(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】触覚提示装置、触覚提示システム及び触覚提示方法
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20220328BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20220328BHJP
G09B 21/00 20060101ALI20220328BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20220328BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G09B29/10 A
G09B21/00 B
G06F3/01 560
G06F3/041 480
(21)【出願番号】P 2018534283
(86)(22)【出願日】2017-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2017022508
(87)【国際公開番号】W WO2018034054
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2016161028
(32)【優先日】2016-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(73)【特許権者】
【識別番号】501431073
【氏名又は名称】ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(72)【発明者】
【氏名】小野 彰
(72)【発明者】
【氏名】横山 諒
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 哲也
(72)【発明者】
【氏名】竹中 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】村上 亮介
(72)【発明者】
【氏名】林 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】安部 美緒子
(72)【発明者】
【氏名】武内 良輔
(72)【発明者】
【氏名】大野 和俊
(72)【発明者】
【氏名】村松 成治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲也
【審査官】鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-321324(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151380(WO,A1)
【文献】特開2011-215929(JP,A)
【文献】特開2004-309962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00-10
G09B 21/00
G06F 3/01-0489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触覚提示装置であって、
空間にマッピングされた情報であるマッピング情報を取得するマッピング情報取得部と、
検知対象領域を設定し、前記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値以上か否かを判定する領域検知部と、
前記領域検知部による判定結果に基づいてユーザに提示する触覚を算出する触覚演算部と
、
前記触覚提示装置の位置を検出する位置検出部と、
前記触覚提示装置の姿勢を検出する姿勢検出部と、
ユーザに、前記触覚提示装置が所定方向に引っ張られているという感覚を生じさせる振
動を発生させる触覚提示部と
を具備
し、
前記触覚演算部は、前記触覚提示装置の位置を中心とする一定領域を前記検知対象領域とし、前記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値未満である場合、目的地に向かう方向を前記所定方向として決定し、前記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値以上である場合、前記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値未満となる方向を前記所定方向として決定する
触覚提示装置。
【請求項2】
触覚提示装置を含む触覚提示システムであって、
空間にマッピングされた情報であるマッピング情報を取得するマッピング情報取得部と、
検知対象領域を設定し、前記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値以上か否かを判定する領域検知部と、
前記領域検知部による判定結果に基づいてユーザに提示する触覚を算出する触覚演算部と
、
前記触覚提示装置の位置を検出する位置検出部と、
前記触覚提示装置の姿勢を検出する姿勢検出部と、
ユーザに、前記触覚提示装置が所定方向に引っ張られているという感覚を生じさせる振
動を発生させる触覚提示部と
を具備
し、
