(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】液体をろ過するための中空繊維膜
(51)【国際特許分類】
B01D 63/02 20060101AFI20220328BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20220328BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20220328BHJP
B01D 67/00 20060101ALI20220328BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20220328BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
B01D63/02
B01D69/08
B01D69/02
B01D67/00
B01D71/68
B01D71/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019087760
(22)【出願日】2019-05-07
【審査請求日】2019-07-16
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PK
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519163201
【氏名又は名称】パク・ヴィタエ・(プライヴェート)・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シャヤン・ソハイル
(72)【発明者】
【氏名】アルスラーン・アーメド
(72)【発明者】
【氏名】ハーフィズ・ウサマ・タンヴィール
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102205209(CN,A)
【文献】特開平11-221451(JP,A)
【文献】特開平5-115760(JP,A)
【文献】特表2016-517797(JP,A)
【文献】特開平10-118472(JP,A)
【文献】特開平4-260423(JP,A)
【文献】特開2011-92800(JP,A)
【文献】特開平11-28340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
B01D 39/00-39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の多孔質中空膜繊維を含む液体ろ過用の固有の抗菌性中空繊維膜であって、前記中空膜繊維が、本質的に抗菌性
を有し、抗菌物質
が埋め込まれ
たポリマーから形成されており、
前記中空繊維膜が、液体が繊維膜の外側から入り、多孔質膜を通って繊維の内腔に入りそこに沿って通過し、それにより保持液が膜の外側に残り、ろ過された液体
(ろ液)が前記繊維の中空端から流出
するように構成された、本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項2】
前記中空繊維がポリマー、任意選択的に熱可塑性ポリマーから形成される、請求項1に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項3】
前記繊維が、12%から25%のポリエーテルスルホン、5から20%のポリビニルピロリドン、70%から90%のN‐メチルピロリドン溶液、および10%から45%のポリエチレングリコールを含むかまたはそれらからなり、任意選択的に、前記繊維は、ポリカーボネート、ポリアミド、および水性イソプロピル、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、請求項1または2に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項4】
前記繊維が、10%から25%のポリスルホンおよび5%から15%のポリビニルピロリドンを含むかまたはそれらからなる、請求項1または2に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項5】
前記繊維が、3%から25%のポリエーテルスルホンおよび5%から15%のポリビニルピロリドンを含むかまたはそれらからなる、請求項1または2に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項6】
前記繊維が本質的に抗菌性である、請求項1から5のいずれか一項に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項7】
前記繊維が単層膜を形成し、前記単層膜が疎水性または親水性のいずれかである、請求項1に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項8】
前記繊維が二層膜を形成し、前記二層膜が疎水性または親水性のいずれかである、請求項1に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項9】
疎水性の層が空気捕捉および吸引圧力の要件を低減する、請求項1から8のいずれか一項に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項10】
疎水性の層が液体の流束を増加させる、請求項1から9のいずれか一項に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項11】
親水性の層が、繊維壁上の細孔を通って繊維の中空空洞に向かう液体の毛管作用を維持し、吸引圧力または通過圧力または重力ヘッドの要件を低減する、請求項1から10のいずれか一項に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項12】
液体が外側から内側への向きに流れる、請求項1から11のいずれか一項に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項13】
保持液が膜の外側に保持される、請求項1から12のいずれか一項に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項14】
膜が洗浄可能である、請求項1から13のいずれか一項に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項15】
前記中空繊維膜が、繊維壁の80体積%から90体積%の多孔率範囲を有する繊維を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項16】
前記中空繊維膜の細孔が直径1nmから25nmの範囲を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項17】
前記中空繊維が開口端を有するU字型の膜モジュールを形成し、ろ過のために液体が膜に入り、ろ過された液体が繊維の前記開口端を通って出る、請求項1から
16のいずれか一項に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項18】
前記抗菌物質が、金属酸化物、金属塩または金属、例えば亜鉛塩である、請求項
1に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項19】
前記抗菌物質がポリマーまたはポリマー混合物に埋め込まれている、請求項
1から18のいずれか一項に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項20】
前記抗菌物質が埋め込まれたポリマーまたはポリマー混合物が、前記繊維の2から5重量%である、請求項
18または19に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項21】
抗菌物質を含まないポリマーまたはポリマー混合物が、前記繊維の95から98重量%である、請求項
18から
20のいずれか一項に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項22】
抗菌性物質を含む、または含まないポリマーまたはポリマー混合物が、同じポリマーまたはポリマー混合物である、請求項
18から
21のいずれか一項に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜。
【請求項23】
