(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/26 20060101AFI20220328BHJP
E06B 3/46 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
E06B7/26
E06B3/46
(21)【出願番号】P 2018052866
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】山田 良
【審査官】芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-209664(JP,A)
【文献】実開昭53-105535(JP,U)
【文献】実開昭53-102242(JP,U)
【文献】特開2005-232702(JP,A)
【文献】特開2015-203254(JP,A)
【文献】実開昭53-134744(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00- 7/36
3/00- 3/46
3/50- 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下枠に対して室外側で摺動可能な外障子及び室内側で摺動可能な内障子を備える建具において、
前記外障子は、室外側に位置する召合框及び前記召合框の室内側見付面に配置され、見込方向室内側に延びた後、前記外障子の戸先側に曲がる煙返し部を備え、
前記煙返し部の前記外障子の戸先側の下端部に、下がるにつれて前記外障子の戸先側と反対側に向かう傾斜部が形成されて
おり、
前記下枠には下枠風止部材が取り付けられ、前記傾斜部の下端部が、前記下枠風止部材に対して見付方向の室外側であって上下方向で重ならない位置である建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外側で摺動可能な外障子及び室内側で摺動可能な内障子を備える建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引違い窓等の建具において、室外側からの雨水の侵入を防止するための構造を備えるものが知られている。この種の技術を開示するものとして特許文献1がある。
【0003】
特許文献1には、召合せ部空間が室外空間と等圧な等圧空間とされるとともに、強風を伴った雨水が下枠と内障子との隙間から吹き込んだとしても、この雨水が越えることができない高さ寸法を有したAT材によって阻止する構成について記載されている。これによって、内外の召合せ框間から室内空間への雨水の浸入を防止して水密性能の向上を図ることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、引違い窓等の建具において、室外側に位置する外障子と室内側に位置する内障子の間に雨水等が入り込み、召外框の室内側の見付面に形成される煙返しをつたって下枠に落下して室内側に流れる漏水が生じることがある。高水密性能のサッシ等では、水切り等を設けて水の侵入を防止しているものの、隙間を完全に無くすことは困難である。特に、ビルの高層階では強風により漏気があると室内側に水が引き込まれ漏水が生じ易くなるおそれがある。従来の建具には、水密性の更なる向上という点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、外障子及び内障子を備える建具において、外障子の召合框室内側の見付面に形成される煙返しをつたって室内側に侵入する水の動きを効果的に防止できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下枠(例えば、後述の下枠12)に対して室外側で摺動可能な外障子(例えば、後述の外障子40)及び室内側で摺動可能な内障子(例えば、後述の内障子20)を備える建具(例えば、後述の建具1)において、前記外障子は、室外側に位置する召合框(例えば、後述の召外框43)及び前記召合框の室内側見付面(例えば、後述の室内側見付面430a)に配置され、見込方向室内側に延びた後、前記外障子の戸先側に曲がる煙返し部(例えば、後述の召外側煙返し部435)を備え、前記煙返し部の前記外障子の戸先側の下端部に、下がるにつれて前記外障子の戸先側と反対側に向かう傾斜部(例えば、後述の傾斜部70)が形成される建具に関する。
【0008】
