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  • 特許-ピアノの長尺部品の取付け構造 図1
  • 特許-ピアノの長尺部品の取付け構造 図2
  • 特許-ピアノの長尺部品の取付け構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】ピアノの長尺部品の取付け構造
(51)【国際特許分類】
   G10C 3/02 20060101AFI20220328BHJP
   G10C 1/04 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
G10C3/02 170
G10C3/02 160
G10C1/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018061286
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019174592
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100105119
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 孝治
(72)【発明者】
【氏名】山下 光夫
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-333693(JP,A)
【文献】特開平10-133645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10C 3/02
G10C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピアノの構成部品としての長尺部品を、その長さ方向の全体にわたって、被取付け部材に取り付けるピアノの長尺部品の取付け構造であって、
前記長尺部品は、その長さ方向の全体にわたり、前記被取付け部材に当接する当接面と、当該長尺部品の長さ方向の全体にわたって延び、前記当接面よりも前記被取付け部材側に所定長さ突出する取付け用凸部と、を有し、
前記被取付け部材は、前記長尺部品の前記当接面が当接する被当接面と、前記取付け用凸部が嵌合する嵌合凹部と、を有しており、
前記長尺部品は、ピアノの口棒であり、前記被取付け部材は、ピアノの棚板であり、
前記口棒は、単一の材料から成るとともに前記取付け用凸部が一体に構成され、前記棚板に着脱自在に取り付けられていることを特徴とするピアノの長尺部品の取付け構造。
【請求項2】
前記口棒及び前記棚板は、透明な合成樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のピアノの長尺部品の取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピアノの構成部品として用いられる口棒などの長尺部品を、その長さ方向の全体にわたって、棚板などの被取付け部材に取り付けるピアノの長尺部品の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、グランドピアノの口棒(下口棒)は、左右方向に比較的長く延び、鍵盤を下方から支持する水平な棚板の前端部に取り付けられており、ピアノの鍵盤蓋が閉じられた際に、その鍵盤蓋の前端部を下方から支持するものである。また、この下口棒については通常、鍵盤の調整などの際に、鍵盤をピアノの前方に引き出せるようにするために、棚板から取り外すことができ、また、調整後に元に戻せるように構成されている。
【0003】
従来、ピアノの下口棒を棚板に取り付ける取付け構造として、例えば下口棒の底面に、その長さ方向に沿って複数のダボを所定間隔ごとに突設する一方、それらのダボに対応するよう、棚板の上面前端部に複数のダボ穴を形成し、各ダボをダボ穴に挿入することにより、下口棒が棚板の上面前端部に取り付けられている。しかし、下口棒が木製である場合、経年変化やピアノの使用環境などにより、長尺な下口棒が前後方向に反ることがある。この場合、下口棒において、後方の鍵盤側に反った部位と鍵盤との隙間が非常に狭くなり、下口棒の取付け及び取外しの際などに、下口棒が鍵盤に当たることで、鍵盤が損傷するおそれがある。このような不具合を回避するために、従来、例えば特許文献1に記載された下口棒の取付け構造が知られている。
【0004】
