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特許7046676大領域の電極を具備するバルーンカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】大領域の電極を具備するバルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20220328BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20220328BHJP
【FI】
A61B18/14
A61M25/10 510
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018067204
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2018171444
(43)【公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-01-19
(31)【優先権主張番号】15/476,191
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0287994(US,A1)
【文献】特開2015-154946(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0031810(US,A1)
【文献】米国特許第06142993(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0120593(US,A1)
【文献】特開2015-188759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12-18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具であって、
体腔に挿入するような構成の遠位端を有し、前記遠位端を通って開口する内腔を有するプローブと、
拡張可能なバルーンであって、前記拡張可能なバルーンが前記内腔を通って配置され、拡張されるとき、前記拡張可能なバルーンの遠位側にある遠位極が、前記内腔の反対側に配置されるように、前記内腔を通って前記体腔に配置することができる、拡張可能なバルーンと、
前記拡張可能なバルーンの前記遠位側に接続し、前記遠位極からの円弧の30°以内にある前記拡張可能なバルーンの前記遠位側の領域の少なくとも50%にわたって延びる電極とを具備し、
前記拡張可能なバルーンの前記遠位側が、連続的に滑らかな表面を有し、
前記電極は、前記遠位極を覆わず、第一の大きさを有する第一電極を具備し、
前記第一の大きさよりも小さな第二の大きさを有し、前記拡張可能なバルーンの前記遠位極に接続する第二電極を具備する、医療器具。
【請求項2】
前記電極が、多角形ではない形状を有する、請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
前記電極が、前記遠位極の周囲で対称である、請求項1に記載の医療器具。
【請求項4】
前記拡張可能なバルーンは、拡張されたとき、細長くない球状の形状を有する、請求項1に記載の医療器具。
【請求項5】
前記拡張可能なバルーンの前記遠位側に接続される、さらなる電極を具備する、請求項1に記載の医療器具。
【請求項6】
前記拡張可能なバルーンは、前記内腔を通って配置されるときは拡張されず、前記拡張可能なバルーンは、拡張されたとき、バルーン直径が8ミリメートル以下であり、前記内腔は、内腔直径が2.5ミリメートルである、請求項1に記載の医療器具。
【請求項7】
前記遠位極からの円弧の30°以内にある前記拡張可能なバルーンの前記遠位側の領域の少なくとも50%にわたって延びる前記電極は、前記遠位極からの円弧の30°以内にある前記拡張可能なバルーンの前記遠位側の領域の少なくとも75%にわたって延びる電極を含む、請求項1に記載の医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、侵襲性医療用プローブに関し、具体的には、1つ以上の大領域の電極を具備するバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルは、その遠位端に拡張可能なバルーンを具備しており、必要な場合に、これを拡張させ、収縮させることができる。手術中に、バルーンは、典型的には、カテーテルを患者の体腔(例えば、心臓)に挿入する間は収縮されており、必要な手技を行うために拡張させ、手技が終了したら修飾させる。
