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特許7046789合わせガラス用のポリビニルアセタール樹脂フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】合わせガラス用のポリビニルアセタール樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20220328BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220328BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220328BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20220328BHJP
   B60J 1/00 20060101ALN20220328BHJP
【FI】
C03C27/12 D
C03C27/12 L
C03C27/12 N
B32B27/30 102
B32B15/08 Q
B32B7/025
B60J1/00 H
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2018238243
(22)【出願日】2018-12-20
(62)【分割の表示】P 2018558441の分割
【原出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019094257
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】P 2017061690
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017061694
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017092575
(32)【優先日】2017-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】磯上 宏一郎
(72)【発明者】
【氏名】保田 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】小石川 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ケラー
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/186029(WO,A1)
【文献】特表2016-539905(JP,A)
【文献】国際公開第2015/059831(WO,A1)
【文献】特開昭62-010106(JP,A)
【文献】特表2003-503236(JP,A)
【文献】特開平05-001108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 27/30
B32B 15/08
B32B 7/025
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合わせガラス用のポリビニルアセタール樹脂フィルムであって、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定された、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度が200mPa・sより大きく、前記樹脂組成物に含まれるポリビニルアセタール樹脂の含有量が、当該樹脂組成物の総質量に基づいて50質量%以上であり、ポリビニルアセタール樹脂フィルム中の可塑剤の量がポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物の総質量に基づいて0~20質量%であり、10~350μmの厚さを有する、ポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項2】
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムと、アセタール化度69~71モル%かつアセチル基としての酢酸ビニル単位の含有量1モル%以下のポリビニルブチラール樹脂72質量%およびトリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)28質量%を含有する厚さ0.76mmの1枚の可塑化ポリビニルブチラール樹脂層とを接合して測定された耐熱クリープ性を示す値が10mm以下であり、
耐熱クリープ性を示す値の測定は、前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムと前記可塑化ポリビニルブチラール樹脂層とを接合して幅100mmおよび長さ270mmの寸法にカットした試料を、長さ方向に30mmずらした幅100mm、長さ300mmおよび厚さ3mmのガラスAおよびBの間に収まるよう、ガラスA/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/可塑化ポリビニルブチラール樹脂層/ガラスBの順に配置して接合し、ガラスBの、可塑化ポリビニルブチラール樹脂層との接合面と反対側の面に1kgの鉄板を接着剤で接着し、長さ方向に30mm突出している部分を上にして、鉄板付き試料が水平面に対して80~90°となり、ガラスBの鉄板が接着された部分が試料上部または上面となるようにガラスAを固定した状態で、100℃の恒温槽に1週間放置した後に、ガラスBのずれた距離(mm)を測定する方法により行う、
請求項1に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項3】
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを、アセタール化度69~71モル%かつアセチル基としての酢酸ビニル単位の含有量1モル%以下のポリビニルブチラール樹脂72質量%およびトリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)28質量%を含有する厚さ0.38mmの2枚の可塑化ポリビニルブチラール樹脂層の間に配置して接合し、請求項2において記載した耐熱クリープ性を示す値の測定と同様の方法で測定される耐熱クリープ性を示す値が10mm以下である、請求項1または2に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項4】
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の分子量分布が2.7以上である、請求項1~3のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項5】
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂が、粘度平均重合度の異なる少なくとも2つのポリビニルアセタール樹脂の混合物であるか、または粘度平均重合度の異なる少なくとも2つのポリビニルアルコール系樹脂の混合物のアセタール化物である、請求項1~4のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項6】
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物がアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩を含む、請求項1~5のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項7】
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基量が26~34モル%である、請求項1~6のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項8】
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基量が12~26モル%である、請求項1~6のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項9】
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムの少なくとも片面に機能性層を有する、請求項1~8のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項10】
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムの少なくとも片面に、機能性層を構成する材料をコート、印刷またはラミネートする、請求項9に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記機能性層が導電層である、請求項9に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項12】
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムの導電層を有する面上に別のポリビニルアセタール樹脂フィルムを有する、請求項11に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項13】
前記導電層が金属箔に基づく、請求項11または12に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項14】
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムと前記機能性層との間に、前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムとの屈折率差が0.01以上の接着剤層を有さない、請求項9に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項15】
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムと前記機能性層との間に接着剤層を有さない、請求項9に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項16】
前記導電層が線状、格子状または網状の形状を有する、請求項11~13のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項17】
前記導電層が線幅0.01~5mmの複数の線状導電性材料で構成されている、請求項11~13および16のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項18】
前記導電層が線幅1~30μmの複数の線状導電性材料で構成されている、請求項11~13および16のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項19】
前記導電層を形成する導電性材料が銀または銅を含んでなる、請求項11~13および16~18のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項20】
前記導電層の片面または両面が低反射率処理されている、請求項11~13および16~19のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項21】
前記導電層の表面の全ての面が低反射率処理されている、請求項11~13および16~19のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項22】
前記低反射率処理が黒化処理である、請求項20または21に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項23】
前記導電層に接続されたバスバーを有する、請求項11~13および16~22のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項24】
バスバーが導電層と一体成形されたものである、請求項23に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項25】
金属箔とポリビニルアセタール樹脂フィルムとを接合させる工程、および前記工程で得られた金属箔付ポリビニルアセタール樹脂フィルムから導電層を形成する工程を含む、請求項13および16~24のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルムの製造方法。
【請求項26】
複数の透明基材の間に、請求項9および11~24のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルムを有する、積層体。
【請求項27】
複数の透明基材の間に、請求項23または24に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルムを有する積層体であって、前記バスバーに接続された電極を有する積層体。
【請求項28】
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムが前記透明基材と直接接している、請求項26または27に記載の積層体。
【請求項29】
複数の透明基材の間に、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層をさらに有する、請求項26~28のいずれかに記載の積層体。
【請求項30】
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基量と、前記可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基量との差が、ビニルアルコール単位の質量%の差として4質量%以下である、請求項29に記載の積層体。
【請求項31】
前記機能性層または前記導電層が前記可塑化ポリビニルアセタール樹脂層と直接接している、請求項29または30に記載の積層体。
【請求項32】
前記可塑化ポリビニルアセタール樹脂層が、特定波長光遮蔽機能、遮熱機能、遮音機能、発光機能、ディスプレイ機能および二重像防止機能からなる群から選択される少なくとも1つの機能を有する、請求項29~31のいずれかに記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラス用のポリビニルアセタール樹脂フィルムに関する。また、本発明は、複数の透明基材の間に前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを有する合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
建物または乗物におけるガラスの着氷や曇りを除去する方法として、ガラスに熱風を当てる方法が知られている。しかし、この方法には、充分な前方視認性を得るのに時間がかかる等の問題がある。また、フロントガラス等のガラスに取り付けたカメラやセンサーの誤作動を防ぐため、カメラやセンサーの周りを加熱し、着氷や曇りを除去することが必要とされている。しかし、この除去に燃料の燃焼熱を利用できない電気自動車においては、電気で空気を加熱し、ガラスに熱風を当てる方法では効率が悪く、航続距離の低下に直結するといった問題がある。
【0003】
そこで、ガラスに電熱線を設置し、通電させることで、着氷や曇りを除去する方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、機能層の上下に上側接着層および下側接着層を被せ、これらの上側・下側接着層の上下に上側ガラス板および下側ガラス板を被せ、前記下側接着層と前記下側ガラス板との間に電熱線を介在させてなる電熱線入り合わせガラスが記載されており、具体的には、電熱線としてタングステン線を使用した例が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、透明基材、前記透明基材の少なくとも一面に備えられた接着剤層、前記接着剤層上に備えられた導電性発熱線、前記導電性発熱線および前記発熱線によって覆われていない接着剤層の上面をカプセル化するコーティング膜、前記導電性発熱線と電気的に連結したバスバー、および前記バスバーと連結した電源部を含む、発熱体が記載されており、具体的には、透明基材としてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを使用した例が記載されている。
また、例えば、特許文献3には、2枚の透明なプレートと、少なくとも1枚のシートAおよび少なくとも1枚のシートBとを接着して、導電性構造体を有する合わせガラス積層体を製造する方法であって、シートAはポリビニルアセタールPAと可塑剤WAとを含有し、シートBはポリビニルアセタールPBと可塑剤WBとを含有する方法が記載されており、シート上に導電性構造体を形成する方法として、印刷法(スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷)、蒸着、スパッタリングおよび電気蒸着という一般的な手法が挙げられている。同文献には、具体的な実施例は記載されていない。
また、特許文献4には、PET等の透明基板上に導電性インクを印刷する方法が提案されており、印刷工程後、印刷された配線パターンに黒化処理を行う後処理工程を有していてもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-056811号公報
【文献】特表2013-516043号公報
【文献】US 2016/288459 A1
【文献】特開2015-151026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されているような、ガラス板の間に多数のタングステン線を並べ、機能層と一体化させる工程は複雑で、生産性に劣る。さらに、太いタングステン線を用いるため、前方視認性に問題が残る。
特許文献2に記載されているような、PETフィルムを用いた接合ガラスでは、2枚の中間膜を必要とすること、そのため発熱体が接合ガラスの中央付近に位置することになりガラスの加熱効率が低下すること、PETフィルムが曲面追従性に劣るため高曲率のフロントガラスには適用できないこと、PETフィルムが伸縮性に劣るため衝突時の頭部衝撃指数が高くなってしまうこと、銅箔をPETフィルムに接着するための接着剤に由来する高いヘイズが生じてしまうことといった問題がある。
また、特許文献3に記載されているようなポリビニルアセタールシートにおいては、可塑剤を含まないかまたは少量含むポリビニルアセタールシートは製膜性に劣るため、低重合度のポリビニルアセタール樹脂を用いたシートしか使用されていない。そのようなシートと可塑剤を含む中間膜とを積層して合わせガラスを作製すると、中間膜中の可塑剤がポリビニルアセタールシートに移行し、それにより耐熱性が低下し、高温に曝された場合に合わせガラスの2枚のガラスにずれが生じる虞がある。また、合わせガラス作製時に付与される機能性層または導電性構造体が、ポリビニルアセタールシートの溶融により変形したり、破壊されたりする虞がある。さらに、特許文献3に記載されているような、ポリビニルアセタールシート上に導電性構造体を印刷法により形成する方法では、前方視認性に優れた細い均一な金属線を形成することは困難であり、また、ポリビニルアセタールシート上に導電性構造体を蒸着またはスパッタリングにより形成する方法では、必要な発熱量を得るための厚い金属層を形成させるのにエネルギーおよび時間を要するため生産効率が低下し、薄い金属層で必要な発熱量を確保するために金属層における金属線幅を広くすると、前方視認性が低下するといった問題がある。
また、特許文献4に記載された、PET基板上に導電性構造体を印刷法により形成する方法では、前方視認性に優れた細い均一な金属線を形成することが困難であること、表面の黒化処理を行ったとしても基材との接着面が金属光沢を保ったままとなり、光の反射により前方視認の妨げになることといった問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、合わせガラス作製時に機能性層または構造体(導電性構造体)の変形および破壊を抑制できるとともに、得られる合わせガラスの高温下でのガラスのずれを抑制できるポリビニルアセタール樹脂フィルム、および当該フィルムを用いた積層体(合わせガラス)を提供することである。
