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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20220328BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20220328BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220328BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/40
H02M7/48 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018146825
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2020022330
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(72)【発明者】
【氏名】羽田 正二
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-101575(JP,A)
【文献】特開2017-005841(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084524(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H02J 50/40
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界共振方式の非接触給電装置において、
少なくとも1つの一次コイルと少なくとも1つの二次コイルとを有するトランスと、
1つの前記二次コイルを給電コイルとし、前記給電コイルとコンデンサにより構成される共振回路と、
前記トランスにおける相互誘導により前記給電コイルに交流電流が流れるように、前記一次コイル又は前記給電コイル以外の二次コイルをスイッチング駆動するスイッチング部と、を備え、
直流電圧が入力される前記スイッチング部が、
前記一次コイルに交互に逆向きに電流が流れるように、前記一次コイルをスイッチング駆動可能な回路を有し、
1つの前記トランスにおいて、前記一次コイルと前記スイッチング部との組合せが複数組設けられており、各前記スイッチング部に別個の入力電圧が入力されることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項2】
磁界共振方式の非接触給電装置において、
少なくとも1つの一次コイルと少なくとも1つの二次コイルとを有するトランスと、
1つの前記二次コイルを給電コイルとし、前記給電コイルとコンデンサにより構成される共振回路と、
前記トランスにおける相互誘導により前記給電コイルに交流電流が流れるように、前記一次コイル又は前記給電コイル以外の二次コイルをスイッチング駆動するスイッチング部と、を備え、
第1及び第2の入力端に交流電圧が入力される前記スイッチング部が、
前記第1の入力端にそれぞれ一端が接続された第1及び第2のスイッチング素子と、
前記第2の入力端にそれぞれ一端が接続された第3及び第4のスイッチング素子と、
前記第1~第4の各スイッチング素子とそれぞれ並列に配置され前記入力端へ向かう電流を通過可能とする第1~第4の整流要素と、を有し、
前記トランスが、前記給電コイル以外の別の二次コイルを有し、
前記第1及び第4のスイッチング素子の各他端が前記別の二次コイルの終端及び始端にそれぞれ接続されると共に、前記第2及び第3のスイッチング素子の各他端が前記一次コイルの始端及び終端にそれぞれ接続されており、
前記第1の入力端に正の入力電圧が印加されるとき、前記第1及び第2のスイッチング素子が背反的にオンオフ制御されると共に前記第3及び第4のスイッチング素子はオフに維持され、かつ、
前記第2の入力端に正の入力電圧が印加されるとき、前記第3及び第4のスイッチング素子が背反的にオンオフ制御されると共に前記第1及び第2のスイッチング素子はオフに維持されることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項3】
1つの前記トランスにおいて、前記一次コイル及び前記別の二次コイルと前記スイッチング部との組合せが複数組設けられており、各前記スイッチング部に別個の入力電圧が入力されることを特徴とする請求項に記載の非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界共振方式の非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有線接続を介さずに電力を伝送する非接触電力伝送システムが知られている(特許文献1、2、3等)。非接触電力伝送システムは、電力を供給する側の給電装置と、受け取る側の受電装置とから構成される。