前記下枠には下枠風止部材(例えば、後述の下枠風止板60)が取り付けられ、前記傾斜部の下端部(例えば、後述の下端部70b)が、前記下枠風止部材に対して見付方向の室外側であって上下方向で重ならない位置であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の建具によれば、外障子の召合框室内側の見付面に形成される煙返しをつたって室内側に侵入する水の動きを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る建具を室内側から見た姿図である。
【
図4】本実施形態の建具が備える下枠を示す拡大縦断面図である。
【
図5】本実施形態の外障子の外側煙返し部と内障子の内側煙返し部が見込方向で対向している様子を示す拡大横断面図である。
【
図6】本実施形態の下枠に配置される下枠風止板を示す平面図である。
【
図7】本実施形態の下枠に配置される下枠風止板を示す正面図である。
【
図8】本実施形態の外障子の外側煙返し部の下端部を示す拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、「見付方向」とは、建物に形成された開口部に納められた建具における障子の面方向を意味し、「見込方向」とは、上記障子の厚み方向を意味する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る建具1を室内側から見た姿図である。
図2は、本実施形態の建具1の縦断面図である。
図3は本実施形態の建具1の横断面図である。
【0013】
本実施形態の建具1は、建物の開口部に固定される枠体10と、枠体10の内側で摺動可能に配置される内障子20及び外障子40と、外障子40の更に室外側で摺動可能に配置される網戸50と、を主要な構成として備える引違い窓である。
【0014】
枠体10は、上枠11、下枠12及び左右の縦枠13,14が略矩形に枠組みされて構成される。上枠11、下枠12及び左右の縦枠13,14は、アルミの押出し成形品であり、金属製である。
【0015】
上枠11について説明する。上枠11の下面には、内障子20の上部を挟み込む室内側溝部111と、外障子40の上部を挟み込む室外側溝部112と、が形成される。室内側溝部111及び室外側溝部112は、何れも下方に開口するとともに左右方向に延びる溝である。室内側溝部111と室外側溝部112は、見込方向で隣接している。
【0016】
下枠12について説明する。下枠12の見込方向室内側端部には、上方に立ち上がる室内側立ち上がり部120が形成される。室内側立ち上がり部120における室外側の見付面上部には気密材122を嵌合する嵌合部121が形成される。
【0017】
下枠12の室内側立ち上がり部120の室内側には、当該室内側立ち上がり部120に対向するように上方に延出する室内側レール123が形成される。室内側レール123の室外側の見付面には、見込方向室外側に延び出る延出片124が形成される。延出片124の室外側の端部には、気密材126を嵌合する嵌合部125が形成される。
【0018】
室内側レール123の基端部には、延出片124の下方には、下方に傾斜しつつ室外側に向かった後、水平方向に沿って室外側に向かう底面部127が形成される。底面部127の室外側端部には、室外側レール128が形成される。
【0019】
室外側レール128の室外側に下側に下がる段差部129が形成される。この段差部129の室外側端部には、上方に立ち上がる室外側立ち上がり部130が形成される。室外側立ち上がり部130は、その見付面に排水孔131が形成される。
【0020】
縦枠13の内側の見込面には内障子20に対向する衝突防止部材135が配置されるとともに、縦枠14の内側の見込面には外障子40の衝突防止部材136が配置される。
【0021】
内障子20及び外障子40は、何れも引き戸であり、これらを左右方向(見付方向)にスライドさせることで、開口部が閉鎖又は開放される。
図1では、内障子20及び外障子40の両方が閉鎖位置にある状態が示されている。
【0022】
内障子20について説明する。内障子20は、上框21、下框22及び左右の縦框である召内框23,戸先框24により矩形に枠組みされた框体25と、框体25内に嵌め込まれて固定された面材としての複層ガラス26と、を含んで構成される。
【0023】
上框21は、中空部を有する上框本体部210と、上框本体部210の下側に形成され、複層ガラス26の端部が挟み込まれるガラス溝部211と、を備える。
【0024】
