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特許7046848弱毒化突然変異体ジカウイルスをコードするゲノム配列
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  • 特許-弱毒化突然変異体ジカウイルスをコードするゲノム配列 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】弱毒化突然変異体ジカウイルスをコードするゲノム配列
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20220328BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220328BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220328BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220328BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220328BHJP
   C12N 7/04 20060101ALI20220328BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20220328BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N7/04
A61K39/12
A61P31/14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018568193
(86)(22)【出願日】2017-07-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2017067059
(87)【国際公開番号】W WO2018007575
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-07-06
(31)【優先権主張番号】16305863.9
(32)【優先日】2016-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】518454438
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ラ・レユニオン・サン・ドニ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LA REUNION SAINT DENIS
(73)【特許権者】
【識別番号】511227015
【氏名又は名称】アンスティテュ・ドゥ・ルシェルシュ・プール・ル・デヴェロップマン
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT DE RECHERCHE POUR LE DEVELOPPEMENT
(73)【特許権者】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ガデア,ジル
(72)【発明者】
【氏名】ジラルド,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】デプレ,フィリップ
【審査官】玉井 真人
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-519484(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088380(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/051491(WO,A1)
【文献】Zika virus strain BeH819015 polyprotein gene, complete cds.,GenBank: KU365778.1,2016年01月26日
【文献】Pylro VS et al.,ZIKV - CDB: A Collaborative Database to Guide Research Linking SncRNAs and ZIKA Virus Disease Symptoms,PLoS Negl Trop Dis,2016年06月22日,10(6),e0004817
【文献】Lauring AS et al.,Rationalizing the development of live attenuated virus vaccines,Nature Biotechnology,2010年,28(6),573-579
【文献】Qi Y et al.,microRNA expression profiling and bioinformatic analysis of dengue virus-infected peripheral blood mononuclear cells,Molecular Medicine Reports,2013年,7,791-798