また、より限定的な局面では、機能性層としての導電層(導電性構造体)を付与する際の生産効率が高く、導電層を接着するための接着剤に由来するヘイズが生じない(即ち光学的に優れた)、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルム、さらには、曲面追従性に優れ、前方視認性低下の一因となる光の反射が低減されたポリビニルアセタール樹脂フィルム(窓ガラス用発熱フィルム)、および当該フィルムを用いた積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために、合わせガラス用のポリビニルアセタール樹脂フィルムについて詳細に検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕合わせガラス用のポリビニルアセタール樹脂フィルムであって、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定された、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度が200mPa・sより大きく、ポリビニルアセタール樹脂フィルム中の可塑剤の量がポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物の総質量に基づいて0~20質量%であり、10~350μmの厚さを有する、ポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔2〕前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムと、アセタール化度69~71モル%かつアセチル基としての酢酸ビニル単位の含有量1モル%以下のポリビニルブチラール樹脂72質量%およびトリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)28質量%を含有する厚さ0.76mmの1枚の可塑化ポリビニルブチラール樹脂層とを接合して測定された耐熱クリープ性を示す値が10mm以下であり、耐熱クリープ性を示す値の測定は、前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムと前記可塑化ポリビニルブチラール樹脂層とを接合して幅100mmおよび長さ270mmの寸法にカットした試料を、長さ方向に30mmずらした幅100mm、長さ300mmおよび厚さ3mmのガラスAおよびBの間に収まるよう、ガラスA/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/可塑化ポリビニルブチラール樹脂層/ガラスBの順に配置して接合し、ガラスBの、可塑化ポリビニルブチラール樹脂層との接合面と反対側の面に1kgの鉄板を接着剤で接着し、長さ方向に30mm突出している部分を上にして、鉄板付き試料が水平面に対して80~90°となり、ガラスBの鉄板が接着された部分が試料上部または上面となるようにガラスAを固定した状態で、100℃の恒温槽に1週間放置した後に、ガラスBのずれた距離(mm)を測定する方法により行う、前記〔1〕に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔3〕前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを、アセタール化度69~71モル%かつアセチル基としての酢酸ビニル単位の含有量1モル%以下のポリビニルブチラール樹脂72質量%およびトリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)28質量%を含有する厚さ0.38mmの2枚の可塑化ポリビニルブチラール樹脂層の間に配置して接合し、前記〔2〕において記載した耐熱クリープ性を示す値の測定と同様の方法で測定される耐熱クリープ性を示す値が10mm以下である、前記〔1〕または〔2〕に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔4〕前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の分子量分布が2.7以上である、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔5〕前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂が、粘度平均重合度の異なる少なくとも2つのポリビニルアセタール樹脂の混合物であるか、または粘度平均重合度の異なる少なくとも2つのポリビニルアルコール系樹脂の混合物のアセタール化物である、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔6〕前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物がアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩を含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔7〕前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基量が26~34モル%である、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔8〕前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基量が12~26モル%である、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔9〕前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムの少なくとも片面に機能性層を有する、前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔10〕前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムの少なくとも片面に、機能性層を構成する材料をコート、印刷またはラミネートする、前記〔9〕に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルムの製造方法。
〔11〕前記機能性層が導電層である、前記〔9〕に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔12〕前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムの導電層を有する面上に別のポリビニルアセタール樹脂フィルムを有する、前記〔11〕に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔13〕前記導電層が金属箔に基づく、前記〔11〕または〔12〕に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔14〕前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムと前記機能性層との間に、前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムとの屈折率差が0.01以上の接着剤層を有さない、前記〔9〕に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔15〕前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムと前記機能性層との間に接着剤層を有さない、前記〔9〕に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔16〕前記導電層が線状、格子状または網状の形状を有する、前記〔11〕~〔13〕のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔17〕前記導電層が線幅0.01~5mmの複数の線状導電性材料で構成されている、前記〔11〕~〔13〕および〔16〕のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔18〕前記導電層が線幅1~30μmの複数の線状導電性材料で構成されている、前記〔11〕~〔13〕および〔16〕のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔19〕前記導電層を形成する導電性材料が銀または銅を含んでなる、前記〔11〕~〔13〕および〔16〕~〔18〕のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔20〕前記導電層の片面または両面が低反射率処理されている、前記〔11〕~〔13〕および〔16〕~〔19〕のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔21〕前記導電層の表面の全ての面が低反射率処理されている、前記〔11〕~〔13〕および〔16〕~〔19〕のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔22〕前記低反射率処理が黒化処理である、前記〔20〕または〔21〕に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔23〕前記導電層に接続されたバスバーを有する、前記〔11〕~〔13〕および〔16〕~〔22〕のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔24〕バスバーが導電層と一体成形されたものである、前記〔23〕に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
〔25〕金属箔とポリビニルアセタール樹脂フィルムとを接合させる工程、および前記工程で得られた金属箔付ポリビニルアセタール樹脂フィルムから導電層を形成する工程を含む、前記〔13〕および〔16〕~〔24〕のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルムの製造方法。
〔26〕複数の透明基材の間に、前記〔9〕および〔11〕~〔24〕のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルムを有する、積層体。
〔27〕複数の透明基材の間に、前記〔23〕または〔24〕に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルムを有する積層体であって、前記バスバーに接続された電極を有する積層体。
〔28〕前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムが前記透明基材と直接接している、前記〔26〕または〔27〕に記載の積層体。
〔29〕複数の透明基材の間に、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層をさらに有する、前記〔26〕~〔28〕のいずれかに記載の積層体。
〔30〕前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基量と、前記可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基量との差が、ビニルアルコール単位の質量の差として4質量%以下である、前記〔29〕に記載の積層体。
〔31〕前記機能性層または前記導電層が前記可塑化ポリビニルアセタール樹脂層と直接接している、前記〔29〕または〔30〕に記載の積層体。
〔32〕前記可塑化ポリビニルアセタール樹脂層が、特定波長光遮蔽機能、遮熱機能、遮音機能、発光機能、ディスプレイ機能および二重像防止機能からなる群から選択される少なくとも1つの機能を有する、前記〔29〕~〔31〕のいずれかに記載の積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムを使用することにより、合わせガラス作製時に機能性層または導電層の変形および破壊を抑制でき、得られる合わせガラスの高温下でのガラスのずれを抑制できる。
また、導電層を付与する際の生産効率が高く、導電層を接着するための接着剤に由来するヘイズが生じない(即ち光学的に優れた)、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルム、および曲面追従性に優れ、前方視認性低下の一因となる光の反射が低減されたポリビニルアセタール樹脂フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】耐熱クリープ性値(1)の測定に用いる合わせガラスの模式図である。
図2】耐熱クリープ性値(2)の測定に用いる合わせガラスの模式図である。
図3】鉄板が接着された、耐熱クリープ性値(1)または耐熱クリープ性値(2)の測定に用いる合わせガラスの模式図である。
図4】耐熱クリープ性値(1)または耐熱クリープ性値(2)を測定するために、鉄板が接着された合わせガラスを、所定の角度に固定した状態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムは、合わせガラス用のポリビニルアセタール樹脂フィルムであって、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定された、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度が200mPa・sより大きく、ポリビニルアセタール樹脂フィルム中の可塑剤の量がポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物の総質量に基づいて0~20質量%であり、10~350μmの厚さを有する、ポリビニルアセタール樹脂フィルムである。
【0012】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さは10~350μmである。ポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さが10μm未満であると、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの収縮または変形に起因して機能性層に歪み等が生じる問題が起こる。また、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さが350μmより大きいと、ポリビニルアセタール樹脂フィルムに場合により積層される可塑化ポリビニルアセタール樹脂層からの可塑剤移行量が多くなり、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層中の可塑剤量が少なくなることに起因して、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを用いた乗物用ガラスを搭載した乗物の衝突時における頭部衝撃が大きくなる等の問題が起こる。ポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さは、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上である。また、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さは、好ましくは330μm以下、より好ましくは295μm以下、より好ましくは270μm以下、より好ましくは250μm以下、より好ましくは150μm以下、より好ましくは120μm以下、最も好ましくは100μm未満である。一態様では、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さは10μm以上250μm以下である。ポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さが前記下限値以上かつ前記上限値以下であると、上記問題が起こらず、良好な製膜性が得られやすい。ポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さは、厚さ計またはレーザー顕微鏡等を用いて測定される。
【0013】
<ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するために使用される樹脂>
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムは、ポリビニルアルコールまたはエチレンビニルアルコールコポリマー等のポリビニルアルコール系樹脂のアセタール化によって製造されるポリビニルアセタール樹脂を含む。
【0014】
ポリビニルアセタール樹脂フィルムは、1つのポリビニルアセタール樹脂を含むか、或いは粘度平均重合度、アセタール化度、アセチル基量、水酸基量、エチレン含有量、アセタール化に用いられるアルデヒドの分子量、および鎖長のうちいずれか1つ以上がそれぞれ異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含んでよい。ポリビニルアセタール樹脂フィルムが異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、溶融成形の容易性の観点、並びに合わせガラス作製時の機能性層の変形および合わせガラス使用時のガラスのずれ等を防ぐ観点から、ポリビニルアセタール樹脂は、粘度平均重合度の異なる少なくとも2つのポリビニルアセタール樹脂の混合物であるか、または粘度平均重合度の異なる少なくとも2つのポリビニルアルコール系樹脂の混合物のアセタール化物であることが好ましい。
【0015】
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂は、例えば次のような方法によって製造できるが、これに限定されない。まず、濃度3~30質量%のポリビニルアルコールまたはエチレンビニルアルコールコポリマーの水溶液を、80~100℃の温度範囲で保持した後、10~60分かけて徐々に冷却する。温度が-10~30℃まで低下したところで、アルデヒドおよび酸触媒を添加し、温度を一定に保ちながら、30~300分間アセタール化反応を行う。次に、反応液を30~200分かけて20~80℃の温度まで昇温し、30~300分保持する。その後、反応液を、必要に応じて濾過した後、アルカリ等の中和剤を添加して中和し、樹脂を濾過、水洗および乾燥することにより、ポリビニルアセタール樹脂が製造される。
【0016】
アセタール化反応に用いる酸触媒は特に限定されない。有機酸および無機酸のいずれも使用できる。そのような酸触媒の例として、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸および塩酸等が挙げられる。これらの中でも、酸の強度および洗浄時の除去のしやすさの観点から、塩酸、硫酸および硝酸が好ましく用いられる。
【0017】
好適な破断エネルギーを有するポリビニルアセタール樹脂が得られやすい観点から、ポリビニルアセタール樹脂の製造に使用されるアルデヒドまたはケト化合物は、2~10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状または環状化合物であることが好ましく、直鎖状または分岐状化合物であることがより好ましい。これにより、相応の直鎖状または分岐状のアセタール基がもたらされる。また、本発明において使用されるポリビニルアセタール樹脂は、複数のアルデヒドまたはケト化合物の混合物によりポリビニルアルコールまたはエチレンビニルアルコールコポリマーをアセタール化して得られるアセタール化物であってもよい。
【0018】
本発明において使用されるポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも1つのポリビニルアルコールと、2~10個の炭素原子を有する1つ以上の脂肪族非分岐のアルデヒドとの反応により生じるものであることが好ましい。そのようなアルデヒドとしては、好適な破断エネルギーを有するポリビニルアセタール樹脂が得られやすい観点から、n-ブチルアルデヒドが好ましい。アセタール化に使用するアルデヒドにおけるn-ブチルアルデヒドの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0019】
ポリビニルアセタール樹脂を製造するために使用されるポリビニルアルコール系樹脂は、単独であるか、または粘度平均重合度若しくは加水分解度等が異なるポリビニルアルコール系樹脂の混合物であってよい。
【0020】
ポリビニルアセタール樹脂の原料となるポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度は、好ましくは100以上、より好ましくは300以上、より好ましく400以上、さらに好ましくは600以上、特に好ましくは700以上、最も好ましくは750以上である。ポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度が上記下限値以上であると、合わせガラスの作製時に導電層の変形および断線が抑制されやすく、得られる合わせガラスにおいて熱によりガラスがずれる現象が防止されやすい。また、ポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度は、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2500以下、特に好ましくは2300以下、最も好ましくは2000以下である。ポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度が上記上限値以下であると良好な製膜性が得られやすい。ポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度は、JIS K 6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて測定される。