【0003】
Dimmerらの米国特許出願第2012/0310233号は、その開示内容は参照として本明細書に援用され、異なる形状と構成を有し得る電極を具備するバルーンカテーテルを記載する。電極は、直径が5~25ミリメートルの拡張可能なバルーンに接続される。
【0004】
Salahiehらの米国特許第8,295,902号は、その開示内容は参照として本明細書に援用され、異なる形状、大きさ、パターンを有し得る電極を具備する組織電極アセンブリを記載する。電極の構成は、電極によって体組織に運ばれるエネルギーの量及びアブレーションラインに影響を与える。
【0005】
Govariらの欧州特許出願第EP 2,923,666号は、その開示内容は参照として本明細書に援用され、温度を測定するような構成の1つ以上のアブレーション電極と複数のマイクロ電極とを有するバルーンを具備するカテーテルを記載する。いくつかの実施形態において、マイクロ電極は、バルーンの外壁の長手方向軸に沿って周方向に配置されている。代替的な実施形態において、マイクロ電極は、フレキシブル回路基板上に配置され、バルーンの外壁に接続する。
【0006】
Tothらの国際公開第2014/070999号は、その開示内容は参照として本明細書に援用され、マイクロアブレーション手技に使用することができ、複数の電極を具備するプローブを記載する。電極は、マイクロ電極、刺激電極及びアブレーション電極を含んでいてもよい。
【0007】
Vahidらの米国特許出願第2009/0076498号は、その開示内容は参照として本明細書に援用され、バルーンの遠位前側表面にアブレーション電極を有する視覚化バルーンを具備する、視覚化し、アブレーションするシステムを記載する。
【0008】
Wallaceらの米国特許出願第2008/0319350号は、その開示内容は参照として本明細書に援用され、体腔の大きさを測定し、バルーンから種々の周辺の内腔標的へのアブレーションエネルギーの送達を正規化するために、この測定値を使用して組織をアブレーションするような構成のデバイスを記載する。アブレーションエネルギーは、膨張可能なバルーンの上に直接配置することができるか、又はバルーンの周囲に係合する電極支持体の上に配置することができるエネルギー送達要素、例えば、高周波電極、電極アレイ又は固体回路によって運ばれる。
【0009】
Boweらの米国特許第6,771,996号は、その開示内容は参照として本明細書に援用され、肺静脈の病巣除去のためにアブレーション及び高解像度のマッピングを行うカテーテルシステムが記載される。カテーテルシステムは、複数のマッピング電極がバルーンの遠位端のアレイに配置された、拡張可能なバルーンを具備していてもよい。
【0010】
参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0011】
上記説明は、当該分野における関連技術の一般的概論として記載したものであって、この説明に含まれる何らの情報が本特許出願に対する先行技術を構成することを容認するものと解釈するべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、体腔に挿入するような構成の遠位端を有し、遠位端を通って開口する内腔を有するプローブと、拡張可能なバルーンであって、バルーンが内腔を通って配置され、拡張されるとき、バルーンの遠位側にある遠位極が、内腔の反対側に配置されるように、内腔を通って体腔に配置することができる、拡張可能なバルーンと、拡張可能なバルーンの遠位側に接続し、遠位極からの円弧の30°以内にあるバルーンの遠位側の領域の少なくとも50%にわたって延びる電極と、を具備する、医療器具が提供される。
【0013】
いくつかの実施形態において、電極は、多角形ではない形状を有する。さらなる実施形態において、電極は、遠位極の周囲で対称である。さらなる実施形態において、バルーンは、拡張されたとき、細長くない球状の形状を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、バルーンの遠位側は、連続的に滑らかな表面を有する。バルーンの遠位側が連続的に滑らかな表面を有するさらなる実施形態において、電極は、複数の副電極を含んでいてもよい。バルーンの遠位側が連続的に滑らかな表面を有するさらなる実施形態において、電極は、遠位極を覆わず、第一の大きさを有する第一電極を具備していてもよく、医療器具は、第一の大きさよりも小さな第二の大きさを有し、拡張可能なバルーンの遠位極に接続する第二電極を具備していてもよい。
【0015】
