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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】人体支持装置
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/72 20060101AFI20220328BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20220328BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20220328BHJP
   B06B 1/06 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
A47C7/72
B60N2/56
B60N2/90
B06B1/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018078911
(22)【出願日】2018-04-17
(65)【公開番号】P2019181056
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】514285911
【氏名又は名称】千葉 正毅
(73)【特許権者】
【識別番号】510244754
【氏名又は名称】和氣 美紀夫
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】千葉 正毅
(72)【発明者】
【氏名】和氣 美紀夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 広宣
(72)【発明者】
【氏名】石川 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】大杉 啓治
【審査官】田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/017143(WO,A1)
【文献】実開昭54-038512(JP,U)
【文献】国際公開第2012/050128(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0241689(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102893342(CN,A)
【文献】特許第4837794(JP,B1)
【文献】特開2018-033293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00-7/74
B60N 2/00-2/90
B06B 1/00-3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体支持具と、
誘電エラストマー層および当該誘電エラストマー層を挟む一対の電極層を含む誘電エラストマーアクチュエータ部と、
前記誘電エラストマーアクチュエータ部を振動させる駆動電圧を、前記一対の電極層に印加する制御部と、
前記誘電エラストマーアクチュエータ部が振動における一方側に移動するときのみ流体の通過を許容する弁部と、
前記弁部に繋がる管部と、を備え、
前記管部が前記人体支持具に接続されており、
前記制御部は、前記駆動電圧として、
前記誘電エラストマーアクチュエータ部に、流体交換機能を発揮させる吸排駆動電圧と、
前記誘電エラストマーアクチュエータ部に、前記流体交換機能よりも最大加速度が大きい振動を生じる振動発生機能を発揮させる加振駆動電圧と、
を出力することを特徴とする、人体支持装置。
【請求項2】
前記吸排駆動電圧は、正弦波様の波形であり、
前記加振駆動電圧は、矩形波様の波形である、請求項に記載の人体支持装置。
【請求項3】
前記誘電エラストマーアクチュエータ部は、一対の第1誘電エラストマー層および一対の第2誘電エラストマー層を含む二対の前記誘電エラストマー層と、前記一対の第1誘電エラストマー層を各別に挟む二対の第1電極層および前記一対の第2誘電エラストマー層を各別に挟む二対の第2電極層を含む四対の前記電極層と、を有しており、
前記吸排駆動電圧が、対の第1電極層に印加され、
前記加振駆動電圧が、対の第2電極層に印加される、請求項またはに記載の人体支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気等の流体を流動させる機能を備えた人体支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートやベッドに代表される人体支持具は、人体を安全に支持することや快適に支持することが求められる。人体をより快適に支持する方策として、人体支持具を換気する機能を付与することが挙げられる。特許文献1は、従来の人体支持装置の一例を開示している。同文献に開示された人体支持装置は、人体支持具としてのシート、送風機およびダクトを備える。送風機は、シートに内蔵されており、所定風量の送風を行う。ダクトは、送風機に連結されており、シートの表皮やクッションの適所に接続されている。送風機から送風がなされると、ダクトを通じてシートの表皮やクッションを空気が通過する。これにより、シートと人体の接触箇所において湿気が溜まることを抑制し、より快適に人体を支持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-177853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、同文献の送風機は、たとえばモータと当該モータによって回転されるファンとによって構成されたものが一般的に採用される。このような送風機は、金属部品を多く含むため、小型化や軽量化を図ることが困難である。このため、送風機を内蔵するシートの重量が重くなったり、シート形状に制約が生じる等の問題があった。
