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特許7046849サラウンドスピーカーのための非対称な高周波数導波路、三軸装着具および球状エンクロージャー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】サラウンドスピーカーのための非対称な高周波数導波路、三軸装着具および球状エンクロージャー
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20220328BHJP
   H04R 1/30 20060101ALI20220328BHJP
   H04R 1/32 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
H04R1/02 105Z
H04R1/30 A
H04R1/02 102A
H04R1/32 310A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018568433
(86)(22)【出願日】2017-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 US2017039828
(87)【国際公開番号】W WO2018005694
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】62/356,045
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/519,063
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507236292
【氏名又は名称】ドルビー ラボラトリーズ ライセンシング コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ショーウォルター,ガース ノーマン
(72)【発明者】
【氏名】ディ・コーラ,マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴット,ジョン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スパーロック,パトリック ロス
(72)【発明者】
【氏名】カーニー,グレゴリー リン
(72)【発明者】
【氏名】ゴット,ブライス ジョーゼフ
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-536051(JP,A)
【文献】特開昭60-081999(JP,A)
【文献】特開平01-228296(JP,A)
【文献】特表2013-504931(JP,A)
【文献】特表平04-505241(JP,A)
【文献】実開昭53-116731(JP,U)
【文献】特表2000-510291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
H04R 1/30
H04R 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
会場に音を送出するためのスピーカー・アセンブリーであって、当該スピーカー・アセンブリーは
ホーン導波路であって、該導波路の垂直軸または水平軸の一方に関して非対称的であって非対称ホーン導波路を形成するよう構成されたホーン導波路と;
前記非対称ホーン導波路を囲んでホーン・スピーカーを形成する球状エンクロージャーと;
前記ホーン・スピーカーを前記会場の壁または天井表面の一つに取り付けるよう構成された三軸マウンティング・システムとを有しており、前記マウンティング・システムは、前記非対称ホーン導波路の通過帯域内で前記会場の最大カバレッジを与える位置に前記ホーン・スピーカーを回転させることを容易に
記導波路は、前記ホーン・スピーカーの垂直軸に関する二つの対称な表面と、前記ホーン・スピーカーの水平軸に関する二つの非対称な表面とを有
記二つの対称な表面および二つの非対称な表面は、前記導波路のQ因子を制御するための前記ホーン内の調整表面によって隔てられる、
ピーカー・アセンブリー。
【請求項2】
各表面の相対的な大きさ、各表面の傾きの量および前記調整表面間の距離が、前記ホーン・スピーカーの最適な投射角を指定する、請求項記載のスピーカー・アセンブリー。
【請求項3】
前記会場が、映画館、会堂、シアターまたは大きな聴取室のうちの一つを含む大きな会場であり、前記会場の上表面は前記会場の高い壁表面または天井の一方を含む、請求項記載のスピーカー・アセンブリー。
【請求項4】
壁マウントのための前記最適な投射角は、前記ホーン・スピーカーの底側近くに延在し、カバレッジねらい角を通じて平坦な角度を有しており、それにより前記スピーカー・アセンブリーの短いスローについてはカバレッジを軟化させ、前記会場における前記スピーカー・アセンブリーの長いスローでのカバレッジを鋭くする、前記会場におけるカバレッジ・パターンを生成する、請求項記載のスピーカー・アセンブリー。
【請求項5】
前記三軸マウンティング・システムは、前記会場の上表面への堅いマウンティング内で前記ホーン・スピーカーのパン、チルトおよび回転動きを提供する、請求項1記載のスピーカー・アセンブリー。
【請求項6】
前記三軸マウンティング・システムはさらに、前記位置に前記ホーン・スピーカーのねらいをつけることのさらなる制御を提供し、手動制御によって一度設定されると位置を固定される、請求項記載のスピーカー・アセンブリー。
【請求項7】
前記オーディオは、サラウンドサウンド・オーディオまたは没入的オーディオの一方を含む、請求項1記載のスピーカー・アセンブリー。
【請求項8】
高さスピーカーによって会場における再生の間、均等なオーディオ・スペクトルを提供する方法であって、当該方法は
ホーン・スピーカーを形成するために漸進的な水平カバレッジ幅および狭い垂直分散を付与する非対称なホーン導波路を提供し;
前記会場の上表面に前記ホーン・スピーカーを設置するための三軸マウンティング・システムとを提供することを含み、前記マウンティング・システムは、前記導波路の通過帯域内で前記会場の最大カバレッジを与える位置に前記ホーン・スピーカーのねらいをつけることを容易に
前記導波路は、前記ホーン・スピーカーの垂直軸に関する二つの対称な表面と、前記ホーン・スピーカーの水平軸に関する二つの非対称な表面とを有し、
前記二つの対称な表面および二つの非対称な表面は、前記導波路のQ因子を制御するための前記ホーン内の調整表面によって隔てられる、
方法。
【請求項9】
前記導波路が、オーディオの高周波数内容を、前記ホーン・スピーカーの下側を通じて拡散させる、請求項記載の方法。