追加の実施形態において、医療器具は、拡張可能なバルーンの遠位側に接続したさらなる電極を具備していてもよい。いくつかの実施形態において、バルーンは、内腔を通って配置されるときは拡張されず、バルーンは、拡張されたとき、バルーン直径が8ミリメートル以下であり、内腔は、内腔直径が2.5ミリメートルである。さらなる実施形態において、遠位極からの円弧の30°以内にあるバルーンの遠位側の領域の少なくとも50%にわたって延びる電極は、遠位極からの円弧の30°以内にあるバルーンの遠位側の領域の少なくとも75%にわたって延びる電極を含む。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、体腔に挿入するような構成の遠位端を有し、遠位端を通って開口する内腔を有するプローブを与えることと、拡張可能なバルーンを与えることであって、拡張可能なバルーンは、バルーンが内腔を通って配置され、拡張されるとき、バルーンの遠位側にある遠位極が、内腔の反対側に配置されるように、内腔を通って体腔に配置することができる、ことと、拡張可能なバルーンの遠位側に、遠位極からの円弧の30°以内にあるバルーンの遠位側の領域の少なくとも50%にわたって延びる電極を接続すること、とを含む方法も提供される。
【0017】
さらに、本発明の一実施形態によれば、方法であって、医療用プローブの遠位端を患者の体腔に挿入することであって、医療用プローブは、遠位端を通って開口する内腔と、バルーンが内腔を通って配置され、拡張されるとき、バルーンの遠位側にある遠位極が、内腔の反対側に配置されるように、内腔を通って体腔に配置することができる拡張可能なバルーンと、拡張可能なバルーンの遠位側に接続し、遠位極からの円弧の30°以内にあるバルーンの遠位側の領域の少なくとも50%にわたって延びる電極とを具備することを含む方法が提供される。この方法は、体腔の中で、カテーテルに対して遠位の領域でアブレーションする組織の領域を選択することと、その領域の大きさに応答してバルーンの拡張圧を制御することと、組織の選択された領域に対し、バルーンの遠位側を押すことと、組織の選択された領域をアブレーションすることとも含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、拡張圧を制御することは、潅注の流速を制御することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
ここで、本願開示の発明をあくまで一例として添付図面を参照しつつ説明する。
図1】本発明の一実施形態に係る、遠位端がバルーンを有している医療用プローブを具備する医療システムの模式的な図による説明である。
図2】本発明の一実施形態に係る、バルーンに接続した複数のアブレーション電極と複数のマイクロ電極とを具備する遠位端の模式的な図による説明である。
図3】本発明の一実施形態に係る医療用プローブの遠位端の模式的な断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る、心内膜組織でアブレーション手技を行うために医療用プローブを用いる方法を模式的に示すフロー図である。
図5】本発明の一実施形態に従って、バルーンが完全に拡張している間に心内膜組織でアブレーション手技を行っている医療用プローブの遠位端の模式的な詳細図である。
図6】本発明の一実施形態に従って、バルーンが部分的に拡張している間に心内膜組織でアブレーション手技を行っている医療用プローブの遠位端の模式的な詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の複数の実施形態において、医療用プローブ(この場合はバルーンカテーテル)は、体腔に挿入するような構成の遠位端を有し、プローブは、遠位端を通って開口する内腔を有する。医療用プローブは、バルーンが内腔を通って配置され、拡張されるとき、バルーンの遠位側にある遠位極が、内腔の反対側に配置されるように、内腔を通って体腔に配置することができる、拡張可能なバルーンも具備している。医療用プローブは、さらに、拡張可能なバルーンの遠位側に接続し、遠位極からの円弧の30°以内にあるバルーンの遠位側の領域の少なくとも50%にわたって延びる電極を具備している。
【0021】
本発明の実施形態を実施するバルーンカテーテルは、バルーンの遠位極と接触する組織のアブレーションを可能にする。本発明の複数の実施形態において、バルーン中の拡張圧を変えることは、バルーンの順応性及び大きさに影響を与え、したがって、電極の表面領域のうち、体腔内の組織と接触する領域の割合に影響を与える。したがって、本明細書で以下に記載するように、心臓アブレーション手技中に、医療専門家は、バルーン中の拡張圧を制御することによって、アブレーション領域の大きさを制御することができる。
