(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】特にオプトエレクトロニクスデバイスにおける使用のための有機分子
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20220328BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220328BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20220328BHJP
C07D 519/00 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
H05B33/14 B
H05B33/22 B
H05B33/22 D
H05B33/10
C09K11/06 655
C07D519/00 CSP
(21)【出願番号】P 2018076491
(22)【出願日】2018-04-12
【審査請求日】2021-01-14
(32)【優先日】2017-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517297359
【氏名又は名称】サイノラ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ダンツ
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/005699(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03141550(EP,A1)
【文献】特開2017-059826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
H05B 33/10
C09K 11/06
C07D 519/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-式Iの構造を含むまたはこれからなる第1の化学部分と、
-それぞれ互いに独立して、式IIの構造を含むまたはこれからなる2つの第2の化学部分と
を含むまたはこれらからなる有機発光分子であって、前記第1の化学部分が、単結合を介して前記2つの第2の化学部分のそれぞれに連結している有機発光分子。
【化1】
式I
【化2】
式II
[式中、
§は、前記第1の化学部分を、前記2つの第2の化学部分のうちの1つに連結している単結合の結合部位を表し、
#は、前記2つの第2の化学部分のうちの1つを前記第1の化学部分に連結している単結合の結合部位を表し、
XはOまたはSであり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、互いに独立して、
水素、
重水素、
C
1-C
5-アルキル(1つまたは複数の水素原子は重水素で置換されていてもよい)、
C
6-C
18-アリール(1つまたは複数の置換基R
9で置換されていてもよい)、および
C
3-C
17-ヘテロアリール(1つまたは複数の置換基R
9で置換されていてもよい)からなる群から選択され、
R
9は、出現ごとに互いに独立して、
重水素、
C
1-C
5-アルキル(1つまたは複数の水素原子は重水素で置換されていてもよい)、および
C
6-C
18-アリール(1つまたは複数の水素原子は重水素で置換されていてもよい)からなる群から選択される]
【請求項2】
前記2つの第2の化学部分が、それぞれの出現ごとに互いに独立して、式IIaの構造を含むまたはこれからなる、請求項1に記載の有機発光分子。
【化3】
式IIa
(式中、#、X、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は請求項1で定義された通りである)
【請求項3】
XがOである、請求項1または2に記載の有機発光分子。
【請求項4】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8が、互いに独立して、H、Me、
iPr、
tBuおよびPhからなる群から選択され、互いに独立して、Me、
iPr、
tBuおよびPhからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい、請求項1から3のいずれか1項に記載の有機発光分子。
【請求項5】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8がそれぞれHである、請求項1から4のいずれか1項に記載の有機発光分子。
【請求項6】
請求項1から5の
いずれか1項に記載の有機発光分子の、有機オプトエレクトロニクスデバイスにおける、発光性発光体、および/またはホスト材料、および/または電子輸送材料、および/または正孔注入材料、および/または正孔ブロッキング材料としての使用。
【請求項7】
前記有機オプトエレクトロニクスデバイスが、
・有機発光ダイオード(OLED)、
・発光電気化学セル
、
・有機ダイオード、
・有機太陽電池、
・有機トランジスター、
・有機電界効果トランジスター、
・有機レーザーおよび
・ダウンコンバージョンエレメント
からなる群から選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
(a)請求項1から5のいずれか1項に記載の少なくとも1つの有機
発光分子
と、
(b)請求項1から5のいずれか1項に記載の有機
発光分子とは異なる1つまたは複数の発光体および/またはホスト材料と、
(c)任意選択の1つもしくは複数の色素および/または1つもしくは複数の溶媒と
を含むまたはこれらからなる組成物。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか1項に記載の1つの有機
発光分子または請求項8に記載の組成物を含む有機オプトエレクトロニクスデバイス
であって、有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル
、有機ダイオード、有機太陽電池、有機トランジスター、有機電界効果トランジスター、有機レーザーおよびダウンコンバージョンエレメントからなる群から選択されるデバイスの形態での有機オプトエレクトロニクスデバイス。
【請求項10】
- 基板と、
- アノードと、
- カソードと、
- 少なくとも発光層と
を含み、前記アノードまたは前記カソードが、前記基板上に配置され、前記発光層がアノードとカソードの間に配置され、請求項1から5
のいずれか1項に記載の有機
発光分子または請求項8に記載の組成物を含む、請求項9に記載の有機オプトエレクトロニクスデバイス。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか1項に記載の有機
発光分子または請求項8に記載の組成物を使用し
、真空蒸着方法によるまたは溶液からの
前記有機
発光分子の処理を含む、有機オプトエレクトロニクスデバイスを生成するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機分子および有機発光ダイオード(OLED)および他のオプトエレクトロニクスデバイスにおけるこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の目的は、オプトエレクトロニクスデバイスにおける使用に対して適切な分子を提供することである。
本目的は、新規クラスの有機分子を提供する本発明により達成される。
本発明によると、有機分子は純粋に有機分子である、すなわち、有機オプトエレクトロニクスデバイスにおける使用が公知である金属複合体とは対照的に、これらはいかなる金属イオンも含有しない。
