(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】HIV-1免疫原に関連した組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/16 20060101AFI20220328BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220328BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220328BHJP
C12N 15/49 20060101ALI20220328BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20220328BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220328BHJP
A61K 39/21 20060101ALI20220328BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
C07K14/16 ZNA
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/49
A61P31/18
A61P37/04
A61K39/21
A61K39/39
(21)【出願番号】P 2018557105
(86)(22)【出願日】2017-05-01
(86)【国際出願番号】 US2017030375
(87)【国際公開番号】W WO2017192434
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2019-12-20
(32)【優先日】2016-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501244222
【氏名又は名称】ザ スクリプス リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】コング,レオポルト
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,イアン・エー
(72)【発明者】
【氏名】デ・バル,ナタリア
(72)【発明者】
【氏名】ワード,アンドリュー・ビー
(72)【発明者】
【氏名】バートン,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ホー,リンリン
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,ジャン
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-502521(JP,A)
【文献】国際公開第2016/037154(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/063331(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0212458(US,A1)
【文献】The Journal of Biological Chemistry, 2013, Vol.288, No.1, pp.234-246
【文献】Retrovirology, 2015, Vol.12, No.82, pp.1-5
【文献】Cell Reports, 2015, Vol.11, No.4, pp.539-550
【文献】Journal of Virology, 2015, Vol.89, No.10, pp.5318-5329
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
gp120ポリペプチドおよびgp41ポリペプチドを含む修飾HIV-1エンベロープgp140タンパク質であって、gp41ポリペプチドのヘプタド1領域(HR1)のN末端のアミノ酸残基548~568が、融合前gp140構造を安定化させる
6~
14アミノ酸残基の長さのループ配列で置換されており、アミノ酸残基の番号付けはHXB2命名法に従うものである、修飾HIV-1エンベロープgp140タンパク質。
【請求項2】
gp41ポリペプチドがgp41
ECTOである、請求項1記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項3】
gp120ポリペプチドおよびgp41ポリペプチドが、異なるHIV-1株に由来する、請求項1記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項4】
HIV-1株BG505に由来する、請求項1記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項5】
ループ配列が(GS)n(配列番号23)を含有し、ここで、nは3~7(3および7を含む)の任意の整数である、請求項1記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項6】
ループ配列が(GS)
4(配列番号24)である、請求項1記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項7】
ループ配列が10アミノ酸残基を含む、請求項1記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項8】
ループ配列が配列番号1~5のいずれか1つを含む、請求項7記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項9】
ループ配列が8アミノ酸残基を含む、請求項1記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項10】
ループ配列が配列番号6~10のいずれか1つを含む、請求項9記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項11】
gp120とgp41との間の切断部位配列の代わりに柔軟なリンカー配列を更に含む、請求項1記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項12】
リンカー配列が(G
4S)
2(配列番号22)またはSGSを含み、切断部位における残基508~511を置き換えている、請求項1記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項13】
リンカー配列が8アミノ酸残基を含み、切断部位における残基501~518を置き換えている、アミノ酸残基の番号付けがHIV-1株BG505.SOSIP.664 gp140の番号付けに対応する、請求項11記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項14】
リンカー配列が、配列番号16~20のいずれか1つに示されている配列を含む、請求項13記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項15】
(a)gp120とgp41との間に操作されたジスルフィド結合、および/または(b)gp41における安定化変異を更に含む、請求項1記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項16】
前記操作されたジスルフィド結合が残基A501CとT605Cとの間に存在し、前記安定化変異がI559Pである、請求項15記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項17】
請求項1記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質がgp140三量体を含み、各単量体がgp120ポリペプチドおよびgp41
ECTOポリペプチドを含み、gp41
ECTOポリペプチドがHIV-1株BG505に由来し、gp41
ECTOポリペプチドにおけるヘプタド1領域(HR1)(配列番号28)のN末端が、配列番号6に示されているループ配列で置換されている、請求項1記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項18】
(a)切断部位における残基508~511を置き換えるリンカー配列(G
4S)
2(配列番号22)、および(b)残基A501CとT605Cとの間の操作されたジスルフィド結合を更に含む、請求項17記載の修飾HIV-1
エンベロープgp140タンパク質。
【請求項19】
請求項1記載の修飾三量体HIV-1エンベロープgp140タンパク質を含む、HIV-1ワクチン免疫原。
【請求項20】
自己集合性ナノ粒子またはウイルス様粒子(VLP)上に提示されるHIV-1 Env由来三量体免疫原を含むHIV-1ワクチン組成物であって、前記HIV-1 Env由来三量体免疫原はgp120ポリペプチドおよびgp41ポリペプチドを含み、該gp41ポリペプチドのヘプタド1領域(HR1)のN末端のアミノ酸残基548~568は、融合前gp140構造を安定化させる
6~
14アミノ酸残基の長さのループ配列で置換されており、アミノ酸残基の番号付けはHXB2命名法に従うものである、前記HIV-1ワクチン組成物。
【請求項21】
HIV-1 Env由来の三量体免疫原がV1V2、gp120またはgp140である、請求項20記載のHIV-1ワクチン組成物。
【請求項22】
HIV-1 Env由来の三量体免疫原が、gp120ポリペプチドおよびgp41
ECTOポリペプチドを含む修飾gp140タンパク質であり、p41
ECTOポリペプチドのヘプタド1領域(HR1)のN末端が、融合前gp140構造を安定化させる
6~
14アミノ酸残基のループ配列で置換されている、請求項20記載のHIV-1ワクチン組成物。
【請求項23】
ループ配列が、(a)(GS)n(配列番号23)(ここで、nは3~7(3および7を含む)の任意の整数である)、または(b)アンサンブルに基づくタンパク質設計によって合理的に再設計された配列を含む、請求項22記載のHIV-1ワクチン組成物。
【請求項24】
修飾gp140タンパク質がナノ粒子プラットフォームに共有結合により融合している、請求項22記載のHIV-1ワクチン組成物。
【請求項25】
ナノ粒子プラットフォームは三量体配列を含む、請求項22記載のHIV-1ワクチン組成物。
【請求項26】
ナノ粒子プラットフォームがジヒドロリポイルアシルトランスフェラーゼ(E2P)、フェリチンまたはルマジンシンターゼ(LS)を含む、請求項22記載のHIV-1ワクチン組成物。
【請求項27】
ナノ粒子プラットフォームが表面上に1以上の3回軸を有し、各単量体サブユニットのN末端が3回軸に近接しており、3つのN末端の間隔が修飾gp140タンパク質三量体のC-末端の間隔に合致している、請求項22記載のHIV-1ワクチン組成物。
【請求項28】
修飾gp140タンパク質配列のC末端がナノ粒子プラットフォーム配列のサブユニットのN末端に融合している、請求項22記載のHIV-1ワクチン組成物。
【請求項29】
ナノ粒子プラットフォームが、12または24個のサブユニットから構築される約20nm以下の直径を有する自己集合性ナノ粒子を含む、請求項22記載のHIV-1ワクチン組成物。
【請求項30】
アジュバントを更に含む、請求項22記載のHIV-1ワクチン組成物。
【請求項31】
gp140三量体がHIV-1株BG505に由来し、ループ配列が、配列番号6に示されている配列を有する、請求項22記載のHIV-1ワクチン組成物。
【請求項32】
前記修飾gp140タンパク質が、(a)切断部位における残基508~511を置き換えるリンカー配列(G
4S)
2(配列番号22)、および(b)残基A501CとT605Cとの間の操作されたジスルフィド結合を更に含む、請求項31記載の
HIV-1ワクチン組成物。
【請求項33】
請求項19記載のワクチン免疫原を含む、対象におけるHIV-1感染の予防のための組成物。
【請求項34】
請求項19記載のワクチン免疫原を含む、対象においてHIV-1感染を治療し、または対象においてHIV-1に対する免疫応答を誘発させるための組成物。
【請求項35】
請求項1に記載の
修飾HIV-1エンベロープgp140タンパク質、または、請求項20に記載のHIV-1ワクチン組成物
のHIV-1 Env由来三量体免疫原をコードするポリヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIV-1免疫原に関連した組成物および方法に関する。
【0002】
関連出願に対する相互参照
本特許出願は、米国仮特許出願第62/330,604号(2016年5月2日付け出願)に基づく優先権の利益を主張するものである。該優先権出願の全開示をその全体において及びあらゆる目的で本明細書に組み入れることとする。
【0003】
米国政府の援助に関する陳述
本発明は、米国国立保健研究所(National Institutes of Health)により授与されたAI100663およびAI084817に基づく米国政府の援助によりなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)は、世界的な重大な健康問題の1つとみなされている後天性免疫不全症候群(エイズ)の主要原因である。それはレトロウイルス科のRNAウイルスである。HIV-1ゲノムは少なくとも9つのタンパク質をコードしており、これらは、3つのクラス、すなわち、主要構造タンパク質Gag、PolおよびEnv、調節タンパク質TatおよびRev、ならびにアクセサリータンパク質Vpu、Vpr、VifおよびNefに分類される。HIV-1は、幾つかの異なるクレード、例えばA、B、C、D、E、F、G、H、JおよびKに分類可能であり、これらは世界的な蔓延率において様々である。各クレードは、異なるHIV-1株を含み、これらはそれらの遺伝的類似性に基づいて一緒にグループ分けされている。
【0005】
HIV-1複製サイクルの初期段階は感受性宿主細胞への該ウイルスの付着およびそれに続くウイルス膜と細胞膜との融合を含む。これらの事象は、gp160として公知の融合不能前駆体エンベロープ糖タンパク質(Env)として最初に合成される外部ウイルスエンベロープ糖タンパク質によってもたらされる。HIV-1の遺伝的多様性は複数のHIV-1クレードの株に対する有効なワクチンの開発を極めて困難にする。予防用HIVワクチンを得るために過去20年間に多大な労力が費やされてきた。幾つかの候補ワクチンが開発されているが、それらは全て、臨床試験においてHIV-1感染を予防することができなかった。
【0006】
広範囲の臨床分離体を中和しうる抗体応答の生成は、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)ワクチンの開発において、依然として大きな課題である。世界中で安全かつ効果的であるワクチンが強く且つ緊急に必要とされている。本発明はこの要求および当技術分野における他の未解決の要求に対処するものである。
【発明の概要】
【0007】
発明の概括
1つの態様においては、本発明は修飾HIV-1エンベロープgp140タンパク質を提供する。該タンパク質はgp120ポリペプチドおよびgp41ポリペプチドから構成され、gp41ポリペプチドのヘプタド(heptad;7成分)1領域(HR1)のN末端は、融合前gp140構造を安定化させる約6~約14アミノ酸残基長のループ配列により置換されている。これらのタンパク質の幾つかにおいては、gp41ポリペプチドはgp41ECTOである。好ましくは、修飾HIV-1 gp140タンパク質は三量体である。幾つかの実施形態においては、gp120ポリペプチドおよびgp41ポリペプチドは、同じHIV-1株または亜型に由来する。例えば、修飾HIV-1 gp140タンパク質におけるgp120ポリペプチドおよびgp41ポリペプチドは共にHIV-1株BG505に由来しうる。幾つかの実施形態においては、gp120ポリペプチドおよびgp41ポリペプチドは、異なるHIV-1株または亜型に由来する。例えば、本明細書に例示されているHIV-1株BG505からの操作(engineered)gp41ポリペプチドは、多数の他のHIV株または亜型に由来するgp120ポリペプチドとのキメラgp140免疫原を形成させるために使用されうる。
【0008】
本発明の幾つかの修飾HIV-1エンベロープgp140タンパク質においては、ループ配列は(GS)n(配列番号23)を含有し、ここで、nは3~7(3および7を含む)の任意の整数である。これらの実施形態の幾つかにおいては、ループ配列は(GS)4(配列番号24)である。幾つかの実施形態においては、ループ配列は合理的な再設計により得られる。これらの実施形態の幾つかにおいては、ループ配列は、アンサンブルに基づくタンパク質設計により得られる。本発明の幾つかの修飾HIV-1 gp140タンパク質においては、ループ配列は10アミノ酸残基を含有する。これらのループ配列の幾つかの例を配列番号1~5に示す。幾つかの他の修飾HIV-1 gp140タンパク質においては、ループ配列は8アミノ酸残基を含有する。これらのループ配列の幾つかの例を配列番号6~10に示す。
【0009】
幾つかの実施形態においては、本発明の修飾HIV-1 gp140タンパク質は更に、gp120とgp41との間の切断部位配列の代わりに柔軟なリンカー配列を含有する。これらの実施形態の幾つかにおいては、リンカー配列は(G4S)2(配列番号22)またはSGSの配列を有し、これは切断部位における残基508~511の代わりに存在する。幾つかの他の実施形態においては、リンカー配列は8アミノ酸残基を含有し、切断部位における残基501~518の代わりに存在する。これらの実施形態においては、アミノ酸残基の番号付けは、HIV-1株BG505.SOSIP.664 gp140の番号付けに対応する。幾つかの例示されているタンパク質においては、リンカー配列は、配列番号16~20のいずれか1つに示されている配列を含有する。
【0010】
幾つかの実施形態においては、本発明の修飾HIV-1 gp140タンパク質は更に、(a)gp120とgp41との間の操作されたジスルフィド結合および/または(b)gp41における安定化変異を含有する。これらの実施形態の幾つかにおいては、操作されたジスルフィド結合は残基A501CとT605Cの間に存在し、安定化変異はI559Pである。
【0011】
本発明の幾つかの修飾HIV-1 gp140タンパク質は、HIV-1株BG505に由来するgp140三量体を含有し、各gp140単量体はgp120ポリペプチドおよびgp41ECTOポリペプチドを含有し、gp41ECTOポリペプチドにおけるヘプタド1領域(HR1)(配列番号28)のN末端は、配列番号6に示されているループ配列で置換されている。これらの実施形態の幾つかにおいては、該タンパク質は更に、(a)切断部位における残基508~511の代わりに存在するリンカー配列(G4S)2(配列番号22)、および(b)残基A501CとT605Cとの間の操作されたジスルフィド結合を含有する。
【0012】
もう1つの態様においては、本発明は、修飾三量体HIV-1エンベロープgp140タンパク質を含有するHIV-1ワクチン免疫原を提供する。これらの免疫原においては、該gp140タンパク質はgp120ポリペプチドおよびgp41ECTOポリペプチドを含有し、gp41ECTOポリペプチドのヘプタド1領域(HR1)のN末端は、融合前gp140構造を安定化させる約6~約14アミノ酸残基のループ配列で置換されている。幾つかの実施形態においては、ループ配列は(GS)n(配列番号23)を含み、ここで、nは3~7(3および7を含む)の任意の整数である。これらの実施形態の幾つかにおいては、ループ配列は(GS)4(配列番号24)の配列を有する。幾つかの実施形態においては、ループ配列は、合理的な再設計、例えば、アンサンブルに基づくタンパク質設計により得られる。幾つかの実施形態においては、ループ配列は10アミノ酸残基、例えば、配列番号1~5に示されている任意の配列を含有する。幾つかの他の実施形態においては、ループ配列は8アミノ酸残基、例えば、配列番号6~10のいずれか1つに示されている配列を含有する。
【0013】
本発明の幾つかのHIV-1ワクチン免疫原は更に、gp120とgp41ECTOとの間の切断部位配列の代わりに柔軟なリンカー配列を含有する。これらの実施形態の幾つかにおいては、リンカー配列は(G4S)2またはSGSを含有し、切断部位における残基508~511の代わりに存在する。幾つかの実施形態においては、リンカー配列は8アミノ酸残基を含有し、切断部位における残基501~518の代わりに存在する。これらの実施形態においては、アミノ酸残基の番号付けは、HIV-1株BG505.SOSIP.664 gp140の番号付けに対応する。幾つかの実施形態においては、リンカー配列は、配列番号16~20のいずれか1つに示されている配列を含有する。
【0014】
本発明の幾つかのHIV-1ワクチン免疫原は更に、gp120とgp41との間に操作されたジスルフィド結合を含有する。これらの実施形態の幾つかにおいては、操作されたジスルフィド結合は残基A501CとT605Cとの間に存在する。HIVワクチン免疫原の幾つかは、HIV-1株BG505に由来するgp140三量体を含有し、各gp140単量体はgp120ポリペプチドおよびgp41ECTOポリペプチドを含有し、gp41ECTOポリペプチドにおけるヘプタド1領域(HR1)(配列番号28)のN末端は、配列番号6に示されているループ配列で置換されている。幾つかの実施形態においては、該修飾HIV-1 gp140タンパク質は更に、(a)切断部位における残基508~511の代わりに存在するリンカー配列(G4S)2(配列番号22)、および(b)残基A501CとT605Cとの間の操作されたジスルフィド結合を含有する。
【0015】
もう1つの態様においては、本発明は、自己集合性ナノ粒子またはウイルス様粒子(VLP)上に提示されるHIV-1 Env由来三量体免疫原を含有するHIV-1ワクチン組成物を提供する。これらの実施形態の幾つかにおいては、HIV-1 Env由来の三量体免疫原はV1V2、gp120またはgp140である。幾つかの実施形態においては、HIV-1 Env由来の三量体免疫原は、融合前gp140構造を安定化させる約6~約14アミノ酸残基のループ配列で置換されたgp41ECTOポリペプチドのヘプタド1領域(HR1)のN末端を有するgp41ECTOポリペプチドおよびgp120ポリペプチドを含有する修飾gp140タンパク質である。
【0016】
