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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】タグ付き掘削エレメント
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/28 20060101AFI20220328BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20220328BHJP
   G21G 4/00 20060101ALI20220328BHJP
   G21H 5/00 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
E02F9/28 A
E02F9/26 A
G21G4/00
G21H5/00 M
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2018545435
(86)(22)【出願日】2017-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-09
(86)【国際出願番号】 IB2017051058
(87)【国際公開番号】W WO2017149417
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-07
(31)【優先権主張番号】1603473.8
(32)【優先日】2016-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511136544
【氏名又は名称】ザ・サウス・アフリカン・ニュークリア・エナジー・コーポレーション・(エスオーシー)・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドリース・エリアス・ヒルズ
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブス・ダニエル・アデンドルフ
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-146767(JP,A)
【文献】国際公開第2012/116408(WO,A1)
【文献】米国特許第05015847(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0284935(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/28
E02F 9/26
E02F 3/40
G21G 4/00
G21H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タグ付き掘削エレメントであって、
掘削エレメント本体と、
前記掘削エレメント本体に固定可能なタグ付けデバイスと、
を含んでなり、前記タグ付けデバイスが放射性供給源を含むことを特徴とするタグ付き掘削エレメント。
【請求項2】
前記タグ付けデバイスが、密封された放射性供給源の形態であることを特徴とする、請求項1に記載のタグ付き掘削エレメント。
【請求項3】
密封された前記放射性供給源が、密封された金属製ハウジング内に封入された放射性物質を含んでなることを特徴とする、請求項2に記載のタグ付き掘削エレメント。
【請求項4】
密封された前記金属製ハウジングが、前記掘削エレメント内に設けられた開口部の内側に配置可能であることを特徴とする、請求項3に記載のタグ付き掘削エレメント。
【請求項5】
前記放射性供給源が40日を超え150日未満の半減期を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のタグ付き掘削エレメント。
【請求項6】
前記放射性供給源が80日以上90日未満の半減期を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のタグ付き掘削エレメント。
【請求項7】
前記放射性供給源が放射性金属であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のタグ付き掘削エレメント。
【請求項8】
前記放射性供給源が、300KeVを超え2000KeV未満のエネルギーレベルのガンマ線を放出することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のタグ付き掘削エレメント。
【請求項9】
前記放射性供給源が、850KeVを超え1500KeV以下のエネルギーレベルのガンマ線を放出することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のタグ付き掘削エレメント。
【請求項10】
前記放射性供給源が、スカンジウム(Sc)、タンタル(Ta)、テルビウム(Tb)およびアンチモン(Sb)を含むグループから選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のタグ付き掘削エレメント。
【請求項11】