a)ポリマーまたはポリマー混合物をPEGを含む細孔形成剤と混合するステップと、
b)ステップa)において製造した混合物をポリマー用の非溶媒と共に紡糸口金に通過させるステップと、
を含む、請求項1から
22のいずれか一項に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜を製造する方法。
【請求項24】
a)抗菌物質が埋め込まれたポリマーまたは抗菌物質が埋め込まれたポリマー混合物を、抗菌物質を含まないポリマーまたはポリマー混合物および両方のポリマー用の溶媒と混合するステップと、
b)ステップa)において製造した混合物をポリマー用の非溶媒と共に紡糸口金に通過させるステップと、
を含む、請求項1から
22のいずれか一項に記載の本質的に抗菌性の中空繊維膜を製造する方法。
【請求項25】
ステップb)を25から80°の温度で実施する、請求項
23または
24に記載の方法。
【請求項26】
抗菌物質が埋め込まれたポリマーまたはポリマー混合物が、ステップa)において形成された混合物中のポリマーの総重量の2から5重量%である、請求項
23から
25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
抗菌物質を含まないポリマーまたはポリマー混合物は、繊維の95から98重量%である、請求項
23から
26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
抗菌物質が埋め込まれたポリマーがポリエーテルスルホンであり、抗菌物質を含まないポリマーまたはポリマー混合物がポリエーテルスルホンであり、ポリマーが3%対97%の重量比で提供される、請求項
23から
27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
抗菌物質を含む、または含まないポリマーまたはポリマー混合物が、同じポリマーまたはポリマー混合物である、請求項
23から
28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
抗菌物質は、ポリマー鎖間の架橋を介してその中に埋め込まれた金属酸化物粒子を有する、請求項
23から
29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記膜が、少なくとも1つの供給チャネルと少なくとも1つの排出チャネルとを有するハウジング内に配置される、請求項1から
22のいずれか一項に記載の中空繊維膜を備える液体ろ過のための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体ろ過の分野、例えば、外側から内側への液体の流れの構成を有する固有の抗菌特性を有する中空繊維膜モジュールを使用したものに関する。膜は、液体の吸引圧力または通過圧力または重力ヘッドの下で直接機能する多目的ハウジングを通した携帯型水ろ過装置において有用性を見出すことができる。特に、本発明の例示的な実施形態は、逆洗することなく長期間にわたって優れた水透過性能を有する、中空繊維の疎水性の外側または外壁および中空繊維膜の親水性の内壁にも関する。
【背景技術】
【0002】
飲料用純水は、世界中の人々にとって常に大きな問題である。地表水に依存する1億6000万人の人々を含め、6億6300万人の人々が改善されていない水源に頼っている。世界では、少なくとも21億人が糞便で汚染された飲料水を使用している。汚染された水は、下痢、コレラ、赤痢、腸チフス、ポリオなどの病気を感染させる可能性がある。安全でない飲料水、衛生施設、および手指衛生により、年間約842,000人が下痢で死亡すると推定されている。下痢は大部分が予防可能であり、これらの危険因子が対処されれば、毎年5歳未満の361,000人の子供の死を避けることができる。WHOの報告によれば、約2億4,000万人の人々が感染した水への曝露を介して寄生虫によって引き起こされる急性および慢性疾患である住血吸虫症の影響を受けている。
【0003】
パキスタンでは、人口の44%が一生を通して飲料用純水に完全にアクセスすることができない。2015年には、きれいな水が不足したためにTharのみで311人の子供が死亡した。Khyber Pakhtunkhwa(KPK)および連邦直轄部族地域(FATA)では、死亡の40%が水系感染症によるものである。パキスタンでは汚染された水によって毎分子供が死亡している。パキスタンでは毎年100万人の下痢症例が報告されている。パキスタンは現在、毎年13億ドルを水系感染症の撲滅に費やしている。WHOによると、病院に入院したパキスタン人の25~30%が水系細菌によるものであり、乳幼児の総死亡数の60%が汚染された水によるものである。
【0004】
きれいな水は、家庭だけでなく個人レベルでも大きな問題である。移動中の人々にとって、きれいな飲料水は高価な資源になった。その場で利用可能な水をろ過することができる装置の要件は時間が必要である。平均して、利用可能な新鮮な水の70%以上が汚染されているので、飲むのは安全ではない。現在使用されている技術は、高価であるか、持ち運びできないか、電力を必要とするか、または短寿命のいずれかである。
【0005】
自然災害またはその他の災害、緊急事態、または重大な事件の間、救急部門または軍は消毒薬、凝固剤錠剤を使用し、または可能であれば水ろ過装置を設置する。最初の2つは人体への有害な影響が知られているため非効率的で信頼性が低いのに対し、最後の1つは高価で、清潔な水の輸送は困難である。
【0006】
従来の水ろ過膜は、膜を通して水を送り出すための動力を必要とする。これらの膜は不定のまたはより大きい孔径を有し、それは通常、膜の精製水側への生物学的汚染の漏出をもたらす。従って、従来の膜系の水ろ過溶液の大部分は、紫外線、オゾン処理または塩素処理ユニット(消毒剤)のいずれかを備えている。前の2つは高エネルギーを必要とし、最後の1つは人間に対する発がん性の影響がある。
【0007】
砂/花崗岩/木炭/吸着剤床をベースとするフィルタは、処理速度が遅く、重量があり、処理能力が低く、そして生物学的汚染物質(特にウイルス)の除去効率が低い。マススケールでろ過水を供給するためには、大きなセットアップが必要であり、そしてろ過速度を維持するために吸着剤の頻繁な交換が必要である。この場合、生物学的汚染を除去するために後処理装置も必要とされる。
【0008】
現在携帯用水ろ過装置に使用されているセラミック膜は耐久性に欠けている。それらは衝撃を受けると損傷を受けやすく、重量が重く、そして製造に高温を必要とする。生物学的汚染を効率的に除去することができるような膜の孔径を維持することも困難である。そのようなセラミックを製造するために使用される焼結プロセスは、20nm未満に孔径を低減するために商業的に十分に確立されていない。
【0009】
中空繊維膜は、精密ろ過および限外ろ過用途のために国内および工業分野で広く使用されている。膜の一方の側から他方の側へと水が通過する間に、水分子と膜の表面孔径よりかなり小さい粒子のみを選択的に許容することによってろ過プロセスが起こる。それ故、膜の表面および全体の繊維の厚さは、一般に、ろ過されていない水をろ過された水から分離する境界を形成する。膜の繊維を形成するための材料としては、ポリエチレン、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリルなどが使用される。この方法は、分離効率および分離精度を改善するために、多孔質中空繊維が高い多孔度および狭い孔径分布を有することを必要とする。さらに、膜が、分離対象に最も適した孔径、ならびに細菌、懸濁固体、および濁った成分を効果的に排除するという特徴を有することも必要である。一方、膜の繊維は、それらが汚染された膜を化学的に洗浄するのに必要とされる条件下および高い動作圧力の下で長期間の使用に耐えることができるように、より高い機械的強度および高い水流束を有するべきである。これらの材料で作られたこのような従来の中空繊維膜は、ろ過性能を改善する目的で開発され使用されてきたので、ある種の不適切性が確認されている。例えば、これらの従来の中空繊維膜は、低レベルの処理性能しか提供せず、逆洗を必要とし、そして細菌および他の微生物で汚染され得る。
【0010】
気孔率を増加させるための提案を含めて、これらの問題を解決するために様々な失敗した試みがなされてきた。このように、殺菌力があり長寿命のバランスのとれた水透過性能を提供する中空繊維膜は未だ得られていない。
【0011】