ポリビニルアセタール樹脂の好ましい粘度平均重合度の数値は、上記したポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度の数値と同一である。ポリビニルアセタール樹脂フィルムが異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂の粘度平均重合度が、前記下限値以上かつ前記上限値以下であることが好ましい。
【0021】
ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するために使用されるポリビニルアセタール樹脂中のアセチル基量は、ポリビニルアセタール樹脂の製造原料であるポリビニルアルコール樹脂中の主鎖の炭素2個からなる単位(例えば、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、エチレン単位など)を一繰返し単位とし、その一繰返し単位を基準として、酢酸ビニル単位が、好ましくは0.1~20モル%、より好ましくは0.5~3モル%または5~8モル%である。原料のポリビニルアルコール系樹脂のケン化度を適宜調整することにより、アセチル基量(以下、酢酸ビニル単位の量を意味する)は前記範囲内に調整できる。アセチル基量は、ポリビニルアセタール樹脂の極性に影響を及ぼし、それによって、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの可塑剤相溶性および機械的強度が変化し得る。ポリビニルアセタール樹脂フィルムが、アセチル基量が前記範囲内であるポリビニルアセタール樹脂を含むと、場合により積層する可塑化ポリビニルアセタール樹脂層との良好な接合、および光学歪の低減等が達成されやすい。ポリビニルアセタール樹脂フィルムが異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のアセチル基量が、上記範囲内であることが好ましい。
【0022】
本発明で使用するポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は特に限定されない。アセタール化度は、ポリビニルアセタール樹脂の製造原料であるポリビニルアルコール樹脂中の主鎖の炭素2個からなる単位(例えば、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、エチレン単位など)を一繰返し単位とし、その一繰返し単位を基準として、アセタールを形成する上記単位の量である。アセタール化度は、好ましくは40~86モル%、より好ましくは45~84モル%、より好ましくは50~82モル%、さらに好ましくは60~82モル%、特に好ましは68~82モル%である。ポリビニルアルコール系樹脂をアセタール化する際のアルデヒドの使用量を適宜調整することにより、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は前記範囲内に調整できる。アセタール化度が前記範囲内であると、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムの力学的強度が充分なものになりやすく、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が低下しにくい。ポリビニルアセタール樹脂フィルムが異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が、上記範囲内であることが好ましい。
【0023】
ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、ポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の質量として、好ましくは6~26質量%、より好ましくは12~24質量%、より好ましくは15~22質量%、より好ましくは18~21質量%である。また、ポリビニルアセタール樹脂の製造原料であるポリビニルアルコール樹脂中の主鎖の炭素2個からなる単位(例えば、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、エチレン単位など)を一繰返し単位とし、その一繰返し単位を基準として、ビニルアルコール単位が、好ましくは9~36モル%、より好ましくは18~34モル%、さらに好ましくは22~34モル%、さらにより好ましくは26~34モル%、特に好ましくは26~31モル%、極めて好ましくは26~30モル%である。水酸基量(以下、ビニルアルコール単位の量を意味する)が前記範囲内であると、場合により積層する可塑化ポリビニルアセタール樹脂層との屈折率差が小さくなり、光学むらの少ない合わせガラスが得られやすい。一方で、さらに遮音性能を合わせて付与するために好ましい範囲は6~20質量%、より好ましくは8~18質量%、さらに好ましくは10~15質量%、特に好ましくは11~13質量%であり、また、9~29モル%、より好ましくは12~26モル%、さらに好ましくは15~23モル%、特に好ましくは16~20モル%である。ポリビニルアルコール系樹脂をアセタール化する際のアルデヒドの使用量を調整することにより、水酸基量は前記範囲内に調整できる。ポリビニルアセタール樹脂フィルムが異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂の水酸基量が、上記範囲内であることが好ましい。
【0024】
ポリビニルアセタール樹脂は、通常、アセタール基単位、水酸基単位およびアセチル基単位から構成されており、これらの各単位量は、JIS K 6728「ポリビニルブチラール試験方法」または核磁気共鳴法(NMR)によって測定される。
【0025】
ポリビニルアセタール樹脂が、アセタール基単位以外の単位を含む場合は、水酸基の単位量とアセチル基の単位量とを測定し、これらの両単位量をアセタール基単位以外の単位を含まない場合のアセタール基単位量から差し引くことで、残りのアセタール基単位量を算出できる。
【0026】
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定された、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度は、200mPa・sより大きい。前記粘度が200mPa・s以下であると、合わせガラス作製時に機能性層または導電層の変形および破壊を充分に抑制することができず、得られる合わせガラスの高温下でのガラスのずれを充分に抑制することができない。前記粘度は、好ましくは210mPa・s以上、より好ましくは220mPa・s以上、より好ましくは230mPa・s以上、さらに好ましくは240mPa・s以上、特に好ましくは265mPa・s以上である。ポリビニルアセタール樹脂の前記粘度が前記下限値以上であると、合わせガラスの作製時に機能性層または導電層の変形および断線が抑制されやすく、得られる合わせガラスの高温下でのガラスのずれが防止されやすい。粘度平均重合度の高いポリビニルアルコール系樹脂を原料または原料の一部として用いて製造したポリビニルアセタール樹脂を使用または併用することにより、ポリビニルアセタール樹脂の前記粘度は200mPa・sより大きく、好ましい態様では前記下限値以上に調整できる。ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するために使用されるポリビニルアセタール樹脂が複数の樹脂の混合物からなる場合、前記粘度は、そのような混合物の粘度である。
前記粘度は、良好な製膜性が得られやすい観点から、通常は1000mPa・s以下、好ましくは800mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、さらに好ましくは450mPa・s以下、特に好ましくは400mPa・s以下である。
【0027】
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂のピークトップ分子量は、好ましくは115,000~200,000、より好ましくは120,000~160,000、特に好ましくは130,000~150,000である。粘度平均重合度の高いポリビニルアルコール系樹脂を原料または原料の一部として用いて製造したポリビニルアセタール樹脂を使用または併用することにより、ポリビニルアセタール樹脂のピークトップ分子量は前記範囲内に調整できる。ポリビニルアセタール樹脂のピークトップ分子量が前記範囲内であると、好適なフィルム製膜性および好適なフィルム物性(例えば、ラミネート適性、耐クリープ性および破断伸度)が得られやすい。
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の分子量分布、即ち重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは2.7以上、より好ましくは2.8以上、特に好ましくは2.9以上である。粘度平均重合度の異なるポリビニルアルコール系樹脂の混合物をアセタール化したり、粘度平均重合度の異なるポリビニルアルコール系樹脂のアセタール化物を混合したりすることにより、ポリビニルアセタール樹脂の分子量分布は前記下限値以上に調整できる。ポリビニルアセタール樹脂の分子量分布が前記下限値以上であると、製膜性および好適なフィルム物性(例えば、ラミネート適性、耐クリープ性および破断強度)を両立させやすい。分子量分布の上限値は特に限定されない。製膜しやすさの観点から、分子量分布は、通常は10以下、好ましくは5以下である。
ポリビニルアセタール樹脂フィルムが異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のピークトップ分子量および分子量分布が、上記範囲内であることが好ましい。
ピークトップ分子量および分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い、分子量既知のポリスチレンを標準として求められる。
【0028】
ポリビニルアセタール樹脂フィルムは、良好な製膜性が得られやすい観点から、未架橋のポリビニルアセタールを含むことが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂フィルムが、架橋されたポリビニルアセタールを含むことも可能である。ポリビニルアセタールを架橋するための方法は、例えば、EP 1527107B1およびWO 2004/063231 A1(カルボキシル基含有ポリビニルアセタールの熱自己架橋)、EP 1606325 A1(ポリアルデヒドにより架橋されたポリビニルアセタール)、およびWO 2003/020776 A1(グリオキシル酸により架橋されたポリビニルアセタール)に記載されている。また、アセタール化反応条件を適宜調整することで、生成する分子間アセタール結合量をコントロールしたり、残存水酸基のブロック化度をコントロールしたりすることも有用な方法である。
【0029】
<可塑剤>
本発明において、ポリビニルアセタール樹脂フィルム中の可塑剤の量は、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物の総質量に基づいて0~20質量%である。前記可塑剤量が20質量%を超えると、合わせガラスの作製時に機能性層または導電層の変形および/または断線が生じる。
前記可塑剤量は、好ましくは0~19質量%、より好ましくは0~15質量%、さらに好ましくは0~10質量%、特に好ましくは0~5質量%であり、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して好ましくは20質量部以下、より好ましくは0~19質量部、さらに好ましくは0~15質量部、特に好ましくは0~10質量部、最も好ましくは0~5質量部である。ポリビニルアセタール樹脂フィルム中の可塑剤の量が前記範囲内であると、製膜性および取扱い性に優れたポリビニルアセタール樹脂フィルムが製造されやすく、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを用いた合わせガラスの作製時に機能性層または導電層の変形および断線が抑制されやすい。
【0030】
ポリビニルアセタール樹脂フィルム中に可塑剤が含まれる場合、可塑剤として、好ましくは、下記群の1つまたは複数の化合物が使用される。
・多価の脂肪族または芳香族酸のエステル。例えば、ジアルキルアジペート(例えば、ジヘキシルアジペート、ジ-2-エチルブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ジヘプチルアジペート、ジノニルアジペート、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート);アジピン酸とアルコール若しくはエーテル化合物を含むアルコールとのエステル〔例えば、ジ(ブトキシエチル)アジペート、ジ(ブトキシエトキシエチル)アジペート〕;ジアルキルセバケート(例えば、ジブチルセバケート);セバシン酸と脂環式若しくはエーテル化合物を含むアルコールとのエステル;フタル酸のエステル(例えば、ブチルベンジルフタレート、ビス-2-ブトキシエチルフタレート);および脂環式多価カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル(例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル)が挙げられる。
・多価の脂肪族若しくは芳香族アルコールまたは1つ以上の脂肪族若しくは芳香族置換基を有するオリゴエーテルグリコールのエステルまたはエーテル。例えば、グリセリン、ジグリコール、トリグリコール、テトラグリコール等と、直鎖状若しくは分岐状の脂肪族若しくは脂環式カルボン酸とのエステルが挙げられる。具体的には、ジエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)(以下において、「3GO」と称することもある)、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルブタノエート)、テトラエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコール-ビス-n-ヘキサノエート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、およびジプロピレングリコールジベンゾエートが挙げられる。
・脂肪族または芳香族アルコールのリン酸エステル。例えば、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニル-2-エチルヘキシルホスフェート、およびトリクレジルホスフェートが挙げられる。
・クエン酸、コハク酸および/またはフマル酸のエステル。
【0031】
また、多価アルコールと多価カルボン酸とからなるポリエステル若しくはオリゴエステル、これらの末端エステル化物若しくはエーテル化物、ラクトン若しくはヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル若しくはオリゴエステル、またはこれらの末端エステル化物若しくはエーテル化物等を可塑剤として用いてもよい。
【0032】
ポリビニルアセタール樹脂フィルム中に可塑剤が含まれる場合、ポリビニルアセタール樹脂と積層する場合の可塑化ポリビニルアセタール樹脂層との間で可塑剤が移行することに伴う問題(例えば、経時的な物性変化等の問題)を抑制する観点から、積層する可塑化ポリビニルアセタール樹脂層に含まれるものと同じ可塑剤、または該可塑化ポリビニルアセタール樹脂層の物性(例えば、耐熱性、耐光性、透明性および可塑化効果)を損なわない可塑剤を使用することが好ましい。このような観点から、可塑剤としては、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコール-ビス(2-エチルブタノエート)、テトラエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエートがより好ましく、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)が特に好ましい。
【0033】
<添加剤>
さらに、ポリビニルアセタール樹脂フィルムは、別の添加剤を含んでいてよい。そのような添加剤としては、例えば、水、紫外線吸収剤、酸化防止剤、接着調整剤、増白剤若しくは蛍光増白剤、安定剤、色素、加工助剤、耐衝撃性改良剤、流動性改良剤、架橋剤、顔料、発光材料、屈折率調整剤、遮熱材料、有機若しくは無機ナノ粒子、焼成ケイ酸および表面活性剤等が挙げられる。
【0034】
ポリビニルアセタール樹脂フィルムが機能性層として導電層を有する態様では、導電層の腐食を抑制するために、ポリビニルアセタール樹脂フィルムが腐食防止剤を含有することが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂フィルムに含有される腐食防止剤の量は、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物の質量に基づいて、好ましくは0.005~5質量%である。腐食防止剤の例としては、置換された、または置換されていないベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0035】
一態様では、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物は、接着調整剤として、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩を含んでよい。具体的には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムから選ばれる1つ以上の金属と、少なくとも1つの炭素数2~12のカルボン酸とからなる塩を含むことが好ましい。添加される接着調整剤に含まれるアルカリ金属原子およびアルカリ土類金属原子の総質量は、前記樹脂組成物の総質量に対して、好ましくは10ppm以上、より好ましくは30ppm以上、さらに好ましくは50ppm以上、特に好ましくは70ppm以上であり、好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下、特に好ましくは300ppm以下である。上記下限値以上であると、強すぎないガラスとの接着力を得やすく、充分な耐貫通性を得やすい。また、上記上限値以下であると、吸水して白化したり、ガラスから剥離したりする傾向が低下しやすい。また、添加されるアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の総質量に対するアルカリ金属塩の量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下であり、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。アルカリ金属塩の比率が前記上限値以下であると、吸水して白化したりガラスから剥離したりする傾向を抑制しやすく、アルカリ金属塩の比率が前記下限値以上であると、耐衝撃性が低下する傾向を抑制しやすい。
【0036】
<ポリビニルアセタール樹脂フィルムの製造方法>
ポリビニルアセタール樹脂フィルムの製造方法は特に限定されない。前記樹脂、場合により所定量の可塑剤、および必要に応じて他の添加剤を配合し、これを均一に混練した後、押出法、カレンダー法、プレス法、キャスティング法、インフレーション法等、公知の製膜方法によりシート(フィルム)を作製し、これをポリビニルアセタール樹脂フィルムとすることができる。
【0037】
公知の製膜方法の中でも特に押出機を用いてフィルムを製造する方法が好適に採用される。押出時の樹脂温度は150~250℃が好ましく、170~230℃がより好ましい。樹脂温度が高くなりすぎるとポリビニルアセタール樹脂が分解を起こし、揮発性物質の含有量が多くなる。一方で温度が低すぎる場合にも、揮発性物質の含有量は多くなる。揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機のベント口から減圧により、揮発性物質を除去することが好ましい。
【0038】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムの、下記測定方法(1)により測定された耐熱クリープ性を示す値(以下において、「耐熱クリープ性値(1)」と称する)は、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは4mm以下、特に好ましくは3mm以下である。
<耐熱クリープ性値(1)の測定方法(1)>