【請求項10】
前記三軸マウンティング・システムは、前記会場の上表面への堅いマウンティング内で前記ホーン・スピーカーのパン、チルトおよび回転動きを提供する、請求項記載の方法。
【請求項11】
前記上表面は、前記ホーン・スピーカーが前記会場内に向かって実質的に外側を向く高い壁位置および前記ホーン・スピーカーが前記会場内に向かって実質的に下を向く天井のうちの一方を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記会場は、有意な数の座席を保持する囲まれた大きな会場であり、それらの座席は、前記ホーン・スピーカーによってねらいをつけられた前記位置からぎりぎり外側のいくつかの座席を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記会場内に向かって実質的に外側を向く前記ホーン・スピーカーが60度ホーン・スピーカーを含み、前記会場内に向かって実質的に下を向く前記ホーン・スピーカーが80度ホーン・スピーカーを含む、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は2016年6月29日に出願された米国仮特許出願第62/356,045号および2017年6月13日に出願された米国仮特許出願第62/519,063号の優先権を主張するものである。両出願の内容はここに参照によってその全体において組み込まれる。
【0002】
技術分野
一つまたは複数の実装は概括的には映画館オーディオに、より詳細には、映画館におけるフルスペクトルのオーディオ・カバレッジのための非対称ホーン導波路、球状エンクロージャーおよび三軸装着具〔リギング(rigging)〕システムを使うスピーカー・システムに関する。
【背景技術】
【0003】
デジタル映画館の到来は、映画館のサウンドについての新たなスタンダードを作り出した。たとえば、コンテンツ・クリエーターにとってのより大きな創造性を許容する複数チャネル・オーディオの組み込みや、聴衆にとってより包み込むような、リアルな聴覚経験などである。空間的オーディオ・コンテンツを配送し、種々の再生構成においてレンダリングする手段として伝統的なスピーカー・フィードおよびチャネル・ベースのオーディオを超えて拡張する、モデル・ベースのオーディオ記述が開発されている。真の三次元(3D)または仮想3D環境での音の再生は、ますます研究開発がされる領域となっている。音の空間的呈示はオーディオ・オブジェクトを利用する。オーディオ・オブジェクトは、見かけの源位置(たとえば3D座標)、見かけの源幅および他のパラメータの、関連付けられたパラメトリックな源記述をもつオーディオ信号である。
【0004】
映画館環境におけるサウンドトラックのために、クリエーターの芸術的な意図をより正確に捉えて再現するために、さまざまな技術が開発されてきた。ドルビー(登録商標)アトモス(登録商標)システムにおいて具現されている、「没入的」オーディオとも称される次世代空間的オーディオ・フォーマットが開発されているが、これは、オーディオ・オブジェクトについての位置メタデータとともに、オーディオ・オブジェクトおよび伝統的なチャネル・ベースのスピーカー・フィードの混合を含む。空間的オーディオ・デコーダでは、チャネルは関連付けられたスピーカーに直接送られるまたは既存のスピーカー・セットに下方混合〔ダウンミキシング〕され、オーディオ・オブジェクトは柔軟な仕方でデコーダによってレンダリングされる。3D空間における位置軌跡のような各オブジェクトに関連付けられたパラメトリックな源記述は、デコーダに接続されたスピーカーの数および位置とともに、入力として取られる。レンダラーは、各オブジェクトに関連付けられたオーディオを、一組の取り付けられたスピーカーを横断して分配するようある種のアルゴリズムを利用する。こうして、各オブジェクトのオーサリングされた空間的意図は、聴取環境に存在している特定のスピーカー構成を通じて最適に提示される。
【0005】
多くの大規模映画館のサイズおよびサラウンドサウンドおよび空間的オーディオ・システムによって提供される複雑な3D効果のため、特に高さスピーカーに関するスピーカー構成および配置は、周波数スペクトル全体を通じて適正な応答特性を保存するために非常に重要である。たとえば、大きな会場では、すべての聴取者のための良好なオーディオは、源に最も近い聴取者のための幅広く、短いスロー(throw)と、さらに後に座っている聴取者のための狭く、長いスローとの間の妥協を必要とする。同様に、カバレッジは、源に近いときにはより幅広く、より遠ざかっているときにはより狭い必要がある。側壁位置または天井にマウントされるもののような現在の高さスピーカーは、対称的または円錐状のホーンを使うことがあり、そのようなホーンは一般には均等なスペクトル・カバレッジを提供しない。標準的な導波路は十分なカバレッジを提供しうるが、これは、必要のないところにエネルギーを投入するまたは高いQのホーンを使うことにより映画館の一部のセクションをカバレッジ・エリア外にすることによる、より低い感度の妥協を要求する。
【0006】
したがって、必要とされているのは、映画館または他の型の会堂もしくは部屋のような聴取環境における全着席エリアを通じて高い感度および均等なスペクトル内容をもってカバレッジを改善する業務用設備のためのラウドスピーカー・システムである。
【0007】
背景セクションで論じられている主題は、単に背景セクションで言及されていることの結果として従来技術であると想定されるべきではない。同様に、背景セクションにおいて言及されているまたは背景セクションの主題に関連する問題は、従来技術において以前から認識されていたと想定されるべきではない。背景セクションにおける主題は単に、種々のアプローチを表わすものであり、それらのアプローチ自身も発明であることがありうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態は、会場に音を送出するスピーカーであって、円錐状ドライバーと、該ドライバーに音響的に結合されてホーン・スピーカーを形成し、該ホーン・スピーカーの垂直軸または水平軸の一方に関して非対称的であるホーン導波路と、球状エンクロージャーと、前記ホーン・スピーカーを会場の天井または側壁表面に固定するよう構成された三軸マウンティング・システムとを有するものに向けられる。ここで、前記マウンティング・システムは、前記ホーン・スピーカーを回転させてオーディオ・スペクトル全体を通じて会場の最大カバレッジを与える位置にねらいをつけることを容易にする。壁にマウントされるとき、スピーカーは、任意の高さ音または直接音を提供するよう、壁の高い、中心または低いところにマウントされることができる。導波路の例示的な通過帯域は1500Hzより上の周波数であってもよいが、他の範囲も可能である。