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、軽量化や形状の自由度向上を図ることが可能な人体支持装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される人体支持装置は、人体支持具と、誘電エラストマー層および当該誘電エラストマー層を挟む一対の電極層を含む誘電エラストマーアクチュエータ部と、前記誘電エラストマーアクチュエータ部を振動させる駆動電圧を、前記一対の電極層に印加する制御部と、前記誘電エラストマーアクチュエータ部が、振動における一方側に移動するときのみ流体の通過を許容する弁部と、前記弁部に繋がる管部と、を備え、前記管部が前記人体支持具に接続されていることを特徴としている。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記制御部は、前記誘電エラストマーアクチュエータ部に、流体交換機能を発揮させる吸排駆動電圧と、前記誘電エラストマーアクチュエータ部に、前記流体交換機能よりも最大加速度が大きい振動を生じる振動発生機能を発揮させる加振駆動電圧と、を出力する。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記吸排駆動電圧は、正弦波様の波形であり、前記加振駆動電圧は、矩形波様の波形である。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記誘電エラストマーアクチュエータ部は、2つの前記誘電エラストマー層と、前記2つの誘電エラストマー層を各別に挟む二対の前記電極層と、を有しており、前記吸排駆動電圧が、一方の前記一対の電極層に印加され、前記加振駆動電圧が、他方の前記一対の電極層に印加される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、人体支持装置の軽量化や形状の自由度向上を図ることができる。
【0011】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る人体支持装置を示す全体斜視図および要部断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る人体支持装置の誘電エラストマーアクチュエータ部を示す斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る人体支持装置の動作例を示す要部断面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る人体支持装置の動作例を示す要部断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る人体支持装置を示す要部断面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る人体支持装置を示す全体斜視図および要部断面図である。
図7】本発明の第4実施形態に係る人体支持装置を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
本発明の人体支持具は、人体を支持するものであり、代表例として、着座姿勢の人体を支持するシートや、横臥姿勢の人体を支持するベッドが挙げられるが、これらに限定されない。以下の説明においては、人体支持具として車両に設けられるシートが採用された場合を例に説明する。
【0015】
本発明で扱われる流体は、気体や液体等の流動しうる物体を指す。以下の説明においては、流体として気体の代表例である空気が選択された場合を例に説明する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1図4は、本発明の第1実施形態に係る人体支持装置を示している。本実施形態の人体支持装置A1は、誘電エラストマーアクチュエータ部1、弁部41,42、吸入管部51、排出管部52、制御部6およびシート7を備えている。
【0017】
図1は、人体支持装置A1を示す全体斜視図および要部断面図である。図2は、人体支持装置A1の誘電エラストマーアクチュエータ部1を下方から見た斜視図である。図3および図4は、人体支持装置A1の動作例を示す要部断面図である。
【0018】
シート7は、人体支持具の一例であり、着座姿勢の人体を支持する。シート7としては、車両に設けられる車両用シートや、住宅に置かれる住宅用シート等が挙げられる。図1に示された例は、シート7として車両用シートが採用された場合である。
【0019】
誘電エラストマーアクチュエータ部1は、誘電エラストマー層11A,11B、一対の電極層12A、一対の電極層12Bおよび支持体3を有する。
【0020】