【0022】
システムの説明
図1は、医療用プローブ22と制御コンソール24とを具備する医療システム20の模式的な図による説明であり、図2は、本発明の一実施形態に係る、医療用プローブの遠位端26の模式的な図による説明である。医療システム20は、例えば、Biosense Webster Inc.(ダイヤモンドバー、カリフォルニア、米国)によって製造されたCARTO(登録商標)システムに基づいていてもよい。本明細書で以下に記載される複数の実施形態において、医療用プローブ22は、診断又は治療といった処置に使用される、例えば、患者30の心臓28においてアブレーション手技を行うためのバルーンカテーテルを具備している。又は、医療用プローブ22を、心臓又は他の体の臓器における他の治療及び/又は診断目的のために、必要な変更を加えて使用してもよい。
【0023】
医療手技中、医療専門家32は、医療用プローブの遠位端26に固定された拡張可能なバルーン36(図2)が体腔に入るように、医療用プローブ22を、前もって患者の体腔(例えば、心臓28の心室腔)に配置されている生体適合性の鞘(図示せず)に挿入する。バルーン36は、典型的には、生体適合性材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン、ナイロン又はペバックスから作られる。
【0024】
制御コンソール24は、ケーブル38によって体表面電極に接続し、典型的には、患者30に貼り付けられた接着性皮膚パッチ40を含む。制御コンソール24は、接着性皮膚パッチ40とバルーン36の外壁に接続する1つ以上の電極44(本明細書ではマイクロ電極44とも呼ばれる)との間で測定されたインピーダンスに基づき、心臓28の中の遠位端26の位置座標を決定するプロセッサ42を具備している。本発明の実施形態は、マイクロ電極44を位置センサとして用いることを記載しているが、医療手技中に他のタスクを行う(例えば、心臓28の電気活性を測定する)ためのマイクロ電極を用いることは、本発明の精神及び範囲に含まれると考えられる。
【0025】
プロセッサ42は、典型的には、医療用プローブ22の要素(例えば、マイクロ電極44)からの信号を受信し、制御コンソール24の他の構成要素を制御するための適切なフロントエンドとインターフェース回路を備える汎用コンピュータを含む。プロセッサ42は、本明細書に記載される機能を実施するためにソフトウェア中にプログラムされていてもよい。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態で制御コンソール24にダウンロードされてもよく、又は光学的、磁気的、若しくは電子的記録媒体など、非一時的な有形媒体上に提供されてもよい。又は、プロセッサ42の機能の一部又は全ては、専用又はプログラム可能なデジタルハードウェア要素によって行われてもよい。
【0026】
図1及び図2に示される医療システムは、遠位端26の位置を測定するためにインピーダンスに基づいた検知を使用しているが、他の位置追跡技術を使用してもよい(例えば、磁気系のセンサを用いる技術)。インピーダンスに基づいた位置追跡技術については、例えばそれらの開示内容を参照によって本明細書に援用するところの米国特許第5,983,126号、同第6,456,864号、及び同第5,944,022号に記載されている。磁気位置追跡技術については、例えば、それらの開示内容を参照により本明細書に援用するところの米国特許第5,391,199号、同第5,443,489号、同第6,788,967号、同第6,690,963号、同第5,558,091号、同第6,172,499号、同第6,177,792号に記載されている。本明細書で上に記載する位置検知方法は、上述のCARTO(登録商標)システムで実施され、上に引用した特許に詳細に記載されている。
【0027】
制御コンソール24は、入力/出力(I/O)通信インターフェース46も具備しており、制御コンソールが、医療用プローブ22の電極44及び接着性皮膚パッチ40から信号を送信し、及び/又はこれらに信号を送信することができる。マイクロ電極44及び接着性皮膚パッチ40から受信した信号に基づき、プロセッサ42は、患者の体内のバルーン36の位置を示すマップ48を作成することができる。手技中に、プロセッサ42は、医療専門家32に対し、ディスプレイ50上にマップ48を提示し、このマップを表すデータをメモリ52に保存することができる。メモリ52は、ランダムアクセスメモリ又はハードディスクドライブなど、任意の好適な揮発性及び/又は不揮発性メモリを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、医療専門家32は、1つ以上の入力デバイス54を用い、マップ48を操作することができる。代替的な実施形態において、ディスプレイ50は、画像48を提示することに加え、医療専門家32からの入力を受け入れるような構成であり得るタッチスクリーンを具備していてもよい。