【0009】
導波路は、ホーン・スピーカーの垂直軸に関する二つの対称表面と、ホーン・スピーカーの水平軸に関する二つの非対称表面とを有する。二つの対称表面および二つの非対称表面は、円錐状ドライバーへの開口を含む空隙によって隔てられており、各表面の相対的な大きさ、各表面の傾きの量および該空隙の大きさが、ホーン・スピーカーの最適な投射角を指定し、最適な投射角は50度から80度の間である。ある実施形態では、会場は、映画館、会堂、シアターまたは大きな聴取室のうちの一つを含む大きな会場であり、上表面は会場の高い壁表面または天井の一方を含む。最適な投射角は、ホーン・スピーカーの底側(bottom side)近くに延在し、カバレッジねらい角(coverage aiming angle)を通じて平坦な角度を有していてもよく、それによりスピーカーの短いスローについてはカバレッジを軟化させ、会場におけるスピーカーの長いスローでのカバレッジを鋭くする、会場におけるカバレッジ・パターンを生成する。
【0010】
ある実施形態では、三軸マウンティング・システムは、会場の上表面への堅いマウンティング内でホーン・スピーカーのパン、チルトおよび回転動きを提供する。三軸マウンティング・システムはさらに、前記位置にホーン・スピーカーのねらいをつけることのさらなる制御を提供し、手動制御によって一度設定されると位置を固定される。
【0011】
実施形態はさらに、円錐状ドライバーに音響的に結合されてホーン・スピーカーを形成する非対称ホーン導波路であって、前記導波路は、漸進的な水平カバレッジ幅および狭い垂直分散を付与する、導波路と、会場の上表面に前記ホーン・スピーカーを設置するための三軸マウンティング・システムとを提供することによって、高さおよび壁スピーカーによって会場における再生の間、均等なオーディオ・スペクトルを提供する方法に向けられる。ここで、前記マウンティング・システムは、オーディオ・スペクトル全体を通じて会場の最大カバレッジを与える位置に前記ホーン・スピーカーのねらいをつけることを容易にする。導波路は、オーディオの高周波数内容を、ホーン・スピーカーの下側(lower side)を通じて拡散する。三軸マウンティング・システムは、会場の上表面への堅いマウンティング内でホーン・スピーカーのパン、チルトおよび回転動きを提供する。上表面は、ホーン・スピーカーが会場内に向かって実質的に外側を向く高い壁位置およびホーン・スピーカーが会場内に向かって実質的に下を向く天井のうちの一方を含んでいてもよい。会場は、かなりの数の座席を保持する囲まれた大きな会場を含んでいてもよい。それらの座席には、ホーン・スピーカーによってねらいをつけられた前記位置からぎりぎり外側のいくつかの座席を含む。ある実施形態では、ホーン・スピーカー壁スピーカーは60度ホーン・スピーカーを含み、天井スピーカーは80度ホーン・スピーカーを含む。
【0012】
〈参照による組み込み〉
本明細書において言及される各刊行物、特許および/または特許出願はここに参照によって、個々の各刊行物および/または特許出願が具体的かつ個別的に参照によって組み込まれることが示されている場合と同じ程度にその全体において組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下の図面では、同様の参照符号が同様の要素を指すために使われる。以下の図はさまざまな例を描いているが、前記一つまたは複数の実装は図面に描かれる例に限定されるものではない。
【0014】
図1】いくつかの実施形態のもとでの、一つまたは複数のスピーカーおよびスピーカー・マウンティング・システムを含む映画館または同様の聴取環境を示す図である。
【0015】
図2】いくつかの実施形態のもとでの、エンクロージャーおよび装着具システムを使ってもよい導波路スピーカーについての例示的な音分散パターンを示す図である。
【0016】
図3A】ある例示的実施形態のもとでの導波路を見下ろす上面図である。
【0017】
図3B図3Aの導波路の斜視図である。
【0018】
図3C図3Aの導波路の正面図である。
【0019】
図3D図3Aの導波路の側面図である。
【0020】
図3E図3Aの導波路の背面図である。
【0021】
図4】ある実施形態のもとでの非対称ホーン導波路スピーカーのためのマウンティング・システムを示す図である。
【0022】
図5A図4の例示的導波路の側面図である。
【0023】
図5B図4の例示的導波路の背面図である。
【0024】
図5C】第一の実施形態のもとでの図4の例示的導波路の分解図である。
【0025】
図5D】第二の実施形態のもとでの図4の例示的導波路の分解図である。
【0026】
図6A】ある実施形態のもとでの壁マウントされるホーン導波路スピーカーのための壁マウント・アセンブリーを示す図である。
【0027】
図6B図6Aの壁マウント・アセンブリーのためのヨーク構造を示す図である。
【0028】
図7A】いくつかの実施形態のもとでの装着具アセンブリーと一緒に使うための球状スピーカー・エンクロージャーの側面図である。
【0029】
図7B】ある実施形態のもとでの図7Aのマウントされたスピーカーの正面または背面図である。
【0030】
図8】ある実施形態のもとでの非対称ホーン導波路スピーカーのための天井マウント装着具システムを示す図である。
【0031】
図9A】ある実施形態のもとでのホーン導波路のための、はめこみ式または引っ込み式の天井マウントされるアセンブリーを示す図である。
【0032】
図9B】ある実施形態のもとでの組み立てられた引っ込み式のマウンティング・アセンブリーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
大規模なサラウンドサウンドおよび没入的オーディオ環境の性能を改善するカスタム高周波数導波路の実施形態が記述される。新規の導波路デザイン、球状スピーカー・エンクロージャーおよび三軸装着具システムが、短いスローに対してはカバレッジを軟化させ、長いスローに対してはカバレッジを鋭くする非対称なカバレッジ・パターンを使うことによって機械的な高周波数等化(EQ)を使うために、映画館および会堂の典型的なシューボックス型形状を活用するよう構成される。記述の目的のために、用語「三軸スピーカー・アセンブリー」は、装着具システムと、球状スピーカー・エンクロージャーおよび非対称ホーン導波路を有するスピーカーとを含むスピーカー・システムを指す。よって、三軸スピーカー・アセンブリーは、導波路、球状スピーカーおよび装着具システムという三つの主要な構成要素をもつ。
【0034】