【0003】
多様な方式の1つとして磁界共振方式が知られている。磁界共振方式では、給電側と受電側のそれぞれにコイルとコンデンサを含む互いに同調する共振回路が設けられる。同調時のコイル間の磁界共振により電力が授受される。従来の給電装置におけるコイルとコンデンサを含む共振回路では、共振回路のコイルを含む電流路を、スイッチング素子を用いて導通又は遮断するスイッチング駆動を行うことにより共振を発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-007462号公報
【文献】特許第6269375号明細書
【文献】特許第6278012号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の磁界共振方式における給電装置の共振回路は、共振回路を構成するコイルとコンデンサの値によって伝送される電力量が決定されるため、小型で大容量の給電装置を実現することが困難であった。また、給電側の電力供給源の状況に応じて電力量を自在に調整することはできなかった。
【0006】
以上の現状から、本発明は、磁界共振方式の非接触給電装置において、小型で大容量とすることを可能とし、また、伝送される電力量を調整可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するべく、本発明は、以下の構成を提供する。
・ 本発明の態様は、磁界共振方式の非接触給電装置において、
少なくとも1つの一次コイルと少なくとも1つの二次コイルとを有するトランスと、
1つの前記二次コイルを給電コイルとし、前記給電コイルとコンデンサにより構成される共振回路と、
前記トランスにおける相互誘導により前記給電コイルに交流電流が流れるように、前記一次コイル又は前記給電コイル以外の二次コイルをスイッチング駆動するスイッチング部と、を備え、
直流電圧が入力される前記スイッチング部が、
前記一次コイルに交互に逆向きに電流が流れるように、前記一次コイルをスイッチング駆動可能な回路を有し、
1つの前記トランスにおいて、前記一次コイルと前記スイッチング部との組合せが複数組設けられており、各前記スイッチング部に別個の入力電圧が入力されることを特徴とする。
本発明の別の態様は、磁界共振方式の非接触給電装置において、
少なくとも1つの一次コイルと少なくとも1つの二次コイルとを有するトランスと、
1つの前記二次コイルを給電コイルとし、前記給電コイルとコンデンサにより構成される共振回路と、
前記トランスにおける相互誘導により前記給電コイルに交流電流が流れるように、前記一次コイル又は前記給電コイル以外の二次コイルをスイッチング駆動するスイッチング部と、を備え、
第1及び第2の入力端に交流電圧が入力される前記スイッチング部が、
前記第1の入力端にそれぞれ一端が接続された第1及び第2のスイッチング素子と、
前記第2の入力端にそれぞれ一端が接続された第3及び第4のスイッチング素子と、
前記第1~第4の各スイッチング素子とそれぞれ並列に配置され前記入力端へ向かう電流を通過可能とする第1~第4の整流要素と、を有し、
前記トランスが、前記給電コイル以外の別の二次コイルを有し、
前記第1及び第4のスイッチング素子の各他端が前記別の二次コイルの終端及び始端にそれぞれ接続されると共に、前記第2及び第3のスイッチング素子の各他端が前記一次コイルの始端及び終端にそれぞれ接続されており、
前記第1の入力端に正の入力電圧が印加されるとき、前記第1及び第2のスイッチング素子が背反的にオンオフ制御されると共に前記第3及び第4のスイッチング素子はオフに維持され、かつ、
前記第2の入力端に正の入力電圧が印加されるとき、前記第3及び第4のスイッチング素子が背反的にオンオフ制御されると共に前記第1及び第2のスイッチング素子はオフに維持されることを特徴とする。さらにこの態様では、1つの前記トランスにおいて、前記一次コイル及び前記別の二次コイルと前記スイッチング部との組合せが複数組設けられており、各前記スイッチング部に別個の入力電圧が入力されることが、好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、磁界共振方式の非接触給電装置において小型で大容量とすることができ、かつ、電力供給量を自在に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の非接触給電装置の第1の実施形態の回路例を概略的に示す。
図2図2は、図1の回路におけるタイミング図である。
図3図3(a)は、図1の回路において、グループAのスイッチング素子のオン期間に流れる電流を、(b)はグループBのスイッチング素子のオン期間に流れる電流を概略的に示す。