幾つかの実施形態においては、ループ配列は、(a)(GS)n(配列番号23)の配列(ここで、nは3~7(3および7を含む)の任意の整数である)、または(b)アンサンブルに基づくタンパク質設計によって合理的に再設計された配列を含有する。幾つかの実施形態においては、該修飾gp140タンパク質はナノ粒子プラットフォームに共有結合により融合している。種々の実施形態においては、ナノ粒子プラットフォームは三量体配列を含有する。これらの実施形態の幾つかにおいては、ナノ粒子プラットフォームはジヒドロリポイルアシルトランスフェラーゼ(E2P)、フェリチンまたはルマジンシンターゼ(LS)である。幾つかの実施形態においては、ナノ粒子プラットフォームは表面上に1以上の3回軸(3-fold axis)を有し、各単量体サブユニットのN末端は3回軸に近接しており、3つのN末端の間隔は修飾gp140タンパク質三量体のC-末端の間隔に合致している。幾つかの実施形態においては、修飾gp140タンパク質配列のC末端はナノ粒子プラットフォーム配列のサブユニットのN末端に融合している。幾つかの実施形態においては、ナノ粒子プラットフォームは、12または24個のサブユニットから構築される約20nm以下の直径を有する自己集合性ナノ粒子を含有する。本発明の幾つかのHIV-1ワクチン組成物は更に、アジュバントを含有しうる。
【0017】
本発明の幾つかのHIV-1ワクチン組成物においては、gp140三量体はHIV-1株BG505に由来し、ループ配列は配列番号6に示されている。該組成物の幾つかは更に、(a)切断部位における残基508~511の代わりに存在するリンカー配列(G4S)2(配列番号22)、および(b)残基A501CとT605Cとの間の操作されたジスルフィド結合を含有する。
【0018】
更にもう1つの態様においては、本発明は、対象におけるHIV-1感染の予防方法を提供する。これらの方法は、本明細書に記載されているHIV-1免疫原またはワクチン組成物の治療的有効量を対象に投与することを含む。該免疫原の投与は対象におけるHIV-1感染の予防をもたらす。関連態様においては、本発明は、対象におけるHIV-1感染の治療方法、または対象におけるHIV-1に対する免疫応答を誘発(惹起)させる方法を提供する。これらの方法は、本明細書に記載されているHIV-1免疫原またはワクチンの治療的有効量を含有する医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0019】
本発明の性質および利点の更なる理解は、本明細書および特許請求の範囲の残りの部分を参照することによってもたらされうる。
【0020】
詳細な説明
1.概要
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)に対するワクチン開発の目標は、ワクチン接種により、防御用または治療用の広範中和抗体(bNAb)応答を誘導することである。これまでに特定されている全てのbNAbはHIV-1ビリオンの表面上のエンベロープ糖タンパク質(Env)三量体を標的とする。前駆体Envタンパク質gp160は小胞体(ER)からゴルジ体に輸送され、フューリン・ファミリーの細胞プロテアーゼによってその成熟形態へと切断される。切断されたEnv三量体は宿主受容体に結合してウイルス侵入を媒介し、該三量体は体液性免疫応答の主要標的である。機能的Envはヘテロ二量体の三量体であり、それぞれは受容体結合タンパク質gp120および膜貫通タンパク質gp41を含有し、それらは非共有結合性相互作用により結合している。Envのこの成熟形態は準安定性である。なぜなら、それは、宿主受容体および共受容体に結合して膜融合を引き起こす際に、劇的で不可逆的なコンホメーション変化を受ける態勢になっているからである。Envの準安定性はまた、gp120の排出を引き起こすことにより、ならびに天然の、より開けた、および非天然のコンホメーションの多様な組合せ(assortment)を生成することにより、免疫回避を促進させる。
【0021】
Envの準安定性を克服し、構造研究およびワクチン研究のために安定で均一なgp140三量体を作製する試みにおいて、種々の戦略が提示されている。例えば、BG505 SOSIP.664 gp140三量体(Sandersら,PLoS Pathog.9(9):e1003618,2013)の開発は高分解能構造解析を促進しており、三量体に基づくワクチン設計のための合理的根拠を提供し、他のHIV-1株へのSOSIP設計の拡張、および新たな安定化変異の組込み、および切断部位修飾によるフューリン依存性の排除を可能にした。しかし、望ましくないEnv形態およびミスフォールドした三量体を最少にするために、三量体の精製が重視される。bNAbアフィニティー精製、ネガティブセレクションおよび多サイクルSECのような複雑な方法が三量体精製のために開発されている。これらは確かに工業的規模の製造に適合可能であるが、特別な配慮を要しうるであろう。三量体不純物および一般的なタンパク質製造の非効率性は、これまでのHIV-1三量体設計によっては完全には解決されていない準不安定性の根本原因に関連していると考えるのがもっともらしい。
【0022】
本発明はワクチン免疫原としてのコンピュータ利用再設計HIV-1 Env三量体分子の本発明者らの開発に部分的に依拠している。後記実施例に詳細に記載されているとおり、本発明者らはHIV-1三量体準安定性の主要原因を調べ、代替的な三量体設計を探究した。本発明者らは、HR1 N末端(残基548~568)で観察される無秩序さが、タンパク質工学によって潜在的に最小化されうる準安定性を示すと仮定した。本発明者らは、長い中央HR1ヘリックスを融合ペプチド領域に連結するヘプタド領域1(HR1)における大部分が無秩序であるベンド(bend;曲がり)を再設計して、良好にフォールドした三量体の収率を実質的に改善させた。また、gp120とgp41との間の切断部位をHR1再設計の場合の種々のリンカーで置換した。特に、本発明者らは、コンピュータを利用して再設計したHR1のN末端領域を含有する10個のBG505三量体を試験した。これらの構築物は、結晶構造、EMおよび抗体結合によって示されるSOSIP様特性を有する、実質的に、より高い三量体収率および純度を示した。ついで本発明者らは、選択されたHR1再設計の場合のリンカーによるgp120とgp41との間のフューリン切断部位の置換の構造的および抗原的影響を調べた。これらの研究は、このタンパク質分解部位の修飾に対するgp140フォールディングの感受性を明らかにし、SOS変異を欠く短いリンカーを含有する三量体に関して融合中間状態が観察された。これとは対照的に、未切断融合前最適化(UFO)三量体と称される、長いリンカーを含有するHR1再設計三量体は、SOSIP三量体の多数の顕著な特徴に類似した天然様コンホメーションをとった。また、本発明者らは、多様なHIV-1株に関する三量体安定化における一般的HR1リンカーの有用性を実証した。本発明者らが行った更に詳細な研究は、本明細書に記載されている操作gp41ドメインが、多数の異なるHIV-1株または亜型からのgp120ポリペプチドとペア形成させて「キメラ」gp140三量体、例えば、本明細書に例示されている「UFO-BG」または「UFO-U」を形成させるために使用されうることを示した。総合すると、これらの研究は多様なHIV-1株からのEnv三量体の安定化のための一般的アプローチを実証した。
【0023】
修飾HR1領域を含有するgp140由来可溶性三量体免疫原以外に、本発明者らは更に、ナノ粒子上の三量体HIV-1抗原の提示を、詳細な構造的および抗原的特徴と共に調べた。本発明者らは、V1V2およびgp120のような三量体Env抗原がナノ粒子の表面上に3回軸周囲の天然様コンホメーションで提示されうると仮定した。この仮説を検証するために、本発明者らは、フューリンサブユニットのN末端に融合したV1V2およびgp120を含有する構築物を設計した。これらのキメラ抗原は、天然様三量体コンホメーションに合致して、頂点および他の鍵エピトープを標的化するbNAbに対する高いアフィニティで、ナノ粒子に集合した。ついで本発明者らは、三量体純度における実質的な改善を示した再設計ヘプタドリピート1(HR1)ベンドを含有する安定化gp140三量体の微粒子提示を調べた。この分析を容易にするために、本発明者らは、664位または681位のいずれかにおいてトランケート化したgp41を含有する、異なるリンカーを含有する3つのgp140-フェリチン構築物を設計した。全てのgp140-フェリチンナノ粒子がピコモル以下のアフィニティで頂点指向性bNAbに結合したが、MPER含有gp140ナノ粒子もMPER特異的bNAb 4E10によって認識可能であった。フェリチンに加えて、本発明者らは、gp120およびgp140三量体を提示させるための、大きな60マー(60量体)E2pナノ粒子の有用性をも調べた。本明細書中に実証されているとおり、20個の良好にフォールドした三量体を担持するgp140-E2pナノ粒子は効率的な粒子集合および所望の抗原性を示した。
【0024】
これらの例示研究に従い、本発明者らは種々のHIV-1ワクチン免疫原およびそれらの臨床用途を提供する。本発明の幾つかのHIV-1ワクチン免疫原は、本明細書に開示されているとおり、gp41におけるHR1領域の修飾N末端を含有する可溶性gp140由来タンパク質である。本発明の幾つかのHIV-1免疫原は、ナノ粒子プラットフォーム上に提示されるHIV-1 Env由来三量体タンパク質を含有する。本発明のHIV-1ワクチン組成物の治療用途および予防用途も本発明において提供する。
【0025】
本明細書中に特に示されていない限り、本発明のワクチン免疫原、コード化ポリヌクレオチド、発現ベクターおよび宿主細胞ならびに関連治療用途は全て、本明細書に例示されている方法または当技術分野においてよく知られた常套的に行われている方法に従い製造(作製)され、または実施されうる。例えば、以下を参照されたい:Methods in Enzymology,Volume 289:Solid-Phase Peptide Synthesis,J.N.Abelson,M.I.Simon,G.B.Fields(編),Academic Press;1st edition(1997)(ISBN-13:978-0121821906);米国特許第4,965,343号および第5,849,954号;Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,N.Y.,(3rd ed.,2000);Brentら,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(ringbou編,2003);Davisら,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier Science Publishing,Inc.,New York,USA(1986);またはMethods in Enzymology:Guide to Molecular Cloning Techniques Vol.152,S.L.BergerおよびA.R.Kimmerl編,Academic Press Inc.,San Diego,USA(1987);Current Protocols in Protein Science(CPPS)(John E.Coliganら編,John Wiley and Sons,Inc.),Current Protocols in Cell Biology(CPCB)(Juan S.Bonifacinoら編,John Wiley and Sons,Inc.)ならびにCulture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique by R.Ian Freshney,Publisher:Wiley-Liss;5th edition(2005),Animal Cell Culture Methods(Methods in Cell Biology,Vol.57,Jennie P.MatherおよびDavid Barnes編,Academic Press,1st edition,1998)。以下の節は、本発明の組成物および方法を実施するための追加的指針を記載する。
【0026】
II.定義
特に示されていない限り、本明細書中で用いる全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。以下の参考文献は、本発明で用いる用語の多くの一般的定義を当業者に提供するものである:Academic Press Dictionary of Science and Technology,Morris(編),Academic Press(1st ed.,1992);Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology,Smithら(編),Oxford University Press(revised ed.,2000);Encyclopaedic Dictionary of Chemistry,Kumar(編),Anmol Publications Pvt.Ltd.(2002);Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,Singletonら(編),John Wiley & Sons(3rd ed.,2002);Dictionary of Chemistry,Hunt(編),Routledge(1st ed.,1999);Dictionary of Pharmaceutical Medicine,Nahler(編),Springer-Verlag Telos(1994);Dictionary of Organic Chemistry,Kumar and Anandand(編),Anmol Publications Pvt.Ltd.(2002);ならびにA Dictionary of Biology(Oxford Paperback Reference),MartinおよびHine(編),Oxford University Press(4th ed.,2000)。本発明に具体的に適用される場合のこれらの用語の幾つかの更なる明瞭化が本明細書に記載されている。
【0027】
本明細書中で用いる単数形は、文脈に明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を指す。例えば、「Env由来三量体」は単一または複数の両方のEnv由来三量体分子を指すことが可能であり、「少なくとも1つのEnv由来三量体」なる語と同意義とみなされうる。
【0028】
本明細書中で用いる「抗原」または「免疫原」なる語は、対象において免疫応答を誘導しうる物質、典型的にはタンパク質を意味するものとして互換的に用いられる。この用語は、(直接的に、または該タンパク質をコードするヌクレオチド配列もしくはベクターを対象に投与することにより)対象に投与されると、そのタンパク質に対する体液性および/または細胞性免疫応答を誘発しうるという意味で免疫学的に活性であるタンパク質をも意味する。
【0029】
機能的に類似したアミノ酸を与える保存的アミノ酸置換は当技術分野でよく知られている。以下の6つの群はそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。タンパク質における全ての残基位置が、それ以外では「保存的」である置換を許容するわけではない。例えば、あるアミノ酸残基がタンパク質の機能に必須である場合、それ以外では保存的である置換でさえも、その活性を損ないうる。例えば、標的エピトープに対する抗体の特異的結合は該標的エピトープにおける保存的変異によって損なわれうる。
【0030】
エピトープは抗原決定基を意味する。これらは、抗原性である分子上の特定の化学基またはペプチド配列であって、特異的な免疫応答を誘発するものであり、例えば、エピトープは、Bおよび/またはT細胞が応答する抗原の領域である。エピトープは、連続的アミノ酸、またはタンパク質の三次元フォールディングにより並置される不連続的アミノ酸の両方から形成されうる。
【0031】
ワクチンまたは他の物質の有効量は、所望の応答を生成させるのに十分な量、例えば、エイズのような病態または疾患の徴候または症状を軽減または排除するのに十分な量である。例えば、これは、ウイルス複製を抑制するのに、またはウイルス感染の表立った症状、例えば、HIV-1感染の場合のT細胞数の増加を測定可能な様態で変化させるのに必要な量でありうる。一般に、この量は、ウイルス(例えば、HIV)の複製または感染性を測定可能な様態で抑制するのに十分なものである。対象に投与する場合、ウイルス複製のインビトロ抑制を達成することが示されている標的組織濃度(例えば、リンパ球におけるもの)を与える投与量が一般に使用される。幾つかの例においては、「有効量」は、例えばHIVを治療するために、障害または疾患のいずれかの1以上の症状および/または根本原因を治療する(予防を含む)ものである。一例においては、有効量は治療的有効量である。一例においては、有効量は、特定の疾患または状態の徴候または症状の1以上、例えば、エイズに関連した徴候または症状の1以上の発生を予防する量である。
【0032】
フェリチンは、全ての動物、細菌および植物において見出される球状タンパク質である。これは主として、水和鉄イオンおよびプロトンをミネラル化コアから及びミネラル化コアへ輸送することにより多核Fe(III)2O3形成の速度および位置を制御するように作用する。球状形態のフェリチンは、約17~20kDaの分子量を有するポリペプチドである単量体サブユニットタンパク質(単量体フェリチンサブユニットとも称される)から構成される。
【0033】
本明細書中で用いる融合タンパク質は、単一タンパク質を形成するようにペプチド結合により連結された、少なくとも2つの無関係なタンパク質からのアミノ酸配列を含有する組換えタンパク質である。無関係なアミノ酸配列は互いに直接連結されることが可能であり、あるいはそれらは、リンカー配列を使用して連結されうる。本明細書中で用いるタンパク質が無関係であると言えるのは、それらのアミノ酸配列が、通常、それらの天然環境(例えば、細胞内)においてペプチド結合により互いに連結された状態では見出されない場合である。例えば、フェリチンを構成する単量体サブユニットのアミノ酸配列、およびHIV-1 gp120またはgp41糖タンパク質のアミノ酸配列は、通常、ペプチド結合により互いに連結された状態では見いだされない。
【0034】
HIV-1エンベロープタンパク質(Env)は、最初は、845~870アミノ酸の、より長い前駆体タンパク質(gp160と称される)として合成される。gp160はホモ三量体を形成し、ゴルジ装置内でグリコシル化を受ける。インビボにおいて、gp160糖タンパク質はエンドタンパク質分解によって成熟エンベロープ糖タンパク質gp120およびgp41へとプロセシングされ、これらは該ウイルスの表面上で複合体として非共有結合によって互いに結合する。gp120表面タンパク質は、HIVの主要受容体であるヒトCD4に対する、ならびにケモカイン受容体CCR5およびCXCR4のような融合補助受容体と相互作用するドメインに対する高アフィニティ結合部位を含有する。gp41タンパク質はウイルス膜にわたって広がり、そのアミノ末端に、ウイルス膜と細胞膜との融合に重要なアミノ酸配列を含有する。HIV-1エンベロープ糖タンパク質複合体の天然融合許容形態は、3つのgp120サブユニットおよび3つのgp41サブユニットから構成される三量体構造である。受容体結合(CD4および補助受容体)部位はgp120部分に位置し、一方、融合ペプチドはgp41成分に位置する。野生型gp160ポリペプチドの典型的配列は、GenBankに、例えばアクセッション番号AAB05604およびAAD12142として示されている。
【0035】
gp140は、gp120および全gp41外部ドメインの全てを含有する、HIVエンベロープタンパク質のオリゴマー形態を意味する。
【0036】
gp120はヒト免疫不全ウイルス(HIV)のエンベロープタンパク質である。gp120はHIVエンベロープ糖タンパク質複合体の外部表面露出ドメインの大部分を含有し、細胞CD4受容体および細胞ケモカイン受容体(例えば、CCR5)の両方に結合するのはgp120である。成熟gp120野生型ポリペプチドは一次配列内に約500個のアミノ酸を有する。Gp120は高度にN-グリコシル化されていて、120kDの見掛け分子量を有する。該ポリペプチドは5つの保存領域(C1~05)および5つの高可変性領域(V1~V5)から構成される。gp120糖タンパク質は、その三次構造において、3つの主要構造ドメイン(外部ドメイン、内部ドメインおよび架橋シート)および可変ループを含む。例えば、Wyattら,Nature 393,705-711,1998およびKwongら,Nature 393,649-59,1998を参照されたい。内部ドメインはgp41エンベロープ糖タンパク質と相互作用すると考えられており、一方、外部ドメインは、集合したエンベロープ糖タンパク質三量体上に露出している。
【0037】
gp120の可変領域1および可変領域2(V1/V2ドメイン)は、HIV-1の最も可変性の部分のうちの2つ(V1ループおよびV2ループ)を含有する約50~90残基を含み、V1/V2ドメインの10残基のうちの1つはN-グリコシル化されている。
【0038】
gp41は前駆体HIVエンベロープタンパク質のタンパク質分解産物である。それはN末端融合ペプチド(FP)、膜貫通ドメイン、および該融合ペプチドと膜貫通ドメインとを連結する外部ドメインを含む。gp41は三量体立体配置のままであり、非共有結合的にgp120と相互作用する。典型的なgp41のアミノ酸配列はGenBankにおいてアクセッション番号CAD20975として記載されている。
【0039】
BG505 SOSIP.664 gp140は、クレードA株BG505由来のgp140三量体を使用して開発されたHIV-1 Env免疫原である。それは、切断されたgp120とgp41ECTOとの間に、操作されたジスルフィド結合(SOSと呼ばれる)による共有結合を含有する。また、それは、gp41融合後コンホメーションを不安定化させるためのI559P変異(IPと称される)、そしてまた、可溶性を改善するための残基664における膜近位外部領域(membrane-proximal external region)(MPER)のトランケート化を有する。このHIV-1免疫原は顕著な抗原プロファイルおよび天然スパイクの優れた構造擬態を示す。選別プローブとしてSOSIP三量体を使用して、新規bNAbを特定し、特徴づけした。SOSIPの設計は他のHIV-1株にも拡張されており、追加的な安定化変異の組込みを可能にしている。最近、ウサギおよび非ヒト霊長類におけるSOSIP三量体の免疫原性が報告され、ヒトのワクチン試験のための道が開かれた。
【0040】
HXB2の番号付け系は、HIV-1 HXB2株配列を他の全てのHIV株配列に関する基準として使用する、HIVタンパク質および核酸配列の参照番号付け系である。HXB2番号付け系は当業者によく知られており、この系は、“Numbering Positions in HIV Relative to HXB2CG”,Bette Korberら,Human Retroviruses and AIDS 1998:A Compilation and Analysis of Nucleic Acid and Amino Acid Sequences.Korber B,Kuiken C L,Foley B,Hahn B,McCutchan F,Mellors J WおよびSodroski J編,Theoretical Biology and Biophysics Group,Los Alamos National Laboratory,Los Alamos,N.Mexに記載されている。