本発明によると、有機分子は、青色、空色または緑色スペクトルの範囲内において発光極大を示す。有機分子は、特に、420nm~520nmの間、好ましくは440nm~495nmの間、より好ましくは450nm~470nmの間において発光極大を示す。本発明による有機分子の光ルミネセンス量子収率は、特に、60%以上である。本発明による分子は、特に熱的に活性化された遅延蛍光(TADF)を示す。オプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機発光ダイオード(OLED)における本発明による分子の使用は、デバイスのより高い効率をもたらす。対応するOLEDは、公知の発光体材料および同等の色を有するOLEDより高い安定性を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明による有機発光分子は、式Iの構造を含むまたはこれからなる第1の化学部分と、
【化1】
式I
それぞれ互いに独立して、式IIの構造を含むまたはこれからなる2つの第2の化学部分と、
【化2】
式II
を含むまたはこれらからなり、
第1の化学部分は、単結合を介して2つの第2の化学部分のそれぞれに連結している。
【0004】
§は、第1の化学部分を、2つの第2の化学部分のうちの1つに連結している単結合の結合部位を表す。
#は、第1の化学部分を、2つの第2の化学部分のうちの1つに連結している単結合の結合部位を表す。
XはOまたはSである。
【0005】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、互いに独立して、
水素、
重水素、
C1-C5-アルキル(1個または複数の水素原子は重水素で置換されていてもよい)、
C6-C18-アリール(1個または複数の置換基R9で置換されていてもよい)、および
C3-C17-ヘテロアリール(1つまたは複数の置換基R9で置換されていてもよい)
からなる群から選択される。
【0006】
R9は、出現ごとに互いに独立して、
重水素、
C1-C5-アルキル(1個または複数の水素原子は重水素で置換されていてもよい)、および
C6-C18-アリール(1個または複数の水素原子は重水素で置換されていてもよい)
からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】PMMAにおける例1(10質量%)の発光スペクトルである。
【
図2】PMMAにおける例2(10質量%)の発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態では、2つの第2の化学部分は、それぞれの出現ごとに互いに独立して、式IIaの構造を含むまたはこれからなる。
【化3】
式IIa
(式中、#、X、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は上記の通り定義される)
本発明の一実施形態では、XはOである。
本発明の一実施形態では、R
1は、H、Me、
iPr、
tBuおよびPhからなる群から選択され、互いに独立して、Me、
iPr、
tBuおよびPhからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0009】
本発明の一実施形態では、R2は、H、Me、iPr、tBuおよびPhからなる群から選択され、互いに独立して、Me、iPr、tBuおよびPhからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
本発明の一実施形態では、R3は、H、Me、iPr、tBuおよびPhからなる群から選択され、互いに独立して、Me、iPr、tBuおよびPhからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0010】
本発明の一実施形態では、R4は、H、Me、iPr、tBuおよびPhからなる群から選択され、互いに独立して、Me、iPr、tBuおよびPhからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
本発明の一実施形態では、R5は、H、Me、iPr、tBuおよびPhからなる群から選択され、互いに独立して、Me、iPr、tBuおよびPhからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
本発明の一実施形態では、R6は、H、Me、iPr、tBuおよびPhからなる群から選択され、互いに独立して、Me、iPr、tBuおよびPhからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態では、R7は、H、Me、iPr、tBuおよびPhからなる群から選択され、互いに独立して、Me、iPr、tBuおよびPhからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
本発明の一実施形態では、R8は、H、Me、iPr、tBuおよびPhからなる群から選択され、互いに独立して、Me、iPr、tBuおよびPhからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
本発明の一実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれHである。
【0012】
本発明のさらなる実施形態では、2つの第2の化学部分は、それぞれの出現ごとに互いに独立して、式IIbの構造、式IIb-2の構造、式IIb-3の構造または式IIb-4の構造を含むまたはこれらからなる。
【化4】
式IIb 式IIb-2 式IIb-3 式IIb-4
(式中、#、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は上記の通り定義される)
本発明のさらなる実施形態では、2つの第2の化学部分は、それぞれの出現ごとに互いに独立して、式IIcの構造、式IIc-2の構造、式IIc-3の構造または式IIc-4の構造を含むまたはこれらからなる。
【化5】
式IIc 式IIc-2
【化6】
式IIc-3 式IIc-4
(式中、#、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は上記の通り定義される)
【0013】
本発明のさらなる実施形態では、2つの第2の化学部分は、それぞれの出現ごとに互いに独立して、式IIdの構造、式IId-2の構造、式IId-3の構造または式IId-4の構造を含むまたはこれらからなる。
【化7】
式IId 式IId-2
【化8】
式IId-3 式IId-4
(式中、#、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は上記の通り定義される)
【0014】
本出願全体にわたり使用されているような「アリール」および「芳香族」という用語は、任意の単環式、二環式または多環式の芳香族部分として最も広範な意味で理解することができる。したがって、アリール基は、6~18個の芳香族環原子を含有し、ヘテロアリール基は3~17個の芳香族環原子を含有し、この中の少なくとも1個がヘテロ原子である。それにもかかわらず、本出願全体にわたり、芳香族環原子の数は、ある特定の置換基の定義において下付き文字での数として与えられていてもよい。特に、芳香族複素環は1個~3個のヘテロ原子を含む。この場合も同様に、「ヘテロアリール」および「ヘテロ芳香族」という用語は、少なくとも1個のヘテロ原子を含む任意の単環式、二環式または多環式のヘテロ芳香族部分として最も広範な意味で理解することができる。ヘテロ原子は、出現ごとに同じでも異なってもよく、個々にN、OおよびSからなる群から選択されてもよい。したがって、「アリーレン」という用語は、他の分子構造に対して2つの結合部位を保持し、よって、リンカー構造としての役目を果たす二価の置換基を指す。例示的な実施形態における基がここで与えられた定義と異なって定義された場合、例えば、芳香族環原子の数またはヘテロ原子の数が与えられた定義と異なる場合、例示的な実施形態における定義が適用されるものとする。本発明によると、縮合(環化)した芳香族またはヘテロ芳香族多環式化合物は、2つ以上の単一の芳香族またはヘテロ芳香族環で構築され、これらが縮合反応を介して多環式化合物を形成した。
