点を解消し、安全キャビネットの台数増加や全体のレイアウトの変更に対応して室内の空調気流を最適にコントロールして再生医療等製品や細胞加工品への汚染を防止できるクリーンルームを提供することを目的とする。
また、作業状況に対応して各排気口の排気量を調整し室内の空調気流を最適にコントロールし、室内汚染が防止できるクリーンルームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を下記の手段により解決した。
(1)室内にフィルタでろ過された清浄空気を供給するための給気口と、室内の空気を室外に排出するための吸込口を備えたクリーンルームにおいて、前記吸込口は、前記クリーンルームの清浄度を維持するための空気ろ過頻度を表す所定の換気回数分の風量をひとつで処理できる能力を持ち、かつ当該クリーンルーム1つに前記吸込口が複数個備えられ、かつそれら各々の吸込口の風量を遠隔で調整する吸込量調整装置が設けられてなることを特徴とするクリーンルーム。
(2)前記(1)に記載のクリーンルームにおいて、前記複数個の吸込口ごとに端部を接続された枝排気ダクトと、前記枝排気ダクトの途中に設けられた排気量調整装置(吸込量調整装置)と、複数の前記枝排気ダクトのもう一方の端部が接続される主排気ダクトと、
前記主排気ダクトに設けられた排気ファンと、前記排気量調整装置を制御して吸込量を変更する制御装置とが備えられてなることを特徴とするクリーンルーム。
(3)前記(1)に記載のクリーンルームにおいて、前記複数個の吸込口ごとに端部を接続された枝還気ダクトと、前記枝還気ダクトの途中に設けられた還気量調整装置(吸込量調整装置)と、複数の前記枝還気ダクトのもう一方の端部が接続される主還気ダクトと、前記主還気ダクトに接続され給気ダクトにも接続される空調機と、前記還気量調整装置を制御して吸込量を変更する制御装置とが備えられてなることを特徴とするクリーンルーム。
(4)室内の空気を室外に排出するための吸込口を備え、前記吸込口は清浄度を維持するための空気ろ過頻度を表す所定の換気回数分の風量をひとつで処理できる能力を持ち、かつ前記吸込口が複数個備えられ、そしてそれら各々の吸込口の風量を遠隔で調整する吸込量調整装置が設けられてなるクリーンルームの吸込量調整方法において、前記複数個の吸込口から排出される風量の合計が、供給される清浄空気の量と等しくなるように、各吸込口から排出される風量を連動して制御することを特徴とするクリーンルームの吸込量調整方法。
(5)室内の空気を室外に排出するための吸込口を備え、前記吸込口は清浄度を維持するための空気ろ過頻度を表す所定の換気回数分の風量をひとつで処理できる能力を持ち、かつ前記吸込口が複数個備えられ、そしてそれら各々の吸込口の風量を遠隔で調整する吸込量調整装置が設けられてなるクリーンルームの吸込量調整方法において、前記複数個の吸込口から排出される風量の合計が、供給される清浄空気の量より所定量少なくなるように、各吸込口から排出される風量を連動して制御することを特徴とするクリーンルームの吸込量調整方法。
(6)室内の空気を室外に排出するための吸込口を備え、前記吸込口は清浄度を維持するための空気ろ過頻度を表す所定の換気回数分の風量をひとつで処理できる能力を持ち、かつ前記吸込口が複数個備えられ、そしてそれら各々の吸込口の風量を遠隔で調整する吸込量調整装置が設けられてなるクリーンルームの吸込量調整方法において、
前記複数個の吸込口から排出される風量の合計が供給される清浄空気の量より所定量多くなるように各吸込口から排出される風量を連動して制御することを特徴とするクリーンルームの吸込量調整方法。
(7)前記(4)乃至(6) のいずれかに記載のクリーンルームの吸込量調整方法において、前記複数個の吸込口から排出される風量の合計と、供給される清浄空気の量との関係を、クリーンルーム内室圧の設定により決定して制御することを特徴とするクリーンルームの吸込量調整方法。
(8)クリーンルームが、前記複数個の吸込口ごとに端部を接続された枝排気ダクトと、前記枝排気ダクトの途中に設けられた排気量調整装置(吸込量調整装置)と、複数の前記枝排気ダクトのもう一方の端部が接続される主排気ダクトと、前記主排気ダクトに設けられた排気ファンと、前記排気量調整装置を制御して吸込量を変更する制御装置とを備え、