【文献】Zika virus genomic RNA, complete genome, strain: MR766-NIID.,GenBank : LC002520,2014年
【文献】hsa-miR-4279,ZIKV collaborative database,2016年06月22日,http://zikadb.cpqrr.fiocruz.br/zika/search_sncrna.php?query=hsa-miR-4279
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 7/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
miR-4279のための少なくとも1つの結合部位が修復されている配列番号1を特徴とするゲノム配列を有し、配列番号2により表される配列からなる、核酸。
【請求項2】
2707位のアデノシン(A)をチミン(T)で置換し、2713位のグアニン(G)をアデノシン(A)で置換し、2716位のアデノシン(A)をグアニン(G)で置換することによって、第1の結合部位が修復されている、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
3331位のシチジン(C)をチミン(T)で置換し、3332位のシチジン(C)をチミン(T)で置換し、3343位のアデニン(A)をグアニン(G)で置換することによって、第2の結合部位が修復されている、請求項1に記載の核酸。
【請求項4】
5106位のグアニン(G)をアデノシン(A)で置換し、5113位のアデノシン(A)をグアニン(G)で置換し、5116位のアデノシン(A)をグアニン(G)で置換することによって、第3の結合部位が修復されている、請求項1に記載の核酸。
【請求項5】
5962位のシトシン(C)をチミン(T)で置換し、5971位のグアニン(G)をアデノシン(A)で置換することによって、第4の結合部位が修復されている、請求項1に記載の核酸。
【請求項6】
6211位のアデノシン(A)をグアニン(G)で置換し、6220位のチミン(T)をシチジン(C)で置換することによって、第5の結合部位が修復されている、請求項1に記載の核酸。
【請求項7】
流行株のゲノム配列において、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの結合部位が修復されている、請求項1に記載の核酸。
【請求項8】
152位、156位又は158位の少なくとも1つのアミノ酸残基が突然変異されているタンパク質Eをコードする、請求項1に記載の核酸。
【請求項9】
152位のイソロイシン残基(I)がトレオニン残基(T)で置換されており、156位のトレオニン残基(T)がイソロイシン残基(I)で置換されており、158位のヒスチジン残基(H)がチロシン残基(Y)で置換されているタンパク質Eをコードする、請求項1に記載の核酸。
【請求項10】
配列番号3によって表される配列からなる、請求項1に記載の核酸。
【請求項11】
請求項1に記載の核酸を含む、宿主細胞。
【請求項12】
請求項1に記載の核酸によってコードされる、弱毒化ジカウイルス。
【請求項13】
請求項12に記載の弱毒化ジカウイルスを含む、ワクチン組成物。
【請求項14】
被験体においてジカウイルスに対する免疫応答を誘発するための医薬組成物であって、治療有効量の請求項13に記載のワクチン組成物を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、弱毒化突然変異体ジカウイルスをコードするゲノム配列に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景:
ジカウイルスは蚊媒介性フラビウイルスであり、1947年にウガンダで、黄熱をモニタリングするネットワークによって、サルにおいて初めて同定された。その後、それは、1952年にウガンダ及びタンザニア連合共和国で、ヒトにおいて確認された。アフリカ、米国、アジア及び太平洋では、ジカウイルス疾患の発生が記録されている。1960年代から1980年代にアフリカ及びアジア全域で、典型的には軽度の病気を伴うヒト感染が見出された。ジカ感染によって引き起こされた疾患の最初の大発生は、2007年にヤップ(ミクロネシア連邦)の島から報告された。2015年7月にブラジルで、ジカウイルス感染とギラン・バレー症候群との間の関連が報告された。2015年10月にブラジルで、ジカウイルス感染と小頭症との関連が報告された。ジカウイルスは、Aedes属、熱帯地方では主にAedes aegyptiの感染蚊によって刺されることで人々に主に伝染される。通常、Aedesの蚊は日中に刺し、早朝及び午後/夕方にピークに達する。これは、ジカウイルス、チクングニャ熱及び黄熱病を伝染する同じ蚊である。ジカウイルスの性的伝染も可能である。輸血などの他の伝染様式が調査されている。通常、ジカウイルス疾患は軽度であり、特定の処置を必要としない。ジカウイルスにかかっている人々は、多くの休息を取り、十分な水分を飲み、普通薬で痛み及び発熱を処置すべきである。症候が悪化した場合、医療及びアドバイスを求めるべきである。現在、利用可能なワクチンはない。WHOの専門家は、妊婦及び出産期の女性で使用するのに安全な弱毒化ワクチン及び他の非生ワクチンの開発を優先すべきであると提案している。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、弱毒化突然変異体ジカウイルスをコードするゲノム配列に関する。特に、本発明は、特許請求の範囲によって定義される。