【0028】
本発明の複数の実施形態において、遠位端26は、1つ以上の電極56を有しており、この電極56は、典型的には、アブレーションに使用され、そのため、本明細書ではアブレーション電極56とも呼ばれ、バルーン36の外壁に接続している。図2に示される構成において、アブレーション電極56は、多角形ではない形状を有し、マイクロ電極44は、アブレーション電極の中の「島」に配置されている。電極44及び56は、バルーンと共に製造することができ、典型的には、バルーン36の外壁の上を覆う金を含んでいてもよい。
【0029】
制御コンソール24は、アブレーションモジュール58と、拡張モジュール59も具備している。アブレーションモジュール58は、アブレーションパラメータ、例えば、アブレーション電極56に運ばれるアブレーション出力(例えば、高周波エネルギー)のレベル及び持続時間をモニタリングし、制御するような構成である。拡張モジュール59は、バルーン36の中の拡張圧をモニタリングし、制御するような構成である。本明細書で以下に図5及び図6を参照する記載に示されるように、医療専門家32は、アブレーション手技中に、電極56と接触する心臓組織の量を調節するために、バルーン中の拡張圧を制御することができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、拡張モジュール59は、潅注流を使用してバルーン36を拡張させ、バルーンの中の潅注流の流速を制御することによって、バルーンの中の拡張圧を制御することができる。これらの実施形態において、バルーン36は、潅注流をバルーンから出すことができる複数の小さな孔(図示せず)を有している。これらの孔は、典型的には、直径が0.025~0.500ミリメートル(mm)(例えば、0.089mm)である。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態に係る遠位端26の模式的な断面図である。バルーン36は、医療用プローブ22の内腔62の遠位端から延びるような構成の管状シャフト60に固定されており、バルーンは、内腔を通って心臓28のような体腔に配置されるような構成である。
【0032】
バルーン36は、近位極領域64と、遠位極66とを有しており、これらはバルーンの長手方向の赤道68の上にある。バルーン36は、さらに、近位側70と、遠位側72とを有しており、これらはバルーンの緯度方向の赤道74によって分割されている。近位側70は、近位極領域64を含む緯度方向の赤道74によって終了する第一半球を含み、遠位側72は、遠位極66を含む緯度方向の赤道によって終了する第二半球を含む。
【0033】
本発明の複数の実施形態において、バルーン36は、バルーン中に構造要素(例えば、エクステンダーシャフト)を含まない。さらに、バルーン36は、管状シャフト60にバルーンを接続する近位極領域64に、主な開口部78を有する(すなわち、拡張/収縮のため)。言い換えると、当該技術分野で知られているアブレーションに使用される他のバルーンとは異なり、バルーン36は、貫通するエクステンダーシャフトを含んでいない。
【0034】
さらに、遠位側72は、連続的に滑らかな表面を有しており(すなわち、遠位側に大きな開口部がなく)、バルーン36は、拡張されたとき、細長くない球状の形状を有する。いくつかの実施形態において、医療用プローブ22は、直径が2.5ミリメートルであり、バルーン36は、拡張されたとき、直径が8ミリメートルまでであってもよい。拡張されていない状態で、バルーン36は、医療用プローブの中に引っ込んでいてもよい。本願発明者らは、これらの寸法を用い、バルーンが、拡張されたときにその細長くない球状の形状を形成することができ、収縮されたときにプローブ22の中に適合するように引っ込ませることができることを発見した。
【0035】