誘電エラストマー層11A,11Bは、弾性変形が可能であるとともに、絶縁強度が高いことが求められる。このような誘電エラストマー層11A,11Bの材質は特に限定されないが、好ましい例として、たとえばシリコーンエラストマーやアクリルエラストマーが挙げられる。本実施形態においては、誘電エラストマー層11A,11Bは、誘電エラストマーアクチュエータ部1の構成要素として形成される前の外力等が加えられていない状態において平面視円環形状であり、図2に示すように、誘電エラストマーアクチュエータ部1において、軸方向に並んで配置された円錐台形状に伸長されている。
【0021】
一対の電極層12Aは、誘電エラストマー層11Aを挟んでおり、一対の電極層12Bは、誘電エラストマー層11Bを挟んでいる。電極層12A,12Bは、導電性を有するとともに、誘電エラストマー層11A,11Bの弾性変形に追従しうる弾性変形が可能な材質によって形成される。このような材質としては、弾性変形可能な主材に導電性を付与するフィラーが混入された材質が挙げられる。前記フィラーの好ましい例として、たとえばカーボンナノチューブが挙げられる。
【0022】
支持体3は、誘電エラストマー層11A,11Bを所望の弾性力が生じた状態で支持するものであり、本実施形態においては、誘電エラストマー層11A,11Bのそれぞれを円錐台形状に伸長させた状態で支持している。図示された例においては、支持体3は、筐体31および中間板部32を有する。筐体31は、誘電エラストマー層11A,11B、一対の電極層12A、一対の電極層12B、中間板部32、弁部41,42を収容している。また、筐体31には、誘電エラストマー層11A,11Bの外端縁が固定されている。中間板部32は、誘電エラストマー層11A,11Bの内端縁が固定されている。図1に示すように、筐体31および中間板部32には、それぞれ開口が形成されている。
【0023】
弁部41,42は、誘電エラストマーアクチュエータ部1が、振動における一方側に移動するときのみ流体である空気の通過を許容する。弁部41,42の具体的構造は特に限定されず、たとえば逆止弁が用いられる。逆止弁の方式としては、いわゆるスイング式、ボール式等の種々の方式が適宜選択され、図示された例においては、スイング式の逆止弁が記載されている。
【0024】
弁部41は、中間板部32の開口を塞ぐように設けられている。弁部41は、誘電エラストマーアクチュエータ部1の振動において、中間板部32が図1における上側に移動するときのみ、流体(空気)の通過を許容する。弁部42は、筐体31の図中上方の開口を塞ぐように設けられている。弁部42は、誘電エラストマーアクチュエータ部1の振動において中間板部32が図1における下側に移動するときのみ、流体(空気)の通過を許容する。なお、図示された例とは異なり、弁部41,42は、外部信号による指令によって開閉が制御されるものであってもよい。
【0025】
吸入管部51および排出管部52は、本発明の管部の一例である。吸入管部51は、誘電エラストマーアクチュエータ部1の吸入側に接続された管状部材である。排出管部52は、誘電エラストマーアクチュエータ部1の排出側に接続された管状部材である。本実施形態においては、吸入管部51は、シート7に接続されている。吸入管部51がシート7に接続されているとは、吸入管部51によって空気が吸入される(吸気される)ことにより、シート7の表皮やクッション等の所望の部位から空気が吸引され、シート7の少なくとも一部において流体の交換(本実施形態の場合、換気)が行われる構成をいう。
【0026】
制御部6は、誘電エラストマーアクチュエータ部1を振動させる駆動電圧を、1対の電極層12Aおよび一対の電極層12Bに印加するものである。このような制御部6の具体的構成は特に限定されず、所定の電源部やCPU等からなる指令部等を有する。図3および図4に示すように、本実施形態においては、制御部6は、一対の電極層12Aに吸排駆動電圧Vaを印加し、一対の電極層12Bに吸排駆動電圧Vbを印加する。吸排駆動電圧Vaおよび吸排駆動電圧Vbの時間軸波形は特に限定されず、図示された例においては、たとえば正弦波様の波形が採用されている。また、吸排駆動電圧Vaと吸排駆動電圧Vbとは、互いに位相が反転された関係である。吸排駆動電圧Vaおよび吸排駆動電圧Vbの周波数は特に限定されないが、流体交換機能の作動を人体が感じることを抑制する観点から、たとえば10~20Hz程度が好ましい。
【0027】
次に、図3および図4を参照しつつ、人体支持装置A1の動作例について説明する。
【0028】
図3においては、吸排駆動電圧Vaによって一対の電極層12Aの電位差が大きくなり、吸排駆動電圧Vbによって一対の電極層12Bの電位差が小さくなった状態である。この場合、一対の電極層12Aには、互いに引き合うクーロン力が作用する。このため、誘電エラストマー層11Aの厚さが薄くなり、これに伴って誘電エラストマー層11Aの面積が拡大する。この結果、誘電エラストマー層11Aが軸方向に伸長し、誘電エラストマー層11Bが軸方向に収縮する。これにより、中間板部32が下降する。この際、弁部41は、閉状態であり、弁部42は、開状態である。したがって、筐体31内において、中間板部32よりも下方にある空気の一部が排出管部52から排出される。また、吸入管部51を通じて、筐体31内に空気が吸入される。これは、吸排気工程といえる。
【0029】