【0015】
特に、本出願全体にわたり使用されているようなアリール基またはヘテロアリール基という用語は、芳香族またはヘテロ芳香族基の任意の位置を介して結合できる基を含み、これらは、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、フルオランテン、ベンゾアントラセン、ベンズフェナントレン、テトラセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン;ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジノイミダゾール、キノキサリノイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナプトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、1,3,5-トリアジン、キノキサリン、ピラジン、フェナジン、ナフチリジン、カルボリン、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,2,3,4-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールまたは上記の基の組合せから誘導される。
本出願全体にわたり使用されているような環式基という用語は、任意の単環式、二環式または多環式の部分として最も広範な意味で理解することができる。
【0016】
本出願全体にわたり使用されているようなアルキル基という用語は、任意の直鎖、分枝、または環式アルキル置換基として最も広範な意味で理解することができる。特に、アルキルという用語は、置換基メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル(nPr)、i-プロピル(iPr)、シクロプロピル、n-ブチル(nBu)、i-ブチル(iBu)、s-ブチル(sBu)、t-ブチル(tBu)、シクロブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、t-ペンチル、2-ペンチル、neo-ペンチル、シクロペンチル、1-メチルシクロペンチル、および2-メチルペンチルを含む。
水素は、本明細書中に記述されている場合にはいつでも、出現ごとに重水素で置き換えることができる。
【0017】
分子の断片が置換基である、またはさもなければ別の部分に付加されていると記載されている場合、その名称は、それが断片(例えば、ナフチル(naphtyl)、ジベンゾフリル)であるかのようにまたはそれが全分子(例えば、ナフタレン、ジベンゾフラン)であるかのように書かれていてもよいことを理解されたい。本明細書で使用される場合、置換基または付加された断片を命名するこれらの異なる方式は等しいものとみなされる。
一実施形態では、本発明による有機分子は、10質量%の有機分子を有するポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)のフィルム内で、室温で、100μ秒以下、70μ秒以下、特に50μ秒以下、より好ましくは10μ秒以下、または7μ秒以下の励起状態寿命を有する。
【0018】
一実施形態では、本発明による有機分子は、10質量%の有機分子を有するビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド(DPEPO)のフィルム内で、室温で、100μ秒以下、70μ秒以下、特に50μ秒以下、より好ましくは10μ秒以下、または7μ秒以下の励起状態寿命を有する。
本発明の一実施形態では、本発明による有機分子は、あるΔEST値を示す熱的に活性化した遅延蛍光(TADF)発光体を表し、このΔEST値は、5000cm-1未満、好ましくは3000cm-1未満、より好ましくは1500cm-1未満、さらにより好ましくは1000cm-1未満またはさらには500cm-1未満の、第1の励起一重項状態(S1)と、第1の励起三重項状態(T1)との間のエネルギー差異に対応する。
【0019】
本発明のさらなる実施形態では、本発明による有機分子は、10質量%の有機分子を有するポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)のフィルム中、室温で、半値全幅が最大0.45eV未満、好ましくは0.42eV未満、より好ましくは0.38eV未満、さらにより好ましくは0.36eV未満、またはさらには0.34eV未満であり、可視または近紫外線範囲、すなわち、380~800nmの波長範囲に発光ピークを有する。
本発明のさらなる実施形態では、本発明による有機分子は、光ルミネセンス量子収率(PLQY)(単位:%)を発光のCIEy色座標で割ることにより算出される、150を超える、特に200を超える、好ましくは300を超える、より好ましくは500を超える、またはさらに700を超える「青色物質指数」(BMI)を有する。
【0020】
軌道および励起状態エネルギーは、実験法により、または量子化学的手法を利用した計算、特に密度汎関数理論の計算により求めることができる。最高被占分子軌道EHOMOのエネルギーは、サイクリックボルタンメトリー測定から当業者に公知の方法により、0.1eVの精度で求められる。最低空分子軌道ELUMOのエネルギーは、EHOMO+Egap(式中、Egapは以下の通り求められる:別途述べられていない限り、ホスト化合物に対して、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)中に10質量%のホストを有するフィルムの発光スペクトルの立ち上がりをEgapとして使用する)として計算される。発光体分子に対して、PMMA架橋における、10質量%の発光体を有するフィルムの励起および発光スペクトルにおけるエネルギーとして、Egapを求める。
【0021】
第1の励起三重項状態T1のエネルギーは、低温、典型的には77Kでの発光スペクトルの立ち上がりから求める。第1の励起一重項状態および最低三重項状態がエネルギー的に>0.4eVの分だけ分離されているホスト化合物に対して、リン光は2-Me-THFにおける定常状態スペクトルにおいて普通可視である。したがって、三重項エネルギーは、リン光スペクトルの立ち上がりとして求めることができる。TADF発光体分子に対して、第1の励起三重項状態T1のエネルギーは、特に述べられていない限り、10質量%の発光体を有するPMMAのフィルム内で測定された、77Kでの遅延発光スペクトルの立ち上がりから求める。ホストと発光体化合物の両方に対して、第1の励起一重項状態S1のエネルギーは、特に述べられていない限り、10質量%のホストまたは発光体化合物を有するPMMAのフィルム内で測定された、発光スペクトルの立ち上がりから求める。
発光スペクトルの立ち上がりは、発光スペクトルの接線とx軸との交点を計算することにより求める。発光スペクトルの接線は、発光バンドの高エネルギー側および発光スペクトルの最大強度の半値のポイントに設定される。
本発明のさらなる態様は、有機オプトエレクトロニクスデバイスにおける、本発明による有機分子の、発光性の発光体もしくは吸収体としての、および/またはホスト材料としての、および/または電子輸送材料としての、および/または正孔注入材料としての、および/または正孔ブロッキング材料としての使用に関する。
【0022】