前記制御装置によって各々の吸込口の吸込量を変更してなることを特徴とする前記(4)~(7)のいずれか1項に記載のクリーンルームの吸込量調整方法。
(9)クリーンルームが、前記複数個の吸込口ごとに端部を接続された枝還気ダクトと、前記枝還気ダクトの途中に設けられた還気量調整装置(吸込量調整装置)と、複数の前記枝還気ダクトのもう一方の端部が接続される主還気ダクトと、前記主還気ダクトに接続され給気ダクトにも接続される空調機と、前記還気量調整装置を制御して吸込量を変更する制御装置とを備え、前記制御装置によって各々の吸込口の吸込量を変更してなることを特徴とする前記(4)~(7)のいずれか1項に記載のクリーンルームの吸込量調整方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のクリーンルーム及びクリーンルームの排気量調整方法によって下記の効果が発揮される。
本発明のクリーンルームが、室内にフィルタでろ過した清浄空気を供給する給気口と、室内の空気を室外に排出するための吸込口を複数備え、かつそれら各々の吸込口の吸込量を調整する吸込量調整装置が設けられ、前記複数個の吸込口から排出される吸込量の合計が供給される給気の量と任意に設定した風量差(ゼロを含む)になるように排出されるよう各吸込口の吸込量を制御する吸込量調整方法が採られているので、
クリーンルーム内において安全キャビネットの台数増加や全体のレイアウトの変更があった場合に、クリーンルームにおける吸込口の変更工事や空調業者による空調風量調整に依存することなく、細胞培養の作業者や研究者など各自で各吸込口における吸込量を容易に変更することができ、室内の空調気流を最適にコントロールできるので汚染のリスクを低下させ、汚染防止を図ることができる。
また、クリーンルームに複数の安全キャビネットを設置して作業を行っている途中で、そのうちの1台で扱う検体が感染性病原体保有の可能性が検出された場合でも緊急措置として気流方向をその時点で容易に変更することで、他の安全キャビネットで進行中の細胞加工作業を中断することなく運用が行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のクリーンルームの横断面図
図2】本発明のクリーンルームの換気システムの構成図
図3】本発明のクリーンルームの給気口、吸込口の配置平面図
図4】本発明のクリーンルームにおける安全キャビネット複数台の配置状況例(平面図)
図5図4に示す安全キャビネット配置状況例における各吸込口の排気量配分比率の説明図
図6】本発明のクリーンルームに安全キャビネットを設置した場合の各吸込口における吸込風量の説明図(平面図)
図7】本発明のクリーンルームの排気量調整装置の操作面と操作方法の一例の説明図
図8】本発明のクリーンルームの排気量調整装置の操作面と操作方法のその他の例の説明図
図9】本発明のクリーンルームの排気量調整装置の操作面と操作方法のその他の例の説明図
図10】本発明のクリーンルームの排気量調整装置の操作面と操作方法のその他の例の説明図
図11】本発明のクリーンルームの排気量調整装置の操作方法のフローチャート
図12】本発明のクリーンルームの換気システムの他の構成図
図13】従来のクリーンルームにおける空気の流れの説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のクリーンルーム及びクリーンルームの排気量調整方法について、実施例の図に基づいて説明する。
図1は本発明のクリーンルームの横断面図、図2は本発明のクリーンルームの換気システムの構成図、図3は本発明のクリーンルームの給気口、吸込口の配置図である。
図1図3において、1は天井下の室内が密閉されたクリーンルーム、2はクリーンルームの天井、3は該クリーンルームの天井2に設けられフィルタでろ過された清浄空気を室内に供給する給気口、3aは給気口3が位置する天井裏に設けられた給気ユニット、3bは該給気ユニット3aに設けられた天井給気HEPAフィルタ、3cは一端を前記給気ユニットに、他端を空調機10(図2参照)に接続されてなる給気分岐ダクトである。