現在、水ろ過業界では以下の3つのろ過技術が使用されている:I)限外ろ過(UF)、2)ナノろ過、3)逆浸透ろ過。最も一般的には、淡水資源のために、UF膜が使用されている。現在入手可能な中空繊維ベースの携帯型液体ろ過膜は、UF技術に基づいており、したがって、ヒ素、クロム、鉄などの溶解金属を効率的に除去することはできない。これらの金属の除去を達成するためには2nm未満の孔径が必要である。
【0012】
一方、膜の水透過性能を向上させるためには膜の孔径を大きくする方法が一般的に用いられているが、この孔径の増大は一般に膜の分別性能および膜の強度の低下を引き起こす。
【0013】
中空繊維膜モジュールは、水の精密ろ過および限外ろ過に一般的に使用されており、そのようなモジュールは大規模商業プラントから携帯用浄水器まで様々な規模で使用されている。水フィルタ用の既知の中空繊維モジュール構成の1つがUS4,435,289に開示されており、多孔性中空繊維は支持体としても作用する繊維の両端に位置する硬化樹脂を使用してシールされている。水は、支持された端部の開口部から内部体積へと入り、それが中空繊維壁の微細孔を通過するときにろ過される。これは内部から外への流れで、きれいな水が繊維の内腔から外へ移動し、保持液が繊維の内側に蓄積する。このような繊維は、場合によってはVestergaard FrandsenによるWO2008/101172に開示されているような逆洗と組み合わせて、繊維の内部体積を通して洗浄水を送ることによって洗浄される。
【0014】
この原理は、EP2235502B1のように、個人用ストローの概念でも説明されている。この装置は、両端がマウスピースの真下のヘッドにシールされた状態で支持された、微孔性膜壁を有するU字形中空繊維の束を含むストローを通して水を吸い込むためのマウスピースを含む。人間の口が吸引力を生み出すと、外側から内側へと流れます。保持液は膜壁の外側に残り、そしてきれいな水が微孔性壁を通して繊維の内部体積に入る。その後、このきれいな水は、飲用にマウスピースの近くの密封端から放出される。
【0015】
EP2235502B1に開示されているこの装置は、そのようなフィルタで遭遇する一般的な問題に直面している。すなわち、中空繊維は、膜を通して効率的に水を輸送することができる親水性材料でできており、それに滑りにくい水層が膜上に形成される。この現象のために、これらの膜が湿っているとき(すなわち、それらが水をろ過するために使用されているとき)、空気は膜壁を横切って移動することができないか、またはほとんど移動できない。これは、捕捉された空気が膜を通る効率的な水の流れを妨げるので、繊維の周囲の体積に空気が捕捉される危険性をもたらし、それは水の流れを減少させる。このため、モジュールから最適な流れを得るためには、人によるより高い吸込圧力が必要とされる。
【0016】
この問題は、そのようなろ過装置において非常に一般的であり、上記のUS4,636,307に開示されているように、いくつかの疎水性繊維がモジュールに添加されて繊維の周囲に滑りにくい層を形成し、空気の通過を防止するというこの問題に対する解決策が提案されている。しかしながら、製造に関しては、この解決策は複雑で高価である。
【0017】
U字形の中空繊維膜モジュールを使用しない別の構成は、EP0938367に開示され、EP2235502B1においても言及されているように、上流側チャンバ内に延びるモジュールを使用し、繊維はヘッド内に支持されて封止された開放端を有し、閉鎖され上流側水チャンバ内に延びている。その原理は先に説明したものと類似しており、同じ問題に遭遇する。
【0018】
US2004/078625には、異なる形態の構成が開示されており、そこでは、2つのU字型膜モジュールが単一のパイプ内に収容され、湾曲した弧状部分が互いに向き合っている。水は、開口端部がストローの吸入部で支持され封止されている第1のモジュールから内から外に流れる。浄水は、2つのモジュール間のチャンバに入り、次に、開口端がマウスピースの近くで支持され封止されている第2のU字型モジュールから外から中に向かって流れる。このシステムは、2つのモジュール間のチャンバ内に空気が蓄積する傾向があり、その結果、水流量が減少するか、またはより高い吸込圧力が必要となる可能性がある。
【0019】
上記構成とは対照的に、US8,852,439B2には、全て親水性である繊維による空気の閉じ込めを回避するために単一のU字型中空繊維モジュールを使用する方法が開示されている。開放端部は、吸引片の近くで支持されて調整され、曲げ部はマウスピースに面する。これは、EP2235502B1と比較して逆に構成されている。この構成は、繊維内部の容積が区画の容積よりもはるかに小さいので、空気が閉じ込められる危険性が低いと主張されている。水は内から外の流れパターンに従う。蓄積した保持液の洗浄は、口から空気を吹き込んで逆流させることによって行われる。
【0020】
US8,852,439B2に開示されているように、中空繊維膜を通る内側から外側への流れは、粗い粒子を膜の中空繊維の内側に詰まらせる。これらの粒子は、時間および使用と共に吸引圧力または通過圧力または重力ヘッドの要件を増大させる。付着した粗い粒子に加えてこの余分な吸引圧力または通過圧力または重力ヘッドは繊維壁に亀裂を生じさせる。
【0021】
これらの中空繊維膜ベースのフィルタは共通の問題に直面している。例えば、逆洗のために空気が口から吹き込まれたとき、外部部品を使用して逆洗が行われたとき、衛生不良のため、または不潔な環境のため、清潔な側を細菌にさらすことによって、細菌がフィルタ本体および中空繊維に入る。これらの細菌は壁や繊維に付着し、コロニーで増殖し始める。これらの細菌コロニーは、空気がフィルタのマウスピースを通して吹き付けられるにつれて、または外部部材を使用して逆洗することによって、または清浄な側を細菌にさらすことによって、または衛生不良または不潔な環境によって、膜のろ過された水の側で増殖する。これにより、ろ過された液体が汚染され、従ってろ過に失敗する。
【0022】
この問題に取り組むために、US8,852,439B2に方法が開示されている。フィルタの内壁に静菌性/殺菌性の層が適用されているので、細菌が増殖せず、ろ過された水が汚染されない。しかしながら、問題は、この殺菌層がフィルタハウジング(すなわちフィルタ本体の内壁)にのみ適用され、膜上には適用されないことである。このため、膜は(清浄な側で)汚染されやすい。また、この殺菌層は浸食により浸出し、それ故にろ過された液体と共に移動する。このことは抗菌機能の寿命を短縮する。殺生物剤を摂取すると(排水口やろ過された水に浸出する場合)、人体に悪影響を及ぼすことが知られている。
【0023】
フィルタ内での細菌増殖(例えば、逆洗または清浄な側を細菌にさらすこと、または不潔な環境にさらすこと/衛生不良による)の危険性を軽減するために使用される別の方法は、銀ナノ粒子の使用である。銀は微生物の99%を殺すので抗菌性の金属である。銀ナノ粒子は経時的に浸出し、膜壁により大きな空洞を残して微生物の滑りを引き起こす。ナノ銀粒子の移動により、抗菌効果も時間とともに減少する(US7,390,343およびUS9,200,086参照)。
【0024】
上記の全てのろ過装置において、中空繊維の気孔率は最大80%であり、そのため液体をろ過するために高い吸引圧力または通過圧力または重力ヘッドが必要であり、空気の捕捉も問題になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】米国特許第4,435,289号明細書
【文献】国際公開第2008/101172号
【文献】欧州特許第2235502号明細書
【文献】米国特許第4,636,307号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0938367号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/078625号明細書
【文献】米国特許第8,852,439号明細書
【文献】米国特許第7,390,343号明細書
【文献】米国特許第9,200,086号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
したがって、本発明の目的は、新規の本質的な抗菌特性を膜に導入することによってろ過の質を向上させることである。任意に、他の目的は、水ろ過のための中空繊維の吸引圧力または通過圧力または重力ヘッドの要件を低減するために、例えば空気の捕捉が問題にならず気泡による膜孔の目詰まりが最小限に抑えられるように水流束を増加させる本発明によって達成することができる。特に、本発明の目的は、より高い流量およびより低い吸引圧力もしくは通過圧力または重力ヘッドで、より高品質のろ過水を達成することである。
【0027】