【0004】
発明の詳細な説明:
本発明は、特に妊婦のワクチン接種に安全であるという利点を提供する、弱毒化突然変異体ジカウイルスをコードするゲノム配列に関する。特に、本発明者らは、地域流行性ゲノム配列に元々存在していたmiR-4279のためのいくつかの結合部位を修復するために、流行性ゲノム配列の非常に特定の位置においていくつかの特定の置換を導入した。また、本発明者らは、Eタンパク質上のNグリコシル化部位の無効化をもたらす突然変異であって、ギラン・バレー症候群の原因となる自己抗体の生成を防止するであろう突然変異をさらに導入した。本発明者らは、高力価のウイルスを産生する能力に影響を与えずに細胞変性効果の劇的な減少をもたらすウイルスのさらなる突然変異を生産した。
【0005】
したがって、本発明の第1の目的は、miR-4279のための少なくとも1つの結合部位が修復されている流行株のゲノム配列に関する。
【0006】
本明細書で使用される場合、「ジカウイルス」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有する。ジカウイルスは、5’NCR及び3’NCRとして公知の領域に隣接する2つの非コード領域を有する10794塩基長のポジティブセンス一本鎖RNA分子である。ジカウイルスのオープンリーディングフレームは、キャプシド(C)、前駆膜(prM)、エンベロープ(E)及び非構造タンパク質(NS)にその後切断されるポリタンパク質をコードする。Eタンパク質は、ビリオン表面の大部分を構成し、宿主細胞結合及び膜融合などの複製の態様に関与する。NS1、NS3及びNS5は、高度に保存された大きなタンパク質であるが、NS2A、NS2B、NS4A及びNS4Bタンパク質は、より小さな疎水性タンパク質である。翻訳、RNAパッケージング、環化、ゲノム安定化及び認識に関与し得る428ヌクレオチドが3’NCRに位置する。3’NCRはループ構造を形成し、5’NCRは、メチル化ヌクレオチドキャップ又はゲノム連結タンパク質を介した翻訳を可能にする。
【0007】
「流行株」という用語は、流行性感染症の原因となるジカ株を指す。特に、流行株は、配列番号1によって表されるゲノム配列を特徴とする。いくつかの実施態様では、流行ジカ株は、ジカ株BeH819015(Genbank#KU365778)を指す。
【0008】
本明細書で使用される場合、「miR」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、miRBaseアクセッションナンバーでデータベースhttp://microrna.sanger.ac.uk/sequences/から公的に入手可能なmiRNA配列を指す。したがって、miR-4279は、それ自体公知である。
【0009】
いくつかの実施態様では、2707位のアデノシン(A)をチミン(T)で置換し、2713位のグアニン(G)をアデノシン(A)で置換し、2716位のアデノシン(A)をグアニン(G)で置換することによって、第1の結合部位が修復されている。
【0010】
いくつかの実施態様では、3331位のシチジン(C)をチミン(T)で置換し、3332位のシチジン(C)をチミン(T)で置換し、3343位のシチジン(C)をグアニン(G)で置換することによって、第2の結合部位が修復されている。
【0011】
いくつかの実施態様では、5106位のグアニン(G)をアデノシン(A)で置換し、5113位のアデノシン(A)をグアニン(G)で置換し、5116位のアデノシン(A)をグアニン(G)で置換することによって、第3の結合部位が修復されている。
【0012】
いくつかの実施態様では、5962位のシトシン(C)をチミン(T)で置換し、5971位のグアニン(G)をアデノシン(A)で置換することによって、第4の結合部位が修復されている。
【0013】
いくつかの実施態様では、6211位のアデノシン(A)をグアニン(G)で置換し、6220位のチミン(T)をシチジン(C)で置換することによって、第5の結合部位が修復されている。
【0014】
いくつかの実施態様では、流行株のゲノム配列において、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの結合部位が修復されている。
【0015】
いくつかの実施態様では、ゲノム配列は、配列番号2によって表される配列からなる。
【0016】