下框22は、中空部を有する下框本体部220と、下框本体部220の上側に形成され、複層ガラス26の端部が挟み込まれるガラス溝部221と、下框本体部220の下側に形成されるカバー部222と、を備える。下框本体部220の下面には、複数の戸車27が回転可能に配置される。
【0025】
召内框23は、中空部を有する召内框本体部230と、召内框本体部230の戸先側(戸先框24側)に形成され、複層ガラス26の端部が挟み込まれるガラス溝部231と、を備える。召内框本体部230の室外側の見付面には、気密材233が配置される嵌合部232と、嵌合部232の戸先側で見込方向室外側に延びた後、見付方向の縦枠14側に屈曲する召内側煙返し部235と、が形成される。また、
図1に示すように、召内框23には戸締り用のクレセント錠29(
図2及び
図3において図示省略)が配置される。
【0026】
戸先框24は、中空部を有する戸先框本体部240と、戸先框本体部240の縦枠13側に形成され、複層ガラス26の端部が挟み込まれるガラス溝部241と、を備える。戸先框本体部240の縦枠14側には、クッション材243が嵌合する嵌合部242が形成される。
【0027】
外障子40について説明する。外障子40は、上框41、下框42及び左右の縦框である召外框43,戸先框44により矩形に枠組みされた框体45と、框体45内に嵌め込まれて固定された面材としての複層ガラス46と、を含んで構成される。
【0028】
框体45のうち、上框41、召外框43及び戸先框44は、内障子20の上框21、召内框23及び戸先框24と略同様の構成である。上框41は、上框本体部410とガラス溝部411を備える。召外框43は、召内框本体部430とガラス溝部431を備え、召内框本体部430の室内側の見付面には、見込方向室内側に延びた後、見付方向の縦枠13側に屈曲する召外側煙返し部435が形成される。召外側煙返し部435は、室内側から召内側煙返し部235に見込方向で対向する。戸先框44は、戸先框本体部440と、ガラス溝部441と、を備える。戸先框本体部440の縦枠13側には、クッション材443が嵌合する嵌合部442が形成される。
【0029】
下框42は、中空部を有する下框本体部420と、下框本体部420の上側に形成され、複層ガラス46の端部が挟み込まれるガラス溝部421と、下框本体部420の下側に形成され、複数の戸車47が回転可能に配置される戸車支持部422と、を備える。
【0030】
戸車支持部422の室外側の見付面下部には、下側に延出する下框延出部425が形成されており、後述する下枠12の室外側立ち上がり部130に見込方向で対向する位置関係にある。下框延出部425は、下框42の長手方向に沿って形成されており、室外側立ち上がり部30との間に隙間を形成する。この下框延出部425の下端部には水切材427(
図3において図示省略)を保持する嵌合部426が形成される。
【0031】
図2に示すように、網戸50は、外障子40の室外側で摺動可能に上枠11及び下枠12に取り付けられる。網戸50は、上枠11の室外側溝部112を室外側で形成する室外側壁部113は、網戸50の上部51が係合する係合部として機能する。また、下枠12の室外側立ち上がり部130が網戸50の下部52が係合する係合部として機能する。なお、
図3以降において網戸50の図示は省略している。
【0032】
図4は、本実施形態の建具1が備える下枠12を示す拡大縦断面図である。
図5は、本実施形態の外障子40の召外側煙返し部435と内障子20の召内側煙返し部235が見込方向で対向している様子を示す拡大横断面図である。
【0033】
外障子40の召外框43は外側に面している。ここで、閉鎖位置の外障子40を基準とすると、召外框43の縦枠14に対向する見込面は室外側となり、下枠12における外障子40の縦枠14側も室外側となる。一方で、外障子40の召外框43よりも縦枠13側は、内障子20によって室外側から隔てられており、室内側に位置することになる。以下の説明において、外障子40の見付方向の縦枠14側を見付方向の室外側とし、見付方向の縦枠13側を見付方向の室内側として説明する場合がある。
【0034】
図4及び
図5の鎖線に示すように、下枠12の上面には下枠風止板60が配置される。下枠風止板60は、閉鎖位置にある内障子20の召内框23に上下方向視で重なる位置関係になっている。
【0035】
図6は、本実施形態の下枠12に配置される下枠風止板60を示す平面図である。
図7は、本実施形態の下枠12に配置される下枠風止板60を示す正面図であり、
図6の矢印Aの方向で見た様子が模式的に示されている。
図6及び