本発明者らは、驚くべきことに、固有の抗微生物特性を有する新規の膜を提供できることを見出した。これは、水などの液体が膜繊維を通って外から中に流れる複数の開口部を有する多目的携帯型ハウジングに使用することができる。それは、本発明の膜が、微生物を含まない水のような安全な液体を提供するために微生物に対して作用するために備わった特性を有することを意味する。
【0028】
本発明の他の目的は、高レベルの強度を有し、分画性能および水および他の液体透過性能に優れる中空繊維膜を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
従って、本発明の第一の態様において、複数の多孔質中空膜繊維を含む液体ろ過用の固有の抗菌性の中空繊維膜であって、液体が繊維膜の外側から入り多孔質膜を通過し、繊維の内腔に入りそこに沿って流れ、それによって保持液を膜の外側に保持し、ろ過された液体が繊維の中空端から流出する中空繊維膜が提供される。
【0030】
本発明の中空繊維膜は、中空繊維の外表面または外壁が疎水性を有するのに対し、膜の内表面または内壁は親水性を有することを特徴とする。
【0031】
本発明の中空繊維膜は、1ナノメートルから25ナノメートルの範囲の孔径を有することができる。
【0032】
中空繊維膜は、0.2mmから0.6mmの範囲の繊維径を有していてもよい。
【0033】
中空繊維膜は、1mmから2mmの壁厚を有してもよい。
【0034】
本発明の中空繊維膜は、中空繊維の外表面または外壁が疎水性を有するのに対して、膜の内表面または内壁は1ナノメートルから25ナノメートルの範囲の孔径、0.2mmから0.6mmの範囲の繊維径、および1mmから2mmに等しい壁の厚さを有し、親水性を有することを特徴とし得る。
【0035】
中空繊維はポリマー、場合により熱硬化性ポリマーから形成され得る。例えば、繊維は、ポリスルホンポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデンポリマー、ポリアクリロニトリルポリマー、ポリメタクリル酸ポリマー、ポリアミドポリマー、ポリイミドポリマー、ポリエーテルイミドポリマー、および酢酸セルロースポリマー、またはそれらの混合物から形成され得る。場合により、繊維は芳香族ポリスルホン、ポリアクリロニトリルコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、および芳香族ポリエーテルイミド、またはそれらの混合物から形成されてもよい。本発明者らは、ポリマーおよびポリマー混合物の選択が孔形成に影響を及ぼし、そのため純水透過性(PWP)および臨界水流束(CWF)に影響を及ぼし得ることを見出した。繊維壁の所与の領域上に多数の孔を形成すること、したがって繊維壁の体積%空隙率を大きくすることは、繊維を構成するためのポリマーの選択によって達成することができる。例えば、繊維は、16から25重量%のポリエーテルスルホン、5から20重量%のポリビニルピロリドン、70から90重量%のN‐メチルピロリドン溶液および10から45重量%のポリエチレングリコールを含むかまたはそれらからなる。任意選択で、繊維はポリカーボネート、ポリアミド、および水性イソプロピルまたはそれらの任意の組み合わせも含む。例えば、繊維は、10重量%から25重量%のポリスルホンおよび5重量%から15重量%のポリビニルピロリドンを含むかまたはそれらからなる。例えば、繊維は、3重量%から25重量%のポリエーテルスルホンおよび5重量%から15重量%のポリビニルピロリドンを含むかまたはそれらからなる。
【0036】
繊維は、ポリエーテルスルホン、場合によりウルトラゾーン(ultrason)(登録商標)ポリエーテルスルホン、場合によりグレード6020pを含むかまたはそれからなることができる。例えば、繊維は、12%から25%のポリエーテルスルホン、40%から85%のN‐メチルピロリドンおよび10%から45%のポリエチレングリコールを含むかまたはそれらからなる。そのような製剤は、塩化リチウム(場合により0.3から1.5%のもの)も含み得る。
【0037】
繊維は多数の構成で提供されてもよい。例えば、繊維は単層膜を形成してもよく、繊維は1層より多くの層を含む膜を形成してもよく、繊維は二重層である膜を形成してもよい(例えば、閉鎖システム内で互いに対向して提供される2組のU字型の繊維を含む)。
【0038】
複数の層は、各層から異なる特性が提示されることを可能にし得る。
【0039】
単層膜は、疎水性または親水性のいずれかであり得る。二層膜は、疎水性または親水性のいずれかであり得る。膜層の外側または外壁(すなわちろ過される液体に面する側)は疎水性であり得、内側層または内壁(すなわち各繊維の内腔に面しろ過された液体を含む側)は親水性であり得る。疎水性層は、空気の捕捉および吸引圧力の要件を低減する。疎水性層は液体流束を増加させる。
【0040】
親水性層は、繊維壁上の孔を通って繊維の中空空洞に向かう液体の毛管作用を維持することを可能にし、吸引圧力または通過圧力または重力ヘッドの要件を減少させる。
【0041】
液体は、外側から内側に向けて流れることができる(すなわち、ろ過されるべき液体は、繊維の内腔の外側に提供され、ろ過されるとき、内腔の内側を通過する)。あるいは、液体は内側から外側の向きで流れてもよい。
【0042】
外側から内側の向きでは、保持液は膜の外側に保持される。
【0043】
メンテナンスを容易にするために、膜は洗浄可能であり得る。
【0044】
膜を画定する繊維はそれらの壁に水が通過できる細孔を有する。複数の細孔は、繊維壁の体積で70から90%または80%から90%の空隙範囲を有する繊維が形成されることをもたらし得る。孔径は、直径1nmから25nmの範囲であり得る。吸引下での使用のために、孔径は直径50nmから150nmの範囲であり得る。本発明で使用される多孔率の組み合わせは、繊維の機械的強度が損なわれないので特有であり、これは、より高い流束を達成するためにより高い多孔率が達成される場合に懸念となる。
【0045】
本発明の膜の繊維は、1800Lmh(1バールの圧力下で1時間あたりの膜の1平方メートルあたりのリットル)を超えるPWP(純水透過)および/または900Lmhを超えるCWF(臨界水流束)を有し得る。
【0046】
中空繊維は、開口部を有するU字型の膜モジュールを形成することができ、そこでろ過のために液体が膜に入り、ろ過された液体が繊維の開口端を通って出る。例えば、米国特許第5160673号に記載されている通りである。
【0047】
繊維は本質的に抗菌性であることが好ましい。これは、それらが単に抗菌物質でコーティングされたものでないことを意味する。結果として、膜の抗菌性は、使用者によって摂取されることで容易に外れることはない。これは、繊維を形成するポリマー系内に抗菌物質を埋め込むことによって達成することができる。抗菌物質は、ポリマー鎖間の架橋内に物理的に閉じ込められることによって埋め込まれてもよい。抗菌物質は、架橋ポリマー鎖内に化学的に結合していてもよい。ポリマー内に抗菌物質を埋め込むことにより、抗菌物質が埋め込まれたポリマーが形成される。
【0048】
抗菌物質は、抗菌性を有する金属、金属塩または金属酸化物であり得る。例えば、物質は酸化亜鉛、亜鉛または亜鉛塩であり得る。したがって、一例として、本発明の繊維は、繊維を形成するポリマーを合成するために使用されるモノマーの水溶液または有機溶媒中の溶液または分散液に少なくとも1つの亜鉛塩を添加することによって本質的に抗菌性にされ得る。あるいは、原料モノマーの重合反応中に少なくとも1種の抗菌物質(例えば亜鉛塩)を添加することができる。
【0049】
本質的に抗菌性にするために亜鉛塩を使用してポリマーを改質する場合、塩はPCA(ピロリドンカルボン酸亜鉛塩)、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、亜鉛ピロリドン、および亜鉛ピリチオンのいずれか1つまたはそれらの組合せを含むかまたはそれらから成り得る。
【0050】
抗菌物質が埋め込まれているポリマーまたはポリマー混合物は、繊維を形成するために上に提供されたもののいずれか1つまたはそれらの組み合わせであり得る。例えば、ポリマーは、ポリエーテルスルホン、またはポリエーテルスルホンを含むポリマー混合物であり得る。
【0051】
本発明の抗菌性ポリマーは、21ppmの法定限度を下回る亜鉛イオンの放出を有することを特徴とし得る。
【0052】
本発明の抗菌性ポリマーは、グラム-およびグラム+細菌、例えば、大腸菌(グラム-)および/または黄色ブドウ球菌(グラム+)などの細菌の増殖を制御または排除するのに有効である。他の例は、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマニ、エンテロバクター・クロアカ、C.albicans、およびクロストリジウム種、またはそれらの組み合わせから選択することができる。