前記触覚演算部は、前記触覚提示装置の位置を中心とする一定領域を前記検知対象領域とし、前記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値未満である場合、目的地に向かう方向を前記所定方向として決定し、前記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値以上である場合、前記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値未満となる方向を前記所定方向として決定する
触覚提示システム。
【請求項3】
触覚提示装置を用いる触覚提示方法であって、
マッピング情報取得部が、空間にマッピングされた情報であるマッピング情報を取得し、
領域検知部が、検知対象領域を設定し、前記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値以上か否かを判定し、
触覚演算部が、前記領域検知部による判定結果に基づいてユーザに提示する触覚を算出
し、
位置検出部が、前記触覚提示装置の位置を検出し、
姿勢検出部が、前記触覚提示装置の姿勢を検出し、
触覚提示部が、ユーザに、前記触覚提示装置が所定方向に引っ張られているという感覚を生じさせる振動を発生させ、
前記触覚演算部はさらに、前記触覚提示装置の位置を中心とする一定領域を前記検知対象領域とし、前記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値未満である場合、目的地に向かう方向を前記所定方向として決定し、前記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値以上である場合、前記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値未満となる方向を前記所定方向として決定する
触覚提示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、触覚によってユーザに情報を提示する触覚提示装置、触覚提示システム及び触覚提示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、視覚や聴覚等の従来の情報伝達手段に代えて、触覚による情報伝達についての開発が進んでいる。例えば、特許文献1には、仮想空間上に形成される立体オブジェクトを触覚によりユーザに伝達するための触覚伝達装置が開示されている。
【0003】
また、情報伝達の対象として所定の環境を再現する技術が開発されている。例えば特許文献2には、遠隔地での様々の環境における特徴を環境情報として抽出し、所定の空間設備に出力する環境情報の出力制御技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-79206号公報
【文献】特開2008-4023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1において仮想空間上に形成される立体オブジェクトは表面テクスチャを含む物体形状とされている。また、引用文献2において環境技術は映像、音、風向及び風速等である。一方で、空間にマッピングされた情報を視聴覚に頼らずに提示することができれば利便性が高い。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、空間にマッピングされた情報を視聴覚に頼らずに提示することが可能な触覚提示装置、触覚提示システム及び触覚提示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る触覚提示装置は、マッピング情報取得部と、領域検知部と、触覚演算部とを具備する。
上記マッピング情報取得部は、空間にマッピングされた情報であるマッピング情報を取得する。
上記領域検知部は、検知対象領域を設定し、上記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値以上か否かを判定する。
上記触覚演算部は、上記領域検知部による判定結果に基づいてユーザに提示する触覚を算出する。
【0008】
この構成によれば、検知対象領域に含まれるマッピング情報(例えば、花粉飛散量)が閾値以上か否かの判定結果に応じて触覚演算部がユーザに提示する触覚を算出する。これにより、ユーザは検知対象領域のマッピング情報が閾値以上となったことを触覚提示装置から提示される触覚によって把握することが可能となる。
【0009】
上記触覚演算部は、上記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値以上の場合にはユーザに触覚を提示し、上記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値未満の場合にはユーザに触覚を提示しなくてもよい。
【0010】
この構成によれば、検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値未満の場合にはユーザに触覚が提示されないため、マッピング情報による影響が小さい場合にはユーザがマッピング情報に気を留める必要がなくなる。
【0011】
上記触覚演算部は、上記検知対象領域に含まれる閾値以上のマッピング情報と閾値の差異に応じて、ユーザに提示する触覚を算出してもよい。