図7に示すように、本実施形態の下枠12の延出片124の見込面124aには加工穴(開口)70が形成されている。下枠風止板60は、延出片124における加工穴75に対して隣接配置される。本実施形態では、下枠風止板60は、加工穴75における見付方向の室内側の端面に沿っている。
【0036】
下枠風止板60は、見込方向室内側に延出する室外側延出部61と、見込方向室内側に延出する室内側延出部62と、を備える。下枠風止板60の室外側延出部61は、内障子20が閉鎖位置にある状態で、召内側煙返し部235の下部に接触するとともに、室外側を向く先端面が外障子40に見込方向で対向している。
【0037】
次に、外障子40の召外側煙返し部435の詳細な構成について説明する。
図8は、本実施形態の外障子40の召外側煙返し部435の下端部を示す拡大正面図である。
図8には、召外側煙返し部435の下端部が示されており、水が召外側煙返し部435の見付面435aをつたって落下する様子が模式的に示されている。
【0038】
図8に示すように、召外側煙返し部435は、途切れることなく上下方向に連続している。召外側煙返し部435の見付方向の室内側の先端面は、上下方向に直線状に延びる垂直部435bとして形成される。
【0039】
召外側煙返し部435は、見付方向の室内側のコーナーが面取り加工されており、傾斜部70が形成される。傾斜部70の上端部70aは垂直部435bに接続され、傾斜部70の下端部70bは見付方向の室外側に延びる水平部435cに接続される。
【0040】
傾斜部70は、上端部70aから下がるにつれて見付方向の縦枠14側に進むように傾斜している。本実施形態では、傾斜部70の上端部70aは、召外框43における室内側見付面430aの幅方向中央よりも、見付方向の室内側に位置している。傾斜部70の下端部70bは、上下方向で下枠風止板60に重ならない位置になっている。また、上端部70aと下端部70bは、僅かに丸められた形状となっている。
【0041】
本実施形態では、安全性の観点から召外側煙返し部435の戸先側の上端部(図示省略)がR加工されている。召外側煙返し部435の上端面は水平となっており、そのR部分が始まる始端部(見付方向の室外側端部)の位置は、傾斜部70の下端部70b(見付方向の室外側端部)の位置に対して見付方向の室内側となっている。なお、召外側煙返し部435の戸先側の上端部の構成は、R部分の形状を変えたり、R部分を省略したりすることもでき、事情に応じて適宜変更可能である。
【0042】
上記実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
本実施形態の建具1が備える外障子40は、室外側に位置する召外框43及び召外框43の室内側見付面430aに配置され、見込方向室内側に延びた後、外障子40の戸先側に曲がる召外側煙返し部435を備え、召外側煙返し部435の外障子40の戸先側に、下がるにつれて外障子40の戸先側と反対側に向かう傾斜部70が形成される。
【0043】
これにより、雨水等が召外側煙返し部435の見付面435aをつたって下がってきても、傾斜部70によって水滴を召外框43の見付方向の室外側に案内できるので、召外側煙返し部435を伝った水がそのまま下方に落下して下枠12を通じて室内側に移動し、漏水の原因となることを効果的に防止できる。また、傾斜部70によって移動方向の先端側に位置する召外側煙返し部435の下端部の角部がなくなるので、安全性もあわせて向上することになる。
【0044】
また、本実施形態では、下枠12には下枠風止板(下枠風止部材)60が取り付けられ、傾斜部70の下端部70bが、下枠風止板60に対して見付方向の室外側であって上下方向で重ならない位置である。
【0045】
これにより、召外側煙返し部435をつたって落下してきた水が下枠風止板60を超え見付方向の室内側に移動する事態の発生を効果的に防止することができる。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0047】
上記実施形態では、傾斜部70が直線状に形成される例を説明したがこの構成に限定されるわけではない。例えば、召外側煙返し部435の下端部が円弧状に曲がりながら雨水を室外側に誘導する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 建具
12 下枠
20 内障子
40 外障子
43 召外框(召合框)
60 下枠風止板(下枠風止部材)
70 傾斜部
70b 下端部
435 召外側煙返し部(煙返し部)