【0053】
高価な抗菌物質の量、およびろ過水中への抗菌物質の残留損失を制限するために、繊維全体を抗菌が埋め込まれたポリマーから形成する必要はない。各繊維の実質的にすべての外面は、繊維を形成するポリマーまたはポリマー混合物の物質内に抗菌物質を含むことができる。改質ポリマーは、膜の全表面積の99%が本質的に抗菌性であるように混合される。混合は、少量の、例えば2.5から3%の改質ポリマーが残りのポリマー混合物と混合されるときでさえ、新たに製造された/紡糸された膜の膜表面積の99%が本質的に抗菌性であるという特性を保持するような方法によって行われる。それ故に繊維は外側からも内側からも抗菌性である。
【0054】
抗菌物質は金属酸化物または金属であり得る。それは金属または金属酸化物の粒子であり得る。抗菌物質が埋め込まれたポリマーまたはポリマー混合物は、繊維の2から5重量%であり得る。抗菌物質を含まないポリマーまたはポリマー混合物は、繊維の95から98重量%であり得る。抗菌物質を含むかまたは含まないポリマーまたはポリマー混合物は、同じポリマーまたはポリマー混合物であり得る。
【0055】
上述のような膜を形成する方法は、上述の特性を有する繊維の固有の形成をもたらし得る。
【0056】
例えば、本発明者らは、繊維の製造方法の一部として適切な細孔形成剤を選択することによって、繊維壁に高比率の空隙容量を提供できることを見出した。
【0057】
したがって、本発明のさらなる態様において、
a)ポリマーまたはポリマー混合物をPEG(分子量‐300)を含む細孔形成剤と混合するステップと、
b)ステップa)において製造した混合物をポリマー用の非溶媒と共に紡糸口金に通過させるステップと、
を含む、固有の抗菌性中空繊維膜を製造する方法が提供される。
【0058】
ポリマーまたはポリマー混合物は、本発明の第1の態様において繊維を構成するために提案されたもののいずれかから選択することができる。したがって、一例として、繊維は、12%から25%のポリエーテルスルホン、40%から90%のN‐メチルピロリドンおよび10%から45%のポリエチレングリコールを含むかまたはそれらからなることができる。このような配合は、塩化リチウム(場合により0.5から1.5%)をさらに含み得る。
【0059】
PEGは溶液、例えば水溶液(例えば、9:1のPEG:水の溶液、またはその±10%)で提供されてもよい。
【0060】
ステップb)において使用される非溶媒は水であり得る。
【0061】
細孔形成を最適化することに加えて、本発明者らは、壁の外側部分に対して抗菌性を有するが依然として繊維に固有であり、それにより、固有の抗菌特性を提供するために使用される物質を保護する繊維を構成することができることを見出した。その結果、本方法は、
a)抗菌物質埋め込みポリマーまたは抗菌物質埋め込みポリマー混合物、抗菌物質を含まないポリマーまたはポリマー混合物、ポリマーまたはポリマー混合物両方のための溶媒、およびPEG(分子量‐300)を含む細孔形成剤を混合するステップと、
b)ステップa)において製造した混合物をポリマー用の非溶媒と共に紡糸口金に通過させるステップと、
を含み得る。
【0062】
さらに、本発明のさらなる態様では、以下の工程を含む、固有の抗菌性中空繊維膜を製造する方法が提供される。
a)抗菌物質埋め込みポリマーまたは抗菌物質埋め込みポリマー混合物を、抗菌物質を含まないポリマーまたはポリマー混合物および両方のポリマー用の溶媒と、PEG、LiCl、PVPなどのその他の添加物とともに混合するステップと、
b)ステップa)において製造した混合物をポリマー用の非溶媒と共に紡糸口金に通過させるステップと、
を含む固有の抗菌性中空繊維膜を製造する方法が提供される。
【0063】
本発明の全てのプロセスについて、ステップb)は25から80℃、または40から60℃、任意選択的に50℃(大気圧下)の温度で実施することができる。紡糸口金は高速で作動することが要求される。例えば、それは350から600rpm、または450から550rpm、任意選択的に500rpmの速度で作動することができる。
【0064】
ポリマーは、非溶媒よりも溶媒とより溶液を形成することができる。その結果、ステップb)の間に溶媒と非溶媒とが互いに接触すると、ポリマーは溶媒から追い出されて固化する。紡糸口金によって放出されている間の速度でのポリマーの急速な固化は、形成される繊維中に細孔を形成する。同時に、紡糸口金によって形成繊維上に誘起される遠心力は、その中に埋め込まれた抗菌物質を有するポリマーを形成繊維の外面に引っ張り、このポリマーは、抗菌物質を含まないものよりも密度が高い。このようにして、繊維は孔を有し、かつ繊維の外側部分が抗菌ポリマーが埋め込まれた優勢な量のポリマーを含み、残りが抗菌物質を含まないポリマーから形成されるように形成される。
【0065】
本発明の両方のさらなる態様のためのこのプロセスは、本発明の第一の態様の膜を形成するために使用することができる。したがって、本発明の第1の態様のすべての特徴は、本発明のさらなる態様にも等しく適用することができる。例えば、抗菌物質は金属酸化物または金属であり得る。抗菌物質埋め込みポリマーまたはポリマー混合物は、ステップa)において形成された混合物中の全ポリマーの2から5重量%であり得る。
【0066】
抗菌物質を含まないポリマーまたはポリマー混合物は、繊維の95から98重量%を形成し得る。
【0067】
ポリマーは、必要に応じて、ポリエーテルスルホンを含むかまたはそれからなってもよい。溶媒は、N‐メチル‐2‐ピロリドンであり得る。
【0068】
抗菌物質が埋め込まれたポリマーは、ポリエーテルスルホン(例えば、ウルトラゾーンポリエーテルスルホン、場合によってはグレード6020p)であってよく、抗菌物質を含まないポリマーまたはポリマー混合物はポリエーテルスルホン(例えばウルトラゾーンポリエーテルスルホン、場合によってはグレード6020p)であってよく、ポリマーは3%対97%の重量比で提供される。
【0069】
抗菌物質を含むかまたは含まないポリマーまたはポリマー混合物は、同じポリマーまたはポリマー混合物であり得る。抗菌物質が埋め込まれたポリマーは、ポリマー鎖間の架橋によってその中に埋め込まれた金属酸化物粒子を有することができる。
【0070】
膜は、液体ろ過のための従来の装置、例えば上記の先行技術に記載されたもののいずれにも組み込むことができる。
【0071】
したがって、本発明のなおさらなる態様において、本発明の第1の態様に記載されるような中空繊維膜を含む液体ろ過のための装置が提供され、ここで膜は少なくとも1つの供給チャネルおよび少なくとも1つの排水チャネルを有するハウジング内に配置される。膜は、入口、出口、および逆流排水のための複数の開口部を有するハウジング内に配置することができる。膜の親水性層は、繊維壁上の穴を通って繊維の中空空洞に向かう液体の毛管作用を維持し、吸引圧力または通過圧力または重力ヘッドの要件を低減する。
【0072】
以下において、単なる例示として、以下の図を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】
図1は、中空繊維(2)、密封され注封された繊維端部(3)、および注封モジュール(4)を示す。
【
図2】
図2は、繊維壁上の、それを通して液体が中空繊維の内腔に入るナノ細孔(1)、および中空繊維(2)を示す。
【
図3】
図3は、繊維壁上の、それを通して液体が中空繊維の内腔に入るナノ細孔(1)、ろ過された液体(5)、繊維壁の空洞(6)、親水性層(7)、両方の層の合流点(8)、疎水性層によって液体と繊維との間に形成された空間(9)、粗粒子、不純物、汚染物(10)、ろ過されていない液体に面する疎水性層(11)、およびろ過されていない液体(12)を示す。
【
図4】
図4は、それを通して液体が入る繊維壁上のナノ細孔(1)、中空繊維(2)、密封され注封された繊維端部(3)、注封モジュール(4)、ろ過された液体(5)、繊維壁の空洞(6)、親水性層(7)、両方の層の合流点(8)、疎水性層によって液体と繊維との間に形成された空間(9)、粗粒子、不純物、汚染(10)、ろ過されていない液体に面する疎水性層(11)、およびろ過されていない液体(12)を示す。
【
図5】
図5は、そこからろ過された液体が出てくる中空繊維の端部(13)、注封モジュール壁(14)、および繊維端部間の封止剤(15)を示す。
【
図6】
図6は、繊維壁厚のクローズアップのSEM写真を示す。
【
図7】