図4図4は、第1の実施形態の変形形態の回路例を概略的に示す。
図5図5は、第1の実施形態の別の変形形態の回路例を概略的に示す。
図6図6は、第1の実施形態のさらに別の変形形態の回路例を概略的に示す。
図7図7は、本発明の非接触給電装置の第2の実施形態の回路例を概略的に示す。
図8図8(a)は、図7の回路においてモードIのとき流れる電流を、(b)はモードIIのとき流れる電流をそれぞれ概略的に示す。
図9図9(a)は、図7の回路においてモードIIIのとき流れる電流を、(b)はモードIVのとき流れる電流をそれぞれ概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例を示した図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(1)第1の実施形態
(1-1)第1の実施形態の回路構成
図1は、本発明の非接触給電装置の第1の実施形態の回路例を概略的に示した図である。
図1には、非接触給電装置10に加えて、模式的に受電装置20も示している。給電装置10と受電装置20の間の点線は、無線接続であることを示している。
【0011】
給電装置10は、一次コイルN1と二次コイルN2を有するトランスTを有する(トランスのコイルの巻き始端を黒丸で示す)。トランスTの二次コイルN2には、コンデンサCが接続されている。二次コイルN2とコンデンサCは、所定の共振周波数をもつ共振回路を構成する。共振周波数は、例えば数十kHz~数百kHzである。この回路例では、二次コイルN2が、給電装置10における給電コイルに相当する。トランスTは、疎結合とすることが好適である。
【0012】
一次側の入力端1、2には、直流電圧(V-V)が印加される。この直流電圧が一次コイルN1に印加されると、一次コイルN1に電流が流れる。この一次コイルN1に流れる電流は、所定の周波数で交互に反対向きに流れるようにスイッチング制御される。このスイッチング制御は、入力端1、2と一次コイルN1の間に設けられたスイッチング部により行われる。スイッチング制御の周波数は、基本的に、トランスTの二次側に設けられた共振回路の共振周波数と同じに設定する。
【0013】
図1のスイッチング部は、基本的にフルブリッジ回路を構成している。このフルブリッジ回路は、4個のスイッチング素子A1、A2、B1、B2を有する。各スイッチング素子は、ここでは一例としてNチャネルMOSFETである。スイッチング素子A1、A2が、同時にオンオフ制御される第1のグループ(以下「グループA」と称する)を構成し、スイッチング素子B1、B2が、同時にオンオフ制御される第2のグループ(以下「グループB」と称する)を構成する。
【0014】
スイッチング部の各スイッチング素子は、制御端であるゲートに印加される制御電圧によりオンオフ制御される。オンオフ制御電圧は、通常、PWM信号である。PWM信号の周波数は、二次側の共振回路の共振周波数に合わせて設定される。グループAのスイッチング素子は、制御電圧Vによりオンオフ制御され、グループBのスイッチング素子は、制御電圧Vによりオンオフ制御される。図示しないが、PWM信号を生成する制御部が別途設けられている。
【0015】
正の入力端1と一次コイルN1の始端の間に、スイッチング素子A1が直列接続されている。一次コイルN1の終端と負の入力端2の間に、逆流防止ダイオードDA1とスイッチング素子A2が直列接続されている。
【0016】
同様に、正の入力端1と一次コイルN1の終端との間に、スイッチング素子B1が直列接続されている。一次コイルN1の始端と負の入力端2との間に、逆流防止ダイオードDB1とスイッチング素子B2が直列接続されている。
【0017】
図1のスイッチング部は、基本的なフルブリッジ回路とは異なり、一次コイルN1を含む電流路に逆流防止ダイオードDA1、DB1がそれぞれ直列接続されている。逆流防止ダイオードDA1、DB1の極性は、スイッチング素子A1、A2、B1及びB2のボディダイオードのそれとは逆向きである。
【0018】
逆流防止ダイオードDA1、DB1は、図1に示した位置以外に、入力端1と入力端2の間の電流路上のいずれかの位置に直列に挿入することができる。
【0019】
好適には、逆流防止ダイオードDA1、DB1は、スイッチング素子A1とスイッチング素子B1のドレイン同士の接続点と、スイッチング素子A2とスイッチング素子B2のソース同士の接続点の間の電流路にそれぞれ挿入される。言い換えると、逆流防止ダイオードDA1は、グループAのスイッチング素子のオン期間電流が専ら流れる電流路に直列に挿入され、一方、逆流防止ダイオードDB1は、グループBのスイッチング素子のオン期間電流が専ら流れる電流路に直列に挿入されることが好適である。
【0020】