記述される実施形態はいずれも、単独でまたは任意の組み合わせにおいて別の実施形態と一緒に使用されうる。さまざまな実施形態は、本明細書の一つまたは複数の箇所で論じられるか暗に示唆されるかされていることがありうる従来技術のさまざまな欠点によって動機付けられたことがあるが、実施形態は必ずしもこれらの欠点のいずれかに対処するものではない。換言すれば、種々の実施形態は、明細書で論じていることがありうる種々の欠点に対処することがある。いくつかの実施形態は、明細書で論じていることがありうるいくつかの欠点またはたった一つの欠点に部分的に対処するだけであることがあり、いくつかの実施形態はこれらの欠点のいずれにも対処しないことがありうる。
【0035】
本稿の目的のためには、「スピーカー」または「ラウドスピーカー」は、一つまたは複数のラウドスピーカー・ドライバーを組み込んでいる完全なラウドスピーカー・キャビネットを意味する。「ドライバー」または「ラウドスピーカー・ドライバー」は、電気エネルギーを音または音響エネルギーに変換するトランスデューサーを意味する。音分散(sound dispersion)は、源(たとえばラウドスピーカー)からの音が分散される(dispersed)または投射される(projected)方向性を記述する。幅広い分散または低い指向性は、源が音を幅広く、多くの方向においてかなり一貫して放射することを示す。最も広いのは無指向性で、その場合、音はあらゆる方向に放射される。狭い分散または高い指向性は、源が音を一つの方向により多く、主として限られた角度に渡って放射することを示す。分散は非対称であってもよい;すなわち、ある軸における分散は、別の軸上では異なる角度または方向について変わってもよい。用語「チャネル」はオーディオ信号にメタデータを加えたものを意味し、メタデータにおいて、位置がチャネル識別子(たとえば左前方または右上サラウンド)としてコーディングされる;「チャネル・ベースのオーディオ」は、関連付けられた公称位置をもつスピーカー・ゾーンのあらかじめ定義された集合(たとえば5.1、7.1など)を通じた再生のためにフォーマットされているオーディオである;用語「オブジェクト」または「オブジェクト・ベース・オーディオ」は、見かけの源位置(たとえば3D座標)、見かけの源幅などのようなパラメトリックな源記述をもつ一つまたは複数のオーディオ・チャネルを意味する;「没入的オーディオ」または「空間的オーディオ」は、チャネル・ベースおよび/またはオブジェクト・ベースのオーディオ信号に、オーディオ信号を再生環境に基づいてレンダリングするメタデータを加えたものを意味する。かかるレンダリングは、オーディオ・ストリームに、位置が空間における3D位置としてコーディングされているメタデータを加えたものを使って、行なわれる。「聴取環境」は、オーディオ・コンテンツを単独でまたはビデオもしくは他のコンテンツと一緒に再生するために使われることのできる部屋のような、任意の囲まれたまたは部分的に囲まれたエリアを意味し、映画館、シアター、会堂、スタジオなどとして具現されることができる。
【0036】
ある実施形態では、一つまたは複数のスピーカーおよびスピーカー・マウンティング・システムが、図1に示されるような映画館または同様の聴取環境に設置される。図1の例示的実施形態については、映画館100は、一つの壁にスクリーン102をもつ大きな長方形の部屋であり、スクリーンは、何列かの座席104に面しており、座席は典型的には前方から後方に向けて逐次高くなる列に配置される。部屋100は側壁106aおよび106b、天井108および後方壁(図示せず)によって囲まれて、密閉された部屋をなしている。スクリーン(またはステージ)102は、プログラムを視聴する観察者のためのその部屋の焦点を表わすが、音は典型的には、部屋じゅうに配置されるスピーカーを通じて再生され、音は聴衆のまわりで投射される。
【0037】
実施形態は映画館聴取環境に関して図示され、記述されることがあるが、図1は、会堂、シアター、教室、コンサートホール、大きな部屋などの任意の大きな会場を表わすことが意図されていることを注意しておくべきである。そのような会場は、典型的にはホームシアター実装より大きい設備を含意するため、「業務用」A/Vもしくはオーディオ設備のための会場と称されることがある。会場の型によらず、聴取エリアは、聴取者が位置するいくつかの聴取位置(座席)を含んでいる。座席の多くは必ずしも、スピーカーのうちの一つまたは複数のための最適な位置(スイートスポット)にはない。実施形態は、部屋100における座席104の全部ではないまでも大半に対する、それぞれの個別のスピーカー位置からの最大のカバレッジを提供するために最適化されている
ピーカーを含む。
【0038】
サラウンドサウンドまたは没入型オーディオ環境では、床マウント式スピーカーのほか、部屋100内のいくつかのスピーカーは壁および可能性としては天井にマウントされる。そのようなスピーカーは、5.1.4サラウンドのような、高さチャネルの再生のための高さスピーカーを提供するいくつかの既知のサラウンドサウンド構成のうちの任意のもので配置されてもよい。このように、図1に示されるように、高さオーディオ信号のために天井スピーカー110が設けられ、直接側方音のために側方スピーカー112が設けられる。他の音成分を提供するために、他のスピーカー(図示せず)がスクリーン102近くの前方壁に沿っておよび部屋100の後方に設けられてもよい。そのようなスピーカーは、標準的な左、中央、右、左サラウンド、右サラウンド、左前方高さ、右前方高さ、左後方高さ、右後方高さおよび低域効果(LFEまたはサブウーファー)音成分を提供するスピーカーまたはスピーカー・セットを有していてもよい。ただし、実施形態はそのように限定されるものではない。サラウンド・システムの各チャネルのために任意の適切な数のスピーカーが設けられてもよく、任意のサラウンドサウンド・フォーマットが使われてもよい。このように、部屋100のサイズ、スケールおよび用途に依存して任意の適切な構成での任意の数のスピーカーが設けられてもよく、本稿に記載されるスピーカー構成はある実施形態における相対的なスピーカー配置の例として意図されているだけであることを注意しておくべきである。図1は縮尺どおりに描かれてはおらず、任意の適切な聴取環境を表わしうることをさらに注意しておくべきである。聴取環境は、映画館、会堂、あるいは独立したオーディオ・システムの一部であるまたはA/Vもしくは他のメディア再生、ゲームもしくはシミュレーション(たとえば仮想現実感)システムの一部としての業務用オーディオ・システム設備のために適切な他の任意の会場などである。
【0039】