有機オプトエレクトロニクスデバイスは、可視または近紫外線(UV)範囲、すなわち、380~800nmの波長の範囲内で光を発光するのに適切である有機材料に基づく任意のデバイスとして最も広範な意味で理解することができる。より好ましくは、有機オプトエレクトロニクスデバイスは、可視の範囲、すなわち、400~800nmで光を発光することができる。
【0023】
このような使用との関連で、有機オプトエレクトロニクスデバイスは、より具体的には以下からなる群から選択される:
・有機発光ダイオード(OLED)、
・発光電気化学セル、
・OLEDセンサー、特に、外部から気密封止されていない気体および蒸気センサー、
・有機ダイオード、
・有機太陽電池、
・有機トランジスター、
・有機電界効果トランジスター、
・有機レーザーおよび
・ダウンコンバージョンエレメント。
好ましい実施形態では、このような使用との関連で、有機オプトエレクトロニクスデバイスは、有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル(LEC)、および発光トランジスターからなる群から選択されるデバイスである。
使用する場合、有機オプトエレクトロニクスデバイス、より具体的にはOLEDにおける発光層内の本発明による有機分子の分率は、1~99質量%、より具体的には5~80質量%である。別の実施形態では、発光層における有機分子の割合は100質量%である。
一実施形態では、発光層は、本発明による有機分子だけでなく、三重項(T1)および一重線(S1)エネルギー準位が、前記有機分子の三重項(T1)および一重線(S1)エネルギー準位よりエネルギー的に高いホスト材料も含む。
【0024】
本発明のさらなる態様は、
(a)特に発光体および/またはホストの形態での本発明による少なくとも1つの有機分子、特に発光体および/またはホストの形態でのものと、
(b)本発明による有機分子とは異なる1つもしくは複数の発光体および/またはホスト材料と、
(c)任意選択の1つもしくは複数の色素および/または1つもしくは複数の溶媒と
を含むまたはこれらからなる組成物に関する。
【0025】
一実施形態では、発光層は
(a)本発明による少なくとも1つの有機分子、特に発光体および/またはホストの形態のものと、
(b)本発明による有機分子とは異なる1つもしくは複数の発光体および/またはホスト材料と、
(c)任意選択の1つもしくは複数の色素および/または1つもしくは複数の溶媒と
を含むまたはこれらからなる組成物を含む(または(本質的に)これらからなる)。
【0026】
特に好ましくは、発光層EMLは、
(i)1~50質量%、好ましくは5~40質量%、特に10~30質量%の1つまたは複数の本発明による有機分子と、
(ii)5~99質量%、好ましくは30~94.9質量%、特に40~89質量%の少なくとも1つのホスト化合物Hと、
(iii)任意選択で、0~94質量%、好ましくは0.1~65質量%、特に1~50質量%の、本発明による分子の構造とは異なる構造を有する少なくとも1つのさらなるホスト化合物Dと、
(iv)任意選択で0~94質量%、好ましくは0~65質量%、特に0~50質量%の溶媒と、
(v)任意選択で0~30質量%、特に0~20質量%、好ましくは0~5質量%の、本発明による分子の構造とは異なる構造を有する少なくとも1つのさらなる発光体分子Fと
を含むまたはこれらからなる組成物を含む(または(本質的に)これらからなる)。
好ましくは、エネルギーは、ホスト化合物Hから本発明による1つまたは複数の有機分子に移動することができ、特にホスト化合物Hの第1の励起三重項状態T1(H)から、本発明による1つまたは複数の有機分子の第1の励起三重項状態T1(E)に移動することができ、および/またはホスト化合物Hの第1の励起一重項状態S1(H)から本発明による1つまたは複数の有機分子の第1の励起一重項状態S1(E)に移動することができる。
【0027】
さらなる実施形態では、発光層EMLは、
(i)1~50質量%、好ましくは5~40質量%、特に10~30質量%の本発明による1つの有機分子と、
(ii)5~99質量%、好ましくは30~94.9質量%、特に40~89質量%の1つのホスト化合物Hと、
(iii)任意選択で0~94質量%、好ましくは0.1~65質量%、特に1~50質量%の、本発明による分子の構造と異なる構造を有する、少なくとも1つのさらなるホスト化合物Dと、
(iv)任意選択で0~94質量%、好ましくは0~65質量%、特に0~50質量%の溶媒と、
(v)任意選択で0~30質量%、特に0~20質量%、好ましくは0~5質量%の、本発明による分子の構造とは異なる構造を有する、少なくとも1つのさらなる発光体分子Fと
を含むまたはこれらからなる組成物を含む(または(本質的に)これらからなる)。
【0028】
一実施形態では、ホスト化合物Hは、-5~-6.5eVの範囲のエネルギーEHOMO(H)を有する最高被占分子軌道HOMO(H)を有し、少なくとも1つのさらなるホスト化合物Dは、エネルギーEHOMO(D)を有する最高被占分子軌道HOMO(D)を有し、EHOMO(H)>EHOMO(D)である。
さらなる実施形態では、ホスト化合物HはエネルギーELUMO(H)を有する最低空分子軌道LUMO(H)を有し、少なくとも1つのさらなるホスト化合物DはエネルギーELUMO(D)を有する最低空分子軌道LUMO(D)を有し、ELUMO(H)>ELUMO(D)である。
【0029】
一実施形態では、ホスト化合物HはエネルギーEHOMO(H)を有する最高被占分子軌道HOMO(H)およびエネルギーELUMO(H)を有する最低空分子軌道LUMO(H)を有し、
少なくとも1つのさらなるホスト化合物Dは、エネルギーEHOMO(D)を有する最高被占分子軌道HOMO(D)およびエネルギーELUMO(D)を有する最低空分子軌道LUMO(D)を有し、
本発明による有機分子は、エネルギーEHOMO(E)を有する最高被占分子軌道HOMO(E)およびエネルギーELUMO(E)を有する最低空分子軌道LUMO(E)を有し、
EHOMO(H)>EHOMO(D)であり、本発明による有機分子の最高被占分子軌道HOMO(E)のエネルギー準位(EHOMO(E))と、ホスト化合物Hの最高被占分子軌道HOMO(H)のエネルギー準位(EHOMO(H))との間の差異が、-0.5eV~0.5eVの間、より好ましくは-0.3eV~0.3eVの間、さらにより好ましくは-0.2eV~0.2eVの間、またはさらには-0.1eV~0.1eVの間であり、
ELUMO(H)>ELUMO(D)であり、本発明による有機分子の最低空分子軌道LUMO(E)のエネルギー準位(ELUMO(E))と、少なくとも1つのさらなるホスト化合物Dの最低空分子軌道LUMO(D)の(ELUMO(D))との間の差異は、-0.5eV~0.5eVの間、より好ましくは-0.3eV~0.3eVの間、さらにより好ましくは-0.2eV~0.2eVの間、またはさらには-0.1eV~0.1eVの間である。
【0030】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載されている種類の有機分子または組成物を含む有機オプトエレクトロニクスデバイス、より具体的には有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル、OLEDセンサー、より具体的には、外部から気密封止されていない気体および蒸気センサー、有機ダイオード、有機太陽電池、有機トランジスター、有機電界効果トランジスター、有機レーザーおよびダウンコンバージョンエレメントからなる群から選択されるデバイスの形態のものに関する。
【0031】
好ましい実施形態では、有機オプトエレクトロニクスデバイスは、有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル(LEC)、および発光トランジスターからなる群から選択されるデバイスである。