【0012】
この構成によれば、マッピング情報の大きさによってユーザに提示される触覚(振幅、周波数、振動パターン等)が決定されるため、ユーザは触覚によってマッピング情報の大小を把握することが可能となる。
【0013】
上記触覚提示装置は、
上記触覚提示装置の位置を検出する位置検出部をさらに具備し、
上記触覚演算部は、上記触覚提示装置の位置を中心とする一定領域を上記検知対象領域としてもよい。
【0014】
この構成によれば、検知対象領域を触覚提示装置を中心とする一定領域とすることができる。
【0015】
上記触覚提示装置は、上記触覚提示装置の姿勢を検出する姿勢検出部をさらに具備し、
上記触覚演算部は、上記検知対象領域に含まれる閾値以上のマッピング情報と上記触覚提示装置の姿勢に基づいてユーザに提示する触覚を算出してもよい。
【0016】
この構成によれば、触覚提示装置の姿勢から触覚提示装置に対するマッピング情報の方向を算出することができ、マッピング情報の方向に応じた触覚をユーザに提示することが可能となる。
【0017】
上記触覚提示装置は、ユーザに、上記触覚提示装置が所定方向に引っ張られているという感覚を生じさせる振動を発生させる触覚提示部をさらに具備し、
上記触覚演算部は、上記検知対象領域に含まれるマッピング情報が上記閾値以上の場合には、上記触覚提示装置に対する上記マッピング情報の方向と上記触覚提示装置の姿勢に基づいて上記所定方向を決定してもよい。
【0018】
この構成によれば、検知対象領域に含まれる閾値以上のマッピング情報の方向を、触覚提示装置が所定方向に引っ張られているという感覚(力覚)によってユーザに提示することが可能となる。
【0019】
上記触覚演算部は、上記触覚提示装置に対する上記マッピング情報の方向を上記所定方向として決定してもよい。
【0020】
この構成によれば、検知対象領域に含まれる閾値以上のマッピング情報の方向に向かう力覚がユーザに提示されるため、ユーザは力覚によって閾値以上のマッピング情報の方向を把握することが可能となる。
【0021】
上記触覚演算部は、上記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値未満となる方向を上記所定方向として決定してもよい。
【0022】
この構成によれば、マッピング情報が閾値未満となる方向に向かう力覚がユーザに提示されるため、ユーザは力覚によってマッピング情報が閾値以上となる方向を避けることが可能となる。
【0023】
上記マッピング情報は第1のマッピング情報と第2のマッピング情報を含み、
上記触覚演算部は、上記検知対象領域に含まれる上記第1のマッピング情報が閾値以上の場合には第1の触覚をユーザに提示する触覚として算出し、上記検知対象領域に含まれる上記第2のマッピング情報が閾値以上の場合には第2の触覚をユーザに提示する触覚として算出してもよい。
【0024】
この構成によれば、ユーザは触覚の種類によって複数種のマッピング情報(例えば、花粉飛散量と紫外線量)のいずれが閾値以上となっているかを判別することが可能となる。
【0025】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る触覚提示システムは、マッピング情報取得部と、領域検知部と、触覚演算部とを具備する。
上記マッピング情報取得部は、空間にマッピングされた情報であるマッピング情報を取得する。
上記領域検知部は、検知対象領域を設定し、上記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値以上か否かを判定する。
上記触覚演算部は、上記領域検知部による判定結果に基づいてユーザに提示する触覚を算出する。
【0026】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る触覚提示方法は、マッピング情報取得部が、空間にマッピングされた情報であるマッピング情報を取得する。
領域検知部が、検知対象領域を設定し、上記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値以上か否かを判定する。
触覚演算部が、上記領域検知部による判定結果に基づいてユーザに提示する触覚を算出する。
【発明の効果】
【0027】
以上のように本技術によれば、空間にマッピングされた情報を視聴覚に頼らずに提示することが可能な触覚提示装置、触覚提示システム及び触覚提示方法を提供することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本技術の実施形態に係る触覚提示装置の斜視図である。
【
図2】同触覚提示装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】同触覚提示装置が備えるマッピング情報取得部が取得するマッピング情報の例である。
【
図4】同触覚提示装置が備える領域検知部が設定する検知対象領域の模式図である。
【
図5】同触覚提示装置が備えるマッピング情報取得部が取得するマッピング情報の例である。
【
図6】同触覚提示装置が備える領域検知部による領域検知の模式図である。
【
図7】同触覚提示装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】同触覚提示装置が備える触覚演算部の動作を示す模式図である。