いくつかの実施態様では、流行株のゲノム配列は、タンパク質E上のNグリコシル化部位の無効化をもたらす少なくとも1つの突然変異をさらに含む。いくつかの実施態様では、本発明のゲノム配列は、152位、156位又は158位の少なくとも1つのアミノ酸残基が突然変異されているタンパク質Eをコードする。いくつかの実施態様では、本発明のゲノム配列は、152位のイソロイシン残基(I)がトレオニン残基(T)で置換されているタンパク質Eをコードする。いくつかの実施態様では、本発明のゲノム配列は、156位のトレオニン残基(T)がイソロイシン残基(I)で置換されているタンパク質Eをコードする。いくつかの実施態様では、本発明のゲノム配列は、ヒスチジン残基(H)がチロシン残基(Y)で置換されているタンパク質Eをコードする。いくつかの実施態様では、本発明のゲノム配列は、152位のイソロイシン残基(I)がトレオニン残基(T)で置換されており、156位のトレオニン残基(T)がイソロイシン残基(I)で置換されており、ヒスチジン残基(H)がチロシン残基(Y)で置換されているタンパク質Eをコードする。
【0017】
いくつかの実施態様では、ゲノム配列は、配列番号3によって表される配列からなる。
【0018】
本発明のゲノム配列は、弱毒化ジカウイルスの生産に特に適切である。本明細書で使用される場合、「弱毒化」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、特に、低毒性にされているウイルスである。特に、本発明の弱毒化突然変異体ジカウイルスは、非病原性である。本明細書で使用される場合、「非病原性」という用語は、非毒性であるか、又は病気、特にギラン・バレー症候群を誘発することができないことを意味するために本明細書で使用される。
【0019】
したがって、本発明のさらなる目的は、本発明のゲノム配列によってコードされる弱毒化ジカウイルスに関する。
【0020】
いくつかの実施態様では、リコンビナントDNA技術によって本発明の弱毒化突然変異体ジカウイルスを得、本発明のゲノム配列を標準的なタンパク質発現ベクターにクローニングし、これを使用して適切な宿主細胞を感染させる。次いで、宿主細胞を培養して所望のウイルスを発現させ、これを所望の程度まで精製し、適切なワクチン製品に製剤化し得る。
【0021】
したがって、本発明のさらなる目的は、本発明のゲノム配列を含む宿主細胞に関する。宿主細胞は、典型的には、ウイルスを増殖させるために適切な細胞株である。適切な細胞株としては、哺乳動物細胞、例えばVero細胞、AGMK細胞、BHK-21細胞、COS-1又はCOS-7細胞、MDCK細胞、CV-1細胞、LLC-MK2細胞、初代細胞株、例えば胎児アカゲザル肺(FRhL-2)細胞、BSC-1細胞及びMRC-5細胞又はヒト二倍体線維芽細胞、並びに鳥類細胞、ニワトリ又はアヒル胚由来細胞株、例えばAGE1細胞及び初代ニワトリ胚線維芽細胞及び蚊細胞株、例えばC6/36が挙げられる。細胞の成長を支援することができる培地を培養物に供給する。所望のウイルス力価が達成されるまで、培養液中で宿主細胞を数日間維持する。場合により、数日間以上の期間にわたってウイルスを断続的又は連続的に得ることができる連続灌流系で、細胞を維持する。非連続培養条件下では、感染後3~7日まで少なくとも約10~10PFU/mlのウイルス力価が望ましい。ウイルスを回収するために、低速遠心分離を含む当技術分野で公知の一般的な方法によって、又はろ過によって、ウイルスを収集する。前記ウイルスを濃縮するための方法は当業者の範囲内であり、例えば、限外ろ過、又はポリエチレングリコール(PEG)による沈殿が挙げられる。ウイルスを精製するための方法は当業者に公知であり、典型的には、連続若しくは多段階スクロース勾配、サイズ排除、イオン交換、吸着若しくはアフィニティーカラムを使用したカラムクロマトグラフィーによる精製、又はポリマー二相系若しくは多相系における分配による精製、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。ウイルス陽性画分をアッセイするための方法としては、プラークアッセイ、赤血球凝集(HA)アッセイ及び/又は抗原アッセイ、例えばイムノアッセイが挙げられる。
【0022】
いくつかの実施態様では、収集された本発明の弱毒化突然変異体ジカウイルスは不活性にされる。本明細書で使用される場合、「不活性」という用語は、例えばin vitroで複製され、次いでウイルスがもはや複製不可能になるように化学的又は物理的手段を使用して殺傷されたウイルスを包含する。例えば、生弱毒化ウイルスは、化学薬剤、例えばホルムアルデヒド、ベータプロピオラクトン(BPL)若しくは過酸化水素を使用して、又は紫外線照射を使用して、又は2つ以上の不活性化工程の組み合わせ(これは、同じものでもよいし又は異なるものでもよく、例えば、任意の組み合わせでホルムアルデヒド及びBPL、ホルムアルデヒド及びUV照射、BPL及びUV照射、過酸化水素及びBPL、過酸化水素及びUV照射などであり得る)を使用することによって不活性化され得る。
【0023】
本発明のさらなる目的は、本発明の弱毒化ジカウイルスを含むワクチン組成物に関する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「ワクチン組成物」という用語は、ヒトへの投与に適切な組成物であって、ジカウイルスなどの病原体に対する特異的免疫応答を誘発することができる組成物である。
【0025】
本発明のワクチン組成物は、一定量の本発明の生弱毒化ジカウイルス又は一定量の本発明の不活性弱毒化ジカウイルスを含む。
【0026】