本発明の有機オプトエレクトロニクスデバイスの一実施形態では、本発明による有機分子は、発光層EML中の発光材料として使用される。
本発明の有機オプトエレクトロニクスデバイスの一実施形態では、発光層EMLは、本明細書に記載されている本発明による組成物からなる。
【0032】
例として、有機オプトエレクトロニクスデバイスがOLEDである場合、これは、以下の層構造を示してもよく、
1.基板
2.アノード層A
3.正孔注入層、HIL
4.正孔輸送層、HTL
5.電子ブロッキング層、EBL
6.発光層、EML
7.正孔ブロッキング層、HBL
8.電子輸送層、ETL
9.電子注入層、EIL
10.カソード層、
ここで、OLEDは各層を含み、ただし任意選択で、異なる層は融合されていてもよく、OLEDは、1つより多くの層の上で定義された各層の種類を含んでもよい。
【0033】
さらに、有機オプトエレクトロニクスデバイスは、例として水分、蒸気および/または気体を含む、環境内の有害種への有害な曝露からデバイスを保護する1つまたは複数の保護層を任意選択で含んでもよい。
本発明の一実施形態では、有機オプトエレクトロニクスデバイスはOLEDであり、これは、以下の反転した層構造を示し、
1.基板
2.カソード層
3.電子注入層、EIL
4.電子輸送層、ETL
5.正孔ブロッキング層、HBL
6.発光層、B
7.電子ブロッキング層、EBL
8.正孔輸送層、HTL
9.正孔注入層、HIL
10.アノード層A、
ここで、反転した層構造を有するOLEDは各層を含み、ただし任意選択で、異なる層は融合されていてもよく、OLEDは、1つより多くの層の上で定義された各層の種類を含んでもよい。
【0034】
本発明の一実施形態では、有機オプトエレクトロニクスデバイスはOLEDであり、これはスタック構造を示してもよい。OLEDが並んで配置されている典型的な配置に反して、この構造では、個々の単位は、互いの上にスタックされている。スタックした構造を示すOLEDを用いてブレンドされた光を作ることができ、特に青色、緑色および赤色のOLEDをスタッキングすることにより白色光を作ることができる。さらに、スタックした構造を示すOLEDは、電荷発生層(CGL)を任意選択で含んでもよく、この電荷発生層は通常、2つのOLEDサブユニットの間に位置し、通常、n-ドープしたおよびp-ドープした層からなり、1つのCGLのn-ドープした層は通常アノード層のより近くに位置する。
【0035】
本発明の一実施形態では、有機オプトエレクトロニクスデバイスはOLEDであり、このOLEDは、アノードとカソードの間に2つ以上の発光層を含む。特に、このいわゆる直列OLEDは、3つの発光層を含み、1つの発光層が赤色光を発光し、1つの発光層が緑色光を発光し、1つの発光層が青色光を発光し、任意選択で個々の発光層の間でさらなる層、例えば、電荷発生層、ブロッキング層または輸送層などを含んでもよい。さらなる実施形態では、発光層は隣接してスタックされる。さらなる実施形態では、直列OLEDは、それぞれ2つの発光層の間に電荷発生層を含む。加えて、隣接する発光層、または電荷発生層により分離されている発光層は融合されてもよい。
【0036】
基板は、任意の材料または材料の組成物で形成されてもよい。最も頻繁には、ガラススライドが基板として使用される。代わりに、薄い金属層(例えば、銅、金、銀またはアルミニウムフィルム)またはプラスチックフィルムまたはスライドを使用することができる。これは、より高度の可撓性を可能にし得る。アノード層Aは、(本質的に)透明なフィルムを得ることを可能にする材料で主に構成される。OLEDからの発光を可能にするように両方の電極の少なくとも1つが(本質的に)透明であるべきなので、アノード層Aまたはカソード層Cのいずれかは透明である。好ましくは、アノード層Aは、透明な導電性オキシド(TCO)の大きな含有量を含むか、またはさらにこれからなる。このようなアノード層Aは、インジウムスズ酸化物、アルミニウム酸化亜鉛、フッ素ドープした酸化スズ、インジウム酸化亜鉛、PbO、SnO、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ウォルフラム、グラファイト、ドープしたSi、ドープしたGe、ドープしたGaAs、ドープしたポリアニリン、ドープしたポリーピロールおよび/またはドープしたポリチオフェンを例示的に含んでもよい。
【0037】
特に好ましくは、アノード層Aは、(本質的に)インジウムスズ酸化物(ITO)(例えば、(InO3)0.9(SnO2)0.1)からなる。透明な導電性オキシド(TCO)により引き起こされるアノード層Aの粗さは、正孔注入層(HIL)を使用することにより埋め合わせることができる。さらに、TCOから正孔輸送層(HTL)への擬電荷担体の輸送が促進されるという意味で、HILは擬電荷担体(すなわち、正孔)の注入を促進することができる。正孔注入層(HIL)は、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(ethylendioxythiophene)(PEDOT)、ポリスチレンスルホネート(PSS)、MoO2、V2O5、CuPCまたはCuI、特にPEDOTとPSSの混合物を含み得る。正孔注入層(HIL)はまた、アノード層Aから正孔輸送層(HTL)への金属の拡散を阻止することができる。HILは、PEDOT:PSS(ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート)、PEDOT(ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン)、mMTDATA(4,4’,4”-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン)、スピロ-TAD(2,2’,7,7’-テトラキス(n,n-ジフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン)、DNTPD(N1,N1’-(ビフェニル-4,4’-ジイル)ビス(N1-フェニル-N4,N4-ジ-m-トリルベンゼン-1,4-ジアミン)、NPB(N,N’-nis-(1-ナフタレニル)-N,N’-ビス-フェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン)、NPNPB(N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ-[4-(N,N-ジフェニル-アミノ)フェニル]ベンジジン)、MeO-TPD(N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)ベンジジン)、HAT-CN(1,4,5,8,9,11-ヘキサアザトリフェニレン-ヘキサカルボニトリル)および/またはスピロ-NPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-(1-ナフチル)-9,9’-スピロビフルオレン-2,7-ジアミン)を例示的に含んでもよい。
【0038】