まず、ポリビニルアセタール樹脂フィルム、並びにアセタール化度69~71モル%かつアセチル基としての酢酸ビニル単位の含有量1モル%以下のポリビニルブチラール樹脂72質量%およびトリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)28質量%を含有する厚さ0.76mmの1枚の可塑化ポリビニルブチラール樹脂層を、幅100mmおよび長さ270mmの寸法にカットする。カットした試料を、図1に示すように、長さ方向に30mmずらした幅100mm、長さ300mmおよび厚さ3mmのガラスAおよびBの間に収まるよう、ポリビニルアセタール樹脂フィルムと可塑化ポリビニルブチラール樹脂層とを重ねて下記「構成1」の順に配置し、真空ラミネーターを用いて140℃で接合を行った後、オートクレーブを用いて140℃、1.2MPaで30分間処理することにより、合わせガラスを作製する。
[構成1]ガラスA(3mm厚)/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/可塑化ポリビニルブチラール樹脂層(0.76mm厚)/ガラスB(3mm厚)
続いて、図3に示すように、ガラスBの、可塑化ポリビニルブチラール樹脂層との接合面と反対側の面に1kgの鉄板を接着剤で接着し、図4に示すように、長さ方向に30mm突出している部分を上にして、鉄板付き試料が水平面に対して80~90°となり、ガラスBの鉄板が接着された部分が試料上部または上面となるようにガラスAを固定した状態で、100℃の恒温槽に1週間放置した後に、ガラスBのずれた距離(mm)を測定し、この値を耐熱クリープ性値(1)とする。鉄板付き試料の水平面に対する角度が80~90°のいずれの角度であっても、同等の耐熱クリープ性値(1)が得られる。通常は、前記角度を85°にして、耐熱クリープ性値(1)を測定する。
【0039】
耐熱クリープ性値(1)が前記値以下であると、合わせガラス作製時に機能性層または導電層の変形および破壊が抑制されやすく、得られる合わせガラスの高温下でのガラスのずれが抑制されやすい。
【0040】
また、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムの、下記測定方法(2)により測定された耐熱クリープ性を示す値(以下において、「耐熱クリープ性値(2)」と称する)は、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは4mm以下、特に好ましくは3mm以下である。
<耐熱クリープ性値(2)の測定方法(2)>
まず、ポリビニルアセタール樹脂フィルム、並びにアセタール化度69~71モル%かつアセチル基としての酢酸ビニル単位の含有量1モル%以下のポリビニルブチラール樹脂72質量%およびトリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)28質量%を含有する厚さ0.38mmの2枚の可塑化ポリビニルブチラール樹脂層を幅100mmおよび長さ270mmの寸法にカットする。カットした試料を、図2に示すように、長さ方向に30mmずらした幅100mm、長さ300mmおよび厚さ3mmのガラスAおよびBの間に収まるよう、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを2枚の可塑化ポリビニルブチラール樹脂層で挟んだ状態で下記「構成2」の順に配置し、真空ラミネーターを用いて140℃で接合を行った後、オートクレーブを用いて140℃、1.2MPaで30分間処理することにより、合わせガラスを作製する。
[構成2]ガラスA(3mm厚)/可塑化ポリビニルブチラール樹脂層(0.38mm厚)/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/可塑化ポリビニルブチラール樹脂層(0.38mm厚)/ガラスB(3mm厚)
続いて、図3に示すように、ガラスBの、可塑化ポリビニルブチラール樹脂層との接合面と反対側の面に1kgの鉄板を接着剤で接着し、図4に示すように、長さ方向に30mm突出している部分を上にして、鉄板付き試料が水平面に対して80~90°となり、ガラスBの鉄板が接着された部分が試料上部または上面となるようにガラスAを固定した状態で、100℃の恒温槽に1週間放置した後に、ガラスBのずれた距離(mm)を測定し、この値を耐熱クリープ性値(2)とする。鉄板付き試料の水平面に対する角度が80~90°のいずれの角度であっても、同等の耐熱クリープ性値(2)が得られる。通常は、前記角度を85°にして、耐熱クリープ性値(2)を測定する。
【0041】
耐熱クリープ性値(2)が前記値以下であると、合わせガラス作製時に機能性層または導電層の変形および破壊が抑制されやすく、得られる合わせガラスの高温下でのガラスのずれが抑制されやすい。
【0042】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムについて、少なくとも片面の十点平均粗さRz値は、好ましくは20μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下であり、少なくとも片面の凹凸の平均間隔Sm値は、好ましくは500μm以上、より好ましくは1000μm以上、特に好ましくは1300μm以上である。Rz値が前記値以下であり、または、Sm値が前記値以上であると、均一な印刷、コートまたはラミネートが可能となり、ポリビニルアセタール樹脂フィルムとインクまたは金属箔との接合のむらが抑制されやすい。Rz値およびSm値は、表面粗さ計またはレーザー顕微鏡を用いて、JIS B0601-1994に準拠して測定される。
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムの十点平均粗さを前記値以下に、また凹凸の平均間隔を前記値以上に調整する方法としては、溶融押出法、または溶媒キャスト法等が採用される。また、溶融押出法では、Tダイを用いる方法、またはインフレーション成形する方法等が用いられる。Tダイから押出した溶融物を平滑な冷却ロールにより製膜することが好ましい。また、より平滑な面を形成するために、弾性ロールと鏡面金属ロールとを組み合わせて用いることが好ましく、金属弾性ロールと鏡面金属ロールとを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0043】
一態様において、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物の融点およびガラス転移温度の内、最も高い温度は好ましくは30℃以上180℃以下であることが好ましい。該樹脂組成物の融点およびガラス転移温度の内、最も高い温度は、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは130℃以下、特に好ましくは100℃以下、最も好ましくは90℃以下であり、より好ましくは50℃以上、特に好ましくは60℃以上である。融点およびガラス転移温度の内、最も高い温度が前記下限値以上かつ前記上限値以下であると、合わせガラス作製温度でポリビニルアセタール樹脂フィルムが軟化し、曲率の高いガラス等に良好に追従しやすい。なお、上記樹脂組成物が非晶性であり融点を示さない場合は、最も高いガラス転移温度が上記範囲内である。また、上記樹脂組成物がガラス転移温度を有さない場合は、融点が上記範囲内である。上記ガラス転移温度および融点は、示差走査熱量計により測定できる。
【0044】
ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物に含まれるポリビニルアセタール樹脂の含有量は、当該樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。上記樹脂の含有量の上限は特に制限されず、樹脂組成物の総質量に基づいて100質量%以下である。
【0045】
ポリビニルアセタール樹脂フィルムは、多成分による層分離構造を有していても良いが、層分離構造は島成分の平均粒径が100nm未満であることが好ましく、80nm未満であることがより好ましく、海島の層分離構造を示さないことが特に好ましい。海島の層分離構造を示さないか、十分に細かい粒径を示すことにより、車のフロントガラスなどにも使用可能な透明性を確保できる。
【0046】
<機能性層>
一態様において、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムは、少なくとも片面に機能性層を有する。機能性層は、合わせガラスに特定の機能を付与する層である。
機能性層は1層または複数層であってよい。
ポリビニルアセタール樹脂フィルムが複数の機能性層を有する場合、それぞれの機能性層の種類は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
ポリビニルアセタール樹脂フィルムの機能性層を有する面において、ポリビニルアセタール樹脂フィルムは、その面の全面に機能性層を有してもよいし、その面の一部に機能性層を有してもよい。後述するような可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を積層して合わせガラスを作製する態様では、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層中の可塑剤がポリビニルアセタール樹脂フィルムに移行できるよう、ポリビニルアセタール樹脂フィルムがその面の一部に機能性層を有することが好ましい。ただし、機能性層が可塑化ポリビニルアセタール樹脂層からポリビニルアセタール樹脂フィルムへの可塑剤の移行を阻害しない場合は、その限りでない。
【0047】
ポリビニルアセタール樹脂フィルムは、機能性層との良好な接合性が得られやすい観点から、機能性層を有する面のRz値は好ましくは20μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下であり、機能性層を有する面のSm値は好ましくは500μm以上、より好ましくは1000μm以上、さらに好ましくは1300μm以上である。
【0048】
機能性層は、好ましくは、導電層、赤外線反射層または紫外線反射層のような特定波長電磁波反射層、色補正層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、蛍光・発光層、遮音層、エレクトロクロミック層、フォトクロミック層、サーモクロミック層、意匠性層および高弾性率層からなる群から選択される1つ以上である。
【0049】
ある態様において、機能性層は、好ましくは導電層である。一態様では、導電層は金属箔に基づく。
また、導電層をその少なくとも片面に有するポリビニルアセタール樹脂フィルムは、当該導電層を有する面上に別のポリビニルアセタール樹脂フィルムを有してよい。この場合、導電層は別のポリビニルアセタール樹脂フィルムにより保護される。別のポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するために使用される樹脂、可塑剤および添加剤としては、ポリビニルアセタール樹脂フィルムに関連して先に記載した樹脂、可塑剤および添加剤を使用できる。上記「別のポリビニルアセタール樹脂フィルム」を構成する樹脂組成物と、上記「導電層をその少なくとも片面に有するポリビニルアセタール樹脂フィルム」を構成する樹脂組成物とは、同じ組成を有していてもよいし、異なる組成を有していてもよい。
【0050】
導電層の厚さは、電気抵抗および製造の容易性等の観点から、好ましくは1~30μm、より好ましくは2~20μm、より好ましくは2~15μm、より好ましくは3~15μm、さらに好ましくは3~12μm、特に好ましくは3~10μmである。導電層の厚さは、厚さ計またはレーザー顕微鏡等を用いて測定される。
【0051】
導電層は、電気抵抗、発熱性能、電磁波吸収性および光学特性前方視認性等の観点から、好ましくは、線状、格子状または網状の形状を有する。ここで、線状の例としては、直線状、波線状およびジグザグ状等が挙げられる。1つの導電層において、形状は単一であってもよいし、複数の形状が混在していてもよい。一態様では、均一で充分な発熱性能を得やすい観点から、線状の形状であることが好ましく、また、モアレ現象を防ぎやすい観点から、隣り合う線状導電性材料の形状または間隔が不均一となっていることが好ましい。
【0052】
ある態様、例えば印刷法により導電層を形成し、例えば前方視認性の確保が重要でない領域で合わせガラスを部分的に加熱したり、センサーまたはアンテナとして使用したりする態様では、導電層は、充分な発熱量の確保および製造容易性の観点から、線幅0.01~5mmの複数の線状導電性材料で構成されていることが好ましい。即ち、前記した線状、格子状または網状の形状を構成する線状導電性材料(配線)の線幅は、好ましくは0.01~5mmである。前記線幅は、より好ましくは0.02~2mm、特に好ましくは0.03~1mmである。
【0053】
別の態様、例えば合わせガラスを全面的に加熱する態様では、導電層は、充分な発熱量および良好な前方視認性の両方を確保しやすい観点から、線幅1~30μmの複数の線状導電性材料で構成されていることが好ましい。即ち、前記した線状、格子状または網状の形状を構成する線状導電性材料の線幅は、好ましくは1~30μmである。前記線幅は、より好ましくは2~15μm、特に好ましくは3~12μmである。また、後述するバスバーとの接続部の線幅が他の部分の線幅よりも太くなっていることが、合わせガラス作製時の断線が低減できる観点でより好ましい。
【0054】
線状導電性材料の断面の形状は制限されないが、少なくとも一対の平行な辺を有することが好ましい。また、必要な抵抗値を得つつ、運転席側、乗車人物側または観察者側、即ち合わせガラスの法線方向から見て、最も細く見えにくくする観点から、線状導電性材料の断面の形状が概ね四角形であることが好ましく、四角形であることがより好ましい。
【0055】
導電層を形成する導電性材料は、電気抵抗または発熱量の確保の容易性、および製造容易性の観点から、好ましくは銀または銅を含んでなり、より好ましくは銀または銅からなる。導電層が金属箔に基づく場合は、エッチングの容易性および金属箔の入手容易性の観点から、前記金属箔は、好ましくは銀箔または銅箔である。
【0056】
導電層の片面または両面は、好ましくは低反射率処理されている。より好ましい態様では、導電層の表面の全ての面は低反射率処理されている。導電層の表面の全ての面が低反射率処理されている場合、金属光沢による光の反射により、夜間にフロントガラスで対向車や後方車のヘッドライトの光が反射して前方視認性が低下することを抑制できる。本発明において「全ての面が低反射率処理されている」とは、線状導電性材料のポリビニルアセタール樹脂フィルムとの接合面(底面)、接合面に対向する面(表面)、およびこれらの側面が、いずれも低反射率処理されていればよく、各面において、低反射率処理されている部分が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上であることが好ましい。また、本発明の線状導電性材料はその断面に低反射率処理されていない部分を有することが、線状導電性材料の脆化を防ぎ、ラミネート時の断線を防止する観点、並びに通電性を確保しつつ、発熱性能をより細い線状導電性材料で実現できる観点で好ましい。
【0057】
本発明において「低反射率処理されている」とは、JIS R 3106に準じて測定された可視光反射率が30%以下となるよう処理されていることを意味する。前方視認性の観点からは、可視光反射率が10%以下となるよう処理されていることがより好ましい。可視光反射率が前記上限値以下であると、後述するように導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムと可塑化ポリビニルアセタール樹脂層とを積層して乗物用ガラスを作製した際に、所望の可視光反射率が得られやすく、優れた前方視認性が得られやすい。
【0058】
低反射率処理の方法としては、例えば、黒化処理(暗色化処理)、褐色化処理およびめっき処理等が挙げられる。工程通過性の観点から、低反射率処理は黒化処理であることが好ましい。従って、良好な前方視認性の観点から、可視光反射率が10%以下となるよう、導電層の片面または両面が黒化処理されていることが特に好ましい。黒化処理は、具体的には、アルカリ系黒化液等を用いて行われる。
【0059】
導電層の表面の全ての面を低反射率処理する方法は特に制限されず、例えば、線状導電性材料のポリビニルアセタール樹脂フィルムと接している面が低反射率処理されたポリビニルアセタール樹脂フィルムにおいて線状導電性材料のポリビニルアセタール樹脂フィルムと接していない面をさらに低反射率処理する方法、低反射率処理された線状導電性材料をポリビニルアセタール樹脂フィルムに貼り付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、線状導電性材料のポリビニルアセタール樹脂フィルムと接している面が低反射率処理されたポリビニルアセタール樹脂フィルムにおいて線状導電性材料のポリビニルアセタール樹脂フィルムと接していない面をさらに低反射率処理する方法が好ましい。さらに具体的には低反射率処理された面を有する金属箔の低反射率処理面をポリビニルアセタール樹脂フィルムに接合し、これをエッチング処理して線状導電性材料を得た後、さらに低反射率処理する方法が、高温での焼成工程を必要としないこと、多数の線状導電性材料を接着させる煩雑な工程を含まないことから特に好ましい。
【0060】
低反射率処理は、対象物を粗化および/または黒色等に着色することにより行われる。低反射率処理は、酸化処理、硫化処理、窒化処理、塩素化処理、黒化層皮膜形成または黒色メッキ等によって行われることが好ましく、特に酸化処理または硫化処理によって行われることが好ましい。とりわけ酸化処理は、より優れた防眩効果を得ることができ、さらに廃液処理の簡易性および環境安全性の点からも好ましい。
【0061】
<酸化による黒化>
上記酸化処理は、金属表面に酸化皮膜を形成させる方法であり、これにより金属光沢を抑えることができる。酸化皮膜により、表面形状が針のように変化していてもよい。黒化処理として酸化処理を行う場合、黒化処理液としては、例えば次亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液、亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液、ペルオキソ二硫酸と水酸化ナトリウムの混合水溶液等を使用することが好ましい。特に経済性の点から、次亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液、または亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液を使用することが好ましく、例えば、亜塩素酸ナトリウム:水酸化ナトリウム=20:1~2:1程度、水酸化ナトリウム濃度が4~20g/Lであることがより好ましい。銅をこのような水溶液で処理することで、CuOおよび/またはCuOを形成し、表面を黒化することができる。また、リン酸三ナトリウム等を併用することも好ましい。
【0062】
<硫化による黒化>
上記硫化処理は、金属表面に硫化皮膜を形成させる方法であり、これにより金属光沢を抑えられる。黒化処理として硫化処理を行う場合、黒化処理液としては、例えば硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化バリウムおよび硫化アンモニウム等の水溶液を使用することが好ましく、硫化ナトリウム、硫化カリウムおよび硫化アンモニウムの水溶液を使用することがより好ましい。また、硫化水素による気相処理により硫化することもできる。
【0063】
<その他の方法による黒化>
その他の黒化処理の方法としては、例えば黒化処理液として、二酸化テルル0.25質量%(テルル濃度として0.2質量%)、塩酸0.45質量%、硫酸20質量%の水溶液を用い、当該処理液に上記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを処理温度25℃条件下、30秒間浸漬し、銅が露出している部分に塩化テルル(TeCl)を含む黒化層を被覆形成させる方法が挙げられる。また、導電層の表面に窒化皮膜や塩素化皮膜を形成させる方法等が挙げられ、これらの方法により金属光沢を抑えることができる。
【0064】