この下口棒では、その背面に、長さ方向の全体にわたり、横断面がL字状に形成された金属製のL字部材が取り付けられている。より具体的には、L字部材は、互いに直角を為すように連なった固着部と延出部によって構成され、固着部が下口棒の背面に複数の木ねじで取り付けられる一方、延出部が後方に突出し、棚板の前面に形成された受け部に挿入されるようになっている。そして、L字部材の延出部を棚板の受け部に挿入した状態で、口棒着脱用ねじを棚板の下方からねじ込むことにより、下口棒が棚板の前端に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-63260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のL字部材が取り付けられた下口棒では、そのL字部材によって下口棒の前後方向の反りを抑制することは可能である。しかし、下口棒に別部材であるL字部材を複数の木ねじで取り付けなければならず、下口棒全体としての部品点数の増加に加えて、下口棒の作製に手間がかかってしまう。また、上記の下口棒の取付け構造を、外装部品が例えば透明な合成樹脂などで構成されたピアノに適用した場合、L字部材の他、複数の木ねじや口棒着脱用ねじなどが、ピアノの外部から見えることがあり、この場合には、ピアノの外観や見栄えが低下する。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、ピアノの構成部品としての長尺部品を、反りを発生させることなく、被取付け部材に取り付けることができ、しかも、透明なピアノに適用した場合でも、良好な外観を確保することができるピアノの長尺部品の取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ピアノの構成部品としての長尺部品を、その長さ方向の全体にわたって、被取付け部材に取り付けるピアノの長尺部品の取付け構造であって、長尺部品は、その長さ方向の全体にわたり、被取付け部材に当接する当接面と、長尺部品の長さ方向の全体にわたって延び、当接面よりも被取付け部材側に所定長さ突出する取付け用凸部と、を有し、被取付け部材は、長尺部品の当接面が当接する被当接面と、取付け用凸部が嵌合する嵌合凹部と、を有しており、長尺部品は、ピアノの口棒であり、被取付け部材は、ピアノの棚板であり、口棒は、単一の材料から成るとともに取付け用凸部が一体に構成され、棚板に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ピアノの構成部品としての長尺部品が、その長さ方向の全体にわたる上記の当接面及び取付け用凸部を有する一方、この長尺部品が取り付けられる被取付け部材には、長尺部品の当接面が当接する被当接面、及び長尺部品の取付け用凸部が嵌合する嵌合凹部が設けられている。長尺部品が被取付け部材に取り付けられた状態では、長尺部品の当接面が被取付け部材の被当接面に当接するので、その長尺部品を、被取付け部材によって、被当接面側からしっかりと支持することができる。また、長尺部品の取付け用凸部が被取付け部材の嵌合凹部に嵌合するので、長尺部品の長さ方向の全体にわたる取付け用凸部の変形が抑制され、その結果、長尺部品の全体としての反りの発生も、効果的に防止することができる。
【0011】
また、上記の構成によれば、長尺部品がピアノの口棒であり、この口棒が単一の材料から成るとともに上記取付け用凸部が一体に構成されている。したがって、口棒の取付け用凸部を棚板の係合凹部に嵌合させるだけで、口棒を棚板に容易に着脱自在に取り付けることができ、従来に比べて、口棒の部品点数を低減することができる。
【0012】
請求項に係る発明は、請求項に記載のピアノの長尺部品の取付構造において、口棒及び棚板は、透明な合成樹脂で構成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、棚板への口棒の取付け部分は、口棒の取付け用凸部を棚板の嵌合凹部に嵌合させた部分のみであるので、従来の取付け構造を透明な材料から成る口棒及び棚板に適用する場合と異なり、上記の取付け部分にL字部材や複数のねじなどが外部から見えることはなく、ピアノの良好な外観を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による長尺部品の取付け構造を、棚板への下口棒の取付けに適用したグランドピアノを示す斜視図である。
図2図1のグランドピアノにおける棚板及び下口棒を示す斜視図であり、(a)は下口棒を棚板に取り付けた状態、(b)は下口棒を棚板から取り外した状態を示す。
図3】下口棒及び棚板の一部を示す縦断面図であり、(a)は下口棒を棚板に取り付けた状態、(b)は下口棒を棚板から取り外した状態を示す。の縦断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による長尺部品の取付け構造を、棚板への下口棒の取付けに適用したグランドピアノを示している。このピアノ1は、外装部品の大部分が透明な合成樹脂(例えばアクリル樹脂)で構成された、いわゆる透明グランドピアノであり、3本の脚部1aで下方から支持されたピアノ本体2と、その上面を開閉する大屋根3とを備えている。
【0016】
ピアノ本体2の前部には、多数の白鍵及び黒鍵を左右方向に並設した鍵盤4が設けられ、その上方に、鍵盤4を開閉する鍵盤蓋5が設けられている。また、ピアノ本体2の後部には、所定形状の金属製のフレーム6が設けられ、そのフレーム6の側方を囲うように、側板7が配置されている。なお、上記の大屋根3は、側板7の平面形状とほぼ同様の外形を有する大屋根後3aと、横長矩形状に形成され、大屋根後3aの前側にヒンジ(図示せず)を介して折り畳み可能に連結された大屋根前3bとを有している。
【0017】