【
図9】同触覚提示装置が備える触覚演算部の動作を示す模式図である。
【
図10】同触覚提示装置が備える触覚演算部の動作を示す模式図である。
【
図11】同触覚提示装置のハードウェア構成を示すブロック図である
【発明を実施するための形態】
【0029】
[触覚提示装置の構成]
図1は、本実施形態に係る触覚提示装置100の斜視図である。触覚提示装置100は、スマートフォン、タブレット型PC又はヘッドマウントディスプレイ等の可搬性を有する装置であって、後述する機能的構成を実現できるものであればよい。以下、触覚提示装置100はスマートフォンであるものとして説明する。
【0030】
同図に示すように、触覚提示装置100はディスプレイ110を備える。この他に触覚提示装置100は図示しないボタン等を備えていてもよい。
【0031】
図2は、触覚提示装置100の機能的構成を示すブロック図である。同図に示すように触覚提示装置100は機能的構成として、マッピング情報取得部101、位置検出部102、姿勢検出部103、領域検知部104、触覚演算部105及び触覚提示部106を備える。
【0032】
マッピング情報取得部101は、マッピング情報を取得する。マッピング情報は、空間上又は平面上の特定の位置に関連付けられた情報である。
図3はマッピング情報の例であり、特定時刻における各地点の花粉飛散量を示す。
【0033】
この他にもマッピング情報として電波強度、降雨、埃、放射能、紫外線、日射量、風量といった環境の密度や、電車内の混み具合、電車の走行位置等の物の密度、人の混雑具合、居場所、視線、会話といった人の密度、盛り上がり具合、高揚感、鎮静感といった感情の密度等が挙げられる。
【0034】
図2に示すようにマッピング情報取得部101は、ネットワークを経由したクラウド情報からマッピング情報を取得してもよく、触覚提示装置100が備えるセンサの出力からマッピング情報を取得してもよい。この他にもマッピング情報取得部101は各種の手段によってマッピング情報を取得するものとすることができる。マッピング情報取得部101は、取得したマッピング情報を領域検知部104に供給する。
【0035】
位置検出部102は、触覚提示装置100の位置を検出する。位置検出部102はGPS(Global Positioning System)を利用して触覚提示装置100の位置を検出することができる。また、位置検出部102は、Wi-Fi等を利用して触覚提示装置100の位置を検出してもよい。触覚提示装置100の位置は三次元座標(例えば、経度、緯度及び標高)であってもよく、二次元座標(例えば、経度及び緯度)であってもよい。位置検出部102は検出した触覚提示装置100の位置を領域検知部104に供給する。
【0036】
姿勢検出部103は、触覚提示装置100の姿勢を検出する。姿勢検出部103は、地磁気センサや加速度センサの出力から触覚提示装置100の姿勢を検出することができる。姿勢検出部103は検出した触覚提示装置100の姿勢を領域検知部104に供給する。
【0037】
領域検知部104は、検知対象領域を設定する。
図4は、検知対象領域Rを示す模式図である。同図に示すように、領域検知部104は、触覚提示装置100の位置Pを中心とする半径raの円内を検知対象領域Rとすることができる。時刻(t)における触覚提示装置100の位置及び姿勢を姿勢位置(x,y,z、θ)(t)とする。
【0038】
半径raは特に限定されず、ユーザが設定してもよく、領域検知部104がマッピング情報の種類等に応じて決定してもよい。また、検知対象領域Rは必ずしも円形である必要はない。さらに検知対象領域Rは、触覚提示装置100を中心とする領域でなくてもよく、ユーザ又は領域検知部104が指定した特定地点を中心とする領域であってもよい。
【0039】
領域検知部104は、さらに検知対象領域Rに含まれるマッピング情報が閾値以上か否かを判定する。
図5は、位置(X,Y,Z)の時刻(t)おけるマッピング情報、f(X,Y,Z)(t)を示す模式図である。
【0040】
閾値は、ユーザによって指定されるか、又は予め設定された特定の値である。閾値が0の場合、
図5(a)及び(b)において斜線で示すf(X,Y,Z)(t)≧0の領域が閾値を超えるマッピング情報の領域である。
【0041】
図6は、検知対象領域Rとマッピング情報を示す模式図である。領域検知部104は、
図6に示すように、検知対象領域R内のマッピング情報が閾値以上、即ちf(X,Y,Z)(t)≧0の条件が満たされるか否かを判定する。領域検知部104は、判定結果を触覚演算部105に供給する。
【0042】
触覚演算部105は、領域検知部104による判定結果に基づいてユーザに提示する触覚を算出し、算出した触覚を提示するように触覚提示部106を制御する。
【0043】
具体的には触覚演算部105は、検知対象領域Rに含まれるマッピング情報が閾値以上の場合にはユーザに触覚を提示し、検知対象領域Rに含まれるマッピング情報が閾値未満の場合にはユーザに触覚を提示しないようにすることができる。
【0044】
