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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】エアフィルター
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/00 20220101AFI20220328BHJP
【FI】
B01D46/00 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018100344
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019202288
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福原 宏昭
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】実公昭40-028544(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0280045(US,A1)
【文献】実開平05-051423(JP,U)
【文献】特開2004-105879(JP,A)
【文献】特開平10-328517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00-46/90
F24F 7/00
F24F 7/06
F24F 13/28
B60H 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する外周側部と前記外周側部の内側に位置する濾過部とを有するパネル型のフィルター部材と、
前記フィルター部材が組み付けられる組付口を有する外枠と前記外枠に前記外周側部が収まる正常組付状態において前記組付口の反対側で前記外周側部を支持する外周支持部とを有して前記フィルター部材が取り外し可能に組み付けられる組付枠とを備え、
前記フィルター部材は、
前記外周側部に連結された突出片であって前記正常組付状態において前記組付口から突出する前記突出片を有し、
前記組付枠は、
前記外枠に連結されて前記正常組付状態において前記フィルター部材の外周部の少なくとも一部を前記組付口側から覆う脱落防止片を有する
エアフィルター。
【請求項2】
前記フィルター部材が前記突出片を複数有する
請求項1に記載のエアフィルター。
【請求項3】
前記外周側部は、矩形枠状の形状を有し、
前記突出片は、前記外周側部において互いに対向する一対の側面部に連結されている
請求項2に記載のエアフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー冷却装置に用いられるエアフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車は、バッテリーの性能低下を抑えることを目的の1つとしてバッテリーを冷却するバッテリー冷却装置を備えている。例えば特許文献1には、車室の空調された空気を用いてバッテリーを冷却するバッテリー冷却装置が開示されている。近年では観光バスなどの大型自動車についてもハイブリッド自動車や電気自動車が実用化されており、こうした大型自動車にも車室の空調された空気を用いてバッテリーを冷却するバッテリー冷却装置が採用されている。
【0003】
こうしたバッテリー冷却装置においては、車室内の空調された空気を用いてバッテリーを冷却しているとはいえ、その空気をそのままバッテリーの冷却に用いたのでは空気中の塵埃がバッテリーに供給されてしまう。そのため、吸気ダクトは、空気中の塵埃を取り除くエアフィルターを有している。エアフィルターは、組付枠と組付枠に対して取り外し可能に組み付けられて洗浄により再利用可能なフィルター部材を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-12606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうしたフィルター部材の1つであるパネル型のフィルター部材は、濾過前の空気が流入するおもて面と濾過後の空気が流出するうら面とを有している。そのため、清浄後におもて面とうら面とが反対に組み付けられてしまうと、フィルター部材に残存している塵埃がバッテリーに供給されるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、組付枠に対するパネル型のフィルター部材の誤組み付けを回避することのできるエアフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するエアフィルターは、外周側部と前記外周側部の内側に位置する濾過部とを有するパネル型のフィルター部材と、前記フィルター部材が組み付けられる組付口を有する外枠と前記外枠に前記外周側部が収まる正常組付状態において前記組付口の反対側で前記外周側部を支持する外周支持部とを有して前記フィルター部材が取り外し可能に組み付けられる組付枠とを備え、前記フィルター部材は、前記外周側部に連結された突出片であって前記正常組付状態において前記組付口から突出する前記突出片を有する。
【0008】
上記課題を解決するフィルター部材は、外周側部と前記外周側部の内側に位置する濾過部とを有して組付枠に対して取り外し可能に組み付けられるパネル型のフィルター部材であって、前記組付枠は、前記フィルター部材が組み付けられる組付口を有する外枠と前記外枠に前記外周側部が収まる正常組付状態において前記組付口の反対側で前記外周側部を支持する外周支持部とを有し、前記フィルター部材は、前記外周側部に連結された突出片であって前記正常組付状態において前記組付口から突出する前記突出片を有する。
【0009】