ポリビニルアセタール樹脂フィルムが金属箔に基づく導電層を有する態様において、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。ポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さが前記値以上であると、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの収縮または変形に起因して導電層に歪等が生じる問題が起こりにくい。また、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さは、好ましくは350μm以下、より好ましくは330μm以下、より好ましくは270μm以下、さらに好ましくは250μm以下、特に好ましくは150μm以下、最も好ましくは100μm以下である。ポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さが前記値以下であると、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層が積層される場合に可塑化ポリビニルアセタール樹脂層からポリビニルアセタール樹脂フィルムへの可塑剤移行量が少なくなり、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層中の可塑剤量の低下が抑制されるため、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを用いた乗物用ガラスを搭載した乗物の衝突時における頭部衝撃が大きくなる等の問題が起こりにくい。ポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さは、厚さ計またはレーザー顕微鏡等を用いて測定される。
【0065】
<機能性層をポリビニルアセタール樹脂フィルムに付与する方法>
機能性層をポリビニルアセタール樹脂フィルムに付与する方法は特に限定されない。例えば、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの少なくとも片面に、機能性層を構成する材料をコート、印刷またはラミネートする方法が挙げられる。
【0066】
前記材料をコート、印刷またはラミネートする方法は特に限定されない。
前記材料をコートする方法としては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物の溶融物を機能性層にコートする方法(例えば、機能性層上に前記樹脂組成物を溶融押出する方法、若しくは機能性層上に前記樹脂組成物をナイフ塗布等により塗布する方法);ポリビニルアセタール樹脂フィルムに蒸着、スパッタリングまたは電気蒸着により機能性層を付与する方法;機能性層が樹脂組成物からなる場合に、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物と機能性層を構成する樹脂組成物とを同時に押出する方法;または機能性層を構成する樹脂組成物の溶液中にポリビニルアセタール樹脂フィルムをディップする方法;が挙げられる。
前記材料を印刷する方法としては、例えば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、またはグラビア印刷が挙げられる。上記印刷する方法では、機能性層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを後続工程において積層する前に、乾燥するかまたは熱若しくは光により硬化するインクが使用される。
前記材料をラミネートする方法としては、例えば、機能性層とポリビニルアセタール樹脂フィルムとを重ねて熱圧着させる方法;溶媒、若しくはポリビニルアセタール樹脂フィルムに含まれる樹脂および溶媒を含む樹脂組成物の溶液を、機能性層およびポリビニルアセタール樹脂フィルムの一方若しくは両方に塗布するか、または機能性層とポリビニルアセタール樹脂フィルムとの間に注入し、機能性層とポリビニルアセタール樹脂フィルムとを接合させる方法;または接着剤で機能性層とポリビニルアセタール樹脂フィルムとを接合させる方法;が挙げられる。接着剤を使用して接合する方法において使用される接着剤は、当技術分野において一般的に使用されている接着剤を使用してよく、その例としては、アクリレート系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤およびホットメルト接着剤が挙げられる。光学的に優れた特性が求められる態様では、接着剤に由来するヘイズが生じにくいまたは生じない観点から、ポリビニルアセタール樹脂フィルムと接着剤との屈折率差は、好ましく0.01未満、より好ましくは0.005以下、さらに好ましくは0.003以下であり、接着剤を使用せずに機能性層とポリビニルアセタール樹脂フィルムとを接合する方法が最も好ましい。即ち、ポリビニルアセタール樹脂フィルムと機能性層、例えば導電層との間に、当該ポリビニルアセタール樹脂フィルムとの屈折率差が0.01以上の接着剤層を有さないことが好ましく、上記屈折率差が0.005超の接着剤層を有さないことがより好ましく、上記屈折率差が0.003超の接着剤層を有さないことがさらに好ましく、ポリビニルアセタール樹脂フィルムと機能性層との間に接着剤層を有さないことが特に好ましい。従って、本発明の一態様では、ポリビニルアセタール樹脂フィルムと機能性層、例えば導電層との間に接着剤層を有さない。屈折率は、アッベの屈折率計を用いて評価できる。
【0067】
機能性層が導電層である態様では、印刷法において使用されるインクは導電性粒子および/または導電性繊維を含む。導電性粒子または導電性繊維は特に限定されない。例えば金属粒子(ナノワイヤー状のものを含む)(例えば金、銀、銅、亜鉛、鉄若しくはアルミニウムの粒子);金属で被覆された粒子若しくは繊維(例えば銀めっきされたガラス繊維若しくはガラス小球);または導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト若しくはグラフェンの粒子若しくは繊維;等が挙げられる。さらに、導電性粒子は、導電性金属酸化物の粒子等の半導体の粒子、例えばインジウムドープ酸化スズ、インジウムドープ酸化亜鉛またはアンチモンドープ酸化スズの粒子であってよい。前記インクは、導電性の観点から、銀粒子、銅粒子および/またはカーボンナノチューブを含むことが好ましく、銀粒子または銅粒子を含むことがより好ましい。
【0068】
導電層が金属箔に基づく態様では、例えば、金属箔とポリビニルアセタール樹脂フィルムとを接合させる工程、および前記工程で得られた金属箔付ポリビニルアセタール樹脂フィルムから導電層を形成する工程を含む方法により製造される。
【0069】
金属箔とポリビニルアセタール樹脂フィルムとを接合させる工程は、例えば下記方法(I)~(III)により実施される。
(I)ポリビニルアセタール樹脂フィルムと金属箔とを重ねて熱圧着させる方法、
(II)金属箔上にポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物の溶融物を被覆して接合する方法、例えば、金属箔上に前記樹脂組成物を溶融押出する方法、若しくは金属箔上に前記樹脂組成物をナイフ塗布等により塗布する方法、または
(III)溶媒、若しくはポリビニルアセタール樹脂フィルムに含まれる樹脂および溶媒を含む樹脂組成物の溶液または分散液を、金属箔およびポリビニルアセタール樹脂フィルムの一方若しくは両方に塗布するか、または金属箔とポリビニルアセタール樹脂フィルムとの間に注入し、金属箔とポリビニルアセタール樹脂フィルムとを接合させる方法。
【0070】
上記方法(I)における熱圧着時の接合温度は、ポリビニルアセタール樹脂フィルムに含まれる樹脂の種類に依存するが、通常は90~170℃、好ましくは100~160℃、より好ましくは110~155℃、さらに好ましくは110~150℃である。接合温度が上記範囲内であると、良好な接合強度が得られやすい。
上記方法(II)における押出時の樹脂温度は、ポリビニルアセタール樹脂フィルム中の揮発性物質の含有量を低下させる観点から、150~250℃が好ましく、170~230℃がより好ましい。また、揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機のベント口から、減圧により揮発性物質を除去することが好ましい。
上記方法(III)における溶媒としては、ポリビニルアセタール樹脂に通常使用される可塑剤を使用することが好ましい。そのような可塑剤としては、先の<可塑剤>の段落に記載されているものが使用される。
【0071】
得られた金属箔付ポリビニルアセタール樹脂フィルムから導電層の所望の形状を形成する工程は、公知のフォトリソグラフィの手法を用いて実施される。前記工程は、例えば後の実施例に記載のとおり、まず、金属箔付ポリビニルアセタール樹脂フィルムの金属箔上にドライフィルムレジストをラミネートした後、フォトリソグラフィの手法を用いてエッチング抵抗パターンを形成し、次いで、エッチング抵抗パターンが付与されたポリビニルアセタール樹脂フィルムを銅エッチング液に浸漬して導電層の形状を形成した後、公知の方法により残存するフォトレジスト層を除去することによって実施される。
【0072】
導電層をその少なくとも片面に有するポリビニルアセタール樹脂フィルムが、当該導電層を有する面上に別のポリビニルアセタール樹脂フィルムを有する場合は、例えば上記方法(I)~(III)により、導電層を有する面上に別のポリビニルアセタール樹脂フィルムを接合できる。
【0073】
導電層が金属箔に基づく態様において例示した上記製造方法は、所望の形状の導電層を簡便かつ容易に形成できるため、ポリビニルアセタール樹脂フィルムに導電層を付与する際の生産効率を著しく改善できる。
【0074】
<積層体>
本発明はまた、複数の透明基材の間に、前記した機能性層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを有する積層体に関する。前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムは、前記透明基材と直接接していてよい。
【0075】
機能性層が導電層である態様では、前記積層体における導電層の各線状導電性材料は、バスバーと接続されている。従って、この態様では、ポリビニルアセタール樹脂フィルムは、導電層に接続されたバスバーを有する。バスバーとしては、当技術分野において通常使用されているバスバーが使用され、その例としては、銅、アルミニウムおよび銀からなる金属箔または金属板、或いはこれらの金属を含むインクの硬化物等であることが好ましく、導電性粘着層を有するこれらの金属箔テープ等も好ましい。また、導電層が金属箔に基づく場合は、導電層の形状を形成する際同時に、金属箔の一部をバスバーとして残すことによりバスバーを形成してもよい。また、導電層を印刷法により形成する場合は、導電層の形状を印刷する際同時に、バスバーを印刷することによりバスバーを形成してもよい。このような場合、バスバーは導電層と一体成形されたものである。バスバーにはそれぞれ給電線が接続され、各給電線が電源に接続されることから、電流が導電層に供給される。従って、本発明はまた、複数の透明基材の間に、導電層に接続されたバスバーを有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを有する積層体であって、当該バスバーに接続された電極を有する積層体に関する。この積層体において、ポリビニルアセタール樹脂フィルムは、透明基材に接していても接していなくてもよいが、効率的に一方のガラスを加熱したい場合は、加熱したい側の透明基材(例えばガラス)に直接接していることが好ましい。
【0076】
前記透明基材は、透明性、耐候性および力学的強度の観点から、好ましくは有機ガラスまたは無機ガラスである。具体的には、好ましくは無機ガラス(本明細書においては、単に「ガラス」と称することもある)、またはメタクリル樹脂シート、ポリカーボネート樹脂シート、ポリスチレン系樹脂シート、ポリエステル系樹脂シート、若しくはポリシクロオレフィン系樹脂シート等の有機ガラスであり、より好ましくは無機ガラス、メタクリル樹脂シートまたはポリカーボネート樹脂シートであり、特に好ましくは無機ガラスである。無機ガラスとしては、特に制限されないが、フロートガラス、強化ガラス、半強化ガラス、化学強化ガラス、グリーンガラスまたは石英ガラス等が挙げられる。
【0077】
積層体が機能性層として導電層を有する場合、導電層は、透明基材と接していてもよいし、後述の可塑化ポリビニルアセタール樹脂層と接していてもよいし、または別の機能性層と接していてもよい。
透明基材がガラスである場合は、導電層がガラスと直接接していると、バスバーおよび/または導電層の封止が不充分となって水分が侵入してバスバーおよび/または導電層の腐食を招いたり、或いは積層体製造時に空気が残存して気泡残存や剥がれの原因を招いたりする虞があるため、導電層がガラスと直接接しないことが好ましい。
また、特に乗物用ガラス、とりわけ乗物用フロントガラスにおいて、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムを使用する場合は、前方視認性の観点から、導電層の低反射率処理されている面が乗車人物側にくるよう、導電層を配置することが好ましい。
【0078】
また、積層体が機能性層として導電層を有する場合、積層体端部から水分が侵入して導電層の腐食を招く虞があるため、導電層は、積層体の端部より1cm以上内側に配置されていることが好ましい。
【0079】
<可塑化ポリビニルアセタール樹脂層>
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムは単独で用いることもできるが、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層と併用して用いることがより好ましい。
特に、合わせガラスの耐貫通性の観点から、複数の透明基材の間に、前記した機能性層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムに加えて、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層が1層以上配置されていることが好ましい。即ち、好ましい一態様において、本発明の積層体は、複数の透明基材の間に、機能性層または導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルム、および可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を有する。その場合、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムと直接接していることが好ましく、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムが有する機能性層または導電層と直接接していることがより好ましい。
【0080】
場合により積層される可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、ポリビニルアセタール樹脂を含む。可塑化ポリビニルアセタール樹脂層中のポリビニルアセタール樹脂の含有量は特に制限されないが、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムとの積層前の初期状態において、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を構成する樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは84.0質量%以下、より好ましくは60.0~83.9質量%である。
【0081】
可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、1つのポリビニルアセタール樹脂を含むか、或いは粘度平均重合度、アセタール化度、アセチル基量、水酸基量、エチレン含有量、アセタール化に用いられるアルデヒドの分子量、および鎖長のうちのいずれか1つ以上がそれぞれ異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含んでよい。
【0082】
前記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、先の<ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するために使用される樹脂>の段落において記載した方法と同様の方法によって製造できる。
【0083】
可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を構成するために使用されるポリビニルアセタール樹脂中のアセチル基量は、ポリビニルアセタール樹脂の製造原料であるポリビニルアルコール樹脂中の主鎖の炭素2個からなる単位(例えば、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、エチレン単位など)を一繰返し単位とし、その一繰返し単位を基準として、酢酸ビニル単位が、好ましくは0.1~20モル%、より好ましくは0.5~3モル%または5~8モル%である。原料のポリビニルアルコール系樹脂のケン化度を適宜調整することにより、アセチル基量は前記範囲内に調整できる。可塑化ポリビニルアセタール樹脂層が、アセチル基量が前記範囲内であるポリビニルアセタール樹脂を含むと、可塑剤との相溶性に優れた可塑化ポリビニルアセタール樹脂層が得られやすい。可塑化ポリビニルアセタール樹脂層が異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のアセチル基量が、上記範囲内であることが好ましい。
【0084】
前記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は特に限定されない。アセタール化度は、好ましくは40~86モル%、より好ましくは45~84モル%、より好ましくは50~82モル%、さらに好ましくは60~82モル%、特に好ましくは68~82モル%である。ポリビニルアルコール系樹脂をアセタール化する際のアルデヒドの使用量を適宜調整することにより、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は前記範囲内に調整できる。アセタール化度が前記範囲内であると、合わせガラスにしたときの耐貫通性またはガラスとの接合性に優れた可塑化ポリビニルアセタール樹脂層が得られやすい。可塑化ポリビニルアセタール樹脂層が異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が、上記範囲内であることが好ましい。
【0085】
前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、ビニルアルコール単位の質量として、好ましくは6~26質量%、より好ましくは12~24質量%、より好ましくは15~22質量%、特に好ましくは18~21質量%である。また、ポリビニルアセタール樹脂の製造原料であるポリビニルアルコール樹脂中の主鎖の炭素2個からなる単位(例えば、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、エチレン単位など)を一繰返し単位とし、その一繰返し単位を基準として、ビニルアルコール単位が、好ましくは9~36モル%、より好ましくは18~34モル%、さらに好ましくは22~34モル%、さらにより好ましくは26~34モル%、特に好ましくは26~31モル%、極めて好ましくは26~30モル%である。水酸基量が前記範囲内であると、耐貫通性、接合性、または遮音性に優れた合わせガラスが得られやすい。一方で、さらに遮音性能を合わせて付与するために好ましい範囲は6~20質量%、より好ましくは8~18質量%、さらに好ましくは10~15質量%、特に好ましくは11~13質量%であり、また、9~29モル%、より好ましくは12~26モル%、さらに好ましくは15~23モル%、特に好ましくは16~20モル%である。ポリビニルアルコール系樹脂をアセタール化する際のアルデヒドの使用量を調整することにより、水酸基量は前記範囲内に調整できる。可塑化ポリビニルアセタール樹脂層が異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂の水酸基量が、上記範囲内であることが好ましい。
【0086】
ポリビニルアセタール樹脂は、JIS K 6728「ポリビニルブチラール試験方法」または核磁気共鳴法(NMR)によって測定される。
【0087】
可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、良好な製膜性およびラミネート適性が得られやすい観点、並びに可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を含む乗物用ガラスにおいて衝突時の頭部衝撃が軽減されやすい観点から、未架橋のポリビニルアセタールを含むことが好ましい。可塑化ポリビニルアセタール樹脂層が、架橋されたポリビニルアセタールを含むことも可能である。ポリビニルアセタールを架橋するための方法は、先の<ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するために使用される樹脂>の段落に例示されている。
【0088】