また触覚演算部105は、検知対象領域R内のマッピング情報の大きさ等に応じて触覚を算出してもよい。具体的には触覚演算部105は、検知対象領域R内のマッピング情報が閾値より十分大きければ触覚を大きくし、検知対象領域R内のマッピング情報が閾値に近ければ触覚を小さくすることができる。触覚の大きさは、触覚提示部106の振動強度、振動方向、周波数、振動パターン等によって調整することができる。
【0045】
触覚提示部106は、触覚演算部105によって算出された触覚をユーザに提示する。触覚提示部106は、触覚提示装置100が特定の方向に引っ張られているという感覚(力覚)を生じさせることが可能な力覚提示デバイス(WO/2015/151380参照)とすることができる。また、触覚提示部106は、回転によって振動を生じる偏芯モーター、あるいは並進によって振動を生じるリニアアクチュエータであってもよい。この他にも触覚提示部106は、ユーザに触覚を提示可能なものであればよい。
【0046】
触覚演算部105は、触覚提示装置100に対するマッピング情報の方向に応じて触覚を提示する方向を算出してもよい。触覚演算部105は例えば、
図6に矢印で示すように、検知対象領域Rにおける閾値以上のマッピング情報の方向を力覚によってユーザに提示してもよい。また、触覚演算部105は検知対象領域Rにおける閾値以上のマッピング情報の方向に基づいて、この方向とは異なる方向を力覚によってユーザに提示してもよい。例えば触覚演算部105は、検知対象領域Rにおける閾値以上のマッピング情報とは逆の方向をユーザに提示することができる。
【0047】
[触覚提示装置の動作]
触覚提示装置100の動作について説明する。
図7は触覚提示装置100の動作を示すフローチャートである。
【0048】
同図に示すように、触覚提示装置100が動作を開始すると、マッピング情報取得部101がマッピング情報f(X,Y,Z)(t)を取得する(St101)。
【0049】
続いて、位置検出部102及び姿勢検出部103が触覚提示装置100の姿勢位置(x,y,z,θ)(t)を検出する(St102)。
【0050】
続いて、領域検知部104は領域検知を行う(St103)。検知対象領域Rに含まれるマッピング情報が閾値以上の場合(St103:Yes)、触覚演算部105は、ユーザに提示される触覚を算出し(St104)、触覚提示部106に提示させる(St105)。検知対象領域Rに含まれるマッピング情報が閾値未満の場合(St103:No)、触覚演算部105はユーザに触覚を提示しないように決定する。
【0051】
触覚演算部105は、検知対象領域Rに含まれるマッピング情報の大きさに応じて触覚を算出してもよい。触覚演算部105は例えば、検知対象領域Rの移動に伴って検知対象領域Rに含まれるマッピング情報が次第に大きくなれば触覚を漸増させてもよく、検知対象領域Rに含まれるマッピング情報が次第に小さくなれば触覚を漸減させてもよい。
【0052】
触覚提示装置100は時刻(t)のn秒後となる時刻(t+n)において上記処理を繰り返す。触覚提示装置100は以上のように動作する。
【0053】
図8は、触覚提示装置100の動作例を示す模式図である。同図に示すように時刻(t)においては、マッピング情報f(X,Y,Z)(t)は検知対象領域Rの領域外であって値も小さいため、触覚演算部105は触覚を提示しないように決定する。
【0054】
ユーザ及び触覚提示装置100が移動し、時刻(t+n)においてはマッピング情報f(X,Y,Z)(t+n)は検知対象領域Rの領域内において閾値より大きいため、触覚演算部105は触覚を算出し、触覚提示部106によって触覚が提示される。
【0055】
また、時刻(t)から時刻(t+n)の間ではマッピング情報が次第に増加しているため、触覚演算部105は触覚を漸増させることができる。さらに、触覚演算部105は触覚提示装置100の姿勢(θ)を触覚演算に加味することもできる。例えば、触覚演算部105はユーザの進行方向に対してマッピング情報が増加する場合には進行方向とは逆方向に向かう力覚を提示することができる。
【0056】
触覚提示装置100は以上のような動作を行う。上記のようにマッピング情報が触覚によってユーザに提示されるため、ユーザは視聴覚に頼らずにマッピング情報を把握することが可能となる。
【0057】
なお、姿勢検出部103による姿勢検出は上記のように位置検出と同時に行ってもよいが、検知対象領域Rに含まれるマッピング情報が閾値以上の場合(St103:Yes)と判定された後で触覚演算(St104)の前に行ってもよい。
【0058】
[ナビゲーションについて]
図9は、力覚提示によるナビゲーションの例を示す模式図である。位置(X,Y,Z)、時刻(t)におけるマッピング情報がf(X,Y,Z)(t)であり、時刻(t)における触覚提示装置100の姿勢位置が(x,y,z,θ)(t)である場合において、検知対象領域Rにおけるマッピング情報が閾値以上(f(X,Y,Z)(t)≧0)となることを避けながら、A地点からB地点までナビゲーションを行うとする。
【0059】
図中、黒矢印は触覚提示装置100に対してマッピング情報が閾値以上となる方向を示し、図中、白矢印は触覚提示部106によって提示される力覚の方向(ナビゲーション方向)を示す。
【0060】
時刻(t0)では、検知対象領域R内でマッピング情報が閾値未満となるため、A地点からB地点に向かう方向(白矢印)が触覚演算部105によって算出される。
【0061】
