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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】タイタンパー用ビーター
(51)【国際特許分類】
   E01B 27/20 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
E01B27/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018243023
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020105731
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】菅村 公平
(72)【発明者】
【氏名】井上 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】荻野 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】河永 淳二
(72)【発明者】
【氏名】坂田 哲郎
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-333703(JP,A)
【文献】実開昭63-136001(JP,U)
【文献】米国特許第01779473(US,A)
【文献】特開2005-307561(JP,A)
【文献】特開2015-59329(JP,A)
【文献】米国特許第02137842(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
短冊状の平板材の長手方向の基端から先端に向かってテーパ部、同幅部並びに尖り部を備え、
前記テーパ部が前記基端から前記先端までの長さの少なくとも半分の位置まで前記基端から前記先端に向かって拡幅した形状をなし、
前記同幅部が前記テーパ部の最大幅部から前記先端に向かって全幅一定の形状をなし、
前記尖り部が、前記同幅部の前記先端寄りの位置から前記先端に向かって縮幅した形状をなし、
前記同幅部に、側面視形状がく字状をなす変曲部を有し、
前記変曲部より前記先端寄りの領域に前記長手方向を谷長手方向とする湾曲部を有する、タイタンパー用ビーター。
【請求項2】
前記尖り部の先端に、前記基端側に向かって凹んだ形状の切欠き部を設けた請求項1記載のタイタンパー用ビーター。
【請求項3】
前記尖り部の両側縁部がそれぞれ拡幅方向に凸をなす曲線形状である請求項1または2記載のタイタンパー用ビーター。
【請求項4】
前記変曲部を挟んで対向する前記基端側の前記同幅部と前記先端側の前記同幅部との成す角度が150度~163度である請求項1~3の何れかの項に記載のタイタンパー用ビーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の道床の整備作業や鋼製まくらぎ内のバラスト充填作業に使用されるタイタンパー(バラスト搗き固め装置)の先端に取り付けられるビーターに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の道床の整備作業に使用されている従来のタイタンパー用ビーターとして、例えば、図7に示すようなものがある。このタイタンパー用ビーター70は、長手方向の基端71から先端72に向かってテーパ形状をなし、長手方向の中央よりも先端72寄りの部分に、側面視形状がく字状をなす変曲部73を有し、先端72に、正面視形状が基端71方向に凹んだ円弧状をなす凹縁部74が設けられている。
【0003】
そのほか、タイタンパー用ビーターについては、従来、様々な形状、構造を有するものが提案されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1に記載された「タイタンパー用ビーター」や特許文献2に記載された「タイタンパー用つき固めツール」などがある。
【0004】
特許文献1に記載された「タイタンパー用ビーター」は、ビーターの第2ボルト孔のところにおいて、ビーター幅が大きくなるように両サイドに膨大部を形成し、この膨大部の先においてはビーター隔より僅かに細幅に形成し、この細幅の部分から所定の位置まではテーパ状に拡大してビーター幅に戻るように形成したこと、を特徴とするものである。
【0005】
特許文献2に記載された「タイタンパー用つき固めツール」は、バラストに挿し込まれる先端部がくし歯状であり、先端部における最先端の全幅はバラスト最大粒径の3倍以上であり、先端部における歯の隙間の最大幅がバラスト最大粒径の略半分であり、タイタンパーに装着される基部に対する先端部の折れ角が、道床厚と、まくらぎ底面幅の半分の長さとの比以上であること、を特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-307561号公報