部屋面積が大きいおよび/または多数の座席、よって聴取位置がある現在のシステムでは、スピーカーは典型的には会場内のすべての座席のために同じくらい良好に音を投射することはできない。たとえば、スクリーンまたはステージにより近い座席は、部屋の後方の座席よりも、中央および前方位置のスピーカーのずっと多くを聞くことがある。スピーカーの周波数応答も、大きな分散した聴取エリアを通じた音の投射によって負の影響を受ける。カバレッジを改善し、均等なスペクトル内容を提供するために導波路スピーカーが開発されているが、有意な高さ成分をもつことがある、より新しい没入型のオーディオ・コンテンツでは特に、現在の導波路デザインは十分な感度およびカバレッジ・パターンを提供しないことがしばしばである。
【0040】
図2は、いくつかの実施形態のもとでの、ある種の音分散パターンについての周波数応答を改善するエンクロージャーおよび装着具システムを使用しうる導波路スピーカーのための例示的な音分散パターンを示している。図2の例については、聴取エリア200は、側壁201にマウントされたスピーカー202をもつ。スピーカーは、聴取エリアにおける座席204の列に対して例示的な音分散パターン(sound dispersion pattern)206を生成するホーン導波路スピーカーである。図2はただ、部屋に設けられていることがありうるいくつかのスピーカーのうちの一つのスピーカーと、使用されうるスピーカーの型、すなわちホーン導波路スピーカーに基づく音分散パターンの一例を示している。図2に示されるように、音分散パターン206は部屋内で非対称に分布させられる。当業者には理解できるが、他のスピーカーについては、同様のまたは類似の分散パターンが生成される。他のスピーカーは異なる壁または壁の領域に沿って位置するが、明確のため図示していない。
【0041】
ある実施形態では、スピーカー202および部屋200内の他のスピーカーは、特別に整形されたエンクロージャーおよび装着具システムを有し、それらが聴取エリア全体にわたってスピーカーの分散パターンおよび結果的な周波数応答特性を最適化するよう聴取エリア204に対してまっすぐにおよび/または傾斜もしくは回転されて位置されることができるようにする。
【0042】
ある実施形態では、図1のスピーカーの一つまたは複数(図2の例示的スピーカー202が典型例)は、単一のスピーカー位置からの最大カバレッジを提供するよう、スピーカーが位置されている会場100における実際のまたは典型的な座席レイアウトにマッチする仕方で、高周波数を拡散させる(spread)よう構成される。該スピーカーは、小から大になる漸進的な水平方向カバレッジ(coverage)幅およびいくらか狭い垂直方向分散(dispersion)を提供するよう構成される。ある実施形態では、より高い周波数をホーンの下側(lower side)に拡散させるよう、非対称なホーン構成が使われる。スピーカーが高い壁マウントまたは天井マウントのスピーカーである場合については、スピーカー・システムは、頭上および側方サラウンド位置においてホーン・ドライバーの迅速な装着およびねらいづけを許容するマウンティング・システムをも含んでいてもよい。マウント・システムは、聴取エリアにドライバーのねらいをつけるための三軸(x,y,z)の調整を提供するよう構成される。
【0043】
〈スピーカー/ドライバー・システム〉
第一の記述は、諸実施形態に基づく組み合わされたスピーカー/マウンティング・システムの、スピーカーおよびドライバー構成をカバーする。ある実施形態では、非対称スピーカーは、同軸ラウドスピーカーにかみあわされて(mated)非対称ホーンを形成する特定の導波路を有する。そのようなスピーカーは、要件および会場レイアウトに依存して、高い壁表面に直接、あるいは天井から下向きに取り付けられることができ、あるいは三軸装着具システムを使ってマウントされることができる。ある実施形態では、同軸スピーカーは12インチ円錐状ドライバーであるが、実施形態はそれに限定されるものではない。任意のサイズおよび構成のドライバーが使用されることができ、導波路はしかるべく構成されることができる。
【0044】
特定のスピーカー構成は、異なるサイズおよび形状の会堂に基づいて調整される。ある実施形態では、所望される達成可能なカバレッジを提供するために必要とされるカバレッジ角が、二つの軸に関して計算されることができる。軸1は、部屋の横から横へのカバレッジを表わし、軸2は部屋の前から後へのカバレッジを表わす。これは、天井マウント(頭上)スピーカーおよび壁マウント側方(側方サラウンド)スピーカーの両方を含む要件の、五つの一般化されたグループ分けを生じることができる。
【0045】
各導波路は、より幅広の開口部に広がるスロートをもつ非対称なホーン導波路である。図3Aないし3Eは、いくつかの実施形態のもとでの例示的導波路の種々のビューを示している。図3Aは、導波路300を見下ろす上面図である。導波路300は、音が紙面に垂直に投射されるよう、同軸ドライバーとかみあうマウント部から上方に突き出るスロート領域302を含む。一組の曲面304および306が、導波路のx軸およびy軸に沿って導波路300から出る音を案内するチャネル310をなす。諸表面304は互いに対称であり、表面306および308は非対称的であり、導波路300はx軸のまわりに非対称になっている。図3Bは、図3の導波路の斜視図であり、表面304、306および306の曲率および相対的なサイズを示している。図3C図3Aの導波路の正面図であり;図3D図3Aの導波路の側面図であり;図3E図3Aの導波路の背面図である。
【0046】
表面304、306および308の曲率は、音投射の度数を変えるために変えられてもよい。図3Aないし3Eの例については、曲率は、80度の非対称ホーン導波路を生じるよう構成されてもよい。60度など、他の任意の実際的な投射角も可能である。他のデザイン・パラメータも変更されてもよい。スロート領域302のサイズ、空隙310の長さおよび幅、他の寸法のサイズおよび形状、非対称表面のサイズの差、(たとえば図3Dに示されるような)傾斜角および導波路の他の任意の適切なデザイン・パラメータなどである。
【0047】
図3Aないし3Eの図を使って、実際的なホーン(導波路に同軸ドライバーを加えたもの)構成の五つの図を記述する。ホーン#1と記されるホーンの第一のビューは、スクリーン付近の頭上サラウンドであり、軸1は均等な70度にあり、軸2は50度で始まって、いちばん下では70度まで広がる。ホーン#2と記されるホーンの第二のビューは、部屋背面付近の頭上サラウンドであり、軸1は均等な70度であり、軸2は50度で始まって、いちばん下では110度まで広がる。ホーン#3と記されるホーンの第三のビューは、部屋の中央における頭上サラウンドであり、軸1は均等な70度であり、軸2は均等な115度である。ホーン#4と記されるホーンの第四のビューは側方サラウンドであり、垂直軸は均等な60度にあり、水平軸は70度で始まって、いちばん下では165度まで広がる。ホーン#5と記されるホーンの第五のビューは、後方サラウンドであり、垂直軸は均等な45度にあり、水平軸は50度で始まって、いちばん下では155度まで広がる。