【0041】
免疫原は、哺乳動物、例えば、病原体に感染した又は病原体による感染のリスクを有する哺乳動物において免疫応答を誘導しうるタンパク質またはその一部である。免疫原の投与は、関心のある病原体に対する防御免疫および/または予防免疫をもたらしうる。
【0042】
免疫原性表面は、免疫応答を惹起しうる分子、例えばgp120のようなタンパク質の表面である。免疫原性表面は、その表面の特徴的特性、例えば三次元形状および表面電荷を含む。幾つかの例においては、免疫原性表面は、タンパク質と抗体とが互いに結合する場合に抗体(例えば、中和抗体)と接触するタンパク質またはペプチドの表面上のアミノ酸によって定められる。標的エピトープは免疫原性表面を含む。免疫原性表面は抗原表面と同義である。
【0043】
免疫応答は、免疫系の細胞、例えばB細胞、T細胞または単球の、刺激に対する応答を意味する。幾つかの実施形態においては、該応答は特定の抗原に特異的である(「抗原特異的応答」)。幾つかの実施形態においては、免疫応答は、T細胞応答、例えばCD4+応答またはCD8+応答である。幾つかの他の実施形態においては、該応答はB細胞応答であり、特異的抗体の産生をもたらす。
【0044】
免疫原性組成物は、免疫原性ポリペプチドを発現するウイルスに対する測定可能なCTL応答を誘導する、または免疫原性ポリペプチドに対する測定可能なB細胞応答(例えば、抗体の産生)を誘導する免疫原性ポリペプチドを含む組成物を意味する。
【0045】
2以上の核酸配列または2以上のアミノ酸配列間の配列同一性または類似性はそれらの配列間の同一性または類似性として表される。配列同一性は同一性の割合(%)として測定可能であり、その割合が高ければ高いほど、それらの配列の同一性はより高い。核酸またはアミノ酸配列のホモログまたはオルソログは、標準的な方法を用いてアライメント(整列)された場合、比較的高い度合の配列同一性/類似性を有する。比較のための配列のアラインメントの方法は当技術分野においてよく知られている。種々のプログラムおよびアライメントアルゴリズムが、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981;Needleman & Wunsch,J.,Mol.Biol.48:443,1970;Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444,1988;Higgins & Sharp,Gene,73:237-44,1988;Higgins & Sharp,CABIOS 5:151-3,1989;Corpetら,Nuc.Acids Res.16:10881-90,1988;Huangら,Computer Appls.in the Biosciences 8,155-65,1992;およびPearsonら,Meth.Mol.Bio.24:307-31,1994に記載されている。Altschulら,J.Mol.Biol.215:403-10,1990は配列アライメント方法およびホモロジー計算の詳細な考察を記載している。
【0046】
回転対称性(回転対称)は、生物学的状況においては放射相称としても公知であり、ある量の回転の後に同じに見える物体の特性を意味する。物体は、例えば反射およびそれを回転させることが考慮されない場合には、複数の回転対称性を有しうる。回転対称度は、異なる側面または頂点において同じに見えるために形状が回転されることを要する角度である。それは、同じ側面または頂点であってはならない。特定の点(二次元において)または軸(三次元において;例えば、本明細書に記載されている3回軸)に関するn次の回転対称(n回回転対称またはn次の離散回転対称とも称される)は、360°/n(180°、120°、90°、72°、60°、51 3/7°など)の角度の回転が物体を変化させないことを意味する。
【0047】
バクテリオファージQβ(本明細書においてはQβまたはQとして示されている)は、25nmの直径を有する二十面体ウイルスである。その宿主は大腸菌(Escherichia coli)である。QβはF線毛の側面からその宿主細胞に侵入する。Qβのゲノムは4217ヌクレオチド長である。該ゲノムは3つのオープンリーディングフレームを有し、4つのタンパク質、すなわち、A1、A2、CPおよびqβレプリカーゼをコードしている。例えば、van Duinら,“Single-stranded RNA phages.Chapter 15”.In Calendar,R.L.The Bacteriophages(Second ed.,2006).Oxford University Press.pp.175-196を参照されたい。Qβのゲノムは高度に構造化されており、これは遺伝子発現を調節し、宿主のRNアーゼからゲノムを保護する。
【0048】
「対象」なる語は、哺乳動物、例えばヒト、および非ヒト哺乳動物として分類される任意の動物を意味する。非ヒト動物の例には、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどが含まれる。特に示されていない限り、「患者」または「対象」なる語は本明細書においては互換的に用いられる。好ましくは、対象はヒトである。
【0049】
「治療」または「緩和」は、疾患(例えば、HIV感染)の症状、合併症または生化学的兆候の発生開始を予防し又は遅延させるために対象に化合物または物質を投与すること、症状を緩和すること、あるいは疾患、状態または障害の更なる進行を阻止または抑制することを含む。治療を要する対象は、疾患または障害に既に罹患している対象、および障害を発生するリスクを有する対象を含む。治療は(疾患の発生開始を予防し又は遅延させるための、あるいはその臨床的または亜臨床的症状の発現を予防するための)予防的抑制、または疾患の発現の後の症状の治療的抑制もしくは緩和でありうる。
【0050】
ワクチンは、対象において予防的または治療的免疫応答を惹起する医薬組成物を意味する。幾つかの場合には、免疫応答は防御免疫応答である。典型的には、ワクチンは、病原体の抗原、例えばウイルス病原体、または病理学的状態と相関する細胞成分に対する抗原特異的免疫応答を惹起する。ワクチンは、ポリヌクレオチド(例えば、開示されている抗原をコードする核酸)、ペプチドまたはポリペプチド(例えば、開示されている抗原)、ウイルス、細胞または1以上の細胞成分を含みうる。
【0051】
ウイルス様粒子(VLP)は、幾つかのウイルスのいずれかに由来する非複製性ウイルス殻を意味する。VLPは、一般に、1以上のウイルスタンパク質、例えば、カプシド、コート(外被)、殻、表面および/またはエンベロープタンパク質と称されるタンパク質(これらに限定されるものではない)、あるいはこれらのタンパク質に由来する粒子形成性ポリペプチドから構成される。VLPは適切な発現系におけるタンパク質の組換え発現に際して自発的に生成しうる。特定のVLPの製造方法は当技術分野で公知である。ウイルスタンパク質の組換え発現後のVLPの存在は、当技術分野で公知の通常の技術、例えば電子顕微鏡法、生物物理学的特徴づけなどを用いて検出されうる。例えばBakerら(1991)Biophys.J.60:1445-1456;およびHagenseeら(1994)J.Virol.68:4503-4505を参照されたい。例えば、VLPは密度勾配遠心分離により単離可能であり、および/または特徴的密度バンディングにより特定可能である。あるいは、極低温電子顕微鏡法が、問題のVLP調製物のガラス化水性サンプルに対して実施可能であり、適切な曝露条件下でイメージが記録されうる。
【0052】
III.再設計HR1領域を含有する修飾HIV-1 gp140タンパク質および免疫原
HIV-1 Envは膜貫通糖タンパク質(gp41)と表面糖タンパク質(gp120)とのヘテロ二量体である。これらの二量体はウイルス膜の表面上の三量体として構成されている。本発明のHIV-1三量体免疫原は、gp41におけるヘプタド領域1(HR1)の再設計N末端(残基548~568)を有するgp41由来ポリペプチドとgp120由来のポリペプチドとを含有するgp140関連タンパク質から形成される。該gp140関連タンパク質は、本明細書に記載されている適切な三量体構造(例えば、天然様三量体コンフォメーション)を維持すべきである。gp120由来ポリペプチドとgp41由来のポリペプチドとは天然HIV-1 gp140タンパク質の場合のように非共有結合することが可能であり、または本明細書に記載されているリンカー配列を介して共有結合することが可能である。十分に特徴づけされたgp120糖タンパク質はコアおよび幾つかの可変ループまたはドメイン(例えば、V1V2ドメインおよびV3ドメイン)を含有する。種々のgp120由来ポリペプチドが本発明の実施において使用されうる。gp120由来ポリペプチドは野生型gp120糖タンパク質の全長配列を含有する必要はない。したがって、gp120由来ポリペプチドは、例えば、天然gp120タンパク質、gp120糖タンパク質のV1V2ドメイン、gp120コア(すなわち、内部ドメインおよび外部ドメイン)、およびgp120コアの外部ドメインのみでありうる。幾つかの実施形態においては、使用されるgp120由来ポリペプチドはそのgp41相互作用領域および抗原エピトープ(例えば、外部ドメイン)を含む。
【0053】
典型的には、gp140由来ポリペプチドは、十分に特徴づけされたHIV bnAb(例えば、PG9、PG16、CH03、PGDM1400、VRC01、4E10および10E8)の1以上により認識される天然エピトープ(例えば、「HIV-1脆弱性部位」または「広範中和エピトープ」)を含有し、露出しているすべきである。例えば、PG9は、HIV-1 gp120のV1/V2ドメインに特異的に結合し、標的細胞のHIV-1感染を予防する広範中和性モノクローナル抗体である(例えば、Walkerら,Nature,477:466-470,2011;およびWO/2010/107939を参照されたい)。また、保存的アミノ酸置換を含有する配列、または本明細書に例示されているgp140由来ポリペプチドと実質的に同一である配列も、本発明において使用されうる。種々の実施形態においては、本発明のワクチン免疫原は、よく知られたHIV-1 bnAb(例えば、PG9、PG16、CH03、PGDM1400、VRC01,4E10および10E8)の1以上(例えば、2、3、4、5つ以上)に特異的に結合するそれらの抗原性によって更に特徴づけられる。そのような抗原性は、当技術分野で常套的に実施されている方法、例えば、オクテット測定(ForteBio,Inc.)によって容易に評価されうる。例えば、Feraら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.111:10275-10280,2014;およびMcGuireら,J.Virol.88:2645-2657,2014を参照されたい。
【0054】
gp120由来ポリペプチド以外に、本発明のHIV-1三量体免疫原を製造するためのgp140関連タンパク質は、ヘプタド領域1(HR1)の再設計N末端(残基548~568)を有するgp41由来ポリペプチドをも含有する。幾つかの実施形態においては、本発明の操作gp140免疫原におけるgp120およびgp41ポリペプチドは、同じHIV-1株または亜型に由来する。幾つかの実施形態においては、gp140タンパク質におけるgp120およびgp120ポリペプチドは、異なるHIV-1株または亜型に由来する。例えば、本明細書に例示されているとおり、BG505株由来の修飾gp41またはHIV-1配列データベース由来の汎用gp41ドメインは、種々の他のHIV株または亜型に由来するgp120と組合されて、異なるキメラgp140三量体免疫原を形成しうる。本発明の操作gp140免疫原における修飾gp41由来ポリペプチドは、典型的には、本明細書に記載されているN末端修飾を除いて、天然gp41タンパク質のHR1領域を含有する。HR1領域は宿主細胞とのウイルス融合中に劇的なコンホメーション変化を受ける。好ましくは、gp41由来ポリペプチドは、膜貫通領域がトランケート化された可溶性ポリペプチド、例えば、外部ドメイン(gp41ECTO)を含有するポリペプチド、または融合ペプチドと外部ドメインとを含むポリペプチドである。種々の実施形態においては、gp41由来ポリペプチドのHR1の21残基のN末端(残基548~568)は、融合前gp140構造を安定化させるために、より短いループ配列で置換される。該ループ配列は約6~約14個のアミノ酸残基を含有しうる。本発明のHIV-1三量体免疫原に適した特定のループ配列は、適切な機能(例えば、gp140の融合前コンホメーションを安定化させるもの)を保証する合理的設計により得られうる。例えば、HR1 N末端を置換する、より短いループ配列は、本明細書に例示されている、アンサンブルに基づくデノボタンパク質設計方法により設計されうる。本明細書中の実施例に詳細に記載されているとおり、コンピュータによる方法に基づくHR1再設計のほぼ全てが三量体の収率および純度に関する実質的な改善を示した。
【0055】
幾つかの実施形態においては、HR1 N末端を置換する挿入ループ配列は10アミノ酸残基を含有する。そのようなループ配列の具体例を配列番号1~5に示す。幾つかの他の実施形態においては、該置換ループ配列は8アミノ酸残基を含有する。そのようなループ配列の例を配列番号6~15に示す。更に幾つかの他の実施形態においては、HR1 N末端を置換するループ配列は約6、7、9、11、12、13または14アミノ酸残基を含有しうる。そのようなループ配列は、8残基および10残基ループ配列に関して本明細書に例示されているのと同じ合理的再設計法を適用することによって容易に得られうる。幾つかの他の実施形態においては、GS((GS)
n;配列番号23)の2~7個の縦列反復を含有する一般的ループ配列がHR1 N末端の再設計において使用されうる。本明細書に示されているとおり(例えば、
図2a)、一般的ループ配列(GS)
4(配列番号24)は種々のHIV-1株由来の修飾gp140免疫原の構築に有効であることが示された。
【0056】
本発明のHIV-1三量体免疫原を形成させるための幾つかのgp140由来タンパク質は、HR1 N末端修飾に加えて、非切断性gp140タンパク質を作製するために、gp120とgp41との間のプロテアーゼ切断部位がリンカー配列で置換されている。本明細書に例示されているとおり、本発明のgp140由来タンパク質免疫原において種々の切断部位リンカーが使用されうる。種々の実施形態においては、該リンカーは種々の長さの種々のアミノ酸残基を含有しうる。幾つかの実施形態においては、4残基切断部位(すなわち、残基508~511)がリンカー配列で置換される。例えば、該切断部位は、SGSモチーフの縦列反復の1以上を含有するリンカーで置換されうる。あるいは、該切断部位は(G4S)2(配列番号22)のリンカーで置換されうる。幾つかの他の実施形態においては、より長い切断部位含有領域(例えば、残基501~518)がリンカー配列で置換される。これらの実施形態の幾つかにおいては、リンカーは8アミノ酸残基配列を含有する。gp140由来タンパク質における切断部位を置換する幾つかの特定のリンカー配列を配列番号16~20に示す。本明細書に例示されているとおり、本発明のgp140免疫原における切断部位リンカー配列と再設計HR1 N末端との組合せは三量体の収率および純度における更なる改善をもたらす。
【0057】
幾つかの実施形態においては、gp120とgp41との結合は、Env、SOS gp140の可溶性形態を得るための適切に配置された分子間ジスルフィド結合の導入によって安定化されうる。そのような安定化天然Env複合体は、三量体gp120-gp41複合体が免疫系に提示される時間を延長させるであろう。第1および第2可変(V1およびV2)ループを欠失させ、gp41の約559位のN末端ヘプタド反復領域にアミノ酸置換を導入することによっても、SOS gp140におけるgp120-gp41相互作用は安定化されうる(例えば、WO 03/022869を参照されたい)。1つのそのような修飾gp140タンパク質はSOSIP gp140であり、これはI559P置換を含有する。SOSIP gp140は、適切にフォールディングされタンパク質分解的に切断される実質的に三量体であり、適切な受容体結合および抗原特性を有する。gp140または他のEnv由来三量体の安定性および免疫原性は、本明細書に記載されている三量体提示形態によって更に増強されうる。
【0058】
幾つかの実施形態においては、修飾gp140関連タンパク質は更に、残基332に修飾グリカン部位を含みうる(T332N)。幾つかの他の実施形態においては、再設計HR1 N末端を含有する修飾gp140タンパク質は、切断部位に導入された他の変異または改変をも有し、例えば、REKR(配列番号25)がRRRRRR(配列番号26)で置換されている。種々の実施形態においては、修飾gp140タンパク質のC末端は残基664または681(HXB2命名法による)のいずれかへとトランケート化されて、当技術分野で公知の「BG505 SOSIP.gp140.664」および「BG505 SOSIP.gp140.681」のような2つのgp140形態をもたらしうる。また、本発明のHIV-1免疫原は種々のHIV-1クレードまたは株(例えば、株BG505(クレードA)、JRFL(クレードB)CAP45(クレードC)、ZM109(クレードC)、DU172.17(クレードC)およびCH115.12(クレードB’/C))からの種々のgp140由来タンパク質を使用しうる。HIV-1は、4つの群、すなわち、「主要」群M、「アウトライヤー」群O、群Nおよび群Pに分類されうる。群Mには、遺伝的に異なる幾つかのHIV-1クレード(または亜型)が存在する。本発明のためのgp140三量体は、HIVの任意の亜型、例えば、群M、N、OもしくはP、またはクレードA、B、C、D、F、G、H、JもしくはKなどに由来しうる。HIV-1 Env糖タンパク質をコードする配列、ならびにそのような核酸配列の操作およびベクター内への挿入のための方法は公知である(例えば、HIV Sequence Compendium,Division of AIDS,National Institute of Allergy and Infectious Diseases(2003);HIV Sequence Database(hiv-web.lanl.gov/content/hiv-db/mainpage.html);Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,N.Y.,(3rd ed.,2000);およびBrentら,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(ringbou編,2003)を参照されたい)。更に、同様の1型融合メカニズムを用いるほとんどの包膜ウイルス、例えばインフルエンザウイルス、エボラおよび呼吸器合胞体ウイルス(RSV)にはHR1型領域が存在する。本発明のHIV-1 gp140免疫原を作製するための方法は、その他の包膜ウイルスに関するワクチン免疫原を設計し製造する際にEnvスパイクを安定化させるためにも用いられうる。
【0059】
後記に詳細に記載されているとおり、gp140由来タンパク質は種々の手段により提示プラットフォーム(例えば、ナノ粒子またはVLP)にコンジュゲート化されうる。好ましくは、コンジュゲート化は、共有結合、例えばタンパク質融合または挿入により達成される。幾つかの好ましい実施形態においては、タンパク質配列は、リンカー配列を介して提示プラットフォーム配列と融合される。本発明の種々の免疫原においては、安定性または抗原性を改善するために、gp140由来三量体または結合相手に対して他の修飾も施されうる。
【0060】
本発明で使用される種々のgp140由来タンパク質は、本明細書に例示されている方法または当技術分野でよく知られた方法により入手または製造されうる。組換え発現(例えば、本明細書に詳細に記載されているHEK293F細胞におけるもの)に際して、該タンパク質は、常套的に実施されている方法のいずれかにより精製されうる。例えば、Guide to Protein Purification,Deutscher編,Meth.Enzymol.185,Academic Press,San Diego,1990;およびScopes,Protein Purification:Principles and Practice,Springer Verlag,New York,1982を参照されたい。実質的な精製は他のタンパク質または細胞成分からの精製を意味する。実質的に精製されたタンパク質は少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または98%の純度を有する。また、一旦精製されたら、gp140由来タンパク質から形成されたgp140三量体免疫原の抗原性および他の特性は、標準的な方法、例えば、公知bNAbおよび非Nabを使用する抗原プロファイリング、示差走査熱量測定(DSC)、電子顕微鏡法、ELISAおよびバイオレイヤー(Biolayer)光干渉法(BLI)による結合分析、ならびに本明細書に例示されている共結晶学的分析によって容易に試験されうる。
【0061】
IV.スキャフォールドHIV-1三量体免疫原組成物
前記の可溶性gp140ベース三量体免疫原以外に、本発明は、三量体Env由来タンパク質を提示する又は組込む異種スキャフォールドを含有するHIV-1免疫原をも提供する。幾つかの実施形態においては、該異種スキャフォールドはナノ粒子またはウイルス様粒子(VLP)である。本発明のワクチン組成物を製造する際には、種々のナノ粒子プラットフォームが使用されうる。一般に、本発明で使用されるナノ粒子は単一サブユニットの複数コピーにより形成される必要がある。追加的または代替的に、粒子サブユニットのアミノ末端は露出されており、3回軸に近接している必要があり、3つのアミノ末端の間隔は種々のHIV-1三量体成分のカルボキシオール末端の間隔と厳密に一致している必要がある。幾つかの好ましい実施形態においては、免疫原は、約20nm以下の直径(通常は12、24または60個のサブユニットから構成される)および粒子表面上の3回軸を有する自己集合性ナノ粒子を含む。そのようなナノ粒子は、多価HIV-1三量体ワクチンを製造するための適切な粒子プラットフォームを提供する。
【0062】
幾つかの実施形態においては、HIV-1三量体提示ナノ粒子は、天然に存在するナノ粒子、例えば、表面上に3回軸を有するフェリチンイオンケージである。それらはHIV-1エンベロープ複合体(Env)の三量体成分の複数コピーの提示を可能にし、一連の多価三量体ワクチン候補を可能にする。一例としては、そのようなナノ粒子の1つはヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)由来のフェリチンナノ粒子である。フェリチンは、全ての動物、細菌および植物において見出される球状タンパク質である。その主要機能は、水和鉄イオンおよびプロトンをミネラル化コアに又はミネラル化コアから輸送することにより多核Fe(III)2O3形成の速度および位置を制御することである。球状形態のフェリチンは単量体サブユニットタンパク質(単量体フェリチンサブユニットとも称される)から構成され、これは、約17~20kDaの分子量を有するポリペプチドである。