本発明のワクチン組成物はまた、免疫応答を誘発又は増強することができる1つ以上のさらなる成分、例えば賦形剤、担体及び/又はアジュバントを含み得る。「アジュバント」は、薬剤の非存在下における抗原の投与と比較して、抗原特異的免疫応答の発生を増強する薬剤である。一般的なアジュバントとしては、抗原が吸着されるミネラル(又は、ミネラル塩、例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、アルミニウムヒドロキシホスフェート)の懸濁液を含むアルミニウム含有アジュバントが挙げられる。本開示との関連では、アジュバントは、任意のこのようなアルミニウム塩の非存在下で製剤化されるアルミニウム(ミョウバン)不含アジュバントである。ミョウバン不含アジュバントとしては、油エマルジョン及び水エマルジョン、例えば油中水型及び水中油型(並びに、二重エマルジョン及び可逆的エマルジョンを含むそれらの変形物)、リポサッカライド、リポポリサッカライド、免疫刺激性核酸(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)、リポソーム、Toll様レセプターアゴニスト(特に、TLR2、TLR4、TLR7/8及びTLR9アゴニスト)、並びにこのような成分の様々な組み合わせが挙げられる。薬学的に許容し得る担体及び賦形剤は周知であり、当業者によって選択され得る。例えば、担体又は賦形剤は、好ましくは、バッファーを含み得る。場合により、担体又は賦形剤はまた、溶解性及び/又は安定性を安定化する少なくとも1つの成分を含有する。可溶化剤/安定剤の例としては、界面活性剤、例えばラウロイルサルコシン及び/又はポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートが挙げられる。代替的な可溶化剤/安定剤としては、アルギニン及びガラス形成ポリオール(例えば、スクロース、トレハロースなど)が挙げられる。多数の薬学的に許容し得る担体及び/又は薬学的に許容し得る賦形剤が当技術分野で公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 5th Edition (1975)に記載されている。したがって、当業者であれば、適切な賦形剤及び担体を選択して、選択された投与経路による被験体への送達に適切な製剤を生産し得る。適切な賦形剤としては、限定されないが、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、ソルビトール、トレハロース、N-ラウロイルサルコシンナトリウム塩、L-プロリン、非界面活性剤スルホベタイン、塩酸グアニジン、尿素、トリメチルアミンオキシド、KCl、Cat2+、Mg2+、Mn2+、Zn2+並びに他の二価カチオン関連塩、ジチオスレイトール、ジチオエリトロール(Dithioerytrol)及びβ-メルカプトエタノールが挙げられる。他の賦形剤は、界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、Triton X-00、NP-40、Empigen BB、オクチルグルコシド、ラウロイルマルトシド、Zwittergent 3-08、Zwittergent 3-0、Zwittergent 3-2、Zwittergent 3-4、Zwittergent 3-6、CHAPS、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムを含む)であり得る。ヒト被験体への投与のためのものを含むワクチン組成物の調製は、一般に、Pharmaceutical Biotechnology, Vol. 61 Vaccine Design-the subunit and adjuvant approach, edited by Powell and Newman, Plenum Press, 1995、New Trends and Developments in Vaccines, edited by Voller et al., University Park Press, Baltimore, Md., U.S.A. 1978に記載されている。リポソーム内への封入は、例えば、Fullertonの米国特許第4,235,877号に記載されている。高分子へのタンパク質のコンジュゲーションは、例えば、Likhiteの米国特許第4,372,945号及びArmor et alの米国特許第4,474,757号に記載されている。典型的には、各用量のワクチン組成物における抗原の量は、典型的な被験体において有意な有害副作用を伴わずに免疫防御応答を誘導する量として選択される。これとの関連における免疫防御は、感染に対する完全な防御を必ずしも意味しない;それは、症候又は疾患、特にウイルスに関連する重度の疾患に対する防御を意味する。抗原の量は、どの特異的免疫原が用いられるかに応じて変動し得る。一般に、各ヒト用量は、不活性化ウイルス 0.05~100μg、例えば不活性化ジカウイルスの各株 約0.1μg(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5μg)~約50μg、例えば約0.5μg~約30μg、例えば約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約10μg、約15μg、約20μg又は約25μgを含むと予想される。典型的には、ワクチン組成物は、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして、注射用として調製される;注射前に液体の溶液又は懸濁液に適切な固体形態も調製され得る。