時刻(t1)では検知対象領域R内でマッピング情報が閾値以上となるため、マッピング情報が閾値以上となることを避ける方向(白矢印)が触覚演算部105によって算出される。マッピング情報が閾値以上となることを避ける方向(白矢印)は例えば、マッピング情報が閾値以上となる方向(黒矢印)に対して一定角度以上相違した方向である。
【0062】
時刻(t2)から時刻(t4)では同様に、目的地であるB地点の情報を加味し、マッピング情報が閾値以上となることを避ける方向(白矢印)が触覚演算部105によって算出される。このようにして時刻(t5)には触覚提示装置100及びユーザはB地点に到達する。A地点からB地点の間にマッピング情報が閾値以上となる領域があっても、この領域を避けながらユーザを誘導することが可能である。
【0063】
[複数種のマッピング情報について]
触覚提示装置100は、複数種のマッピング情報にも対応可能である。
図10は、2種のマッピング情報及び検知対象領域Rを示す模式図である。マッピング情報Aは例えば紫外線量、マッピング情報Bは例えば花粉飛散量である。
【0064】
図10(a)に示すように時刻(t)においては、マッピング情報Aが検知対象領域R内で閾値以上(fa(X,Y,Z)(t)≧0)であるため、触覚提示部106による触覚提示がなされている。
【0065】
その後、触覚提示装置100が移動し、
図10(b)に示すように時刻(t+n)において、検知対象領域R内でマッピング情報Bが閾値以上(fb(X,Y,Z)(t+n)≧0)となると、触覚提示部106による触覚提示がなされる。
【0066】
触覚演算部105は、マッピング情報Aとマッピング情報Bについてそれぞれ異なる触覚を算出し、触覚提示部106に提示させることができる。異なる触覚としては例えばマッピング情報Aに対しては低周波数の触覚、マッピング情報Bに対しては高周波数の触覚が挙げられる。これによりユーザは、触覚の種類によってマッピング情報の種類を把握することが可能である。
【0067】
例えばマッピング情報Aが紫外線量、マッピング情報Bが花粉飛散量である場合には低周波数数の触覚が提示されることにより、ユーザは紫外線量が閾値以上であることを認識することができる。その後に高周波数の触覚が提示されることにより、ユーザは花粉飛散量も閾値以上となったことを認識することができる。なお、マッピング情報の種類は2種類に限られず、3種類以上であってもよい。
【0068】
[マッピング情報の検出方法]
上記のようにマッピング情報取得部101は、クラウド情報やセンサの出力からマッピング情報を取得することができる。種々のマッピング情報の検出方法としては、環境の密度であれば電波強度は電磁界を用いた測定方法によって測定することができ、花粉飛散量や塵埃飛散量は散乱光強度と偏光度を用いた測定方法によって測定することができる。
【0069】
また、降雨量は静電容量の検知、フォトカプラ透過を用いた測定方法によって測定することができ、放射線量はガイガーミュラー管、シンチレーション式検出器又はPINフォトダイオードによって測定することができる。風量は風量計を用いた測定方法によって測定することができる。
【0070】
物の密度では電車の混み具合や走行位置は鉄道各線の公式情報又はユーザ投稿等から取得することができる。人の密度では混雑具合や居場所等はユーザ投稿やID登録による特定のユーザに限定した投稿等から取得することができる。
【0071】
感情の密度では高揚感や鎮静感は脳波を利用した人体状態のセンシングやウェアラブル心拍数との連携等によって検出することができる。
【0072】
マッピング情報は、ここに示すものに限られず、空間上又は平面上の特定の位置に関連付けられた情報であればよい。またマッピング情報はユーザによる指定等に応じてマッピング情報取得部101が生成することも可能である。
【0073】
[ハードウェア構成]
図11は、触覚提示装置100のハードウェア構成を示す模式図である。同図に示すように触覚提示装置100はハードウェア構成として、CPU151、GPU152、メモリ153、ストレージ154及び入出力部(I/O)155を有する。これらはバス156によって互いに接続されている。
【0074】
CPU(Central Processing Unit)151は、メモリ153に格納されたプログラムに従って他の構成を制御すると共に、プログラムに従ってデータ処理を行い、処理結果をメモリ153に格納する。CPU151はマイクロプロセッサとすることができる。
【0075】
GPU(Graphic Processing Unit)152は、CPU151による制御を受けて、画像処理を実行する。CPU151はGPU152に並列演算処理を実行させ、特徴量の抽出を高速に行うことが可能である。GPU152はマイクロプロセッサとすることができる。
【0076】
メモリ153はCPU151によって実行されるプログラム及びデータを格納する。メモリ153はRAM(Random Access Memory)とすることができる。
【0077】
ストレージ154は、プログラムやデータを格納する。ストレージ154はHDD(hard disk drive)やSSD(solid state drive)とすることができる。
【0078】
入出力部155は触覚提示装置100に対する入力を受け付け、また触覚提示装置100の出力を外部に供給する。入出力部155は、キーボードやマウス等の入力機器やディスプレイ等の出力機器、ネットワーク等の接続インターフェイスを含む。