アブレーション電極56は、識別番号に文字を付加することによって本明細書で区別され、そのため、アブレーション電極は、アブレーション電極56A及び56Bを含む。本発明の複数の実施形態において、アブレーション電極56Aは、バルーン36に接続し(すなわち、矢印76によって示されるように)、そのため、アブレーション電極56Aは、遠位極66からの円弧の30°以内にある遠位側72の領域の少なくとも50%にわたって延びる。いくつかの実施形態において、アブレーション電極56Aは、遠位極66からの円弧の30°以内にある遠位側72の領域の少なくとも75%にわたって延びていてもよい。さらなる実施形態において、アブレーション電極56Aの形状は、遠位極66の周囲で対称である。図3に示される例において、アブレーション電極56Bは、バルーン36に接続し、近位側70と遠位側72の両方を包含する。
【0036】
さらなる実施形態において、図3に示されるように、遠位端72は、マイクロ電極44を含んでいなくてもよい。これらの実施形態において、電極56を位置センサとして使用することができる(すなわち、組織をアブレーションするために使用されるものに加えて)。さらなる実施形態において、アブレーション電極56Aは、遠位極66からの円弧の30°以内にある遠位側72の領域の少なくとも50%にわたって延びる複数の「副電極」を含んでいてもよい。単純化のために、インターフェース46及びモジュール58に対する電極56及びマイクロ電極44の接続は、示されていない。いくつかの実施形態において、接続は、バルーンの内側からバルーンの外側表面まで延びるワイヤ(図示せず)によって作られる。電気接続は、導電性エポキシ又は溶接を用いて形成することができる。
【0037】
図4は、アブレーション手技を行うための医療用プローブ22を用いる方法を模式的に示すフロー図であり、図5及び図6(異なるスケールで描かれている)は、本発明の一実施形態に従って、医療用プローブが心臓28の組織でアブレーション手技を行っている間の遠位端26の模式的な詳細図である。図5は、バルーン36が低圧下[3.4~34kPa(0.5~5.0P.S.I.)]にある遠位端を示し、図6は、バルーンが高圧下にある遠位端を示す。高圧下[例えば、>34kPa(例えば、>5.0P.S.I.)]では、バルーンの直径が大きくなる。このことは、電極56の間のギャップ102の拡大から優先的に生じる。拡大したとき、もっと大きな電極表面が組織と接触する。これにより、もっと大きく、もっと深い損傷部が作られる。
【0038】
低圧下では、バルーン36は、第一直径(例えば、2.5mm)まで拡張し、高圧下では、バルーンは、第一直径より大きな第二直径(例えば、8.0mm)まで拡張する。図5に示されるように、アブレーション手技中に遠位側72が組織100に対して押されている間、バルーン36が第一直径まで拡張すると、電極56Aの小さな部分のみが組織と接触する。しかし、図6に示されるように、アブレーション手技中に遠位側72が組織100に対して押されている間、バルーン36が第二直径まで拡張すると、電極56A及び56Bのほとんど全て(又は全て)が組織と接触する。本発明の実施形態を実施するバルーンカテーテルにおいて、高圧を用いてバルーン36を拡張させると、バルーン中の弾性の生体適合性材料が伸長し(すなわち、電極56は、典型的には伸長しない)、それによって、ギャップ102の表面領域が大きくなり、電極56Bを前方向に(すなわち、組織100に対して)「押す」。
【0039】
選択工程80において、医療専門家32は、例えば、心臓28のすでに作成したマップから、医療用プローブ22の遠位にある組織の領域である、心臓28の中の組織100の領域を選択し、第一決定工程82において、プロセッサ42が、選択された領域の寸法(したがって、大きさ)を決定する。挿入工程84において、医療専門家32は、遠位端26が心臓28の心室腔に入るように医療用プローブ22を操作し、心室腔で医療用プローブを操作している間、プロセッサ42は、マイクロ電極44によって測定されるインピーダンスに基づき、第二決定工程86においてバルーン36の現在の位置を決定する。
【0040】
制御工程88において、選択された領域の決定された大きさに応答して、医療専門家32は、拡張モジュール59を用い、バルーン36の拡張圧(したがって、その大きさ)を制御することができる。いくつかの実施形態において、図6に示されるように、1つ以上の電極56は、作用する力に応答し、選択された領域に適合し、この領域を覆う。いくつかの実施形態において、プロセッサ42が、選択された領域の大きさを決定すると、プロセッサは、領域の大きさに応答して拡張圧を決定することができる(すなわち、バルーン36の遠位側72が組織100に対して押されるときに、1つ以上のアブレーション電極が選択された領域を確実に覆うために)。
【0041】