可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、前記ポリビニルアセタール樹脂に加えて、可塑剤を含有する。可塑剤の含有量は、層の積層前の初期状態では、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を構成する樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは16.0質量%以上、より好ましくは16.1~36.0質量%、さらに好ましくは22.0~32.0質量%、特に好ましくは26.0~30.0質量%である。前記可塑剤含有量が前記範囲内であると、耐衝撃性に優れた合わせガラスが得られやすい。また、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層として、遮音機能を有する可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を用いることもできる。その場合、可塑剤の含有量が、層の積層前の初期状態で、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を構成する樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは30質量%以上、より好ましくは30~50質量%、さらに好ましくは31~40質量%、特に好ましくは32~35質量%である層を少なくとも1層用いることができる。
可塑剤としては、先の<可塑剤>の段落において記載した可塑剤を使用してよい。
【0089】
可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、必要に応じて、先の<添加剤>の段落において記載した添加剤を含有してよい。また、前記可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂および可塑剤の合計量は、当該樹脂組成物の総質量に基づいて90質量%以上であることが好ましい。
【0090】
可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、くさび形の厚さプロファイルを有していてもよい。これにより、本発明の積層体は、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さプロファイルが平行平面である場合でも、くさび形の厚さプロファイルを有することができ、自動車フロントガラスにおいてヘッドアップディスプレイ(HUD)に使用できる。
【0091】
可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、カラーシェードを有するかまたは有していない、かつくさび形の厚さプロファイルを有するかまたは有していない、市販の可塑化ポリビニルブチラールシートであってもよい。同様に、赤外線遮蔽のために可塑化ポリビニルアセタール樹脂層中に分散された赤外線吸収能または反射能を持つナノ粒子を有する可塑化ポリビニルアセタール樹脂層、または着色された可塑化ポリビニルアセタール樹脂層が使用されてもよい。当然、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は遮音機能を有するシートであってもよいため、ポリビニルアセタール樹脂フィルムとの組み合わせによって、改善された遮音特性が得られる。当然、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、先に記載した機能の複数をそれ自体において統合することもできる。従って、本発明の一態様では、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、特定波長光遮蔽機能、遮熱機能、遮音機能、発光機能、ディスプレイ機能および二重像防止機能からなる群から選択させる少なくとも1つの機能を有する。
【0092】
<可塑化ポリビニルアセタール樹脂層の製造方法>
可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、先の<ポリビニルアセタール樹脂フィルムの製造方法>の段落において記載した方法により製造してよい。
【0093】
本発明の積層体において、前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基量と、前記可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基量との差は、ビニルアルコール単位の質量%として、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。また、ビニルアルコール単位のモル%として、好ましくは6モル%以下、より好ましくは4モル%以下、特に好ましくは3モル%以下である。ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂および/または可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂が複数の樹脂の混合物からなる場合、ポリビニルアセタール樹脂フィルムに含まれる少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂の水酸基量と、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層に含まれる少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂の水酸基量との差が前記上限値以下であることが好ましい。前記差が前記上限値以下であると、積層体において可塑剤が移行した後の平衡状態においてポリビニルアセタール樹脂フィルムと可塑化ポリビニルアセタール樹脂層との屈折率差が小さくなることから、互いに寸法が異なる可塑化ポリビニルアセタール樹脂層とポリビニルアセタール樹脂フィルムを使用した場合にその境界が視認しにくいため好ましい。
一方、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基量を、前記可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基量よりも低くすることで、積層体において可塑剤が移行した後の平衡状態におけるポリビニルアセタール樹脂フィルム中の平均可塑剤量を30質量%以上とすることも好ましい態様の1つである。その場合、前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、前記可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を構成する樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基量よりも、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上低く、また、好ましくは6モル%以上、より好ましい10モル%以上低い。前記水酸基量の差が前記下限値以上であると、平衡状態でのポリビニルアセタール樹脂フィルムの可塑剤量を充分に高くすることができ、遮音機能が付与された合わせガラスが得られやすいため好ましい。
【0094】
本発明における積層体は、下記層構成を有することができるが、これらに限定されない。
(1)透明基材A/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/機能性層A/透明基材Bの4層構成、
(2)透明基材A/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/機能性層A/機能性層B/透明基材Bの5層構成
(3)透明基材A/機能性層B/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/機能性層A/透明基材Bの5層構成、
(4)透明基材A/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/機能性層A/可塑化ポリビニルアセタール樹脂層/透明基材Bの5層構成、
(5)透明基材A/可塑化ポリビニルアセタール樹脂層/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/機能性層A/透明基材Bの5層構成、
(6)透明基材A/可塑化ポリビニルアセタール樹脂層/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/機能性層A/可塑化ポリビニルアセタール樹脂層/透明基材Bの6層構成、
(7)透明基材A/機能性層B/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/機能性層A/可塑化ポリビニルアセタール樹脂層/透明基材Bの6層構成、
(8)透明基材A/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/機能性層A/機能性層B/可塑化ポリビニルアセタール樹脂層/透明基材Bの6層構成、
(9)透明基材A/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/機能性層A/可塑化ポリビニルアセタール樹脂層/機能性層B/透明基材Bの6層構成、
(10)透明基材A/機能性層B/可塑化ポリビニルアセタール樹脂層/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/機能性層A/透明基材Bの6層構成、
(11)透明基材A/可塑化ポリビニルアセタール樹脂層/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/機能性層A/機能性層B/透明基材Bの6層構成、
(12)透明基材A/可塑化ポリビニルアセタール樹脂層/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/機能性層A/機能性層B/可塑化ポリビニルアセタール樹脂層/透明基材Bの7層構成、
(13)透明基材A/機能性層B/可塑化ポリビニルアセタール樹脂層/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/機能性層A/可塑化ポリビニルアセタール樹脂層/透明基材Bの7層構成、
(14)透明基材A/可塑化ポリビニルアセタール樹脂層/機能性層B/ポリビニルアセタール樹脂フィルム/機能性層A/可塑化ポリビニルアセタール樹脂層/透明基材Bの7層構成。
(15)機能性層Aが導電層である場合に、前記層構成(1)~(14)において、「ポリビニルアセタール樹脂フィルム/機能性層A」を「ポリビニルアセタール樹脂フィルム/機能性層A/別のポリビニルアセタール樹脂フィルム」に置き換えた層構成を有するもの。
【0095】
主に乗物の外側の透明基材を加熱すること、例えば透明基材に積もった雪を溶かすことが要求される場合、乗物の外側の透明基材にポリビニルアセタール樹脂フィルムが接し、導電層が存在すること、例えば前記層構成(4)において透明基材Aが外側透明基材で透明基材Bが内側透明基材であって、機能性層Aが導電層である構成を有することが好ましい。
主に乗物の内側の透明基材を加熱すること、例えば乗物内の曇りを除去することが要求される場合、乗物の内側の透明基材にポリビニルアセタール樹脂フィルムが接し、導電層が存在すること、例えば前記層構成(4)において透明基材Aが内側透明基材で透明基材Bが外側透明基材であって、機能性層Aが導電層である構成を有することが好ましい。
【0096】
<積層体の製造方法>
積層体は、当業者に公知の方法で製造できる。例えば、透明基材の上に機能性層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムおよび積層する場合は可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を任意の順で任意の枚数重ねて配置し、さらにもう一つの透明基材を重ねたものを、予備圧着工程として温度を高めることによってポリビニルアセタール樹脂フィルムおよび積層する場合は可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を透明基材に全面または局所的に融着させ、次いでオートクレーブで処理することで、積層体を製造できる。
【0097】
また、機能性層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルム、並びに積層する場合は可塑化ポリビニルアセタール樹脂層および/または別の機能性層をあらかじめ接合させた上で2つの透明基材の間に配置して高温で互いに融着させることにより、積層体を製造してもよい。
【0098】
上記予備圧着工程としては、過剰の空気を除去したり隣接する層同士の軽い接合を実施したりする観点から、バキュームバッグ、バキュームリング、または真空ラミネーター等の方法により減圧下に脱気する方法、ニップロールを用いて脱気する方法、および高温下に圧縮成形する方法等が挙げられる。
【0099】
例えばEP 1235683 B1に記載のバキュームバッグ法またはバキュームリング法により、例えば約2×10Paおよび130~145℃で実施される。
【0100】
真空ラミネーターは、加熱可能かつ真空可能なチャンバーからなり、このチャンバーにおいて、約20分~約60分の時間内に積層体が形成される。通常は1Pa~3×10Paの減圧および100℃~200℃、特に130℃~160℃の温度が有効である。真空ラミネーターを用いる場合、温度および圧力に応じて、オートクレーブでの処理を行わなくてもよい。
【0101】
オートクレーブでの処理は、例えば約1×10Pa~約1.5×10Paの圧力および約100℃~約145℃の温度で20分から2時間程度実施される。
【0102】
最も簡単な層構成の場合、積層体を製造するために、ポリビニルアセタール樹脂フィルムおよび機能性層、またはあらかじめ機能性層を付与したポリビニルアセタール樹脂フィルムを第1の透明基材の上に配置し、積層する場合は可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を同時にまたは続いて配置し、この上に第2の透明基材を配置して複合材料を作製する。ここで、ポリビニルアセタール樹脂フィルムと可塑化ポリビニルアセタール樹脂層の順を逆にしてもよい。次に、この複合材料を前記予備圧着工程に供する。任意に、脱気の工程を含んでいてもよい。
【0103】
最後に、前記複合材料は、必要に応じてオートクレーブプロセスに供される。
【0104】
ポリビニルアセタール樹脂フィルムを第1の透明基材に配置して、第2の透明基材を置く前に、ポリビニルアセタール樹脂フィルムおよび積層する場合の可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を配置する方法は特に限定されず、種々の方法が適用される。例えば、ポリビニルアセタール樹脂フィルムおよび可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、相応の幅のロールから供給し、目的の大きさに切断することで配置してもよいし、あらかじめ目的の大きさに切断しておいたフィルムを配置してもよい。たとえば、積層体が自動車フロントガラスの場合、ロールから供給された可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を加熱・延伸、切断し、扇型に加工したものを用いてもよい。
【0105】
自動車分野では、特にフロントガラスを製造する際、ガラスの上部がいわゆるカラーシェード領域を有するよう製造する場合もある。そのため、ポリビニルアセタール樹脂フィルムおよび/または積層する場合の可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、相応に着色されたポリマー溶融物と一緒に押出されるか、またはポリビニルアセタール樹脂フィルムおよび可塑化ポリビニルアセタール樹脂層のうちの少なくとも1つが部分的に異なる着色を有していてよい。本発明において、このような着色は、ポリビニルアセタール樹脂フィルムおよび可塑化ポリビニルアセタール樹脂層のうちの少なくとも1つを完全にまたは部分的に着色することによって、実施してよい。
【0106】
従って、本発明では、積層する場合の可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、特に既に先行するプロセス工程において、フロントガラスの形状に適合されたカラーグラデーションを有してよい。
【0107】
ガラスの一部、例えば乗物におけるガラスの上部がカラーシェード領域を有する場合、またはガラスの周縁部に濃色ペイントが施されている場合、より良好な前方視認性が得られやすい観点からは、導電層を構成する線状導電性材料、および線状導電性材料に接続されているバスバー等がカラーシェード領域内、または濃色ペイント領域内に存在することが好ましい。
【0108】
本発明の積層体は、建物または乗物における合わせガラスとして使用される。従って、本発明はまた、前記積層体からなる乗物用ガラスに関する。乗物用ガラスとは、汽車、電車、自動車、船舶または航空機といった乗物のための、フロントガラス、リアガラス、ルーフガラスまたはサイドガラス等を意味する。
【0109】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルム、および機能性層として少なくとも一面が低反射率処理(例えば黒化処理)された導電層を用いて作製された合わせガラスに対し、低反射率処理面(例えば黒化処理面)側から光を照射した場合のヘイズは、通常2.0以下であり、好ましくは1.8以下であり、より好ましくは1.5以下である。上記合わせガラスの金属光沢面側から光を照射した場合のヘイズは、通常3.0以下であり、好ましくは2.8以下であり、より好ましくは2.5以下である。
前記ヘイズは、例えばJIS R 3106に準じて測定される。本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムを用い、接着剤なしで金属箔を接合すること、および線状導電性材料の線幅を細くすることにより、前記ヘイズは前記上限値以下に調整できる。
【0110】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルム、および機能性層として少なくとも一面が低反射率処理された導電層を用いて合わせガラスを作製した場合、合わせガラスの低反射率処理面側からは、導電層の線状導電性材料が視認されないことが好ましい。線状導電性材料が視認されないことにより、特に乗物用フロントガラス等の良好な前方視認性が要求される用途において、前記合わせガラスは好適に使用される。導電層の視認性は、官能的に評価される。
【0111】
可塑化ポリビニルアセタール樹脂層および透明基材と、それらより寸法の小さい本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムとを用いて合わせガラスを作製した場合、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの端部は、目視で判別されないことが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂フィルムの端部が目視で判別されないことにより、特に乗物用フロントガラス等の良好な前方視認性が要求される用途において、前記合わせガラスは好適に使用される。ポリビニルアセタール樹脂フィルム端部の視認性は、官能的に評価される。
【0112】
合わせガラスにおいて可塑化ポリビニルアセタール樹脂層からポリビニルアセタール樹脂フィルムへの可塑剤の移行が阻害されない場合、例えば本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムと可塑化ポリビニルアセタール樹脂層とが全面的または部分的に隣接するように積層して合わせガラスを作製した場合、通常、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層に含まれる可塑剤は、時間経過に伴ってポリビニルアセタール樹脂フィルムに移行し、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層に含まれる可塑剤量とポリビニルアセタール樹脂フィルムに含まれる可塑剤量とは同程度となる。本発明において、この平均可塑剤量は、好ましくは18~35質量%、より好ましくは20~30質量%、特に好ましくは25~29質量%である。平均可塑剤量が前記範囲内であると、例えば衝突時の乗車人物の頭部への衝撃が緩和される等、合わせガラスの所望の特性が得られやすい。平均可塑剤量は、後の実施例に記載の方法によって計算される。可塑化ポリビニルアセタール樹脂層に含まれる可塑剤の量、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層の厚さ、ポリビニルアセタール樹脂フィルムに含まれる可塑剤の量、およびポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さを調整することにより、平均可塑剤量は前記範囲内に調整できる。
【0113】
本発明における導電層を含む合わせガラスの可視光反射率と、導電層を含まないこと以外は本発明における合わせガラスに相当する合わせガラスの可視光反射率との差は小さいことが好ましい。前記差が小さいと、特に乗物用フロントガラス等の良好な前方視認性が要求される用途において、本発明における導電層を含む合わせガラスは好適に使用される。合わせガラスの可視光反射率は、JIS R 3106に準じて測定される。導電層の低反射率処理面が乗車人物側または観察者側に配置されるよう合わせガラスを構成すること、または線状導電性材料の線幅を細くすることにより、前記差は小さくできる。