なお、入力端1、2の少なくとも一方のライン上にダイオードを挿入した場合も逆流防止機能を実現できる。しかしながら、入力ライン上に逆流防止ダイオードを挿入した場合、スイッチング素子がオンからオフとなったときにリカバリ電流を生じる点で不利である。但し、ファーストリカバリダイオード(FRD)、シリコンカーバイト(SIC)を用いたショットキーダイオード等を用いた場合は、これらの入力ライン上に逆流防止ダイオードを挿入することも可能である。
【0021】
(1-2)第1の実施形態の回路動作
図2及び図3を参照して、図1の非接触給電装置の動作を説明する。
図2は、図1の回路の各構成要素における波形の一例を示したタイミング図である。図2(a)はグループAのスイッチング素子のオンオフ制御電圧Vの波形、(b)はグループBのスイッチング素子のオンオフ制御電圧Vの波形、(c)は一次コイルN1の両端電圧波形、(d)は、二次コイル(以下「給電コイル」と称する)N2の電流波形(但し、イメージ的波形)を示している。
【0022】
図2(a)(b)に示すように、フルブリッジ回路に含まれるグループAのスイッチング素子とグループBのスイッチング素子とは、互いに背反的にオンオフ制御される。但し、グループAとグループBのスイッチング素子が同時にオンになると、入力電圧が短絡するので適宜のデッドタイムを設けている。双方のグループのオン期間の長さは同じであり、オフ期間の長さも同じである。周波数は、二次側の共振回路の共振周波数に一致させる。
【0023】
図3(a)は、図1の回路において、Aグループのスイッチング素子がオンであり、かつ、Bグループのスイッチング素子がオフである期間(「モードA」と称する)に流れる電流を概略的に示している。電流は、矢印付き実線で示している。
【0024】
一次側において、スイッチング素子B1、B2がオフになり、スイッチング素子A1、A2がオンになると、一次コイルN1の始端に正の入力電圧が印加され、電流ia1が流れる。
【0025】
一次コイルN1に電流ia1が流れると、相互誘導により給電コイルN2に起電力を生じる。この起電力は、給電コイルN2の始端が正となる向きであり、図示のように電流ia2が流れる。電流ia2は、コンデンサCにも流れる。
【0026】
図3(b)は、図1の回路において、Aグループのスイッチング素子がオフであり、かつ、Bグループのスイッチング素子がオンである期間(「モードB」と称する)に流れる電流を示している。
【0027】
一次側において、スイッチング素子A1、A2がオフになり、スイッチング素子B1、B2がオンになると、一次コイルN1の終端に正の入力電圧が印加され、電流ib1が流れる。一次コイルN1において、電流ib1は、図3(a)の電流ia1とは逆向きに流れる。
【0028】
一次コイルN1に電流ib1が流れると、相互誘導により給電コイルN2に起電力を生じる。この起電力は、給電コイルN2の終端が正となる向きであり、電流ib2が流れる。電流ib2は、図3(a)の電流ib1とは逆向きであり、コンデンサCにも流れる。
【0029】
上記の通り、モードAとモードBでは、互いに対称的な電流が流れる。一次コイルN1がスイッチング駆動されることにより、モードAとモードBが交互に繰り返される。その繰り返し周波数は、給電コイルN2とコンデンサCの共振周波数と一致している。この結果、二次側の共振回路は、一次側から駆動されることにより自由共振を行うようになる。それに応じて、受電装置20においても共振を生じ、受電装置20が電力を受け取る。
【0030】
ここで図2(c)を参照する。AモードからBモードへ、又はその逆に移行するとき、一次コイルN1は一時的に電流が遮断されることにより逆起電力を生じる。例えばBモードからAモードに移行するときは、一次コイルN1の終端側が正電位となる逆起電力が発生する。仮に、ダイオードDB1が無い場合を想定すると、この逆起電力により、入力端2→スイッチング素子B2→スイッチング素子B1→入力端1の経路で還流が流れ、入力側に電力が戻される。しかしながら、ここでは、ダイオードDB1により還流が阻止される。AモードからBモードに移行する際も同様であり、ダイオードDA1により還流が阻止される。
【0031】
図2(c)に示すように、AモードからBモードに移行する際、又は、BモードからAモードに移行する際、一次コイルN1に大きなスパイク電圧が生じる。このスパイク電圧は、ダイオードDB1、DA1が無い場合すなわち還流があるに比べて大きい。このスパイク電圧に寄与する電力は、相互誘導により、二次側の給電コイルN2に電力として伝達される。
【0032】
従って、ダイオードDA1、ダイオードDB1により還流が阻止されることで、より大きな電力を給電することが可能となる。これにより、給電装置10の電力伝達効率が向上する。
【0033】