前記放射性供給源が、元素スカンジウム(Sc)の放射性同位元素であるスカンジウム46(46Sc)であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のタグ付き掘削エレメント。
【請求項12】
前記掘削エレメントが、掘削バケットのシュラウドまたは歯であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のタグ付き掘削エレメント。
【請求項13】
タグ付き掘削エレメントを製造する方法であって、
掘削エレメント本体を提供するステップと、
放射性供給源を提供するステップと、
放射性供給源を前記掘削エレメント本体に固定するステップと、
を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記タグ付けデバイスが、密封された放射性供給源の形態であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
密封された前記放射性供給源が、密封された金属ハウジングに封入された放射性物質を含んでなることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
密封された前記金属ハウジングが、前記掘削エレメント内に設けられた開口部の内側に配置可能であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記放射性供給源が40日を超え150日未満の半減期を有することを特徴とする、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記放射性供給源が80日以上90日未満の半減期を有することを特徴とする、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記放射性供給源が放射性金属であることを特徴とする、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記放射性供給源が、300KeVを超え2000KeV未満のエネルギーレベルのガンマ線を放出することを特徴とする、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記放射性供給源が、850KeVを超え1500KeV以下のエネルギーレベルのガンマ線を放出することを特徴とする、請求項13~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記放射性供給源が、スカンジウム(Sc)、タンタル(Ta)、テルビウム(Tb)およびアンチモン(Sb)を含むグループから選択されることを特徴とする、請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記放射性供給源が元素スカンジウム(Sc)の放射性同位体であるスカンジウム46(46Sc)であることを特徴とする、請求項13~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記掘削エレメントが掘削バケットのシュラウドまたは歯であることを特徴とする、請求項13~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
掘削エレメントの変位を検出する方法であって、
放射性供給源でタグ付けされた掘削エレメントを設けるステップと、
放射線検出器を設けるステップと、
前記掘削エレメントが前記放射線検出器に対して変位したときの放射線の変化を検出するステップと、
を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項26】
前記放射線検出器は、前記掘削エレメントが固定された構造物の一部に取り付けられ、前記掘削エレメントが前記構造物から離れるときに前記放射線検出器が放射線の低下を検出することを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記構造物が掘削装置の本体であることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
1つまたは複数の放射線検出器が前記掘削装置に設けられていることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
掘削された物質が移動する経路に隣接する1つ以上の場所の構造物に前記放射線検出器が取り付けられ、前記掘削エレメントが掘削された前記物質と一緒に移動するときに前記放射線検出器が放射線の増加を検出することを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記構造物が、掘削された前記物質が移動するガントリパストであることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
掘削エレメントの変位の検出に使用される放射性供給源の使用方法。
【請求項32】
前記放射性供給源が、スカンジウム(Sc)、タンタル(Ta)、テルビウム(Tb)およびアンチモン(Sb)を含むグループから選択されることを特徴とする、請求項31に記載の使用方法。