【0063】
本発明において使用される単量体フェリチンサブユニットはフェリチンタンパク質の全長単一ポリペプチドまたはその任意の部分であり、これは単量体フェリチンサブユニットの自己集合を該タンパク質の球状形態へと向けさせうる。単量体フェリチンサブユニットが、表面上にHIV-1エピトープを提示するナノ粒子へと自己集合しうる限り、本発明の融合タンパク質を製造するために、任意の公知フェリチンタンパク質の単量体フェリチンサブユニットからのアミノ酸配列が使用されうる。本発明は、フェリチンに加えて、類似分子特性を有する多数の他の自己集合性ナノ粒子を使用しうる。これらには、例えば、1JIG(バシラス・アンスラシス(Bacillus anthracis)由来の12量体Dlp-2)、1UVH(マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycrobacterium Smegmatis)由来の12量体DPS)、2YGD(24量体眼レンズシャペロンαB-クリスタリン)、3CS0(24量体DegP24)、3MH6および3MH7(24量体HtrAプロテアーゼ)、3PV2(12量体HtrAホモログDegQ WT)、4A8C(大腸菌(E.coli)由来の12量体DegQ)、4A9G(大腸菌(E.coli)由来の24量体DegQ)、4EVE(ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)株YS29由来の12量体HP-NAP)および4GQU(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)由来の24量体HisB)を含有する分子が含まれる。
【0064】
幾つかの実施形態においては、HIV-1三量体免疫原提示ナノ粒子は、耐熱性60量体ナノ粒子、例えば、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)由来のジヒドロリポイルアシルトランスフェラーゼ(E2p)である。幾つかの実施形態においては、使用されるナノ粒子はアクイフェックス・エオリクス(Aquifex aeolicus)由来のルマジンシンターゼ(LS)でありうる。E2pは、23.2nmの直径と、粒子表面上の3回転軸頂点(threefold vertices)を分離する12個の大きな開口とを有する中空十二面体である。14.8nmの直径を有するLSは、T 1/4 1正二十面体対称性を有するカプシドに配置された60個のサブユニットの集合体である。本明細書に例示されているとおり、これらのナノ粒子(例えば、E2p)上に提示される三量体免疫原は、DCによる直接的取り込みのための最適サイズおよびbNAbによる認識の増強を含む、優れた構造的および機能的特性を有する。
【0065】
任意のEnv由来HIV-1三量体タンパク質がナノ粒子提示ワクチン組成物において使用されうる。幾つかの実施形態においては、ナノ粒子は、天然三量体形態の、HIV-1 Envに基づく糖タンパク質またはドメイン、例えば、本明細書(例えば、表2を参照されたい)に例示されているgp140、gp120またはV1V2ドメインを提示する。幾つかの実施形態においては、ナノ粒子は、修飾gp140三量体免疫原、例えば、本明細書に記載されているHR1修飾gp140三量体を提示する。HIV-1 Envの受容体結合タンパク質として、gp120はワクチン免疫原として広範に研究されているが、天然スパイク内に埋もれている非中和面の露出ゆえに、準最適であると現在では考えられている。本明細書中で実証されているとおり、フェリチンおよびE2pナノ粒子との全長gp120の提示はgp41の非存在下で天然様三量体コンホメーションを回復させうる。SOSIP様抗原性、ならびに粒子サイズおよび表面間隔の変動により、これらのナノ粒子は、gp120に基づくHIV-1ワクチンを研究するための汎用プラットフォームを提供する。
【0066】
また、Env由来三量体タンパク質は種々のHIV-1株から得られうる。幾つかの実施形態においては、Env由来三量体はHIV-1株BG505由来である。例示として、HIV-1株ZM109およびCAP45の三量体タンパク質を使用して、V1V2-フェリチンナノ粒子を製造した。gp140三量体、gp120末端を安定化させるための追加的ジスルフィド結合を有する全長gp120および種々の長さのgp120分子を提示するナノ粒子(E2pまたはフェリチン)も本明細書に例示されている。これらの例示は、本明細書に記載されている一般的ナノ粒子構造および設計の戦略が、他のHIV-1株に基づく多価HIV-1ワクチン候補を作製するために適用されうることを示している。
【0067】
種々の実施形態においては、これらのHIV-1 Env由来免疫原のいずれかを提示するナノ粒子は、三量体免疫原をナノ粒子のサブユニット(例えば、E2pまたはフェリチンサブユニット)に融合させることにより構築されうる。これらのナノ粒子に基づくHIV-1免疫原の抗原性および構造的完全性は、標準的なアッセイ、例えば、抗体結合アッセイおよびネガティブ染色電子顕微鏡法(EM)によって容易に分析されうる。本明細書に例示されているとおり、種々の融合分子が全て、Env由来三量体(例えば、gp140)の免疫原性エピトープを提示するナノ粒子へと自己集合しうる。頑強な三量体特異的bnAbを誘導することにより、これらのナノ粒子は、広範なHIV-1ウイルスに対して個体をワクチン接種するのに有用である。
【0068】
幾つかの実施形態においては、三量体Env由来タンパク質、例えば、本明細書に記載されているgp140由来三量体タンパク質を提示または組込む異種スキャフォールドは、ウイルス様粒子(VLP)、例えば、本明細書に例示されているバクテリオファージQβ VLPであり、あるいは、VLPと同じ分子的および幾何学的特性を有する自己集合性ナノ粒子である。一般に、本発明において使用されるVLPは、以下の基準の少なくとも1つ、好ましくは全てを満たす必要がある:(1)VLPは単一サブユニットの複数コピーにより形成される必要がある;(2)VLPは、表面上に提示される3回軸を有する必要がある;および(3)各VLPサブユニットのN末端は露出しており、3回軸に近接している必要があり、3つのN末端の間隔はHIV-1三量体抗原のC末端の間隔に合致していて、HIV-1抗原はVLPサブユニットのN末端に融合可能である。あるいは、3回軸は、VLPサブユニットにそれぞれが由来する3つの表面ループにより包囲されており、ここで、HIV-1抗原はサブユニット鎖内に挿入されうる。
【0069】
種々の実施形態においては、本発明の、VLPに基づくHIV-1免疫原は、B細胞活性化に十分である5~10nmの間隔で隔てられた少なくとも20~25個のエピトープを有しうる。幾つかの実施形態においては、VLPは30~40nmの直径および表面上の3回軸を有し、これらは、多価HIV-1三量体ワクチンを開発するための理想的プラットフォームを提供する。幾つかの実施形態においては、VLPに基づくHIV-1免疫原は、正二十面体ウイルスカプシドに関する注釈付きデータベースVIPERdb(http://viperdb.scripps.edu/)のバイオインフォマティクス分析により本発明者らにより特定されたVLPのいずれかを使用しうる。これらは、3.5オングストロームの結晶構造を有するバクテリオファージQ(PDB ID:1QBE)、3.5オングストロームの結晶構造を有するフロックハウスウイルス(FHV)カプシド(PDB ID:4FSJ)、3.25オングストロームの結晶構造を有するオルセーウィルスカプシド(PDB ID:4NWV)(PDBデータベース(http://www.rcsb.org/pdb)におけるもの)、および3.0オングストロームの結晶構造を有するB細胞活性化因子(BAFF)(PDB ID:1JH5)(これは60量体VLP様集合体を形成する)を含む。幾つかの好ましい実施形態においては、バクテリオファージQはその最適構造的特徴ゆえに使用される。本発明に適した追加的VLPは、これらの例示されたVLPのいずれかに関して特定されているものに類似した粒子集合体およびサブユニット構造のバイオインフォマティクス検索によって容易に特定されうる。例えば、バクテリオファージMS2(PDB ID:2WBH)およびP22(2XYYおよび2XYZ)は、抗原提示VLPワクチンプラットフォームを設計するために使用されている。これらの2つのバクテリオファージVLPは、本発明の多価HIV-1ワクチン免疫原を構築するためにも使用されうる。
【0070】
本発明の多価スキャフォールドHIV-1三量体免疫原は、本明細書に記載されている方法(例えば、実施例9~13)に従い構築されうる。HIV-1三量体免疫原を提示する種々のナノ粒子が本明細書に例示されている。これらには、フェリチン上に提示されるV1V2三量体(配列番号29~31)、フェリチン上に提示されるgp120三量体(配列番号32~34)、E2pまたはLSにより提示されるgp120三量体(配列番号35~36)、フェリチンナノ粒子上に提示されるgp140三量体(配列番号37~39)、およびLSまたはE2pナノ粒子上に提示されるgp140三量体免疫原(配列番号40~41)を含む。一般に、HIV-1三量体免疫原を提示するVLPを構築するために、該三量体配列はVLP配列に(例えば、VLPのN末端において)融合され、またはVLP配列内に挿入されうる。幾つかの実施形態においては、VLPは、そのN末端において、HIV-1 Env由来三量体、例えばHIV-1 V1V2、gp120に融合され、前記のSOSIP gp140三量体の2つの形態はVLP上に提示されうる。幾つかの他の実施形態においては、HIV-1 Env由来三量体はVLP内に挿入される。これらの実施形態においては、HIV-1三量体は、V1V2ドメインまたはgp120タンパク質でありうる。gp140のN末端およびC末端は遠いため、このEnv由来三量体はVLP内への挿入には適していない。本明細書に例示されているとおり、HIV-1 V1V2、gp120、およびSOSIP gp140の2つの形態をQサブユニットに融合させること、V1V2をFHVおよびオルセー(Orsay)サブユニットの表面ループ内に挿入すること、ならびにV1V2およびgp120をBAFFの表面ループ内に挿入することにより、一連のVLP構築物を作製した。後記実施例に詳細に記載されているとおり、抗体結合アッセイおよびネガティブ染色電子顕微鏡法(EM)を用いて、全てのQベースVLPに関して、抗原性およびVLP集合を確認した。また、FHV、オルセーおよびBAFFに基づくVLPに関しても、抗原性を確認した。
【0071】
V.医薬組成物および治療用途
本発明は、HIV-1感染を予防および治療するための、本明細書に記載されているHIV-1免疫原(例えば、可溶性gp140由来タンパク質、またはEnv由来三量体を提示するナノ粒子)を使用する医薬組成物および関連方法を提供する。幾つかの実施形態においては、本明細書に開示されている免疫原は医薬組成物中に含まれる。該医薬組成物は治療用製剤または予防用製剤のいずれかでありうる。典型的には、該組成物は更に、1以上の医薬上許容されるビヒクル、そして所望により、他の治療成分(例えば、抗生物質または抗ウイルス薬)を含む。種々の医薬上許容される添加物も該組成物において使用されうる。
【0072】
本発明の医薬組成物の幾つかはワクチンである。ワクチン組成物においては、適切なアジュバントが追加的に配合されうる。適切なアジュバントの例には、例えば、水酸化アルミニウム、レシチン、フロイントアジュバント、MPL(商標)およびIL-12が含まれる。幾つかの実施形態においては、本明細書に開示されているHIV-1免疫原は制御放出(コントロールリリース)または徐放性製剤として製剤化されうる。これは、徐放性ポリマーを含有する組成物において、またはマイクロカプセル化送達系もしくは生体接着性ゲルにより達成されうる。種々の医薬組成物は、当技術分野でよく知られた標準的な方法に従い製造されうる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19.sup.th Ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1995;Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson編,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978);米国特許第4,652,441号および第4,917,893号;米国特許第4,677,191号および第4,728,721号;ならびに米国特許第4,675,189号を参照されたい。
【0073】
本発明の医薬組成物は、対象においてHIV-1感染を治療するために又はHIV-1に対する免疫応答を惹起するために、種々の治療用途または予防用途において容易に使用されうる。例えば、該組成物は、免疫応答を誘導するために、例えば、HIV-1に対する広範中和性抗体の産生を誘導するため、対象に投与されうる。HIV感染の発生のリスクを有する対象には、本発明のワクチン組成物を投与して、ウイルス感染に対する予防的防御をもたらすことが可能である。具体的な対象および状態に応じて、本発明の医薬組成物は、当業者に公知の種々の投与方法により、例えば、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内、関節内、腹腔内または非経口経路により投与されうる。一般に、医薬組成物は、選択された疾患もしくは状態またはその1以上の症状を予防、抑制および/または改善するのに十分な時間にわたり、およびそれらのために十分な条件下で、そのような治療を要する対象に投与される。免疫原性組成物は、HIV-1に対する免疫応答を誘導するのに十分な量で投与される。治療用途には、該組成物は、本明細書に記載されているHIV-1免疫原の治療的有効量を含有すべきである。予防用途には、該組成物は、本明細書に記載されているHIV-1免疫原の予防的有効量を含有すべきである。該免疫原の適切な量は、治療または予防される具体的な疾患または状態、重症度、対象の年齢、および具体的な対象の他の個人的属性(例えば、対象の健康の全般的状態および対象の免疫系の頑健性)に基づいて決定されうる。有効投与量の決定は更に、動物モデル研究、およびそれに続く、ヒトでの臨床試験により導かれ、標的疾患症状または状態の発生頻度または重症度を有意に低減する投与プロトコールにより導かれる。
【0074】
予防用途には、免疫原性組成物は、いずれかの症状に先立って、例えば、感染に先立って投与される。免疫原性組成物の予防投与は、いずれかの後の感染を予防または改善するのに役立つ。したがって、幾つかの実施形態においては、治療される対象は、例えばHIVに対する曝露または曝露の可能性ゆえに、HIV感染を有する者またはHIV感染の発生リスクを有する者である。開示されている治療用組成物の治療的有効量の投与の後、対象は、HIV-1感染、HIV-1感染に関連する症状またはその両方に関してモニターされうる。
【0075】
治療用途には、免疫原性組成物は、疾患または感染の発生開始時または発生開始後、例えばHIV-1感染の症状の発生の後またはHIV-1感染の診断の後に投与される。したがって、免疫原性組成物は、感染および/または関連疾患症状の予想される重症度、持続時間または度合を低減するために、HIVウイルスへの予想される暴露の前に、またはウイルスへの曝露の後もしくは該曝露が疑われた後、または感染の実際の開始の後に投与されうる。
【0076】
本発明の医薬組成物は、HIV感染を治療または予防するための当技術分野で公知の他の物質と組合されうる。これらには、例えば抗体、または他の抗ウイルス剤、例えばヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、例えばアボカビル(abacavir)、AZT、ジダノシン(didanosine)、エムトリシタビン(emtricitabine)、ラミブジン(lamivudine)、スタブジン(stavudine)、テノホビル(tenofovir)、ザルシタビン(zalcitabine)、ジドブジン(zidovudine)など、非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、例えばデラビルジン(delavirdine)、エファビレンツ(efavirenz)、ネビラピン(nevirapine)、プロテアーゼインヒビター、例えばアンプレナビル(amprenavir)、アタザナビル(atazanavir)、インジナビル(indinavir)、ロピナビル(lopinavir)、ネルフィナビル(nelfinavir)、オサムプレナビル(osamprenavir)、リトナビル(ritonavir)、サキナビル(saquinavir)、チプラナビル(tipranavir)など、および融合タンパク質インヒビター、例えばエフビルチド(enfuvirtide)などが含まれる。該医薬組成物および該公知抗HIV剤の投与は同時または連続的でありうる。
【0077】
本発明のHIV-1ワクチン免疫原または医薬組成物はキットの成分として提供されうる。所望により、そのようなキットは、追加的成分、例えばパッケージング、説明、ならびに種々の他の試薬、例えばバッファー、基質、抗体またはリガンド、例えば対照抗体もしくはリガンド、および検出試薬を含みうる。所望により含まれうる説明書が更に、キットにおいて提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】
図1はHR1 N末端および切断部位のコンピュータ利用(computational)再設計を例示する。(a)BG505 SOSIP.664三量体(PDB ID:4TVP)の原子モデルおよび分子表面。1つのgp140プロトマー内のgp120およびgp41
ECTOの2つの領域(残基518-547および569-664)がそれぞれ青色、オレンジ色および赤色で着色されている。HR1 N末端(残基548~568)および切断部位含有領域(残基505~518)を包囲するgp140構造の拡大図が右側に示されており、ここで、構造間隙が黒色点線により連結されている。(b)HR1再設計の概要図。(c)HR1領域(残基548~568)の、アンサンブルに基づくデノボタンパク質設計のためのコンピュータ利用手順。ねじれ空間(torsion space)における局所的バックボーンサンプリング(工程1)および配列構造空間における悉皆的探索(工程2)の後、設計配列#1~5(それぞれ配列番号11~15)をエネルギーによりランク付けし、ついで、実験的検証のために候補体の手動選択を行う。
【
図2】
図2は、Env三量体を安定化させるための一般的なHR1ループ配列(リンカー)(GS)
4(配列番号24)の設計および検証を示す。(a)一般的なHR1リンカー(HR1-G)の設計の概要図。(b)クレードA BG505(左上)、クレードB JRFL(右上)、クレードC DU172.17(中;アンサンブルに基づくデノボタンパク質設計から得られた2つのHR1再設計が右側に含まれている)、およびB’/C組換え株CH115.12(下;CSF-SOSが右側に含まれている)に関する、Superdex 200 10/300カラムからのSOSIPおよびHR1-G三量体のSECプロファイル。三量体ピークのUV値、ならびに(10.5mLにおける)三量体ピークに対する(9mLにおける)凝集ピークおよび(12mLにおける)二量体/単量体ピークに関するUV値の比が表示されている。
【
図3】
図3は、8および10残基のループ長を有するHR1領域の、アンサンブルに基づくタンパク質設計を示す。(a)8残基(左)および10残基(右)のHR1ループのコンホメーションアンサンブルが緑色で着色されており、gp140プロトマー内のgp120および2つのgp41
ECTO領域(518~547および569~664)がそれぞれ青色、オレンジ色および赤色で着色されている。(b)8残基(上パネル)および10残基(下パネル)再設計HR1ループのCα二乗平均平方根(RMS)変動。(c)8残基(左)および10残基(右)再設計HR1ループに関して決定されたRAPDFスコアとCα二乗平均平方根(RMS)変動との間の相関性。(d)残基G547とT569との間の8残基HR1再設計に関して手動で選択された5つの最高ランクの配列(左;それぞれ配列番号6~10)および10残基HR1再設計に関して手動で選択された5つの最高ランクの配列(右;それぞれ配列番号1~5)。ループ配列により置換される残基548~568(配列番号28)を含む、N末端(配列番号27)を含むHR1配列が、これらの最高ランクのループ配列の上に示されている。コンピュータ利用設計に付されたWT SOSIP.664における領域。
【
図4】
図4は、切断部位含有領域(500~519)の、アンサンブルに基づくタンパク質設計、および最高の5つの設計の生化学的特徴づけを示す。(a)R500およびF519を連結する8残基ループのコンホメーションアンサンブル(左)、8残基ループのCα RMSF分布(右上)、ならびにRAPDFスコアとCα RMSFとの間の相関性(右下)。(b)5つの最高ランクの8残基CST設計(それぞれ配列番号16~20)が切断部位含有配列(配列番号21)の下に示されている。コンピュータ利用設計に付されたWT SOSIP.664における領域が黄色で強調表示されている。(c)293 Fにおいて発現され、GNL精製された5つの切断部位トランケート化(CST)BG505構築物(CST1~5)(Superdex 200 10/300カラム上のSECの後のもの)。各三量体構築物に関して、SEC画分の範囲が表示されている。CST1に関しては、三量体、二量体、単量体および未知のEnv形態がBNゲル上に表示されている。
【0079】
実施例
以下の実施例は本発明を例示するために記載されており、本発明を限定するものではない。
【0080】
実施例1:
HR1領域に関する、アンサンブルに基づくタンパク質設計
本発明者らは、HR1のN末端(残基548~568)がHIV-1三量体の準安定性の重要な決定因子であると仮定した。なぜなら、それは融合中に伸長する態勢にあり、SOSIP三量体の報告されている構造の1つを除く全てにおいて無秩序(disordered)であるからであり、この場合、それは、周囲の領域と比較して尚も無秩序であるようである(