一方、図4においては、吸排駆動電圧Vaによって一対の電極層12Aの電位差が小さくなり、吸排駆動電圧Vbによって一対の電極層12Bの電位差が大きくなった状態である。この場合、誘電エラストマー層11Bが軸方向に伸長し、誘電エラストマー層11Aが軸方向に収縮する。これにより、中間板部32が上昇する。この際、弁部41は、開状態であり、弁部42は、閉状態である。したがって、筐体31内においては、空気の顕著な移動は生じず、中間板部32が上昇する。これは、復帰工程といえる。
【0030】
吸排駆動電圧Vaと吸排駆動電圧Vbが、互いに位相反転された正弦波様の波形であることから、上述した吸排気工程と復帰工程とが半周期ごとに交互に繰り返される。この結果、誘電エラストマーアクチュエータ部1は、吸入管部51からの吸入(吸気)と排出管部52からの排出(排気)とを行う、流体交換機能を果たす。本実施形態においては、吸入管部51からの吸入(吸気)により、シート7の表皮やクッション等の所望の部位から空気が吸引される。これにより、シート7の表皮やクッション等において流体の交換である換気(ベンチレーション)が行われる。
【0031】
次に、人体支持装置A1の作用について説明する。
【0032】
本実施形態によれば、シート7における流体の交換(換気)は、誘電エラストマーアクチュエータ部1の誘電エラストマー層11A,11Bの振動によって実行される。誘電エラ誘電エラストマー層11A,11Bは、主に軟質な弾性体によって形成されている。このため、誘電エラストマーアクチュエータ部1は、振動を発生するために金属等からなる構造物を必要としない。これにより、誘電エラストマーアクチュエータ部1の軽量化を図ることができる。また、誘電エラストマーアクチュエータ部1は、モータ等と比べて小型化に有利であり、シート7の形状をより自由に設定することが可能である。したがって、人体支持装置A1によれば、軽量化や形状の自由度向上を図ることができる。さらに、誘電エラストマーアクチュエータ部1による振動においては、たとえば機械部品の往復動や回転動を必要としない。これにより、動作騒音の低減を図ることができる。
【0033】
吸排駆動電圧Vaおよび吸排駆動電圧Vbを正弦波様の波形とすることにより、誘電エラストマーアクチュエータ部1の流体交換機能をより効率よく発揮させるとともに、流体交換機能の作動振動を人体が感じ取ることを抑制することができる。特に、吸排駆動電圧Vaおよび吸排駆動電圧Vbの周波数を10~20Hz程度とすることは、人体が感じ取ることをより抑制するのに好ましい。
【0034】
図5図7は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0035】
〔第2実施形態〕
図5は、本発明の第2実施形態に係る人体支持装置を示している。本実施形態の人体支持装置A2は、吸入管部51A、排出管部51B、吸入管部52Aおよび排出管部52Bと、弁部43、弁部44、弁部45および弁部46と、を備えている。
【0036】
本実施形態の筐体31には、上下2箇所ずつの開口が設けられている。吸入管部51Aは、筐体31の上方の一方の開口に繋がっている。排出管部51Bは、筐体31の上方の他方の開口に繋がっている。吸入管部52Aは、筐体31の下方の一方の開口に繋がっている。排出管部52Bは、筐体31の下方の他方の開口に繋がっている。なお、本実施形態においては、中間板部32には、開口は設けられていない。このため、筐体31内は、誘電エラストマー層11A,11Bおよび中間板部32によって密閉状態で区画されている。
【0037】
弁部43は、吸入管部51Aに繋がっており、図中下方のみへの空気の移動を許容する。弁部44は、排出管部51Bに繋がっており、図中上方のみへの空気の移動を許容する。弁部45は、吸入管部52Aに繋がっており、図中上方のみへの空気の移動を許容する。弁部46は、排出管部52Bに繋がっており、図中下方のみへの空気の移動を許容する。
【0038】
本実施形態においては、制御部6からの吸排駆動電圧Vaおよび吸排駆動電圧Vbの印加により、誘電エラストマーアクチュエータ部1の誘電エラストマー層11A,11Bが図中上下方向に振動すると、中間板部32が上方に移動するときには、弁部44を通じて吸入管部52Aへと排気され、弁部45を通じて排出管部51Bから吸気される。一方、中間板部32が下方に移動するときには、弁部43を通じて吸入管部51Aから吸気され、弁部46を通じて排出管部52Bへと排気される。
【0039】
本実施形態によっても、軽量化や形状の自由度向上を図ることができる。また、本実施形態によれば、誘電エラストマーアクチュエータ部1(誘電エラストマー層11A,11B)の振動において、半周期ごとに吸気および排気が繰り返し行われる。このため、人体支持装置A1における復元工程が存在せず、半周期ごとに吸排気工程を繰り返し行うことができる。これは、流体交換の効率を高めるのに適している。
【0040】
〔第3実施形態〕
図6は、本発明の第3実施形態に係る人体支持装置を示している。本実施形態の人体支持装置A3は、人体支持装置A1と同様の構成の誘電エラストマーアクチュエータ部1に、吸排駆動電圧V1a,V1bと、加振駆動電圧V2a,V2bとが、制御部6から印加される。また、本実施形態においては、シート7に複数の誘電エラストマーアクチュエータ部1が設けられている。たとえば、座面に複数の誘電エラストマーアクチュエータ部1が内蔵されている。また、背もたれに複数の誘電エラストマーアクチュエータ部1が内蔵されている。
【0041】