【請求項33】
前記放射性供給源が、元素スカンジウム(Sc)の放射性同位元素であるスカンジウム46(46Sc)であることを特徴とする、請求項31に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タグ付き掘削エレメントに関し、より詳細に、但し排他的ではなく、掘削用バケットのタグ付きシュラウド(shroud)または歯(tooth)に関する。本発明はまた、タグ付き掘削エレメントを製造する方法、およびタグ付き掘削エレメントを検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの形態の掘削装置および機械は、鉱業および建設産業において知られており、大部分の実施形態では、それらは、典型的には、変位可能なシャーシまたは構造体に固定される何らかの種類のグラウンド係合具を備える。掘削用のバケット(bucket)またはスクープ(scoop)は、産業界で頻繁に遭遇するグラウンド係合具の一種であり、掘削される媒体が閉鎖された容器に出入りすることができるオープンサイドを有する部分的に囲まれた容器の形態である。オープンサイドは、刃先から延び、硬質材料を係合して砕くのに適した複数の離間した歯を備えた刃先で典型的には終結する。
【0003】
間隔を置いて配置された歯の間の刃先の露出部分はシュラウドによって覆われているので、刃先、すなわちバケット本体の磨耗を避けることができる。したがって、歯およびシュラウドは、バケットまたはスクープの本体の寿命を延ばすために、バケットまたはスクープの実際の本体を摩耗から保護する交換可能な構成要素(コンポーネント)である。シュラウドと歯の寿命は用途によって異なり、8~12週間の寿命が比較的一般的である。
【0004】
鉱業(マイニング)環境、特にオープンキャスト鉱業で頻繁に遭遇する問題は、鉱石処理中に掘削機のバケットまたはスクープの歯および/またはシュラウドが破損することである。歯および/またはシュラウドは、その後、下流の破砕プラントに閉塞または損傷させ、重大な維持コストおよび速度低下をもたらす可能性がある。さらに、貯蔵された機械的エネルギーにより、シュラウドがその経路上の対象物および人に対し自由に撃ち込むことを可能にするような、重大な安全上の危険が破砕プラントに詰まった金属シュラウドおよび歯の除去に伴う。
【0005】
この問題は、歯およびシュラウドが動作する環境が、ほこりおよび他の視覚的障害の存在に起因して低い可視性と関連しているという事実によって悪化する。さらに、操作の性質上、歯およびシュラウドは長期間にわたって鉱石で覆われ、歯およびシュラウドの目視検査の有効性が低下する。シュラウドの紛失は、シュラウドが掘削用バケットまたはスクープの刃先から突出して立っていないため、さらに目立たない。従って、オペレータの意識向上と警戒感の向上は、この問題に対する十分な解決策ではない。
【0006】
シャベル(shovel)の歯とシュラウドの損失を検出するためにいくつかの方法が提案されているが、既存の方法はすべて満足のいく方法で問題に対処できていない。詳細は異なるが、一般的な欠点は、提案された方法が、シャベルチップが使用中(典型的には8~12週間)である限り、地球を動かす環境の厳しさに耐えるほど頑丈ではないか、十分に有効ではない。さらに、検出装置(例えば、RFID検出)は、効果を発揮させるためにシュラウドと歯の近くに配置することはできない。いくつかの解決策は、歯またはシュラウドが失われたときに視覚的または聴覚的手がかりをさらに生成するが、失われた歯またはシュラウドの位置決めに役立たないのは、実際に歯またはシュラウドにタグを付けることなく、単にこれらの歯またはシュラウドの喪失を示すだけだからである。
【0007】
したがって、本発明の目的は、上記欠点を少なくとも部分的に軽減するタグ付き掘削エレメントを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、タグ付き掘削エレメントを検出するための方法およびシステムを提供することである。
【0009】
また、本発明の目的は、タグ付き掘削エレメントを製造する方法を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、
掘削エレメント本体と、
掘削エレメント本体に固定可能なタグ付けデバイスと、
タグ付けデバイスが放射性供給源(radioactive source)を含んでなることを特徴とするタグ付き掘削エレメントが提供される。
【0011】
タグ付けデバイスは、密封された放射性供給源の形態で構成される。
【0012】
より詳細には、密封された放射性供給源は、密封された金属ハウジングに封入された放射性物質を含み得る。
【0013】
タグ付けデバイス、より詳細には密封された金属ハウジングは、好ましくは、掘削エレメント内に設けられた開口部(aperture)の内側に配置可能である。
【0014】
放射性供給源が150日未満、好ましくは120日未満、より好ましくは90日未満の半減期を有することがさらに求められる。
【0015】