また、4a、4b、4c、4dはクリーンルーム1内の空気を室外に排出する吸込口、5a、5b、5c、5dは前記吸込口4a、4b、4c、4dに接続された枝排気ダクト、6a、6b、6c、6dは前記吸込口4a、4b、4c、4dから排出される吸込量を調整する吸込量調整装置である。
本発明の実施の形態においては、吸込量調整装置6a、6b、6c、6dとしてモータダンパを用いているがこれに限定されるものではない。
7は前記枝排気ダクト5a、5b、5c、5dから排気される排気量をまとめる主排気ダクト5eにおいて、その排気合計量を設定された所定の一定量に調整して排出する定風量装置、8は定風量装置7や吸込口、枝排気ダクト、主排気ダクトの通風抵抗に抗して所定の排気合計量の排気を吸引して室外に排出する静圧を有するファンである。
9は前記吸込量調整装置6a~6dそれぞれの排気量を制御する制御装置である。
10は前記給気ユニット3aに接続された給気分岐ダクト3cを介してクリーンルームに供給する給気の温度、湿度やクリーンルーム内の熱負荷に応じて供給量を調整して供給する空調機である。
【0018】
本発明のクリーンルームは、図1のクリーンルームの横断面図、図2の換気システムの構成図、及び3図の給気口と排気口の配置図に示すように、天井2より下の室内が密閉されてクリーンルーム1とされ、該クリーンルーム1の天井2に外気を室内に供給する給気口3が設けられ、そして前記給気口3が位置する天井裏には、空調機10から主給気ダクトから分岐給気ダクトを介して送られる給気を最終的に清浄化するHEPAフィルタ3bを備えた給気ユニット3aが設けられ、該給気ユニット3aには他端が空調機10(図2参照)に接続された給気分岐ダクト3cが接続されている。
また、クリーンルーム1に供給された給気を室外に排気するための吸込口4a、4b、4c、4dが壁面下部4個所に設けられている(図2参照)。
そして前記吸込口4a、4b、4c、4dには、図2に示すように、それぞれ枝排気ダクト5a、5b、5c、5dが接続されるとともに、各吸込口4a、4b、4c、4dから排出される排気量を調整する吸込量調整装置6a、6b、6c、6dが設けられている。この吸込量調整装置6a、6b、6c、6dとして本発明の実施の形態においては、モータダンパを用いているがこれに限定されるものではない。
各吸込量調整装置6a、6b、6c、6dで調整されて排出された排気は、枝排気ダクトから主排気ダクト5eに統合されて定風量装置7に導入され、室外に排出される排気量を前記給気口3から室内に供給された給気量とは、任意に設定した風量差(ゼロを含む)となるように調整され、制御装置9により排気量が制御される。そして、前記枝排気ダクト5a、5b、5c、5dがまとまり、主排気ダクト5eに集合して接続された排気ファン8により、室内の空気は室外に排気される。
なお、空調機10は前記給気ユニット3aに接続された給気分岐ダクト3cからクリーンルームに供給する給気の温度、湿度や供給量を調整しクリーンルームに給気を供給する。
【0019】
上記のように構成された本実施態様に係るクリーンルーム1においては、前記空調機10から温度、湿度や供給量を調整された給気が前記クリーンルーム1に供給され、該供給された外気は前記クリーンルーム1内を流れ前記排気口4a、4b、4c、4dから排気ダクト5a、5b、5cを通り室外に排気される。
【0020】
例えば、図3(A)、(B)に示すようにクリーンルーム1の平面形状を仮に四角形とした場合、天井2(図1参照)中央部に設置された給気を室内に供給する給気口3に対し、4囲の壁面下部の隅にそれぞれ室内の空気を排気する吸込ロ4a、4b、4c、4dを1箇所ずつ設置して、各吸込ロに接続されている枝排気ダクト5a、5b、5c、5d(図2参照)に吸込量調整装置6a、6b、6c、6d(図2参照)を設けることで、それぞれの吸込口からの排気量を変更して室内の空気を速やかに流すことが行われる。
【0021】
なお、本明細書においては、各吸込ロからの排気量を、クリーンルーム1から排気される総排気量(100%)に対するそれぞれの吸込ロから排気される排気量の配分比率によって表示した。ここで、吸込口4a,4b,4c,4dの各1個で、枝排気ダクト5a,5b,5c,5dの各1本で、クリーンルーム1から排気される総排気量(100%)の風量を、無理のない通過面速で通風抵抗も風きり音も問題なくまかなえるだけの大きさを持っている。つまり吸込口4a,4b,4c,4dの各1個も、枝排気ダクト5a,5b,5c,5dの各1本も、清浄度を維持するための空気ろ過頻度を表す所定の換気回数分の風量をひとつで処理できる能力を持っている。