【0048】
上述したデザイン・パラメータの一つまたは複数を変更することにより、ホーン導波路の多くの異なる構成が可能であることを理解しておくべきである。大規模な映画館ならびに没入的オーディオおよび標準的なサラウンドサウンド・オーディオの実際的な適用のために、例示的な実際的に非対称ホーン導波路スピーカーは(1)スクリーン付近および会堂背面付近の頭上サラウンドのために意図された80~130×80度の漸進的カバレッジを備える非対称ホーン;および(2)側壁および後方壁サラウンドのために意図された60~150×60度の漸進的カバレッジを備える非対称ホーンとして構成される。これら二つの導波路のそれぞれは、同一のまたは異なるウーファーとともに使用される。ある実施形態では、ある種の装着具構造(下記でさらに述べる)が、設置者により、これらのホーンが座席と適正に整列されることができるよう前後、横方向およびまた回転に対する調整を許容する。ある応用では、これらのドライバーは、たとえば基準位置から約70フィートまで離れたドルビー・アトモス(またはたとえば7.1サラウンドなど同様のもの)設備における使用のために定格決めされる(rated)ことができる。
【0049】
上記のように、導波路の表面の形状および構成がスピーカーからの音分散の度合いを定義する。システムの必要性に依存して、任意の量の分散が生成されることができる。さらに上述したように、例示的分散は、傾斜した座席配置の上方で頭上にマウントされた点源からの最適化されたカバレッジを提供するために、頭上スピーカーについての80度ホーンを有する。この型のスピーカーについての全体的なカバレッジ窓は、垂直方向80度、カバレッジの上端での水平方向80度から下に向けてカバレッジの下端での水平方向130度まで遷移する。
【0050】
側壁および後方壁については、60度ホーンが使われてもよい。ある実施形態では、60度ホーンは、スロート領域310および/またはスピーカー開口部302がやや狭く/小さくされ、他の任意の適切な表面の変更があるほかは、図3Aに示される80度ホーンと同様に形成されることができる。該60度ホーンは一般に、スピーカーの底側(bottom side)に非常に近くに延在するが、カバレッジねらい角(coverage aiming angle)を通じて平坦である(スピーカー自身のねらい角(aiming angle)との関係でエレベーション(elevation)の変化がほとんどない)座席への点源からの最適化されたカバレッジを提供する。このスピーカーは、傾斜座席とともに側壁上で使われるとき、最良の最適化のための三軸の調整をも要求することがあり、後述する任意的なマウンティング・システムを設けられることがある。このスピーカーについての全体的なカバレッジ窓は、垂直方向60度であり、カバレッジの上端での水平方向60度から下に向けてカバレッジの下端での水平方向150度まで遷移する。
【0051】
これらは、可能なスピーカー構成のいくつかの例を与えているだけであり、当業者が理解できるように、他の多くの例も可能である。
【0052】
〈マウンティング/装着具システム〉
導波路は、好適なマウンティング装置を通じて同軸スピーカーにマウントすることができる。図3ないし3Eの例は、ホーン・スピーカーが側壁106の上もしくは下表面から会堂または映画館(会場)に投射する壁マウント・スピーカー・システムのための同軸ドライバーに導波路がマウントされる実施形態を示している。
【0053】
図4および図5A、5Bは、ある実施形態のもとでの壁マウント・システムのための同軸ドライバーにマウントするよう構成されたホーン導波路を示している。図4は、同軸スピーカーのフランジまたはかみあい表面への接続のために、細長いスロート・セクション502をもつ導波路500の正面図を示している。図5Aは、図4の例示的導波路の側面図であり、図5Bは、図4の例示的導波路の背面図である。構成要件および制約条件に依存して、そのような側方マウントのマウンティング構造の多くの異なる構成が可能であることを注意しておくべきである。
【0054】
上記のように、ある実施形態では、導波路の投射角は、導波路の表面の構成によって直接的に指定される。図5Cは、図4の導波路500に基づく80度非対称ホーン導波路についての導波路表面の二つの半分522および524を示す分解図 520である。導波路520は、二つの別個の部分522および524をねじ/ボルト526または同様の固定手段を用いて結合することによって形成されてもよい。同様に、図5Dは、図4の導波路500に基づく60度非対称ホーン導波路についての導波路表面の二つの半分532および534を示す分解図 530である。図5Cおよび5Dに示されるように導波路の出口部分を広げるまたは狭めることによって、適切な角度、たとえば60または80が形成される。両部分(たとえば522および524)は互いに対称的であって、導波路から出る際に一様な音分散角を形成してもよく、直線または比較的まっすぐな線によって形成されてもよい。あるいはまた、出口角は、曲面、複合曲面などを通じて形成されてもよい。さらに、前記異なるセクションは、一方の側(たとえば522)が他方の側(たとえば524)とは異なる角をもっていていもよいという点で非対称であってもよい。図5Cおよび5Dの構成は、導波路のいくつかの例示的構成を示すことが意図されており、他の多くの構成が可能である。たとえば、二つのピースの代わりに、単一の形成されたまたは成形されたピースが使われてもよく、あるいは出口角のさらなる整形を許容するために三つ以上の部分、たとえば三つもしくは四つの部分が使われてもよい。高さ、広がり、バフリング、材料および他のデザイン/構築パラメータも、導波路からの異なる音分散角を付与するために修正されうる。
【0055】
ある実施形態では、ホーン導波路スピーカーの壁マウント・バージョンは、三軸の動きを提供するマウンティングおよび装着具とともに使われる。これは、技師が、所望されるカバレッジ・パターンのために会堂における所望される位置に向けて便利にスピーカーのねらいをつけることを許容する。
【0056】
壁マウント・バージョンについて、スピーカーを壁に垂直に保持し、スピーカーが上下に傾けられ、左右に回され、壁に垂直な軸のまわりに回転させられることを許容するよう、壁プレートおよびヨーク・ブレースが使われる。これが、壁マウントされたホーン導波路スピーカーの三軸の動きを提供する。図6Aは、ある実施形態のもとでの、そのようなスピーカーのための壁マウント・アセンブリーを示している。図6Aに示されるように、壁プレート602は、トグルボルト604およびワッシャー606システムまたは同様の取り付け手段のようなマウンティング手段を通じて、壁に固定される。フランジ608が、図6Bに示されるヨーク610へのマウンティング構造を提供する。