また、放射性供給源が40日を超える、好ましくは60日を超える、より好ましくは80日を超える半減期を有することも求められる。
【0016】
好ましい実施形態において、放射性供給源は放射性金属である。
【0017】
好ましい実施形態では、放射性供給源は、300KeVを超える、好ましくは600KeVを超える、より好ましくは850KeVを超えるエネルギーレベルのガンマ線を放出する。
【0018】
好ましい実施形態では、放射性供給源は、2000KeV未満、好ましくは1700KeV未満、より好ましくは1500KeV未満のエネルギーレベルのガンマ線を放出する。
【0019】
放射性供給源はスカンジウム(Sc)、タンタル(Ta)、テルビウム(Tb)およびアンチモン(Sb)を含むグループから選択することができる。
【0020】
好ましい実施形態では、放射性供給源が元素スカンジウム(Sc)の放射性同位体であり、より詳細には、同位体スカンジウム46(46Sc)であることが求められる。
【0021】
また、放射性供給源が、タンタル182(182Ta)、テルビウム160(160Tb)およびアンチモン124(124Sb)を含む放射性同位体のグループから選択されることも求められる。
【0022】
掘削エレメントは掘削バケットのシュラウドまたは歯として提供される。
【0023】
本発明のさらなる態様によれば、タグ付き掘削エレメントを製造する方法が提供され、この方法は、
- 掘削エレメントを設けるステップと、
- 放射性供給源を設けるステップと、
- 放射性供給源を掘削エレメントに固定するステップと、
を含んでなる。
【0024】
タグ付けデバイスは、密封された放射性供給源の形態で提供される。
【0025】
より詳細には、密封された放射性供給源は、密封された金属ハウジングに封入された放射性物質を含み得る。
【0026】
タグ付けデバイスは、好ましくは、掘削エレメント内に設けられた開口部の内部に配置可能である。
【0027】
放射性供給源が150日未満、好ましくは120日未満、より好ましくは90日未満の半減期を有することがさらに求められる。
【0028】
また、放射性供給源が40日を超える、好ましくは60日を超える、より好ましくは80日を超える半減期を有することも求められる。
【0029】
好ましい実施形態において、放射性供給源は放射性金属である。
【0030】
好ましい実施形態では、放射性供給源は、300KeVを超える、好ましくは600KeVを超える、より好ましくは850KeVを超えるエネルギーレベルのガンマ線を放出する。
【0031】
好ましい実施形態では、放射性供給源は、2000KeV未満、好ましくは1700KeV未満、より好ましくは1500KeV未満のエネルギーレベルのガンマ線を放出する。
【0032】
放射性供給源はスカンジウム(Sc)、タンタル(Ta)、テルビウム(Tb)およびアンチモン(Sb)を含むグループから選択することができる。
【0033】
好ましい実施形態では、放射性供給源が元素スカンジウム(Sc)の放射性同位体であり、より詳細には、同位体スカンジウム46(46Sc)であることが求められる。
【0034】
また、放射性供給源が、タンタル182(182Ta)、テルビウム160(160Tb)およびアンチモン124(124Sb)を含む放射性同位体のグループから選択されることも求められる。
【0035】
掘削エレメントは掘削バケットのシュラウドまたは歯として提供される。
【0036】
本発明のさらに別の態様によれば、掘削エレメントの変位を検出する方法が提供され、この方法は、
- 放射性供給源でタグ付けされた掘削エレメントを設けるステップと、
- 放射線検出器を設けるステップと、
- 掘削エレメントが放射線検出器に対して変位したときの放射線の変化を検出するステップと、
を含んでなる。
【0037】
放射線検出器は、掘削バケットが固定された構造物の一部に取り付けられ、放射線検出器は、掘削エレメントが掘削バケットから離れるときに放射線の低下を検出することができる。
【0038】
構造物は、掘削装置の本体であってもよい。
【0039】
掘削装置には1つまたは複数の放射線検出器が設けられる。
【0040】
放射線検出器は、掘削された物質が移動するルートに隣接する1つ以上の位置の構造物に取り付けられてもよく、放射線検出器は、掘削エレメントが掘削された物質と共に移動するときに放射線の増加を検出し得る。
【0041】
この構造物は、掘削された物質が移動するガントリパスト(gantry past)であってもよい。
【0042】
放射性物質でタグ付けされた掘削エレメントを設けるステップは、掘削エレメントに密封された放射性供給源を固定するステップを含み得る。
【0043】
掘削バケットに固定された全ての掘削エレメントが放射性供給源でタグ付けされるように提供される。
【0044】
本発明のさらなる態様によれば、掘削エレメントの変位の検出において放射性供給源の使用方法が提供される。
【0045】
放射性供給源はスカンジウム(Sc)、タンタル(Ta)、テルビウム(Tb)およびアンチモン(Sb)を含むグループから選択することができる。
【0046】
好ましい実施形態では、放射性供給源が元素スカンジウム(Sc)の放射性同位体であり、より詳細には、同位体スカンジウム46(46Sc)であることが求められる。