図1a)。長いHR1中央へリックスの最上部の無秩序さは幾分か予想外である。なぜなら、この領域はEnv複合体のコアに存在するからである。しかし、この領域は、インフルエンザヘマグルチニンおよび他の1型ウイルス融合タンパク質の同等領域の場合と同様に(Wilsonら,Nature 289,1981)、リフォールドし、融合後形態においてはヘリックスになり、したがって、融合前形態においては、より無秩序であり、または少なくとも、完全に異なるコンホメーションを取ると予想される。SOSIP設計においては、操作されたジスルフィド結合(A501C/T605C)に加えて、I559P変異が、融合後状態を不安定化させるために導入され、高品質Envタンパク質の製造に決定的に重要であった。このことは、このHR1領域がEnvの準安定性に関連しうるという見解を強く支持している。
【0081】
この研究においては、HR1ベンド(bend;曲がり)を、BG505 SOSIP.664三量体(
図1b)のように、融合後コンホメーションを単に不安定化させるのではなく、融合前コンホメーションを安定化させるための合理的再設計に付した。この野生型(WT)HR1領域は21残基からなるが、G547とT569との間のCα距離は僅か24.8オングストロームであり、これは僅か6.3個の残基の完全伸長ポリペプチドバックボーンに相当する。ここでは、本発明者らは、WT HR1ループを劇的に短縮させる一方で低い柔軟性の度合を考慮して、HR1再設計のために2つのループ長(8および10アミノ酸)を検討することにした。本発明者らは、融合前三量体構造を安定化させうる配列を特定するために、アンサンブルに基づくタンパク質設計(「方法」を参照されたい)を用いた(
図1c)。特定のループ長を仮定して、G547とT569との間の間隙を架橋するために、バックボーンコンホメーションの、大きなアンサンブルを作製した(
図3a)。8残基ループでは、Cα二乗平均平方根変動(root-mean-square fluctuation)(RMSF)は1.3~5.7オングストロームの範囲(平均2.3オングストローム)であり、一方、10残基ループでは、3.6オングストロームの平均CαRMSFで、より大きな立体配座(コンホメーション)空間がサンプリングされた(
図3b)。配列空間における悉皆的サンプリングの後、全ての設計をそれらのエネルギースコアによってランク付けした(
図3c)。各ループ長に関する5つの最高ランクの配列(合計10個)を実験的検証へと進めた(
図3d)。
【0082】
実施例2 HR1再設計の生化学的および生物物理学的特徴づけ
SOSIP、sc-gp140およびNFL三量体に関して示されているとおり、生化学的および生物物理学的特性は三量体設計の初期評価をもたらす。同様の戦略に従い、本発明者らは、SOSIP.664三量体(I559P以外)と同じT332N(N332エピトープを回復させるためのもの)、SOS(A501C/T605C)およびR6変異を含有する10個のHR1再設計BG505三量体を評価した。前記のとおり、種々の精製プロトコールが種々の品質の三量体を産生しうる。ここでは、本発明者らは、ほとんどの研究者に容易に入手可能であり工業的状況で大規模化されうる材料を利用する、やや単純なプロトコルを採用し、既に記載されているとおりに(Sandersら,PLoS Pathog.9,e1003618,2013)、コトランスフェクトされたフューリンを含有するHEK293F細胞において、全ての構築物を一過性に発現させた。ガランツス・ニバリス(Galanthus nivalis)レクチン(GNL)カラムを使用し、ついでSuperdex 200 10/300カラム上で単一SECを使用して、分泌したEnvタンパク質を精製した。1リットルの発現は、SOSIP三量体に関する3つの別の2リットルの発現と比較して、十分な量(3~7mg)のHR1再設計三量体を産生した。GNL精製は最も純粋な三量体を産生しないが、それは、種々の三量体構築物に関する基本特性の比較(例えば、単量体/二量体、およびより高度な精製方法によって濾別される、より高次の多量体種)を可能にする。
【0083】
本発明者らは、紫外線280nm吸収値(UV)を利用する単純な測定に基づいて、SECプロファイルを比較した。三量体ピークのUV値を三量体収量の指標として用い、凝集体および二量体/単量体のピークを、それらのUV値と三量体ピークのUV値との比として測定した。前記の2リットルのSOSIP発現は、三量体ピークに関しては、371の平均UV値を示し、凝集体および二量体/単量体のピークに関しては、それぞれ31%および49%の平均比率を示した。前記の5つの8残基HR1再設計(それぞれ、HR1再設計1~5と称される)は、SECプロファイルにおける凝集体および二量体/単量体のピークを減少させ、三量体収量を有意に増加させた。全体として、HR1再設計1および2がこの群における最良の作用体であるようであった。例えば、HR1再設計2は、SOSIPと比較して凝集物および二量体/単量体ピークに関するUV値における16%および22%の減少を示し、三量体ピークのUV値における2倍近い増加を示し、これは三量体の収率および純度の両方の改善を示している。前記の5つの10残基HR1再設計(それぞれ、HR1再設計6~10と称される)は類似傾向を示したが、それほど顕著な改善は示さなかった。それでも、HR1再設計10は、2リットルの発現からのSOSIP三量体と同等の、三量体ピークに関するUV値を示し、HR1再設計1および2と同じ低いレベルの、望ましくないEnv種を示した。この知見は、より濃縮した三量体バンドをゲル上に示したブルーネイティブ(blue native)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(BN-PAGE)分析と合致した。示差走査熱量測定(DSC)による熱安定性の初期評価では、三量体含有画分は10.25~10.75mLで溶出した。試験した10個全てのHR1再設計に関して、DSCプロファイルは65.7~69.2℃の熱変性中点(Tm)を有する類似したアンフォールディングピークを示し、これは、SOSIP三量体に関して報告されている68.1℃のTmに酷似している。
【0084】
総合すると、このHR1領域の短縮化および再設計は、産生されるEnvタンパク質の組成に対して正の効果を及ぼした。HR1の再設計は、三量体の収率を増加させ他のEnv種を減少させることに加えて、親SOSIP.664三量体の熱安定性を維持した。このことは、このHR1連結ループ領域が、望ましくないEnv種の発現および存在に関するHIV-1三量体の準安定性の中心的な決定因子であるという見解を支持している。
【0085】
実施例3 2つの代表的なHR1再設計の結晶解析
HR1再設計1および9を結晶解析のために選択した。これらの2つの構築物は再設計ループ長において異なる(8アミノ酸と10アミノ酸)だけでなく、それらのSECプロファイルにおいても顕著に異なっており、再設計9はより多量の二量体を示し、これにより、HR1のトランケート化および設計変動がgp140三量体構造にどのように影響を及ぼすかを調べるための機会がもたらされる。結晶化のためのサンプルの均質性の厳密な要件ゆえに、本発明者らは、Kongら,Acta Crystallogr.Sect.D-Biol.Crystallogr.71,2099-2108,2015に既に記載されているとおりに、HR1再設計およびWT SOSIP三量体を調製した。簡潔に説明すると、全ての三量体をN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI陰性(GnTI-/-)HEK293S細胞内で産生させ、2G12アフィニティカラムおよびそれに続くSuperdex 200 16/600カラム上のSECを用いて精製した。WT SOSIP三量体に関しては、SECプロファイルは、三量体ピークの58%であるUV値、および単量体gp140を含有する、より低いピークを伴う、高分子量の顕著な凝集物ピークを示した。これとは対照的に、2G12精製HR1再設計は三量体の収率および純度における顕著な改善を示した。特に注目すべきことに、HR1再設計1はほぼ検出不可能なレベルのgp140単量体を示したが、HR1再設計9は少量の単量体を尚も含有していた。それでも、293 Sで発現され2G12で精製された三量体のSECプロファイルは、前記の、293 Fで発現されGNLで精製された三量体のものに合致している。この知見は更に、BN-PAGE、およびDSCにより測定された該修飾三量体の熱安定性によって確認された。このことは、改善された三量体特性がHR1再設計の本質的特徴であり、発現および精製系には無関係であることを示唆している。
【0086】
PGT128および8ANC195の抗原結合性フラグメント(Fab)での共結晶化は、8残基および10残基のHR1再設計三量体に関して、それぞれ6.9および6.3オングストロームの分解能で、複合構造を示した(表1)。全体として、該再設計三量体は、この中程度の分解能(solution)で、SOSIP三量体とほぼ同一の構造を示し、0.25オングストローム未満のCα平均二乗偏差(RMSD)を示した。したがって、該結果は、短縮化され再設計されたHR1を含有するgp140三量体が尚もSOSIP様融合前構造をとることを証明した。分解能により制限されたため、本発明者らは、再設計HR1ループのおおよそのバックボーンコンホメーションを決定することしかできなかったが、それは、これらの2つの異なる設計が融合前三量体をどのように安定化させるのかを示唆した。本発明者らは、該短縮化ループ長(21アミノ酸と比較した場合の8または10アミノ酸)および再設計配列がヘプタドモチーフを破壊し、融合前形態を安定化させると推測した。更に、両方のHR1再設計は8残基ループの2位および6位ならびに10残基ループの8位にプロリンを含有していたが、これらがバックボーンの剛性を増強した可能性がある。注目すべきことに、HR1再設計9におけるAsp6は隣接HR1ヘリックスのArg579と塩橋を形成して、わずかにターンしたループを安定化させる態勢にある。結論として、gp140は、全体の構造的完全性を犠牲にすることなくタンパク質産生効率を大幅に高めるHR1再設計に非常に耐えるようである。
【0087】
実施例4:HR1再設計BG505 gp140三量体の抗原プロファイリング
BG505 SOSIP.664三量体は抗体による免疫認識における天然スパイクの近似を表す。ここでは、本発明者らは、バイオレイヤー(bio-layer)干渉法(BLI)および免疫グロブリンG(IgG)を使用して、HR1再設計がbNAbへのEnv三量体の結合に影響を及ぼす又は非NAbへの結合に影響を及ぼすかどうかを調べることに努めた。ここでもまた、種々の三量体構築物の基本特性がより容易に比較可能となるよう、単純なGNL精製を用いて調製された三量体を調べた。抗原プロファイリングのための、良好にフォールドした三量体の選択を容易にするために、GNL精製後のSuperdex 200 16/600カラムから得られたSEC画分のBN-PAGEを行った。この場合、ネガティブ染色EMにより、HR1再設計を特徴づけした。リガンド未結合状態においては、22オングストロームの再構築は、同じプロトコールを用いて調製されたSOSIP三量体のものに酷似した形態を示した。結晶構造およびEM構造の合致は抗原の特徴づけの前のHR1再設計三量体の完全性を更に証明した。
【0088】
まず、代表的なbNAbのパネルへの三量体結合を測定した。付随グリカンシールドを有する三量体構造が天然様であるかどうかを調べるために、V1V2頂点指向性四次(quaternary)bNAb PGDM1400、PGT145およびPG16を使用した。PGD400の場合、HR1再設計1および9は、7~11nMの同等のKD(Koff/Kon)で、WT SOSIPより速いオンおよびオフ速度を示した。PG16およびPGT145に関しても同様のパターンが観察された。CD4結合部位(CD4bs)指向性bNAbのクラスの代表であるVRC01に関しては、3つ全ての三量体がほぼ同一の結合プロファイルを示し、このことは、HR1再設計が脆弱性のこの保存部位の提示にほとんど影響を及ぼさなかったことを示唆している。VRC01とは異なる接近角度でCD4に結合するNAb b12に関しても同様のパターンが見られた。V3ステムおよび周囲のグリカン(PGT121、PGT128およびPGT135)および高マンノースgp120グリカンクラスター(2G12)を標的とするbNAbに関しては、3つの全ての三量体が同一の結合プロファイルを示し、このことは、これらのグリカンエピトープがHR1再設計後にも無傷のままであったことを示している。最後に、本発明者らは、gp120およびgp41の両方の領域にまたがるコンホメーションエピトープを認識する2つのbNAbへの三量体結合を測定した。3つの三量体は全て、PGT151に強く結合し、速いオン速度および平らな解離曲線を示し、35O22結合動態において微妙な差異が観察された。
【0089】
次に、代表的な非NAbのパネルへの三量体結合を測定した。3つの試験された三量体は全て、CD4bs特異的MAbであるb6およびF105に結合した。HR1再設計三量体は、SOSIP三量体より弱い、F105への結合を示し、HR1再設計1に関しては、僅かに速いオフ速度が検出された。しかし、b6に関しては、動力学における差異は観察されなかった。2つのV3特異的MAbである19bおよび447-52Dに関しては、3つの三量体は全て、速い会合および遅い解離を示し、これらは、2G12精製SOSIP三量体を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)により確認された幾らかのV3露出を示すものであった。これまでに、19bはSOSIP三量体に結合することがELISAによって判明していたが、EMによっては限られた度合でしか検出されなかった。それでも、V3露出は、SOSIP三量体に関して最近示されたようなコンホメーション固定によって最小化されうる。ついで、本発明者らは、gp41ECTOのクラスターIにおける免疫優性エピトープを標的とする2つのMAbであるF240および7B2を試験した。SOSIP三量体は低レベルで両方のMAbに結合するようであり、F240に対する若干の優先性を示した。興味深いことに、それらの2つのHR1再設計はF240への結合の減少および7B2へのほとんど無視できる結合を示し、このことは、より閉鎖性の又はより低い柔軟性のgp41ECTOを示している。本発明者らはまた、2つのCD4i MAbである17bおよびA32の結合を調べた。3つの三量体は全て、sCD4の非存在下、17bへの結合を示さず、HR1再設計1は最小レベルのA32認識しか示さなかった。尤も、全ての三量体はこのMAbには弱く結合した。
【0090】
総合すると、それらの2つのHR1再設計は、頂点指向性四次bNAbに関する動力学の変化を除いて、bNAbによるそれらの認識において、広く類似したパターンを示した。3つの三量体は全て、幾らかのV3露出を示したが、それらの2つのHR1再設計は非中和性gp41ECTOエピトープをより有効に遮蔽するようであった。非NAbへの観察された結合は、Fabの代わりにIgGを使用したこと、およびBLI実験における異なる固定化法に起因すると考えられうる。
【0091】
実施例5
短いリンカーによるフューリン切断部位の置換
Sharmaらは最近、NFLと称される天然様の切断非依存的gp140三量体を報告した(Cell Rep.11,539-550,2015)。別の研究において、Georgievらは、gp120とgp41との間の切断部位を20残基までのリンカーで置換した(sc-gp140と称される;J.Virol.89,5318-5329,2015)。短いリンカーを有するsc-gp140三量体に関しては、異常な構造の存在が推測されたが、gp140のフォールディングおよび構造に対する切断部位修飾の厳密な効果は依然として不明であった。ここでは、本発明者らは、構造および抗原性の両方で既に検証されたHR1再設計1において、この決定的に重要な問題を検討した(
図2および
図3)。
【0092】
本発明者らはまず、gp120とgp41との間の再設計連結ループで切断部位含有領域(残基500~519)を置換する結果を調べた。R500とF519との間のCα距離は16.8オングストロームであり、これは4.4残基の完全伸長バックボーンに相当する。アンサンブルに基づくタンパク質設計は、R500とF519とを連結する8残基ループの大きなプールを与えた(
図4a)。注目すべきことに、この設計戦略はかなり積極的なものであった。というのも、A501は、今や、再設計に付された領域の一部であったため(T605C変異は元に戻った)、これらのループは、この領域における10残基のトランケート化およびSOS変異の除外ゆえに、未切断WT配列とは異なった様態でパックしうるからである。HR1再設計と同様に、フューリンの非存在下のHEK293 F細胞における一過性発現の後のSECおよびそれに続くGNL精製により、5つの最高ランクの設計(CST1~5と称される;
図4b)を特徴づけした。総合すると、CST1~5は、親HR1再設計と比較して減少した三量体収率および増加した凝集体を示した(これらは、SECプロファイルにおける主要三量体ピークの左の、より高い肩状部分により示された)。5つ全てのCST再設計に関して、BN-PAGE分析において、余分なバンドが観察された。これは産生タンパク質における特徴づけされていないEnv種の存在を示唆している(
図4c)。
【0093】
次に、完全長に近いSGSリンカー(CSFと称される)で切断部位(508REKR511)を置換する効果を調べた。興味深いことに、CSFは、SECプロファイルにおいて、CST1~5と比較して顕著に減少した凝集ピークを示した。これは、SOS変異(CSF-SOSと称される)を再び加えることによって更に改善された。Superdex 200 16/600カラム上のSECの後の三量体含有画分のBN-PAGE分析におけるCSF三量体に関して、CST1~5と同様に、余分なバンドが観察された。これは、短い切断部位リンカーに関連する共通のパターンを示唆した。この未知Env種を特定するために、ネガティブ染色EMを用いてCSF三量体の3D再構築体を得た。顕著なことに、リガンド未結合三量体に関して、2つの異なる形態が観察された。1つは、SOSIP三量体に類似した融合前状態(20オングストローム)のものであり、もう1つは、これまでに報告されていない非融合前状態(17オングストローム)におけるものである。この非融合前三量体コンホメーションは、伸長したgp41(約40~45オングストローム)を含有し、本明細書では以後、「融合中間体」と称される。それらの2つの異なる状態におけるPGV04結合CSF三量体の約20オングストロームのEM再構築体は、この分解能では解釈できない幾つかの非占有密度を示した。これとは対照的に、リガンド未結合形態(21オングストローム)およびPGV04結合形態(20オングストローム)の両方において、CSF-SOS三量体のEM再構築体に関して、単一のコンホメーションが観察された。要約すると、短い切断部位リンカーでは、CSTおよびCSF三量体は、SOS変異によって有効に抑制されうる融合中間状態を含有することを、EMは示唆した。
【0094】
次に、bNAbおよび非NAbの小さなパネルへのCSFおよびCSF-SOS三量体の結合を試験した。bNAbに関しては、それぞれV1V2頂点、CD4bsおよびgp120-gp41境界を標的とするPGDM1400、VRC01およびPGT151を使用した。CSFおよびCSF-SOS三量体は共に、類似した動力学的プロファイルおよびアフィニティで、PGDM1400に結合した。しかし、それらの2つの混合三量体形態ゆえに、CSFは、CSF-SOSと比較して低下した結合を示した。CSFおよびCSF-SOSは、SOSIP三量体の場合に類似した同一VRC01結合プロファイルを示した。このことは、CD4bsがこれらの三量体において同等に接近可能であることを示唆している。PGT151に関しては、CSFおよびCSF-SOSは、顕著なオフ速度で、結合の低下を示した。このことは、gp120とgp41との間のリンカーがPGT151の結合に影響を及ぼしうることを示唆している。3つの非中和性MAbも試験した。CSFは、混合融合中間体ゆえに、CD4bs指向性F105に、CSF-SOSより強く結合した。V3指向性19bに関しては、両方のCSF三量体は、SOSP三量体およびHR1再設計1と比較して類似した結合プロファイルを示した。これとは対照的に、CSFは、CSF-SOSにおけるSOS変異によって有効に低減したgp41指向性F240への結合の増強を示した。
【0095】
実施例6 長いリンカーでのフューリン切断部位の置換
これまでの本発明者らの分析ならびにNLおよびsc-gp140三量体に関する報告に基づき、長い切断部位リンカーと組合されたHR1再設計は、融合中間体を形成する傾向を克服することが可能であり、未切断融合前最適化(UFO)三量体を与えうると仮定した。この目的のために、HR1再設計1およびNFL様リンカー(2×G4S)に基づく2つの三量体を試験した。CSLおよびCSL-SOSと称されるこれらの2つの構築物をHEK293 F細胞において一過性に発現させ、ついでGNL精製およびSuperdex 200 16/600カラム上のSECに付した。両方のCSL三量体は、CSF三量体のものに類似したSECプロファイルを示し、妥当な収率を示した。CSLに関しては、余分なバンドはBNゲル上で明確には特定されなかったが、該三量体バンドは、CSL-SOSに関して観察されたものより拡散しているようであった。それらの構造を更に特徴づけるために、それぞれ17および20オングストロームの分解能でリガンド未結合CSLおよびCSL-SOS三量体のEM再構築体を得た。CSL三量体は、WT SOSIP、HR1再設計1、融合前CSFおよびCSF-SOS三量体とは幾分異なる形態を示した。すなわち、CSL三量体の密度は、三量体頂点の最上部において、より狭く、外側を向く追加的な密度を伴い、gp41の周囲に、より広い底部を有するようであった。CSL-SOS三量体の全体的な形状はCSF-SOS三量体のものに合致した。PGV04結合CSLおよびCSL-SOS三量体の約20オングストロームの再構築体はSOSIP三量体のものに類似しており、これはbNAb結合の際の安定化を示している。総合すると、EMによって示唆されるとおり、長い切断部位リンカーは、おそらく、より大きなコンホメーション変動性という代償を伴って、融合中間体の形成を低減しうる。
【0096】
前記の2つのHR1再設計の場合と同じbNAbsおよび非NAbsのパネルを使用して、CSLおよびCSL-SOS三量体に関して抗原プロファイリングを行った。頂点指向性bNAbであるPGDM1400、PG16およびPGDM145に関しては、2つのCSL三量体は、HR1再設計1の場合に類似した結合動力学およびKD値を示した。CD4bs指向性bNAb(VRC01)、NAb b12およびグリカン反応性bNAb(PGT121、PGT128、PGT135および2G12)に関しては、それらの2つのCSL三量体はHR1再設計1およびSOSIP三量体とほぼ同じ結合プロファイルを示した。予想通り、bNAb PGT151および35O22に関して、最も明らかな差異が見出された。三量体における1つのgp120および2つの隣接gp41からなるエピトープに結合するPGT151に関しては、切断されたHR1再設計三量体およびSOSIP三量体は平坦な解離曲線を示した。しかし、CSL三量体は、CSF三量体に関して観察されたものに類似した、より速いオフ速度を示した。このことは、切断部位リンカーにより引き起こされた一貫した効果を示している。これとは対照的に、単一gp140プロトマーにおけるgp120およびgp41に結合する35O22に関しては、オフ速度は切断に依存しないようであった。MAb F240および7B2は、CSL-SOSに関しては、gp41上の、接近しにくい非中和性エピトープを示したが、CSLに関してはそうではなかった。これはそれらの2つのCSF三量体に関する観察と一致している。