吸排駆動電圧V1a,V1bは、上述の吸排駆動電圧Va,Vbと同様のたとえば周波数が10~20Hz程度の正弦波様の波形である。加振駆動電圧V2a,V2bは、印加によって生じる誘電エラストマーアクチュエータ部1(誘電エラストマー層11A,11B)の振動の最大加速度が、吸排駆動電圧V1a,V1bの印加による振動の最大加速度よりも大きくなるものである。このような加振駆動電圧V2a,V2bとしては、たとえば周波数が吸排駆動電圧V1a,V1bの周波数以上である矩形波様の波形が挙げられる。加振駆動電圧V2aと加振駆動電圧V2bとは、互いに位相が反転された関係である。
【0042】
本実施形態においては、制御部6は、誘電エラストマーアクチュエータ部1に流体交換機能を発揮させる場合、一対の電極層12Aに吸排駆動電圧V1aを印加し、一対の電極層12Bに吸排駆動電圧V1bを印加する。これにより、人体支持装置A1と同様の流体交換機能が発揮されシート7における換気が実行される。
【0043】
一方、制御部6は、誘電エラストマーアクチュエータ部1に振動発生機能を発揮させる場合、一対の電極層12Aに加振駆動電圧V2aを印加し、一対の電極層12Bに加振駆動電圧V2bを印加する。なお、本発明における振動発生機能とは、誘電エラストマーアクチュエータ部1を内蔵する人体支持具であるシート7の表面等に、人体が感じうる振動を発生させる機能をいう。すなわち、加振駆動電圧V2a,V2bの印加により、誘電エラストマーアクチュエータ部1の振動発生機能が発揮されると、誘電エラストマーアクチュエータ部1の振動が伝達され、シート7の所定箇所に人体が感じうる振動が発生する。
【0044】
本実施形態によっても、軽量化や形状の自由度向上を図ることができる。また、本実施形態によれば、誘電エラストマーアクチュエータ部1は、シート7の換気を実現しうる流体交換機能に加えて、シート7の所定箇所を振動させる振動発生機能を発揮することができる。振動発生機能を用いることにより、たとえば、人体支持装置A3は、車両の制御システム等が発する警告等を制御部6を通して所定の振動として人体に伝えることができる。あるいは、加振駆動電圧V2a,V2bの波形や強さを設定することにより、人体の緊張を緩和させるいわゆるマッサージ機能を果たすこともできる。また、シート7の適所に複数の誘電エラストマーアクチュエータ部1が内蔵されていることにより、シート7の各所において振動発生機能を発揮させることが可能である。これは、人体の所望の箇所にマッサージを施すのに適している。
【0045】
加振駆動電圧V2a,V2bを矩形波様の波形とすることにより、シート7の所定箇所に生じる振動を、人体がより感じやすい振動とすることができる。
【0046】
〔第4実施形態〕
図7は、本発明の第4実施形態に係る人体支持装置を示している。本実施形態の人体支持装置A4は、一対の誘電エラストマー層11A、一対の誘電エラストマー層11B、二対の電極層12A、二対の電極層12Bを備えている。
【0047】
各誘電エラストマー層11Bは、軸方向視において各誘電エラストマー層11Aの内側に配置されている。また、本実施形態においては、支持体3は、2つの連結環状部33を有している。各連結環状部33は、細い円環形状であり、誘電エラストマー層11Aの内端縁と誘電エラストマー層11Bの外端縁とが固定されている。中間板部32および弁部41,42の構成は、上述した人体支持装置A1と略同様である。
【0048】
本実施形態においては、制御部6は、二対の電極層12Aに吸排駆動電圧V1a,V1bを印加し、二対の電極層12Bに加振駆動電圧V2a,V2bを印加する。たとえば、誘電エラストマーアクチュエータ部1に流体交換機能を発揮させたい場合、制御部6は、二対の電極層12Aに吸排駆動電圧V1a,V1bを印加する。これにより、一対の誘電エラストマー層11Aが吸排気に適した態様で振動し、流体交換機能が発揮される。一方、誘電エラストマーアクチュエータ部1に振動発生機能を発揮させたい場合、制御部6は、二対の電極層12Bに加振駆動電圧V2a,V2bを印加する。これにより、一対の誘電エラストマー層11Bが、流体交換機能の際よりも大きい最大加速度で振動し、振動発生機能が発揮される。
【0049】
このような実施形態によっても、軽量化や形状の自由度向上を図ることができる。また、本実施形態によれば、誘電エラストマー層11Aが流体交換機能を担い、誘電エラストマー層11Bが振動発生機能を担う。このため、誘電エラストマー層11Aおよび誘電エラストマー層11Bを、それぞれが担うべき機能に適した材質や厚さ等とすることが可能である。また、時間軸において、流体交換機能と振動発生機能とを重ねて発揮させることも可能である。
【0050】
本発明に係る人体支持装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る人体支持装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0051】
A1~A4:人体支持装置
1 :誘電エラストマーアクチュエータ部
3 :支持体
6 :制御部
7 :シート
11A,11B:誘電エラストマー層
12A,12B:電極層
31 :筐体
32 :中間板部
33 :連結環状部
41,42,43,44,45,46:弁部
51,51A,52A:吸入管部
51B,52,52B:排出管部
Va,Vb,V1a,V1b:吸排駆動電圧
V2a,V2b:加振駆動電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7