上記構成によれば、フィルター部材が組付枠に対して誤組み付けされた場合に外周支持部に対して突出片を当接させることができる。これにより、外周側部が外枠に収まらずに組付口からはみ出すことから、フィルター部材の誤組み付けを容易に把握できる。その結果、フィルター部材の誤組み付けを回避することができる。
【0010】
上記課題を解決するエアフィルターは、前記フィルター部材が前記突出片を複数有することが好ましい。
上記構成によれば、誤組み付けの際に外周支持部に突出片が当接する確率を高めることができる。その結果、フィルター部材の誤組み付けをより確実に回避することができる。
【0011】
上記課題を解決するエアフィルターにおいて、前記外周側部は、矩形枠状の形状を有し、前記突出片は、前記外周側部において互いに対向する一対の側面部に連結されていることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、例えばフィルター部材が傾斜した状態で組付口から組み付けられた場合などにおいても、組み付け時に少なくとも一方の突出片が組付枠と干渉する。その結果、フィルター部材の誤組み付けをさらに確実に回避することができる。
【0013】
上記構成のエアフィルターにおいて、前記外周側部は、弾性を有しており、前記組付枠は、前記外枠に連結されて前記正常組付状態において前記フィルター部材の外周部の少なくとも一部を前記組付口側から覆う脱落防止片を有することが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、正常組み付け後のフィルター部材の脱落が脱落防止片によって防止される。また、フィルター部材を組付枠に組み付ける際、外周側部を弾性変形させることによりフィルター部材と脱落防止片との干渉を回避することができる。すなわち、上記構成によれば、例えば留め具などでフィルター部材を組付枠に留める必要がない。これにより、フィルター部材の誤組付けを防止しつつ組み付け作業の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】エアフィルターの一実施形態の概略構成を示す斜視図であって、組付枠に対してフィルター部材の一実施形態が正常に組み付けられた正常組付状態を示す斜視図。
図2】組付枠と組付枠に対して正しい方向で組み付けられるフィルター部材とを示す分解斜視図。
図3】正常組付状態におけるエアフィルターの一例を示す側面図であって、組付枠を断面にして示す図。
図4】誤組付状態におけるエアフィルターの一例を示す側面図であって、組付枠を断面にして示す図。
図5】変形例における突出片の形状の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図4を参照してエアフィルターおよびフィルター部材の一実施形態について説明する。
図1に示すように、エアフィルター10は、例えばハイブリッド自動車などに搭載されるバッテリー冷却装置に用いられる。エアフィルター10は、吸気ダクト11の先端部に対して、例えば図示されない留め具によって着脱可能に取り付けられている。エアフィルター10は、組付枠15とパネル型のフィルター部材25とを備えている。
【0017】
図2に示すように、組付枠15は、矩形枠状の形状を有しており、例えばアルミニウムなどの金属板を変形加工・接合加工することにより作製される。組付枠15は、外枠16、脱落防止片17、および、外周支持部18を有している。外枠16は、パネル型のフィルター部材25を側方から覆うとともにフィルター部材25が組み付けられる組付口19を形成する。外枠16は、互いに対向する一対の短辺枠部20と、互いに対向する一対の長辺枠部21とを有している。脱落防止片17は、外枠16の隅部、すなわち短辺枠部20と長辺枠部21とがなす角部において組付口19の周端部を覆っている。脱落防止片17は、組付枠15に組み付けられたフィルター部材25の外周部の少なくとも一部を組付口19側から覆うことにより、組付口19からフィルター部材25が脱落することを防止する。外周支持部18は、外枠16における組付口19の反対側に位置しており、外枠16の全周において内側に向かって延びる片状の形状を有しており、組付枠15に組み付けられたフィルター部材25の外周側部26を組付口19の反対側から支持する。
【0018】
フィルター部材25は、外周側部26、濾過部29、および、突出片31を備えている。外周側部26は、互いに対向する一対の短辺側部27と互いに対向する一対の長辺側部28とを有する矩形枠状の枠体であり、例えば不織布などで作製されることにより弾性が付与されている。短辺側部27および長辺側部28は、正常組付状態において外周側部26が組付枠15の外枠16に収まるように、組付枠15における脱落防止片17と外周支持部18との間の距離L1よりも小さい側部高さH1を有している。また、短辺側部27の一端部27aおよび長辺側部28の一端部28aは、正常組付状態において組付枠15の外周支持部18に支持される仮想的な平坦面である組付面25aを形成する。
【0019】
濾過部29は、一対の長辺側部28が対向する方向で折り曲げ部30が並んだ蛇腹形状を有している。濾過部29は、例えば不織布などで作製されており、空気を濾過することにより空気に含まれている塵埃をより取り除く。濾過部29は、弾性を有しており、折り曲げ部30が並ぶ方向、すなわち一対の長辺側部28が互いに近づく方向に弾性変形可能に構成されている。
【0020】
突出片31は、外周側部26における一対の短辺側部27の各々に一体的に連結されている。各突出片31は、短辺側部27の他端部27bにおける中央部分から組付面25aとは反対方向へ突出している。フィルター部材25において、外周側部26と突出片31とを合わせた部分の高さである最大高さH2は、組付枠15における外枠16の高さである外枠高さH3よりも大きい値に設定される。フィルター部材25は、一対の長辺側部28を近づけるように弾性変形させて外周側部26の各隅部を中心側に互いに近づけた状態で組付枠15に組み付けられることにより、組み付け時における脱落防止片17との干渉が回避される。