アノード層Aまたは正孔注入層(HIL)に隣接して、通常、正孔輸送層(HTL)が位置する。本発明では、任意の正孔輸送化合物を使用することができる。例として、電子を豊富に含むヘテロ芳香族化合物、例えば、トリアリールアミンおよび/またはカルバゾールなどを正孔輸送化合物として使用することができる。HTLは、アノード層Aと発光層EMLとの間のエネルギーバリアを低減し得る。正孔輸送層(HTL)はまた電子ブロッキング層(EBL)であってもよい。好ましくは、正孔輸送化合物は、これらの三重項状態T1と同等の高エネルギーレベルを保持する。例として、正孔輸送層(HTL)は、星形状ヘテロ環化合物、例えば、トリス(4-カルバゾイル-9-イルフェニル)アミン(TCTA)、ポリ-TPD(ポリ(4-ブチルフェニル-ジフェニル-アミン))、[アルファ]-NPD(ポリ(4-ブチルフェニル-ジフェニル-アミン))、TAPC(4,4’-シクロヘキシリデン-ビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン])、2-TNATA(4,4’,4”-トリス[2-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン)、スピロ-TAD、DNTPD、NPB、NPNPB、MeO-TPD、HAT-CNおよび/またはTrisPcz(9,9’-ジフェニル-6-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール)を含んでもよい。加えて、HTLは、有機の正孔輸送マトリックスにおいて無機または有機ドーパントで構成されていてもよいp-ドープした層を含んでもよい。遷移金属オキシド、例えば、酸化バナジウム、酸化モリブデンまたはタングステンオキシドなどを無機ドーパントとして例示的に使用し得る。テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)、銅-ペンタフルオロベンゾエート(Cu(I)pFBz)または遷移金属複合体を有機ドーパントとして例示的に使用し得る。
【0039】
EBLは、mCP(1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン)、TCTA、2-TNATA、mCBP(3,3-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、tris-Pcz、CzSi(9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ビス(トリフェニルシリル)-9H-カルバゾール)、および/またはDCB(N,N’-ジカルバゾリル-1,4-ジメチルベンゼン)を例示的に含んでもよい。
【0040】
正孔輸送層(HTL)に隣接して、通常、発光層EMLが位置する。発光層EMLは、少なくとも1つの発光分子を含む。特に、EMLは本発明による少なくとも1つの発光分子を含む。一実施形態では、発光層は、本発明による有機分子のみを含む。通常、EMLは、1つまたは複数のホスト材料をさらに含む。例として、ホスト材料は、CBP(4,4’-ビス-(N-カルバゾリル)-ビフェニル)、mCP、mCBP Sif87(ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イルトリフェニルシラン)、CzSi、Sif88(ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イル)ジフェニルシラン)、DPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾール、T2T(2,4,6-トリス(ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン)、T3T(2,4,6-トリス(トリフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン)および/またはTST(2,4,6-トリス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン)から選択される。ホスト材料は、通常、有機分子の第1の三重項(T1)および第1の一重線(S1)エネルギー準位よりエネルギー的に高い第1の三重項(T1)および第1の一重線(S1)エネルギー準位を示すように選択されるべきである。
【0041】
本発明の一実施形態では、EMLは、少なくとも1つの正孔が優位なホストおよび1つの電子が優位なホストを有するいわゆる混合ホスト系を含む。特定の実施形態では、EMLは、まさに本発明による1つの発光分子種、および電子が優位なホストとしてT2Tと、正孔が優位なホストとしてCBP、mCP、mCBP、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾールおよび9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾールから選択されるホストとを含む混合ホスト系を含む。さらなる実施形態では、EMLは、50~80質量%、好ましくは60~75質量%の、CBP、mCP、mCBP、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾールおよび9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾールから選択されるホスト;10~45質量%、好ましくは15~30質量%のT2T、および5~40質量%、好ましくは10~30質量%の本発明による発光分子を含む。
【0042】
発光層EMLに隣接して、電子輸送層(ETL)が位置してもよい。本発明では、任意の電子輸送体を使用することができる。例として、電子不足化合物、例えば、ベンゾイミダゾール、ピリジン、トリアゾール、オキサジアゾール(例えば、1,3,4-オキサジアゾール)、ホスフィンオキシドおよびスルホンを使用することができる。電子輸送体はまた、星形状ヘテロ環化合物、例えば、1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェニル(TPBi)であってよい。ETLは、NBphen(2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Alq3(アルミニウム-トリス(8-ヒドロキシキノリン))、TSPO1(ジフェニル-4-トリフェニルシリルフェニル-ホスフィンオキシド)、BPyTP2(2,7-ジ(2,2’-ビピリジン-5-イル)トリフェニル)、Sif87(ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イルトリフェニルシラン)、Sif88(ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イル)ジフェニルシラン)、BmPyPhB(1,3-ビス[3,5-ジ(ピリジン-3-イル)フェニル]ベンゼン)および/またはBTB(4,4’-ビス-[2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジニル)]-1,1’-ビフェニル)を含み得る。任意選択で、ETLは、Liqなどの材料でドープされていてもよい。電子輸送層(ETL)はまた正孔をブロックすることもでき、または正孔ブロッキング層(HBL)が導入される。
【0043】
HBLは、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン=バソクプロイン)、BAlq(ビス(8-ヒドロキシ-2-メチルキノリン)-(4-フェニルフェノキシ)アルミニウム)、NBphen(2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Alq3(アルミニウム-トリス(8-ヒドロキシキノリン))、TSPO1(ジフェニル-4-トリフェニルシリルフェニル-ホスフィンオキシド)、T2T(2,4,6-トリス(ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン)、T3T(2,4,6-トリス(トリフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン)、TST(2,4,6-トリス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン)、および/またはTCB/TCP(1,3,5-トリス(N-カルバゾリル)ベンゾール/1,3,5-トリス(カルバゾール)-9-イル)ベンゼン)を例示的に含んでもよい。
【0044】