【0097】
要約すると、最適なHR1再設計と組合せて使用されるgp120とgp41との間のNFL様の長いリンカーは、融合前三量体の最も望ましい特徴を保持する未切断gp140を与えた。また、リンカーの長さの本発明者らの詳細な分析は切断部位修飾の複雑な結果を示した。したがって、切断部位におけるリンカーの長さの変化は三量体免疫原設計における各場合において注意深く評価される必要がある。
【0098】
実施例7
多様なHIV株のEnv三量体を安定化させるための一般的HR1再設計
切断部位連結は複雑さをもたらしうるが、HR1再設計は三量体の構造および抗原性に全体的に正の効果をもたらすようであった。この知見を考慮して、本発明者らは、単純なGSリンカーの有用性を調べることにより、HR1再設計戦略を再検討した(
図2a)。そのような「一般的」HR1リンカー(HR1-Gと称される)は、成功することが判明すれば、Envの準安定性におけるこのHR1領域の役割を証明するだけでなく、多様なHIV-1株のための安定な三量体の開発をも可能にする。この目的のために、本発明者らは、クレードA BG505、クレードB JRFL、クレードC DU172.17およびB’/C組換え株CH115.12(第3層)のバックグラウンドにおいて一般的HR1リンカーを試験した。この場合、それらのSOSIP三量体を比較のために含めた。全ての三量体構築物をフューリンの存在下でHEK293 F細胞において一過性に発現させ、ついで、GNL精製およびSuperdex 200 10/300カラム上のSECに付した。調べた4つの株に関して、一般的HR1リンカーは三量体の収率および純度における一貫した改善を示した(
図2b)。クレードC株において、最も大きな改善が観察され、WT SOSIPと比較して、三量体ピークの、46%の増加が見られ、凝集体および二量体/単量体のピークはそれぞれ34%および37%減少した。このクレードC株では、アンサンブルに基づくタンパク質設計からの2つの最高ランクのHR1設計は更に、三量体ピークを約50%増加させ、一般的HR1設計と同じSECプロファイルを示した。したがって、結果は、一般的HR1リンカーがEnvの安定化のための一般的フレームワークをもたらす一方で、三量体特性の更なる最適化がコンピュータ利用設計によって株特異的に達成されうることを示している。
【0099】
実施例8
HR1再設計HIV-1免疫原に関する幾つかの例示方法
アンサンブルに基づくデノボタンパク質設計。本発明者らは、アンサンブルに基づくデノボタンパク質設計法を開発した(
図1c)。三量体構造(PDB ID:4TVP)および特定されたループ長が与えられたとして、3工程の設計プロセスを実施した:(1)ねじれ-空間ループサンプリングアルゴリズム
48を使用して、2つのアンカー残基を連結するために、バックボーンコンフォメーションのアンサンブル(1,000)を作製する;(2)各バックボーンに関して、RAPDFポテンシャル
49に基づいて50個のランダム配列のプールから開始配列を選択し、温度が300Kから10Kへと直線的に減少する500段階のモンテ・カルロ・シミュレーション・アニーリング(Monte Carlo simulated annealing)(MCSA)に付した;(3)各バックボーンに関する最低エネルギー配列を記録し、プロセス完了時のエネルギーに基づいて全てのMCSA由来設計をランク付けする。実験的検証のための5つの候補体の選択を容易にするために、最高の20個の設計を手動で検査する。
【0100】
抗原プロファイリングのための抗体。本発明者らは、設計された三量体の抗原性を特徴づけるために、bNAbおよび非NAbのパネルを使用した。bNAb 2G12およびb12ならびにMAb F240、7B2、17bおよびA32はNIHエイズ試薬プログラム(https://www.aidsreagent.org/)から要求された。他のbNAbおよび非NAbはD.S.およびD.R.Bにより提供された。
【0101】
HIV-1 Env三量体の発現および精製。Env三量体を、結晶解析の場合以外では、HEK293 F細胞(Life Technologies,CA)において一過性に発現させた。簡潔に説明すると、293F細胞を解凍し、シェーカー(Shaker)インキュベーター内でFreeStyle(商標)293 Expression Medium(Life Technologies,CA)と共に37℃、120rpmおよび8% CO2でインキュベートした。細胞が2.0×106/mlの密度に達したら、ポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences,Inc)によるトランスフェクションのために細胞密度を1.0×106/mlに減少させるために、発現培地を添加した。SOSIPおよびHR1再設計三量体に関しては、25mlのOpti-MEMトランスフェクション培地(Life Technologies,CA)内の800μgのEnvプラスミドおよび300μgのフューリンプラスミドを25mlのOpti-MEM中の5mlのPEI-MAX(1.0mg/ml)と混合した。一方、未切断三量体に関しては、900μgのEnvプラスミドをフューリンの非存在下で使用した。30分間のインキュベーション後、該DNA-PEI-MAX複合体を1Lの293F細胞に加えた。培養上清をトランスフェクションの5日後に採取し、1800rpmで20分間の遠心分離により清澄化し、0.45μmフィルター(Thermo Scientific)を使用して濾過した。ガランツス・ニバリス(Galanthus nivalis)レクチン(GNL)カラム(Vector Labs)を使用して、Envタンパク質を上清から抽出した。結合タンパク質を、500mM NaClおよび1M メチル-α-D-マンノピラノシドを含有するPBSで溶出し、ついで、初期評価のためのSuperdex 200 Increase 10/300 GLカラム上のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、ならびにEM分析および抗原プロファイリングのためのHiLoad 16/600 Superdex 200 PGカラム(GE Healthcare)により精製した。理論吸光係数と共にUV280吸光度を用いてタンパク質濃度を決定した。
【0102】
ブルー・ネイティブ(Blue Native)(BN)PAGE。Envタンパク質をブルー・ネイティブ・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(BN-PAGE)により分析し、クーマシーブルーで染色した。タンパク質サンプルをローディング色素と混合し、4~12% Bis-Tris NuPAGEゲル(Life Technologies)上にローディングした。NativePAGE(商標)ランニングバッファー(Life Technologies)を製造業者の指示に従い使用して、BN PAGEゲルを150Vで2時間泳動させた。
【0103】
示差走査熱量測定(DSC)。MicroCal VP-キャピラリー熱量計(Malvern)を使用して、SOSIPおよびHR1再設計三量体の熱融解曲線を得た。SEC精製糖タンパク質を1×PBS中にバッファー交換し、装置による分析の前に0.5~1μMに濃縮した。融解を90℃/時間の走査速度でプローブした。バッファー補正、正規化およびベースライン減算を含むデータ処理を、Origin 7.0ソフトウェアからの標準化プロトコルを用いて行った。
【0104】
結晶化のためのタンパク質の製造および精製。2つのHR1再設計三量体ならびに8ANC195およびPGT128 Fabを、Kongら,Acta Crystallogr.Sect.D-Biol.Crystallogr.71,2099-2108,2015に記載されているとおりに製造し、精製した。簡潔に説明すると、全ての構築物を発現ベクターphCMV3内にクローニングした。Fabを哺乳類Freestyle(商標)293F細胞内に一過性にトランスフェクトし、三量体をGnT1-/- 293S細胞内に一過性にトランスフェクトした。1週間のトランスフェクションの後、抗体トランスフェクト化細胞の上清を採取し、PGT128および8ANC195のためのそれぞれラムダ(Lambda)またはカッパ(Kappa)捕捉選択(Capture Select)カラム(BAC BV)を使用して精製した後、イオン交換クロマトグラフィーおよびSECを用いて更に精製した。2G12アフィニティカラムを使用し、ついでSECを使用して、三量体トランスフェクト化細胞の上清を精製した。結晶化試験に使用した三量体複合体を、該三量体タンパク質をFab PGT128および8ANC195と1.0:1.2:1.2のモル比で室温で20分間混合することにより調製した。ついで、200mM NaCl、50mM クエン酸ナトリウム(pH5.5)中のエンドグリコシダーゼH(EndoH)を製造業者のプロトコール(New England Biolabs)に従い使用して、この混合物を37℃で1時間脱グリコシル化した後、SECによる最終精製に付した。
【0105】
タンパク質の結晶化およびデータ収集。HR1再設計三量体に結合したFab PGT128および8ANC195を含有する2つの精製タンパク質複合体を、50mM NaCl、20mM Tris-HCl(pH7.2)中へのバッファー交換により、結晶化のために調製した。ついで、該複合体を5mg/mlに濃縮し、0.22μmフィルターに通過させた後、JCSGにおいてIAVI/JCSG/TSRICrystalMationロボット(Rigaku)を使用する結晶スクリーニングに付した。SOSIP gp140三量体に結合したFab PGT128および8ANC195を含有する既に記載されている複合体と同様に、HR-1再設計三量体/Fab複合体を0.05M 硫酸リチウム、0.05M 硫酸ナトリウム、20%(w/v)PEG400および0.05M Tris-HCl(pH8.7)(JCSG Core Suite条件:JCSGI A03,Qiagen)中で25℃で結晶化した。X線データ収集のための全ての結晶を、液体窒素中でフラッシュ冷却する前に40% PEG400で補足された母液中に短時間浸漬することによって凍結保護した。HR1再設計1複合体に関しては、6.3オングストロームの分解能までの回折データをAdvanced Photon Sourceにおけるビームライン23ID-Bで収集し、HKL-2000で処理し、100%の完全性および最高分解能殻における2.3の<I>/<σ>で、空間群I23において索引付けした。HR1再設計9複合体に関しては、6.9オングストロームの分解能までの回折データを、スタンフォード・シンクロトロン放射光源(Stanford Synchrotron Radiation Lightsource)におけるビームライン12-2で収集し、HKL-2000で処理し、100%の完全性および最高分解能殻における1.3の<I>/<σ>で、空間群I23において索引付けした。データ収集および処理統計を表1に要約する。
【0106】
構造決定および精密化。Fab PGT128および8ANC195(PDBID:5C7K)に結合したSOSIP gp140三量体との複合体からなる検索モデルおよびPhaserソフトウェアを使用する分子置換法を用いて、HR1再設計gp140三量体に結合したPGT128および8ANC195の構造を解析した。既に記載されているとおり、精密化は、Coot-0.7を使用する手動モデル構築とPhenixプログラムにより実行される自動化精密化との交互ラウンドからなるものであった。データセットの分解能が限られていることを考慮して、各残基に関するグループ化B因子精密化を用いた。更に、拘束(restraint)の参照モデルセットを使用して、位置座標の精密化を行った。Phenixにおける各自動化精密化セッションの開始モデルをそのセッションの参照モデルとして定めた。最後に、該モデルを、再設計のHR1部位におけるもの以外は、最小限に修飾した。最終的なRcryst値およびRfree値は、それぞれHR1再設計1および9の複合構造に関して、28.1%および32.2%、ならびに28.4%および32.2%に収束した。最終的な精密化の統計情報に関しては、表1を参照されたい。埋め込まれた分子表面積を、1.7オングストロームのプローブ半径および標準的なファンデルワールス半径を用いて、分子表面パッケージ(Molecular Surface Package)(http://www.csb.yale.edu/userguides/graphics/msp/msu local.html)で分析した。Fab残基はKabat命名法に従い番号付けされており、gp140は、標準的なHXBc2規則を用いて番号付けされている。
【0107】
電子顕微鏡法のサンプルの調製。gp140三量体を、単独で、およびPGV04との複合体として、ネガティブ染色EMにより分析した。約0.02mg/mLの該三量体を含有する3μLアリコートを、20mAで30秒間グロー放電させた炭素被覆400Cuメッシュグリッド上に15秒間適用し、ついで2% ウラニルホルマートで30秒間、ネガティブ染色した。約30e-/オングストローム2の電子線量および52,000倍の倍率(これは検体面上で2.05オングストロームのピクセルサイズをもたらした)を用いて120kVで作動するFEI Tecnaiスピリット電子顕微鏡を使用して、データを収集した。1000nmの公称焦点ずれ(デフォーカス)およびレジノン(Leginon)パッケージを用いるTietz 4k×4k TemCam-F416 CMOSカメラを使用して、イメージを得た。
【0108】
電子顕微鏡データの処理およびイメージ再構築。粒子を、DoG Pickerを使用して自動的に選択し、Appionソフトウェアパッケージを使用して粒子スタック内に入れた。反復多変量統計分析(MSA)/多参照アラインメント(MRA)により2つの瓶に分割され、クラスにソートされた粒子を使用して、初期無参照2次元(2D)クラス平均を計算した。三量体に対応する粒子またはPGV04に結合した三量体に対応する粒子をサブスタックへと選択し、2つの瓶に分割した後、反復MSA/MRAならびにXmippクラスタリング(Clustering)および2Dアライメントプログラムを使用して、別のラウンドの無参照アライメントを行った。三量体(閉じた天然様、開いた天然様および非天然)の質を分析するために、無参照2Dクラス平均を、Pugachら,J.Virol.89,3380-3395,2015に記載されている測定基準を用いて目視検査した。対称性C3を課すEMAN2における無参照2Dクラス平均からアブイニシオ共通ライン(ab initio common lines)モデルを計算した。ついで、このモデルを、EMAN(Ludtkeら,J.Struct.Biol.128,82-97,1999)を使用する追加的な25サイクルにわたって、生粒子に対して精密化した。最終モデルの分解能を、0.5のフーリエ・シェル相関(Fourier Shell Correlation)(FFS)カットオフを使用して決定した。
【0109】
ELISAおよびバイオレイヤー干渉法(BLI)による結合分析。bNAbおよび非NAbへの三量体結合の動力学を、Octet Red96装置(forteBio,Pall Life Sciences)を使用して測定した。全てのアッセイは、1000rpmに設定された攪拌下で、forteBio 1×動力学的バッファー中で行った。全ての溶液の最終体積は200μl/ウェルであった。アッセイは、固体黒色96ウェルプレート(Geiger Bio-One)において、30℃で行った。抗ヒトFc捕捉バイオセンサー(AHC)の表面上に抗体を300秒間ローディングするために、1×動力学的バッファー中の5μg/mlのタンパク質を使用した。60秒間のバイオセンサーベースライン工程を適用した後、溶液中でのバイオセンサー上の抗体とEnv三量体との結合を200秒間にわたり分析した。200nMから開始する三量体の2倍濃度勾配を6滴定系列に用いた。相互作用の解離を300秒間追跡した。抗体がローディングされたが三量体と共にインキュベートされなかったセンサー、または抗体を含有しないが三量体と共にインキュベートされたセンサーに関して記録された平均シフトを差し引くことにより、基線(ベースライン)変動の補正を行った。forteBioのデータ収集ソフトウェアv.8.1でOctetデータを処理した。KD値および他の動力学的パラメータを決定するために、グローバルフィット1:1モデルを用いて、実験データをV1V2頂点指向性bNAbにフィットさせた。
【0110】
実施例9 天然様頂点を有する三量体V1V2を提示するフェリチンナノ粒子
gp120のV1V2領域は50~90残基長の範囲であり、10個中1個の残基がN-グリコシル化されており、HIV-1 Env上に高密度グリカンシールドが形成される。V1V2コード化グリカンエピトープは、PG9/PG16、CH01-04、PGT141-145およびPGDM1400のようなbNAbによって認識されうる。配列変異にもかかわらず、N160を中心とする短いセグメントが、最もよく知られたV1V2特異的bNAbに対する特異性を定める。2つのクレードC株、すなわち、CAP45およびZM109に関して、PG9と複合体形成したスキャフォールドV1V2の結晶構造が決定されており、これはグリークキー(Greek key)モチーフを示しており、ここで、B鎖およびC鎖は2つの極めて重要なグリカンを含有する。BG505 SOSIP.664 gp140三量体と複合体形成したPG9およびPGDM1400のEM構造は、これらの2つのbNAbが、異なる接近角で三量体頂点を向いていることを示した(例えば、Julienら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 110,4351-4356,2013;およびSokら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 111,17624-17629,2014に記載されているとおり)。本研究において、本発明者らは、SOSIP三量体の結晶構造および低温EMにおいて見出される天然様三量体コンホメーションでV1V2を提示するためにフェリチンナノ粒子上の3回軸が利用されうると仮定した。この可能性を試験するために、本発明者らは、クレードC ZM109のV1V2に基づいて2つの構築物を設計した。すなわち、全3個のジスルフィド結合を含有するもの(V1V2Extと称される)、および2個を含有する短縮化形態(V1V2Shtと称される)を設計し、ここで、両方のV1V2配列はフェリチンサブユニット(FR)のN末端(D5)に融合している(表2a)(例えば、Kanekiyoら,Nature 499,102-106,2013;およびHeら,Sci.Rep.5,12501,2015を参照されたい)。粒子表面上の各3回軸の周囲のフェリチンサブユニットのN末端に三量体V1V2のC末端をフィットさせた後、構造モデリングはV1V2Ext-FRおよびV1V2Sht-FRに関してそれぞれ3.7および0.8オングストロームのCα平均二乗偏差(RMSD)を示した。更なる分析は、どちらのナノ粒子に関しても、高密度グリカン表面を示し、V1V2Ext-FRおよびV1V2Sht-FRに関してはそれぞれ16.6および14.3の直径であった。
【0111】
それらの2つのV1V2-フェリチン構築物および単量体V1V2をN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI陰性(GnTI-/-)HEK293S細胞において一過性に発現させ、ガランツス・ニバリス(Galanthus nivalis)レクチン(GNL)カラムおよびそれに続くSuperdex 200 10/300 GLカラム上のSECを用いて精製した。両方のV1V2-FR設計に関して、SECプロファイルは、ブルーネイティブ・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(BN-PAGE)により確認された良好に形成されたナノ粒子を示す単一ピークを示した。ついで、精製ナノ粒子を視覚化するためにネガティブ染色EMを利用した。実際、EMによるイメージングは、均一なV1V2Ext-FR粒子を示し、これは2次元(2D)クラス平均の計算を可能にした。V1V2Sht-FR粒子に関しても同様の結果が観察され、このことは、V1V2の長さおよび含有ジスルフィド結合の数の違いにもかかわらず、均一性および純度がこれらのナノ粒子に固有のものであることを示唆している。しかし、三量体V1V2スパイクは2Dクラス平均において拡散しているようであり、これは幾らかの移動性を示している。V1V2頂点の抗原性を調べるために、PG9(これは単量体および三量体形態の両方でV1V2を認識する)およびPGDM1400(これはSOSIP様三量体コンホメーションの頂点を標的とする)への粒子結合を測定した。酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)による両方のナノ粒子の分析は、単量体V1V2に比べて増強したbNAb結合を示し、PGDM1400はV1V2Ext-FRへの優先的結合を示した。バイオレイヤー干渉計(BLI)および免疫グロブリンG(IgG)を使用して、単量体および微粒子形態のbNAb PG9およびPGDM1400へのV1V2結合の動力学を特徴づけした。予想通り、単量体V1V2はPG9に低いアフィニティで結合し、PGDM1400への結合を示さなかった。これとは対照的に、V1V2Ext-FRは両方のbNAbに高いアフィニティで結合したが、異なる動力学を示した。PGDM1400に関しては、V1V2Ext-FRは極めて速いオン速度を示し、これは、この頂点指向性bNAbによって容易に認識されうる安定した頂点を示している。V1V2Sht-FRはV1V2Ext-FRに類似した結合動力学を示したが、PGDM1400に対するアフィニティの低下を示しており、これは、ELISAに合致した頂点構造および抗原性に対する短縮化V1V2の逆効果を示唆するものである。
【0112】
本発明者らの結果は、HIV-1 EnvのV1V2領域が天然様三量体コンフォメーションでフェリチンナノ粒子上に提示されうることを示している。注目すべきことに、この設計戦略は株には無関係である可能性が高い。なぜなら、クレードC CAP45に基づいて設計されたV1V2Ext-FRに関してもナノ粒子が観察されたからである(
図8b~
図8d)。総合すると、三量体V1V2の微粒子提示は頂点指向性bNAbによるその認識を実質的に改善した。このことは、V1V2ナノ粒子がgp140三量体の有望な代替手段となり、B細胞応答をこの四次エピトープに集中させうることを示唆している。