第一位置決め工程90において、医療専門家32は、バルーン36の遠位側72が組織100の選択された領域に体して押されるように、医療用プローブ22の位置決めを行い、アブレーション工程92において、1つ以上のアブレーション電極56は、アブレーションを行うために、組織に対してアブレーションモジュール58から受け取ったアブレーションエネルギーを運ぶ。
【0042】
本発明の複数の実施形態において、バルーン36中の拡張圧は、バルーンの順応性に影響を与える。したがって、使用されるアブレーション電極56の数、アブレーション電極によってアブレーションされる領域の大きさは、バルーンの拡張圧に依存して変わる。図6に示される例において、バルーン36は、高い拡張圧を用いて拡張され、それによって、バルーンを膨張させ、もっと大きな電極が組織と接触するように配置される。図5において、バルーンは、低い拡張圧を用いて拡張され、それによって、バルーンは小さくなり、バルーンの遠位面に対して少ない電極が存在する(すなわち、少ない電極が組織と接触する)。
【0043】
図5に示されるように、バルーン36が低い拡張圧で拡張するとき、アブレーション手技中に、アブレーション電極56Aの一部のみが組織と接触する(したがってアブレーションすることができる)。バルーン36が、遠位極66を包含する所与のマイクロ電極44を具備する(すなわち図2に示されるような)複数の実施形態において、アブレーション電極56A(すなわち、所与のマイクロ電極を囲む)によって運ばれるアブレーションエネルギーに応答して発生する熱が、所与のマイクロ電極と接触する組織の付近の組織(すなわち、アブレーション電極56Aによって覆われていない遠位極66の周囲にあるバルーンの36の外壁部分)に伝わる(したがって、アブレーションする)。
【0044】
図6に示されるように、バルーン36の大きさが大きくなると、アブレーション電極56Aのほとんど全てと、アブレーション電極56Bの一部が、組織100と接触することができる。言い換えると、アブレーションのために組織100に高周波エネルギーを伝えることができるアブレーション電極56の領域は、バルーン36の中の拡張圧に関係があり、その結果、圧力が高まるにつれて、その領域が大きくなる(また、その逆も真である)。さらに、高圧状態では、遠位側72が組織に対して押されている間、周囲の血液からの干渉はほとんどなく、その結果、アブレーション電極56は、さらに深い損傷部を作成し、組織の大きな領域をアブレーションすることができる。
【0045】
アブレーション電極56が組織100と接触している間、アブレーション電極によって覆われていないバルーン36上のギャップ(すなわち、開放空間)102が存在する。手術中に、アブレーション電極56によって伝えられるアブレーションエネルギーに応答して生成される組織中の熱(すなわち、開放空間の周囲にある)は、組織100と接触するギャップ102と接触する組織の周囲の組織に伝わる(したがって、アブレーションする)ことができる。
【0046】
フロー図に戻り、比較工程94において、アブレーションされることが必要なさらなる組織が存在する場合には、この方法を工程80から継続する。工程96に戻り、アブレーションされることが必要なさらなる組織100が存在しない場合には、アブレーション手技を完結させ、この方法を終了する。
【0047】
上に述べた実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示し、説明したものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書の上に記載されている様々な特徴の組合せと部分組合せの両方、並びに前述の説明を一読すると、当業者が想起すると思われる、先行技術に開示されていないそれらの変形及び改変を含む。
【0048】
〔実施の態様〕
(1) 医療器具であって、
体腔に挿入するような構成の遠位端を有し、該遠位端を通って開口する内腔を有するプローブと、
拡張可能なバルーンであって、前記バルーンが前記内腔を通って配置され、拡張されるとき、該バルーンの遠位側にある遠位極が、前記内腔の反対側に配置されるように、前記内腔を通って前記体腔に配置することができる、拡張可能なバルーンと、
前記拡張可能なバルーンの前記遠位側に接続し、前記遠位極からの円弧の30°以内にある前記バルーンの前記遠位側の領域の少なくとも50%にわたって延びる電極とを具備する、医療器具。
(2) 前記電極が、多角形ではない形状を有する、実施態様1に記載の医療器具。
(3) 前記電極が、前記遠位極の周囲で対称である、実施態様1に記載の医療器具。
(4) 前記バルーンは、拡張されたとき、細長くない球状の形状を有する、実施態様1に記載の医療器具。
