(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】給電柱
(51)【国際特許分類】
H02G 9/04 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
H02G9/04
(21)【出願番号】P 2018097292
(22)【出願日】2018-05-21
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 茂樹
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-082425(JP,A)
【文献】特開2018-033195(JP,A)
【文献】特開2000-125454(JP,A)
【文献】特開2006-353069(JP,A)
【文献】特開2014-163058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 9/00-9/12
H02G 1/06
E04H 5/00-5/12
7/00-7/32
12/00-14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にケーブルが配線される中空筒状の本体部を有し、当該本体部の上端側にスイッチやコンセント等の機器が配置される機器配置部が形成された、下端側が埋設されて立設される給電柱であって、
前記本体部の側部には、内部に流入した水を本体部軸方向の異なる位置で外部に排水する
複数の水抜き孔が貫通形成され
、
前記複数の水抜き孔のそれぞれと対応してグランドラインの位置を示唆する表示部が各前記水抜き孔毎に前記本体部の外面に設けられていることを特徴とする給電柱。
【請求項2】
前記ケーブルを本体部内に導入すべく、前記本体部の下端側に、本体部軸方向に延びる長溝が形成され、当該長溝の下端から上端の長さが、前記
本体部軸方向の異なる位置で排水可能とする水抜き孔の最下端から最上端の長さより長く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の給電柱。
【請求項3】
前記機器配置部が前記本体部の側部に形成され、前記水抜き孔は、前記機器配置部の形成された側部と反対側の側部に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の給電柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチやコンセント等の機器を設置するための給電柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外等で建物等に配設されたコンセントや配電盤からの電気を利用するために、電線管が配管された給電ポールが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1の給電ポールは、ポール本体の下端が土中に埋設されて立設され、ポール本体の内部に配管された電線管に配線された電線を配線器具と接続することで、配線器具を簡単に設置することができる。
また、特許文献2の複合機能ポールは、ポール本体の下部側が地中に埋め込まれて立設され、上部側に給電用コンセントと給水用蛇口が併設されており、ポールから水も電気も簡単にとることができる。さらに、ポール本体には、地面より少し上となる位置に内外に通じる連通孔が形成されて、ポール本体内の水を外部に排出することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-244728号公報
【文献】特開平4-293434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の給電ポールは、土中に埋設されていれば、ポール本体内に雨水が侵入してもポール本体内を伝って土にしみこむことで排水が可能である。しかし、コンクリートで埋設する場合には、ポール本体の下端がコンクリートで塞がれないように、下端の挿通孔内や電線管周りを養生して、ポール本体内にコンクリートが入り込むのを防止する必要があり、作業が面倒であった。
【0006】
また、特許文献2の複合機能ポールには、連通孔が形成されているため、コンクリートで埋設したポール本体の下端が塞がれても、ポール内に侵入した水を排出することができる。しかし、連通孔が形成されたポールは、連通孔を周りの地面に合わせる必要があるため、地面からの立設長が決められてしまって、上部側の給電用コンセントや給水用蛇口の高さが変更できないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、作業性を向上し、かつ、上部に設けられる機器の設置高さを変更できる給電柱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するための給電柱は、内部にケーブルが配線される中空筒状の本体部を有し、当該本体部の上端側にスイッチやコンセント等の機器が配置される機器配置部が形成された、下端側が埋設されて立設される給電柱であって、前記本体部の側部には、内部に流入した水を本体部軸方向の異なる位置で外部に排水する水抜き孔が貫通形成されていることを要旨としている。
【0009】
また、給電柱について、前記水抜き孔が前記本体部軸方向の異なる位置に複数設けられていてもよい。
また、給電柱について、前記水抜き孔と対応してグランドラインの位置を示唆する表示部が前記本体部の外面に複数設けられていてもよい。
【0010】
また、給電柱について、ケーブルを本体部内に導入すべく、前記本体部の下端側に、本体部軸方向に延びる長溝が形成され、当該長溝の下端から上端の長さが、前記本体部軸方向の異なる位置で排水可能とする水抜き孔の最下端から最上端の長さより長く設定されていてもよい。
【0011】
また、給電柱について、機器配置部が前記本体部の側部に形成され、前記水抜き孔は、前記機器配置部の形成された側部と反対側の側部に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、本体部の埋設量を変更することで、上部に設けられる機器の設置高さを変更できるとともに、埋設量を変更しても内部に流入する水を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】実施形態の給電柱の本体部であって、(a)はその正面図、(b)はその右側面図、(c)はその背面図。
【
図5】実施形態の給電柱の水抜き穴を示す部分拡大図。
【
図7】実施形態の給電柱の突出長が小さくなるように変更した使用状態を示す模式図
【