【0113】
実施例10 天然様頂点を有する三量体V1V2を提示するフェリチンナノ粒子
CD4結合部位(CD4bs)指向性bNAbであるVRC01の生殖系列前駆体を標的化するために、可変ループ(V1V2およびV3)および内部ドメインを欠く操作gp120コアを提示する60量体(60マー)LSナノ粒子が使用されている。しかし、VRC01クラスのbNAb PGV04と複合体形成しているBG505 SOSIP三量体の構造は、隣接gp140プロトマー上のグリカンもCD4b認識に関与することを示しており、このことは、三量体の状況によって制約される接近角を示唆している。HIV-1の中和にとっての三量体の制約(constraint)の重要性はヒトIgノックインマウスにおいて更に実証された。それにおいては、eOD-LSナノ粒子ではなくBG505 SOSIP三量体のみがNAb応答を惹起した。これらの過去の研究およびV1V2ナノ粒子の結果に基づいて、本発明者らは、完全長gp120を提示し、全てのそのコード化nNAbエピトープを露出させ、これをSOSIP gp140三量体と同様のそれらの天然様コンホメーションで行うために、フェリチンナノ粒子が使用可能であると仮定した。この設計戦略は、準安定gp41を含有するgp140三量体に固有の複雑さを欠く代替的免疫原を与えうる。この可能性を試験するために、本発明者らは、クレードA BG505 gp120に基づいて3つのフェリチン融合構築物を設計した。gp120Ext-FRおよびgp120Sht-FRは種々の長さのgp120を含有し、一方、gp120SS-FRは、gp120末端を安定化させるための追加的なジスルフィド結合を含んでいた(表2b)。gp120Ext-FRの場合、構造モデリングは、粒子表面上の各3回軸の周囲にgp120 C末端(G495)およびフェリチンN末端(D5)のほぼ完全な重ね合わせを示し、得られたナノ粒子の直径は26.2nmであり、Cα RMSDは1.9オングストロームであった。
【0114】
全3個のgp120-フェリチン構築物および単量体gp120をHEK293 F細胞において一過性に発現させた。GNLカラムを使用し、ついでSuperdex 6 10/300 GLカラム上でSECを使用して、分泌したタンパク質を精製した。それらの3つのキメラ構築物の中で、gp120Sht-FRはSECプロファイルにおける最も顕著な粒子ピークを示した。注目すべきことに、gp120SS-FRにおいては粒子ピークは観察されなかったが、これは変異gp120のミスフォールディングを示唆している。BN-PAGEは、完全構築ナノ粒子に対応する、gp120Ext-FRおよびgp120Sht-FRの両方に関する高い分子量(m.w.)バンドを示した。ついで、精製されたgp120-FRナノ粒子を視覚化するためにネガティブ染色EMを用いた。gp120Ext-FRおよびgp120Sht-FRの両方に関して均一粒子が観察され、後者に関して2Dクラス平均が算出された。gp120Sht-FRはより効率的な粒子集合を示したため、低温EMを利用してナノ粒子を更に特徴づけしたところ、gp120スパイクで修飾された粒子表面を示した。
【0115】
gp120ナノ粒子の抗原性を評価するために、代表的なbNAbおよび非NAbのパネルへの粒子結合の動力学を測定した。まず、頂点指向性bNAb PG16およびPGDM1400を試験した。予想通り、gp120単量体はPG16への最小限の結合しか示さず、PGDM1400へのほとんど検出不可能な結合を示した。これとは対照的に、gp120ナノ粒子は、サブナノモルのアフィニティでの、両方のbNAbへの実質的に増強した結合を示し、gp120Sht-FRはgp120Ext-FRよりもわずかに優れていた。これは、フェリチンナノ粒子上の各3回軸の周囲の3つのgp120sがSOSIP様三量体コンホメーションを実際に形成しうることを証明した。CD4bs指向性VRC01の場合、両方のナノ粒子は、増加したオン速度を示し、平坦な解離曲線を示した。同じ部位を標的とするNAb b12に関しても同様の傾向が観察された。多価提示から生じるアビディティ効果は、V3塩基および周囲のグリカンを標的とするbNAb PGT121で最も顕著であった。単量体gp120はPGT121に、より低いレベルで、速いオフ速度で結合したが、両方のgp120ナノ粒子は結合の増強を示し、より速いオン速度および平坦な解離曲線を示した。ついで、非中和性MAbに対する粒子結合を測定した。開いたgp120コンホメーションを好むF105に関しては、単量体gp120は迅速なオン速度およびオフ速度を示したが、ナノ粒子は、gp120三量体の高密度提示により引き起こされる立体障害から生じうる、より遅いオン速度およびオフ速度を示した。しかし、gp120ナノ粒子は、単量体gp120と比較して増強した、V3特異的19bによる認識を示した。これは、SOSIP単量体に関して最近実証されたとおり、コンホメーション固定によって最小化されうる。最後に、gp120-FRナノ粒子はCD4i MAb 17bへのほとんど無視できる結合を示した。これは、このMAbによる単量体gp120の顕著な認識とは対照的であった。
【0116】
実施例11 三量体gp120を提示する60量体ナノ粒子
本発明者らはまた、三量体gp120を提示するために60量体ナノ粒子が使用可能であるかどうかを調べた。この可能性を調べるために、異なる構造的特徴を有する2つの熱安定性60量体、すなわち、LS(Zhangら,J.Mol.Biol.306,1099-1114,2001)およびE2p(Izardら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,1240-1245,1999)を選択した。フェリチンの12.2nmの直径と比較して、LSはサイズにおいてほんの僅かに大きく、14.8nmの直径を有する。gp120Sht-LSナノ粒子の構造モデリングは、LS表面が、28.7nmの推定直径を有する20個の三量体gp120スパイクによって完全に覆われることを示した。HEK293 F細胞における一過性発現およびGNL精製の後、分泌したタンパク質をSECにより分析した。しかし、このLS構築物のSECプロファイルにおいて、粒子ピークは観察されなかった。一貫して、BN-PAGEは優勢な5量体バンドを示し、これはネガティブ染色EM分析により確認された。要約すると、本発明者らの結果は、比較的小さなLSナノ粒子が全長gp120三量体スパイクを提示するのに最適でない可能性があることを示している。
【0117】
次に、粒子表面上の3回転軸頂点を分離する12個の大きな開口と23.2nmの直径とを有する中空十二面体であるE2pを調べた。構造モデリングは、DCによる直接取り込みのための最適なサイズに近い37.6nmの直径を有するgp120Sht-E2pナノ粒子を与えた(表2c)。HEK293 F発現GNL精製gp120Sht-E2pタンパク質をSuperose 6 10/300 GLカラム上のSECにより分析した。これは、キメラE2p粒子に対応する顕著な高分子量ピークを示した。これと一致して、BN-PAGEはゲル上に濃縮ナノ粒子バンドを示し、低分子量の、より軽いバンドを伴っており、これは解離gp120-E2p三量体を示唆している。ついで、この60量体の集合を特徴づけるためにネガティブ染色EMを利用し、大きな均一ナノ粒子を観察した。2Dクラス平均は、結晶構造に似た中空タンパク質ケージを示した。しかし、EM分析は、三量体gp120のような大きな複合抗原のためのナノ粒子プラットフォームとしてのE2pの頑強性を証明したが、それは、gp120スパイクを欠く予想外の2Dクラス平均も示した。三量体gp120スパイクが生成したが、大きな間隔ゆえに可動性のままであったのかどうか、または各3回軸の周囲の3つのgp120が安定三量体へと集合しなかったのうかどうかは、EM分析のみからは不明であった。この問題を検討するために、bNAbおよび非NAbの小さなパネルへのE2p粒子の結合をBLIにより測定した。注目すべきことに、gp120Sht-E2pは頂点指向性bNAb PG16およびPGDM1400にサブピコモルのアフィニティで結合した。速いオン速度および平坦な解離曲線は、SOSIP三量体のものに類似しているがアビディティの追加的利点を有する天然様頂点を示した。gp120-フェリチンナノ粒子の場合と同様に、本発明者らは、bNAb VRC01およびPGT121ならびにNAb b12によるCD4bsおよびV3塩基の認識の増強を観察した。非中和性MAbに関しては、gp120Sht-E2pは、CD4bs特異的Mab F105およびV3特異的19bに、gp120Sht-FRに類似したレベルで結合した。このことは、サイズには無関係にgp120ナノ粒子により共有される共通の特徴を示唆している。最後に、CD4i MAb 17bに関しては、最小限の結合しか観察されなかった。
【0118】
HIV-1 Envの受容体結合タンパク質として、gp120はワクチン免疫原として広範に研究されているが、天然スパイク内に埋もれている非中和性面の露出ゆえに最適ではないと考えられている。本発明者らの結果は、フェリチンおよびE2pナノ粒子による全長gp120の提示が、gp41の非存在下で天然様三量体コンホメーションを回復させうることを示している。SOSIP様抗原性、ならびに粒子サイズおよび表面間隔の変動により、これらのナノ粒子は、gp120に基づくHIV-1ワクチンを研究するための汎用プラットフォームを提供する。
【0119】
実施例12 安定化gp140三量体を提示するフェリチンナノ粒子
BG505 SOSIP gp140三量体を提示するフェリチンナノ粒子の設計および免疫原性が最近報告された(Sliepenら,Retrovirol.12:82,2015)。ELISAによるこのgp140ナノ粒子の分析は、頂点指向性bNAb PG9およびPGT145への、そしてgp120-gp41境界に対するbNAbであるPGT151への結合の顕著な低下を示した。これは、BLIを用いてgp120ナノ粒子に関して本発明者らが観察した抗原プロファイルを考慮すると、少々驚くべきことである。本研究において、本発明者らは、修飾HR1ベンド(残基548~568;HR1再設計1と称される)を含有する新規安定化設計により、ならびにリンカーの長さおよびgp41トランケート化の詳細な分析により、gp140三量体のフェリチン提示を達成することを追究した。ここで試験したgp140構築物には、664位でトランケート化されたgp140(gp140.664)、10残基のリンカーを含有するgp140.664(gp140.664-10aa)、および同じリンカーを含有するMPERを含むように681位でトランケート化されたgp140(gp140.681-10aa)が含まれた(表2d)。HR1再設計gp140-フェリチン粒子の構造モデリングは、gp140.664-FR、gp140.664-10aa-FRおよびgp140.681-10aa-FRに関してそれぞれ30.1、35.7および40.1nmの直径を有する十分に分離した三量体スパイクを示した。
【0120】
粒子集合中にコンタミナント(汚染)Env種は排除できないため、gp140三量体の純度はgp140ナノ粒子の質に有意な影響を及ぼす。この問題を例証するために、本発明者らはBG505 SOSIP三量体とHR1再設計gp140三量体とのSECプロファイルを比較した。これは、280nmでのUV吸光度により示されるとおり、凝集体および二量体/単量体のピークにおける実質的な差異を示した。SOSIPに基づく設計を含む全てのgp140-フェリチンナノ粒子をHEK293 F細胞においてフューリンと共に一過性に共発現させ、GNLを用いて、ついでSuperose 6 10/300 GLカラム上のSECを用いて精製した。ネガティブ染色EMを用いて、本発明者らはSOSIP-フェリチンナノ粒子の集合を最初に確認した。HR1再設計1を含有するGNL精製gp140-フェリチンタンパク質は、8.5~10.5mLにおける粒子含有ピークと比較して高い三量体および二量体/単量体ピークを有する、類似したSECプロファイルを示した。より多くのナノ粒子を含有するgp140.664-10aa-FRに関しては、EMは、
十分に集合した粒子および凝集物と混合した六角形構造を有する未知のタンパク質種を示した。粒子純度を改善させるために、VLP精製に使用されているCapto Core 700カラムの有用性を検討した。Capto Core 700およびGNLカラムを用いた精製の後、gp140.664-10aa-FRはSECプロファイルにおける非粒子ピークの低減を示した。一貫して、六角形構造が尚も存在することを示す高品質EM画像が得られ、これは、HIV-1 Env特異的精製法が必要であることを示している。この目的のために、本発明者らは、Capto Core 700と2G12アフィニティーカラムとの併用を検討した。その後者は、SOSIP三量体を精製するために広く使用されている。全体的に、gp140.664-10aa-FRは尚も最高の作用物質であり、SECプロフィールにおいて、より良好に視認可能な粒子ピークを示し、低減した三量体ピークを示し、二量体/単量体ピークを示さなかった。全3個の構築物に関して、粒子含有画分をBN-PAGEにより分析したところ、これは、個々の三量体と比較して、完全集合gp140ナノ粒子に対応する高い分子量バンドを示した。注目すべきことに、Sliepenらの報告とは対照的に、これらのバンドは、gp120-フェリチン粒子バンドからの推定シフトSECプロファイルと一致する。gp140.664-10aa-FRに関しては、表面上に視認可能なスパイクを含有する均一ナノ粒子がネガティブ染色EMにおいて観察された。gp140.664-10aa-FRナノ粒子の安定性が、凍結および融解されたサンプルのEM分析により確認した。本発明者らはまた、ネガティブ染色EMにおいて、gp140.664-FRおよびgp140.681-10aa-FRに関して、良好に形成したナノ粒子を観察した。総合すると、本発明者らの結果は、gp140-フェリチンナノ粒子の集合を立証し、gp140に基づくナノ粒子の開発における適切な精製および特徴づけの重要性を強調した。
【0121】
本発明者らは、対照として含まれるHR1再設計三量体と共に代表的なbNAbのパネルおよびBL1を用いて、gp140ナノ粒子の抗原プロフィールを特徴づけした。粒子表面上に提示されたgp140三量体の頂点をプローブするために、V1V2頂点指向性bNAbであるPGDM1400、PGT145およびPG16を最初に使用した。注目すべきことに、全てのgp140ナノ粒子が、アビディティゆえに平坦な解離曲線を有する個々の三量体と比較した場合のサブピコモルのアフィニティを示した。N332を中心とするV3エピトープを標的とするbNAb PGT121に関しては、gp140ナノ粒子は、オン速度の増加を示すHR1再設計三量体のものに類似した結合プロファイルを示した。CD4bs指向性bNAbであるVRC01に関しては、gp140-フェリチン粒子は、gp120-フェリチン粒子に類似した遅い結合を示した。gp120-gp41境界を標的とするbNAbであるPGT151および35O22に関しては、認識の増強が見出されたが、異なる動力学が示された。PGT151に関しては、より速いオン速度が、変化していない解離パターンで観察された。これとは対照的に、急速な解離を伴う35002に関して、増加したオン速度が観察された。要約すると、全3個のgp140ナノ粒子は、VRC01以外のbNAbによる認識の改善を示した。このことは、gp140三量体の、混雑した表面提示が、制限された接近角でCD4bに結合するVRC01クラスのbNAbに最も有意な影響を及ぼしうることを示唆している。
【0122】
次に、非NAbへのgp140ナノ粒子の結合動力学を測定した。注目すべきことに、CD4b特異的MAb F105およびb6では結合の低減が観察され、b6ではより顕著な低減が見られた。V3特異的MAb 19bの場合、gp140ナノ粒子に関して、三量体およびgp120ナノ粒子と比較して遅い結合が観察された。このことは、gp140三量体の高密度提示による最小化されたV3露出を示唆している。gp41のクラスターIにおける免疫優性エピトープを標的とするMAb F240に関しては、gp140ナノ粒子は、HR1再設計三量体に関して観察された残存結合と比較して、検出不能な結合を示した。gp140三量体およびgp140ナノ粒子の両方に関して、CD4i MAb 17bおよびA332への結合は検出されなかった。最後に、本発明者らは、gp140.681-10aa-FRの場合にこのgp41エピトープをプローブするために、MPER指向性bNAb 4E10および10E8を使用した。驚くべきことに、このナノ粒子は迅速なオン速度および平坦な解離曲線で4E10に結合したが、それは、4E10結合部位を越えて広がるコンホメーションエピトープを認識する10E8へは最小限の結合しか示さなかった。構造モデリングにより示されるとおり、MPERは外表面から10nm以上の距離でフェリチン表面の近位にあるため、特定のエピトープコンホメーションを選択する10E8のようなbNAbに対して、立体障害はより有意な影響を及ぼしうる。
【0123】
本発明者らの分析は設計gp140-フェリチンナノ粒子の重要な特徴を明らかにした。Sliepenらの報告とは対照的に、BLIによる抗原プロファイリングは、bNAbによる認識の増強および非NAbへの結合の低下を明らかに示した。これらの結果は、これらのgp140ナノ粒子が、bNAbエピトープに対する強力なB細胞応答を惹起する際に、個々のgp140三量体より優れた免疫原でありうることを示唆している。注目すべきことに、非NAbへの結合の著しい低減を示すSOSIP様抗原プロファイルを示す天然様gp140三量体を含有するナノ粒子の製造において、HR1再設計三量体の本質的純度が、不可欠な役割を果たしている。
【0124】
実施例13 安定化gp140三量体を提示する60量体E2pナノ粒子
gp140-フェリチンナノ粒子の有望な結果に基づいて、本発明者らは、2つの60量体、すなわち、LSおよびE2p上のgp140三量体の微粒子提示を調べた。LSのサイズが小さいことを考慮して、まず、LSサブユニットのC末端とgp140のN末端との間に10残基のリンカーを含有する構築物を設計した(表2e)。LS-10aa-gp140.664の構造モデリングは39.2nmの推定直径を示した。HEK293 F細胞におけるフューリン共発現およびGNL精製の後、該キメラタンパク質をSECおよびネガティブ染色EMにより分析したが、十分に形成されたナノ粒子は特定されなかった。次に、再設計HR1ベンドを含有するBG505 gp140.664をE2pコアサブユニットのN末端に融合させることにより、60量体E2pナノ粒子の有用性を調べた(表2e)。構造モデリングは、直径41.5nmのgp140.664-E2pナノ粒子が、MPER以外の全てのbNAbエピトープを露出させうることを示した。gp140.664-E2p構築物をHEK293 F細胞内にフューリンと共にコトランスフェクトし、ついでGNL精製およびSuperose 6 10/300 GLカラム上のSECを行った。全体的な発現は低かったが、SECプロファイルにおける最高ピークは、2G12精製サンプルのSEC分析によって更に確認された大きなE2pナノ粒子に対応していた。粒子集合における効率の改善の可能な説明は、3つのgp41サブユニットの結合がgp140の三量体化およびE2pの集合を同時に促進しうるというものである。BN-PAGEは、高い分子量ナノ粒子に特徴的なゲルの最上部にバンドを示した。三量体スパイクの緻密な層を有する均一なgp140.664-E2pナノ粒子がEM分析から観察された。したがって、本発明者らの結果は、gp140.664-E2pが、免疫認識に適したgp140三量体の所望の構造規則性を有する均一なVLPサイズのナノ粒子を形成しうることを示している。
【0125】
次に、bNAbのパネルを使用してgp140.664-E2pナノ粒子の抗原性を特徴づけした。頂点指向性PG16およびPGDM1400に関しては、gp140.664-E2pは、平坦な解離曲線を有しピコモルのアフィニティより低い遅いオン速度を示した。CD4bs指向性VRC01に関しては、gp140.664-E2pは、gp140-フェリチンナノ粒子によく似ているがより弱い平坦な解離曲線および結合の顕著な低減を示した。V3ステムのグリカンエピトープに結合するbNAb PGT121に関しては、僅かに減少したオン速度を示す三量体様動力学を観察した。PGT151および35O22に関しては、gp140.664-E2pは、gp140-フェリチンナノ粒子のものに類似した結合プロファイルを示した。全体として、gp140.664-E2pは、この分析で試験したbNAbによる認識の低減を示し、最も明白な変化はVRC01において観察され、最も小さい変化はPGT151において観察された。この結果は、非天然gp140三量体コンホメーションがE2pナノ粒子上に提示される可能性を高めた。この重大な問題を検討するために、非NAbパネルへの粒子の結合を試験した。CD4bs特異的MAb F105に関しては、個々の三量体と比較して、より迅速な解離を伴う弱い結合を観察した。更に、本発明者らの驚いたことに、19b結合は、他の全てのgp120およびgp140ナノ粒子に関して観察された増強とは対照的に、V3の露出の顕著な減少を示した。gp140.664-E2pナノ粒子は、gp140-フェリチンナノ粒子に関する以前の観察と一致して、最小レベルでCD4i MAb17bに結合した。しかし、gp41特異的MAb F240に関しては、gp140.664-E2pは、三量体およびgp140-フェリチンナノ粒子と比較して僅かに増強した結合を示した。更なる分析は、フェリチンにおける20オングストロームのエッジ(縁)と比較して、E2pの3回転軸頂点を構成する約9オングストロームのエッジを示し、このことは、短いリンカーがgp41-E2p連結領域における幾らかの歪みを引き起こし、結果として、それほど好ましくないgp41コンホメーションをもたらした可能性があることを示唆している。
【0126】
DC更新(update)のための最適なサイズ(40~50nm)を有するgp140.664-E2pナノ粒子は、強力で持続的なB細胞応答を惹起する上でgp140-フェリチンナノ粒子より有利でありうる。gp140.664-E2pナノ粒子の効率的な集合を考慮すると、gp140.681の微粒子提示は、E2pを使用して達成可能であり、更なる研究を保証する。要約すると、gp140.664-E2pナノ粒子の本発明者らの特徴づけは高い価(valency)のVLP様HIV-1ワクチンの開発への重要な一歩をもたらした。
【表1】
【表2】
【0127】
実施例14 HIV-1三量体提示ナノ粒子の幾つかの例示方法
ナノ粒子の設計およびモデリング。(1)所定のナノ粒子またはVLPの表面上の3回転軸頂点を探索し、(2)粒子表面上の各3回軸の周囲の3つの粒子サブユニットのN末端上に三量体HIV-1抗原のC末端を重ね合わせ、ならびに(3)プロセスの完了時に計算された直径および他の構造パラメーターで三量体提示粒子のXYZ座標を生成させるために、パール(Perl)スクリプトを開発した。得られた粒子モデルを、適切なリンカーの手動検査および選択のために、UCSFキメラ(Chimera)(https://www.cgl.ucsf.edu/chimera/)を使用して可視化した。