【0021】
図3に示すように、組付枠15に対してフィルター部材25が正しい方向で組み付けられた正常組付状態においては、フィルター部材25の外周側部26が組付枠15の外周支持部18によって支持される。そのため、組付枠15の組付口19から突出片31の一部が突出した状態となる。
【0022】
一方、図4に示すように、組付枠15に対してフィルター部材25が誤った方向で組み付けられた誤組付状態においては、一対の突出片31の少なくとも一方が外周支持部18に当接するため、組付枠15の組付口19からフィルター部材25の外周側部26および濾過部29の一部がはみ出した状態となる。また、フィルター部材25の一部が脱落防止片17によって変形した状態にもなる。こうしたフィルター部材25のはみ出しや変形により、フィルター部材25の組み付け方向が反対であったことを容易に把握することができる。その結果、フィルター部材25の誤組み付けを回避することができる。
【0023】
上記実施形態のエアフィルター10およびフィルター部材25によれば以下の作用効果が得られる。
(1)フィルター部材25は、外周側部26に一体的に連結されて、誤組付状態において外周側部26および濾過部29の一部を組付枠15からはみ出させる突出片31を有している。そのため、フィルター部材25の誤組み付けを容易に把握することができる。その結果、フィルター部材の誤組み付けを回避することができる。
【0024】
(2)フィルター部材25は、複数の突出片31を有している。このようにフィルター部材25が複数の突出片31を有していることにより、例えば組み付け時にフィルター部材25が傾斜していたことに起因して突出片31の一部が外周支持部18の内側を通過したとしても、残りの突出片31が外周支持部18に当接することが可能である。すなわち、誤組み付け時に外周支持部18に突出片31が当接する確率を高めることができる。
【0025】
(3)フィルター部材25は、互いに対向する短辺側部27の各々に突出片31を有している。そのため、例えば、一対の短辺側部27の位置関係が組付口19に対して傾斜した状態でフィルター部材25が組付枠15に組み付けられて一方の突出片31が外周支持部18の内側を通過したとしても、他方の突出片31が組付枠15のどことかと干渉する。すなわち、上記構成によれば、組み付け時に少なくとも一方の突出片31が組付枠15と干渉することとなる。その結果、フィルター部材25の誤組み付けをさらに確実に回避することができる。
【0026】
(4)フィルター部材25は、外周側部26が弾性を有していることにより、一対の長辺側部28が近づくように弾性変形させた状態で組付枠15に組み付けることができる。また、組付枠15は、脱落防止片17によってフィルター部材25の脱落を防止することができる。このように外周側部26が弾性を有しているとともに組付枠15が脱落防止片17を有してことにより、例えば留め具などを用いてフィルター部材25を組付枠15に組み付ける構成に比べて、フィルター部材25の誤組み付けを回避しつつ、フィルター部材25の組み付けを容易に行いことができる。
【0027】
(5)フィルター部材25は、短辺側部27に形成された突出片31と、長辺側部28が延びる方向に沿って折り曲げ部30が延びる濾過部29とを有している。そのため、組み付け時におけるフィルター部材25の弾性変形は、一対の長辺側部28を互いに近づける変形となる。そして、突出片31は、短辺側部27の中央部分、すなわち外周側部26のうちでフィルター部材25の弾性変形時に最も影響の受けにくい場所に形成されている。これにより、突出片31の形成に起因してフィルター部材25の弾性変形に要する力が大きく変化することもない。その結果、フィルター部材25の組み付け作業に大きな変化を与えることなく、フィルター部材25の誤組み付けを回避することができる。
【0028】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・フィルター部材25は、組付枠15に対して組み付けられるものであればよく、外周側部26に弾性を有するものに限られない。例えば外周側部26は樹脂などで形成されていてもよい。
【0029】
・組付枠15は、組付口19においてフィルター部材25の外周部の一部を覆うことによりフィルター部材25の脱落を防止する脱落防止片17を有していなくともよい。
・突出片31は、外周支持部18に当接する状態において濾過部29の一部を組付口19からはみ出させるものであればよい。そのため、突出片31は、外周側部26に連結されていればよく、その形成位置は一対の長辺側部28であってもよい。また、突出片31は、2つに限らず1つであってもよいし、3以上であってもよい。
【0030】
・組付枠15およびフィルター部材25は、矩形枠状の形状を有する枠体を有するものに限らず、例えば円形状や楕円形状、多角形状の枠体を有するものであってもよい。
・フィルター部材25の外周側部26は、濾過部29を側方から支持するものであればよく、枠状の形状を有するものに限らず、例えば一対の短辺側部27のみによって構成されていてもよい。
【0031】
図5に示すように、突出片31は、外周側部26よりも外側へ先端部を配置する屈曲部32を有していてもよい。こうした構成によれば、フィルター部材25の誤組み付け時、突出片31は、その先端部が外枠16に案内されることで外周支持部18に当接しやすくなる。
【符号の説明】
【0032】
10…エアフィルター、11…吸気ダクト、15…組付枠、16…外枠、17…脱落防止片、18…外周支持部、19…組付口、20…短辺枠部、21…長辺枠部、25…フィルター部材、25a…組付面、26…外周側部、27…短辺側部、27a…一端部、27b…他端部、28…長辺側部、28a…一端部、29…濾過部、30…折り曲げ部、31…突出片、32…屈曲部。
図1
図2
図3
図4
図5