本発明の非接触給電装置10は、トランスTを設けることによって、共振周波数で駆動されるコイルすなわち一次コイルN1と、実際に共振して給電するコイルすなわち給電コイルN2とを分離することを実現している。
【0034】
一次側のスイッチング駆動構成が、二次側の共振回路と直接的に接続されていないので、一次側において電力供給源を自由に選択することが可能となり、非接触給電において能動的な電力供給が可能となる(後述する図4に例示)。また、トランスTの一次コイルN1と給電コイルN2の巻数比の設定により、給電コイルN2の電圧を必要に応じて変更することが可能である。これにより、非接触給電装置を小型で大容量とすることが可能となる。従来は、スイッチング駆動されるコイルと、給電コイルが同じコイルであったので、大容量とすることが困難であった。
【0035】
二次側の共振回路は、安定した共振状態になると自由共振を行うようになる。従って共振周波数の拡散が低減される。いわゆるQ値が高くなる。
【0036】
また、本発明では、一次側のスイッチング駆動において、二次側の共振に合わせたゼロクロススイッチングを行う必要がない。従来は、スイッチング駆動されるコイルと共振するコイルが同じコイルであったので、共振電流がゼロ点を横切るタイミングでスイッチングのオンオフを切り替える制御を行う必要があった。図2(d)の給電コイルN2の電流例に示すように、共振電流がゼロ点を横切るタイミングと、スイッチング素子のオンオフのタイミングが精確に一致していなくとも、共振回路は自由な共振状態を持続することができる。従って、本発明では、従来に比べてスイッチング制御が容易であり、制御部の構成を簡素化することができる。
【0037】
(1-3)第1の実施形態の変形形態
図4は、第1の実施形態の変形形態の回路例を概略的に示す。
図4の回路では、トランスTが3つの一次コイルN11、N12、N13を備えている。一次コイルN11、N12、N13の各々は、図1の回路に示したものと同様のスイッチング部によりそれぞれ同様に駆動可能である。ここでは、一次コイルN11のスイッチング部の入力端には、風力発電システム10からの発電出力が入力される。二次コイルN12のスイッチング部の入力端には、太陽光発電システム20からの発電出力が入力される。二次コイルN13のスイッチング部の入力端には、系統電源30から入力される。なお、交流を出力する電力供給源の場合は、整流した後に各入力端に入力される。
【0038】
図4の回路においては、各電力供給源の電力発生状況に応じて、及び/又は、受電装置20の電力需要状況に応じて、一次コイルN11、N12、N13のいずれかのスイッチング駆動を停止したり、開始したりすることができる。このように本発明では、非接触給電において能動的な電力供給が可能となる。
【0039】
図5は、第1の実施形態の別の変形形態の回路例を概略的に示す。図5の回路では、一次コイルを3つの部分N11、N12、N13に区切る中間タップをスイッチSにより切り替えることにより、一次コイルの巻数を段階的に変えることができる。これにより、二次コイルN2との巻数比を選択することができる。
【0040】
図6は、第1の実施形態のさらに別の変形形態の回路例を概略的に示す。図1の回路におけるスイッチング部は、一次コイルN1に交互に逆向きに電流が流れるように、一次コイルN1を共振周波数にてスイッチング駆動可能な回路であればよい。従って、スイッチング部は、フルブリッジ回路に限られない。
【0041】
図6(a)は、図1の回路におけるスイッチング部を、フルブリッジ回路に替えてプッシュプル回路とした構成である。プッシュプル回路では、一次コイルを第1の一次コイルN11と第2の一次コイルN12の2つの部分に分割して用いる。この場合、グループAはスイッチング素子A1のみ、グループBはスイッチング素子B1のみである。各スイッチング素子と一次コイルN11、N12との間に、各スイッチング素子のボディダイオードに対して逆方向に直列接続された逆流防止ダイオードDA1、DB1が挿入配置されている。回路動作については、図1の回路と同様である。
【0042】
図6(b)の構成例は、図1の回路におけるスイッチング部を、フルブリッジ回路に替えてハーフブリッジ回路とした構成である。ハーフブリッジ回路では、グループAはスイッチング素子A1のみを含みかつコンデンサCAと直列接続され、グループBはスイッチング素子B1のみを含みかつコンデンサCBと直列接続されている。各スイッチング素子と一次コイルN1との間に、各スイッチング素子のボディダイオードに対して逆方向に直列接続された逆流防止ダイオードDA1、DB1が挿入配置されている。回路動作については、図1の回路と同様である。
【0043】
(2)第2の実施形態
(2-1)第2の実施形態の回路構成
図7は、本発明の非接触給電装置の第2の実施形態の回路例を概略的に示した図である。図7には、模式的に受電装置20も示している。