【0047】
また、放射性供給源が、タンタル182(182Ta)、テルビウム160(160Tb)およびアンチモン124(124Sb)を含む放射性同位体のグループから選択されることも求められる。
【0048】
掘削エレメントが掘削バケットのシュラウドまたは歯として提供される。
【0049】
本発明の別の態様によれば、タグ付き掘削エレメントで使用するために密封された放射性供給源が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本発明の好ましい実施形態を非限定的な例として、添付図面を参照して説明する。
【0051】
図1】掘削装置の掘削バケットの斜視図であって、掘削エレメントが掘削バケットに解放可能に固定されている。
図2】本発明の一実施形態による掘削エレメントの概略図である。
図3】マイニング作業における監視ポイントを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の任意の実施形態が詳細に説明される前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるかまたは以下の図面に示される構成の詳細および構成要素の配置に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態によって、様々な方法で実施されるか、実施されることが可能である。また、本明細書で使用される表現および用語は、説明のためのものであって、限定的であると見なされるべきではないことを理解されたい。本明細書中の「含む」、「含んでなる」または「有する」およびそれらの変形は、その後に列挙されるアイテムおよびその等価物ならびに追加のアイテムを含むことを意味している。
【0053】
本明細書および添付した特許請求の範囲の目的のために、他に示さない限り、明細書および特許請求の範囲で使用される量、パーセンテージまたは割合、および他の数値を表す全ての数字は、それらがそうでない限り、「約」という用語で示されるように変化し得ると理解されたい。したがって、反対のことが示されていない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0054】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」および任意の単語の任意の単数形は、明示的かつ明白に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含む。本明細書で使用される用語「含む」およびその文法上の変形は、リスト内のアイテムの列挙が、リストされたアイテムに置換または追加可能な他の同様のアイテムを除外しないように限定されるものではない。
【0055】
本発明の一実施形態による掘削エレメントの非限定的な例を、図1および図2を参照して説明する。最初から、掘削エレメント10は、多くの異なる掘削またはグラウンド移動機械および/または装置を含む。重要な点は、掘削エレメントが、通常、使用中に掘削および/または移動する媒体に係合し、したがって、相当量の機械的摩耗を被る対象物であることである。この例では、掘削エレメントは、掘削バケットまたはスクープのシュラウドであり、バケットまたはスクープは、掘削機または機械ショベルの一部である。掘削バケットまたはスクープの歯にも同様の設計および方法論を適用することができる。
【0056】
掘削機バケット10は、ベース14と、ベース14の対向する側縁から横方向に延びる2つの対向する側壁と、ベース14の後縁から横方向に延びる後壁13と、を含んでなる。後壁13は2つの側壁12の端部の間に延在し、変位する材料を受け入れるのに適した容器11を画定する。掘削機バケット10の操作可能な前端は刃先16で終端し、変位する材料が容器11に出入りすることができる容器11のオープンサイドを画定する。
【0057】
複数のグラウンド係合歯20が刃先16から突出しており、刃先16に解放可能に固定されている。歯20は等間隔で離間し、保護シュラウド30は、離間した歯20の間の刃先16に設けられている。したがって、刃先16を画定するベースプレート14の端部は、移動されるべき材料に直接露出されず、歯20およびシュラウド30によって覆われる。歯20およびシュラウド30は長期に消耗し、これらは容易に置き換えることができる。実際の掘削機バケット本体を交換または修理することははるかに困難であって、費用がかかり、かつ時間がかかるであろう。したがって、歯20およびシュラウド30は、掘削機バケット10の重要な構成要素である。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、密封された供給源50の形態のタグ付けデバイスが、シュラウドが放射線検出器(図示せず)によって検出可能であるようにシュラウド30に固定される。タグ付けデバイスはまた、掘削機バケット10の歯20に固定されてもよいが、歯20が刃先16から突出する程度により目に見えるため、あまり重要ではないことに留意すべきである。欠けている歯に気づいたオペレータの見込みの方が、欠けているシュラウドに気づいているよりもはるかに高い。