図7は、全断面における繊維壁の厚さのSEM写真を示す。
【
図8】
図8は、本発明に従って製造された10個の膜の研究から得られた経時的な水流量のチャートを示す。
【
図9】
図9は、本発明の繊維材料の抗菌研究の結果を示す。
【
図10】
図10は、HF膜の流束の概要の欄で命名された表中のデータに対応する膜サンプル‐1の流束挙動を示し、サンプルはPWPおよびCWFについて試験され、グラフは明確にするために
図8から抽出されたものである。グラフは、最初のPWP測定値が2400LMHで記録され、その後800LMHで正規化されたことを示す。
【
図11】
図11は、HF膜‐2流束の概要の欄で命名された表中のデータに対応する膜サンプル‐2の流束挙動の示し、サンプルはPWPおよびCWFについて試験され、グラフは明確にするために
図8から抽出されたものである。グラフは、最初のPWP測定値が1800LMH付近で記録され、その後900LMHHを少し上回る測定値で正規化することを示す。
【
図12】
図12は、HF膜‐3流束の概要の欄で命名された表中のデータに対応する膜サンプル‐3の流束挙動を示し、サンプルはPWPおよびCWFについて試験され、グラフは明確にするために
図8から抽出されたものである。グラフは、最初のPWP測定値が1900LMHで記録され、その後900LMHで正規化されたことを示す。
【
図13】
図13は、HF膜‐4流束の概要の欄で命名された表中のデータに対応する膜サンプル‐4の流束挙動を示し、サンプルはPWPおよびCWFについて試験され、グラフは明確にするために
図8から抽出されたものである。グラフは、最初のPWP測定値が1800LMH付近で記録され、その後880LMH付近の測定値で正規化することを示す。
【
図14】
図14は、HF膜‐5流束の概要の欄で命名された表中のデータに対応する膜サンプル‐5の流束挙動を示し、サンプルはPWPおよびCWFについて試験され、グラフは明確にするために
図8から抽出されたものである。グラフは、最初のPWP測定値が2200LMH付近で記録され、その後700LMHを少し上回る測定値で正規化することを示す。
【
図15】
図15は、HF膜‐6流束の概要の欄で命名された表中のデータに対応する膜サンプル‐6の流束挙動を示し、サンプルはPWPおよびCWFについて試験され、グラフは明確にするために
図8から抽出されたものである。グラフは、最初のPWP測定値が1800LMH付近で記録され、その後1000LMH付近の測定値で正規化することを示す。
【
図16】
図16は、HF膜‐7流束の概要の欄で命名された表中のデータに対応する膜サンプル‐7の流束挙動を示し、サンプルはPWPおよびCWFについて試験され、グラフは明確にするために
図8から抽出されたものである。グラフは、最初のPWP測定値が1930LMH付近で記録され、その後920LMH付近の測定値で正規化することを示す。
【
図17】
図17は、HF膜‐8流束の概要の欄で命名された表中のデータに対応する膜サンプル‐8の流束挙動を示し、サンプルはPWPおよびCWFについて試験され、グラフは明確にするために
図8から抽出されたものである。グラフは、最初のPWP測定値が2100LMH付近で記録され、次に780LMH付近の測定値で正規化することを示す。
【
図18】
図18は、HF膜‐9流束の概要の欄で命名された表中のデータに対応する膜サンプル‐9の流束挙動を示し、サンプルはPWPおよびCWFについて試験され、グラフは明確にするために
図8から抽出されたものである。グラフは、最初のPWP測定値が2370LMH付近で記録され、その後800LMHを少し上回る測定値で正規化することを示す。
【
図19】
図19は、HF膜‐10流束の概要の欄で命名された表中のデータに対応する膜サンプル‐10の流束挙動を示し、サンプルはPWPおよびCWFについて試験され、グラフは明確にするために
図8から抽出されたものである。グラフは、最初のPWP測定値が1800LMH付近で記録され、その後900LMHの測定値で正規化することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下において、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。本発明の態様および特徴、ならびにそれらの態様および特徴を達成するための方法は、添付の図面を参照しながら詳細に説明される例示的な実施形態を参照することによって明らかになるであろう。しかしながら、本発明は、以下に開示される例示的実施形態に限定されず、様々な形態で実施され得る。詳細な構造および要素などの説明で定義された事項は、本発明の包括的な理解において当業者を助けるために提供された具体的な詳細に他ならず、例示的な実施形態は添付の特許請求の範囲内で定義される。図面において、層および領域のサイズおよび相対サイズは、説明を明確にするために誇張されている場合がある。
【0075】
要素が異なる層または1つの層上に配置された別の要素上にあることを示すために使用される用語「上に」は、要素が別の要素または層上に直接配置される場合および要素が別の層または別の要素を介して別の要素上に配置される場合の両方を含む。対照的に、「直接上に」という用語は、ある要素が他の要素または層を介さずに別の要素または層の上に直接あることを意味する。本発明の説明全体において、別々の図面中の同一の要素に対して同一の参照番号が使用されている。また、「および/または」という用語は、それぞれ記載されている物およびそれらの組み合わせを含む。
【0076】
図面に示されるように、「下」、「下方」、「下部」、「上方」、「上部」などの空間的に相対的な表現は、1つまたは複数の構成要素と別の1つまたは複数の構成要素との間の関係の説明を容易にするために使用され得る。空間的に相対的な表現は、図面に示された方向に加えて、使用または動作中の要素の異なる方向を含む表現として理解すべきである。
【0077】
以下の本発明の説明においては、理想的な模式図である平面図および断面図を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。例示的な図の形態は、製造技術および/または許容誤差のために修正され得る。したがって、本発明の例示的な実施形態は、例示されたそれらの特定の形態に限定されず、製造プロセスに従って生成される形態の変更を含む。したがって、図面に例示された領域は大まかな性質を有し、図面における領域の形状は要素の領域の特定の形態を例示するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0078】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の中空繊維ろ過膜(以下、単に「膜」ともいう)の構造の代表例を説明する。
図1は、膜の長手方向に垂直な断面の拡大写真であり、
図2は、膜の内面の拡大写真である。
【0079】
図3に示すように、本発明の膜は、それぞれ内面および外面を有する多数の中空繊維から形成され、一方の表面(例えば内面)から他方の表面(例えば外面)まで一体的に連続する網目構造を含む。膜の網目構造は、空洞を有する指状構造層および空隙層などのポリマーのない部分を有さない。
【0080】
本発明の膜は、膜の内面に存在する孔の平均孔径(以下、「内面の平均孔径」という)と比較して、外面または外面付近に存在する孔の平均孔径(以下、「外面の平均孔径」という)が小さい層を有するように、孔径の異方性を有する網目構造を含む。孔径は一般に、膜の内面に向かって徐々に大きくなる。本発明の一実施形態によれば、99%を超える細孔が、外面上で言及された直径のサイズ(以下、「外面の平均孔径」と呼ぶ)である。
【0081】
本発明の膜は、膜の材料がポリエーテルスルホンである場合には70から90%の空隙率を有し、空隙率に応じて、2から3.5barの範囲内の破断応力ISおよび最大70%の破断伸びを有する
【0082】
本発明の中空繊維膜を構成する材料としては、例えば、ポリスルホンポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデンポリマー、ポリアクリロニトリルポリマー、ポリメタクリル酸ポリマー、ポリアミドポリマー、ポリイミドポリマー、ポリエーテルイミドポリマー、酢酸セルロースポリマーが挙げられる。特に好ましいのは、芳香族ポリスルホン、ポリアクリロニトリルコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、および芳香族ポリエーテルイミドである。ポリエーテルスルホン型が特に好ましい。
【0083】