【0044】
非接触給電装置10Aは、一次コイルN1と、2つの二次コイルN2、N3を有するトランスTを有する(トランスのコイルの巻き始端を黒丸で示す)。トランスTの二次コイルN2には、コンデンサCが接続されている。二次コイルN2とコンデンサCは、所定の共振周波数をもつ共振回路を構成する。二次コイルN2が、非接触給電における給電コイルに相当する。トランスTは、疎結合とすることが好適である。
【0045】
第2の実施形態では、トランスTの二次側に給電コイルN2以外の別の二次コイルN3が設けられている。一次コイルN1と二次コイルN3は、基本的に同じ巻数とする。一次コイルN1及び二次コイルN3と、給電コイルN2との巻数比は、必要に応じて設定することができる。
【0046】
一次側の入力端1、2には、交流電圧vinが印加される。この交流電圧vinの周波数は、二次側の共振回路の共振周波数に比べて低周波である。その周波数は、例えば数十Hz程度であり、例えば系統電源の50Hz又は60Hzである。
【0047】
図7の回路におけるスイッチング部は、並列接続されたスイッチング素子と整流要素との組合せが、4組配置されている。スイッチング素子は、ここではNチャネルMOSFETである。整流要素はここではダイオードである。各ダイオードの極性は、各FETのボディダイオードと同じ向きである。好適には各ダイオードが設けられる。各ダイオードを設けない場合は、各FETのボディダイオードが同じ役割を果たすことができる。
【0048】
第1のスイッチング素子A3はダイオードDA3と、第2のスイッチング素子B3はダイオードDB3と、第3のスイッチング素子A4はダイオードDA4と、第4のスイッチング素子B4はダイオードDB4とそれぞれ並列接続されている。
【0049】
入力端1には、第1のスイッチング素子A3及び第2のスイッチング素子B3の各々の一端(ドレイン)がそれぞれ接続されている。入力端2には、第3のスイッチング素子A4及び第4のスイッチング素子の各々の一端(ドレイン)がそれぞれ接続されている。
【0050】
第1のスイッチング素子A3の他端(ソース)は、二次コイルN3の終端に接続されている。第2のスイッチング素子B3の他端(ソース)は、一次コイルN1の始端に接続されている。第3のスイッチング素子A4の他端(ソース)は、一次コイルN1の終端に接続されている。第4のスイッチング素子B4の他端(ソース)は、二次コイルN3の始端に接続されている。
【0051】
スイッチング部の各スイッチング素子は、制御端であるゲートに印加される制御電圧によりオンオフ制御される。オンオフ制御電圧は、通常、PWM信号である。PWM信号の周波数は、二次側の共振回路に合わせて設定される。スイッチング素子A3は制御電圧VA3により、スイッチング素子B3は制御電圧VB3によりそれぞれオンオフ制御される。スイッチング素子A4は制御電圧VA4により、スイッチング素子B4は制御電圧VB4によりそれぞれオンオフ制御される。図示しないが、PWM信号を生成する制御部が別途設けられる。
【0052】
(2-2)第2の実施形態の回路動作
図8及び図9を参照して、図7の非接触給電装置の回路動作を説明する。
【0053】
図8(a)(b)は、図7の回路において、入力端1に正の入力電圧vinが印加されるときの動作を示している。すなわち、入力電圧vinの位相が、入力端1が高電位、入力端2が低電位となるときに流れる電流を概略的に示している。このとき、第1スイッチング素子A3と第2スイッチング素子B3が互いに背反的にオンオフ制御される。このオンオフ制御のためのPWM信号の周波数は、共振周波数と同じである。第3スイッチング素子A4及び第4スイッチング素子B4は双方ともオフに維持される。
【0054】
図8(a)は、スイッチング素子A3がオン、スイッチング素子B3がオフのモードIにおける電流を示している。モードIでは、入力電圧vinが二次コイルN3に印加される。入力電圧vinによる電流ia3は、入力端1→スイッチング素子A3→二次コイルN3(終端→始端)→ダイオードDA4→入力端2の経路で流れる。
【0055】
この電流ia3が二次コイルN3に流れることによって、相互誘導により給電コイルN2に起電力を生じる。この起電力は、給電コイルN2の終端が正である。よって、給電コイルN2に電流ia4が図示のように流れる。
【0056】
図8(b)は、スイッチング素子A3がオフ、スイッチング素子B3がオンのモードIIにおける電流を示している。モードIIでは、入力電圧vinが一次コイルN1に印加される。入力電圧vinによる電流ib3は、入力端1→スイッチング素子B3→一次コイルN1(始端→終端)→ダイオードDB4→入力端2の経路で流れる。
【0057】