例えば、図3に示すように前記クリーンルーム1に4個の吸込ロ4a、4b、4c、4dが設けられている場合、各吸込ロ4a、4b、4c、4dから排気される排気量の分配比率を均等としているときは、各吸込ロ4a、4b、4c、4dからの排気量は25%となるので25と表示した。
図3に示した給気口3から供給される給気量100に対して4個の吸込ロ4a、4b、4c、4dから排出される排気量を均等に25としたクリーンルーム1に、図4(A)のように、室の奥側に安全キャビネット11a、11b、11cを3台設置すると、左側に設置された安全キャビネット11aで吸込ロ4aが、右側に設置された安全キャビネット11cで吸込ロ4bが塞がれてしまうために、吸込ロ4a、4bから排出される空気の排気量が他の吸込ロ4c、4dから排出される空気の排気量より少なくなってしまう。
また、図4(B)のように、室の右側に安全キャビネット11aと11bの2台を設置した場合、奥側に設置された安全キャビネット11aで吸込ロ4bが塞がれてしまうために吸込ロ4bから排気される空気の排気量が他の吸込ロ4a、4c及び4dから排出される空気の排気量より少なくなってしまう。
このように安全キャビネットの設置によってクリーンルーム1の吸込ロのいくつかが塞がれてしまうと、排気量を均等に25として設定されていたクリーンルーム1内の空調気流が乱れてしまい、計画された気流が形成されずに製品汚染のリスクが発生してしまう。
【0022】
このような場合の対策として、本発明のクリーンルーム1では、例えば前記図4(A)のような安全キャビネット配置とした場合には、図5(A)に示すように安全キャビネット11a、11cで塞がれてしまった吸込ロ4a、4bからの排気量をそれぞれ10とし、他の吸込ロ4c、4dからの排気量をそれぞれ40に調整して、4個の吸込ロ4a、4b、4c、4dからの排気量の合計を100とすることによって給気口3からクリーンルーム1に供給される外気の給気量100に合わせてクリーンルーム内の空調気流の乱れを防止し、クリーンルーム1内の環境汚染を防いでいる。
上記は、クリーンルーム室内が陽圧でも陰圧でもない例を示したが、クリーンルーム室内の空気がクリーンルーム室外に漏れるのを防止するためにクリーンルーム室内を陰圧にする場合は、給気を100から所定の量減じた値:たとえば95とし、クリーンルーム室外の空気がクリーンルーム室内に入るのを防止するためにクリーンルーム室内を陽圧にする場合は給気を100に所定の量を加算した値:たとえば105として考えればよい。このように任意に設定された風量に対して100とすることが、給気量と排気量の差となるよう調整して、クリーンルーム内の空調気流の乱れを防止し、クリーンルーム1内の環境汚染を防いでいる。
また、図4(B)のような安全キャビネット配置とした場合には、図5(B)に示すように安全キャビネット11aで塞がれてしまった吸込ロ4bからの排気量を5とし、他の吸込ロ4aからの排気量を35、吸込ロ4cからの排気量を20、吸込ロ4dからの排気量を40に調整して、4個の吸込ロ4a、4b、4c、4dから排出される排気量の合計を100とすることによって給気口3からクリーンルームに供給される外気の給気量100に合わせてクリーンルーム1内の空調気流の乱れを防止し、クリーンルーム1内の環境汚染を防いでいる。この例もクリーンルーム室内が陽圧でも陰圧でもない例を示したが、陰圧にする場合は、給気を100から所定の量減じた値:たとえば95とし、陽圧にする場合は給気を100に所定の量を加算した値:たとえば105として考えればよい。
具体的な各吸込ロ4a、4b、4c、4dの排気量の調整手段については後述する。
【0023】
図6は、図4(B)示したクリーンルーム1の右側に安全キャビネット11a、11bの2台を設置して細胞培養等の作業を行っている途中で、そのうちの1台の安全キャビネット11aで取り扱っている検体に感染性病原体保有の可能性があることが明らかとなった場合の対応手段の説明図である。