また、ピアノ本体2の底面前部には、図示しない筬を介して、鍵盤4を下方から支持する棚板8(被取付け部材)が設けられている。加えて、この棚板8の前端部、具体的には、鍵盤4の直ぐ前側には、下口棒9(長尺部品)が着脱自在に取り付けられている。なお、これらの棚板8及び下口棒9は、前述したように、透明な合成樹脂で構成されている。
【0018】
図2は、棚板8及び下口棒9を示しており、同図(a)は下口棒9を棚板8に取り付けた状態、同図(b)は下口棒9を棚板8から取り外した状態を示している。同図に示すように、棚板8は、所定の厚さを有するとともに平面形状が横長矩形状に形成されており、上面8a(被当接面)の前端部に、上方に開口しかつ左右方向に所定長さ延びる長溝8b(嵌合凹部)が形成されている。この長溝8bは、下口棒9の長さと同じ長さを有するとともに、下口棒9の後述する取付け用凸部9fの突出長さとほぼ同じ深さを有している。
【0019】
一方、下口棒9は、図3(b)に示すように、前面9a、背面9b、底面9c、上面9d及び斜面9eによって、前後方向(図3の左右方向)及び上下方向にそれぞれ所定の厚さ及び高さを有し、断面形状が所定サイズの台形状に形成されている。また、下口棒9には、その長さ方向の全体にわたって延びるとともに、底面9cから下方に所定長さ突出しかつ背面9bと面一に構成され、棚板8の長溝8bに嵌合する取付け用凸部9fが設けられている。
【0020】
なお、下口棒9の作製については、例えば、図3(b)に示す断面形状の押出口を有するダイスを用い、合成樹脂を押出成形によって成形したり、断面形状が縦長矩形状に押し出された合成樹脂の材料を、適宜切削したりすることによって、比較的容易に作製することができる。
【0021】
上記のように構成された棚板8及び下口棒9では、図3(a)に示すように、下口棒9の取付け用凸部9fが棚板8の長溝8bに嵌合するとともに、下口棒9の底面9cが棚板8の上面8aに当接した状態で、下口棒9が棚板8に着脱自在に取り付けられる。なお、棚板8に取り付けられた下口棒9は、その両端部において、左右の拍子木10(図1において左側のもののみ図示)により、上方へ移動不能な状態で係止される。
【0022】
また、上記のように下口棒9が棚板8に取り付けられた状態では、下口棒9の底面9cの前端部が棚板8の前端よりも前方に若干突出している。これにより、鍵盤4の調整などの際に、下口棒9を棚板8から取り外す際に、左右の拍子木10による両端部の係止を解除した後、適切な工具などを用い、下口棒9の突出した底面9cに下方から外力を加えることで、下口棒9を棚板8から容易に取り外すことができる。
【0023】
以上のように、本実施形態によれば、下口棒9が棚板8に取り付けられた状態では、下口棒9の底面9cが棚板8の上面8aに当接するので、下口棒9を、棚板8によって、下方からしっかりと支持することができる。また、下口棒9の取付け用凸部9fが棚板8の長溝8bに嵌合するので、下口棒9の長さ方向の全体にわたる取付け用凸部9fの変形が抑制され、その結果、下口棒9の全体としての反りの発生も、効果的に防止することができる。また、下口棒9を棚板8に取り付ける際には、下口棒9の取付け用凸部9fを棚板8の長溝8bに嵌合させるだけで、下口棒9を棚板8に容易に取り付けることができ、従来に比べて、下口棒9の部品点数を低減することができる。さらに、棚板8への下口棒9の取付け部分は、下口棒9の取付け用凸部9fを棚板8の長溝8bに嵌合させた部分のみであるので、従来の取付け構造を透明な材料から成る下口棒及び棚板に適用する場合と異なり、上記の取付け部分にL字部材や複数のねじなどが外部から見えることはなく、ピアノ1の良好な外観を確保することができる。
【0024】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、本発明の取付け構造が適用される長尺部品として、グランドピアノの下口棒9を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ピアノの構成部品として用いられる他の長尺な部品の取付け構造に適用することも可能である。例えば、ピアノ1において、左右方向に延びる上口棒11を、大屋根前3bの下面前端部に取り付ける取付け構造に適用することも可能である。なおこの場合、上口棒11は、大屋根前3bから取り外す必要がないので、接着剤などを用いて、大屋根前3bに固定することが好ましい。
【0025】
また、実施形態では、棚板8及び下口棒9が透明な合成樹脂で構成されたグランドピアノについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、棚板8及び下口棒9などが木材で構成される一般的なグランドピアノはもちろん、棚板に口棒が取り付けられるアップライトピアノなどにも適用することが可能である。さらに、実施形態で示した棚板8及び下口棒9の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ピアノ
2 ピアノ本体
3 大屋根
3b 大屋根前(被取付け部材)
4 鍵盤
8 棚板(被取付け部材)
8a 棚板の上面(被当接面)
8b 棚板の長溝(嵌合凹部)
9 下口棒(長尺部品)
9c 底面(当接面)
9f 取付け用凸部
11 上口棒(長尺部品)
図1
図2
図3