(5) 前記バルーンの前記遠位側が、連続的に滑らかな表面を有する、実施態様1に記載の医療器具。
【0049】
(6) 前記電極が、複数の副電極を含む、実施態様5に記載の医療器具。
(7) 前記電極は、前記遠位極を覆わず、第一の大きさを有する第一電極を具備し、
該第一の大きさよりも小さな第二の大きさを有し、前記拡張可能なバルーンの前記遠位極に接続する第二電極を具備する、実施態様5に記載の医療器具。
(8) 前記拡張可能なバルーンの前記遠位側に接続される、さらなる電極を具備する、実施態様1に記載の医療器具。
(9) 前記バルーンは、前記内腔を通って配置されるときは拡張されず、前記バルーンは、拡張されたとき、バルーン直径が8ミリメートル以下であり、前記内腔は、内腔直径が2.5ミリメートルである、実施態様1に記載の医療器具。
(10) 前記遠位極からの円弧の30°以内にある前記バルーンの前記遠位側の領域の少なくとも50%にわたって延びる前記電極は、前記遠位極からの円弧の30°以内にある前記バルーンの前記遠位側の領域の少なくとも75%にわたって延びる電極を含む、実施態様1に記載の医療器具。
【0050】
(11) 方法であって、
体腔に挿入するような構成の遠位端を有し、該遠位端を通って開口する内腔を有するプローブを与えることと、
拡張可能なバルーンを与えることであって、前記拡張可能なバルーンは、前記バルーンが前記内腔を通って配置され、拡張されるとき、該バルーンの遠位側にある遠位極が、該内腔の反対側に配置されるように、該内腔を通って前記体腔に配置することができる、ことと、
前記拡張可能なバルーンの前記遠位側に、前記遠位極からの円弧の30°以内にある前記バルーンの前記遠位側の領域の少なくとも50%にわたって延びる電極を接続することと、を含む、方法。
(12) 前記電極が、多角形ではない形状を有する、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記電極が、前記遠位極の周囲で対称である、実施態様11に記載の方法。
(14) 前記バルーンは、拡張されたとき、細長くない球状の形状を有する、実施態様11に記載の方法。
(15) 前記バルーンの前記遠位側が、連続的に滑らかな表面を有する、実施態様11に記載の方法。
【0051】
(16) 前記電極が、複数の副電極を含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記電極は、前記遠位極を覆わず、第一の大きさを有する第一電極を具備し、
前記拡張可能なバルーンの前記遠位極に、該第一の大きさよりも小さな第二の大きさを有する第二電極を接続することを含む、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記拡張可能なバルーンの前記遠位側にさらなる電極を接続することを含む、実施態様11に記載の方法。
(19) 前記バルーンは、前記内腔を通って配置されるときは拡張されず、前記バルーンは、拡張されたとき、バルーン直径が8ミリメートル以下であり、前記内腔は、内腔直径が2.5ミリメートルである、実施態様11に記載の方法。
(20) 前記遠位極からの円弧の30°以内にある前記バルーンの前記遠位側の領域の少なくとも50%にわたって延びる前記電極は、前記遠位極からの円弧の30°以内にある前記バルーンの前記遠位側の領域の少なくとも75%にわたって延びる電極を含む、実施態様19に記載の方法。
【0052】
(21) 方法であって、
医療用プローブの遠位端を患者の体腔に挿入することであって、該医療用プローブは、
前記遠位端を通って開口する内腔と、
拡張可能なバルーンであって、前記バルーンが前記内腔を通って配置され、拡張されるとき、該バルーンの遠位側にある遠位極が、該内腔の反対側に配置されるように、該内腔を通って前記体腔に配置することができる、拡張可能なバルーンと、
前記拡張可能なバルーンの前記遠位側に接続し、前記遠位極からの円弧の30°以内にある前記バルーンの前記遠位側の領域の少なくとも50%にわたって延びる電極とを具備する、ことと、
前記体腔の中で、カテーテルに対して遠位の領域でアブレーションする組織の領域を選択することと、
その領域の大きさに応答して前記バルーンの拡張圧を制御することと、
前記組織の選択された領域に対し、前記バルーンの前記遠位側を押すことと、
前記組織の選択された前記領域をアブレーションすることと、を含む、方法。
(22) 前記拡張圧を制御することは、潅注の流速を制御することを含む、実施態様21に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6