【0057】
図6Bに示されるように、ヨーク610は、マウンティング端616をもつ半円形のバーを有する。ヨーク610内に形成された半円形のスロットおよびそれぞれのマウンティング端616が、設置されるスピーカー(図示せず)が構造内で回転することを許容する。ヨーク610内の主要なスロットはパン動きを許容し、端部のスロットが傾斜動きを許容する。ヨークはナットおよびワッシャー(図示せず)によって、ブラケット612を通じて挿入プレート614に接続される。挿入プレート614は、スピーカー・アセンブリーが壁に取り付けられる用意ができているときに、壁プレート600のフランジ608の適切なスロットに挿入される。ある実施形態では、ブラケット612は、ヨークを保持し、ヨークがプレート614のボルトのまわりに回転されることを許容するよう構成される。これは、動きの回転軸を与える。
【0058】
図7Aは、いくつかの実施形態のもとでの、装着具アセンブリーと一緒に使うための球状スピーカー・エンクロージャーの側面図を示している。図7Aに示されるように、スピーカー・エンクロージャー700は、端部616をスピーカー筐体内の適切なアンカー点に取り付けることによって、スピーカーをヨーク610内にマウントする。端部616におけるアンカー点は、スピーカー700がヨーク610の主軸に対して上下に傾けられることを許容する。同様に、ヨーク610におけるスロットがスピーカー700が左右に(紙面に入ったり出たりする向きに)回されることを許容する。図7Bは、図7Aのスピーカー・アセンブリーの正面図(または背面図)であり、端部616を通じてヨーク610をスピーカー筐体700のそれぞれの側に取り付けるところを示している。ヨーク610は、スピーカーのサイズおよび形状に依存していかなる形状で提供されてもよい。ヨーク610は、パン、チルト〔傾斜〕および回転の三軸を通じたスピーカーの動きを許容するよう構成される。図7Bは、図3の導波路300のような導波路のマウンティングおよび配置を受け容れるスピーカー・アセンブリー700の前方表面におけるグリル710の形成された部分を示している。グリル部分710のサイズおよび形状は、音がエンクロージャー300から適切に投射されることができるよう、導波路のサイズおよび形状にマッチするよう構成される。一般に、エンクロージャー300のボディーは、三軸装着具システムにおけるマウンティングを容易にするよう、球状またはほぼ球状である。あるいはまた、立方体、オーバルなどといった他の形状の体積が使われてもよい。
【0059】
上記で述べたように、用語「三軸スピーカー・アセンブリー」は、装着具システムと、球状のスピーカー・エンクロージャーおよび導波路を有するスピーカーとを含むスピーカー・システムをいう。よって、三軸スピーカー・アセンブリーは、導波路、球状エンクロージャーおよび装着具システムという三つの主要な構成要素を有する。
【0060】
天井マウント式の非対称ホーン導波路スピーカーについて、同様の型のヨーク構造が使用されることができる。図8は、ある実施形態のもとでの、吊り天井において使うための非対称ホーン導波路スピーカーのための天井マウント装着具システムを示している。図8に示されるように、天井プレートが適切なマウンティング金具802を使って吊り天井の天井タイルにマウントされる。ヨーク804が、適切なボルト808およびワッシャー/ナット806アセンブリーおよび802アセンブリーを通じてプレート800に取り付けられる。そのような天井キットは、業務用設備においてアトモス(および同様の)システムをマウントする、より安価で簡単な方法を提供する。
【0061】
プレートは、所望される構成に依存して面一マウントまたは引っ込んだマウントまたは部分的に引っ込んだマウントのために構成されてもよく、スピーカーを天井内に隠されるようにするまたは天井から突き出るもしくはぶら下がるようにする必要があることがある。前記プレートが単一の天井タイル(またはタイルのグループ)と同じ形状およびサイズに仕立てられることができるので、図8に示されるフラットな構成は、天井タイル・グリッドへの比較的速くて簡単な装着を許容する。はめこまれたまたは引っ込んだシステムは、スピーカーを、グリッド中にさらにはめこんで、天井がプロジェクター・ビームを避けて離れたままにする。図9Aおよび9Bは、ある実施形態のもとでのホーン導波路のための、はめこまれたまたは引っ込んだ天井マウント式アセンブリーを示している。図9Aに示されるように、天井プレート900は、フランジの一部が天井と面一になるよう天井にはまる筐体を有する。ヨーク902は適切なマウンティング金具904を通じて筐体プレートに接続される。図9Bは、完成した引っ込み式天井マウントを示しており、フランジ908を、スピーカー(図示せず)を下に突き出るよう保持するためのヨークの端部916とともに示している。これは、天井にはめこまれる非円形スピーカーのマウンティングを容易にする。
【0062】
ここで例解した壁および天井マウント式アセンブリーは、スピーカーを保持し、壁もしくは天井マウントされたプレートに取り付けるための、半円形のバンドまたは同様の構造を有する共通のヨークを含んでいた。装着具アセンブリーは、次のようにして三軸ねらい調整を提供する:(1)スピーカーへのヨーク取り付けが上下の位置決めを許容する、(2)ヨークにおけるスロットが横方向の位置決めを許容し、壁または天井への単一点での取り付けが回転を許容する。組み立て技師は、これらの動きのいずれかを調整することによってスピーカーのねらいを設定し、マウンティング金具を使ってスピーカーを決まった位置に固定することができる。いったん設置されたら、適切なスピーカー・ワイヤが壁または天井マウントされたドライバーに接続されることができる。
【0063】
図示したマウントのサイズおよび寸法は、図解のために与えられているだけであり、実施形態はそれに限定されるものではない。壁または天井マウントのいかなる適切なサイズまたは形状が使用されてもよい。同様に、ヨークの構成、サイズおよび形状ならびに適切な回転スロットもしくは溝が、スピーカーのサイズおよび形状に適合するよう変えられることができる。図示した例は、円形のスピーカー筐体のために整形されたヨークを示していた。図1図5に示される波形ホーン・スピーカーについては、対応する形のヨークが使われてもよい。
【0064】