【文献】特開2015-59329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鉄道の道床は、列車走行時の重量負荷、雨水、気候などの影響により劣化、粉泥化して固結することが多いので、タイタンパーを使用して定期的に整備作業を施す必要があるが、図7に示す従来のタイタンパー用ビーター70では、固結した道床の搗き固めは容易ではない。
【0008】
一方、特許文献1に記載された「タイタンパー用ビーター」や特許文献2に記載された「タイタンパー用つき固めツール」はそれぞれ独特な形状を有しているが、前述したように固結した状態にある道床の搗き固めは容易ではない。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、列車走行、雨水、気候などの影響によって劣化、粉泥化し、固結した道床であっても容易に搗き固めすることができるタイタンパー用ビーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のタイタンパー用ビーターは、短冊状の平板材の長手方向の基端から先端に向かってテーパ部、同幅部並びに尖り部を備え、
前記テーパ部が、前記基端から前記先端までの長さの少なくとも半分の位置まで、前記基端から前記先端に向かって拡幅した形状をなし、
前記同幅部が前記テーパ部の最大幅部から前記先端に向かって全幅一定の形状をなし、
前記尖り部が、前記同幅部の前記先端寄りの位置から前記先端に向かって縮幅した形状をなし、
前記同幅部に、側面視形状がく字状をなす変曲部を有し、
前記変曲部より前記先端寄りの領域に前記長手方向を谷長手方向とする湾曲部を有することを特徴とする。
【0011】
前記タイタンパー用ビーターにおいては、前記尖り部の先端に、前記基端側に向かって凹んだ形状の切欠き部を設けることができる。
【0012】
前記タイタンパー用ビーターにおいては、前記尖り部の両側縁部を、それぞれ拡幅方向に凸をなす曲線形状にすることができる。
【0013】
前記タイタンパー用ビーターにおいては、前記変曲部を挟んで対向する前記基端側の前記同幅部と前記先端側の前記同幅部との成す角度を150度~163度とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、列車走行、雨水、気候などの影響によって劣化、粉泥化し、固結した道床であっても容易に搗き固めすることができるタイタンパー用ビーターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態であるタイタンパー用ビーターを示す正面図である。
図2図1中の矢線A方向から見たタイタンパー用ビーターの側面図である。
図3図1中のB-B線で切断したタイタンパー用ビーターの端面図である。
図4図1に示すタイタンパー用ビーターをタイタンパーに取り付けた状態を示す図である。
図5図1に示すタイタンパー用ビーターの搗き固め性能の検証方法を示す説明図である。
図6】本発明のその他の実施形態であるタイタンパー用ビーターを示す正面図である。
図7】(a)は従来のタイタンパー用ビーターを示す側面図であり、(b)は前記タイタンパー用ビーターの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1図6に基づいて、本発明の実施形態であるタイタンパー用ビーター10,20についてについて説明する。なお、以下の説明において「タイタンパー用ビーター」を「ビーター」と略記することがある。
【0017】
初めに、図1図5に基づいてタイタンパー用ビーター10について説明する。図1図3に示すように、ビーター10は、短冊状の平板材の長手方向Lの基端10bから先端10aに向かってテーパ部11、同幅部12並びに尖り部13を備えている。
【0018】
テーパ部11は、基端10bから先端10aまでの長さの半分の位置よりも先端寄りの位置まで、基端10bから先端10aに向かって連続的に拡幅した形状をなしている。同幅部12はテーパ部11の最大幅部11aから先端10aに向かって全幅Wが一定の形状をなしている。尖り部13は、同幅部12の先端10a寄りの位置11bから先端10aに向かって連続的に縮幅した形状をなしている。
【0019】
図2に示すように、同幅部12は、側面視形状がく字状をなす変曲部12aを有している。ビーター10においては、変曲部12aを挟んで対向する基端10b側の同幅部12と先端10a側の同幅部12との成す角度Rは150度に設定しているが、これに限定しないので、150度~163度の範囲内で任意に設定することができる。
【0020】
図1図3に示すように、変曲部12aから先端10a寄りの領域には、長手方向Lを谷長手方向とする湾曲部13aが設けられている。尖り部13の先端10aには、基端10b側に向かってV字状に凹んだ形状の切欠き部14が設けられている。
【0021】
図1に示すように、尖り部13の両側縁部13b,13bは、それぞれ拡幅方向に凸をなす曲線形状(円弧形状)をなしている。テーパ部11には複数のボルト孔15,15が開設されている。
【0022】