電子輸送層(ETL)に隣接して、カソード層Cが位置していてもよい。例として、カソード層Cは、金属(例えば、Al、Au、Ag、Pt、Cu、Zn、Ni、Fe、Pb、LiF、Ca、Ba、Mg、In、W、またはPd)または金属合金を含んでもよいし、またはこれらからなってもよい。実用的な理由から、カソード層はまた、非透明金属、例えば、Mg、CaまたはAlなどから(本質的に)なってもよい。代わりにまたはさらに、カソード層Cはまた、グラファイトおよびまたは炭素ナノチューブ(CNT)を含んでもよい。代わりに、カソード層Cはまた、ナノスケールの銀導線からなってもよい。
【0045】
OLEDは、さらに任意選択で、電子輸送層(ETL)とカソード層Cの間に保護層(電子注入層(EIL)と命名することもできる)を含んでもよい。この層は、フッ化リチウム、フッ化セシウム、銀、Liq(8-ヒドロキシキノリノラトリチウム)、Li2O、BaF2、MgOおよび/またはNaFを含んでもよい。
また任意選択で、電子輸送層(ETL)および/または正孔ブロッキング層(HBL)は1つまたは複数のホスト化合物を含んでもよい。
【0046】
発光層EMLの発光スペクトルおよび/または吸収スペクトルをさらに改変するため、発光層EMLは、1つまたは複数のさらなる発光体分子Fをさらに含んでもよい。このような発光体分子Fは、当技術分野で公知の任意の発光体分子であってよい。好ましくは、このような発光体分子Fは、本発明による分子の構造と異なる構造を有する分子である。発光体分子Fは、任意選択で、TADF発光体であってもよい。代わりに、発光体分子Fは、任意選択で、発光層EMLの発光スペクトルおよび/または吸収スペクトルをシフトすることができる蛍光のおよび/またはリン光発光体分子であってもよい。例として、三重項および/または一重線励起子は、発光体分子Eにより発光される光と比較して、通常赤色にシフトした光を発光することによって、基底状態S0に緩和される前に、本発明による発光体分子から発光体分子Fに移動することができる。任意選択で、発光体分子Fはまた2つのフォトン作用を誘発することができる(すなわち、最大吸収エネルギーの半分の2つのフォトンの吸収)。
任意選択で、有機オプトエレクトロニクスデバイス(例えば、OLED)は、例示的に、本質的に白色の有機オプトエレクトロニクスデバイスであってよい。例としてこのような白色の有機オプトエレクトロニクスデバイスは、少なくとも1つの(深い)青色発光体分子および緑色および/または赤色の光を発光する1つまたは複数の発光体分子を含んでもよい。次いで、上に記載されているような、2つ以上の分子の間のエネルギー透過率もまた任意選択で存在してもよい。
【0047】
本明細書で使用される場合、特定の状況においてより具体的に定義されていない限り、発光するおよび/または吸収される光の色の命名は以下の通りである。
紫色:>380~420nmの波長帯;
深青色:>420~480nmの波長帯;
空色:>480~500nmの波長帯;
緑色:>500~560nmの波長帯;
黄色:>560~580nmの波長帯;
オレンジ色:>580~620nmの波長帯;
赤色:>620~800nmの波長帯。
【0048】
発光体分子に関して、このような色は発光極大を指す。したがって、例として、深青色発光体は、>420~480nmの範囲に発光極大を有し、空色発光体は、>480~500nmの範囲に発光極大を有し、緑色発光体は、>500~560nmの範囲に発光極大を有し、赤色発光体は、>620~800nmの範囲に発光極大を有する。
深青色発光体は、好ましくは、480nm未満、より好ましくは470nm未満、さらにより好ましくは465nm未満またはさらには460nm未満の発光極大を有してもよい。発光極大は通常、420nmより上、好ましくは430nmより上、より好ましくは440nmより上、またはさらに445nmより上である。
【0049】
したがって、本発明のさらなる態様は、1000cd/m2において、8%を超える、より好ましくは10%を超える、より好ましくは13%を超える、さらにより好ましくは15%を超える、もしくはさらには20%をも超える外部量子効率を示し、および/または420nm~500nmの間、好ましくは430nm~490nmの間、より好ましくは440nm~480nmの間、さらにより好ましくは445nm~460nmの間の発光極大を示し、および/または500cd/m2において、100hを超える、好ましくは200hを超える、より好ましくは400hを超える、さらにより好ましくは750hを超える、もしくはさらに1000hをも超えるLT80値を示すOLEDに関する。したがって、本発明のさらなる態様は、その発光が、0.45未満、好ましくは0.30未満、より好ましくは0.20未満またはさらにより好ましくは0.15未満、またはさらに0.10未満のCIEy色座標を示すOLEDに関する。
本発明のさらなる態様は、明確な色ポイントにおいて光を発光するOLEDに関する。本発明によると、OLEDは、狭い発光バンド(小さな半値全幅(FWHM))を有する光を発光する。一態様では、本発明によるOLEDは、0.45eV未満、好ましくは0.42eV未満、より好ましくは0.38eV未満、さらにより好ましくは0.36eV未満、またはさらに0.34eV未満の、主要発光ピークのFWHMを有する光を発光する。
【0050】
本発明のさらなる態様は、ITU-R Recommendation BT.2020(Rec.2020)で定義されているような原色の青色(CIEx=0.131およびCIEy=0.046)のCIEx(=0.131)およびCIEy(=0.046)色座標に近いCIExおよびCIEyの色座標で発光し、したがって、Ultra High Definition(超高解像度)(UHD)ディスプレイ、例えば、UHD-TVなどにおける使用に適合したOLEDに関する。したがって、本発明のさらなる態様は、その発光が0.02~0.30の間、好ましくは0.03~0.25の間、より好ましくは0.05~0.20の間、もしくはさらにより好ましくは0.08~0.18の間、もしくはさらに0.10~0.15の間のCIEx色座標、および/または0.00~0.45の間、好ましくは0.01~0.30の間、より好ましくは0.02~0.20の間、もしくはさらにより好ましくは0.03~0.15の間、もしくはさらに0.04~0.10の間のCIEy色座標を示すOLEDに関する。
さらなる態様では、本発明は、オプトエレクトロニクス部品を生成するための方法に関する。この場合、本発明の有機分子が使用される。
【0051】
本発明による有機オプトエレクトロニクスデバイス、特にOLEDは、任意の手段の蒸気堆積および/または液体プロセシングにより生成することができる。したがって、少なくとも1つの層は、
- 昇華プロセスにより調製する、
- 有機気相堆積プロセスにより調製する、
- キャリアガス昇華プロセスにより調製する、
- 溶液処理またはプリントする。
【0052】
本発明による有機オプトエレクトロニクスデバイス、特にOLEDを生成するために使用される方法は当技術分野で公知である。異なる層は、その後の堆積プロセスにより、適切な基板上に個々におよび逐次的に堆積される。個々の層は、同じまたは異なる堆積方法を使用して堆積させることができる。
【0053】
蒸気堆積プロセスは、熱的(共)蒸着、化学蒸着および物理蒸着を例示的に含む。アクティブマトリックスOLEDディスプレイに対して、AMOLEDバックプレーンを基板として使用する。個々の層は、十分な溶媒を利用して、溶液または分散液から処理してもよい。溶液堆積プロセスは、スピンコーティング、ディップコーティングおよびジェット式プリンティングを例示的に含む。液体プロセシングは、任意選択で、不活性雰囲気(例えば、窒素大気内)で行ってもよく、溶媒は、任意選択で最新技術において公知の手段で、完全にまたは部分的に除去してもよい。
【実施例】
【0054】