本稿に記載されるホーン導波路およびマウンティング/装着具アセンブリーの実施形態は、多数の座席をもつ比較的大きな聴取ホールで再生されるサラウンドサウンド・オーディオ・コンテンツおよび/または没入型オーディオ・コンテンツと一緒に使われてもよい。このように、本稿に記載されるオーディオ環境の諸側面は、適切なスピーカーおよび再生装置を通じたオーディオまたはオーディオ/ビジュアル・コンテンツの再生を表わし、映画館、コンサートホール、シアター、住宅におけるホームシアターまたは部屋、会議室または他の任意の大きな再生環境といった、聴取者が捕捉されたコンテンツの再生を経験する任意の環境を表わしうる。実施形態は、空間的オーディオ・コンテンツが映画またはテレビジョン・コンテンツに関連している商業シアターまたはホームシアター環境における例および実装に関して主として記述されてきたが、実施形態は他の消費者ベースのシステム、たとえばゲーム、上映システムおよび他の任意のモニター・ベースのA/Vシステムにおいて実装されてもよいことを注意しておくべきである。オブジェクト・ベースのオーディオおよびチャネル・ベースのオーディオを有する空間的オーディオ・コンテンツは、いかなる関係したコンテンツ(たとえば付随するオーディオ、ビデオ、グラフィックなど)との関連で使われてもよく、あるいは単体のオーディオ・コンテンツをなしていてもよい。
【0065】
マニホールドおよび任意の関連するスピーカー・キャビネットのための構築材料は、システム要件に依存して調整されてもよく、多くの異なる構成およびサイズが可能である。マウンティング金具は、建設および建具の分野における当業者に知られているいかなる適切な材料でできていてもよい。
【0066】
文脈がそうでないことを明確に要求するのでないかぎり、本記述および請求項を通じて、単語「有する」「含む」などは、排他的もしくは網羅的な意味ではなく包含的な意味に解釈されるものとする。すなわち、「……を含むがそれに限定されない」の意味である。単数または複数を使った単語は、それぞれ複数または単数をも含む。さらに、「本稿で」「以下で」「上記で」「下記で」および類似の意味の単語は、全体としての本願を指すのであって、本願のいかなる特定の部分を指すものでもない。単語「または」が二つ以上の項目のリストを参照して使われるとき、その単語は該単語の以下の解釈のすべてをカバーする:リスト中の項目の任意のもの、リスト中の項目のすべておよびリスト中の項目の任意の組み合わせ。
【0067】
一つまたは複数の実装が、例として、個別的な実施形態を用いて記載されているが、一つまたは複数の実装は開示される実施形態に限定されないことは理解されるものとする。逆に、当業者に明白であろうさまざまな修正および類似の構成をカバーすることが意図されている。したがって、付属の請求項の範囲は、そのようなすべての修正および類似の構成を包含するような最も広い解釈を与えられるべきである。
いくつかの態様を記載しておく。
〔態様1〕
会場に音を送出するためのスピーカー・アセンブリーであって:
ホーン導波路であって、該導波路の垂直軸または水平軸の一方に関して非対称的であって非対称ホーン導波路を形成するよう構成されたホーン導波路と;
前記非対称ホーン導波路を囲んでホーン・スピーカーを形成する球状エンクロージャーと;
前記ホーン・スピーカーを前記会場の壁または天井表面の一つに取り付けるよう構成された三軸マウンティング・システムとを有しており、前記マウンティング・システムは、前記非対称ホーン導波路の通過帯域内で前記会場の最大カバレッジを与える位置に前記ホーン・スピーカーを回転させることを容易にする、
スピーカー。
〔態様2〕
前記導波路は、前記ホーン・スピーカーの垂直軸に関する二つの対称な表面と、前記ホーン・スピーカーの水平軸に関する二つの非対称な表面とを有する、態様1記載のスピーカー。
〔態様3〕
前記二つの対称な表面および二つの非対称な表面は、前記導波路のQ因子を制御するための前記ホーン内の調整表面によって隔てられる、態様2記載のスピーカー。
〔態様4〕
各表面の相対的な大きさ、各表面の傾きの量および前記調整表面間の距離が、前記ホーン・スピーカーの最適な投射角を指定する、態様3記載のスピーカー。
〔態様5〕
前記会場が、映画館、会堂、シアターまたは大きな聴取室のうちの一つを含む大きな会場であり、上表面は前記会場の高い壁表面または天井の一方を含む、態様4記載のスピーカー。
〔態様6〕
壁マウントのための前記最適な投射角は、前記ホーン・スピーカーの底側近くに延在し、前記カバレッジねらい角を通じて平坦な角度を有しており、それにより前記スピーカーの短いスローについてはカバレッジを軟化させ、前記会場における前記スピーカーの長いスローでのカバレッジを鋭くする、前記会場におけるカバレッジ・パターンを生成する、態様5記載の方法。
〔態様7〕
前記三軸マウンティング・システムは、前記会場の上表面への堅いマウンティング内で前記ホーン・スピーカーのパン、チルトおよび回転動きを提供する、態様1記載の方法。
〔態様8〕
前記三軸マウンティング・システムはさらに、前記位置に前記ホーン・スピーカーのねらいをつけることのさらなる制御を提供し、手動制御によって一度設定されると位置を固定される、態様7記載の方法。
〔態様9〕
前記オーディオは、サラウンドサウンド・オーディオまたは没入的オーディオの一方を含む、態様1記載の方法。
〔態様10〕
高さスピーカーによって会場における再生の間、均等なオーディオ・スペクトルを提供する方法であって:
ホーン・スピーカーを形成するために漸進的な水平カバレッジ幅および狭い垂直分散を付与する非対称なホーン導波路を提供し;
前記会場の上表面に前記ホーン・スピーカーを設置するための三軸マウンティング・システムとを提供することを含み、前記マウンティング・システムは、前記導波路の通過帯域内で前記会場の最大カバレッジを与える位置に前記ホーン・スピーカーのねらいをつけることを容易にする、
方法。
〔態様11〕
前記導波路が、オーディオの高周波数内容を、前記ホーン・スピーカーの下側を通じて拡散させる、態様10記載の方法。
〔態様12〕
前記三軸マウンティング・システムは、前記会場の上表面への堅いマウンティング内で前記ホーン・スピーカーのパン、チルトおよび回転動きを提供する、態様11記載の方法。
〔態様13〕
前記上表面は、前記ホーン・スピーカーが前記会場内に向かって実質的に外側を向く高い壁位置および前記ホーン・スピーカーが前記会場内に向かって実質的に下を向く天井のうちの一方を含む、態様12記載の方法。
〔態様14〕
前記会場は、有意な数の座席を保持する囲まれた大きな会場であり、それらの座席は、前記ホーン・スピーカーによってねらいをつけられた前記位置からぎりぎり外側のいくつかの座席を含む、態様13記載の方法。
〔態様15〕
前記会場内に向かって実質的に外側を向く前記ホーン・スピーカーが60度ホーン・スピーカーを含み、前記会場内に向かって実質的に下を向く前記ホーン・スピーカーが80度ホーン・スピーカーを含む、態様13記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B