【0027】
本発明のさらなる目的は、被験体においてジカウイルスに対する免疫応答を誘発するための方法であって、治療有効量の本発明のワクチン組成物を該被験体に投与することを含む方法に関する。
【0028】
いくつかの実施態様では、本発明のワクチン組成物は、成人又は幼児のヒトに投与される。いくつかの実施態様では、本発明のワクチン組成物は、妊婦に投与される。いくつかの実施態様では、本発明のワクチン組成物は、出産期の女性に投与される。いくつかの実施態様では、被験体は、ジカウイルスに以前に曝露された。
【0029】
いくつかの実施態様では、本発明のワクチン組成物は、ジカウイルス感染症及び/又はジカウイルス誘発性疾患の予防、改善又は処置に特に適切である。
【0030】
ワクチン組成物は、異なる様々な経路によって投与され得るが、最も一般的には、ワクチン組成物は、筋肉内、皮下又は皮内投与経路によって送達される。一般に、ワクチン組成物は、中和抗体の産生及び防御に有効な用量で皮下、皮内又は筋肉内投与され得る。ワクチンは、投与製剤と適合する様式で、予防的及び/又は治療的に有効であるような量で投与される。投与すべき量は、一般には用量当たりウイルス 0.05~100μgの範囲内であるが、処置すべき被験体、被験体の免疫系が抗体を合成する能力、及び所望の防御程度に依存する。投与すべきワクチンの正確な量は、施術者の判断に依存し得、各被験体に特有のものであり得る。
【0031】
ワクチン組成物は、単回投与スケジュール又は好ましくは複数回投与スケジュールで与えられ得、この場合、主なワクチン接種過程は、1~10回の別個投与と、続いて、免疫応答の維持及び又は強化に必要なその後の時間間隔(例えば、第2の投与の場合には1~4カ月)で与えられる他の投与と、必要な場合には数カ月後又は数年後のその後の投与とによるものであり得る。投与レジメンはまた、少なくとも部分的には被験体の必要性によって決定され、施術者の判断に依存するであろう。適切な免疫スケジュールの例は、第1の投与と、続いて、7日~6カ月の第2の投与と、初回免疫後1カ月~2年の任意選択の第3の投与とを含むか、又は防御免疫を付与すると予想される力価のウイルス中和抗体を誘発するために十分な他のスケジュールを含む。ワクチン組成物によるジカウイルスに対する防御免疫の生成は、1~3回の接種からなる主な免疫過程後に合理的に予想され得る。これらは、十分なレベルの防御免疫を維持するように設計された間隔(例えば、2年ごと)の追加免疫によって補足され得る。
【0032】
以下の図面及び実施例によって、本発明をさらに例証する。しかしながら、これらの実施例及び図面は、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、クローンZIKAmirの詳細を示す。
【実施例
【0034】
本発明者らは、地域流行性ゲノム配列に元々存在していたmiR-4279のためのいくつかの結合部位を修復するために、流行性ゲノム配列の非常に特定の位置においていくつかの特定の置換を導入した(図1)。次いで、子孫産生アッセイにおいて、(「ZIKAmir」と命名した)クローンを流行クローンと比較した。簡潔に言えば、Vero細胞(105個/ウェル)を48ウェル培養プレートに播種した。5%熱不活性化FBSを補充した培養培地中で、ウイルスサンプルの10倍連続希釈物を2回反復で調製し、各希釈物 0.1mLを細胞に追加した。プレートを37℃で2時間インキュベーションした。0.8%カルボキシメチルセルロース(CMC)を補充した培養培地 0.1mlを各ウェルに追加し、続いて、37℃で4日間インキュベーションした。CMCオーバーレイを除去し、最初に3.7%PFAで細胞を10分間固定し、次いで、20%エタノール中0.5%クリスタルバイオレットで染色した。プラークをカウントし、プラーク形成単位/mL(PFU.mL-1)として表した。表1に示されているように、流行性及び地域流行性ウイルスで観察された産生と比較して、子孫産生は減少する。
【表1】
【0035】
配列:
配列番号1:親ZIKVBR15-MC BeH819015のゲノム配列(10,727nt)
【化1】






【0036】
配列番号2:キメラZIKVBR15-MC突然変異体miR4279のゲノム配列(10,807nt)
【化2】





【0037】
配列番号3:キメラZIKVBR15-MC突然変異体miR4279のゲノム配列(10,807nt)
太字及び下線-miRターゲット配列;太字及び斜体 グリコシル化部位
【化3】





【0038】
参考文献:
本出願を通して、様々な参考文献により、本発明が関係する技術水準が説明されている。これらの参考文献の開示は、参照により本開示に組み入れられる。
図1
【配列表】
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