このような場合、このまま作業を進めると、安全キャビネット11aにおける作業域の汚染可能性のある空気が他の安全キャビネット11b側へ流れてしまい安全キャビネット11bが汚染される虞が出てくる。
そこでこのような場合の対策として、本発明のクリーンルーム1にあっては、例えば、図6に示すように、取り扱っている検体が感染性病原体保有の可能性があることが明らか
となった時点ですみやかに安全キャビネット11a側の吸込ロ4bからの排気量を60に増量するとともに、吸込ロ4aから排気量を30に減量し、もう一方の安全キャビネット11bが配設された側の吸込ロ4cからの排気量を0、吸込ロ4dから排気量を10と大量に減量して安全キャビネット11b側に空気が流れないようにしながら、4個の吸込ロ4a、4b、4c、4dから排気される排気量の合計を100とすることで給気口3からクリーンルームに供給される外気の給気量100に合わせて、室内の空調気流の乱れを防止しクリーンルーム内の環境汚染と、安全キャビネットの汚染とを防ぐことができる構成となっている。
この例もクリーンルーム室内が陽圧でも陰圧でもない例を示したが、陰圧にする場合は、給気を100から所定の量減じた値:たとえば95とし、陽圧にする場合は給気を100に所定の量を加算した値:たとえば105として考えればよい。
具体的な各吸込ロ4a、4b、4c、4dの排気量の変更手段については後述する。
【0024】
次に本発明のクリーンルーム1における各吸込ロ口4a、4b、4c、4dの排気量の調整・変更手段を具体的に説明する。
図7~10は、本発明のクリーンルーム1の各吸込ロ4a、4b、4c、4dからの排気量を調整する排気量調整手段に電子端末のタブレット20を使った実施例の操作画面と操作方法の説明図であり、図11はその操作手段のフローチャートである。
図7に示すように本実施例においては、吸込ロからの排気量を調整・変更する排気量調整手段として、クリーンルーム内にも持ち込み可能とされている電子端末のタブレット20を用いて、該タブレット20の操作画面21により行えるようにしている。
前記操作画面21には、クリーンルーム1において各吸込ロ4a、4b、4c、4dが配置された位置に対応するように、各々の吸込ロの排気量を調整・変更する操作部21a、21b、21c、21dが配置され、各吸込ロからの排気量に対応した面積比の円弧23a、23b、23c、24dが表示されるように構成されている。
そして前記操作画面21の操作部21a、21b、21c、21dは、ドラッグにより操作可能となっており、各操作部21a、21b、21c、21dから、面積比の円弧23a、23b、23c、24dを広げるようにドラッグすることで、排気量を増やす入力信号となり、逆に面積比の円弧23a、23b、23c、24dを対応する操作部21a、21b、21c、21d方向に縮めることで、排気量を減らす入力信号となっている。
そして、ドラッグによって調整された各吸込ロの排気量は、表示画面22に数値として表示され、その時に指示している排気量がどのくらいであるか円弧23a、23b、23c、24dの大きさだけでなく、数値でも確認できるよう構成されている。
【0025】
図7(A)は、図3に示した安全キャビネット設置前のクリーンルームに対応した操作画面21と表示画面22であり、該クリーンルームは、4個の各吸込ロ4a、4b、4c、4dから排気される空気の排気量は等しく、給気口からの給気量100に対してそれぞれ25であることから、操作画面21に表示される円弧23a、23b、23c、24dの形状は等しく、すなわち円弧内の面積は等しいことを示している。
また、表示画面22に表示された各吸込ロ4a、4b、4c、4dの排気量A、B、C、Dも等しく25%と表示されている。
【0026】
図8は、図7(A)の設定を、前記図5(A)に示したようなレイアウトのクリーンルームに対応するよう各吸込ロの排気量を変更した場合を示している。図8(A)は、図7(A)の設定と同じものである。
吸込ロ4a、4b、4c、4dの排気量の図8(A)から図8(C)への変更は前記タブレット20の操作画面21の操作部21aをタップし、円弧23a、23b、23c、24dをドラッグして調整することによって行われる。以下にその操作手順を示す。