本発明のさらなる態様では、本発明の中空繊維膜を備える液体ろ過のためのろ過装置も記載されており、ここで膜は少なくとも1つの供給チャネルおよび少なくとも1つの排出チャネルを含むハウジング内に配置される。本発明の装置によれば、膜の親水性層は、繊維壁上の穴を通って繊維の中空キャビティに向かう液体の毛管作用を維持し、吸引圧力または通過圧力または重力ヘッドの要件を減少させる。
【0084】
固有の抗菌性中空繊維膜は、ポリマー混合物を高速回転で紡糸して前記ポリマー混合物をベースポリマーの周囲に配置することによって製造され、ここでポリマー混合物は、抗菌物質を含まないベースポリエーテルスルホン中に3%の抗菌埋め込みポリエーテルスルホン6020pを含み、最終製品の約99.9%の表面積を抗菌性とする。抗菌性埋め込みポリマーはより高い密度を有するので、遠心力がそれを外側に押し出して製品の製造コストを低減するベースポリマーの周囲に配置する。抗菌ポリマーは、ポリマー鎖間の架橋を介してポリマー中に金属酸化物粒子を埋め込むことによって化学的に開発される。これにより、抗菌特性を付与する物質が浸出することがなく、ポリマーから他の接触する物質へと移動することがない、固有の抗菌性のポリマーが製造される。
【0085】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。特性の測定方法は以下の通りである。
【0086】
測定試料として用いた中空繊維膜は、全て水が十分に含浸した状態である。添加剤としてポリビニルピロリドンを用いて得られた膜は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬した後、熱水で洗浄することにより、ポリビニルピロリドンが実質的に存在しない膜を形成した。
【0087】
中空繊維膜の透水量は、25℃の限外ろ過水が中空繊維サンプルを透過することができるろ過水の量で表した。
【0088】
[実施例1]
本発明の好ましい実施形態を例示目的で説明してきたが、本発明の精神または範囲から逸脱することなく本発明において様々な修正、追加、および置換を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある限り、本発明の修正形態および変形形態を網羅することが意図されている。
【0089】
本発明の装置は、固有の抗菌性中空繊維膜である。膜はマイクロメートルスケールで本質的な変化を受け、それは消毒および抗菌特性をもたらす。物体の表面上の細菌の付着および増殖は遅くなり、微生物および細菌数は著しく減少する。材料のこの消毒/抗菌特性は、膜ポリマーの固有の特性であり、ろ過された液体と共に移動/浸出することはなく、そして使用/時間と共に減少することもない。
【0090】
中空繊維は2層からなる。外層は疎水性であり、内層は本来親水性である。疎水性層は、水が膜と物理的に接触することを決して許容せず、それ故、そこにいかなる種類のいかなる付着も防止する。疎水性層は、外側に水の層が存在しないことによって外側から内側への空気の通過が容易になるので、空気の捕捉を最小限にし、それによって吸引圧力要件を低減させ、液体の流束を増加させる。内側の親水性層は、繊維壁上の穴を通って繊維の中空空洞に向かう液体の毛管作用を維持し、それ故、吸引圧力または通過圧力または重力ヘッドの要件を低減する。液体は外側から内側に向かって流れる、すなわち繊維壁の外側から液体がその穴を通過しそしてろ過された液体が繊維の中空端部から出るときにろ過が起こる。それ故、ろ過されていない液体を繊維壁の外側に保持し、ろ過された液体を中空繊維の内側に保持する。外側に疎水性層、内側に親水性層を有しながら、外側から内側への流れで使用される唯一の膜となる。
【0091】
繊維は、その壁に1nmから25nmの範囲の細孔を有することができる。液体、特に水が繊維の外側からその壁の穴から繊維の中空空洞に通過するときにろ過される。繊維は、U字形の側面が常にろ過のために来る液体に面し、ろ過された液体が常に繊維の開放端を通って出るように、開放端が封止及び支持されたU字形膜モジュールを形成する。繊維の多孔度は70%から90%の範囲である。
【0092】
抗菌性埋め込みポリマーは、ポリマーウルトラゾーンポリエーテルスルホン(BASFブランド)において金属酸化物粒子を化学的に結合することによって開発され、浸出して接触する物質を汚染し得る抗菌性物質で表面をコーティングすることによって抗菌性が形成された既存の抗菌性膜とは異なり、抗菌性が決して浸出せず、ポリマーの表面と接触する他の物質へとポリマーから決して移動しない固有の抗菌性のポリマーを生成する。ポリエーテルスルホンは、膜の中空繊維を構成するポリマーである。
【0093】
細孔は、中空繊維膜製造プロセスの間に実現される。このプロセスは、ギアポンプ補助流管を介して紡糸口金に接続された2つのタンクの使用を含む。ドープ溶液タンク及びボア溶液タンクである。ポリマーは溶媒と混合され、そこでそれらはドープ溶液タンク中で完全に溶解する。ドープ溶液およびボア溶液(非溶媒とも呼ばれる)の両方の流れが紡糸機の紡糸口金を通り始めるとすぐに、転相のプロセスが始まる(溶媒に溶解したポリマーが固化し始める)。この現象は、非溶媒と溶媒が接触するとすぐにそれらの間の相互作用が溶解したベースポリマーを溶媒から押し出す駆動力として作用し、それ故に再度固化し始める物質移動の簡単なプロセスによって説明することができる。このプロセスの間、孔が形成されるのは、瞬間的な(非常に短い、1秒未満の)脱混合の時間が、ポリマーが完全に固化するには短すぎるためであり、脱混合の瞬間的な性質が、固化するポリマー構造中にいくらかの不連続性を与え、これらの不連続性(空間)は最終的には細孔であり、これら全ての細孔は組み合わされて繊維に多孔性を与える。繊維形成のプロセスは、紡糸口金を500rpmで作動させながら、大気圧で50℃で行われる。ポリマー全体の3重量%が抗菌性埋め込みポリマーから形成され、97%が抗菌性物質を含まないポリマーである。
【0094】
[実施例2:細孔形成]
以下の表中の成分を組み合わせることによってドープ溶液/ポリマー溶液を調製した。これに、下記のボア溶液/内部溶液を添加し、そしてその組み合わせを完全に混合した。次いで、この混合物を水と共に紡糸口金に通過させて中空繊維を形成した。
1.ドープ溶液を製造するプロセスにおいて、低分子量添加剤(例えばLiClなど)を最初に溶媒中に絶えず撹拌しながら50℃で添加する。
2.徐々に、分子量の大きい添加剤(PEG、PVPなど)を一定に撹拌しながら溶媒に添加する。
3.最後に、ベースポリマー(例えばPES、PSUなど)をドープ溶液中に一定に撹拌しながら80℃で約3時間導入する。
4.ドープ溶液は、すべての添加剤とベースポリマーが溶媒に均一に溶解することで紡糸の準備が整ったとみなされる。ドープ溶液は、紡糸前に気泡および異物が存在しない状態で、一相である。
5.攪拌中に発生する気泡を除去するために、ドープ溶液を一晩または十分な時間撹拌せずに放置する。
6.紡糸口金の温度は室温であるが、凝固液の温度は50℃である。
7.ボア溶液は、純粋なPEG、またはPEG:水9:1またはNMP:水9:1の混合物のいずれかであり得る。
【0095】
【0096】
上記の方法に従って製造された繊維は、これらの繊維の性能を試験して評価することによって、現在入手可能であるかまたは先行技術で引用されている繊維と比較して優れていることがわかった。PWPおよびCWF値は、そのような繊維について公開された文献において通常報告されているものよりも高い。孔径20nmの繊維についてのPWP値1800LmhおよびCWF値900Lmhは、限外ろ過用の中空繊維膜と比較してより高い。
【0097】
PEGがボア溶液としておよびドープ中の細孔形成剤として使用されるとき、その高い粘度および流動挙動のために、形態学の観点から発生期の繊維に特性を付与することが観察されている。特に、繊維は、顕著な指状の細孔構造を有する傾向があり、したがって、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、その断面を観察者に向けて繊維を観察した壁の厚さの写真である
図6および
図7に見られるように、繊維の厚さに沿って直線的で明確なチャネルを有する。
【0098】
次いで、上記方法に従って製造された繊維についての純水透過性および限界水流束を確立した。
【0099】