この電流ib3が一次コイルN1に流れることによって、相互誘導により給電コイルN2に起電力を生じる。この起電力は、給電コイルN2の始端が正であり、モードIのときとは逆向きである。よって、給電コイルN2に電流ib4が図示のように流れる。
【0058】
なお、モードIの終了時にスイッチング素子A3がオフになると二次コイルN3に逆起電力が生じるが、スイッチング素子A4がオフでありかつダイオードDA4(及びスイッチング素子A4のボディダイオード)が逆バイアスであるので、入力側への還流は流れない。
【0059】
同様に、モードIIの終了時にスイッチング素子B3がオフになると一次コイルN1に逆起電力が生じるが、スイッチング素子B4がオフでありかつダイオードDB4(及びスイッチング素子B4のボディダイオード)が逆バイアスであるので、入力側への還流は流れない。
【0060】
図9(a)(b)は、図7の回路において、入力端2に正の入力電圧vinが印加されるときの動作を示している。すなわち、入力電圧vinの位相が、入力端1が低電位、入力端2が高電位となるときに流れる電流を概略的に示している。このとき、第3のスイッチング素子A4と第4のスイッチング素子B4が互いに背反的にオンオフ制御される。このオンオフ制御のためのPWM信号の周波数は、共振周波数と同じである。第1のスイッチング素子A3及び第2のスイッチング素子B3は双方ともオフに維持される。
【0061】
図9(a)は、スイッチング素子A4がオン、スイッチング素子B4がオフのモードIIIにおける電流を示している。モードIIIでは、入力電圧vinが二次コイルN3に印加される。入力電圧vinによる電流ia5は、入力端2→スイッチング素子A4→二次コイルN3(始端→終端)→ダイオードDA3→入力端1の経路で流れる。
【0062】
この電流ia5が二次コイルN3に流れることによって、相互誘導により給電コイルN2に起電力を生じる。この起電力は、給電コイルN2の始端が正である。よって、給電コイルN2に電流ia6が図示のように流れる。
【0063】
図9(b)は、スイッチング素子A4がオフ、スイッチング素子B4がオンのモードIVにおける電流を示している。モードIVでは、入力電圧vinが一次コイルN1に印加される。入力電圧vinによる電流ib5は、入力端2→スイッチング素子B4→一次コイルN1(終端→始端)→ダイオードDB3→入力端1の経路で流れる。
【0064】
この電流ib5が一次コイルN1に流れることによって、相互誘導により給電コイルN2に起電力を生じる。この起電力は、給電コイルN2の終端が正であり、モードIIIのときとは逆向きである。よって、給電コイルN2に電流ib6が図示のように流れる。
【0065】
モードI、IIのときと同様に、モードIII、IVにおいてもスイッチング素子A4、B4がオフになると二次コイルN3、N1に逆起電力が生じるが、スイッチング素子A3、B3がオフでありかつダイオードDA3、DB3(及びスイッチング素子A3、B3の各ボディダイオード)が逆バイアスであるので、入力側への還流は流れない。
【0066】
入力電圧vinが正弦波交流の場合、位相が0°~180°の間は図8に示したモードIとモードIIが繰り返され、位相180°~360°の間は図9に示したモードIIIとモードIVが繰り返される。なお、入力電圧vinの位相は、図示しない制御部により検知され、制御部は、検知結果に応じて各スイッチング素子に適切なPWM信号を出力する。これにより、給電コイルN2とコンデンサCからなる共振回路は、共振周波数の交流電流が流れて共振する。この共振回路は、スイッチング部により直接スイッチング駆動されず、トランスTの相互誘導を介して駆動されるので、実質的に自由共振を行うことができる。
【0067】
第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に、スイッチング部のスイッチング制御において、共振回路の交流電流のゼロ点に精確に合わせるゼロクロススイッチングの必要がない。これにより制御部をシンプルとすることができる。
【0068】
第2の実施形態においても、図4に示した実施例と同様に、1つのトランスTにおいて、一次コイルN1及び二次コイルN3とスイッチング部との組合せを複数組設けることができる。それら複数のスイッチング部の各々には、別個の電力供給源からの入力電圧を入力することができる。
【符号の説明】
【0069】
10、10A 給電装置
T トランス
N1、N11、N12、N13 一次コイル(駆動コイル)
N2 二次コイル(給電コイル)
N3 二次コイル(駆動コイル)
C コンデンサ
A1、A2、B1、B2 スイッチング素子(MOSFET)
A3、B3、A4、B4 スイッチング素子(MOSFET)
DA1、DB1 逆流防止ダイオード
DA3、DB3、DA4、DB4 ダイオード
20 受電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9