〈1〉 操作部21aをタップして排気量を変更する吸込ロ4aを選択し、排気量比を示す円弧23aが縮小する方向にドラッグする。そして、表示画面22の表示Aが25から10になったのを確認する(図8(B))。
上記タブレット20の操作画面21を操作して行う排気量の変更指示により、その指示された排気量が制御装置9に入力され、該制御装置9から吸込ロ4aの排気量を制御するモータダンパでなる排気量調整装置6aに吸込ロ4aからの排気量を10とする制御信号が送られ、前記モータダンパの開度が縮小され、吸込ロ4aからの排気量が10に固定される。
そして制御装置9は、前記吸込ロ4aから排出される排気量の減らされた分の排気量15を他の吸込ロ4b、4c、4dに均等に加算して総排気量100を維持するための計算を行う。その結果として15の3分の1である排気量5を、前記3個の吸込ロ4b、4c、4dの排気量25に加えて30とする制御信号がモータダンパでなる排気量調整装置6b、6c、6dに送られ、前記モータダンパの開度がそれぞれ拡大され、表示画面22の表示B、C、Dがそれぞれ30%に変わる(図8(B))。
〈2〉 次いで操作部21bをタップして排気量を変更する吸込ロ4b選択し、排気量比を示す円弧23bが縮小する方向にドラッグして、表示画面22の表示Bが30から10になるように変更すると、その排気量が制御装置9に入力され、該制御装置9から排気口4bの排気量を制御するモータダンパでなる排気量調整装置6bに吸込ロ4bからの排気量を10とする制御信号が送られ、前記モータダンパの開度が縮小され、吸込ロ4bからの排気量が10に固定される。
そして前記吸込ロ4bから排出される排気量の減らされた排気量20を残る2個の吸込ロ4c、4dに均等に加算して総排気量100を維持するための計算が前記制御装置9で行われ、その結果として20の2分の1である排気量10を、前記2個の吸込ロ4c、4dの排気量30に加えて40とする制御信号がモータダンパでなる排気量調整装置6c、6dに送られ、前記モータダンパの開度がそれぞれ拡大され、吸込ロ4cと吸込ロ4dからの排気量が40に変更され、固定され、表示画面22にC:40%、D:40%が表示され、設定は完了する(図8(C))。
【0027】
図9は、図7(A)の設定を、前記図5(B)に示したようなレイアウトのクリーンルームに対応するよう各吸込ロの排気量を変更した場合を示している。図9(A)は、図7(A)の設定と同じものである。
図9(A)から図9(C)への各排気口4a。4b、4c、4dの排気量変更手順を以下に示す。
〈1〉 操作部21bをタップして排気量を変更する吸込ロ4bを選択し、排気量比を示す円弧23bが縮小する方向にドラッグする。そして、表示画面22の表示Bが25から5になったのを確認する。
上記タブレット20の操作画面21を操作して行う排気量の変更指示により、その指示された排気量が制御装置9に入力され、該制御装置9から吸込ロ4bの排気量を制御するモータダンパでなる排気量調整装置6bに吸込ロ4bからの排気量を5とする制御信号が送られ、前記モータダンパの開度が縮小され、吸込ロ4bからの排気量が5に固定される。
そして制御装置9は、前記吸込ロ4bから排出される排気量の減らされた分の排気量20を他の吸込ロ4b、4c、4dに均等に加算して総排気量100を維持するための計算を行う。その結果として20の3分の1の排気量を、前記3個の吸込ロ4a、4c、4dの排気量25に加えた排気量≒31.67を、前記3個の吸込ロ4a、4c、4dの排気量とする制御信号がモータダンパでなる排気量調整装置6a、6c、6dに送られ、前記モータダンパの開度がそれぞれ拡大され、表示画面22の表示A、C、Dがそれぞれ31.67%に変わる(図9(B))。
〈2〉 次いで操作部21aをタップして操作部21aの円弧23aが拡大する方向にドラッグして表示画面22の吸込ロ4aからの排気量の表示Aを35%とすると、その排気量35が制御装置9に入力され、該制御装置9からモータダンパでなる排気量調整装置6aへ吸込ロ4aの排気量を35とする制御信号が送られ、前記モータダンパの開度が拡大され、吸込ロ4からの排気量が35に変更され固定されるとともに、表示画面22にA:35%が表示される。