【実施例1】
【0114】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例により何ら限定されない。
【0115】
[実施例1]
ポリビニルブチラール樹脂1(以下、「樹脂1」と称する)およびポリビニルブチラール樹脂2(以下、「樹脂2」と称する)を、75:25の質量比でブレンドし、溶融混練してストランド状に押出し、ペレット化した。得られたペレットを単軸押出機とTダイを用いて溶融押出し、金属弾性ロールを用いて表面が平滑な厚さ50μmのポリビニルアセタール樹脂フィルムcを得た。
【0116】
<ポリビニルアセタール樹脂フィルムの製膜性の評価>
前記ペレットを単軸押出機で溶融押し出しした際の製膜性を、下記基準で評価した。結果を表2に示す。
A 製膜性は非常に良好であった。
B 製膜は良好であった。
C 着色および分解ガスの発生が起こったが、製膜可能であった。
D 製膜不可能であった。
【0117】
<ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するための樹脂のピークトップ分子量および分子量分布の測定>
ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するための樹脂を、GPCにより分析した。GPC分析には、分析装置としてViscotek製GPCmaxTDA305およびRI検出器を用い、カラムとしてShodex製GPC KF-806LおよびGPC KF-806Lを2本連結して別途先端にガードカラムとしてのShodex製 KF-Gを連結したものを用い、THF溶媒および標準ポリスチレン(Agilent Technologies社製 Easical GPC/SEC Calibration Standards PS-1)を用い、解析ソフトとしてOmniSE、C4.7を用いた。40℃、注入量100μLで測定を行い、前記樹脂のピークトップ分子量および分子量分布を求めた。結果を表2に示す。
【0118】
<耐熱クリープ性値(1)および耐熱クリープ性値(2)の測定>
前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムの耐熱クリープ性値(1)および耐熱クリープ性値(2)を、先の<耐熱クリープ性値(1)の測定方法(1)>および<耐熱クリープ性値(2)の測定方法(2)>の段落に記載した方法にそれぞれ準じて測定した。結果を表2に示す。
【0119】
また、実施例1、並びに後述の実施例2~6および比較例1~4において、樹脂1として使用した樹脂AまたはC、および樹脂2として使用した樹脂Bの物性値を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
[実施例2~3および比較例1]
樹脂1と樹脂2との混合割合を表2に記載の割合にしたこと以外は実施例1と同様にして、表面が平滑な厚さ50μmのポリビニルアセタール樹脂フィルムd、eおよびaをそれぞれ製造した。
次いで、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの製膜性を評価し、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するための樹脂のピークトップ分子量および分子量分布を求め、耐熱クリープ性値(1)および耐熱クリープ性値(2)を測定した。結果を表2に示す。
【0122】
【表2】
【0123】
表2に示されているとおり、樹脂の濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度が200mPa・sより大きい樹脂を用いて本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムを作製した場合(実施例1~3)は、優れた耐熱クリープ性値(1)および耐熱クリープ性値(2)が得られた。これは、このような本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムを用いて合わせガラスを作製すると、機能性層または導電層の変形および破壊が良好に抑制され、得られた合わせガラスの高温下でのガラスのずれが良好に抑制されることを示している。
一方、樹脂の濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度が200mPa・s以下である樹脂を用いてポリビニルアセタール樹脂フィルムを作製した場合(比較例1)は、30mmを超える耐熱クリープ性値(1)および耐熱クリープ性値(2)しか得ることができなかった。このようなポリビニルアセタール樹脂フィルムを用いて合わせガラスを作製すると、機能性層または導電層の変形および破壊は充分に抑制されず、得られた合わせガラスの高温下でのガラスのずれも充分に抑制されない。
【0124】
[実施例4]
ポリビニルアセタール樹脂フィルムcに、凸版印刷法によりUV硬化性ナノ銀インクを厚さ10μmとなるように印刷し、線幅300μm、ピッチ100μm、長さ5cm、本数20本の線状導電性材料パターンを形成した。前記パターンにUV光を照射してインクを硬化させた。
次に、縦10cm、横10cm、厚さ3mmのガラスの上に、前記パターンを付与したポリビニルアセタール樹脂フィルムを、印刷面が上向きになるよう配置し、前記パターンの線状導電性材料の方向とは直角に、各線状導電性材料の両端部とそれぞれ重なるように、バスバーとしての導電性粘着層を有する銅箔テープ(幅5mm、長さ15cm)を貼り付けた。尚、各々のバスバーの端部は、ポリビニルアセタール樹脂フィルムからはみ出しており、その各端部を電極として用いた。続いて、その上に、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層としての縦10cm、横10cm、厚さ0.76mmの〔水酸基量20.0質量%および粘度平均重合度1700を有するポリビニルブチラール樹脂(72質量%)と3GO(28質量%)とを含む〕自動車フロントガラス用中間膜を重ね、さらに、縦10cm、横10cm、厚さ3mmのガラスを重ねて、テープで固定した。このとき、線状導電性材料パターンはガラスの中央に配置し、各電極端部はガラス端部からはみ出すように配置した。
続いて、得られた積層体を真空バッグに入れ、減圧下に100℃で30分間処理し、冷却後に減圧を解除して、プレラミネート後の合わせガラスを取り出した。同様にして得られた計4つのプレラミネート後の合わせガラスについて、バスバーの端部と接する部分の状態を観察し、クラックや変形の有無を確認した。
その後、プレラミネート後の合わせガラスをオートクレーブに投入し、140℃、1.2MPaで30分間処理した。得られたオートクレーブ後の合わせガラスを前述と同様に観察した。
プレラミネート後と、オートクレーブ後のクラックや変形の有無を下記基準で評価した。結果を表3に示す。
A: 線状導電性材料のクラックや変形の有無は見られなかった。
B: 若干の変形が見られたが線状導電性材料のクラックは見られず、実用可能であった。
C: 一部の線状導電性材料にクラックおよび変形が見られた。
D: 線状導電性材料の多くにクラックおよび変形が見られ、実用不可能であった。
【0125】
[実施例5~6、比較例2~4]
表3に示したポリビニルアセタール樹脂フィルムを使用したこと以外は実施例4と同様にして合わせガラスを作製し、評価した。
【0126】
【表3】
【0127】
表3に示されているとおり、樹脂の濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度が200mPa・sより大きい樹脂を用い、ポリビニルアセタール樹脂フィルム中の可塑剤の量を、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物の総質量に基づいて0~20質量%として、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムを作製した場合(実施例4~6)は、プレラミネート後およびオートクレーブ後の導電層の線状導電性材料にクラックは見られず、実用可能であった。
一方、樹脂の濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度が200mPa・s以下である樹脂を用いてポリビニルアセタール樹脂フィルムを作製した場合(比較例2~3)、ポリビニルアセタール樹脂フィルム中の可塑剤の量がポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物の総質量に基づいて22質量%である場合(比較例4)には、プレラミネート後に導電層の線状導電性材料に変形か、変形およびクラックが見られ、オートクレーブ後の導電層の線状導電性材料に変形およびクラックが見られ、実用不可能であった。
【0128】
<ポリビニルアセタール樹脂フィルムa~m並びにo、pおよびqの製造>
ポリビニルブチラール樹脂1(以下、「樹脂1」と称する)を溶融混練するか、または樹脂1およびポリビニルブチラール樹脂2(以下、「樹脂2」と称する)を表5または表8に記載の質量比で溶融混練した。ポリビニルアセタール樹脂フィルムが可塑剤を含む場合(ポリビニルアセタール樹脂フィルムjおよびm)は、可塑剤として所定量の3GOを、樹脂1および樹脂2とともに溶融混練した。次に、得られた溶融混練物をストランド状に押出し、ペレット化した。得られたペレットを、単軸の押出機とTダイを用いて溶融押出し、金属弾性ロールを用いて表面が平滑なポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。ポリビニルアセタール樹脂フィルムa~mの厚さは表5に、ポリビニルアセタール樹脂フィルムo、pおよびqの厚さは表8に示す。
【0129】
また、ポリビニルアセタール樹脂フィルムa~mの製造、並びにo、pおよびqの製造において使用した樹脂1および樹脂2の物性値を表4に示す。
【0130】
【表4】
【0131】
[実施例7]
<銅箔が接合されたポリビニルアセタール樹脂フィルムの製造>
製造したポリビニルアセタール樹脂フィルムcに、片面が黒化処理された厚さ7μmの銅箔を、黒化処理面(以下、黒化面と称することがある)とポリビニルアセタール樹脂フィルムcとが接するような向きで重ねた。ここで、JIS R 3106に準じて測定された黒化処理面の可視光反射率は5.2%であった。次に、ポリビニルアセタール樹脂フィルムcと銅箔とを重ねた積層物の上下を厚さ50μmのPETフィルムで挟み、120℃に設定した熱圧着ロールの間を通過(圧力:0.2MPa、速度0.5m/分)させた後、PETフィルムをはがすことで、銅箔が接合されたポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。
【0132】
<導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムの製造>
製造した、銅箔が接合されたポリビニルアセタール樹脂フィルムの銅箔上に、ドライフィルムレジストをラミネートした後、フォトリソグラフィの手法を用いてエッチング抵抗パターンを形成した。次に、前記エッチング抵抗パターンが形成された、銅箔が接合されたポリビニルアセタール樹脂フィルムを、銅エッチング液に浸漬して導電層(導電性構造体)を形成した後、常法により、残存するフォトレジスト層を除去した。これにより、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。このポリビニルアセタール樹脂フィルムは、ポリビニルアセタール樹脂フィルムと導電層との間に接着剤層を有していない。導電層は、縦横各5cmの正方形の内部に、線幅10μmの銅線が500μm間隔で格子状に並んだ銅メッシュ構造を有し、その上辺および下辺がバスバーに相当する幅5mmの銅線構造と接続された構造を有していた。
【0133】
[実施例8~14、比較例5~6]
ポリビニルアセタール樹脂フィルムcに代えて、表5に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルムd~j、aおよびbをそれぞれ使用したこと以外は実施例7と同様にして、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。
【0134】
[実施例15]
片面が黒化処理された厚さ7μmの銅箔を、金属光沢面とポリビニルアセタール樹脂フィルムcとが接するような向きで重ねたこと以外は実施例7と同様にして、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。ここで、JIS R 3106に準じて測定された金属光沢面の可視光反射率は63%であった。
【0135】
[実施例16]
フォトリソグラフィに用いるフォトマスクの線幅を変更したこと以外は実施例7と同様にして、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。導電層は、縦横各5cmの正方形の内部に、線幅5μmの銅線が500μm間隔で格子状に並んだ銅メッシュ構造を有し、その上辺および下辺がバスバーに相当する幅5mmの銅線構造と接続された構造を有していた。
【0136】
[実施例17]
銅線の線幅が20μmになるように調整したこと以外は実施例16と同様にして、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。導電層は、縦横各5cmの正方形の内部に、線幅20μmの銅線が1000μm間隔で格子状に並んだ銅メッシュ構造を有し、その上辺および下辺がバスバーに相当する幅5mmの銅線構造と接続された構造を有していた。
【0137】
[実施例18]
銅線の線幅が30μmになるように調整したこと以外は実施例16と同様にして、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。導電層は、縦横各5cmの正方形の内部に、線幅30μmの銅線が1500μm間隔で格子状に並んだ銅メッシュ構造を有し、その上辺および下辺がバスバーに相当する幅5mmの銅線構造と接続された構造を有していた。
【0138】
[実施例19]
銅線の線幅が40μmになるように調整したこと以外は実施例16と同様にして、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。導電層は、縦横各5cmの正方形の内部に、線幅40μmの銅線が2000μm間隔で格子状に並んだ銅メッシュ構造を有し、その上辺および下辺がバスバーに相当する幅5mmの銅線構造と接続された構造を有していた。
【0139】
[実施例20]
フォトリソグラフィに用いるフォトマスクの構造を変更したこと以外は実施例7と同様にして、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。導電層は、線幅10μmの銅線が500μm間隔で直線状に並んだ構造を有し、その各直線の両端がバスバーに相当する幅5mmの銅線構造と接続された構造を有していた。
【0140】
[実施例21]
フォトリソグラフィに用いるフォトマスクの構造を変更したこと以外は実施例7と同様にして、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。導電層は、線幅10μmの銅線が500μm間隔で波線状に並んだ構造を有し、その各波線の両端がバスバーに相当する幅5mmの銅線構造と接続された構造を有していた。
【0141】
[実施例22]
フォトリソグラフィに用いるフォトマスクの構造を変更したこと以外は実施例7と同様にして、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。導電層は、線幅10μmの銅線が500μm間隔でジグザグ線状に並んだ構造を有し、その各ジグザグ線の両端がバスバーに相当する幅5mmの銅線構造と接続された構造を有していた。
【0142】
[比較例11]
実施例23としての樹脂フィルムの作製および評価は行わなかった。
比較例11として、ポリビニルアセタール樹脂フィルムcに代えて、ポリビニルアセタール樹脂フィルムkを使用したこと以外は実施例7と同様にして、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。
【0143】
[実施例24]
ポリビニルアセタール樹脂フィルムcに代えて、ポリビニルアセタール樹脂フィルムlを使用したこと以外は実施例7と同様にして、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。
【0144】
[実施例25]
ポリビニルアセタール樹脂フィルムcに銅箔を接合する際に、熱圧着ロールを用いて接合したことに代えて、アクリレート系接着剤を用いて接着したこと以外は実施例7と同様にして、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。
【0145】
[比較例7]
ポリビニルアセタール樹脂フィルムcに代えて、ポリビニルアセタール樹脂フィルムmを使用したこと以外は実施例7と同様にして、導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。
【0146】
[比較例8]
ポリビニルアセタール樹脂フィルムcに代えてPETフィルム(厚さ50μm)を用いたこと以外は実施例25と同様にして、導電層を有するPETフィルムを得た。
【0147】
<合わせガラスの作製>
実施例7~25および比較例5~7で得た導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルム、および比較例8で得た導電層を有するPETフィルムをそれぞれ、縦5cm、横5cmに切り出し、縦10cm、横10cm、厚さ3mmのガラスの上に配置した。このとき、前記フィルムの導電層を有さない面がガラスと接する向きで、かつ導電層がガラスの中央付近にくるように配置した。次に、導電層の両端部にある各々のバスバー(5mm幅銅線)に、電極(導電性粘着剤付き銅箔テープ)を、ガラスから外へ各電極端部がはみ出すように貼り付けた。さらに、その上に、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層としての縦10cm、横10cm、厚さ0.76mmの〔水酸基量20.0質量%および粘度平均重合度1700を有するポリビニルブチラール樹脂(72質量%)と3GO(28質量%)とを含む〕自動車フロントガラス用中間膜、および縦10cm、横10cm、厚さ3mmのガラスを重ねて配置した。
続いて、これを真空バッグに入れ、真空ポンプを用いて室温で15分間減圧にした後、減圧したまま100℃まで昇温し、そのまま60分間加熱した。降温後、常圧に戻し、プレラミネート後の合わせガラスを取り出した。
その後、これをオートクレーブに投入し、140℃、1.2MPaで30分間処理し、合わせガラスを作製した。
【0148】
<導電層の状態の評価>
プレラミネート後およびオートクレーブ後の導電層の状態を、ルーペを用いて目視観察し、線状導電性材料の変形および断線の有無を下記基準で評価した。結果を表5、表7および表8に示す。
A 変形および断線は認められなかった。
B 部分的に変形は認められたが、断線は認められなかった。
C 僅かに断線が認められた。
D 断線が顕著であった。
【0149】
<通電性の評価>
各々のバスバーに貼り付けた2つの電極間の抵抗を、テスターで測定した。合わせガラス作製前後に抵抗値を測定し、通電性を下記基準で評価した。結果を表5、表7および表8に示す。
A 合わせガラス作製後の抵抗値が合わせガラス作製前の抵抗値の1.5倍以内と極めて良好。
B 合わせガラス作製後の抵抗値が合わせガラス作製前の抵抗値の1.5倍を超え2倍以内と良好。
C 合わせガラス作製後の抵抗値が合わせガラス作製前の抵抗値の2倍を超え4倍以内であるが実用可能。
D 合わせガラス作製後の抵抗値が合わせガラス作製前の抵抗値の4倍を超え、実用不可能。
【0150】
<ヘイズの測定>
実施例7~25および比較例5~7で得た導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルム、および比較例8で得た導電層を有するPETフィルムをそれぞれ、縦5cm、横5cmに切り出し、縦5cm、横5cm、厚さ3mmのガラスの上に配置した。このとき、前記フィルムの導電層を有さない面がガラスと接する向きで配置した。その上に、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層としての縦5cm、横5cm、厚さ0.76mmの〔水酸基量20.0質量%および粘度平均重合度1700を有するポリビニルブチラール樹脂(72質量%)と3GO(28質量%)とを含む〕自動車フロントガラス用中間膜、および縦5cm、横5cm、厚さ3mmのガラスを重ねて配置した。
続いて、これを真空バッグに入れ、真空ポンプを用いて室温で15分間減圧にした後、減圧したまま100℃まで昇温し、そのまま60分間加熱した。降温後、常圧に戻し、プレラミネート後の合わせガラスを取り出した。