純水透過性(PWP):純水透過流束としても知られる純水透過性は、単位時間当たり、単位面積当たり、および単位膜貫通圧力で膜を通過する水の体積として定義される。この特性は、膜が透過液を生成するのに必要な力を示し、膜の初期性能を比較するために使用することができる。しかしながら、この分析は長期間にわたる材料の性能に関するガイダンスを提供するものではないため、臨界水流束(Critical Water Flux)を検討することも有用である(Persson、Kenneth M.、Vassilis Gekas、およびGunTragardh、「Study of membrane compaction and its influence on ultrafiltration water permeability」、Journal of membrane science 100、no.2(1995):155-162参照)。
【0100】
臨界水流束(CWF):膜貫通圧力(TMP)が純水ラインから外れ始める流束(強い形態の臨界流束)として、または不可逆的汚損が膜表面に現れる最初の透過流束としてのいずれかである。臨界流束は一般に、極限流束(到達可能な「最後の」流束)とはよく区別される、汚れが顕著になる「最初の」透過流束として定義することができる(Bacchin、Patrice、Pierre Aimar、およびRobert W. Field、「Critical and sustainable fluxes: theory, experiments, and applications」Journal of membrane science 281、no.1-2(2006):42-69参照)。
【0101】
上記方法に従って作製された繊維の10個の別々のサンプルを作りそして10個の別々の膜を形成するのに使用した。膜を試験してそれらのPWPおよびCWFを確立した。形成された膜をそれらのPWPおよびCWFについて以下によって試験した。
純水流束実験は脱イオン水を用いて行った。各モジュールを脱イオン水に24時間浸し、試験システム内で1 1/2時間運転して、サンプル採取前に中空糸膜に対する残留グリセロールの影響を排除した。PWPおよびタンパク質除去を評価するために設計されたUF実験装置が詳細に示されている(CS Feng、B. Shi、G. Li、Y. Wu、Preparation and properties of microporous membrane from polyvinylidene fluoride cotetrafluoroethylene) (F2.4) for membrane distillation、J. Membr. Sci. 237 (2004) 15‐24参照)。1barの膜貫通圧力および20℃の供給溶液温度で、全ての実験は直交流モードで中空繊維モジュールにおいて行った。各中空繊維サンプルにつき2つのモジュールを調製した。
純水透過流束(PWP)は以下のようにして得た。
【0102】
純水が膜を通過したときに、上記の式を用いて計算された値が表にされ、時間と測定値の間のグラフがプロットされる。長期間(我々の場合では5時間超)では、PWP値は安定し始め、この時点で膜のCWF値を意味する。繊維に対してPWP試験を実施するために使用される装置は、以下の概略図によって表すことができる。
【0103】
試験の結果および必須条件を下記のTable 1に提供する。試験はSTPで実施した。
Table 1:
Tableは、調製された10個の中空繊維膜サンプルについて行われたPWP試験の間に記録されたデータを列挙する。
Flux Tables-10サンプルからの5対
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
Table 2は、各膜について120分の時間にわたって5分間隔で確立された純水流束の概要を提供する。結果は
図8にも示す。
【0110】
Table 2:
Table 2は、各膜について120分の時間にわたって5分間隔で確立された純水流束の概要を提供する。結果は
図8にも示す。
【0111】
【0112】
これらの結果から、各サンプルで良好なレベルの一貫性があることがわかる。長期の試験にわたってPWP測定値は、それぞれの膜のCWFとして指定される(グラフがまっすぐになり一定の傾きを有する傾向がある)ある点で低下し安定する傾向があるが、初期PWP測定値は従来の繊維と比較してより高いと結論付けることができる。CWFは、そのような膜がそれらの実際の用途で使用されるときに設計因子として使用されるパラメータである。しかしながら、全てのサンプルについて、CWFは800から900Lmhの範囲にあり、これは、従来のものと比較して、これらの繊維を同じ量の水が透過するのに必要な圧力がより低く、コストを節約できるため、本発明に記載の繊維の有利な特性であることが分かる。
【0113】
[実施例3:膜繊維表面の抗菌性についての試験]
実施例2に従って製造された中空繊維を有する膜を提供したが、ポリマー内に亜鉛塩を埋め込んだ。我々のケースではポリエーテルスルホンである、繊維を作製するための主要なポリマーは、亜鉛ピリチオンなどの亜鉛の塩を使用して修飾される。この修飾は、US9527918に記載されている方法に基づいて行われる。
【0114】
次いで、膜を、ポリマー表面の抗菌性を評価するための標準的な国際的方法を用いて、2種類の細菌株(大腸菌ATCC 8739(グラム-)および黄色ブドウ球菌6538(グラム+))を阻害する能力について試験した。結果は、ペトリ皿上で増殖した細菌培養物の画像に見出すことができ、
図9に示す。結果を以下に提供する。
【0115】
Table 3
次いで、膜を、ポリマー表面の抗菌性を評価するための標準的な国際的方法を用いて、2種類の細菌株(大腸菌ATCC 8739(グラム-)および黄色ブドウ球菌6538(グラム+))を阻害する能力について試験した。結果は、ペトリ皿上で増殖した細菌培養物の画像に見出すことができ、
図9に示す。結果を以下に提供する。
【0116】
【0117】
図から分かるように、紡糸ポリマー繊維(すなわち、亜鉛塩が埋め込まれたポリマー)に対して行われた試験の阻止帯は、ペトリ皿上に置かれた繊維サンプルの幾何学的形状と一致し、繊維が適用されたディスクの部分の細菌のほぼ完全な殺傷を表す。これは、紡糸ポリマー繊維について計算したものと比較した、初期種菌について表3に示したCFU/mlの減少によって確認される。
【0118】
試験方法:
上記のように調製された抗菌性ポリマーポリエーテルスルホンを紡糸することによって得られた中空繊維を試験して、皮膚と接触することを意図したプラスチック製品に関する現在の法令によって定義された主要微生物株に対するポリマーの有効性を評価した。
非多孔性プラスチック表面の抗菌活性を評価するための標準的な国際的方法を用いて、2種類の細菌株(大腸菌ATCC8739(グラム-)および黄色ブドウ球菌ATCC6538(グラム+))について製品を試験した。
成形初期インキュベーション対照ポリマー37℃でのMICROBIAL接種材料接種項目還元株(cfu/ml)24時間(cfu/ml)(cfu/ml)log還元%エシェリキア2.5×106 6.2×107 1.0×107 0.79 83.87%黄色ブドウ球菌1.7×106 2.3×107 1.4×106 1.2 93.91%アウレウス
【0119】
コロニー形成単位‐cfu/mlで表される既知の細菌濃度を得るように初期の細菌懸濁液を希釈した。試験を実施するのに最適な寸法の片を製造するために、分析した繊維を正しく切断した。これらを参照微生物株で処理し、滅菌ポリエチレンフィルムで覆い、37±1℃のインキュベータ内に24時間配置した。インキュベーション期間の終わりに、サンプルを中和溶液で洗浄し、そこで残留微生物数を測定した。
得られた結果は、37℃で24時間インキュベートした後に、亜鉛で処理したポリマーが細菌数を83.870(大腸菌の場合)および93.91%(黄色ブドウ球菌の場合)減少させることを示している。
【0120】
図9.説明:
図からわかるように、各3個の2セットで合計6個のペトリ皿がある。
上の3つはその物質に殺菌物性を与えるために銀ナノ粒子を含浸させた物質を有し、下の3つは本発明の繊維表面から抽出されたサンプル(紡糸中空繊維膜)を有する。上の3つのペトリ皿ではナノ粒子が浸出し、物質の外に移動/浸出してサンプル周囲の細菌を殺菌したことが分かる。しかしながら、下の3つのペトリ皿中の細菌増殖はサンプルの表面でのみ阻害され、抗菌性を付与する原因となる物質が本発明の材料から浸出しないという主張を裏付けるものである。
【符号の説明】
【0121】
1 繊維壁上の細孔
2 中空繊維
3 繊維端部
4 注封モジュール
5 ろ過された液体
6 繊維壁の空洞
7 親水性層
8 両方の層の合流点
9 液体と繊維との間の空間
10 粗粒子、汚染物
11 疎水性層
12 ろ過されていない液体
13 中空繊維の端部
14 注封モジュール壁
15 封止剤