そして制御装置9において、前記吸込ロ4aからの排気量が31.67から35への変更に伴って全排気口からの総排気量100を超える3、33を既に排気量が変更されて固定されている吸込ロ4bを除く吸込ロ4c、4dに均等に減少させる排気量が求められ、その量減対応した吸込ロ4c、4dからの排気量を30とする制御信号が前記制御装置9からモータダンパでなる排気量統制装置6c、6dに送られ、モータダンパの開度を縮小し吸込ロ4c、4dの排気量をそれぞれ30に変更し、表示画面22にC:30%,D:30%と表示される(図9(C))。
3.さらに続けて、操作部21cをタップして排気量を変更する吸込ロ4cを選択し、排気量比を示す円弧23cが縮小する方向にドラッグして、表示画面22の表示Cが30から20になるようにすると、その信号が制御装置9に送られ、該制御装置9からモータダンパでなる排気量調整装置6cに吸込ロ4cからの排気量を20にする制御信号が送られ、モータダンパの開度が縮小され、表示画面22にC:20%が表示される。と同時に、前記制御装置9において、前記排気量の変更に対応して全吸込ロからの排気量の合計が100となるように残りの吸込ロ4dから排出される排気量を40とする制御信号が排気量調整装置6dに送られモータダンパの開度が拡大し、表示画面22にD:40%と表示される(図9(D))。
【0028】
図10は、前記図6に示したクリーンルームの右側に安全キャビネット11a、11bを2台設置して細胞培養等の作業を行っている途中で、そのうちの1台の安全キャビネット11aで取り扱っている検体に感染性病原体保有の可能性があることが明かとなった場合の対応として、安全キャビネット11aが配置された側の吸込ロ4a、4bからの排気量を多くするとともに、汚染されていない安全キャビネット11bが設置されている側の吸込ロ4c、4dからの排気量を少なくして、汚染されていない安全キャビネット11b側に空気が流れないように気流を制御する場合の排気量配分比率の設定例の排気量を変更した場合を示したものである。
【0029】
この場合の操作は、まず、操作部21bをタップして吸込ロ4bを選択し、排気量比を示す円弧23bが拡大する方向にドラッグして、表示画面21の表示Bが60%となるようにするから始める。するとその変更量が制御装置9に入力され、該制御装置9からモータダンパでなる排気量調整装置6bへ吸込ロ4bの排気量を60とする制御信号が送られ、前記排気量調整装置6bのモータダンパの開度が拡大され、吸込ロ4bからの排気量が60に変更され、固定されるとともに、表示画面22にB:60%が表示される。
そして制御装置9において、前記吸込ロ4bからの排気量が60に変更されたことに応じて、全吸込ロからの総排気量が100となるよう残りの排気量40を他の排気口4a、4c、4dに均等に配分する演算処理が行われその結果に基づいて、各吸込ロ4a、4c、4dのモータダンパの開度が等しくなるよう制御され、表示画面22のA、C、Dには等しい排気量13.33が表示される(図10(B))。
その後、例えば操作部21cをタップして吸込ロ4Cの排気量を0とする操作(図10(C))と、操作部21aをタップして吸込ロ4aからの排気量を30とする操作を引き続き行えば、その都度制御装置9において、既に排気量が固定された吸込ロを除く吸込ロに、残余の排気量を均等に配分する演算処理が行われ、図10(D)の画面表示21の結果が得られる。
【0030】
本発明のクリーンルームの排気量調整方法の調整手順を図11のフローチャートに基づいて説明する。
排気量調整手段に排気量を変更する吸込ロと変更する排気量を入力する(ステップ1)と、変更する排気量が適切か判断する(ステップ2)。
変更する排気量が不適切(例えば、設定室圧が基準圧と同圧の場合にマイナスの排気量や全体の排気量が100を超える場合等)な場合は、ステップ1に戻る。
変更する排気量が適切な場合は、
(1)前記変更する吸込ロと変更する排気量が制御装置に送られると、該制御装置から排気量調整装置へ変更排気量が送られ、前記吸込ロの排気量が変更され固定されるとともに、排気量入力装置の表示画面に変更排気量が表示される。
(2)同時に、制御装置において前記変更された排気量と元の排気量との差(増減)を求め、求められた排気量を残りの吸込ロの排気量に均等に加算または減算し、全吸込ロからの排気量の合計を100とする。
(3)同時に排気量入力装置の表示画面に残りの吸込ロの変更排気量が表示される(ステップ3)。