【0079】
また、入出力部155にはGPSモジュール、加速度センサ及び地磁気センサ等の、上述した触覚提示装置100の機能的構成を実現するための図示しないハードウェアが接続されている。
【0080】
触覚提示装置100のハードウェア構成はここに示すものに限られず、触覚提示装置100の機能的構成を実現できるものであればよい。また、上記ハードウェア構成の一部又は全部はネットワーク上に存在していてもよい。
【0081】
[触覚提示システム]
上述した触覚提示装置100の機能的構成は、相互に接続された複数の装置からなる触覚提示システムによって実現されてもよい。例えば、位置検出部102、姿勢検出部103及び触覚提示部106を備える触覚提示装置と、マッピング情報取得部101、領域検知部104及び触覚演算部105を備える情報処理装置から構成された触覚提示システムによって上述した触覚提示装置100の機能的構成が実現されてもよい。
【0082】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
【0083】
(1)
空間にマッピングされた情報であるマッピング情報を取得するマッピング情報取得部と、
検知対象領域を設定し、上記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値以上か否かを判定する領域検知部と、
上記領域検知部による判定結果に基づいてユーザに提示する触覚を算出する触覚演算部と
を具備する触覚提示装置。
【0084】
(2)
上記(1)に記載の触覚提示装置であって、
上記触覚演算部は、上記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値以上の場合にはユーザに触覚を提示し、上記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値未満の場合にはユーザに触覚を提示しない
触覚提示装置。
【0085】
(3)
上記(2)に記載の触覚提示装置であって、
上記触覚演算部は、上記検知対象領域に含まれる閾値以上のマッピング情報と閾値の差異に応じて、ユーザに提示する触覚を算出する
触覚提示装置。
【0086】
(4)
上記(1)から(3)のうちいずれか一つに記載の触覚提示装置であって、
上記触覚提示装置の位置を検出する位置検出部をさらに具備し、
上記触覚演算部は、上記触覚提示装置の位置を中心とする一定領域を上記検知対象領域とする
触覚提示装置。
【0087】
(5)
上記(4)に記載の触覚提示装置であって、
上記触覚提示装置の姿勢を検出する姿勢検出部をさらに具備し、
上記触覚演算部は、上記検知対象領域に含まれる閾値以上のマッピング情報と上記触覚提示装置の姿勢に基づいてユーザに提示する触覚を算出する
触覚提示装置。
【0088】
(6)
上記(5)に記載の触覚提示装置であって、
ユーザに、上記触覚提示装置が所定方向に引っ張られているという感覚を生じさせる振動を発生させる触覚提示部をさらに具備し、
上記触覚演算部は、上記検知対象領域に含まれるマッピング情報が上記閾値以上の場合には、上記触覚提示装置に対する上記マッピング情報の方向と上記触覚提示装置の姿勢に基づいて上記所定方向を決定する
触覚提示装置。
【0089】
(7)
上記(6)に記載の触覚提示装置であって、
上記触覚演算部は、上記触覚提示装置に対する上記マッピング情報の方向を上記所定方向として決定する
触覚提示装置。
【0090】
(8)
上記(6)に記載の触覚提示装置であって、
上記触覚演算部は、上記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値未満となる方向を上記所定方向として決定する
触覚提示装置。
【0091】
(9)
上記(1)から(8)のうちいずれか一つに記載の触覚提示装置であって、
上記マッピング情報は第1のマッピング情報と第2のマッピング情報を含み、
上記触覚演算部は、上記検知対象領域に含まれる上記第1のマッピング情報が閾値以上の場合には第1の触覚をユーザに提示する触覚として算出し、上記検知対象領域に含まれる上記第2のマッピング情報が閾値以上の場合には第2の触覚をユーザに提示する触覚として算出する
触覚提示装置。
【0092】
(10)
空間にマッピングされた情報であるマッピング情報を取得するマッピング情報取得部と、
検知対象領域を設定し、上記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値以上か否かを判定する領域検知部と、
上記領域検知部による判定結果に基づいてユーザに提示する触覚を算出する触覚演算部と
を具備する触覚提示システム。
【0093】
(11)
マッピング情報取得部が、空間にマッピングされた情報であるマッピング情報を取得し、
領域検知部が、検知対象領域を設定し、上記検知対象領域に含まれるマッピング情報が閾値以上か否かを判定し、
触覚演算部が、上記領域検知部による判定結果に基づいてユーザに提示する触覚を算出する
触覚提示方法。
【符号の説明】
【0094】
100…情報処理装置
101…マッピング情報取得部
102…位置検出部
103…姿勢検出部
104…領域検知部
105…触覚演算部
106…触覚提示部