【0059】
放射性供給源は、密封容器50内に収容され、シュラウド30(または他の掘削エレメント)に多くの異なる構成で固定され得る。例えば、シュラウド30の下脚部32に開口部40を形成することができ、次いで、供給源50を開口部の内部に嵌め込むことができる。より詳細には、開口部は、シュラウド30の下脚部32の上面に、後縁部から約30mm、および深さ約20mmに(例えば、ドリルによる穴あけまたは鋳造または鍛造中に形成)形成され得る。開口部の内側には、雌ねじ41.1のスリーブ/カートリッジ41が固定され、密封された供給源(ハウジングが相補的なねじ51である)がスリーブにねじ込まれる。これにより、密封された供給源の簡単な取り付けおよび取り外しが可能になる。密封された供給源が下脚部32に配置されることが予見されるが、供給源がシュラウド30のノーズ33または上脚部31に配置されることも可能である。
【0060】
図3に示すように、ある特定の実施形態では、放射性供給源の検出は、採掘プロセス100の間に少なくとも3つの場所およびフェース110、111、112において行われることが予見される。第1の目的は、掘削装置が粉砕プラント104に向かって下流に搬送される前に、掘削エレメントの損失をオペレータが認識できるように、掘削装置の現場で掘削エレメント(例えば、歯またはシュラウド)の損失を監視することである。したがって、第1の検出点110は、掘削装置上にあって、より詳細には、ドリル/ブラストサイト101から牽引トラック103に鉱石102を装填するために使用される掘削バケット10にある。第1の検出点は、放射線源から放出された放射線を常に検出する放射線検出器を含み、検出された放射線の段階的な減少は、少なくとも1つの掘削エレメントの損失を意味する。
【0061】
シュラウドの喪失を検出する潜在的な失敗を軽減するために、鉱石荷を粉砕プラント104に運ぶ牽引トラック103は、ガントリ形態の検出ステーション111を通過し得る。放射線検出器がガントリの一部を形成し、鉱石荷に存在する任意のタグ付きシュラウドが放射線モニタ上のピークとして検出され、鉱石荷が転用され、タグ付きシュラウドが手動で配置および除去される。シュラウドの喪失に気付かず、続いてガントリ111で放射性供給源を検出することに失敗した化合物は、供給源がコンセントレータプラント105で消化される可能性がある。したがって、破砕とコンセントレータプラントとの間のコンベヤベルト上のさらなる検出または遮断ポイント112を使用して、完全に消失する前にその供給源を特定することができる。したがって、トータルソリューションは3階層の検出システムで構成され得るが、検出は1つまたは2つの場所でのみ発生し得ることも予見される。
【0062】
タグ付けデバイスに使用される密封された放射性供給源は、多くの重要な操作上、製造上および物理的基準を満たさなければならない。第一に、放射性廃棄物の影響を軽減するために、放射性物質の半減期をグラウンド掘削エレメントの動作寿命よりも著しく長くしてはならない。同時に、グラウンド掘削エレメントが依然として使用されている間に供給源が弱くて検出が困難にならないように、半減期はグラウンド掘削エレメントの動作寿命よりも著しく短くならないようにすべきである。したがって、放射性供給源の半減期は、掘削エレメント本体の典型的な寿命に相当するように、好ましくは約80~100日であるべきである。
【0063】
また、放射性供給源が固体金属の形態であることが好ましい。この理由は、粉末および非金属では、溶接金属封止されたシール供給源に形成することができず、むしろ珪岩封止されなければならないからである。珪岩のカプセル化はこの特定の用途には望ましくなく、なぜなら、それは機械的ストレス下で粉砕しやすくなり、それによって放射線汚染の可能性および重要性が増大するからである。
【0064】
さらなる要件は、放射性供給源が化学的に同一生成物または類似生成物ではありえないということで、これは、特定の用途において採掘され、発見された鉱石に対し化学的に異なる挙動を示さなければならないという意味である。例えば、貴金属が存在する鉱山において貴金属である放射性供給源を使用することはできない。なぜなら、放射性供給源の核種が最終生成物になる危険があるからで、これは明らかに望ましくない。
【0065】
実用的な観点から、放射性供給源の活性化も実現可能でなければならない。活性化期間の短い放射性供給源は、望ましくない核種が増殖する範囲を減少させるので好ましい。例えば、長期的な処分の問題を生み出す供給源の崩壊プロファイルを妨害する長寿命の同位体、または、シールド要件を増加させる非常に高いガンマエネルギーを有する同位体を含むべきではないという意味で、同位体の広がりも好ましいものでなければならない。この用途の目的のためには、崩壊プロファイルが単純であるほど良い。この用途の目的のために、本質的に単一同位体的を生じ、中性子または陽子の捕獲によって単一の放射性同位体に増殖され得る播種元素、または全ての放射活性副生成物が短命(半減期<1日)である元素が好ましい。
【0066】