次に、他に排気量を変更する吸込ロが有る場合、排気量調整手段から排気量を変更する吸込ロと変更する排気量を入力する(ステップ4)と、変更する排気量が適切か判断する(ステップ5)。
変更する排気量が不適切(例えば、設定室圧が基準圧と同圧の場合マイナスの排気量や既に変更した吸込ロの排出量と変更する排出量の合計が100を超える場合等)な場合は、ステップ4に戻る。
【0031】
変更する排気量が適切な場合は、
(1)前記変更する吸込ロと変更する排気量が制御装置に送られると、該制御装置から排気量調整装置へ変更排気量が送られ、前記吸込ロの排気量が変更され固定されるとともに、排気量入力装置の表示画面に変更排気量が表示される。
(2)同時に、制御装置において前記変更された排気量と元の排気量との差を演算し、求められた演算結果(増減)に応じて既に排気量を変更した吸込ロを除いた残りの吸込ロの排気量に均等に加算または減算し、全吸込ロからの排気量の合計を100とする。
(3)同時に排気量入力装置の表示画面に残りの吸込ロの変更排気量が表示される(ステップ6)。
以下、排気量を変更する吸込ロが無くなるまで変更する排気量を入力し(ステップ4)、変更する排気量が適切か判断する(ステップ5)。
【0032】
なお、上記の実施例においては各吸込ロのからの排気量の変更を1個ずつ順番に行っているが、例えば、クリーンルームの形状、大きさ、吸込ロの個数、吸込ロが設けられている位置、設置させる安全キャビネットの台数、レイアウトに応じて室内の空気がどのように流れるか、また、室内の汚染防止のために空調気流の乱れを防止するために望ましい各吸込ロからの排気量をシミュレーションしておいて、そのシミュレーションの結果に応じて各吸込ロからの排気量を直接一括変更してもよい。
【0033】
図示はしないが、各吸込ロ口からの排気量を変更する操作手段の第2の実施例として、クリーンルームにキーボード等の文字数値入力部を有する排気量調整手段を設け、前記キーボードに各吸込ロの排気量を入力し、各吸込ロからの排気量を一括変更する方法が採られてもよい。
この場合、キーボードに各吸込ロそれぞれの排気量を入力すると、入力された排気量データが前記制御装置に送られ、該制御装置から各吸込ロにそれぞれ設けられた排気量調整装置であるモータダンパに、その吸込ロの排気量を入力された値にする制御信号が送られ、モータバンパの開度を送られてきた排気量データに基づいて拡大または縮小して、各吸込ロの排気量が変更される。
【0034】
ここまで、図2の吸込口4a,4b,4c,4dから排気を、排気ファン8で全量排気する場合で説明してきたが、ワンパスのオールフレッシュ空調給気~全量排気型の空調に限らず、省エネ性も重視した循環空調型の場合ももちろん適用できる。たとえば、図12の本発明のクリーンルームの換気システムの他の構成図に示すように、図12の枝還気ダクト5a,5b,5c,5dをまとめた主還気ダクト5eの合流端近くに定風量装置7を備え、主還気ダクト5eを、空調機10の吸込み側のダクトに合流する形でもう一方の端部を接続して、還気ルートを備える循環型空調とする。取入れ外気量と室圧の増減分との合算風量を、主還気ダクト5eの定風量装置7後流から分岐して排気として外部へ排出するような構成とする。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、特に再生医療における細胞培養や研究を行う施設に適しているが、特に薬剤の製造およびや研究を行う施設においても有効に利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 :クリーンルーム
2 :クリーンルームの天井
3 :給気口
3a:給気ユニット
3b:天井給気HEPAフィルタ
3c:給気分岐ダクト
4a、4b、4c、4d:吸込口
5a、5b、5c、5d:枝排気ダクト(枝還気ダクト)
5e:主排気ダクト(主還気ダクト)
6a、6b、6c、6d:吸込量調整装置
7 :定風量装置
8 :排気ファン
9 :制御装置
10:空調機
11a、11b、11c:安全キャビネット
20:排気量入力装置
21:操作画面
22:表示画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13