【0128】
抗原プロファイリングのための抗体。本発明者らは、設計された三量体の抗原性を特徴づけるために、bNAbおよび非NAbのパネルを使用した。bNAb 2G12およびb12ならびにMAb F240、7B2、17bおよびA32はNIHエイズ試薬プログラム(https://www.aidsreagent.org/)から要求された。他のbNAbおよび非NAbは他の場所で得られた。
【0129】
HIV-1 Env抗原およびナノ粒子の発現および精製。三量体および三量体提示ナノ粒子をHEK293 F細胞(Life Technologies,CA)において一過性に発現させ、単量体V1V2およびV1V2ナノ粒子をHEK293 S細胞において一過性の発現させた。簡潔に説明すると、293 F/S細胞を解凍し、シェーカー(Shaker)インキュベーター内でFreeStyle(商標)293 Expression Medium(Life Technologies,CA)と共に37℃、120rpmおよび8% CO2でインキュベートした。細胞が2.0×106/mlの密度に達したら、ポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences,Inc)によるトランスフェクションのために細胞密度を1.0×106/mlに減少させるために、発現培地を添加した。gp140ナノ粒子に関しては、25mlのOpti-MEMトランスフェクション培地(Life Technologies,CA)内の800μgの融合タンパク質プラスミドおよび300μgのフューリンプラスミドを25mlのOpti-MEM中の5mlのPEI-MAX(1.0mg/ml)と混合した。一方、V1V2およびgp120ナノ粒子に関しては、900μgのキメラEnvプラスミドをフューリンの非存在下で使用した。30分間のインキュベーション後、該DNA-PEI-MAX複合体を1Lの293 F/S細胞に加えた。培養上清をトランスフェクションの5日後に採取し、1800rpmで20分間の遠心分離により清澄化し、0.45μmフィルター(Thermo Scientific)を使用して濾過した。ガランツス・ニバリス(Galanthus nivalis)レクチン(GNL)カラム(Vector Labs)を使用して、タンパク質を上清から抽出した。結合タンパク質を、500mM NaClおよび1M メチル-α-D-マンノピラノシドを含有するPBSで溶出し、ついで、Superdex 200 Increase 10/300 GLカラムまたはSuperose 6 10/300 GLカラム(GE Healthcare)上のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により精製した。理論吸光係数と共にUV280吸光度を用いてタンパク質濃度を決定した。gp140-フェリチンナノ粒子に関しては、Capto 700 Coreカラム(GE Healthcare)および2G12アフィニティカラム6を使用して粒子純度を改善した。
【0130】
ブルー・ネイティブ(Blue Native)(BN)PAGE。HIV-1三量体提示ナノ粒子をブルー・ネイティブ・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(BN-PAGE)により分析し、クーマシーブルーで染色した。タンパク質サンプルをローディング色素と混合し、4~12% Bis-Tris NuPAGEゲル(Life Technologies)上にローディングした。NativePAGE(商標)ランニングバッファー(Life Technologies)を製造業者の指示に従い使用して、BN PAGEゲルを150Vで2時間泳動させた。
【0131】
電子顕微鏡法のサンプルの調製およびデータ処理。精製されたナノ粒子をネガティブ染色EMにより分析した。約0.01mg/mLのサンプルを含有する3μLアリコートを、20mAで30秒間グロー放電させた炭素被覆400Cuメッシュグリッド上に15秒間適用し、ついで2% ウラニルホルマートで30秒間、ネガティブ染色した。約30e-/オングストローム2の電子線量および52,000倍の倍率(これは検体面上で2.05オングストロームのピクセルサイズをもたらした)を用いて120kVで作動するFEI Tecnaiスピリット電子顕微鏡を使用して、データを収集した。1000nmの公称焦点ずれ(デフォーカス)およびレジノン(Leginon)パッケージを用いるTietz 4k×4k TemCam-F416 CMOSカメラを使用して、イメージを得た。ナノ粒子を、DoG Pickerを使用して自動的に選択し、Appionソフトウェアパッケージを使用して粒子スタック内に入れた。反復msa/mraクラスタリング2DアライメントおよびIMAGICソフトウェアシステムにより2つの瓶に分割され、クラスにソートされた粒子を使用して、無参照2次元(2D)クラス平均を計算した。
【0132】
酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)による結合分析。Costar(商標)96ウェルアッセイプレート(Corning)をV1V2抗原で4℃で一晩コートした。ウェルをPBS+0.05% Tween20で1回洗浄し、ついでウェル当たり150μlのブロッキングバッファー(5% w/v 乾燥ミルクを含有するPBS)と共に室温(RT)で1時間インキュベートし、ついでPBS+0.05% Tween20中で5回洗浄した。ブロッキングバッファー中の50μlの頂点指向性bNAbを2μg/mlの最大濃度および5倍希釈系列で加え、室温で1時間インキュベートした。PBS+0.05% Tween20中で5回洗浄した後、ウェル当たりPBS+0.05% Tween20中の1:5000の50μlのペルオキシダーゼ(Peroxidase)-AffiniPureヤギ抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc)と共にウェルを室温で1時間インキュベートした。PBS+0.05% Tween20中で5回洗浄した後、TMBを使用して、ウェルを室温で5分間現像させ、反応を2N硫酸で停止させた。読出しを450nmの波長で測定した。
【0133】
バイオレイヤー光干渉法による結合分析。bNAbおよび非NAbへのHIV-1抗原およびナノ粒子の結合の動力学を、Octet Red96装置(forteBio,Pall Life Sciences)を使用して測定した。全てのアッセイは、1000rpmに設定された攪拌下で、forteBIO 1×動力学的バッファー中で行った。全ての溶液の最終体積は200μl/ウェルであった。アッセイは、固体黒色96ウェルプレート(Geiger Bio-One)において、30℃で行った。抗ヒトFc捕捉バイオセンサー(AHC)の表面上に抗体を300秒間ローディングするために、1×動力学的バッファー中の5μg/mlのタンパク質を使用した。60秒間のバイオセンサーベースライン工程を適用した後、溶液中でのバイオセンサー上の抗体とEnv三量体との結合を200秒間にわたり分析した。試験抗原の2倍濃度勾配を6滴定系列において用いた。相互作用の解離を300秒間追跡した。抗体がローディングされたが三量体と共にインキュベートされなかったセンサー、または抗体を含有しないが三量体と共にインキュベートされたセンサーに関して記録された平均シフトを差し引くことにより、基線(ベースライン)変動の補正を行った。forteBioのデータ収集ソフトウェアv.8.1でOctetデータを処理した。KD値および他の動力学的パラメータを決定するために、グローバルフィット1:1モデルを用いて、実験データをV1V2頂点指向性bNAbにフィットさせた。
【0134】
実施例15 三量体特性を改善するためのgp41ドメインの更なる修飾
本発明者らは、HIV-1 Envの準安定性には、準安定性の主要原因であるヘプタド領域1(HR1)のN末端ベンドに加えて、gp41内の他の領域も寄与すると仮定している。これは、2つの異なる実施において実現されうるマスター仮説である。
【0135】
第1の実施においては、多様なHIV-1株または亜型のgp41ドメインを置換して、BG505 UFO gp140三量体と同じ高い収率、純度および安定性を有する「キメラ」gp140三量体(「UFO-BG」と称される)を得るために、再設計HR N末端ベンドと切断部位リンカーとを含有するBG505 gp41ドメインが使用されうる、と本発明者らは仮定する。gp120ドメインはEnvエピトープの大部分をコードしており、したがって、HIV-1株またはサブタイプの同一性を定めるため、そのような「キメラ」gp140三量体は野生型(WT)gp140三量体に抗原的に類似しているが、有意に改善した収率、純度および安定性を有する。この仮説を検証するために、世界中の種々の地理的領域における循環HIV-1分離体の大部分を含む、5つの多様なクレード(A、B、C、B’/CおよびA/E)の10個のHIV-1株を選択した。これらの10個のHIV-1株には、BG505(クレードA、第2層)、Q842-d12(クレードA、第2層)、6240.08.TA5.4622(クレードB、第2層)、H078.14(クレードB、第3層)、Du172.17(クレードC、第2層)、16055-2.3(クレードC、第2層)、CN54(クレードB’/C、未知の層)、CH115.12(クレードB’/C、第3層)、95TNIH022(クレードA/E、未知の層)および93JP NH1(クレードA/E、未知の層)が含まれる。実際、Superdex 200 16/600 Hi-Loadカラム上のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)から得られたプロファイルは、多様なHIV-1株に由来するUFO-BG三量体の例外的な純度を示した。バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いて、更に、gp41ドメインを交換することなく野生型(WT)gp140三量体に広範に類似したパターンを示す、11個の広範中和性抗体(bNAb)および8個の非NAbのパネルに対するこれらの10個のUFO-BG三量体の抗原プロファイルを測定した。10個のUFO-BG三量体のネガティブ染色EM分析は、産生されたEnvタンパク質の80~100%が天然様gp140三量体に相当することを示した。最後に、クレードB、第3層株H078.14のUFO-BG gp140三量体の結晶構造が決定され、そのようなキメラgp140設計の構造的完全性が確認された。
【0136】
第2の実施においては、多様なHIV-1株または亜型をgp41ドメインを置換して、改善された収率、純度および抗原性を有する「キメラ」gp140三量体(「UFO-U」と称される)を得るために、再設計HR1 N末端ベンドと切断部位リンカーとを含有するHIV-1配列データベースに由来する「普遍的」(または「コンセンサス」)gp41ドメインが使用されうる、と本発明者らは仮定する。そのような普遍的(またはコンセンサス)gp41は、全てのHIV-1配列(UFO-UALL)のデータベース、または特定のHIV-1亜型(例えば、UFO-UA、-UB、-UC、-UBCおよび-UAE)に属するHIV-1配列のデータベースから計算されうる。これらのデータベース、および「コンセンサス」配列を得るためのそれらの使用は、当技術分野においてよく知られている。例えば、Kotheら,Virol.352:438-449,2006;およびKorberら,Brit.Med.Bullet.58:19-42,2001を参照されたい。この設計戦略の有効性を実証するために、5つの代表的なHIV-1株(それぞれは、異なるクレード由来である)を選択して、UFO-UALL三量体を特徴づけした。UFO-BG三量体に類似して、本発明者らは、UFO-UALL三量体に関して、gp41ドメインの交換を伴わない野生型(WT)gp140三量体と比較して改善されたSECプロファイルおよびBLI抗体結合プロファイルを観察した。選択されたUFO-UALL三量体のネガティブ染色EM分析は、産生されたEnvタンパク質の90~100%が天然様gp140三量体に対応することを示した。
【0137】
実施例16 バクテリオファージQ
β
ウイルス様粒子上のUFO gp140三量体の提示
バクテリオファージQβは、大腸菌(E.coli)に感染しうる、25nmの直径を有する正二十面体ウイルスである。Qβ由来のウイルス様粒子(VLP)は、インフルエンザ(第I相)、アレルギー性鼻炎および喘息(第II相、NCT00890734)、悪性黒色腫(第II相、NCT00651703)、アルツハイマー病(第II相、NCT01097096)、高血圧(NCT00500786)、ニコチン中毒(第II相、NCT01280968)およびII型糖尿病(第I相、NCT00924105)に対するワクチン開発において外来抗原を提示させるための多価担体として使用されている。臨床試験はヒトにおけるその安全性および免疫原性を実証している。Qβ VLPは180個の同一サブユニットから構成され、原則として60個のHIV-1 gp41三量体を提示しうる。しかし、構造モデリングは、60個のgp140三量体を収容するのに十分なスペースがVLP表面上にない可能性があることを示唆した。表面密度を減少させるために、本発明者らは、短いグリシン-セリン(GS)リンカーで2つのQβサブユニットを共有結合させることにより、Qβ VLPを操作した。本発明者らは更に、哺乳類細胞におけるQβ VLPの集合に影響を及ぼしうる内向きのグリコシル化部位を除去した。ついで、T4ファージヘッドフィブリチン(PDB識別子:4NCV、4NCW、4NCU、1RFO)の三量体フォールドンを、UFO gp140と操作Qβサブユニットとを連結する「首」として含めた。得られた構築物は、哺乳類細胞において発現されると、各粒子上に30個のUFO gp140三量体を提示する安定なVLPへと集合した。
【0138】
このように、本発明は、前記の代表的な実施形態を参照して広範に開示されており、例示されている。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に種々の修飾が施されうると理解される。
【0139】
本明細書において引用されている全ての刊行物、特許および特許出願の全体を、それぞれが個々にそのように示されている場合と同様に、あらゆる目的で、参照により本明細書に明示的に組み入れることに更に留意されたい。参照により本明細書に組み入れられる本文に含まれる定義は、本開示における定義と矛盾する場合には除外される。
一態様において、本開示は以下を提供する。
[項目1]
gp120ポリペプチドおよびgp41ポリペプチドを含む修飾HIV-1エンベロープgp140タンパク質であって、gp41ポリペプチドのヘプタド1領域(HR1)のN末端が、融合前gp140構造を安定化させる約6~約14アミノ酸残基の長さのループ配列で置換されている、修飾HIV-1エンベロープgp140タンパク質。
[項目2]
gp41ポリペプチドがgp41
ECTO
である、項目1記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目3]
三量体である、項目1記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目4]
gp120ポリペプチドおよびgp41ポリペプチドが、異なるHIV-1株に由来する、項目1記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目5]
HIV-1株BG505に由来する、項目1記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目6]
ループ配列が(GS)n(配列番号23)を含有し、ここで、nは3~7(3および7を含む)の任意の整数である、項目1記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目7]
ループ配列が(GS)
4
(配列番号24)である、項目1記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目8]
ループ配列が10アミノ酸残基を含む、項目1記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目9]
ループ配列が配列番号1~5のいずれか1つを含む、項目8記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目10]
ループ配列が8アミノ酸残基を含む、項目1記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目11]
ループ配列が配列番号6~10のいずれか1つを含む、項目10記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目12]
gp120とgp41との間の切断部位配列の代わりに柔軟なリンカー配列を更に含む、項目1記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目13]
リンカー配列が(G
4
S)
2
(配列番号22)またはSGSを含み、切断部位における残基508~511を置き換えている、項目1記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目14]
リンカー配列が8アミノ酸残基を含み、切断部位における残基501~518を置き換えている、アミノ酸残基の番号付けがHIV-1株BG505.SOSIP.664 gp140の番号付けに対応する、項目12記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目15]
リンカー配列が、配列番号16~20のいずれか1つに示されている配列を含む、項目14記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目16]
(a)gp120とgp41との間に操作されたジスルフィド結合、および/または(b)gp41における安定化変異を更に含む、項目1記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目17]
前記操作されたジスルフィド結合が残基A501CとT605Cとの間に存在し、前記安定化変異がI559Pである、項目16記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目18]
項目1記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質がgp140三量体を含み、各単量体がgp120ポリペプチドおよびgp41
ECTO
ポリペプチドを含み、gp41
ECTO
ポリペプチドがHIV-1株BG505に由来し、gp41
ECTO
ポリペプチドにおけるヘプタド1領域(HR1)(配列番号28)のN末端が、配列番号6に示されているループ配列で置換されている、項目1記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目19]
(a)切断部位における残基508~511を置き換えるリンカー配列(G
4
S)
2
(配列番号22)、および(b)残基A501CとT605Cとの間の操作されたジスルフィド結合を更に含む、項目18記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目20]
項目1記載の修飾三量体HIV-1エンベロープgp140タンパク質を含む、HIV-1ワクチン免疫原。
[項目21]
自己集合性ナノ粒子またはウイルス様粒子(VLP)上に提示されるHIV-1 Env由来三量体免疫原を含むHIV-1ワクチン組成物。
[項目22]
HIV-1 Env由来の三量体免疫原がV1V2、gp120またはgp140である、項目21記載のHIV-1ワクチン組成物。
[項目23]
HIV-1 Env由来の三量体免疫原が、gp120ポリペプチドおよびgp41
ECTO
ポリペプチドを含む修飾gp140タンパク質であり、p41
ECTO
ポリペプチドのヘプタド1領域(HR1)のN末端が、融合前gp140構造を安定化させる約6~約14アミノ酸残基のループ配列で置換されている、項目21記載のHIV-1ワクチン組成物。
[項目24]
ループ配列が、(a)(GS)n(配列番号23)(ここで、nは3~7(3および7を含む)の任意の整数である)、または(b)アンサンブルに基づくタンパク質設計によって合理的に再設計された配列を含む、項目23記載のHIV-1ワクチン組成物。
[項目25]
修飾gp140タンパク質がナノ粒子プラットフォームに共有結合により融合している、項目23記載のHIV-1ワクチン組成物。
[項目26]
ナノ粒子プラットフォームは三量体配列を含む、項目23記載のHIV-1ワクチン組成物。
[項目27]
ナノ粒子プラットフォームがジヒドロリポイルアシルトランスフェラーゼ(E2P)、フェリチンまたはルマジンシンターゼ(LS)を含む、項目23記載のHIV-1ワクチン組成物。
[項目28]
ナノ粒子プラットフォームが表面上に1以上の3回軸を有し、各単量体サブユニットのN末端が3回軸に近接しており、3つのN末端の間隔が修飾gp140タンパク質三量体のC-末端の間隔に合致している、項目23記載のHIV-1ワクチン組成物。
[項目29]
修飾gp140タンパク質配列のC末端がナノ粒子プラットフォーム配列のサブユニットのN末端に融合している、項目23記載のHIV-1ワクチン組成物。
[項目30]
ナノ粒子プラットフォームが、12または24個のサブユニットから構築される約20nm以下の直径を有する自己集合性ナノ粒子を含む、項目23記載のHIV-1ワクチン組成物。
[項目31]
アジュバントを更に含む、項目23記載のHIV-1ワクチン組成物。
[項目32]
gp140三量体がHIV-1株BG505に由来し、ループ配列が、配列番号6に示されている配列を有する、項目23記載のHIV-1ワクチン組成物。
[項目33]
(a)切断部位における残基508~511を置き換えるリンカー配列(G
4
S)
2
(配列番号22)、および(b)残基A501CとT605Cとの間の操作されたジスルフィド結合を更に含む、項目32記載の修飾HIV-1 gp140タンパク質。
[項目34]
項目20記載のワクチン免疫原の治療的有効量を対象に投与し、それにより、対象におけるHIV-1感染を予防することを含む、対象におけるHIV-1感染の予防方法。
[項目35]
項目20記載のワクチン免疫原の治療的有効量を含む医薬組成物を対象に投与し、それにより、対象においてHIV-1感染を治療し、または対象においてHIV-1に対する免疫応答を誘発させることを含む、対象におけるHIV-1感染の治療方法、または対象におけるHIV-1に対する免疫応答を誘発させる方法。
【配列表】