一般的な合成スキームI
【化9】
合成のための一般的手順:
E1(それぞれ1当量)、E2(2.10当量)および三塩基性リン酸カリウム(4.00当量)を窒素大気下でDMSO中に懸濁させ、120℃で(16時間)撹拌した。続いて、反応混合物を氷/水混合物に注ぎ入れる。生成した固体を吸引濾過する。真空中で固体を乾燥させた後、トルエンからの再結晶またはフラッシュクロマトグラフィーにより粗生成物を精製する。生成物を固体として得る。
【0055】
HPLC-MS:
HPLC-MS分光法は、MS-検出器(Thermo LTQ XL)を有するAgilent(1100シリーズ)によりHPLC上で実施する。Waters(予備カラムなし)製の逆相カラム4,6mm×150mm、粒径5.0μmをHPLCに使用する。溶媒のアセトニトリル、水およびTHFを以下の濃度で用いて、HPLC-MS測定を室温(rt)で実施する:
【表1】
0.5mg/mlの濃度の溶液から、15μLの注入量を測定用に取る。以下の勾配を使用する:
【表2】
プローブのイオン化をAPCI(大気圧化学イオン化)により実施する。
【0056】
サイクリックボルタンメトリー
サイクリックボルタモグラムは、ジクロロメタンまたは適切な溶媒中10-3モル/lの濃度の有機分子および適切な支持電解質(例えば0.1モル/lのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート)を有する溶液から測定する。測定は、窒素雰囲気下、室温で、3電極接合体(作用電極および対電極:Pt導線、基準電極:Pt導線)を用いて行われ、内部標準としてFeCp2/FeCp2
+を使用して較正される。飽和したカロメル電極(SCE)に対する内部標準として、フェロセンを使用して、HOMOデータを補正した。
【0057】
密度汎関数理論計算
分子構造は、BP86関数手法およびRI(resolution of identity)法を利用して最適化する。時間依存性DFT(TD-DFT)法を利用した、(BP86)最適化構造を使用して、励起エネルギーを計算する。B3LYP関数を用いて、軌道および励起状態エネルギーを計算する。数値積分のためのDef2-SVPベースのセットおよびm4-グリッドを使用する。Turbomoleプログラムパッケージをすべての計算に対して使用する。
【0058】
光物理的測定
試料前処理:スピン-コーティング
装置:Spin150、SPS euro。
試料濃度は10mg/mlであり、適切な溶媒に溶解している。
プログラム:1)400U/分で3秒;1000U/分で、1000Upm/秒で20秒。3)4000U/分で、1000Upm/秒で10秒。コーティング後、フィルムは70℃で1分間試す。
【0059】
光ルミネセンス分光法およびTCSPC(時間相関シングルフォトンカウンティング)
150W Xenon-Arcランプ、励起および発光モノクロメーターおよびHamamatsu R928光電子増倍管および時間相関シングルフォトンカウンティングオプションを備えた、Horiba Scientific、Model FluoroMax-4で定常状態の発光スペクトルを測定する。標準的な補正適合を使用して発光および励起スペクトルを補正する。
FM-2013装置およびHoriba Yvon TCSPC hubを用いたTCSPC方法を使用して、同じシステムを利用して、励起状態寿命を決定する。
【0060】
励起源:
NanoLED 370(波長:371nm、パルス幅:1,1ns)
NanoLED 290(波長:294nm、パルス幅:<1ns)
SpectraLED 310(波長:314nm)
SpectraLED 355(波長:355nm)。
データ分析(指数近似)は、ソフトウエアスイートDataStationおよびDAS6分析ソフトウエアを使用して行う。適合はカイ二乗検定を使用して特定する。
【0061】
光ルミネセンス量子収率測定
光ルミネセンス量子収率(PLQY)測定のため、Absolute PL Quantum Yield Measurement C9920-03Gシステム(Hamamatsu Photonics)を使用する。量子収率およびCIE座標は、ソフトウエアU6039-05バージョン3.6.0を使用して決定する。
発光極大はnmで、量子収率Φは%で、CIE座標はx、y値として与えられる。
PLQYは、以下のプロトコルを使用して決定する。
1)品質保証:エタノール中アントラセン(公知の濃度)を基準物質として使用する
2)励起波長:有機分子の最大吸収を決定し、この波長を使用して分子を励起する
3)測定
窒素雰囲気下、溶液またはフィルムの試料に対して量子収率を測定する。以下の方程式を使用して収率を計算する:
【数1】
(式中、n
フォトンは、フォトンカウントを表し、Int.は強度を表す)
【0062】
有機オプトエレクトロニクスデバイスの生成および特徴付け
本発明による有機分子を含むOLEDデバイスは真空堆積法を介して生成することができる。層が1より多くの化合物を含有する場合、1つまたは複数の化合物の質量パーセンテージは%で与えられる。総質量パーセンテージ値は100%になり、したがって、値が与えられていない場合、この化合物の分率は、与えられた値と100%との間の差異に等しい。
標準的方法を使用して、ならびにエレクトロルミネッセンススペクトル、フォトダイオードにより検出した光を使用して計算した、強度に依存する外部量子効率(単位:%)、および電流を測定して、完全には最適化されていないOLEDを特徴付ける。OLEDデバイス寿命は、定電流密度での動作中の輝度の変化から得る。例えば、LT50値は、測定された輝度が初期の輝度の50%まで低減する時間に対応し、同様にLT80は、測定された輝度が初期の輝度の80%まで低減する時間点に対応し、LT95は、測定された輝度が初期の輝度の95%まで低減する時間点に対応する。
【0063】
加速された寿命測定を実施する(例えば、より高い電流密度を適用することによって)。500cd/m
2での例示的LT80値は、以下の方程式を使用して決定する。
【数2】
(式中、L
0は、適用された電流密度での初期の輝度を表す)
値はいくつかのピクセル(通常、2~8)の平均に対応し、これらのピクセル間の標準偏差が与えられる。図は、1つのOLEDピクセルに対するデータシリーズを示す。
【0064】
(例1)
【化10】
一般的合成に従い例1を合成した(53.6%収率)。
図1は例1(PMMA中10質量%)の発光スペクトルを表す。発光極大は447nmである。光ルミネセンス量子収率(PLQY)は73%であり、半値全幅は0.38eVであり、発光寿命は66μ秒である。CIEx値は0.15であり、CIEy値は0.10である。
【0065】
DPEPO中の例1(10質量%)の発光極大は451nmである。光ルミネセンス量子収率(PLQY)は78%であり、半値全幅は0.38eVであり、発光寿命は48μ秒である。CIEx値は0.15であり、CIEy値は0.11である。
【0066】
(例2)
【化11】
一般的な合成に従い例2を合成した。
【0067】
図2は例2(PMMA中10質量%)の発光スペクトルを表す。発光極大は447nmである。光ルミネセンス量子収率(PLQY)は68%であり、半値全幅は0.38eVであり、発光寿命は4μ秒である。CIEx値は0.15であり、CIEy値は0.10である。
【0068】
(例D1)
以下の層構造で生成されたOLED D1において、例1を試験した。
【化12】
【0069】
デバイスD1は、1000cd/m2において、11.4%の外部量子効率(EQE)を生成した。発光極大は461mであり、5VでのFWHMは57nmである。対応するCIEx値は0.14であり、CIEyは0.125である。立ち上がり電圧は2.7Vである。デバイスは高い寿命値を示す。
【0070】
デバイスD1は、CIE値により表現される深青色に対して非常に良好な効率を示す。