最後に、操作上の要求(例えば、グラウンド係合エレメントが鉱石の重要層の下に位置しているという事実)のために、放射源は、エネルギースペクトルのより高い端部における電離放射線を示さなければならず、すなわち、ハードガンマ線が必須となる。少なくとも800KeVのハードガンマ線が必要になると予想されるが、理想的にはこれ以上のガンマ線が必要である。上限は約1500KeVと予想される。
【0067】
上記の基準内で適切な構成を見つけるためには、膨大な数の多様な基準が満たされなければならないことは容易に明らかである。これらには、上述した放射線学、製造および運用の基準が含まれており、提案された解決策は、明らかな放射性供給源の選択にすぎず、ルーチンの実験を遥かに越えた、鉱業や冶金工学、機械工学、核化学にまたがる多分野のアプローチが必要である。これまでの共通の前提は、満たすべき多様な基準の数の結果として、放射線源の使用が単に実現可能ではないということであったので、複雑な一連の基準は、伝統的に、このアプリケーションで想定されている特定の用途に放射性物質の使用を設計者に考慮させないものであった。
【0068】
好ましい実施形態では、とりわけ半減期、ガンマ線エネルギー、および生産の簡便さに関して所望の特性を有する金属元素スカンジウムの放射性同位元素である中でスカンジウム46(46Sc)が放射性供給源として使用される。
【0069】
スカンジウムは希土類およびウラン化合物の堆積物の大部分に存在するが、世界中のわずかの鉱山でのみこれらの鉱石から抽出される。入手可能性が低く、金属スカンジウムの調製が困難であったため、スカンジウムの用途が開発されるまでには1970年代までかかった。アルミニウム合金に対するスカンジウムの肯定的な効果は1970年代に発見され、このような合金での使用がスカンジウムの主要な用途の1つにとどまっている。さらに、スカンジウムは、高輝度照明の製造において少量でも使用される。純金属の世界貿易は年間約50キログラムであるため、スカンジウムは共通の元素ではなく、実際には貿易や産業において非常に限定された元素であることが明らかである。同じことが、スカンジウムの最も安定な放射性同位元素であるスカンジウム46にも当てはまる。スカンジウム46の特性は、放射性同位体が必要とされるほとんどの用途には不適当である。特に、比較的短い半減期が、例えば医学的使用、非医学的な照射製品、ゲージングシステム、非破壊試験アプリケーションおよび材料分析などの密封された放射性供給源用途での使用には一般的に不適切である。
【0070】
放射性同位元素スカンジウム46(46Sc)は金属で、半減期が84日で、白金族金属(PGM)または他の貴金属と化学的に関連していない。さらに、中性子捕獲を介したスカンジウム45(単一同位体的に自然に発生する)の活性化によってスカンジウム46を生成することは容易であって、いくつかの他の潜在的同位体候補と比較して中性子束の僅かな部分しか必要としない。非常にクリーンなスペクトルを持つ同位体が1つしか生成されず、その結果、望ましくない活動が比較的少ない。ガンマ線はそれぞれ890および1121KeVであって、これらも上述した要件を満たす。
【0071】
個々の密封された供給源ごとに約1~5ミリキュリー(3.7~18.5×10Bq)のスカンジウム46の活性が使用されることが想定される。
【0072】
放射性同位体の半減期のみを考慮した場合に、多くの放射性同位体がこの用途に適しているようである。しかしながら、残りの要件が満たされていないため、それらのほとんどは実行可能な選択ではない可能性がある。例えば、いくつかの同位体は、現在の非現実的な生産ルートのために、掘削エレメントの放射性タグとしての使用には好ましくないかもしれない。
【0073】
【表1】
【0074】
スカンジウム46の代わりとして理想ではないが、最善として、Ta182、Tb160、Zr95、Sb124、Fe59およびY91であり、それぞれの関連する特性を以下の表2にまとめた。
【0075】
【表2】
【0076】
本発明者は、グラウンド係合エレメントにタグを付けるための密封された放射性供給源の使用が、グラウンド移動/変位可能な機械の一部を形成するグラウンド係合エレメントの検出および監視の問題に対する新規で有用な解決策を提供すると考えている。放射性同位体としてのスカンジウム46の使用は、この特定の用途の多様な要求をすべて満たす点で特に有益である。
【0077】
密封された放射性供給源は信頼性が高く、容易に検出することができる。同時に、放射線のリスクは提案された選択基準のために非常に低く、核廃棄物に通常伴う問題も、選択された同位体の短い半減期によって否定さえるであろう。
【0078】
上記は本発明の一実施形態に過ぎず、本発明の精神および/または範囲から逸脱することなく多くの変形が可能であることは理解されよう。
【符号の説明】
【0079】
10 掘削エレメント、掘削機バケット
11 容器
12 側壁
13 後壁
14 ベース
16 刃先
20 歯
30 シュラウド
31 上脚部
32 下脚部
33 ノーズ
41 スリーブ/カートリッジ
41.1 雌ねじ
50 供給源
100 採掘プロセス
101 ドリル/ブラストサイト
102 鉱石
103 牽引トラック
104 粉砕プラント
105 コンセントレータプラント
110 第1の検出点
111 検出ステーション
112 遮断ポイント
図1
図2
図3