図4に示すように、ビーター10の使い方は従来と同様であり、テーパ部11に開設された複数のボルト孔15,15(図1参照)に、タイタンパーTのボルト16,16を挿通するように取り付け、ボルト16,16にナット17,17を螺着することにより、着脱可能に固定される。
【0023】
ここで、図4図5に基づいて、ビーター10の搗き固め性能の検証方法並びに検証結果について説明する。図4に示すようにビーター10が取り付けられたタイタンパーTを、バラスト(天然砕石)が敷設された道床Gの表面にビーター10の先端10aを接地させた起立姿勢で保持する。このとき、ビーター10のテーパ部11は鉛直方向と平行をなしている。また、ビーター10の先端10aから基端10b側に150mm離れた位置にマーキングMが付されている。
【0024】
このあと、図4図5の起立姿勢を保持した状態でタイタンパーTを作動させ、タイタンパーT(ビーター10を含む)の自重で、ビーター10の先端10a側がマーキングMの位置まで道床Gに埋まり込むのに要する時間を測定したところ、5秒という結果が得られた。
【0025】
一方、図7に示す、従来のビーター70について、前述した検証方法と同様の方法で検証を行ったところ、先端72から基端71側の150mmの位置まで道床に埋まり込むのに要する時間が25秒という結果が得られた。
【0026】
検証結果を比較すると、従来のビーター70が先端72から150mmの位置まで埋まり込むのに25秒を要していたのに対し、ビーター10の場合は、5秒で先端10aから150mmの位置まで埋まり込むので、ビーター70よりもビーター10の方が、搗き固め性能が大幅に優れていることが分かる。
【0027】
また、ビーター10は、その先端10aに切欠き部14を有しているため、バラスト(砕石)を掴む性能も優れており、湾曲部13aは包み込んだバラスト(砕石)が側縁部13bから零れるのを防止することができることも分かった。また、切欠き部14は、バラストを掴む作用だけでなく、搗き固め作業中にビーター10が弾き飛ばされるのを防止する作用も発揮するので、狙った場所に振動を集中的に伝達し、締め固めることができる。
【0028】
従って、ビーター10は、列車走行、雨水、気候などの影響によって劣化、粉泥化し、固結した道床であっても容易に搗き固めすることができるだけでなく、鋼製まくらぎの内部へバラストを挿入する作業も容易に且つ効率的に行うことができる。
【0029】
次に、図6に基づいて、本発明のその他の実施形態であるタイタンパー用ビーター20について説明する。なお、図6に示すビーター20を構成する部分において前述したビーター10と共通する部分については、図1図3中に示す符号と同じ符号を付して説明を省略する。
【0030】
図6に示すように、ビーター20の基端20bから尖り部13までの概略形状は、図1に示すビーター10と同様であるが、ビーター20の先端20aには、ビーター10の切欠き部14に相当するものが存在せず、先端20aは尖った形状をなしている。
【0031】
図6に示すビーター20の搗き固め性能について、図4図5に示した検証方法に基づいて検証したところ、先端20aから150mm基端20b側寄りの位置まで道床に埋まり込むのに要する時間が4~5秒という結果が得られた。詳しくは、ビーター20において、図2に示す角度Rに相当する角度を150度に設定したとき前記時間は4秒であり、前記角度を163度に設定したとき前記時間は5秒であった。
【0032】
前述した検証方法による検証結果を見ると、ビーター20は切欠き部14(図1参照)を有していないので、ビーター10に比べ、バラストを掴む機能が若干低い面があるものの、ビーター70に比べると、ビーター20の方が、搗き固め性能が大幅に優れていることが分かる。
【0033】
よって、ビーター20は、列車走行、雨水、気候などの影響によって劣化、粉泥化し、固結した道床であっても容易に搗き固めすることができ、また、鋼製まくらぎの内部へバラストを挿入する作業も比較的容易に且つ効率的に行うことができる。
【0034】
なお、図1図6に基づいて説明したタイタンパー用ビーター10,20は、本発明に係るタイタンパー用ビーターを例示するものであり、本発明に係るタイタンパー用ビーターは前述したタイタンパー用ビーター10,20に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係るタイタンパー用ビーターは、鉄道の道床の整備作業や鋼製まくらぎ内のバラスト充填作業などを行う土木建設作業の分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10,20 タイタンパー用ビーター
10a,20a 先端
10b,20b 基端
11 テーパ部
11a 最大幅部
11b 先端寄りの位置
12 同幅部
12a 変曲部
13 尖り部
13a 湾曲部
13b 側縁部
14 切欠き部
15 ボルト孔
16 ボルト
17 ナット
G 道床
L 長手方向
M マーキング
R 角度
T タイタンパー
W 全幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7