図8】実施形態の給電柱の使用状態を示す斜視図であって、(a)は給電柱の突出長を大きくした状態を示し、(b)は給電柱の突出長を小さくした状態を示す。
【
図9】機器配置部を本体部に一体に設けた変形例を示す斜視図。
【
図10】水抜き穴を連続する形態とした変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、給電柱を具体化した一実施形態を
図1~
図8にしたがって説明する。
図1~
図2に示すように、給電柱Qは、内部にケーブルが配線される単一の中空筒状からなり、下端側が埋設されて立設される本体部1と、本体部1の上端側にスイッチやコンセント等の機器が配置される機器配置部2を備えるとともに本体部1の上端を塞ぐ蓋部材6と、からなる。
【0015】
本体部1は、金属製で四角筒状を成す単一の中空筒であり、埋設される下端側には、本体部軸方向(筒軸方向)に延びる長溝5が貫通形成され、ケーブルやケーブル保護管を内部に導入可能としている。また、上端側は部分的に切欠かれており、本体部の側部に露出コンセントやインターホンが取付けられる機器配置部2が配置されるように蓋部材6が取り付けられている。
【0016】
さらに、本体部1において、機器配置部が位置する側部1aと反対側の側部1bには、本体部の内部に流入した水を外部へと排水するための水抜き穴3(31、32)が本体部軸方向の異なる位置に2つ設けられている。さらに、各水抜き穴(31、32)の脇には、埋設する際のグランドラインの位置を示唆する表示部4がそれぞれ設けられている。この表示部4は、粘着シートグランドラインの位置を示唆する「GL」の文字が印刷された粘着シートで構成されている。この粘着シートには、表示部4の上に水抜き穴であることを示す「水抜き穴」という表示が印刷されている。表示部4の「GL」が白抜きされた着色箇所の上端は、水抜き穴3(31、32)の下端縁と同一高さに位置している。
【0017】
また、下端側の長溝5と各水抜き穴3のうち下方に位置する水抜き穴31との間には、根かせ7が取り付けられている。根かせ7は、特に土中に埋設した際に、本体部1(給電柱Q)が傾くのを防止している。なお、根かせ7はコンクリート埋設する際には、取り外し埋設しても問題が少ない。
【0018】
蓋部材6は、合成樹脂製で形成され、
図4に示すように平坦な面と開口とを有する機器配置部2と、本体部1の上端を塞ぐ蓋部61と、本体部内に配線されたケーブルを受け入れる受け口62と、を備えており、本体部1の上端部にねじ固定されて一体化される。
【0019】
続いて、本実施形態の給電柱Qの使用状態を説明する。
図6に示すように栗石Fが敷かれた穴に給電柱Qが立設され、下端側がコンクリート埋設されて立設され、土中に埋設されたケーブル保護管Pが長溝5を通過して蓋部材6の受け口62にまで配管されている。穴を埋め戻したコンクリートCは、本体部1の下端や長溝5から本体部内に流入し、本体外部のグランドラインGと同一位置となっている。
【0020】
土で埋め戻した場合は、流動性が低いため、本体部1の下端や長溝5から本体部内に入り込む量も少なく、また、本体部内に流入した水は、土にしみこんで排水されるため、本体部内に水が溜まることがないが、
図6のようにコンクリート埋設する場合には、水が本体部内に溜まってしまい、溜まった水が蒸発して上端側に設けられた機器内に入り込み機器内で結露したりして錆を発生させたり、動作不良を起こすことがないように、水抜き穴3を設けている。
【0021】
さらに、水抜き穴3を設けることで、コンクリート埋設する際に、下端側が塞がれてしまっても水抜き穴3から外部に排水可能であることから、下端側が塞がれないように養生する必要もない。つまり、コンクリートCを本体部1の内側に、グランドラインGと同一となるように流入させることで、本体部内の水を水抜き穴3から排水することが可能となっている。なお、この例では根かせ7は付けた状態で埋設しているが、必ずしも根かせは必要ではない。
【0022】
また、水抜き穴3は本体部軸方向の異なる位置で排水できるように2箇所(31、32)設けてあり、
図7や
図8(b)に示すようにグランドラインGを上側の水抜き穴32に対応するように、下端側の埋設量(埋設長)を大きくすることで、グランドラインGからの上方への突出長H2を低くしても、排水可能となっている。そのため、取り付ける機器や周辺環境による所望の高さに機器配置部の高さを変更できる。すなわち、
図6のように2箇所の水抜き穴(31,32)のうち、下側の水抜き穴31とグランドラインGを合わせるように埋設した際のランドラインGからの上方への突出長H1よりも、
図7に示す突出長H2は、小さくなっている。
【0023】
さらに、
図3(c)に示すように、水抜き穴3(31、32)の排水可能な最下端から最上端までの間隔L1よりも、下端側の長溝5の軸方向の長さL2が大きく形成されている。これにより、土中に埋設されるケーブル保護管Pの埋設深さUは変更することなく、給電柱の立設高さを変更することができる(
図6、
図7参照)。
【0024】
また、水抜き孔3(31、32)や表示部4は、本体部1における機器配置部2に配置される機器と反対側に設けられているため、目立つことなく、美観がよい。
【0025】
本発明は上記実施形態に限ったものではなく、また、以下のように変更してもよい。
・例えば、機器配置部2は本体部1と別体の蓋部材6に設けられていたが、
図9に示すように本体部1に一体に設けられていてもよい。
・例えば、本体部1は金属製で四角筒状に構成したが、材質を変更してもよいし、四角筒に限らず、円筒形状であってもよい。
【0026】
・例えば、ケーブル導入開口を形成している長溝5は異なる高さで排水可能な水抜き穴の最下端から最上端までの間隔L1よりも長く形成されていなくてもよく、長溝ではなく複数の貫通孔によりケーブル導入開口を形成してもよい。
【0027】
・例えば、水抜き穴3(31、32)は複数が本体部軸方向に離れて設けられていたが、
図10に示すように軸方向に延びる溝状に形成してもよい。この例によれば、水抜き穴3が地表に臨む範囲であれば、任意の高さに機器配置部2を配置させることができる。
【0028】
・例えば、水抜き穴3は、機器配置部2と異なる側部1bに設けられているが、同じ側1aであっても、機器配置部2と反対側ではない側部に設けられてもよく、また、1つの側部のみでなく、複数の側部にそれぞれ、または、跨って設けられてもよい。
【0029】
・例えば、表示部4は水抜き穴3の数に応じて複数の粘着シートにより設けられていたが、1枚の粘着シートによって複数のグランドラインを表示してもよいし、粘着シートに限らず刻印や彫刻で表示してもよい。
【符号の説明】
【0030】
Q:給電柱
1:本体部
3:水抜き穴
4:表示部
5:長溝
7:根かせ
61:蓋部材