その後、これをオートクレーブに投入し、140℃、1.2MPaで30分間処理し、合わせガラスを作製した。
得られた導電層を有する前記合わせガラスの各々について、黒化処理面側から光を照射した場合のヘイズと、金属光沢面側から光を照射した場合のヘイズを、ヘイズメーターを用いてJIS R3106に準じて測定した。結果を表5に示す。
【0151】
<導電層の視認性の官能評価>
黒化処理面側を観察者に向けた合わせガラスを、観察者から約50cm離れた位置に配置し、観察者がガラスを通して5m先を見たときに、導電層の銅線が視認できるか否かを、下記基準で官能的に評価した。結果を表5に示す。
A ほとんど気にならず極めて良好。
B 焦点をずらした際に少し気になったが良好。
C 少し気になったが実用可能。
D 気になり実用不可能。
【0152】
<ポリビニルアセタール樹脂フィルムの端部の視認性の官能評価>
前記<合わせガラスの作製>に従って作製した合わせガラスを2週間室温で放置した後、自動車フロントガラス用中間膜より寸法の小さいポリビニルアセタール樹脂フィルムの端部が、目視で判別できるか否かを、下記基準で官能的に評価した。結果を表5に示す。
A 全く判別できず極めて良好。
B よく見ると判別できる部分があったが良好。
C よく見ると判別できたが実用可能。
D 明らかに判別でき、実用不可能。
【0153】
<平均可塑剤量>
可塑化ポリビニルアセタール樹脂層としての自動車フロントガラス用中間膜に含まれる可塑剤がポリビニルアセタール樹脂フィルムに移行し、自動車フロントガラス用中間膜に含まれる可塑剤量がポリビニルアセタール樹脂フィルムに含まれる可塑剤量と同程度となったときの可塑剤量(計算値)を、下記式に従い算出した。結果を表5に示す。
【数1】
A(質量%):可塑化ポリビニルアセタール樹脂層の可塑剤量
a(mm):可塑化ポリビニルアセタール樹脂層の厚さ
B(質量%):ポリビニルアセタール樹脂フィルムの可塑剤量
b(mm):ポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さ
【0154】
【表5】
【0155】
表5に示されているとおり、ポリビニルアセタール樹脂フィルム中の可塑剤の量が本発明において規定している範囲内であるとき、合わせガラスの作製時における導電層の変形および断線が少なく、通電性が良好であった。また、ポリビニルアセタール樹脂フィルムと導電層との間に接着剤層を有さないとき、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを用いて作製された合わせガラスに、黒化処理面側から光を照射した場合のヘイズおよび金属光沢面側から光を照射した場合のヘイズは、いずれも良好な値を示した。
【0156】
[実施例26~29]
実施例26、27および29では、実施例7において製造したポリビニルアセタール樹脂フィルムを用い、表6に示した合わせガラスの構成で、後述の可視光反射率測定用合わせガラスを作製した。実施例28では、実施例15において製造したポリビニルアセタール樹脂フィルムを用い、表6に示した合わせガラスの構成で、後述の可視光反射率測定用合わせガラスを作製した。具体的には、表6に示した合わせガラスの構成で、縦5cm、横5cm、厚さ3mmのガラス、縦5cm、横5cmに切り出したポリビニルアセタール樹脂フィルム、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層としての縦5cm、横5cm、厚さ0.76mmの〔水酸基量20.0質量%および粘度平均重合度1700を有するポリビニルブチラール樹脂(72質量%)と3GO(28質量%)とを含む〕自動車フロントガラス用中間膜を重ねて配置し、これを真空バッグに入れ、真空ポンプを用いて室温で15分間減圧にした後、減圧したまま100℃まで昇温し、そのまま60分間加熱した。降温後、常圧に戻し、プレラミネート後の合わせガラスを取り出した。その後、これをオートクレーブに投入し、140℃、1.2MPaで30分間処理し、合わせガラスを作製した。得られた可視光反射率測定用合わせガラスの内側ガラス(乗車人物側を想定)から光を照射したときの可視光反射率を、JIS R 3106に準じて測定した。結果を表6に示す。
【0157】
【表6】
【0158】
[実施例30~33]
<ポリビニルアセタール樹脂フィルムと銅箔とを接合する際の温度が剥離強度、導電層の状態および通電性に及ぼす影響の評価>
A4サイズの銅箔にA4サイズのポリビニルアセタール樹脂フィルムcを重ね、端部8cmが加熱圧着されないよう、表7に記載の温度で加熱圧着したこと以外は実施例7と同様にして、銅箔が接合されたポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。加熱圧着しなかった端部が引張試験機のチャックに挟む部分となるよう、得られた樹脂フィルムを1cm幅の短冊状に切断し、チャック間距離4cm、引張速度100mm/分で引張試験を行い、20mm毎の剥離力をアウトプットし、その平均値を剥離強度とした。
また、表7に記載の温度で加熱圧着して銅箔を接合したこと以外は実施例7と同様にして、導電層の状態(格子状)の評価および通電性の評価を実施した。結果を表7に示す。
【0159】
【表7】
【0160】
表7に示されているとおり、ポリビニルアセタール樹脂フィルムcと銅箔とを100℃以上の温度で接合した場合(実施例30~33)、ポリビニルアセタール樹脂フィルムcと銅箔との良好な剥離強度が得られ、プレラミネート後もオートクレーブ後も導電層の線状導電性材料の形状が良好に保持されて良好な通電性が得られた。また、接合温度が100℃より高い場合(実施例31~33)は、オートクレーブ後も導電層の線状導電性材料の形状に変形は見られず、極めて良好に形状が保持され、通電性も極めて良好であった。この結果から、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムを用いて合わせガラスを作製すると、機能性層または導電層の変形および破壊が良好に抑制され、得られる合わせガラスの高温下でのガラスのずれが良好に抑制されることが分かる。
【0161】
[実施例34~37]
<ポリビニルアセタール樹脂フィルムの表面粗さが導電層の線状導電性材料の形状保持に及ぼす影響>
実施例34では、実施例7のポリビニルアセタール樹脂フィルムcの表面粗さを株式会社ミツトヨ製サーフテストSJ-310(測定力:0.75mN、スタイラス形状:先端半径2μmR/先端角度60°)を用いてJIS B 0601-1994に準拠して評価した。なお、実施例7のフィルムcは、金属弾性ロールおよび鏡面金属冷却ロールを用いて作製したものである。RzおよびSmの表面粗さの測定においては、フィルムcの作製時に鏡面金属冷却ロールとの接触面であった側を評価した。
実施例35では、実施例34で得られたフィルムcにおいて、金属弾性ロールとの接触面について実施例34と同様に評価した。当該フィルムを実施例35では、フィルムqと称することとする。
実施例36では、金属弾性ロールに代えてゴム弾性ロールを用いたこと以外は、実施例34と同様にして得られた、ポリビニルアセタール樹脂フィルムoの、鏡面金属冷却ロール側との接触面について、実施例34と同様に評価した。
実施例37では、金属弾性ロールに代えてゴム弾性ロールを用い、鏡面金属冷却ロール側に代えてエンボスロールを用いたこと以外は、実施例34と同様にして得られた、ポリビニルアセタール樹脂フィルムpの、エンボスロール側との接触面について、実施例34と同様に評価した。
上記実施例34~37の評価結果を表8に示す。また、実施例34~37では、実施例7と同様にして、導電層の状態と通電性を評価した。結果を表8に示す。
【0162】
【表8】
【0163】
表8に示されているとおり、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの十点平均粗さRzが小さく、凹凸の平均間隔Smが大きい場合(実施例34)に、プレラミネート後もオートクレーブ後も導電層の形状が良好に保持された。これは、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの表面が平滑であると、ポリビニルアセタール樹脂フィルムと銅箔との、より均一でむらのない接合が可能であることを示す。このことにより、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムを用いて合わせガラスを作製すると、機能性層または導電層の変形および破壊が良好に抑制され、得られる合わせガラスの高温下でのガラスのずれが良好に抑制される。
【0164】
次に、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する樹脂組成物の融点およびガラス転移温度の内、最も高い温度が30℃以上180℃以下であることが、曲面を有するガラスと積層した場合の当該ポリビニルアセタール樹脂フィルムの曲面追従性に及ぼす影響、接着剤がヘイズに及ぼす影響、および黒化処理が光の反射(導電層の視認性)に及ぼす影響について調べた。
【0165】
<ポリビニルアセタール樹脂フィルムの製造>
ポリビニルブチラール樹脂1(以下、「樹脂1」と称する)を溶融混練するか、または樹脂1およびポリビニルブチラール樹脂2(以下、「樹脂2」と称する)を表10に記載の質量比で溶融混練した。ポリビニルアセタール樹脂フィルムが可塑剤を含む場合(ポリビニルアセタール樹脂フィルムr~t)は、所定量の3GOを、樹脂1とともに、または樹脂1および樹脂2とともに溶融混練した。次に、得られた溶融混練物をストランド状に押出し、ペレット化した。得られたペレットを、単軸の押出機とTダイを用いて溶融押出し、金属弾性ロールを用いて表面がスムースなポリビニルアセタール樹脂フィルムa、cおよびr~tを得た。用いたポリビニルブチラール樹脂(A、BおよびD)を表9に、製造したポリビニルアセタール樹脂フィルムまたは使用したPETを表10に示す。
【0166】
【表9】
【0167】
【表10】
【0168】
[参考例1]
<銅箔が接合されたポリビニルアセタール樹脂フィルムの製造>
ポリビニルアセタール樹脂フィルムaに、片面が黒化処理された厚さ7μmの銅箔を、黒化処理面とポリビニルアセタール樹脂フィルムaとが接するような向きで重ねた。ここで、JIS R 3205(2005)に準じて測定された黒化処理面の可視光反射率は5.2%であった。次に、ポリビニルアセタール樹脂フィルムと銅箔とを重ねた積層物の上下を厚さ50μmのPETフィルムで挟み、140℃に設定した熱圧着ロールの間を通過(圧力:0.2MPa、速度0.5m/分)させた後、PETフィルムをはがすことで、銅箔が接合されたポリビニルアセタール樹脂フィルムaを得た。
【0169】
<導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムの製造>
銅箔が接合されたポリビニルアセタール樹脂フィルムaの銅箔上に、ドライフィルムレジストをラミネートした後、フォトリソグラフィの手法を用いてエッチング抵抗パターンを形成した。さらに、銅エッチング液に浸漬して導電性構造体(導電層)を形成した後、常法により、残存するフォトレジスト層を除去した。これにより、ポリビニルアセタール樹脂フィルムaと、該ポリビニルアセタール樹脂フィルム上に形成された銅箔に基づく導電層とを有するポリビニルアセタール樹脂フィルム〔導電層形成領域:線状導電性材料(配線)長手方向10cm、線状導電性材料短手方向5cm〕を得た。このポリビニルアセタール樹脂フィルムは、ポリビニルアセタール樹脂フィルムaと導電層との間に接着剤層を有していない。導電層は線幅10μmの波線状の銅線が1mm間隔で並んだ構造を有し、銅線同士は互いに交差しておらず、各々の両端部の距離が10cmであり、各々の上端部および下端部が、バスバーに相当する幅5mmの銅線構造と接続された構造を有していた。
【0170】
<導電層の状態の評価>
導電層の状態をルーペを用いて目視観察し、下記の基準で評価した。結果を表11に示す。
A 変形および断線は認められなかった。
B 部分的に変形は認められたが、断線は認められなかった。
C 僅かに断線が認められた。
D 断線が顕著であった。
【0171】
<ポリビニルアセタール樹脂フィルムの黒化処理>
黒化液(シーフォース株式会社)2mLをイオン交換水100mLに添加し、1分間撹拌することで黒化処理液を調製した。製造したポリビニルアセタール樹脂フィルムの導電層が黒化処理液に面するように配置し、25℃、3分間浸漬させ、前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムをイオン交換水で洗浄することで、黒化処理をした。この処理により、導電層の全ての面が黒化処理されたポリビニルアセタール樹脂フィルムを得た。
【0172】
<平板合わせガラスの作製>
参考例1で得たポリビニルアセタール樹脂フィルムを、導電層およびバスバーが全て含まれるよう、縦13cm、横7cmに切り出し、縦20cm、横10cm、厚さ3mmのガラスの上に配置した。このとき、前記フィルムの導電層を有さない面がガラスと接する向きで、且つ導電層がガラスの中央付近にくるように配置した。次に、導電層の両端部にある各々のバスバー(5mm幅銅線)に、電極(導電性粘着剤付き銅箔テープ)を、ガラスから外へ各電極端部がはみ出すように貼り付けた。さらに、その上に、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層としての縦20cm、横10cm、厚さ0.76mmの〔水酸基量28.8質量%および粘度平均重合度1700を有するポリビニルブチラール樹脂(72質量%)と3GO(28質量%)とを含む〕自動車フロントガラス用中間膜、および縦20cm、横10cm、厚さ3mmのガラスを重ねて配置した。
続いて、これを真空バッグに入れ、真空ポンプを用いて室温で15分間減圧にした後、減圧したまま100℃まで昇温し、そのまま60分間加熱した。降温後、常圧に戻し、プレラミネート後、オートクレーブに投入し、140℃、1.2MPaで30分間処理し、平板合わせガラスを作製した。
【0173】
<曲面合わせガラスの作製>
縦20cm、横10cm、厚さ3mmのガラスの代わりに、時計皿〔直径:150mm、曲率半径(R):139.7mm〕を用いたこと以外は上述の<平板合わせガラスの作製>と同様にして、曲面合わせガラスを作製した。
【0174】
<導電層の視認性の官能評価>
黒化液で黒化処理した面側を観察者に向けた合わせガラスを、観察者の目線から約50cm離れた位置に、導電層が地面と水平方向に並ぶように合わせガラスを設置し、観察者とガラスを挟んだ反対側の合わせガラス面から5cm離れた位置に地面と水平方向の線発光LEDライトを設置した。LEDライトの光源と、合わせガラス面への入光点と、観察者の目線とを結ぶ角度が180°、135°、90°、45°の4点になるようLEDライトを設置するとともにガラスが該角度を二等分する角度に配置し、導電層の金属光沢が視認される角度の数に応じた下記に示す基準で視認性を評価した。光の有無で導電層の見え方が変化する場合に「金属光沢が視認される」と判断した。
A 金属光沢が視認される角度0個;線状導電性材料はほぼ視認できず、且つ全ての角度で視認性良好。
B 金属光沢が視認される角度0個;線状導電性材料は視認できるが、全ての角度で視認性良好。
C 金属光沢が視認される角度1~2個;視認性は概ね良好だが、一部角度で視認性不良。
D 金属光沢が視認される角度3~4個;視認性不良。
【0175】
<曲面追従性の評価>
得られた曲面合わせガラスの導電層を観察し、下記基準で曲面追従性を評価した。結果を表11に示す。
A 断線なし、且つ線状導電性材料に大きな変形部なし。
B 5%以下の線状導電性材料に断線が見られる、または若干の線状導電性材料変形あり。
C 20%以下の線状導電性材料に断線が見られる、又明らかな線状導電性材料変形あり。
D 20%を超える線状導電性材料に断線が見られる、または大きな線状導電性材料変形あり。
【0176】
[実施例38]
ポリビニルアセタール樹脂フィルムaに代えてポリビニルアセタール樹脂フィルムcを使用したこと以外は参考例1と同様にして、全ての面が黒化処理された導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルム、平板合わせガラス、および曲面合わせガラスを作製した。
【0177】
[実施例39]
ポリビニルアセタール樹脂フィルムaに代えてポリビニルアセタール樹脂フィルムrを使用したこと以外は参考例1と同様にして、全ての面が黒化処理された導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルム、平板合わせガラス、および曲面合わせガラスを作製した。
【0178】
[実施例40]
線状導電性材料幅を5μmとしたこと以外は実施例38と同様にして、全ての面が黒化処理された導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルム、平板合わせガラス、および曲面合わせガラスを作製した。
【0179】
[参考例2]
ポリビニルアセタール樹脂フィルムaに代えてポリビニルアセタール樹脂フィルムsを使用したこと以外は参考例1と同様にして、全ての面が黒化処理された導電層を有するポリビニルアセタール樹脂フィルムおよび曲面合わせガラスを作製した。
また、平板合わせガラスの作製において、ガラスとポリビニルアセタール樹脂フィルムとの間にPETフィルム(厚さ50μm)を挟んだこと以外は参考例1と同様にして、平板合わせガラスを作製した。1週間毎にPETフィルムをポリビニルアセタール樹脂フィルムからはがし、ポリビニルアセタール樹脂フィルム中に含まれる可塑剤量を反射IR(ATR)により定量追跡した。その結果、4週間後には可塑剤量が38質量%を超えることを確認した。即ち、ポリビニルアセタール樹脂フィルムsを用いた場合、本発明の合わせガラスに遮音性能を付与できることが判明した。
【0180】
[比較例9]
<低Tgフィルム:高可塑剤量(28質量%)のポリビニルアセタール樹脂フィルム>
ポリビニルアセタール樹脂フィルムaに代えてポリビニルアセタール樹脂フィルムt(融点なし、ガラス転移温度のうち最も高い温度は17℃)を使用したこと以外は参考例1と同様に行った。参考例1と同様にして導電層の形成を試みたが、断線が見られた。
【0181】
[比較例10]
<高融点フィルム:PET>
ポリビニルアセタール樹脂フィルムaに代えて表10に記載のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(PET層、厚さ50μm、融点260℃)を用い、銅箔を接合する際に熱圧着ロールを用いて接合したことに代えてアクリレート系接着剤を用いて接着したこと以外は参考例1と同様にして、全ての面が黒化処理された導電層を有するPETフィルム、平板合わせガラス、および曲面合わせガラスを作製した。
【0182】
[参考例3]
<導電層とポリビニルアセタール樹脂フィルムとの接合面のみ黒化処理>
導電層を形成した後にポリビニルアセタール樹脂フィルムを黒化処理しなかったこと以外は、参考例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂フィルム、平板合わせガラス、および曲面合わせガラスを作製した。
【0183】
[参考例4]
<導電層とポリビニルアセタール樹脂フィルムとの接合面以外を黒化処理>
黒化処理されていない銅箔面をポリビニルアセタール樹脂フィルムaと接合したこと以外は、参考例1と同様にして黒化処理されたポリビニルアセタール樹脂フィルム、平板合わせガラス、および曲面合わせガラスを作製した。
【0184】
【表11】
【0185】
上記の通り、融点およびガラス転移温度の内、最も高い温度が30℃以上180℃以下である樹脂組成物からなる導電層付きポリビニルアセタール樹脂フィルム(実施例38~40および参考例1~2)は、曲面追従性に優れ、曲面を有するガラスと積層した場合にも線状導電性材料の断線は見られなかった。また、導電層の表面の全ての面が低反射率処理されているポリビニルアセタール樹脂フィルムは、いずれの方向からの強い光に対しても、予期せぬ光の反射を引き起こすことなく、前方視認性に優れていた(実施例38~40および参考例1~2)。そのため、このようなポリビニルアセタール樹脂フィルムを用いた合わせガラスは、夜間であっても前方視認性が良好なため、特に自動車フロントガラスに好適である。また、ポリビニルアセタール樹脂を用いた実施例38~40および参考例1~2では、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層との界面における接合性に優れ、光学むらの極めて少ないという特性も併せ持っていた。
【符号の説明】
【0186】
10 耐熱クリープ性値測定用の合わせガラス
11 ガラスA
12 ガラスB
13 ポリビニルアセタール樹脂フィルムと可塑化ポリビニルブチラール樹脂層との積層体
13A ポリビニルアセタール樹脂フィルム
13B 厚さ0.76mmの可塑化ポリビニルブチラール樹脂層
13C 厚さ0.38mmの可塑化ポリビニルブチラール樹脂層
13D 厚さ0.38mmの可塑化ポリビニルブチラール樹脂層
20 鉄板が接着された耐熱クリープ性値測定用の合わせガラス
21 鉄板
図1
図2
図3
図4